【文献】
タフマーTMM銘柄の基本物性,三井化学株式会社,2012年 9月 7日,URL,http://jp.mitsuichem.com/service/functional_polymeric/mels/tafmer/pdf/brand005.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体と、前記ポリアセタール樹脂成形体及び前記ポリエチレン樹脂成形体の間に設けられる中間層とを有する複合成形体であって、
前記中間層が、ポリアセタール樹脂組成物で構成され、
前記ポリアセタール樹脂組成物がポリアセタール樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)とを含み、
前記ポリアセタール樹脂(A)及び前記ポリエチレン樹脂(B)の総質量に占める前記ポリアセタール樹脂(A)の配合割合が10〜90質量%であり、
前記ポリアセタール樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが30g/10分以下であり、
前記ポリエチレン樹脂(B)が変性ポリエチレン樹脂を含み、
変性率が前記ポリエチレン樹脂(B)の総質量を100質量%とした場合に0.01質量%以上であり、
前記ポリエチレン樹脂(B)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが2.5g/10分以下である、複合成形体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているポリアセタール樹脂組成物においては、ポリアセタール系樹脂との接着性が不十分であった。このため、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体、および、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体のいずれに対しても優れた接着性を有するポリアセタール樹脂組成物が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体、および、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体のいずれに対しても優れた接着性を有する
ポリアセタール樹脂組成物を用いた複合成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特にポリエチレン樹脂のメルトフローレイトの値を特定の範囲にすることが、ポリアセタール樹脂成形体およびポリエチレン樹脂成形体に対する接着性を向上させるために極めて重要であることを見出した。そして、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち本発明
は、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体と、前記ポリアセタール樹脂成形体及び前記ポリエチレン樹脂成形体の間に設けられる中間層とを有する複合成形体であって、前記中間層が、ポリアセタール樹脂組成物で構成され、前記ポリアセタール樹脂組成物がポリアセタール樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)とを含み、前記ポリアセタール樹脂(A)及び前記ポリエチレン樹脂(B)の総質量に占める前記ポリアセタール樹脂(A)の配合割合が10〜90質量%であり、前記ポリアセタール樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトが30g/10分以下であり、前記ポリエチレン樹脂(B)が変性ポリエチレン樹脂を含み、変性率が前記ポリエチレン樹脂(B)の総質量を100質量%とした場合に0.01質量%以上であり、前記ポリエチレン樹脂(B)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイト(以下、本明細書において「MFR」という)が2.5g/10分以下である
複合成形体である。
【0011】
この
複合成形体によれば、ポリアセタール樹脂組成物
が、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体、および、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体のいずれに対しても優れた接着性を有することが可能となる。
そして、中間層が、上述したポリアセタール樹脂組成物で構成され、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体との接着性を十分に向上させることができるため、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体との間の剥離を十分に抑制できる。従って、複合成形体の長寿命化が可能となり、交換頻度を十分に低減させることができる。
【0012】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリエチレン樹脂(B)は変性ポリエチレン樹脂のほかに1種以上の未変性ポリエチレン樹脂を含んでいてもよい。このときのポリエチレン樹脂(B)における変性ポリエチレン樹脂の割合は1〜100質量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜100質量%である。
【0013】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリエチレン樹脂(B)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.01〜2.0g/10分であることが好ましい。
【0014】
この場合、ポリエチレン樹脂(B)のMFRが0.01〜2.0g/10分の範囲を外れる場合に比べて、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体、および、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体のいずれに対してもより優れた接着性を有することが可能となる。
