(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜13を参照して、本発明による蓄電装置およびグロメットの一実施の形態を説明する。以下では、一実施の形態による蓄電装置を、電動車両、特に電気自動車の車載電源装置を構成する蓄電装置に適用した場合を例として説明する。電気自動車は、内燃機関であるエンジンと電動機とを車両の駆動源として備えたハイブリッド電気自動車、および電動機を車両の唯一の駆動源とする純正電気自動車等を含む。
【0009】
まず、
図1を用いて、一実施の形態による蓄電装置を含む車載電機システム(電動機駆動システム)の構成について説明する。
【0010】
車載電機システムは、モータジェネレータ910、インバータ装置920、車両全体を制御する車両コントローラ930、および車載電源装置を構成する蓄電装置1000等を備える。蓄電装置1000は、複数の蓄電池を備えており、たとえば、複数のリチウムイオン電池セルを備えたリチウムイオンバッテリ装置として構成される。
【0011】
このような車載電機システムを搭載する電気車(電気自動車やハイブリッド自動車を含む)は、電力により走行駆動を発生する走行駆動装置と、電力を走行駆動装置に供給する本発明による蓄電装置と、走行駆動装置が設けられる車体とを有する。蓄電装置は、複数の電池セルからなる組電池を導電性のケーシング内に収納して構成される電池ブロックと、電池セルを管理するバッテリコントローラやセルコントローラを含む制御装置とを有している。
【0012】
インバータ装置920は、パワーモジュール921、ドライバ回路922、モータコントローラ923および平滑コンデンサ924を備えている。
【0013】
蓄電装置1000は、電気エネルギーを蓄積および放出(直流電力を充放電)するための電池モジュール100、および電池モジュール100の状態を管理および制御するための制御装置200を備えている。
【0014】
電池モジュール100は、たとえば、二つの電池ブロック(或いは電池パック)、すなわち電気的に直列に接続される高電位側電池ブロック100aおよび低電位側電池ブロック100bから構成されている。各電池ブロックには組電池が収納されている。各組電池は、複数のリチウムイオン電池セルを電気的に直列に接続した接続体から構成されている。
【0015】
高電位側電池ブロック100aの負極側(低電位側)と低電位側電池ブロック100bの正極側(高電位側)との間にはSD(サービスディスコネクト)スイッチ700が設けられている。SDスイッチ700は蓄電装置1000の保守、点検の時の安全性を確保するために設けられた安全装置であり、スイッチとヒューズとを電気的に直列に接続した電気回路から構成され、サービスマンによって保守、点検時に操作される。
【0016】
制御装置200は、上位(親)に相当するバッテリコントローラ230および下位(子)に相当するセルコントローラ220から構成されている。バッテリコントローラ230は、蓄電装置1000の状態を管理および制御するとともに、上位制御装置である車両コントローラ930やモータコントローラ923に蓄電装置1000の状態や許容充放電電力などの充放電制御指令を通知する。蓄電装置1000の状態の管理および制御には、蓄電装置1000の電圧および電流の計測、蓄電装置1000の蓄電状態(SOC:State Of Charge)および劣化状態(SOH:State Of Health)などの演算、各電池ブロックの温度の計測、セルコントローラ220に対する指令(たとえば各リチウムイオン電池セルの電圧を計測するための指令、各リチウムイオン電池セルの蓄電量を調整するための指令など)の出力などがある。
【0017】
セルコントローラ220は、バッテリコントローラ230からの指令によって複数のリチウムインオン電池セルの状態の管理および制御を行う、いわゆるバッテリコントローラ230の手足であり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数のリチウムイオン電池セルの状態の管理および制御には、各リチウムイオン電池セルの電圧の計測、各リチウムイオン電池セルの蓄電量の調整などがある。各集積回路は、対応する複数のリチウムイオン電池セルが決められており、対応する複数のリチウムイオン電池セルに対して状態の管理および制御を行う。
【0018】
