特許第6247629号(P6247629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247629コイル用シートの製造方法、及びコイルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247629
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】コイル用シートの製造方法、及びコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   H01F41/04 D
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-250816(P2014-250816)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-115708(P2016-115708A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 雅之
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】福田 猛
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−112641(JP,A)
【文献】 特開昭63−220734(JP,A)
【文献】 特開2004−342755(JP,A)
【文献】 特開2013−161939(JP,A)
【文献】 特開2012−204440(JP,A)
【文献】 特開2002−367834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F5/00−5/06
17/00−27/02
27/06−27/23
27/28−27/30
27/36
27/42
30/00−38/12
38/16
38/42−41/04
41/08
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層、耐熱性の絶縁層、熱硬化性で未硬化の接着層、及び基層が順に積層された初期シートを用いて、前記導体層をエッチングにより所定形状に切断する第1切断工程と、
前記第1切断工程の後に、前記絶縁層及び前記接着層をエッチングにより前記所定形状に切断する第2切断工程と、
を含むことを特徴とするコイル用シートの製造方法。
【請求項2】
前記導体層の一面に前記絶縁層の溶液を塗布して乾燥及び硬化させることにより、前記導体層の前記一面に前記絶縁層を設ける工程と、
前記絶縁層における前記導体層と反対側の面に、熱硬化性で未硬化の前記接着層を設ける工程と、
前記接着層が熱硬化する温度よりも低い温度で、前記接着層における前記絶縁層と反対側の面に前記基層を設ける工程と、
を順に行うことによって前記初期シートを作製する請求項1に記載のコイル用シートの製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層は、ポリイミドを主成分に形成されており、
前記第2切断工程は、前記導体層及び前記基層を溶解させず、ポリイミドを溶解させるエッチング液により、前記絶縁層をエッチングする工程を含む請求項1又は2に記載のコイル用シートの製造方法。
【請求項4】
前記エッチング液として、有機塩基と無機塩基の双方を含むアルカリ水溶液を用いる請求項3に記載のコイル用シートの製造方法。
【請求項5】
前記接着層は、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを主成分として形成されており、
前記第2切断工程は、前記導体層及び前記基層を溶解させず、エポキシ樹脂とその硬化剤を溶解させるエッチング液により、前記接着層をエッチングする工程を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイル用シートの製造方法。
【請求項6】
前記エッチング液は、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを溶解させる成分として、有機溶剤及び有機塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項5に記載のコイル用シートの製造方法。
【請求項7】
前記第2切断工程は、前記第1切断工程により前記所定形状に切断された前記導体層をマスクとして、前記絶縁層及び前記接着層をエッチングにより前記所定形状に切断する工程を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のコイル用シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコイル用シートの製造方法を用いたことを特徴とするコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの製造に用いられるコイル用シートの製造方法、及びコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細長い導電性板材に絶縁層を結合した板状部材をコイル状に巻いて、コイルを形成するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4022181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記板状部材(導体層及び絶縁層)を接着層により基層に接着したコイル用シートを、本願発明者は考案した。また、コイル用シートにおいて、板状部材及び接着層を予め所定形状に切断しておくことを、本願発明者は考案した。このコイル用シートによれば、所定形状の板状部材及び接着層を基層から剥離させてコイル状に巻くことにより、コイルを形成することができる。
