(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の供給源から前記流体の消費地への前記流体の輸送に用いられる配管網のうち、前記流体の入口側及び出口側に前記流体の通過を遮断可能な遮断部が各々設けられた供給ブロックの互いに異なる特徴を各々表し、前記供給ブロック内の前記流体の輸送が前記遮断部によって遮断されてから前記供給ブロック内で前記流体の圧力振動が収まる迄の収束時間と相関する複数の特徴量のうちの少なくとも1つの特定特徴量と、前記収束時間と、の関係を表す第1情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された第1情報と、判定対象の前記供給ブロックにおける前記特定特徴量の値を表す第2情報と、に基づいて、判定対象の前記供給ブロックにおける前記収束時間を推定する推定部と、
判定対象の前記供給ブロック内の前記流体の輸送が前記遮断部によって遮断されてから、前記推定部によって推定された前記収束時間が経過すると、判定対象の前記供給ブロック内における前記流体の圧力の時間変化に基づいて、判定対象の前記供給ブロック内における前記流体の漏洩の有無を判定する判定部と、
を含む漏洩監視装置。
前記第2情報は、個々の供給ブロック毎に前記記憶部に記憶されると共に、前記供給ブロックの構成が変更される毎に、構成が変更された前記供給ブロックに対応する第2情報が、構成が変更された前記供給ブロックの最新の構成に対応する値へ変更され、
前記推定部は、前記記憶部に記憶された前記第2情報が更新される都度、更新された前記第2情報に対応する前記供給ブロックにおける前記収束時間を推定し、推定した前記収束時間を前記記憶部に記憶させておくか、前記供給ブロック内の前記流体の輸送が前記遮断部によって遮断される都度、前記記憶部に記憶された最新の前記第2情報を読み出して、前記流体の輸送が前記遮断部によって遮断された前記供給ブロックにおける前記収束時間を推定する請求項1記載の漏洩監視装置。
前記判定部により判定対象の前記供給ブロック内における前記流体の漏洩が無いと判定された場合に、判定対象の前記供給ブロックのうち、少なくとも前記流体の前記入口側に設けられた前記遮断部を、前記流体の通過を遮断しない状態へ切り替える制御部を更に含む請求項1又は請求項2記載の漏洩監視装置。
前記複数の特徴量には、前記供給ブロック内における配管の口径の平均値を表す平均管径、前記供給ブロック内における前記配管1本当たりの体積の平均値を表す平均体積、前記供給ブロック内における前記配管1本当たりの長さの平均値を表す平均管長、前記供給ブロック内における前記流体の平均滞留時間、前記供給ブロック内における前記流体の消費量の分布の重心位置と前記配管の入口側に設けられた前記遮断部との距離、前記供給ブロックの外形が占める面積を表す供給ブロックの面積、前記供給ブロック内で配管が複数箇所で分岐している構成の場合の前記供給ブロック内における配管の分岐点の数、前記供給ブロック内で配管のループが形成されている構成の場合の前記供給ブロック内における配管のループ数、前記供給ブロック内における配管の平均管断面積、前記供給ブロック内における前記配管の総長さを表す総延長、及び、前記供給ブロック内における前記配管の総体積が含まれる請求項1〜請求項3の何れか1項記載の漏洩監視装置。
前記複数の特徴量のうちの少なくとも1つには、前記供給ブロック内における配管の口径の平均値を表す平均管径、前記供給ブロック内における前記配管の体積の平均値を表す平均体積、及び、前記供給ブロック内における配管の平均管断面積の少なくとも1つが含まれる請求項1〜請求項3の何れか1項記載の漏洩監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係るガス供給システム10が示されている。ガス供給システム10は、ガス供給源Gから複数のガス機器E(需要者の消費地)へガスを供給(輸送)するガス配管網を含んでいる。ガス配管網は、互いに独立してガスを供給することが可能な複数の供給ブロック12を含んでいる。個々の供給ブロック12は、ガス供給源Gに接続されたガス供給管14と、ガス供給管14とガス機器E(需要者)とを接続する複数の分岐管16と、を含んでおり、ガス供給源Gからガス供給管14及び分岐管16を介して需要者のガス機器Eにガスが供給される。