バッテリコントローラ230の電源には、車載補機、たとえばライトやオーディオ機器などの電源装置として搭載された補機用バッテリ(自動車の場合、公称出力電圧12ボルトの鉛バッテリ)を用いている。このため、バッテリコントローラ230には補機用バッテリからの電圧(例えば12ボルト)が印加されている。バッテリコントローラ230は、印加された電圧をDC−DCコンバータ(直流−直流電力変換器)から構成された電源回路によって降圧(例えば5ボルトに降圧)し、この降圧された電圧を、バッテリコントローラ230を構成する電子部品に駆動電圧として印加する。これにより、バッテリコントローラ230を構成する電子部品は作動する。
【0019】
セルコントローラ220を構成する集積回路の電源には、対応する複数のリチウムイオン電池セルを用いている。このため、セルコントローラ220と電池モジュール100の両者は接続線850を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数のリチウムイオン電池セルの最高電位の電圧が接続線850を介して印加されている。各集積回路は、印加された電圧を電源回路によって降圧(例えば5ボルトに降圧)し、これを動作電源として用いる。
【0020】
バッテリコントローラ230には、イグニションキースイッチから出力された信号が入力されている。イグニションキースイッチから出力された信号は蓄電装置1000の起動および停止の合図として用いられている。
【0021】
イグニションキースイッチがオン状態になると、バッテリコントローラ230では、イグニションキースイッチからの出力信号に基づいて電源回路が動作し、複数の電子回路部品に対して電源回路から駆動電圧が印加されて複数の電子回路部品が動作する。これにより、バッテリコントローラ230が起動する。バッテリコントローラ230が起動すると、セルコントローラ220に対してバッテリコントローラ230から起動指令が出力される。
【0022】
セルコントローラ220では、バッテリコントローラ230からの起動指令に基づいて複数の集積回路の電源回路が順次動作し、複数の集積回路が順次起動する。これにより、セルコントローラ220が起動する。セルコントローラ220が起動すると、所定の初期処理が実行され、蓄電装置1000が起動する。
【0023】
所定の初期処理としては、たとえば各リチウムイオン電池セルの電圧の測定、異常診断、蓄電装置1000の電圧および電流の測定、各電池ブロックの温度の測定、蓄電装置1000の蓄電状態および劣化状態の演算、蓄電装置1000の許容充放電電力の演算などがある。
【0024】
イグニションキースイッチがオフ状態になると、セルコントローラ220に対してバッテリコントローラ230から停止指令が出力される。セルコントローラ220が停止指令を受けると、所定の終了処理が実行された後、複数の集積回路の電源回路が順次停止して、複数の集積回路が順次停止する。これにより、セルコントローラ220が停止する。セルコントローラ220が停止し、セルコントローラ220との間において通信ができなくなると、バッテリコントローラ230では、電源回路の動作が停止し、複数の電子回路部品の動作が停止する。これにより、バッテリコントローラ230が停止し、蓄電装置1000が停止する。
【0025】
所定の終了処理としては、たとえば各リチウムイオン電池セルの電圧の測定、および各リチウムイオン電池セルの蓄電量の調整などがある。
【0026】
バッテリコントローラ230と、車両コントローラ930およびモータコントローラ923などの上位制御装置との間の情報伝達には、車載ローカルエリアネットワークによる通信を用いている。バッテリコントローラ230とセルコントローラ220との間の情報伝達には、車載ローカルエリアネットワークによる通信に準拠するLIN通信を用いている。
【0027】
高電位側電池ブロック100aの正極端子とインバータ装置920の直流正極側外部端子との両者は正極側電源ケーブル610を介して電気的に接続されている。低電位側電池ブロック100bの負極端子とインバータ装置920の直流負極側外部端子との間は負極側電源ケーブル620を介して電気的に接続されている。
【0028】
電源ケーブル600の途中にはジャンクションボックス400が設けられている。ジャンクションボックス400の内部には、メインリレー410およびプリチャージ回路420から構成されたリレー機構が収納されている。リレー機構は、電池モジュール100とインバータ装置920との間を電気的に導通および遮断するための開閉部であり、車載電機システムの起動時には電池モジュール100とインバータ装置920との間を導通、車載電機システムの停止時および異常時には電池モジュール100とインバータ装置920との間を遮断する。このように、蓄電装置1000とインバータ装置920との間をリレー機構によって制御することにより、車載電機システムの高い安全性を確保できる。
