(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記媒体が前記搬送路の搬送方向と直交する方向に設置されている規制部と前記媒体との間の離間距離または前記規制部と前記媒体との間のなす角度に基づいて、前記媒体の位置ずれ量を演算する演算部、
を備える請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の媒体搬送装置。
前記テーパ部のテーパ角度と前記演算部が演算した前記媒体の位置ずれ量とに基づいて、前記第1のローラにより前記媒体を搬送させる搬送量を決定する搬送量決定部を備え、
前記搬送制御部は、前記搬送量決定部が決定した搬送量に基づいて、前記第1のローラの制御を行う、
請求項4記載の媒体搬送装置。
前記第1のローラは前記搬送路に直交する方向に2箇所設けられ、当該2箇所に設けられた前記第1のローラのテーパ部のテーパ角度は前記媒体の位置ずれを補正する方向と反対方向に向けて小さくなる、
請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の媒体搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<自動取引装置の全体構成の一例>
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、自動取引装置1の全体構成を示している。自動取引装置1は、
図1の例には限定されない。自動取引装置1は、金融取引を行う装置として、例えば銀行や店舗等に設置されている。
【0013】
自動取引装置1は、通帳挿入部2とカード挿入部3と紙幣投入出口4と硬貨投入出口5と操作部6とを備えている。通帳挿入部2は、通帳を挿入するための挿入口である。カード挿入部3は、キャッシュカードやクレジットカード等のカードを挿入するための挿入口である。通帳およびカードは、媒体の一例である。
【0014】
紙幣投入出口4は、紙幣の投入および取り出しを行うための部位である。硬貨投入出口5は、硬貨の投入および取り出しを行うための部位である。操作部6は、自動取引装置1を用いて取引を行う者(以下、操作者と称する)が、金融取引のための所定の操作を行うための装置である。
【0015】
例えば、操作部6はタッチパネルであってもよい。操作者は、操作部6(タッチパネル)に表示された情報に基づいて、取引種別の選択や暗証番号の入力、取引金額の指定等を行う。なお、別個に表示装置を設ければ、操作部6は、プッシュボタンであってもよい。
【0016】
<通帳読取装置の一例>
以下、媒体は通帳であるものとして説明する。ただし、媒体は通帳には限定されない。媒体はカード等であってもよい。
図2は、通帳7に対して所定の処理を行う通帳処理装置8の一例を示している。例えば、通帳処理装置8は、通帳7に形成されている所定の情報を読み取る。また、通帳処理装置8は、通帳7に対する印字等の処理を行う。通帳処理装置8は、自動取引装置1の内部に備えられる。通帳処理装置8は、媒体搬送装置の一例である。
【0017】
通帳処理装置8は、通帳挿入部2が通帳7を吸入した位置から自動取引装置1の奥行き方向に延在する搬送路10を備える。吸入された通帳7は搬送路10を搬送される。搬送路10の上下には、複数のローラが備えられている。これらのローラは、その回転駆動力により通帳7を搬送する。例えば、図示しないモータ等により、ローラに回転駆動力が伝達される。
【0018】
なお、搬送路10のうちローラの部位は開口された状態となっている。従って、ローラは搬送路10と接触しない。そして、ローラは開口された部位から僅かに突出させてもよい。これにより、ローラは通帳7と直接的に接触する。
【0019】
実施形態の通帳処理装置8は、第1のローラ11と第2のローラ12との2種類のローラを有している。第1のローラ11は、テーパ部を有する搬送ローラである。第2のローラ12は、円柱状の搬送ローラである。なお、搬送路10の上下に配置されるローラの種類は3種類以上であってもよい。
【0020】
図3(A)は、第1のローラ11の一例を示し、
図3(B)は、第2のローラ12の一例を示している。
図3(A)は、通帳7に対して上下に配置される第1のローラ11Uおよび11Dを示している。第1のローラ11Uは、通帳7に対して上側に配置されるローラである。第1のローラ11Dは、通帳7に対して下側に配置されるローラである。以下、上側の第1のローラ11Uと下側の第
1のローラ11Dとを総称して、第1のローラ11と称することもある。