【0015】
なお、個々の供給ブロック12は、ガス供給管14や複数の分岐管16の長さや数、断面積などが一定ではないが、後述するガバナ制御装置18やマイコンメータ32の配置や構成は同じである。このため、以下では
図1を参照し、単一の供給ブロック12について構成を説明する。
【0016】
供給ブロック12は、複数の分岐管16が分岐する位置よりも上流側に設けられ、ガス供給管14を開閉制御するガバナ制御装置18を備えている。ガバナ制御装置18は、同一の供給ブロック12に含まれる個々のガス機器Eにおけるガスの使用量、すなわちガバナ制御装置18よりも下流側のガスの流量に応じて開度を自動調整するガバナ20を含んでいる。ガバナ20は、ガバナ20よりも下流側のガスの流量が小さくなると開度を大きくし、下流側のガスの流量が大きくなると開度を小さくすることで、ガバナ20よりも下流側のガスの流量が一定になるように制御する。
【0017】
また、ガバナ制御装置18は、ガス供給管14内のガスの流れを強制的に遮断するガバナ部遮断弁22を備えている。ガバナ部遮断弁22は、地震発生時に地震の規模が一定以上であると推定されると、破損したガス供給管14からガスが漏洩するのを防止すると共に、ガスの漏洩検査を行うために強制的に閉弁制御され、ガス供給管14内のガスの流通を遮断し、ガス供給源Gから個々の分岐管16(個々のガス機器E)へのガス供給を停止させる。ガバナ制御装置18には、地震発生時にガバナ部遮断弁22を閉弁制御するために、ガバナ側加速度計24、SI値演算部26、圧力センサ(圧力検出部)28及びガバナ部遮断弁開閉部30が設けられている。
【0018】
ガバナ側加速度計24は、地震発生時に、揺れの大きさに応じた検知信号をSI値演算部26に継続的に出力する。SI値演算部26は、ガバナ側加速度計24から検知信号が入力されると、当該検知信号に基づいてSI(Spectral Intensity)値を算出する。SI値演算部26によって算出されたSI値はガバナ部遮断弁開閉部30に継続的に出力され、ガバナ部遮断弁開閉部30は、入力されたSI値が一定値を超えると、ガバナ部遮断弁22を強制的に閉弁させる制御を行う。なお、ガバナ部遮断弁22は本発明における「流体の入口側に設けられた流体の通過を遮断可能な遮断部」の一例である。
【0019】
なお、本実施形態では、ガバナ側加速度計24及びSI値演算部26によって、地震の規模を検出(推定)する構成としているが、例えば、SI値演算部26を省略し、ガバナ側加速度計24の検知信号に応じてガバナ部遮断弁開閉部30がガバナ部遮断弁22を開閉制御したり、更には、ガバナ部遮断弁開閉部30が、地震の継続時間を考慮した上で、ガバナ部遮断弁22を開閉制御する構成を採用してもよい。
【0020】
また、ガバナ制御装置18は、地震発生時にガバナ部遮断弁22が強制的に閉弁された場合、後述する管理サーバ50と連動して、ガス供給管14の破損に起因するガスの漏洩の有無を検査する。詳しくは後述するが、ガバナ制御装置18及び管理サーバ50は、ガバナ部遮断弁22が閉弁されてから所定時間(後述する圧力振動収束時間T)が経過した後、ガバナ部遮断弁22よりも下流側のガス供給管14における圧力(ガバナ二次圧)の降下を、圧力センサ28によって一定期間測定する。そして、ガバナ部遮断弁開閉部30は、一定値以上の圧力降下が検出された場合には、ガス供給管14からガスの漏洩が有ると判断してガバナ部遮断弁22を閉弁状態に維持し、一定値以上の圧力降下が検出されなかった場合には、ガス供給管14からの漏洩が無いと判断してガバナ部遮断弁22を開弁する。
【0021】