【0029】
リレー機構の駆動はモータコントローラ923により制御される。モータコントローラ923は、車載電機システムの起動時には、蓄電装置1000の起動完了の通知をバッテリコントローラ230から受けることにより、リレー機構に対して導通の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。また、モータコントローラ923は、車載電機システムの停止時にはイグニションキースイッチからオフの出力信号を受けることにより、また、車載電機システムの異常時には車両コントローラ930からの異常信号を受けることにより、リレー機構に対して遮断の指令信号を出力してリレー機構を駆動させる。
【0030】
メインリレー410は正極側メインリレー411および負極側メインリレー412から構成されている。正極側メインリレー411は正極側電源ケーブル610の途中に設けられ、蓄電装置1000の正極側とインバータ装置920の正極側との間の電気的な接続を制御する。負極側メインリレー412は負極側電源ケーブル620の途中に設けられ、蓄電装置1000の負極側とインバータ装置920の負極側との間の電気的な接続を制御する。
【0031】
また、ジャンクションボックス400の内部には電流センサ430が収納されている。電流センサ430は、蓄電装置1000からインバータ装置920に供給される電流を検出するために設けられたものである。電流センサ430の出力線はバッテリコントローラ230に電気的に接続されている。バッテリコントローラ230は、電流センサ430から出力された信号に基づいて、蓄電装置1000からインバータ装置920に供給された電流を検出する。この電流検出情報は、バッテリコントローラ230からモータコントローラ923や車両コントローラ930などに通知される。電流センサ430はジャンクションボックス400の外部に設置しても構わない。蓄電装置1000の電流の検出部位は、正極側メインリレー411のインバータ装置920側のみらならず、正極側メインリレー411の電池モジュール100側であってもよい。
【0032】
なお、ジャンクションボックス400の内部には蓄電装置1000の電圧を検出するための電圧センサを収納してもよい。電圧センサの出力線は電流センサ430と同様にバッテリコントローラ230に電気的に接続される。バッテリコントローラ230は、電圧センサの出力信号に基づいて蓄電装置1000の全体の電圧を検出する。この電圧検出情報はモータコントローラ923や車両コントローラ930に通知される。蓄電装置1000の電圧の検出部位は、リレー機構の電池モジュール100側とインバータ装置920側の両方にあるほうがよい。
【0033】
図2は、蓄電装置1000の筐体の外観斜視図であり、
図3は、
図2のグロメット周辺の分解斜視図であり、
図4,5は、グロメットの筐体への取付状態を示す斜視図である。蓄電装置1000の筐体は、電池モジュール100を収容した下段筐体1と、制御装置200を収容した上段筐体2とを有する。
【0034】
下段筐体1は、
図2に示すように、幅方向および奥行き方向よりも高さ方向の寸法が小さい直方体形状を呈する箱状の部材であり、上方が開口し収容空間を有するメインボックス11と、メインボックス11の上部開口を閉じるアッパーカバー12とを有する。アッパーカバー12は、メインボックス11の上部を閉塞する無底の箱形状を呈している。アッパーカバー12およびメインボックス11は、たとえば金属製の薄板をプレス加工等することによって形成されている。メインボックス11の
図2における紙面手前側の側面には、開口部11bが設けられている。アッパーカバー12の
図2における紙面手前側の側面には、開口部12bが設けられている。
【0035】
上段筐体2は、
図3に示すように、上面と紙面手前側の側面が開口した箱形状を呈しており、収容空間を有するアッパーボックス21と上面を閉じるトップカバー22と側面を閉じるサイドカバー23とを有する。アッパーボックス21、トップカバー22およびサイドカバー23は、たとえば金属製の薄板をプレス加工等することによって形成されている。サイドカバー23は、メインボックス11の開口部11b、アッパーカバー12の開口部12b、アッパーボックス21の開口部21bを閉止する部材であり、内側の面(内面)23aには、気密を保つためのシール部材23bが設けられている。シール部材23には、たとえば弾力性のある軟質のシリコンやフッ素樹脂等が用いられる。下部筐体1のアッパーカバー12の上面12aと、上部筐体2のアッパーボックス21の底面21aとは、離間している。