【0021】
第1のローラ11は、円柱部13とテーパ部14とを有する。円柱部13は、円柱の形状をした部位である。テーパ部14は、断面の円の径が連続的に小さくなる形状をした部位である。円柱部13とテーパ部14とは連続している。円柱部13とテーパ部14とは別個に生成して、両者を結合してもよいし、第1のローラ11の形状を一体成型してもよい。
【0022】
図3(B)は、通帳7に対して上下に配置される第2のローラ12Uおよび12Dを示している。第2のローラ12Uは、通帳7に対して上側に配置されるローラである。第2のローラ12Dは、通帳7に対して下側に配置されるローラである。上側の第2のローラ12Uと下側の第2のローラ12Dとを総称して、第2のローラ12と称することもある。
【0023】
第2のローラ12は、円柱の形状をしたローラである。第2のローラ12の断面の円の径は、第1のローラ11の円柱部13の断面の円の径と等しくすることが好ましい。第2のローラ12の形状は、完全な円柱でなくてもよい。
【0024】
第1のローラ11および第2のローラ12は弾性を有する可撓性部材を適用してもよい。従って、第1のローラ11および第2のローラ12に対して押圧力が作用したとき、第1のローラ11および第2のローラ12は変形する。
【0025】
図2の一例に示すように、第1のローラ11は搬送路10の搬送方向に沿って2箇所、第2のローラ12は搬送路10の搬送方向に沿って3箇所配置されている。また、通帳処理装置8には、搬送路10に沿って、磁気読取部21とラインセンサ22と印字部23とプラテン24と捲り部25とが配置されている。
【0026】
磁気読取部21は、通帳7に形成されている磁気情報を読み取る。磁気情報は、MS(Magnetic Stripe)とも称される。磁気情報は、通帳7に関する情報を含む。磁気読取部21は磁気情報を読み取り、通帳7に関する情報を取得する。
【0027】
ラインセンサ22には、光学式センサ(例えば、CCD(Charge Coupled Device)素子)が一例に配列されている。ラインセンサ22は、搬送路10の上部に配置されており、搬送路10を搬送される通帳7を撮像する。ラインセンサ22は、通帳7に形成された情報を撮像する。
【0028】
印字部23は、通帳7に対して印字を行う。例えば、金融取引を行った結果を通帳7に印字する。印字部23は、印字ヘッドとも称される。印字部23が通帳7に対して印字を行うときには、通帳7に対して印字圧力が作用する。このため、印字部23の印字圧力を支えるプラテン24が通帳7の下部に設けられる。プラテン24は、例えばゴム系の樹脂材を適用してもよい。
【0029】
通帳7は、開いた状態で搬送路10を搬送される。捲り部25は、通帳7の次のページを開くために設けられる。通帳処理装置8は、回収部26を有している。回収部26は、例えば、自動取引装置1から排出された通帳7の取り忘れ等が発生した場合、通帳7を吸入して回収する。吸入された通帳7は、回収経路27を経由して、回収部26に回収される。
【0030】
コントローラ28は、実施形態の通帳処理装置8の各種制御を行う。コントローラ28は、ファームウェア等のソフトウェアを実行することにより、通帳処理装置8に対する各種制御を実現してもよい。コントローラ28は、通帳処理装置8の内部ではなく、自動取引装置1の他の部位に設けられていてもよい。例えば、自動取引装置1の全体を制御する制御部に、コントローラ28の機能を組み込んでもよい。
【0031】
図2の一例に示すように、第1のローラ11は、ラインセンサ22よりも通帳挿入部2の側に配置されている。第2のローラ12は、ラインセンサ22を挟んで、第1のローラ11とは反対側に配置されている。
【0032】
図4は、通帳処理装置8の上面図の一例を示している。
図4のX方向は、通帳7が搬送される搬送方向であり、Y方向は、搬送方向に直交する方向である。
図4の例に示されるように、第1のローラ11は円柱部13とテーパ部14とを有している。第2のローラ12は円柱の形状をしている。
【0033】
通帳処理装置8は、X方向に延在する規制部31を有している。規制部31は、突き当て部とも称される。規制部31は、搬送路10を搬送される通帳7のY方向の動きを規制する。適正な位置で通帳7が搬送される場合、通帳7は規制部31に沿ってX方向に搬送される。規制部31は、搬送される通帳7のY方向の動きを規制できればよい。例えば、規制部31は、通帳7のY方向の動きを規制する壁やレール状の部材等であってもよい。
【0034】
また、