なお、本実施形態では、ガスの漏洩検査を行うための漏洩検出部として圧力センサ28を設けたが、これに限定されるものではない。例えば、漏洩検出部を、ガバナ20の上流と下流とを連通するバイパス路と、このバイパス路を流通するガスの流量を検出する流量測定器と、を含んだ構成としてもよい。ガバナ部遮断弁22を閉弁することで、当該ガバナ部遮断弁22よりも下流側におけるガスの漏洩の有無を検出できる構成であれば、漏洩検出部の具体的な構成は特に限定されるものではない。また、漏洩検出部はガバナ制御装置18と別に設けてもよい。
【0022】
また、供給ブロック12は、個々の分岐管16に各々設けられたマイコンメータ32を備えている。マイコンメータ32は、周知のマイコンメータと同様に、ガス機器Eにおけるガスの使用量を測定する機能に加えて、地震発生時にガス機器Eにおけるガスの使用を停止するために、ガスの供給を遮断する機能を備えている。以下、
図2を参照し、マイコンメータ32のうち、地震発生時にガスの供給を停止する機能を実現する構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、マイコンメータ32は、分岐管16を遮断可能な需要者側遮断弁34を含んでいる。需要者側遮断弁34は、通常は開弁状態に維持されてガス機器Eへのガス供給を可能とし、地震発生時に地震の規模が一定以上であると推定されると、閉弁制御されて強制的に閉弁され、分岐管16内のガスの流通を遮断する。マイコンメータ32には、地震発生時に需要者側遮断弁34を閉弁制御するために、マイコン側加速度計36、SI値演算部38及び遮断制御部40が設けられている。
【0024】
マイコン側加速度計36は、地震の揺れの大きさに応じた検知信号をSI値演算部38に出力する。SI値演算部38は、マイコン側加速度計36から検知信号が入力されると、当該検知信号に基づいてSI値を算出する。SI値演算部38によって算出されたSI値は遮断制御部40に出力され、遮断制御部40は、入力されたSI値が一定値を超えた場合に、需要者側遮断弁34を強制的に閉弁させる制御を行う。なお、需要者側遮断弁34は、本発明における「流体の入口側に設けられた流体の通過を遮断可能な遮断部」の一例である。
【0025】
なお、本実施形態では、マイコン側加速度計36及びSI値演算部38によって地震の規模を検出(推定)しているが、これに限定されるものではなく、例えば、SI値演算部38を省略し、遮断制御部40が、マイコン側加速度計36の検知信号に応じて需要者側遮断弁34を閉弁制御したり、更には、地震の継続時間を考慮した上で、需要者側遮断弁34を閉弁制御したりしてもよい。
【0026】
また、マイコンメータ32は自動復帰部42及び計時部44を備えている。計時部44は、マイコン側加速度計36から検知信号が入力され、入力される検知信号から地震が収束したと判断すると計時を開始する。すなわち、計時部44は、地震が発生した場合に、当該地震が収束してからの経過時間を計時する。計時部44によって計時された経過時間は自動復帰部42へ出力される。自動復帰部42は、需要者側遮断弁34が強制的に閉弁された場合に、計時部44から入力された経過時間が一定時間に達すると、需要者側遮断弁34の下流でのガスの漏れの有無を判定し、ガスの漏れがない又は少ないと判断したときに、需要者側遮断弁34を開弁状態に復帰される。
【0027】
更に、マイコンメータ32には、復帰操作部46及び手動復帰部48が設けられている。復帰操作部46は、所定の復帰操作を受け付けるものであり、需要者側遮断弁34が閉弁された状態で復帰操作部46が復帰操作を受け付けると、復帰操作信号を手動復帰部48に出力する。手動復帰部48は、復帰操作部46からの復帰操作信号の入力により、需要者側遮断弁34を開弁状態に復帰させる。
【0028】
図1に示すように、ガス供給システム10は管理サーバ50を備えている。管理サーバ50はCPU52、メモリ54、不揮発性の記憶部56及びネットワークI/F(Interface)部58を備えており、ネットワークI/F部58を介して個々の供給ブロック12のガバナ制御装置18と通信回線経由で各々接続されている。管理サーバ50の記憶部56には、収束時間推定情報60及び供給ブロック情報62が記憶され、漏洩判定プログラム66がインストールされている。管理サーバ50は、本発明におけるコンピュータの一例である。