【0005】
しかしながら、板状部材及び接着層の切断に際して接着層が変質し、基層と接着層との剥離性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、基層と接着層との剥離性が低下することを抑制することのできるコイル用シートの製造方法、及びコイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
第1の手段は、コイル用シートの製造方法であって、導体層、耐熱性の絶縁層、熱硬化性で未硬化の接着層、及び基層が順に積層された初期シートを用いて、前記導体層をエッチングにより所定形状に切断する第1切断工程と、前記第1切断工程の後に、前記絶縁層及び前記接着層をエッチングにより前記所定形状に切断する第2切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記工程によれば、導体層、絶縁層、及び接着層をエッチングにより所定形状に切断するため、接着層が熱硬化する温度(熱硬化温度)よりも低い温度でこれらの層を切断することができる。これに対して、絶縁層及び接着層をレーザで焼き切る場合は、発生する熱により熱硬化性の接着層が熱硬化して、基層と接着層との剥離性が低下するおそれがある。この点、上記工程によれば、熱硬化性の接着層が熱硬化することを抑制することができ、基層と接着層との剥離性が低下することを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記導体層の一面に前記絶縁層を形成する溶液状組成物を塗布して乾燥及び硬化させることにより、前記導体層の前記一面に前記絶縁層を設ける工程と、前記絶縁層における前記導体層と反対側の面に、熱硬化性で未硬化の前記接着層を設ける工程と、前記接着層が熱硬化する温度よりも低い温度で、前記接着層における前記絶縁層と反対側の面に前記基層を設ける工程と、を順に行うことによって前記初期シートを作製する。
【0011】
上記工程によれば、導体層の一面に絶縁層を形成する溶液状組成物を塗布して乾燥及び硬化させることにより絶縁層を設けるため、導体層に絶縁層を密着させることができる。絶縁層の乾燥及び硬化時には未だ接着層が設けられていないため、絶縁層の乾燥及び硬化に際して、熱硬化性の接着層が熱硬化することを避けることができる。そして、接着層が熱硬化する温度よりも低い温度で、接着層における絶縁層と反対側の面に基層が設けられるため、基層を設ける際に熱硬化性の接着層が熱硬化することを抑制することができる。
【0012】
第3の手段では、前記絶縁層は、ポリイミドを主成分に形成されており、前記第2切断工程は、前記導体層及び前記基層を溶解させず、ポリイミドを溶解させるエッチング液により、前記絶縁層をエッチングする工程を含む。
【0013】
上記工程によれば、絶縁層は、ポリイミドを主成分に形成されているため、耐熱性及び絶縁性に優れている。そして、第2切断工程は、導体層及び基層を溶解させず、ポリイミドを溶解させるエッチング液により、絶縁層をエッチングする工程を含む。このため、導体層及び基層がエッチング液により溶解されることを避けつつ、絶縁層をエッチングにより切断することができる。
【0014】
具体的には、第4の手段に記載されるように、前記エッチング液として、有機塩基と無機塩基の双方を含むアルカリ水溶液を用いる工程を採用することができる。
【0015】
第5の手段では、前記接着層は、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを主成分として形成されており、前記第2切断工程は、前記導体層及び前記基層を溶解させず、エポキシ樹脂とその硬化剤を溶解させるエッチング液により、前記接着層をエッチングする工程を含む。
【0016】
上記工程によれば、接着層は、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを主成分として形成されているため、熱硬化性及び接着性を有している。そして、第2切断工程は、導体層及び基層を溶解させず、エポキシ樹脂とその硬化剤を溶解させるエッチング液により、接着層をエッチングする工程を含む。このため、導体層及び基層がエッチング液により溶解されることを避けつつ、接着層をエッチングにより切断することができる。
【0017】
具体的には、第6の手段に記載されるように、前記エッチング液は、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを溶解させる成分として、有機溶剤及び有機塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む工程を採用することができる。
【0018】
第7の手段では、前記第2切断工程は、前記第1切断工程により前記所定形状に切断された前記導体層をマスクとして、前記絶縁層及び前記接着層をエッチングにより前記所定形状に切断する工程を含む。
【0019】
上記工程によれば、所定形状に切断された導体層をマスクとして、絶縁層及び接着層を所定形状にエッチングするため、絶縁層及び接着層をエッチングするためのマスクを形成する工程を省略することができる。
【0020】
第8の手段は、コイルの製造方法であって、第1〜第7の手段のいずれかのコイル用シートの製造方法を用いたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】コイルの冷却構造を示す模式図。
図2】コイル用シートの製造方法を示す模式図。
図3】コイル用シートを示す断面図。
図4】コイル用シートを示す平面図。
図5】コイル用シートロールを示す斜視図。
図6】積層シートパターンの巻体の形成工程を示す模式図。
図7】巻体の接着層パターンの熱硬化工程を示す模式図。
図8図1の領域Cの拡大断面図。