図4の例に示すように、捲り部25は押し上げ部材32を有している。押し上げ部材32は、通帳7のページに押し当て力を作用させて、通帳7のページを跳ね上げることにより、ページ捲りを行う。押し上げ部材32は、ゴム等の樹脂材を適用してもよい。
【0035】
図4の例に示すように、磁気読取部21を挟んだX方向の2つの第1のローラ11の間は、補正区間33である。後述するように、通帳7に位置ずれが発生している場合、補正区間33で位置ずれの補正が行われる。
【0036】
<コントローラの一例>
図5は、コントローラ28の機能ブロックの一例を示している。
図5の例のコントローラ28は、画像処理部41と演算部42と検出部43と搬送制御部44と搬送量決定部45とを備える。
【0037】
画像処理部41はラインセンサ22が撮像した信号を入力し、入力した信号に基づいて画像生成を行う。画像処理部41は、搬送路10を搬送される通帳7の画像を生成し、通帳7の画像に対して画像処理を行う。
【0038】
演算部42は、画像処理部41が画像処理した通帳7の画像に基づいて、通帳7が適正な位置から位置ずれしている位置ずれの量(以下、位置ずれ量と称する)を演算する。搬送路10における通帳7が理想的な適正位置にある場合には、位置ずれ量はゼロになる。搬送路10における通帳7が理想的な適正位置にない場合、位置ずれ量はゼロではない値となる。
【0039】
検出部43は、通帳7が適正な位置にあるか否かを検出する。検出部43には、予め位置ずれ量についての許容範囲が設定されている。検出部43は、通帳7の位置ずれ量が予め設定された許容範囲を超過している場合に、通帳7が適正な位置にないことを検出する。
【0040】
一方、検出部43は、通帳7の位置ずれ量が許容範囲内である場合には、通帳7が適正な位置であることを検出する。従って、通帳7が理想的な適正位置にない場合でも、位置ずれ量が許容範囲内であれば、検出部43は通帳7が適正な位置にあると判定する。
【0041】
搬送制御部44は、通帳7の搬送を制御する。搬送制御部44は、第1のローラ11および第2のローラ12の回転制御を行うことにより、通帳7の搬送を行う。例えば、第1のローラ11および第2のローラ12がモータの回転駆動力により回転する場合、搬送制御部44はモータの回転を制御する。
【0042】
搬送量決定部45は、補正区間33で通帳7を搬送する量を決定する。検出部43が通帳7の位置ずれを検出した場合、搬送制御部44は通帳7を補正区間33において搬送させる。これにより、通帳7の位置ずれが補正される。搬送量は位置ずれ量に応じて変化する。
【0043】
第1のローラ11による通帳7の搬送量が多くなると、補正量が多くなる。従って、通帳7の位置ずれ量が多い場合には、搬送量を多くすることで、通帳7の位置ずれが補正される。
【0044】
一方、第1のローラ11による通帳7の搬送量が少なくなると、補正量が少なくなる。従って、通帳7の位置ずれ量が少ない場合には、少ない搬送量で、通帳7の位置ずれが補正される。従って、搬送量決定部45は、検出部43が検出した位置ずれ量に基づいて、通帳7の搬送量を決定する。
【0045】
搬送制御部44は、搬送量決定部45が搬送量を決定した後に、通帳7を第1のローラ11の位置に移動させる。そして、搬送制御部44は、第1のローラ11を回転制御することで、通帳7は補正区間33で第1のローラ11により搬送される。この搬送は、通帳7の位置ずれを補正するための搬送である。
【0046】
搬送制御部44は、通帳7の位置ずれを補正するための搬送を行うとき、第1のローラ11を高速に回転させてもよい。第1のローラ11を高速に回転させることで、通帳7の位置ずれの補正の短時間化を図ることができる。この場合、搬送制御部44は、第2のローラ12の回転速度よりも第1のローラ11の回転速度を高速にするように制御する。
【0047】
ただし、第1のローラ11の回転速度は任意の速度であってもよい。第1のローラ11の回転速度が低速な場合、回転速度が高速な場合と比較して、通帳7の位置ずれの補正にかかる時間は長くなる。しかし、通帳7の位置ずれの補正を行うことはできる。従って、第1のローラ11を高速に回転させることは必須ではない。
【0048】
<通帳の位置ずれの説明>
ラインセンサ22は、通帳7のバーコード7Bを撮像する。ラインセンサ22が撮像したバーコード7Bの信号は、コントローラ28の画像処理部41に入力される。画像処理部41は、ラインセンサ22からの信号に基づいて、所定の画像処理を行う。これにより、通帳7の画像が生成される。
【0049】