【0029】
ところで、地震が発生し、或る供給ブロック12において、ガバナ制御装置18のガバナ部遮断弁22が強制的に閉弁されると共に、マイコンメータ32の需要者側遮断弁34が強制的に閉弁された場合、ガス配管内のうちガバナ部遮断弁22と需要者側遮断弁34との間の空間にガスが閉じ込められ、閉じ込められたガスの流れの慣性と圧縮性により、供給ブロック12内(詳しくは前記空間内)でガス圧力の振動的な変化、すなわち圧力振動が生じる。
【0030】
地震が発生してガバナ部遮断弁22及び需要者側遮断弁34が強制的に閉弁されてから、発生した圧力振動が収束する迄の時間(圧力振動収束時間)は、個々の供給ブロック12毎の構成によって変化する可能性が高いと推定される。しかし、通常時は安定的にガスを供給することが前提のガス配管網において、一時的にガス供給を停止させて圧力振動収束時間を実測することは困難である。また、新規に設置した供給ブロック12について、ガス供給を開始する前に圧力振動収束時間を実測するようにしたとしても、その後に導管工事などが行われることで供給ブロックの構成が変化すると、それに伴って圧力振動収束時間が変化することで、圧力振動収束時間の実測値が無視できない誤差を含むことになる可能性が高い。
【0031】
ここで、本願発明者等は、供給ブロック12の特徴量と圧力振動収束時間との相関を調べる解析を行い、供給ブロック12の複数の特徴量が、圧力振動収束時間と相関が有ることを確認した(詳細は後述)。圧力振動収束時間と相関が有ることが確認された複数の特徴量は、供給ブロック12内における配管の口径の平均値を表す「平均管径」、供給ブロック12内における配管1本当たりの体積(内容積)の平均値を表す「平均体積」、供給ブロック12内における配管1本当たりの長さの平均値を表す「平均管長」、供給ブロック12内におけるガスの「平均滞留時間」、供給ブロック12内における「ガスの消費量の分布の重心位置と配管の入口側に設けられた遮断部(ガバナ部遮断弁22)との距離」、供給ブロック12の外形が占める面積を表す「供給ブロックの面積」、供給ブロック12内における配管の「分岐点の数」、供給ブロック12内における配管の「ループ数」、供給ブロック12内における配管の「平均管断面積」、供給ブロック12内における配管の総長さを表す「総延長」、及び、供給ブロック12内における配管の「総体積」である。なお、「平均滞留時間」は全管容積[m
3]を消費量の合計値[Nm
3/h]で除すことで求めることができる。
【0032】
供給ブロック情報62は、管理サーバ50の配下の個々の供給ブロック12(ガバナ制御装置18が管理サーバ50と接続されている個々の供給ブロック12)について、個々の供給ブロック12の複数の特徴量のうち1つ以上の特徴量の値を含む情報である。本実施形態では、個々の供給ブロック12の特徴量として「平均管径」を用いており、本実施形態に係る供給ブロック情報62には、個々の供給ブロック12における平均管径の値が各々設定されている。
【0033】
ここで、管理サーバ50の記憶部56に記憶されている供給ブロック情報62は、管理サーバ50の配下の何れかの供給ブロック12で導管工事などが行われることで、何れかの供給ブロック12の特徴量(ここでは平均管径)の値が変化する都度、供給ブロック情報62に含まれる、対応する供給ブロック12の特徴量の値が更新される。従って、供給ブロック情報62は、管理サーバ50の配下の個々の供給ブロック12について、特徴量の最新の値が設定されている。なお、供給ブロック情報62は本発明に係る第2情報の一例であり、記憶部56は本発明における記憶部の一例として機能する。
【0034】
収束時間推定情報60は、前記複数の特徴量のうち供給ブロック情報62に値が設定されている特徴量(本実施形態では平均管径)と、圧力振動収束時間と、の関係(一例を