【0036】
下段筐体1内の電池モジュール100と上段筐体2内の制御装置200とは、ワイヤハーネス800(
図10参照)で接続されている。ワイヤハーネス800は、接続線850を含む複数本の配線を束ねて、たとえばストレートチューブ810で結束した組電線である。本発明に係るグロメット3は、下段筐体1と上段筐体2との間に配設されるワイヤハーネス800の固定および保護をするための部材であり、蓄電装置1000の紙面手前側の側面から下段筐体1と上段筐体2の間に取り付けられる。
【0037】
アッパーカバー12の上面12aには、ワイヤハーネス800を通す切り欠きであって、グロメット3を装着するための切り欠き部24が設けられている。アッパーボックス21の底面21aには、ワイヤハーネス800を通す切り欠きであって、グロメット3を装着するための切り欠き部25が設けられている。本実施の形態のように、1つのグロメット3が複数箇所に固定される場合、グロメット3の誤組防止のため、切り欠き部24と切り欠き部25とで形状を変えておくことが望ましい。また、1基の蓄電装置1000で複数のグロメット3を装着する場合、正しい場所にグロメット3を装着するために、場所によって切り欠き部24,25の形状を変えておくことが望ましい。
【0038】
図6および
図8,9は、グロメット3の外観斜視図であり、
図7は、2分割構造のグロメット3を開いた状態を示す斜視図である。グロメット3は、ゴムや弾力性を有する樹脂等のエラストマーからなる成型品であり、分割面40a,40bで分割された2つの本体部分30(30a,30b)が、薄肉板状、または膜状に形成されたヒンジ部31で連結されている。ヒンジ部31を屈曲させることで、2つの本体部分30a,30bを有するグロメット3を開閉できる。ヒンジ部31を屈曲させてグロメット3を閉じると、本体部分30aの分割面40aと本体部分30bの分割面40bとが当接する。
【0039】
グロメット3の外周には、切り欠き部24,25と係合する2つの係合溝32が設けられている。係合溝32は、ワイヤハーネス800の挿通方向と直交する方向に延在する。グロメット3を切り欠き部24,25に装着した際に、サイドカバー23の内面23aと対向するグロメット3の面を背面51と呼ぶ。
【0040】
グロメット3の内面には、グロメット3を閉じて2つの本体部分30a,30bでワイヤハーネス800を挟み込むように保持した際に、ワイヤハーネス800が挿通される配線溝33が設けられている。配線溝33からグロメット3の外側へ延出する部分でのワイヤハーネス800の曲がりを考慮して、配線溝33の延在方向の端部には、配線溝33の延在方向に沿って外側に向かうにつれて内径が大きくなるように面取りされた面取部33aが設けられている。本実施の形態では、グロメット3に配線溝33が2つ設けられている。
【0041】
配線溝33には、配線溝33の延在方向と直交する方向に、すなわち、ワイヤハーネス800の挿通方向と直交する方向に延在する内リブ41aが突設されている。本体部分30aの分割面40aには、配線溝33の内リブ41aの延在方向に沿って突設されたリブ41bが設けられている。本体部分30bの分割面40bにおいて、グロメット3を閉じると本体部分30aのリブ41bと対向する位置、すなわち、配線溝33の内リブ41aの延在方向の延長線上には、リブ41bが嵌合する溝41cが設けられている。内リブ41a、リブ41bおよび溝41cの配線溝33の延在方向に沿った配設位置は、係合溝32の配設位置と一致する。すなわち、内リブ41a、リブ41bおよび溝41cは、係合溝32が延在する面と同一の面内に設けられている。
【0042】
本体部分30aの分割面40aには、分割面40aに突設された突部である嵌合ボス35が設けられている。本体部分30bの分割面40bにおいて、グロメット3を閉じると本体部分30aの嵌合ボス35と対向する位置には、嵌合ボス35が嵌合する凹部である嵌合穴36が設けられている。
【0043】
本体部分30aには、グロメット3がヒンジ部31を中心に回動して開かないようにするための爪部34aが設けられている。そして、本体部分30bには、爪部34aに係止される係止部34bが設けられている。係止部34bを爪部34aに係止させることで、グロメット3は閉じた状態に保たれる。