図6は、通帳7が適正な位置で搬送されている例を示している。
図6の例に示すように、通帳7は開かれた状態で搬送される。通帳7にはバーコード7Bが形成されている。バーコード7Bは、通帳7のページ数を示す。通帳7には複数の行7Lも形成されている。なお、
図6乃至
図8において、搬送路10には網掛けを施してある。
【0050】
通帳7に形成されたバーコード7Bの画像に基づいて、通帳7のページ数が認識される。また、通帳7の行7Lの画像に基づいて、何れの行7Lまで印字がされているかが認識される。印字部23は、印字がされた行7Lの次の行7Lに対して、金融取引をした結果の情報を印字する。
【0051】
従って、ラインセンサ22は、本来的には、バーコード7Bの画像に基づく通帳7のページ数および印字された行7Lの認識を行うために設置される。実施形態では、このラインセンサ22は、通帳7の位置ずれを検出するために利用される。従って、通帳7の位置ずれを検出するための専用の装置を設置しなくてもよい。ただし、通帳7の位置ずれを検出する装置を別途に設けることを排除するものではない。
【0052】
図6乃至
図8に示すように、搬送路10の色と通帳7の色とは異なる。従って、ラインセンサ22により撮像され、画像処理部41で生成される画像のうち、搬送路10の画素濃度(または画素の輝度)と通帳7の画素濃度とは異なる。
【0053】
この画素濃度の差に基づいて、画像処理部41は、通帳7の側端部7Sを認識できる。従って、画像処理部41は、画度濃度の差に基づいて、通帳7の側端部7Sが規制部31に沿っているか否かを認識できる。
【0054】
通帳7は、規制部31に沿ってX方向(搬送方向)に向けて搬送される。
図6の例の状態では、通帳7の側端部7Sが規制部31に沿っている。つまり、側端部7Sは規制部31に倣っている。この状態は、通帳7が適正な位置で搬送されていることを示す。
【0055】
図7は、通帳7が適正でない位置で搬送される例を示している。
図7の例では、通帳7は規制部31から離間している。また、通帳7の側端部7Sと規制部31との間の距離はL1である。つまり、通帳7は、適正な位置から距離L1だけ搬送方向に直交する方向(Y方向)に位置ずれを生じている。
【0056】
例えば、自動取引装置1がサイズの異なる複数種類の通帳7を取り扱う場合に、位置ずれを生じることがある。金融機関の合併等により、自動取引装置1がサイズの異なる複数種類の通帳7を取り扱うことがある。
【0057】
自動取引装置1がサイズの異なる複数種類の通帳7を取り扱う場合、通帳挿入部2は最もサイズの大きい通帳7を基準にして設計される。このとき、サイズの小さい通帳7が通帳挿入部2に挿入されることもある。サイズが小さい通帳7が挿入されると、適正な位置から吸入されないことがある。
【0058】
図8は、規制部31に対して通帳7が斜行している場合の例を示している。通帳7が斜行している場合も、通帳7は、搬送方向に直交する方向(Y方向)に位置ずれを生じている。規制部31と通帳7との間の最大離間距離はL1であるものとする。なお、
図7の距離L1と
図8の最大離間距離L1とは同じ距離としているが、異なる距離であってもよい。また、規制部31と通帳7の側端部7Sとのなす角度はθであるものとする。
【0059】
画像処理部41は、最大離間距離L1を認識することもでき、角度θを認識することもできる。なお、通帳7の側端部7Sの長さをL2とすると、「L1=L2*sinθ」となる。上述したように、通帳7が通帳挿入部2の適正な位置から挿入されないと、搬送方向(X方向)に対して傾斜した状態で、通帳7が搬送される場合がある。
【0060】
<位置ずれ補正の説明>
図9(A)は、上側の第1のローラ11Uおよび下側の第1のローラ11Dの斜視図の一例を示している。また、
図9(B)は、
図9(A)のA−A断面図を示している。上述したように、第1のローラ11は、円柱部13とテーパ部14とを有している。
【0061】
上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとの間には、僅かにギャップが形成されている。これにより、上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとは接触しない。つまり、
図9の状態においては、上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとは空転する。
【0062】
図10(A)は、