図3に示す)を表す情報である。収束時間推定情報60が表す前記関係は、例えば平均関係と圧力振動収束時間との関係を複数の供給ブロック12について調べてプロットすることで得られる散布図(一例として
図7を参照)を用い、誤差が最小となるように最小自乗法などを適用して平均管径と圧力振動収束時間との関係を求めることで得られる。なお、収束時間推定情報60は、前記関係を関数の形式で表す情報であってもよいし、テーブルの形式で表す情報であってもよい。なお、収束時間推定情報60は本発明に係る第1情報の一例であり、記憶部56は本発明における記憶部の一例として機能する。
【0035】
また、漏洩判定プログラム66は本発明に係る漏洩監視プログラムの一例であり、管理サーバ50は、漏洩判定プログラム66を実行することで、本発明に係る漏洩監視装置として機能する。
【0036】
次に本実施形態の作用として、
図4を参照し、地震が発生した場合のガス供給システム10の動作を説明する。
【0037】
一定以上の規模の地震が発生すると、ガバナ制御装置18では、SI値演算部26からガバナ部遮断弁開閉部30に出力されるSI値が一定値を超えることで、ガバナ部遮断弁22を強制的に閉弁させる制御が行われる(
図4のステップ70も参照)。また、一定以上の規模の地震が発生すると、マイコンメータ32においても、SI値演算部38から遮断制御部40に出力されるSI値が一定値を超えることで、需要者側遮断弁34を強制的に閉弁させる制御が行われる(
図4のステップ74も参照)。
【0038】
ガバナ制御装置18は、ガバナ部遮断弁22を強制的に閉弁させる制御を行うと、ガバナ部遮断弁22を閉弁させたことを管理サーバ50に通知する(
図4のステップ76も参照)。管理サーバ50は、ガバナ部遮断弁22が閉弁されたことがガバナ制御装置18から通知されると、CPU52によって漏洩判定プログラム66を実行することで、漏洩判定処理を起動する(
図4のステップ78も参照)。
【0039】
漏洩判定処理において、管理サーバ50は、記憶部56に記憶されている供給ブロック情報62のうち、ガバナ部遮断弁22の閉弁を通知したガバナ制御装置18に対応する供給ブロック12(判定対象の供給ブロック12)の平均管径を記憶部56から読み出す(
図4のステップ80も参照)。続いて管理サーバ50は、記憶部56から収束時間推定情報60を読み出し、読み出した収束時間推定情報60とステップ80で読み出した平均管径に基づき、判定対象の供給ブロックにおける圧力振動収束時間Tを推定する(
図4のステップ82も参照)。なお、このステップ82は本発明における推定部による処理の一例である。
【0040】
なお、収束時間推定情報60が、平均管径と圧力振動収束時間との関係を関数形式で表す情報である場合、圧力振動収束時間Tの推定は、判定対象の供給ブロック12の平均管径を、収束時間推定情報60が表す関数に代入して演算することで実現できる。また、収束時間推定情報60が、平均管径と圧力振動収束時間との関係をテーブル形式で表す情報である場合、圧力振動収束時間Tの推定は、判定対象の供給ブロック12の平均管径と対応付けて登録されている圧力振動収束時間Tをテーブルから読み出すことで実現できる。前述のように、平均管径は圧力振動収束時間と相関が有ることが確認されているので、上記処理により、圧力振動収束時間Tを精度良く推定することができる。
【0041】
続いて管理サーバ50は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18よりガバナ部遮断弁22の閉弁が通知されてから、ステップ82で推定した圧力振動収束時間Tが経過したか否か判定する(
図4のステップ84も参照)。なお、圧力振動収束時間Tが経過したか否か判定することに代えて、なお、圧力振動収束時間Tに所定時間を加算した時間が経過したか否か判定するようにしてもよい。この判定が否定された場合は、ステップ84の判定が肯定される迄ステップ84を繰り返し、圧力振動収束時間Tが経過する迄待機する。