図9】接着剤厚み10μmの場合の冷却水入口側におけるコイルの温度上昇を示すグラフ。
図10】接着剤厚み30μmの場合の冷却水入口側におけるコイルの温度上昇を示すグラフ。
図11】接着剤厚み10μmの場合の冷却水出口側におけるコイルの温度上昇を示すグラフ。
図12】接着剤厚み30μmの場合の冷却水出口側におけるコイルの温度上昇を示すグラフ。
図13】コイル用シートの製造方法の変更例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、電磁アクチュエータに用いられるコイルの冷却構造として具体化している。電磁アクチュエータとして、例えば電磁弁に本実施形態のコイルの冷却構造を用いることができる。
【0023】
図1に示すように、コイル30の冷却構造10は、本体20、コイル30、固定鉄心38、冷却プレート41等を備えている。
【0024】
本体20は、電磁アクチュエータの本体や筐体等である。本体20は、例えばステンレスやアルミ等により、板状(直方体状)に形成されている。
【0025】
コイル30は、円柱状の固定鉄心38の外周に帯状の銅箔(導体)を複数回巻くことにより、円筒状に形成された巻体31を備えている。固定鉄心38は、鉄等の強磁性体により、円柱状に形成されている。コイル30の軸線方向の下端(第1端)は、接着剤45により本体20に接着されている。接着剤45は、例えばエポキシ系の接着剤等である。なお、固定鉄心38の軸線及びコイル30の軸線が、所定軸線に相当する。
【0026】
コイル30の軸線方向の上端(第2端)には、アルミナ層39及び接着剤40を介して冷却プレート41が取り付けられている。アルミナ層39及び接着剤40の構造、並びに冷却プレート41の取り付け方法については後述する。
【0027】
冷却プレート41は、アルミナを主体として板状に形成されている。冷却プレート41の内部には、冷却水(冷却媒体)の流路41aが形成されている。流路41aは、板状の冷却プレート41の広がり方向(板面方向)に沿って延びている。流路41aには、冷却水が流通させられている。
【0028】
こうした構成において、コイル30に電流を流すと、固定鉄心38に磁束が発生する。発生した磁束により、電磁アクチュエータの可動部(弁体等)が移動させられる。このとき、コイル30に電流を流すと、上記巻体31が発熱する。巻体31を構成する帯状の銅箔への通電により発生した熱は、帯状の銅箔の幅方向、すなわち巻体31(コイル30)の軸線方向(図1の上下方向)へ効率的に伝達される。そして、巻体31の熱は、巻体31の軸線方向の上端面から、アルミナ層39及び接着剤40を介して冷却プレート41に伝達される。冷却プレート41に伝達された熱は、冷却プレート41の内部の流路41aを流通する冷却水により外部等へ移動させられる。
【0029】
なお、巻体31の熱は、巻体31の軸線方向の下端面から接着剤45を介して本体20へも伝達される。また、巻体31の熱の一部は、巻体31の内周面から、固定鉄心38を介して本体20及び冷却プレート41へ伝達される。本体20へ伝達された熱は、本体20から他の部材へ伝達されたり、空気中へ放熱されたりする。
【0030】
次に、コイル30の製造に用いるコイル用シートの製造方法を説明する。図2は、コイル用シート37の製造方法を示す模式図である。
【0031】
工程1では、銅箔32(導体層)の上面(一面)に絶縁層33を設けるための前処理として、銅箔32の表面にウェットブラストを行う。ウエットブラスト(粗化処理)では、酸等の液体を用いて銅箔32の表面を若干粗くする。これにより、銅箔32と絶縁層33との密着性を向上させることができる。なお、ウェットブラストは、銅箔32の両面に行われている。
【0032】
工程2では、銅箔32の上面に絶縁層33(有機絶縁層)を形成する。詳しくは、銅箔32の上面に絶縁層33を形成する溶液状組成物を塗布する。この溶液状組成物としては、特開2003−200527等に記載された、ポリアミック酸及び/又はポリイミドと、アルコキシシラン部分縮合物とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリイミドを好適に用いることができる。アルコキシ基含有シラン変性ポリイミドは、ポリイミドとシリカとのハイブリッド材料であり、ポリイミド前駆体のポリアミック酸とアルコキシシラン化合物とが化学結合したポリマーを、有機溶剤に溶解させたものである。続いて、塗布された溶液の有機溶剤を乾燥させて、固化した成分を加熱して硬化させる。これにより、ポリアミック酸が閉環反応してポリイミドになり、アルコキシシラン化合物が硬化してシリカになる。そして、ナノサイズのシリカが分散し、かつポリイミドとシリカが化学結合で架橋した硬化膜としての絶縁層33が形成される。すなわち、絶縁層33は、ポリイミド・シリカハイブリッドである。ここで、銅箔32の線膨張係数(熱膨張率)と絶縁層33の線膨張係数とが略等しくされている。具体的には、銅箔32(銅)の線膨張係数が17ppm/℃(μm/℃/m)であるのに対して、絶縁層33の線膨張係数は10〜24ppm/℃に設定されている。
【0033】
工程3では、絶縁層33の上面(絶縁層33における銅箔32と反対側の面)に、熱硬化性で未硬化の接着層34を形成する。詳しくは、絶縁層33の上面に接着層34を形成する溶液状組成物を塗布する。この溶液状組成物としては、特開平10−335768、特開2005−179408等に記載された、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを、有機溶剤に溶解させたものを好適に用いることができる。続いて、塗布された溶液の有機溶剤を乾燥させて、エポキシ樹脂とその硬化剤を固化させる。これにより、接着層34は、半硬化状態や溶剤が蒸発した状態等、未だ硬化はしていないが見かけ上は固化したBステージ状態となる。
【0034】