【0015】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリアセタール樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが20g/10分以下であることが好ましい。
【0016】
この場合、MFRが20g/10分を超える場合に比べ、ポリアセタール樹脂成形体に対して、より優れた接着性を有することが可能となる。
【0017】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリアセタール樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが10g/10分以下であることが好ましい。
【0018】
この場合、MFRが10g/10分を超える場合に比べ、ポリアセタール樹脂成形体に対して、より優れた接着性を有することが可能となる。
【0019】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリエチレン樹脂(B)の密度が0.954g/cm
3以下であることが好ましい。
【0020】
この場合、ポリエチレン樹脂(B)の密度が0.954g/cm
3を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂成形体に対してより優れた接着性を有することが可能となる。
【0021】
また、上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリアセタール樹脂(A)がオキシメチレン基とオキシエチレン基とを含み、オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が1.0mol以上であることが好ましい。
【0022】
この場合、オキシエチレン基含有量が1.0mol未満である場合と比べて、ポリエチレン樹脂成形体に対してより優れた接着性を有することが可能となる。
【0023】
また、上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリエチレン樹脂(B)に含まれる変性ポリエチレン樹脂が無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン樹脂であることが好ましい。
【0024】
この場合、変性ポリエチレン樹脂が無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン樹脂以外の変性ポリエチレン樹脂である場合に比べて、ポリアセタール樹脂の分解を促進することなく、ポリアセタール樹脂を溶融混練した際のポリアセタール樹脂との相溶性、分散性に優れる。
【0027】
また本発明は、上記複合成形体を製造する複合成形体の製造方法であって、前記中間層を準備する第1工程と、前記ポリアセタール樹脂成形体を準備する第2工程と、前記ポリエチレン樹脂成形体を準備する第3工程とを含み、前記第1工程、前記第2工程及び前記第3工程を経て前記複合成形体を製造する
複合成形体の製造方法である。
【0028】
この場合、得られる複合成形体は、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体との間の剥離を十分に抑制でき、長寿命化が可能となり、交換頻度を十分に低減できる。
【0029】
上記複合成形体の製造方法において、前記第1工程を前記第2工程及び前記第3工程よりも前に行い、前記第2工程が、前記ポリアセタール樹脂を溶融状態で前記中間層に接触させ、前記中間層上に前記ポリアセタール樹脂成形体を形成することにより前記ポリアセタール樹脂成形体を準備する工程であり、前記第3工程が、前記ポリエチレン樹脂を溶融状態で前記中間層に接触させ、前記中間層上に前記ポリエチレン樹脂成形体を形成することにより前記ポリエチレン樹脂成形体を準備する工程であることが好ましい。
【0030】
この場合、第1工程を第2工程及び第3工程よりも前に行わない場合に比べて、得られる複合成形体において、中間層とポリアセタール樹脂成形体との接着強度、中間層とポリエチレン樹脂成形体との接着強度をより向上させることができる。
【0031】
上記複合成形体の製造方法では、具体的には、前記第1工程、前記第2工程及び前記第3工程を3色成形又はインサート成形によって行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体、および、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体のいずれに対しても優れた接着性を有する
ポリアセタール樹脂組成物を用いた複合成形体およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の複合成形体の実施形態について
図1を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図1に示すように、複合成形体100は、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体10と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体20と、ポリアセタール樹脂成形体10とポリエチレン樹脂成形体20との間に設けられ、両者を接着させる中間層30とを有する。
【0036】
中間層30は、ポリアセタール樹脂(A)とポリエチレン樹脂(B)とを含むポリアセタール樹脂組成物で構成されている。そして、このポリアセタール樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂(A)及びポリエチレン樹脂(B)の総質量に占めるポリアセタール樹脂(A)の配合割合が10〜90質量%であり、ポリアセタール樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが30g/10分以下であり、ポリエチレン樹脂(B)が変性ポリエチレン樹脂を含み、変性率がポリエチレン樹脂(B)の総質量を100質量%とした場合に0.01質量%以上であり、ポリエチレン樹脂(B)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2.5g/10分以下である。
【0037】