【0042】
これにより、判定対象の供給ブロック12におけるガバナ二次圧が、例として
図5に示すように変化した場合、
図5に「圧力振動継続」として示す期間(ガバナ二次圧が比較的大きな振幅で周期的に変動している期間)には、ガバナ二次圧の測定及びガスの漏洩判定は行われない。従って、前記期間におけるガバナ二次圧の比較的大きな振幅かつ周期的な変動の影響を受けて、ガスの漏洩判定の精度が損なわれることを防止することができる。
【0043】
また、管理サーバ50は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18よりガバナ部遮断弁22の閉弁が通知されてから、推定した圧力振動収束時間Tが経過すると(
図4のステップ84が肯定されると)、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18に対してガバナ二次圧の測定を要求する(
図4のステップ86も参照)。ガバナ制御装置18は、管理サーバ50からガバナ二次圧の測定が要求されると、圧力センサ28によってガバナ二次圧を測定し、測定結果を管理サーバ50に通知する(
図4のステップ88も参照)。
【0044】
管理サーバ50は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18からガバナ二次圧の測定結果を受信すると、当該ガバナ制御装置18からガバナ二次圧の測定値を所定回数取得したか否か判定する(
図4のステップ90も参照)。ガバナ制御装置18からガバナ二次圧の測定値を所定数取得していない場合(ステップ90が否定された場合)、管理サーバ50は、ガバナ二次圧の測定を最後に要求してから所定時間が経過したか否かを判定し(
図4のステップ92も参照)、当該判定が否定された場合は当該判定を繰り返す。
【0045】
ガバナ二次圧の測定を最後に要求してから所定時間が経過すると(ステップ90が肯定されると)、管理サーバ50は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18に対してガバナ二次圧の測定を要求する前述の処理(
図4のステップ86)を繰り返す。これにより、ガバナ制御装置18では、圧力センサ28によって所定時間周期でガバナ二次圧を測定することが所定回数繰り返され、各回の測定で得られたガバナ二次圧の測定値が管理サーバ50に通知される。
【0046】
なお、上記では管理サーバ50とガバナ制御装置18との間のインタフェースとして、管理サーバ50から要求される都度、ガバナ制御装置18がガバナ二次圧を測定して測定結果を通知するインタフェースを採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、管理サーバ50から1回要求されると、ガバナ制御装置18が所定時間間隔でガバナ二次圧を所定回数測定し、各回の測定結果を一度に通知するインタフェースを採用してもよい。
【0047】
管理サーバ50は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18からガバナ二次圧の測定値を所定回数取得すると、取得した所定数の測定値が表すガバナ二次圧の時間変化に基づき、一定時間内のガバナ二次圧の降下量を基準値と比較することで、判定対象の供給ブロック12におけるガス漏洩の有無を判定する(
図4のステップ94も参照)。なお、上述したステップ84〜94は本発明における判定部による処理の一例である。
【0048】
前述のように、ガバナ二次圧の測定及びガスの漏洩判定は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18よりガバナ部遮断弁22の閉弁が通知されてから、ステップ82で推定した圧力振動収束時間Tが経過し、
図5に「圧力振動減衰」として示すように、ガバナ二次圧の比較的大きな振幅かつ周期的な変動が収まった後に行われるので、ガスの漏洩判定を高精度に行うことができる。
【0049】