工程4では、接着層34が熱硬化する温度よりも低い温度で、接着層34の上面(接着層34における絶縁層33と反対側の面)に、カバーフィルム35(基層)を貼り付ける。カバーフィルム35は、PET(Polyethylene Terephthalate)により形成されている。詳しくは、接着層34はBステージ状態であるため、所定の粘着性(接着力)を有している。したがって、接着層34の上面にカバーフィルム35を密着させることにより、接着層34の上面にカバーフィルム35を接着する。すなわち、絶縁層33に接着層34を介してカバーフィルム35を接着する。このように、工程1〜4により、銅箔32、絶縁層33、接着層34、及びカバーフィルム35が順に積層された初期シート37a(コイル用シート)が作製される。なお、初期シート37aのうち、カバーフィルム35を除く層、すなわち銅箔32、絶縁層33、及び接着層34の積層体を、積層シート36と称する。
【0035】
工程5では、銅箔32の表面(銅箔32における絶縁層33と反対側の面)に、銅箔32を所定形状に切断するためのマスクMを形成する。マスクMは、例えばレジストフィルムを銅箔32に貼り付けて、それを所定形状に露光及び現像することにより形成する。なお、レジスト液をスクリーン印刷等により所定形状に印刷することで、マスクMを形成することもできる。
【0036】
工程6では、銅箔32を酸等のエッチング液によりエッチングする。これにより、銅箔32においてマスクMにより覆われていない部分が溶解し、銅箔32が所定形状に切断される。これにより、所定形状の銅箔パターン32aが形成される。このとき、絶縁層33、接着層34、及びカバーフィルム35は、銅箔32のエッチング液によっては溶解されない。なお、工程5及び工程6が、第1切断工程に相当する。
【0037】
工程7では、マスクMを除去する。詳しくは、レジストにより形成されたマスクMを剥離(溶解)させる剥離液により、マスクMを除去する。このとき、絶縁層33、接着層34、及びカバーフィルム35は、マスクMの剥離液によっては溶解されない。なお、マスクMの剥離液によって、絶縁層33及び接着層34が若干溶解してもよい。
【0038】
工程8では、所定形状に切断された銅箔32(銅箔パターン32a)をマスクとして、絶縁層33をエッチングにより所定形状に切断する。これにより、所定形状の絶縁層パターン33aが形成される。詳しくは、特開2001−305750等に記載された、銅箔32及びカバーフィルム35を溶解させず、ポリイミドを溶解させるエッチング液により、絶縁層33をエッチングする。具体的には、絶縁層33のエッチング液として、有機塩基と無機塩基の双方を含むアルカリ水溶液を用いる。なお、絶縁層33のエッチング液によって、接着層34が若干溶解してもよい。
【0039】
工程9では、所定形状に切断された銅箔32(銅箔パターン32a)をマスクとして、接着層34をエッチングにより所定形状に切断する。これにより、所定形状の接着層パターン34aが形成される。詳しくは、銅箔32及びカバーフィルム35を溶解させず、エポキシ樹脂とその硬化剤を溶解させるエッチング液により、接着層34をエッチングする。具体的には、接着層34のエッチング液は、エポキシ樹脂とその硬化剤を溶解させる成分として、有機溶剤及び有機塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいる。上記工程8及び工程9は、接着層34が熱硬化する温度よりも低い温度で行われる。なお、工程8及び工程9は、第2切断工程に相当する。
【0040】
工程10では、残留するエッチング液を除去するために、作製されたコイル用シート37を純水等により洗浄する。以上により、カバーフィルム35の一面に、複数の所定形状の積層シートパターン36aが形成される。
【0041】
図3はコイル用シート37を示す断面図であり、図4はコイル用シート37を示す平面図である。同図に示すように、本実施形態では、カバーフィルム35の一面に、6列の帯状の積層シートパターン36aを形成している。帯状の積層シートパターン36aは、カバーフィルム35の長手方向に延びており、互いに平行に配置されている。そして、図5に示すように、コイル用シート37をロール芯51の周りに複数回巻き付けて、コイル用シートロール37Aを作製する。なお、ロール芯51にコイル用シート37を巻き付ける態様として、カバーフィルム35が外側になってもよいし内側になってもよい。
【0042】
次に、図6を参照して、コイル用シートロール37A(コイル用シート37)を用いて、積層シートパターン36a(積層シート36)の巻体31を形成する工程について説明する。
【0043】
コイル用シートロール37Aのロール芯51Aを第1回転軸に取り付け、巻き取り用のロール芯51Bを第2回転軸に取り付ける。また、コイル30の固定鉄心38を第3回転軸に取り付ける。第1回転軸と第3回転軸との間には、シートに所定の張力をかけるテンションローラTRが設けられている。なお、固定鉄心38に変えて、巻体形成用の巻き芯を第3回転軸に取り付けてもよい。
【0044】
そして、第1回転軸を時計回りに回転させつつ、コイル用シートロール37Aのカバーフィルム35から、1列の積層シートパターン36aを剥離させる(剥離工程)。詳しくは、カバーフィルム35と積層シートパターン36aの接着層パターン34aとを剥離させる。このとき、熱硬化性の接着層パターン34aはBステージ状態であるため、カバーフィルム35と接着層パターン34aとはそれほど強固に接着されておらず、カバーフィルム35と接着層パターン34aとの剥離性を維持することができる。
【0045】
