(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
−実施形態1−
以下、本発明の一実施の形態による電池パックを、図面を参照して詳細に説明する。
電池パック100は、電気自動車、ハイブリッド自動車等の電動車両に、電動機、照明、制御装置等の電源として搭載される。
図1は、本発明の一実施の形態による電池パックの外観斜視図であり、
図2は、
図1に図示された電池パックの分解斜視図である。
電池パック100は、制御装置10と、ダクト(冷却部材)20と、モジュールパック30とを備える。
モジュールパック30は、上部ケース40と下部ケース50とから構成されるケース部材60内に収納された複数個の電池モジュール70を備えている。上部ケース40と下部ケース50は、材質が金属の薄板をプレス加工して形成されている。
【0010】
下部ケース50は、矩形状の底面部51と、底面部51の長手方向の側縁を起立して形成された一対の側部52と、底面部51の短手方向の側縁を起立して形成された一対の端部53とを有し、底面部51と対向する上部が開口部54とされた、ボックス状に形成されている。一対の側部52の上端および一対の端部53の一方の上端には、水平方向に屈曲されたフランジ部55が形成されている。底面部51には、貫通孔56が、各側部52には貫通孔57が、それぞれ、長手方向に沿って所定間隔で設けられている。また、フランジ部55には、複数の貫通孔58が設けられている。
【0011】
上部ケース40は、矩形状の天面部41と、天面部41の長手方向の側縁を起立して形成された一対の側部42と、天面部41の短手方向の側縁を起立して形成された一対の端部43とを有し、天面部41と対向する下部が開口部(図示せず)とされた、ボックス状に形成されている。上部ケース40の開口部は、下部ケース50の開口部54とほぼ同一の形状・サイズを有している。上部ケース40の一対の側部42の下端および一対の端部43の一方の下端には、水平方向に屈曲されたフランジ部45が形成されている。フランジ部45には、複数の貫通孔48が設けられている。
【0012】
上部ケース40の天面部41には、絞り加工により隆起状に形成された、細長のほぼ矩形状の固定部46が、長手方向に沿って、所定間隔で配列されている。絞り加工により形成することにより固定部46の剛性を高くすることができる。各固定部46には、2つの貫通孔47が設けられている。上部ケース40と下部ケース50とは、上部ケース40のフランジ部45と、下部ケース50のフランジ部55とを接面させ、貫通孔48と貫通孔58に挿通される不図示の締結部材により固定される。
【0013】
電池モジュール70は、下部ケース50の底面部51上に長手方向に沿って、所定間隔で一列に配置されている。
図5は、電池モジュールの一実施の形態の模式図である。電池モジュール70は、アルミニウムや合成樹脂製の電池ケース71内に、例えば、リチウムイオン二次電池等の円筒形の二次電池セル75を複数個、内蔵している。電池ケース71は、中央ケース部を挟んで長手方向の側縁に一対の側板部を配置して構成される。二次電池セル75は、一方の側縁を取り付ける前に、中央ケース部内に短手方向に沿って平行となるように収納される。図示はしないが、各二次電池セル75の正・負極電極は、バスバーにより電気的に接続されている。電池ケース71の上部には、空気等の冷却気体を、電池ケース71内に導入する導入口72が形成されている。冷却気体の導出口は、図示はしないが、上部に対向する下部もしくは電池ケース71の長手方向の両端部または一端部に設けられている。
【0014】
制御装置10は、ケース部材60の上部ケース40の上方に配置されている。
図3は、
図1に図示された制御装置10の内部構造を示す斜視図であり、
図4は、
図1に図示されたモジュールケース30の上部ケース40を取り外した状態の平面図である。 制御装置10は、制御部用ケース11の内部に、セルコントローラを構成する複数の集積回路を収容している。制御装置10は、上位のバッテリコントローラからの指令により二次電池セル75の状態の管理および制御を行う。複数の二次電池セル75の状態の管理及び制御には、各二次電池セル75の電圧の計測、各二次電池セル75の蓄電量の調整などがある。制御装置10は電圧の計測を行うため、不図示の電圧センサを内蔵している。制御装置10は、
図4に図示されるように、接続線12により、下部ケース50内に配置された電池モジュール70に接続されている。
【0015】
ダクト20は、ケース部材60の上部ケース40の天面部41と制御装置10との間に配置されている。ダクト20には、
図1に図示されるように、制御装置10をケース部材60に取り付ける外部プレート90を挿通する開口部(切欠部)21が形成されている。図示はしないがダクト20の周縁部には、側面からほぼ垂直に折曲されたフランジ部が形成されており、フランジ部には、複数の貫通孔が設けられている。ダクト20は、フランジ部に設けられた貫通孔を挿通する不図示の締結部材により、上部ケース40の天面部41に固定される。