図9(B)の状態から、通帳7が上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとの間に挟まれている状態を示している。つまり、通帳7は第1のローラ11の位置で搬送されている。
【0063】
上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとの間に形成されたギャップは通帳7の厚みより小さいものとする。従って、上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとの間に通帳7が挟み込まれた状態になると、上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとにより通帳7に対して上下から押圧力が作用する。
【0064】
上述したように、第1のローラ11は弾性を有する可撓性部材である。このため、通帳7に対する押圧力に反発する力が第1のローラ11にも作用し、第1のローラ11は変形する。
【0065】
第1のローラ11のうち円柱部13は通帳7に対して強い押圧力F1を作用させる。このため、円柱部13に対しては押圧力F1に対応する強い反発力が作用する。この反発力により、円柱部13は断面が楕円形状になる。
【0066】
第1のローラ11のうちテーパ部14は通帳7に対して押圧力F2を作用させる。テーパ部14は円柱部13よりも断面の径が小さい。よって、押圧力F2は押圧力F1よりも弱くなる。このため、テーパ部14に対しては、断面の径が小さくなる方向に向けて連続的に反発力が弱くなる。
【0067】
図10(A)は、押圧力F2の反発力の作用により、第1のローラ11のうちテーパ部14の部位が略円柱になっている例を示している。従って、通帳7が上下の第1のローラ11により挟まれた状態になると、円柱部13はテーパ部14よりも大きく変形する。
【0068】
図10(B)は、通帳7のうち、円柱部13に接触している部位(以下、第1の接触部位13Aと称する)とテーパ部14に接触している部位(以下、第2の接触部位14Aと称する)との一例を示している。
【0069】
円柱部13に対しては、強い押圧力F1が作用する。これにより、通帳7の搬送方向(X方向)における第1の接触部位13Aは広くなる。従って、通帳7における第1の接触部位13Aに対しては、搬送方向(X方向)に強い張力T1が作用する。
【0070】
一方、テーパ部14に対しては、押圧力F1より弱い押圧力F2が作用する。これにより、通帳7の搬送方向における第2の接触部位14Aは広くなる。従って、通帳7における第2の接触部位14Aに対しては、搬送方向に張力T1より弱い張力T2が作用する。
【0071】
つまり、押圧力F1と押圧力F2との差に基づいて、通帳7における第1の接触部位13Aと第2の接触部位14Aとに張力差Tが生じる。この張力差TはY方向のベクトル成分の張力TYを有している。
【0072】
Y方向には、2箇所に第1のローラ11が配置されている。そして、Y方向の2箇所の第1のローラ11のテーパ部14は、規制部31とは反対方向に向けて、断面の円の径が小さくなる。つまり、テーパ部14のテーパ角度は、通帳7を補正する方向と反対方向に向けて小さくなる。
【0073】
従って、
図10(B)の例に示すように、2箇所の第1のローラ11により、通帳7に対して2倍の張力TYが作用する。以上の張力TYの作用により、通帳7を第1のローラ11により搬送すると、通帳7は規制部31に向けて移動する。
【0074】
張力TYは、テーパ部14のテーパ角度によって変化する。テーパ角度が小さいと、通帳7に対して作用する押圧力の差が小さくなるため、張力TYは小さくなる。一方、テーパ部14のテーパ角度が大きいと、通帳7に対して作用する押圧力の差が大きくなるため、張力TYも大きくなる。
【0075】
ただし、テーパ部14のテーパ角度が過剰に大きいと、上側の第1のローラ11Uと下側の第1のローラ11Dとの間に通帳7が挟まれた状態のときに、テーパ部14の部位は通帳7と接触しなくなる。このため、強い張力TYが通帳7に対して作用しなくなる。従って、テーパ部14のテーパ角度は、強い張力TYが作用するように設計されることが好ましい。
【0076】
張力TYは、第1のローラ11が通帳7に対して作用させる。従って、強い張力TYを通帳7に対して作用させるためには、第1のローラ11は、密着性の強い素材を使用してもよい。例えば、第1のローラ11の素材にゴム等の樹脂材を適用すると、弾性を有し、且つ通帳7に対する密着力を強くすることができる。
【0077】