また、地震が発生してガバナ部遮断弁22が閉弁されてから一定時間後にガバナ二次圧の測定及びガスの漏洩判定を行う場合は、供給ブロック12がどのような構成であっても、ガバナ二次圧の圧力振動が確実に収まってからガバナ二次圧の測定及びガスの漏洩判定が行われるように、前記一定時間を比較的長い時間に設定する必要がある。これに対して本実施形態では、推定した圧力振動収束時間Tが経過するとガバナ二次圧の測定及びガスの漏洩判定を行うので、地震等の災害が発生してガスの供給が一時的に遮断され、ガス配管の損傷によるガス漏洩等が生じていない場合に、ガスの供給が再開される迄の所要時間を短縮することができる。
【0050】
続いて管理サーバ50は、ガスの漏洩判定の結果、ガスの漏洩有りと判定したか否か判定する(
図4のステップ96も参照)。ガバナ二次圧が、圧力振動収束時間Tが経過した以降に、例えば
図5に符号「A」を付して示すように推移していた場合は、一定時間内のガバナ二次圧の降下量が基準値未満となることで、ガスの漏洩無しと判定される(ステップ96の判定が否定される)。この場合、管理サーバ50は、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18に対してガバナ部遮断弁22の開弁を指示する(
図4のステップ98も参照)。
【0051】
これにより、判定対象の供給ブロック12のガバナ制御装置18はガバナ部遮断弁22を開弁する(
図4のステップ100も参照)。また、その後、判定対象の供給ブロック12のマイコンメータ32においても、需要者側遮断弁34が自動的に又は手動で開弁される(
図4のステップ102も参照)。これに伴い、判定対象の供給ブロック12は、ガス供給源Gから複数のガス機器Eへガスが供給される状態に復帰する。なお、前述のステップ98は、本発明における制御部による処理の一例である。
【0052】
一方、ガバナ二次圧が、圧力振動収束時間Tが経過した以降に、例えば
図5に符号「B」を付して示すように推移していた場合は、一定時間内のガバナ二次圧の降下量が基準値以上となることで、ガスの漏洩有りと判定される(ステップ96の判定が肯定される)。この場合、管理サーバ50は、配管が損傷した場合に修復作業を行う作業者に対し、ガスの漏洩有りと判定したことを通知する(
図4のステップ104も参照)。この場合、損傷した配管を修復する作業が作業者によって行われる。また、配管の損傷が修復される迄の間、ガスの供給を停止している状態が継続される(
図4のステップ106も参照)。
【0053】
なお、圧力振動収束時間Tの推定は、平均管径を用いることに限られるものではなく、圧力振動収束時間Tと相関する複数の特徴量のうち、平均管径以外の特徴量を用いてもよい。特に、後掲の表1に示すように、平均管径、平均体積及び平均管断面積は圧力振動収束時間Tとの相関が大きいので、圧力振動収束時間Tの推定精度の観点からは、平均管径以外の特徴量であれば平均体積又は平均管断面積を用いることがより好ましいが、本発明は、圧力振動収束時間Tと相関する複数の特徴量のうちの何れの特徴量を用いることも権利範囲に含んでいる。
【0054】
また、圧力振動収束時間Tの推定は、単一の特徴量を用いることに限られるものではなく、圧力振動収束時間Tと相関する複数の特徴量を用いて圧力振動収束時間Tを推定するようにしてもよい。複数の特徴量を用いた圧力振動収束時間Tの推定は、例えば、個々の特徴量を用いて圧力振動収束時間を各々推定した後に、複数の推定値の重み付き平均値を圧力振動収束時間Tとして演算することで行うことができる。重み付き平均値に用いる重み係数としては、例えば後掲の表1に記載の相関係数を正規化した値などを用いることができる。また、重回帰分析等の多変量統計解析を適用することで、複数の特徴量から圧力振動収束時間Tを直接推定する推定式を求め、当該推定式を用いて圧力振動収束時間Tを推定することも可能である。
【0055】