【0044】
また、本体部分30には、ワイヤハーネス800の保持および後述する封止を確実に行う必要がある場合に、不図示の結束バンドによる締結がし易くなるように、結束バンド締結部52が設けられている。結束バンド締結部52は、本体部分30のヒンジ部31の近傍に設けられて、結束バンドを通すための貫通孔52aと、本体部分30の外周の溝部52bとを有する。
【0045】
図10は、グロメット3におけるワイヤハーネス800の保持状態を説明するための断面図であり、
図9におけるX−X断面を示している。ワイヤハーネス800が配設されていない状態でグロメット3を閉じると、内リブ41aは、ワイヤハーネス800の外径よりも内側に突出する。したがって、ワイヤハーネス800が配設された状態でグロメット3を閉じると、内リブ41aの先端部分は、ワイヤハーネス800の外周に圧接されて変形する。これにより、内リブ41aが配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間を封止する。なお、内リブ41aが設けられていない場所では、配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との間には隙間が設けられている。このように、本実施の形態では、配線溝33において、内リブ41aだけで配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間を封止するように構成することで、配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間の封止効果を向上させている。
【0046】
図11は、グロメット3の
図9におけるXI−XI断面における断面図であり、グロメット3をやや開いた状態を示している。このように、背面51および分割面40aが交差する角部42aと、背面51および分割面40bが交差する角部42bとを突き合わせてグロメット3を閉じた状態から
図11に示すように開くと、ヒンジ部31が図示左右方向に引っ張られる。すなわち、
図11に示す状態では、引っ張られたヒンジ部31が元に戻ろうとする復元力(弾性力)によって、本体部分30a,30bには、グロメット3を閉じようする力が働く。
【0047】
このように構成されるグロメット3を用いてワイヤハーネス800を下段筐体1および上段筐体2に固定する場合、グロメット3を閉じて2つの本体部分30a,30bの配線溝33でワイヤハーネス800の外周を挟み込むように保持する。このとき、ある程度以上ヒンジ部31を中心に本体部分30a,30bを回動させてグロメット3閉じていくと、上述したヒンジ部31の復元力によってグロメット3が自動的に閉じようとする。
【0048】
グロメット3が閉じられると、嵌合ボス35と嵌合穴36とが嵌合して、本体部分30a,30bが互いに分割面40a,40bと平行な方向にずれることが防止される。グロメット3を閉じて、係止部34bを爪部34aに係止させることで、グロメット3はワイヤハーネス800を挟み込んで閉じた状態に保たれる。なお、ワイヤハーネス800の保持および内リブ41aによる封止を確実に行う必要がある場合には、結束バンド締結部52に巻き付けた不図示の結束バンドでグロメット3を適宜締め付ければよい。
【0049】
次に、上述のようにしてワイヤハーネス800を挟み込んだグロメット3を
図4,5,12に示すように、切り欠き部24,25に装着する。なお、
図12は、切り欠き部24,25に装着したグロメット3の近傍を
図4,5における図示上方から見た図である。
図4や
図12に示すように、切り欠き部24,25にグロメット3を装着すると、グロメット3の背面51は、開口部12bの周囲のアッパーカバー12の側面12cや、
図4における紙面手前側でアッパーボックス21の底面21aから紙面上方に折り曲げられている折り曲げ部分21cと面一となる。なお、グロメット3が閉じられると、背面51は、凹凸のない平面となる。
【0050】
そして、サイドカバー23を装着すれば、
図13に示すようにシール部材23が背面51や、開口部11bの周囲のメインボックス11の側面、アッパーカバー12の側面12c、およびアッパーボックス21の折り曲げ部分21cの側面に当接する。これにより、下段筐体1および上段筐体2の側面の開口部分が閉止される。
【0051】