ダクト20の開口部21は、所定位置の固定部46Aに対応して形成されている。詳細は後述するが、外部プレート90がダクト20の開口部21内に配置された状態で、ダクト20は、内部プレート80と共に天面部41の所定位置の固定部46Aに共締めされる。ダクト20内には、冷却媒体の通路が形成されており、ダクト20の一端22側の導入口から導入された冷却媒体は、ダクト20の底部に設けられた不図示の排気口から
図5に図示された電池モジュール70の電池ケース71の導入口72に送られ、電池ケース71内部に導入されて二次電池セル75を冷却する。
【0016】
図2に図示されるように、下部ケース50内には、複数個(実施形態では4個)の内部プレート80が、下部ケース50の長手方向に沿って所定の間隔で取り付けられる。内部プレート80は、電池モジュール70の間に配置され、下部ケース50の剛性を向上すると共に、電池モジュール70の仕切り板としても機能を兼用している。上部ケース40の外部には、制御装置10を固定する1つの外部プレート90が取り付けられる。内部プレート80と外部プレート90とは、それぞれ、下部ケース50および上部ケース40よりも剛性の高い、換言すれば、板厚が大きい金属板をプレス加工して形成されている。
【0017】
図6(A)、(B)は、
図1に図示された下部ケースに内部プレートを取り付けた状態を示し、
図6(A)は上部側前方から観た斜視図であり、
図6(B)は上部側後方から観た斜視図である。また、
図7は、
図1に図示された上部ケースと下部ケースとの固定構造および上部ケースと下部ケースとの固定構造を示す拡大断面図である。また、
図12は、上部ケース40と、外部プレート90と制御装置10とを組み付ける状態を示す拡大斜視図である。各内部プレート80は、本体部81の上部側に上部取付部83、下部側に下部取付部82、両側部に側部取付部84が、本体部81に対して、それぞれ、ほぼ90度に折曲して形成されている。上部取付部83および下部取付部82それぞれには、複数の貫通孔85が設けられており、側部取付部84には、それぞれ、1つの貫通孔86(
図2参照)が設けられている。上部取付部83の裏面には、各貫通孔85と同軸上にナット62(
図7参照)が溶接等により接合されている。
【0018】
各内部プレート80は、側部取付部84を、それぞれ、下部ケース50の側部52の内面に接面させて、内部プレート80の貫通孔86および下部ケース50の側部52の貫通孔57に締結部材を挿通し、不図示のナットにより締結して下部ケース50に固定される。
各内部プレート80の下部取付部82は、内部プレート80の貫通孔85および下部ケース50の底面部51の貫通孔56に締結部材89を挿通し、ナット88により締結して下部ケース50に固定される。
天面部41の各固定部46に対応して配置された各内部プレート80は、所定位置の固定部46Aに対応して配置された内部プレート80を除いて、不図示の締結部材を天面部41の貫通孔47を挿通し、上部取付部83の裏面に接合されたナット62(
図7参照)に締結され、上部取付部83において天面部41に固定される。
【0019】
外部プレート90は、
図2および
図12に図示されるように、ベース部(下面側取付部)91と、ベース部91からほぼ垂直に屈曲される2つの支持部92a、92bを有する。各支持部92a、92bには、ベース部91と反対方向に向けて、支持部92a、92bに対し、ほぼ90度に折曲された上面側取付部93が形成されている。上面側取付部93には複数の貫通孔95が設けられている。また、ベース部91には、貫通孔47に対応する位置に貫通孔97が設けられている。
【0020】
外部プレート90の支持部92aは、上部ケース40の天面部41の所定の位置の固定部46Aに対応して配置され、この位置で、外部プレート90は、上部ケース40の天面部41に固定される。ダクト20は、開口部21内に支持部92aを挿通した状態で、上部ケース40に固定される。この状態で、外部プレート90の支持部92bが、ダクト20の側方に位置するように、外部プレート90の支持部92aと支持部92bの間隔が設定されている。
【0021】
制御装置10の制御部用ケース11には、貫通孔14が設けられたフランジ部13が形成されている。制御装置10は、フランジ部13の貫通孔14および外部プレート90の貫通孔95を挿通する締結部材により、外部プレート90に取り付けられる。なお、制御装置10は、フランジ部13と反対側の側面の下部が、上部ケース40に取り付けられた支持ブラケット19(
図3参照)に、不図示の締結部材により固定される。
【0022】
図7を参照して、内部プレート80および外部プレート90を上部ケース40に固定する構造を説明する。