上記剥離工程と同時に第3回転軸を時計回りに回転させつつ、剥離された積層シートパターン36aを固定鉄心38の周り巻き付ける(巻体形成工程)。すなわち、銅箔パターン32a、絶縁層パターン33a、及び接着層パターン34aを含む積層シートパターン36aを、固定鉄心38の軸線(所定軸線)の周りに複数回巻いて巻体31を形成する。このとき、テンションローラTRにより、積層シートパターン36aに所定の張力をかける。また、積層シートパターン36aの幅方向の端部をセンサSにより検出し、センサSによる端部の検出結果に基づいて、固定鉄心38の軸線方向で端部同士がずれないように第3回転軸(固定鉄心38又は巻き芯)の軸線方向の位置を調節する。これにより、固定鉄心38の周りに複数回巻かれた積層シートパターン36aにおいて、固定鉄心38の軸線方向における積層シートパターン36aの端部同士のずれを、積層シートパターン36aの幅に対して2%以下とする。
【0046】
巻体31では、積層シートパターン36aが巻体31の径方向に重ねられて巻かれている。このため、巻体31の径方向で隣接する積層シートパターン36a同士では、一方の銅箔パターン32aに他方の接着層パターン34aが密着させられる。したがって、巻体31の径方向で隣接する積層シートパターン36a同士は、接着層パターン34aの接着力により接着される。
【0047】
また、上記剥離工程及び上記巻体形成工程と同時に第2回転軸を時計回りに回転させつつ、1列の積層シートパターン36aが剥離されたコイル用シート37を、ロール芯51Bにより巻き取る(巻き取り工程)。これにより、コイル用シートロール37Bが作製される。
【0048】
コイル用シートロール37Aから1列の積層シートパターン36aを剥離させて、固定鉄心38の周りに終端まで巻き付けることにより巻体31が完成する。その後、コイル用シートロール37Aとコイル用シートロール37Bとを付け替え、新たな固定鉄心38を第3回転軸に取り付けて上記と同様の工程を行う。以上の工程を、コイル用シート37の6列の積層シートパターン36aを全て使用するまで繰り返すことで、6つの巻体31が完成する。なお、コイル用シートロール37Aとコイル用シートロール37Bとを付け替える代わりに、コイル用シートロール37A及びコイル用シートロール37Bを反時計回りに回転させて、コイル用シートロール37Bのカバーフィルム35から、1列の積層シートパターン36aを剥離させて固定鉄心38の周りに巻き付けてもよい。
【0049】
次に、図7を参照して、巻体31の熱硬化性の接着層パターン34aを硬化させる熱硬化工程について説明する。
【0050】
図6の工程により形成された巻体31では、熱硬化性の接着層パターン34aはBステージ状態であるため、接着層パターン34aは未だ硬化していない。そこで、巻体31を加熱することにより、接着層パターン34aを熱硬化させる。詳しくは、ヒータHの表面と巻体31の軸線方向(所定軸線方向)とが垂直になるように、ヒータH上に巻体31を載置する。ヒータHの表面に、巻体31の軸線方向の一端面を接触させる。そして、軸線方向の端面から巻体31を、ヒータHにより略120℃で略2時間加熱する。これにより、銅箔パターン32aによって巻体31の軸線方向に効率的に熱が伝達され、巻体31の内部まで熱が伝達されることにより、巻体31の内部の接着層パターン34aも十分に熱硬化される。
【0051】
次に、図8を参照して、巻体31の軸線方向端面に溶射によりアルミナ層39を形成する工程、及びアルミナ層39と冷却プレート41とを接着剤40により接着する工程について説明する。図8は、図1の領域Cの拡大断面図である。
【0052】
複数回巻かれた積層シートパターン36aにより形成された巻体31の軸線方向(図8の上下方向)端面では、積層シートパターン36aの各層(32a,33a,34a)の間にへこみが形成されている。そこで、巻体31の軸線方向端面に、積層シートパターン36aの各層の間のへこみを埋めるように、アルミナの溶射によりアルミナ層39を形成する。これにより、巻体31の軸線方向端面は、アルミナ層39により覆われている。アルミナは、純度98%以上のものが使用されている。続いて、アルミナ層39の表面を、平坦化して、所定の平滑度に仕上げる。特に、アルミナの純度が98%以上であるため、アルミナ層39の表面を非常に平滑に仕上げることができる。以上の工程により、コイル30が製造される。
【0053】
続いて、アルミナ層39の表面に所定の厚みで接着剤40を塗布し、冷却プレート41を接着する。冷却プレート41の表面も、所定の平滑度に仕上げられている。接着剤40は、電気絶縁性であり、耐熱性樹脂を主成分として形成されている。接着剤40は、シリコーン樹脂を主成分とする接着剤であり、略10μmの厚みとなっている。
【0054】
シリコーン樹脂を主成分とする接着剤は、加熱されることにより低分子シロキサンを発生することがある。低分子シロキサンとは、シロキサンモノマー単位として3〜20量体程度のものをいう。低分子シロキサンは、導電部の導通不良や、光学系の曇りの原因となる。低分子シロキサンの低減のためには、特開平7−330905等に記載された方法を好適に用いることができる。接着剤40中に含まれる低分子シロキサンの合計含有量を50ppm以下とすることで、上述の不具合を抑えることができる。
【0055】
上述したコイル30の冷却構造10において、接着剤40の厚みを10μmと30μmとで変化させて、冷却水入口側及び出口側におけるコイル30の温度上昇を測定した結果を図9〜12に示す。図9は接着剤40の厚み10μm且つ冷却水入口側、図10は接着剤40の厚み30μm且つ冷却水入口側、図11は接着剤40の厚み10μm且つ冷却水出口側、図12は接着剤40の厚み30μm且つ冷却水出口側の結果をそれぞれ示している。シリコーン樹脂を主成分とする接着剤40の熱伝導率は0.2(W/mK)であり、厚み10μmでの熱抵抗は1.45(mK/W)であり、厚み30μmでの熱抵抗は4.34(mK/W)である。
【0056】