図11(A)は、通帳7が規制部31に沿っていない状態を示している。つまり、通帳7は適正な位置で搬送されていない。通帳7に位置ずれが生じていることを検出部43が検出した場合には、搬送制御部44は、通帳7を第1のローラ11の位置まで搬送する。
【0078】
そして、搬送制御部44は、通帳7を第1のローラ11により搬送させるように制御する。第1のローラ11により通帳7が搬送されると、通帳7に張力TYが作用するため、通帳7は規制部31に向けて移動する(図中の矢印)。
【0079】
通帳7の規制部31に向けた移動量(Y方向の移動量)は、第1のローラ11により通帳7が搬送される搬送量に応じて変化する。つまり、第1のローラ11により通帳7が搬送される搬送量が多くなるほど、通帳7の規制部31に向けた移動量が多くなる。
図11(B)は、張力TYの作用により、通帳7が規制部31の位置まで移動した状態の一例を示している。これにより、通帳7は適正な位置に補正される。
【0080】
図12の例は、磁気読取部21を挟んだ4つの第1のローラ11により、通帳7が往復搬送されている状態の一例を示している。なお、
図12は側面図であり、2つの第1のローラ11が示されているが、紙面に直交する方向にそれぞれ2つの第1のローラ11が配置されている。
【0081】
演算部42は、画像処理部41が画像処理した結果に基づいて、通帳7の位置ずれ量を得る。搬送量決定部45は、通帳7の搬送量に対応する位置ずれ量を認識しており、演算部42が演算した位置ずれ量に基づいて、第1のローラ11により搬送される通帳7の搬送量を決定する。
【0082】
搬送制御部44は、通帳7を第1のローラ11の位置に搬送した後に、搬送量決定部45が決定した搬送量に基づいて、通帳7を第1のローラ11を搬送させる。このとき、搬送制御部44は、第1のローラ11を制御して、通帳7が往復搬送されるように制御する(
図12の矢印)。
【0083】
例えば、通帳7の位置ずれ量が大きい場合、位置ずれ補正を行うために第1のローラ11による通帳7の搬送量が多くなる。このため、搬送制御部44は、補正区間33で通帳7を複数回往復させるように第1のローラ11を制御する。これにより、通帳7の位置ずれが補正される。
【0084】
搬送制御部44は、通帳7の位置ずれを補正するときに、第1のローラ11の回転速度を第2のローラ12の回転速度より高速にすることが好ましい。第2のローラ12の回転速度は通帳7を搬送する通常の搬送速度に対応している。
【0085】
従って、搬送制御部44が第1のローラ11の回転速度を通常の搬送の回転速度よりも高速となるように制御することで、通帳7は高速に第1のローラ11の位置で往復搬送される。これにより、通帳7の位置ずれの補正にかかる時間を短くすることができる。
【0086】
図13は、通帳7に位置ずれを生じている場合の上面図の一例を示している。この場合、上述したように、搬送制御部44は、第1のローラ11を制御して通帳7を往復搬送させる(
図13の矢印)。これにより、張力TYの作用で、通帳7は規制部31の方向に向けて移動する。その結果、
図14の例に示すように、通帳7は規制部31に沿う位置まで移動する。これにより、通帳7は適正な位置に補正される。
【0087】
<実施形態の処理の流れを示すフローチャート>
次に、
図15のフローチャートを参照して、実施形態の処理の流れについて説明する。自動取引装置1の通帳挿入部2に通帳7がセットされると(ステップS1)、セットされた通帳7が吸入される(ステップS2)。吸入された通帳7は搬送路10に沿って搬送される(ステップS3)。
【0088】
第1のローラ11は、ラインセンサ22よりも通帳挿入部2の側に配置されている。よって、通帳7が最初にラインセンサ22に到達する前に、通帳7は第1のローラ11により少なくとも1回の位置ずれの補正が行われる。
【0089】
例えば、通帳7が位置ずれ補正を行う許容範囲を僅かに超過していた場合、通帳7が第1のローラ11により位置ずれ補正されることにより、通帳7の位置ずれ量が許容範囲内になる場合もある。この場合、
図15の一例で示す補正処理は省略することができる。
【0090】
搬送路10の上部に設置されたラインセンサ22は、搬送路10を搬送される通帳7を撮像する。ラインセンサ22からの信号は、コントローラ28に入力される。画像処理部41は、ラインセンサ22からの信号に基づいて、通帳7の画像を取得する(ステップS4)。
【0091】