図2において、上部ケース40を下部ケース50上に配置し、上部ケース40の周縁部の貫通孔48と下部ケース50の周縁部の貫通孔58とを位置合わせする。これにより、
図7に図示されるように、上部ケース40の所定の位置の固定部46Aに設けられた貫通孔47(
図2参照)と、内部プレート80の上部取付部83に設けられた貫通孔85(
図6参照)とが位置合せされる。位置合せにずれがある場合は、上部ケース40を変位して、上部ケース40の所定の位置の固定部46Aの貫通孔47の中心を内部プレート80の貫通孔85の中心とほぼ同軸にする。上述した通り、内部プレート80の上部取付部83には、ナット62が接合されている。
【0023】
外部プレート90を上部ケース40の固定部46A上に配置して、外部プレート90のベース部91に設けられた貫通孔97を、上部ケース40の固定部46Aの貫通孔47に位置合せする。つまり、外部プレート90のベース部91に設けられた貫通孔97の中心、上部ケース40の固定部46Aに設けられた貫通孔47の中心および内部プレート80の上部に設けられた貫通孔85の中心は、ほぼ同軸上に位置する。
【0024】
この状態で、外部プレート90のベース部91を、スポット溶接等により上部ケース40の所定の位置の固定部46Aに接合する。溶接部に照射される熱エネルギーにより外部プレート90のベース部91が溶融し、天面部41の固定部46Aに接合される。この状態で、ボルト61を、外部プレート90の貫通孔97、上部ケース40の固定部46Aの貫通孔47および上部取付部83の貫通孔85を挿通し、ナット62に締結する。これにより、上部ケース40の固定部46Aに外部プレート90および内部プレート80が固定される。
すなわち、内部プレート80および外部プレート90は、同一の組付け工程で上部ケース40の天面部41に締結される。
【0025】
この後、上部ケース40の周縁部の各貫通孔48と下部ケース50の周縁部の各貫通孔58とに締結部材を挿通し、ナット等を用いて締結して、上部ケース40と下部ケース50とを一体的に組み付ける。この工程は、上部ケース40に内部プレート80および外部プレート90を締結する前に行うこともできる。
そして、ダクト20を上部カバー40の天面部41上に配置して、締結部材により天面部41に固定し、制御装置10を締結部材により、外部プレート90の上面側取付部93に固定すると、
図1に図示される電池パック100が作製される。
【0026】
上記一実施の形態の電池パック100によれば、下記の効果を奏する。
(1)下部ケース50内に、下部ケース50における一対の側部52、底面部51および上部ケース40の天面部41に締結される複数個の内部プレート80を設けた構造を採用した。内部プレート80は、本体部81が、下部ケース50の底面部51と上部ケース40の天面部41にほぼ垂直に配置されている。このように、ケース部材60の内部において、ケース部材60の上下方向および水平方向を内部プレート80により連結するので、ケース部材60の剛性が高まる。これにより、板厚が大きく、重量が大きい支持用プレートを用いる必要がなくなり、軽量化を図ることができる。
【0027】
(2)ケース部材60は、内部プレート80により剛性が高い構造とされているので、電池パック100の上段側に配置された制御装置10に振動や衝撃が発生した場合でも、衝撃や振動を下段側のケース部材60に分散させることができる。このため、制御装置10の振動が増大され、制御装置10の内部電子回路やケース部材60に大きな負荷がかかることを防止することができる。
【0028】
(3)上部ケース40に外部プレート90を固定し、外部プレート90に制御装置10を固定した。外部プレート90は、制御装置10および上部ケース40の天面部41にほぼ垂直な支持部92a、92bを有しており、制御装置10および上部ケース40の天面部41との間にダクト20を介装する構造とした。このように、制御装置10と上部ケース40の天面部41との間のスペースにダクト20を配置するので、高密度実装となり、電池パック100の小型化を図ることができる。
【0029】
(4)内部プレート80は、上部ケース40および下部ケース50とは独立した部材として形成されており、上部ケース40や下部ケース50に形成する貫通孔の位置を変更するだけで、取付け個数、取付け位置を任意に変更することができる。換言すれば、共用性がある。このため、電池モジュール70のサイズ、収容個数、レイアウト等が異なる場合でも、共用することができる。これにより、開発期間の短縮、金型費用の節減を図ることが可能となり、コストを削減することができる。
【0030】
(5)上部ケース40の天面部41に絞り加工を施して固定部46Aを形成したので、内部プレート80および外部プレート90の締結部分の剛性を向上することができる。
【0031】
(6)内部プレート80および外部プレート90を、同一の組付け工程で行うことができる構造とした。このため、作業効率がよく、また、ケース部材60の剛性を高くすることができる。