冷却水入口側における図9のグラフと図10のグラフとを比較すると、コイル30に電力P1を供給した場合に、いずれの冷却水流量においても、接着剤40の厚み30μmの場合のコイル30の温度上昇は、接着剤40の厚み10μmの場合のコイル30の温度上昇よりも5℃程度高くなっている。また、冷却水出口側における図11のグラフと図12のグラフとを比較すると、コイル30に電力P1を供給した場合に、いずれの冷却水流量においても、接着剤40の厚み30μmの場合のコイル30の温度上昇は、接着剤40の厚み10μmの場合のコイル30の温度上昇よりも5℃程度高くなっている。
【0057】
このため、接着剤40の厚みが薄いほど、コイル30の温度上昇を抑制することができる。しかしながら、コイル30への通電時に、銅箔パターン32aの温度が上昇して熱膨張する。このため、銅箔パターン32aから熱が伝達されたアルミナ層39も熱膨張することとなる。一方、冷却プレート41は、冷却水により冷却されているため、アルミナ層39と比較して温度上昇が小さくなり、熱膨張が抑制されている。このため、アルミナ層39と冷却プレート41とで熱膨張量に差が生じて、アルミナ層39及び冷却プレート41に熱応力が発生することとなる。
【0058】
ここで、銅箔パターン32aの線膨張係数(熱膨張率)と絶縁層パターン33aの線膨張係数とが略等しいため、コイル30への通電時に銅箔パターン32a及び絶縁層パターン33aが熱膨張したとしても、銅箔パターン32aの膨張量と絶縁層パターン33aの膨張量とに差が生じることを抑制することができる。
【0059】
また、接着剤40は、シリコーン樹脂を主成分としており弾性を有するため、アルミナ層39と冷却プレート41との熱膨張量の相違に応じて弾性変形する。ただし、接着剤40の厚みが薄すぎると、銅箔パターン32aへの通電時における熱膨張量の差に接着剤40の弾性変形が追従できず、アルミナ層39又は冷却プレート41から接着剤40が剥離するおそれがある。この点、接着剤40は、銅箔パターン32aへの通電時における弾性変形によりアルミナ層39及び冷却プレート41から剥離せず、且つ熱抵抗が所定値よりも小さくなる厚みで形成されている。具体的には、本願発明者の実験によると、接着剤40の厚みが5μmよりも厚く且つ30μmよりも薄く設定されていることが望ましく、厚みを10μmに設定することが最も望ましい。
【0060】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0061】
・銅箔32、絶縁層33、及び接着層34をエッチングにより所定形状に切断するため、接着層34が熱硬化する温度(熱硬化温度)よりも低い温度でこれらの層を切断することができる。これに対して、絶縁層33及び接着層34をレーザで焼き切る場合は、発生する熱により熱硬化性の接着層34が熱硬化して、カバーフィルム35と接着層34との剥離性が低下するおそれがある。この点、上記工程によれば、熱硬化性の接着層34が熱硬化することを抑制することができ、カバーフィルム35と接着層34との剥離性が低下することを抑制することができる。
【0062】
・銅箔32の一面に絶縁層33を形成する溶液状組成物を塗布して乾燥及び硬化させることにより絶縁層33を設けるため、銅箔32に絶縁層33を密着させることができる。絶縁層33の乾燥及び硬化時には未だ接着層34が設けられていないため、絶縁層33の乾燥及び硬化に際して、熱硬化性の接着層34が熱硬化することを避けることができる。そして、接着層34が熱硬化する温度よりも低い温度で、接着層34における絶縁層33と反対側の面にカバーフィルム35が設けられるため、カバーフィルム35を設ける際に熱硬化性の接着層34が熱硬化することを抑制することができる。
【0063】
・絶縁層33は、ポリイミドを主成分に形成されているため、耐熱性及び絶縁性に優れている。そして、第2切断工程は、銅箔32及びカバーフィルム35を溶解させず、ポリイミドを溶解させるエッチング液により、絶縁層33をエッチングする工程を含む。このため、銅箔32及びカバーフィルム35がエッチング液により溶解されることを避けつつ、絶縁層33をエッチングにより切断することができる。
【0064】
・接着層34は、エポキシ樹脂とその硬化剤を主成分に形成されているため、熱硬化性及び接着性を有している。そして、第2切断工程は、銅箔32及びカバーフィルム35を溶解させず、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを溶解させるエッチング液により、接着層34をエッチングする工程を含む。このため、銅箔32及びカバーフィルム35がエッチング液により溶解されることを避けつつ、接着層34をエッチングにより切断することができる。
【0065】
・所定形状に切断された銅箔パターン32aをマスクとして、絶縁層33及び接着層34を所定形状にエッチングするため、絶縁層33及び接着層34をエッチングするためのマスクを形成する工程を省略することができる。
【0066】
・銅箔パターン32aの熱膨張率と絶縁層パターン33aの熱膨張率とが略等しいため、コイル30への通電時に銅箔パターン32a及び絶縁層パターン33aが熱膨張したとしても、銅箔パターン32aの膨張量と絶縁層パターン33aの膨張量とに差が生じることを抑制することができる。その結果、熱膨張量の差に起因する銅箔パターン32aと絶縁層パターン33aとの剥離を抑制することができる。
【0067】
・熱膨張率が17ppm/℃である銅箔32に対して、絶縁層33の熱膨張率を10〜24ppm/℃に特定することで、熱膨張量の差に起因する銅箔32と絶縁層33との剥離を抑制することができる。
【0068】
・銅箔32は、表面を粗くするウェットブラストが行われているため、銅箔32に接する絶縁層33及び接着層34と銅箔32との密着性(接着性)を向上させることができる。
【0069】
・接着層パターン34aを熱硬化させることにより、積層シートパターン36a同士の接着力が向上し、コイル30への通電時に積層シートパターン36a同士がずれたり剥離したりすることを抑制することができるとともに、コイル30自体の強度を向上させることができる。