図13に示すように、切り欠き部25や切り欠き部24の図示左右方向の幅を切り欠き幅W1とし、本体部分30aの係合溝32の底部と本体部分30bの係合溝32の底部との距離を溝部厚さW2とする。本実施の形態では、内リブ41aによる配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間の封止効果の向上のために、切り欠き幅W1を溝部厚さW2よりも狭くすることが望ましい。
【0052】
上述したように、内リブ41aの配線溝33の延在方向に沿った配設位置が係合溝32の配設位置と一致している。したがって、切り欠き幅W1を溝部厚さW2よりも狭くすれば、切り欠き部24,25にグロメット3を装着することで内リブ41aをワイヤハーネス800の外周により一層密着できる。なお、ワイヤハーネス800を挟持することで溝部厚さW2が増すことが考えられる。そのため、切り欠き幅W1がワイヤハーネス800を挟持していない状態での溝部厚さW2と同等または、ワイヤハーネス800を挟持していない状態での溝部厚さW2より広くても、上述した作用効果を奏する。
【0053】
このように構成される蓄電装置1000およびグロメット3では、次の作用効果を奏する。
(1) 分割面40a,40bで分割された2つの本体部分30a,30bをヒンジ部31で連結し、2つの本体部分30a,30bのそれぞれに配線溝33を設けるようにグロメット3を構成した。そして、配線溝33に内リブ41aを突設するように構成した。グロメット3を閉じて、内リブ41aをワイヤハーネス800の外周に当接して変形させることでワイヤハーネス800がグロメット3で保持される。これにより、ワイヤハーネス800での配線の結束用にストレートチューブ810を用いても、内リブ41aでワイヤハーネス800を安定的に保持できるとともに、配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間を封止できる。したがって、コルゲートチューブと比べて外周の環状の凹凸がない分、外径を細くすることができるストレートチューブ810をワイヤハーネス800の外装に用いることができるので、ワイヤハーネス800や蓄電装置1000の小型化に資する。
【0054】
また、電池モジュール100から発生するガスが配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間を通って上段筐体2内に流入することを防止できるので、電池モジュール100から発生するガスによる制御装置200への影響を防止して、制御装置200の信頼性を向上できる。
【0055】
グロメット3を閉じて内リブ41aでワイヤハーネス800の外周を圧縮できれば、ワイヤハーネス800の外周の凹凸やワイヤハーネス800の径の増減に追従する。そのため、ワイヤハーネス800の外装の種類がストレートチューブ810でもコルゲートチューブでも適応可能である。したがって、グロメット3の汎用性が高まる。
【0056】
(2) 内リブ41aの配線溝33の延在方向に沿った配設位置が係合溝32の配設位置と一致するように構成した。これにより、切り欠き部24,25にグロメット3を装着することで内リブ41aをワイヤハーネス800の外周により一層密着でき、ワイヤハーネス800の保持および内リブ41aによる封止の信頼性を向上できる。
【0057】
(3) グロメット3が閉じられると、嵌合ボス35と嵌合穴36とが嵌合して、本体部分30a,30bが互いに分割面40a,40bと平行な方向にずれることが防止されるように構成した。これにより、切り欠き部24,25にグロメット3を装着する際にワイヤハーネス800を挟持した本体部分30a,30bが互いに分割面40a,40bでずれないので、切り欠き部24,25にグロメット3を装着する作業の作業性を向上できる。
【0058】
(4) グロメット3を閉じて、係止部34bを爪部34aに係止させることで、グロメット3がワイヤハーネス800を挟み込んで閉じた状態に保たれるように構成した。これにより、切り欠き部24,25にグロメット3を装着する際にワイヤハーネス800を挟持したグロメット3が開かないので、切り欠き部24,25にグロメット3を装着する作業の作業性を向上できる。
【0059】
(5) グロメット3に結束バンド締結部52を設けたので、不図示の結束バンドでグロメット3を適宜締め付けることで、ワイヤハーネス800の保持および内リブ41aによる封止の信頼性を向上できる。
【0060】