また、管理サーバ50とマイコンメータ32とも通信回線を介して通信可能とし、ガバナ制御装置18からガバナ部遮断弁22の閉弁が通知され、かつマイコンメータ32から需要者側遮断弁34の閉弁が通知されてからの時間が、圧力振動収束時間Tに達したか否かを判定することで、ガバナ二次圧の測定及びガスの漏洩判定を行うか否かを判定するようにしてもよい。また、マイコンメータ32の需要者側遮断弁34が一旦閉弁された後の開弁を、管理サーバ50が指示することで行わせるようにしてもよい。
【0056】
また、上記では供給ブロック12内の流体の輸送がガバナ部遮断弁22及び需要者側遮断弁34によって遮断される都度、記憶部56に記憶された最新の供給ブロック情報62を読み出して、圧力振動収束時間Tを推定する態様を説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、記憶部56に記憶された供給ブロック情報62が更新される都度、対応する供給ブロック情報62が更新された供給ブロック12における圧力振動収束時間Tを推定し、推定した圧力振動収束時間Tを記憶部56に記憶させるようにしてもよい。
【0057】
また、上記では圧力振動収束時間Tを管理サーバ50で推定する態様を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、圧力振動収束時間Tを推定する機能を個々の供給ブロック12のガバナ制御装置18に設け、個々の供給ブロック12のガバナ制御装置18において、収束時間推定情報60(第1情報)及び供給ブロック情報62(第2情報)の少なくとも一方を管理サーバ50から取得して、圧力振動収束時間Tを推定するように構成してもよい。この場合、管理サーバ50とガバナ制御装置18が協働することで、本発明に係る漏洩監視装置が実現されることになる。
【0058】
また、本発明における流体はガスに限られるものではなく、例えば空気等であってもよいし、気体に限らず液体であってもよい。
【0059】
また、ガバナ制御装置18のガバナ部遮断弁22が一旦閉弁された後の開弁状態への復帰は、作業者が手動で行うようにしてもよく、本発明はこのような態様にも適用可能である。
【0060】
また、上記では本発明に係る漏洩監視プログラムの一例である漏洩判定プログラム66が記憶部56に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係る漏洩監視プログラムは、CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【実施例】
【0061】
続いて、本願発明者等が実施した解析について説明する。この解析では、実在する149の供給ブロックについて、個々の供給ブロックの幾何形状を基に一次元解析モデルを各々作成し、ガバナ及びマイコンメータの遮断を模擬した条件での一次元流体解析を各々実施することで、それぞれの供給ブロックにおける圧力振動収束時間(圧力振動の振幅が±0.04kPaに減衰する迄の時間)を推定した。結果を
図6に示す。
【0062】
また、個々の供給ブロックの特徴量として「平均管径」「平均体積」「平均管長」「平均滞留時間」「ガスの消費量の分布の重心位置とガバナとの距離」「供給ブロックの面積」「分岐点の数」「ループ数」「平均管断面積」「総延長」及び「総体積」を用い、個々の供給ブロック毎に上記各特徴量の値を求めた。個々の特徴量と圧力振動収束時間Tとの関係を示す散布図を
図7〜
図17に示す。そして、個々の特徴量毎に、単回帰分析により圧力振動収束時間との相関を評価した。結果を次の表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1からも明らかなように、各特徴量の何れも相関係数R>0であり、圧力振動収束時間Tと相関している。従って、これらの特徴量のうちの少なくとも1つを用いれば圧力振動収束時間Tを推定可能であることが明らかになった。また、「平均管径」「平均体積」及び「平均管断面積」は相関係数Rが特に高く、これらの特徴量のうちの少なくとも1つを用いれば圧力振動収束時間Tをより高い精度で推定できることが明らかになった。