【0070】
・所定軸線の周りに複数回巻かれた積層シートパターン36aにおいて、所定軸線方向の端部同士のずれが積層シートパターン36aの幅に対して2%以下となっている。そして、接着層34の熱硬化により積層シートパターン36a同士の接着力が向上しているため、積層シートパターン36a同士のずれが小さい状態を維持することができる。
【0071】
・銅箔パターン32a及び耐熱性の絶縁層パターン33aが、熱硬化性で未硬化の接着層パターン34aを介してカバーフィルム35に接着されたコイル用シート37において、接着層パターン34aとカバーフィルム35とが剥離させられる(剥離工程)。このとき、熱硬化性の接着層パターン34aは未硬化であるため、カバーフィルム35と接着層パターン34aとはそれほど強固に接着されておらず、カバーフィルム35と接着層パターン34aとの剥離性を維持することができる。
【0072】
・剥離工程により剥離された銅箔パターン32a、絶縁層パターン33a、及び接着層パターン34aを含む積層シートパターン36aが、所定軸線の周りに複数回巻かれて巻体31が形成される(巻体形成工程)。このとき、巻体31の径方向で隣接する積層シートパターン36a同士が、接着層パターン34aの接着力により接着されるため、積層シートパターン36aを巻いて巻体31を形成する際に、積層シートパターン36a同士がずれることを抑制することができる。
【0073】
・巻体形成工程により形成された巻体31が加熱されて、接着層パターン34aが熱硬化させられる(熱硬化工程)。これにより、積層シートパターン36a同士の接着力を向上させることができ、コイル30への通電時に積層シートパターン36a同士がずれたり剥離したりすることを抑制することができるとともに、コイル30自体の強度を向上させることができる。
【0074】
・積層シートパターン36aに所定の張力をかけた状態で積層シートパターン36aが巻かれるため、積層シートパターン36a同士の間に隙間ができることを抑制することができる。ここで、積層シートパターン36aに所定の張力をかけた状態で積層シートパターン36aを巻くと、積層シートパターン36a同士がずれた場合のずれ量が大きくなり易い。この点、積層シートパターン36a同士を接着層パターン34aの接着力により接着させるため、積層シートパターン36a同士のずれを抑制することができる。
【0075】
・積層シートパターン36aの幅方向の端部がセンサSにより検出され、センサSによる端部の検出結果に基づいて、所定軸線方向における積層シートパターン36aの位置が調節される。このため、積層シートパターン36aを所定軸線の周りに巻く際に、所定軸線方向において積層シートパターン36a同士がずれることを抑制することができる。
【0076】
・巻体31の中心軸線となる所定軸線の方向から巻体31がヒータHで加熱されるため、銅箔パターン32aによって所定軸線の方向に熱を伝達することができる。したがって、巻体31の内部まで熱が伝達され易くなり、巻体31の内部の接着層パターン34aを熱硬化させ易くなる。なお、巻体31を径方向からヒータHで加熱した場合は、絶縁層パターン33aや接着層パターン34aにより径方向への熱伝達が抑制されるため、巻体31の内部まで熱を伝達しにくくなる。
【0077】
・コイル30は、所定軸線の周りに複数回巻かれた帯状の銅箔パターン32aを含んでいる。そして、コイル30における上記所定軸線の方向の端面に溶射によりアルミナ層39が形成され、アルミナ層39の表面が平坦化されている。このため、複数回巻かれた銅箔パターン32aによりコイル30の端面に形成された凹凸を、アルミナ層39により埋めることができ、平坦化されたアルミナ層39の表面までコイル30の熱を効率的に伝達することができる。
【0078】
・冷却プレート41は、アルミナを主体に板状に形成され、内部に冷却水の流路41aが形成されている。アルミナ層39と冷却プレート41とが接着剤40により接着されているため、アルミナ層39から冷却プレート41への熱伝達性を確保することができる。冷却プレート41に伝達された熱は、冷却プレート41の内部の流路41aを流通する冷却水により外部等へ移動させられる。
【0079】
・接着剤40は、アルミナ層39と冷却プレート41との熱膨張量の相違に応じて弾性変形する。このため、コイル30への通電時に、アルミナ層39の熱膨張量と冷却プレート41の熱膨張量とに差が生じたとしても、その熱膨張量の差を接着剤40により吸収することができる。その結果、冷却プレート41に作用する熱応力を緩和することができ、冷却プレート41の破損を抑制することができる。
【0080】
・接着剤40は、銅箔パターン32aへの通電時における弾性変形によりアルミナ層39及び冷却プレート41から剥離せず、且つ熱抵抗が所定値よりも小さくなる厚みで形成されている。このため、接着剤40は、アルミナ層39の熱膨張量と冷却プレート41の熱膨張量との差を吸収することと、アルミナ層39から冷却プレート41への熱伝達性を確保することとを両立することができる。
【0081】
・接着剤40は電気絶縁性であるため、アルミナ層39に加えて接着剤40によっても、所定軸線の方向におけるコイル30の電気絶縁性を向上させることができる。
【0082】
・接着剤40は耐熱性樹脂を主成分として形成されているため、コイル30の発熱により接着剤40が高温になったとしても、接着剤40の特性を維持することができる。
【0083】
・接着剤40は、シリコーン樹脂を主成分として、5μmよりも厚く且つ30μmよりも薄く形成されている。このため、アルミナ層39の熱膨張量と冷却プレート41の熱膨張量との差を効果的に吸収するとともに、アルミナ層39から冷却プレート41への熱伝達性を十分に確保することができる。
【0084】