(6) 切り欠き部24,25にグロメット3を装着すると、グロメット3の背面51が、開口部12bの周囲のアッパーカバー12の側面12cや、アッパーボックス21の折り曲げ部分21cと面一となるように構成した。また、グロメット3が閉じられると、背面51が凹凸のない平面となるように構成した。また、サイドカバー23を装着すれば、
図13に示すようにシール部材23が背面51や、開口部11bの周囲のメインボックス11の側面、アッパーカバー12の側面12c、およびアッパーボックス21の折り曲げ部分21cの側面に当接するように構成した。これにより、下段筐体1および上段筐体2の側面の開口部分を閉止して、電池モジュール100から発生するガスが上段筐体2内に流入することを防止できるので、電池モジュール100から発生するガスによる制御装置200への影響を防止して、制御装置200の信頼性を向上できる。
【0061】
(7) グロメット3にヒンジ部31を設け、開閉可能なヒンジ構造としたので、筐体組立工程時にワイヤハーネス800を取り付け可能となる。これにより、たとえば、上述したように、グロメット3に配線溝33を2つ設ければ、異なるサプライヤから調達した2つのワイヤハーネス800を筐体組立工程時に1つのグロメット3で挟持でき、グロメット3の数を減らして省スペース化を図れる。
【0062】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、グロメット3での保持対象物がワイヤハーネス800であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、グロメット3での保持対象物が被覆電線の単線であってもよい。
【0063】
(2) 上述の説明では、ストレートチューブ810が用いられているワイヤハーネス800を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、外周に環状の凹凸を有するコルゲートチューブが用いられたワイヤハーネスであってもよい。
【0064】
(3) 上述の説明では、グロメット3に配線溝33が2つ設けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、グロメット3に配線溝33が1つ設けられていてもよく、グロメット3に配線溝33が3つ以上設けられていてもよい。
【0065】
(4) 上述の説明では、配線溝33には、配線溝33の延在方向に離間して2箇所に内リブ41aが突設されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、配線溝33の延在方向に離間して2箇所の内リブ41aのうちの1箇所を省略してもよい。また、配線溝33の延在方向に離間して3箇所以上に内リブ41aを突設してもよい。なお、いずれの場合であっても、少なくとも1箇所の内リブ41aの配線溝33の延在方向に沿った配設位置は、係合溝32の配設位置と一致していることが望ましいが、必須ではない。
【0066】
(5) 上述の説明では、内リブ41aの配線溝33の延在方向に沿った配設位置が係合溝32の配設位置と一致するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。内リブ41aによる配線溝33の内周とワイヤハーネス800の外周との隙間の封止効果の向上のために、内リブ41aの配線溝33の延在方向に沿った配設位置が係合溝32の配設位置と一致することが望ましいが、上記(4)で述べたように必須ではない。また、切り欠き部24,25にグロメット3を装着することによる上述した封止効果の向上が見込めるのであれば、配線溝33の延在方向に沿った配設位置が内リブ41aと係合溝32とで多少ずれていてもよい。
【0067】
(6) 上述の説明では、蓄電装置1000が電動車両に用いられる例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、蓄電装置1000を鉄道車両など、他の用途に用いてもよい。
【0068】
(7) 上述の説明では、グロメット3がゴムや弾力性を有する樹脂等からなる成型品であるが、本発明はこれに限定されない。少なくとも内リブ41aがゴムや弾力性を有する樹脂等で形成されていれば、他の部分を、たとえば弾力性に乏しい樹脂等で形成してもよい。
(8) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0069】
なお、本発明は、上記の各実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。