上述したように、画像処理部41は、画像処理を行うことにより、通帳7と搬送路10とを認識する。画像処理部41は、通帳7と搬送路10との画素濃度の差に基づいて、通帳7と搬送路10とを認識する。そして、画像処理部41は、通帳7が規制部31に沿っていることを認識した場合には、通帳7が適正な位置にあると判定する。一方、通帳7が規制部31に沿っていないことを認識した場合、通帳7が適正な位置にあるとは確定しない。
【0092】
演算部42は、画像処理部41が画像処理した結果に基づいて、規制部31と通帳7の側端部7Sとの最大離間距離L1を演算する。なお、通帳7が規制部31に沿っている場合、最大離間距離L1はゼロになる。
【0093】
通帳7が搬送路10に対して斜行していない場合、規制部31と通帳7の側端部7Sとの最大離間距離L1は一定である。演算部42は、この最大離間距離L1を演算する。一方、通帳7が搬送路10に対して斜行している場合、演算部42は、通帳7の側端部7Sと規制部31との最大離間距離L1を演算する。または、演算部42は、通帳7の斜行角度θを演算する。
【0094】
以上により、演算部42は位置ずれ量を演算する(ステップS5)。検出部43は、演算部42が演算した位置ずれ量(例えば、上記の最大離間距離L1)が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0095】
例えば、許容範囲は、磁気情報やバーコード7B等を読み取ることができるか否かに基づいて設定してもよい。また、許容範囲は、通帳7の行7Lに印字するときに印字乱れが生じない程度の範囲に基づいて設定してもよい。
【0096】
検出部43が検出した通帳7の位置ずれ量が許容範囲を超過していないときには(ステップS6でNO)、補正処理は終了する。一方、検出部43が検出した通帳7の位置ずれ量が許容範囲を超過しているときには(ステップS6でYES)、演算部42は、通帳7を補正区間33で搬送させる搬送量を決定する。
【0097】
通帳7の搬送量は、検出部43が検出した位置ずれ量とテーパ部14のテーパ角度とに基づいて、決定してもよい。そして、演算部42は、決定された搬送量に基づいて、補正区間33における通帳7の往復回数の演算を行う(ステップS7)。
【0098】
通帳7の位置ずれ量が許容範囲を超過していたとしても、位置ずれ量が大きくなければ、補正量は少なくなる。一方、通帳7の位置ずれ量が大きい場合には、補正量は多くなる。上述したように、搬送制御部44が通帳7を補正区間33で往復搬送させることにより、通帳7の位置ずれが補正される。
【0099】
そこで、演算部42は、予め通帳7を往復搬送させる回数(以下、往復回数と称する)を演算する。通帳7を補正区間33で1往復させたときの補正量は既知の値である。1往復させたときの補正量(つまり、通帳7を補正区間33で1往復させたときに、通帳7が規制部31に向けて移動する量)をMとする。
【0100】
演算部42は、通帳7の最大離間距離L1を1往復あたりの補正量Mで除算することにより、往復回数Cを得る(C=L1/M)。搬送制御部44は、通帳7を補正区間33に搬送する(ステップS8)。
【0101】
そして、搬送制御部44は、第1のローラ11を第2のローラ12よりも高速に回転させる制御を行う(ステップS9)。そして、搬送制御部44は、第1のローラ11を回転および逆回転する制御を行うことにより、通帳7を補正区間33で往復回数Cの分、往復搬送させる(ステップS10)。
【0102】
往復回数Cは、最大離間距離L1と1往復あたりの補正量Mとに基づいて、通帳7の位置ずれを補正するための予測値であり、往復回数Cの分だけ通帳7を補正区間33で往復搬送したとしても、実際には、許容範囲を超過した位置ずれが残っている可能性もある。
【0103】
そこで、ステップS10の処理が終了した後に、処理は、ステップS3に戻る。従って、再び通帳7の位置ずれ量が演算される。そして、ステップS6において、位置ずれ量が許容範囲を超過しているかが判定される。この時点でも、位置ずれ量が許容範囲を超過していたときには、ステップS7〜S10の処理が行われることにより、通帳7の位置ずれの補正が行われる。
【0104】
ただし、搬送制御部44は、演算された往復回数Cの分、補正区間33で通帳7を往復搬送している。往復回数Cは、通帳7の最大離間距離L1と1往復あたりの補正量Mとに基づいて、演算される値である。よって、搬送制御部44が通帳7を補正区間33で往復回数Cの分、往復させることで、通帳7の位置ずれ量が許容範囲内となる可能性が高くなる。
【0105】