・接着剤40中に含まれる低分子シロキサン(シロキサンモノマー単位として3〜20量体)の合計含有量は50ppm以下であるため、コイル30への通電時におけるシロキサンの発生を効果的に抑制することができる。
【0085】
・銅箔32の上面に絶縁層33を形成する溶液状組成物を塗布し、塗布された溶液状組成物の有機溶剤を乾燥させて、固化した成分を加熱して硬化させることで絶縁層33を形成している。このため、接着剤等を使用することなく、銅箔32の一面に絶縁層33を設けることができる。したがって、接着剤等によりコイル30の耐熱性が制限されることを、避けることができる。
【0086】
・ポリイミドとシリカとのハイブリッド材料により、絶縁層33としてポリイミド・シリカハイブリッドを形成しているため、シリカをハイブリッドしていないポリイミドよりも銅箔32に対する密着性を向上させることができる。
【0087】
・銅箔32の線膨張係数(熱膨張率)と絶縁層33の線膨張係数とを略等しくしているため、銅箔32の一面に絶縁層33を形成した後に、それらが反ることを抑制することができる。
【0088】
・巻体31の軸線方向端面がアルミナ層39により固められているため、コイル30の強度を向上させることができる。
【0089】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。
【0090】
・銅箔32をエッチングする際のマスクMは、絶縁層33をエッチングする際のエッチング液、又は接着層34をエッチングする際のエッチング液で溶解するものであってもよい。こうした構成によれば、マスクMを除去する工程7を省略することができる。また、工程9で用いるエッチング液としては、工程8で用いたポリイミドを溶解させるエッチング液と同じものであってよく、その場合、工程8および工程9を同時に行えるため、工程簡略化のため好ましい。
【0091】
・接着層34として、エポキシ樹脂とその硬化剤とアクリルエラストマーとを主成分として形成されたもの以外を採用することもできる。
【0092】
・絶縁層33として、ポリイミドを主成分に形成されたもの以外を採用することもできる。
【0093】
・コイル用シート37を、必ずしもコイル用シートロール37Aの形状にする必要はなく、シート状、帯状のまま使用することもできる。
【0094】
・コイル用シート37において、各層の形成順序を変更することもできる。図13に示すように、工程1及び工程2を図2の工程1及び工程2と同様に行い、工程3では、銅箔32における絶縁層33と反対側の面に接着層34を形成する。工程4では、接着層34にカバーフィルム35を貼り付ける。工程5では、絶縁層33をエッチングする際のマスクMを形成し、工程6では、絶縁層33をエッチングする。工程7では、マスクMを除去し、工程8では、銅箔32をエッチングする。工程9では、銅箔パターン32aをマスクとして、接着層34をエッチングする。工程10では、コイル用シート37の洗浄を行う。こうした工程により、カバーフィルム35、接着層パターン34a、銅箔パターン32a、及び絶縁層パターン33aが順に積層されたコイル用シート37を製造することもできる。なお、絶縁層33及び接着層34が熱硬化することを抑制できる、あるいはカバーフィルム35と接着層34との剥離性の低下を抑制できるのであれれば、絶縁層33及び接着層34をレーザで焼き切ってもよい。
【0095】
・コイル用シート37は、銅箔32、絶縁層33、接着層34、及びカバーフィルム35以外の層を含んでいてもよい。例えば、コイル用シート37として、カバーフィルム35、接着層34、銅箔32、接着層34、絶縁層を順に積層した構成を採用することもできる。この場合は、絶縁層を乾燥及び硬化させることに代えて、銅箔32に接着層34により絶縁層を接着することで、接着層34をBステージ状態に維持することができる。
【0096】
・導体層として、銅箔32に代えて、銀箔や、アルミ箔を採用することもできる。その場合も、導体層の熱膨張率と絶縁層の熱膨張率とを略等しくすることが望ましいが、導体層の熱膨張率と絶縁層の熱膨張率とが必ずしも略等しくなくてもよい。
【0097】
・積層シートパターン36aに所定の張力をかけた状態で積層シートパターン36aを巻いたが、この所定の張力は積層シートパターン36aの巻き初めから巻き終わりまで一定であってもよいし、途中で変更してもよい。
【0098】
・シリコーン樹脂を主成分とする接着剤に対する低分子シロキサン低減処理として、アセトンによる洗浄処理に代えて減圧処理を行ってもよい。こうした処理によっても、低分子シロキサンの含有量を劇的に減少させることができる。
【0099】
・接着剤40がシリコーン樹脂を主成分としないものであれば、低分子シロキサン低減処理を省略してもよい。例えば、ポリウレタン系の接着剤や、ゴム系の接着剤のうち、熱伝導率が比較的高いものを用いることもできる。
【0100】
・電磁アクチュエータの種類によっては、固定鉄心38に代えてアルミナ等の非磁性体の固定芯を用いることもできる。例えば、コイル30を直線状に複数並べて、冷却プレート41上に配置した永久磁石を含む可動部を移動させるリニアモータ等に用いることができる。
【0101】
・冷却プレート41の流路41aは、任意の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0102】
30…コイル、31…巻体、32…銅箔(導体層)、32a…銅箔パターン(導体層)、33…絶縁層、33a…絶縁層パターン(絶縁層)、34…接着層、34a…接着層パターン(接着層)、35…カバーフィルム(基層)、36…積層シート、36a…積層シートパターン(積層シート)、37…コイル用シート、37A…コイル用シートロール、37B…コイル用シートロール、37a…初期シート、38…固定鉄心(軸芯)、39…アルミナ層、40…接着剤、41…冷却プレート、41a…流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13