【0032】
−実施形態2−
図8〜
図11を参照して、本発明による電池パックの実施形態2を説明する。
図8は、本発明による電池パックの実施形態2の外観斜視図であり、
図9は、
図8に図示された電池パックを側面から観た図である。
図10は、
図8に図示された電池パックのダクトの外観斜視図であり、
図11は、
図8に図示された電池パックの各ケース部材の固定構造を示す拡大断面図である。
図8に図示される電池パック200は、ダクト20Aが取り付けられたモジュールパック30が、複数層(実施形態では3層)に積層されて構成されている。
モジュールパック30は、実施形態1に示したものと同一である。実施形態1に示したダクト20が1つの開口部21を有していたのに対し、実施形態2では、ダクト20Aは複数個(実施形態では4個)の開口部21を有している。
【0033】
実施形態2の電池パック200では、最上層のモジュールパック30を除き、各モジュールパック30の上部ケース40の天面部41に外部プレート90が取り付けられている。外部プレート90は、各上部ケース40の天面部41に形成されたすべて(4個)の固定部46において、内部プレート80と共に天面部41に共締めされている。各外部プレート90は、その支持部92aがダクト20Aの対応する開口部21内に挿通され、上段側のモジュールパック30の下部ケース50に連結される。連結は、下部ケース50に不図示の貫通孔を形成し、該貫通孔と外部プレート90の上面側取付部93に設けられた貫通孔95にボルトを挿通し、ボルトの挿入側と反対側からナット64を螺合して締結することによりなされる。外部プレート90とモジュールパック30との連結を繰り返すことにより、モジュールパック30を何層にも積層することができる。
なお、実施形態2においては、外部プレート90として、支持部92aのみを有し、支持部92bを有していない構造とすることができる。また、ナット64を、外部プレート90の上面側取付部93の下面に接合しておいてもよい。
【0034】
実施形態2の電池パック200においても、下部ケース50に内部プレート80が取り付けられ、上部ケース40の天面部41に内部プレート80と外部プレート90が共締めされる。従って、実施形態2の電池パック200も実施形態1の電池パック100と同様な効果を奏する。
【0035】
なお、実施形態1と実施形態2とを組み合わせ、モジュールパック30とダクト20Aとが複数層積層され、最上段に、ダクト20と制御装置10とが積層された電池パックとすることもできる。
【0036】
上記実施形態では、ダクト20は、外部プレート90を挿通する開口部21が中央部に設けられた構造として例示した。しかし、開口部21は、外部プレート90の一側縁側に、外部に開放をされる切欠部として形成する構造としてもよい。また、ダクト20は、折り返し部を有するU字形状に延在された構造とすることもできる。
【0037】
上記実施形態では、電池モジュール70を冷却する部材を、冷却気体を供給するダクト20として例示した。しかし、冷却部材として、冷却液体を循環させる冷却路が内部に配設された冷却プレートを用いることもできる。
【0038】
上記実施形態では、上部ケース40の天面部41に各内部プレート80の上部取付部83に対応して絞り加工により固定部46を形成した構造として例示した。しかし、上部ケース40の天面部41には、固定部46を絞り加工により形成しなくてもよい。
【0039】
内部プレート80には、上部取付部83のみでなく、側部84や下面取付部82にもナットを接合しておいてもよい。
【0040】
下部ケース50内に配設する内部プレート80は、電池モジュール70間ごとに配設する必要はない。また、各電池モジュール70間に複数の内部プレート80を配設してもよい。各内部プレート80は、下部ケース50の側部52に結合する側部取付部84を有していなくてもよい。
【0041】
上記実施形態では、電池モジュール70は、円筒形の二次電池セル75を有するものとして例示した。しかし、電池モジュール70として、角形の二次電池セルを有するものとしてもよい。また、二次電池セル75は、リチウムイオン電池以外のニッケル水素電池などの他の電池セルとしてもよい。
【0042】
以上説明した電池パック100、200を、他の電動車両、例えばハイブリッド電車などの鉄道車両、バスなどの乗合自動車、トラックなどの貨物自動車、バッテリ式フォークリフトトラックなどの産業車両などの車両用電源装置に利用することもできる。
【0043】
また、電池パック100、200を、コンピュータシステムやサーバシステムなどに用いられる無停電電源装置、自家用発電設備に用いられる電源装置など、電動車両以外の電源装置を構成する蓄電装置にも適用することもできる。
【0044】
その他、本発明の電池パック100、200は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能である。