例えば、搬送制御部44は、通帳7を補正区間33で1往復させるごとに、ラインセンサ22の位置まで通帳7を搬送することも考えられる。そして、ラインセンサ22が通帳7を撮像し、画像処理部41が画像処理した結果に基づいて、演算部42が位置ずれ量を演算する。そして、検出部43は位置ずれ量が許容範囲内であるか否かを検出する。
【0106】
通帳7の位置ずれ量が大きい場合、往復搬送による補正と位置ずれ量の検出とが繰り返し行われることになる。よって、通帳7が適正な位置に補正されるまで、多くの時間がかかる。
【0107】
一方、最大離間距離L1と1往復あたりの補正量Mとに基づく往復回数Cの分、補正区間で通帳7を往復させることにより、通帳7に生じている位置ずれが適正に補正されている可能性が高くなる。この場合、ラインセンサ22と補正区間33との間に通帳7を繰り返し搬送しなくてもよいため、位置ずれ補正にかかる時間の短縮化を図ることができる。
【0108】
<コントローラのハードウェア構成の一例>
次に、
図16を参照して、コントローラのハードウェア構成の一例を説明する。
図16の例に示すように、バス100に対して、プロセッサ111とRAM(Random Access Memory)112とROM(Read Only Memory)113と補助記憶装置114と媒体接続部115と通信インタフェース116とが接続されている。
【0109】
プロセッサ111はCPU(Central Processing Unit)のような任意の処理回路である。プロセッサ111はRAM112に展開されたプログラムを実行する。実行されるプログラムとしては、実施形態の補正処理を行うプログラムを適用することができる。ROM113はRAM112に展開されるプログラムを記憶する不揮発性の記憶装置である。
【0110】
補助記憶装置114は、種々の情報を記憶する記憶装置であり、例えばハードディスクドライブや半導体メモリ等を補助記憶装置114に適用することができる。媒体接続部115は、可搬型記録媒体117と接続可能に設けられている。
【0111】
可搬型記録媒体117としては、可搬型のメモリや光学式ディスク(例えば、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等)を適用することができる。この可搬型記録媒体117に実施形態の処理を行うプログラムが記録されていてもよい。通信インタフェース116は、外部との通信を行うときのインタフェースである。コントローラ28の各部の機能は、プロセッサ111により実現されてもよい。
【0112】
RAM112、ROM113および補助記憶装置114は、何れもコンピュータ読み取り可能な有形の記憶媒体の一例である。これらの有形な記憶媒体は、信号搬送波のような一時的な媒体ではない。
【0113】
<その他>
以上説明したように、実施形態によれば、通帳7の位置ずれを検出し、位置ずれを生じていたときには、第1のローラ11の位置まで通帳7を搬送し、第1のローラ11により位置ずれの補正を行う。第1のローラ11は、単純なテーパ部14を有するローラであるため、複雑な機構を要することなく、簡単な制御で、通帳7の位置ずれの補正を行うことができる。
【0114】
また、本来的には通帳7に形成されたバーコード7B等の通帳情報(媒体情報)を読み取るラインセンサ22を利用して、通帳7の位置ずれを検出しているため、通帳7の位置ずれを検出するための専用のセンサを設置する必要がない。このため、さらに機構の単純化を図ることができる。
【0115】
上述した実施形態では、第1のローラ11は、円柱部13とテーパ部14とを有している例を説明した。この点、第1のローラ11は、円柱部13を有していなくもよい。つまり、第1のローラ11は、テーパ部14で形成されていてもよい。
図17は、テーパ部14で形成された第1のローラ11の一例を示している。
図17の例の第1のローラ11は略円錐の一部の形状をしている。
【0116】
図18は、通帳7が挟まれた状態における
図17のB−B断面図を示している。
図18に示すように、第1のローラ11の断面の径が大きい部位では、通帳7に対して強い押圧力F1が作用する。そして、第1のローラ11の断面の径が小さい部位では、通帳7に対して弱い押圧力F2が作用する。
【0117】
これにより、規制部31の方向に向かう張力差TYが発生し、通帳7は規制部31に向けて移動する。この移動により、通帳7が適正な位置に補正される。よって、第1のローラ11は、通帳7と接触する部位によって作用する押圧力に差を生じれば、通帳7の位置ずれを補正することができる。
【0118】
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。