中間層30は、上述したポリアセタール樹脂組成物で構成されており、このポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂成形体およびポリエチレン樹脂成形体のいずれに対しても優れた接着性を有する。このため、複合成形体100によれば、ポリアセタール樹脂成形体10とポリエチレン樹脂成形体20との間の剥離を十分に抑制できる。従って、例えば複合成形体100を燃料輸送部品として使用した場合に、揮発燃料が、剥離によって生じたポリアセタール樹脂成形体10とポリエチレン樹脂成形体20との間の隙間を通って放出されることを十分に抑制することができる。
【0038】
次に、上述したポリアセタール樹脂成形体10、ポリエチレン樹脂成形体20、及び中間層30について詳細に説明する。
【0039】
(ポリアセタール樹脂成形体)
ポリアセタール樹脂成形体10に含まれるポリアセタール樹脂は2価のオキシメチレン基を有するポリアセタール樹脂であれば特に限定されるものではなく、2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、例えば2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよい。
【0040】
上記ポリアセタール樹脂において、オキシメチレン基およびオキシエチレン基の総質量に占めるオキシエチレン基の割合は特に限定されるものではなく、オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン含有量が例えば0〜5molであればよい。
【0041】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソラン又はエチレンオキシド等をコモノマーとして用いればよい。
【0042】
上記ポリアセタール樹脂のMFRについても特に限定されるものではなく、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRの値は例えば0.1〜200g/10分であればよい。
【0043】
ポリアセタール樹脂成形体10はポリアセタール樹脂を含んでいればよい。このため、ポリアセタール樹脂成形体10はポリアセタール樹脂のみで構成されていてもよいし、ポリアセタール樹脂と添加剤とで構成されていてもよい。添加剤としては、例えば熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料等が配合されてもよい。
【0044】
(ポリエチレン樹脂成形体)
上記ポリエチレン樹脂成形体20に含まれるポリエチレン樹脂についても特に限定されるものではなく、例えば高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂あるいは超低密度ポリエチレン樹脂などを用いることができる。ポリエチレン樹脂成形体20はポリエチレン樹脂を含んでいればよい。このため、ポリエチレン樹脂成形体20はポリエチレン樹脂のみで構成されていてもよいし、ポリエチレン樹脂と添加剤とで構成されていてもよい。添加剤としては、例えば熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料等が配合されてもよい。
【0045】
(中間層)
(A)ポリアセタール樹脂
上記中間層30を構成するポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂(A)は2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよいが、2価のオキシエチレン基を構成単位として含むコポリマーであることが好ましい。ポリアセタール樹脂(A)が2価のオキシエチレン基を構成単位として含むコポリマーであると、溶融混練時および射出成形時の熱安定性に優れる。
【0046】
ここで、上記ポリアセタール樹脂(A)において、オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が1.0mol以上であることが好ましい。この場合、オキシエチレン基の割合が1.0mol未満である場合と比べて、ポリエチレン樹脂成形体に対してより優れた接着性を有することが可能となる。オキシエチレン基の割合はさらに好ましくは1.2〜5.5molであり、特に好ましくは1.4〜4.0molである。
【0047】
上記ポリアセタール樹脂(A)を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3−ジオキソラン又はエチレンオキシド等をコモノマーとして用いればよい。
【0048】
上記ポリアセタール樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRは、上述したように30g/10分以下である。
【0049】
MFRが30g/10分を超える場合、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30とが優れた接着性を有さず、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30との剥離を十分に抑制することができない。ポリアセタール樹脂(A)のMFRはさらに好ましくは20g/10分以下であり、特に好ましくは10g/10分以下である。但し、ポリアセタール樹脂(A)のMFRは好ましくは0g/10分より大きく、より好ましくは1.5g/10分以上であり、さらに好ましくは2.0g/10分以上である。
【0050】
(B)ポリエチレン樹脂
上記中間層30を構成するポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂(B)は、上述したように変性ポリエチレン樹脂を含む。ここで、変性ポリエチレン樹脂とは、酸又は酸無水物によってグラフト変性されているポリエチレン樹脂のことをいう。
【0051】
本発明に係る変性ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン樹脂と、酸又は酸無水物と、ラジカル発生剤とを均一混合し処理することにより製造される。このような製造方法としては、具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、あるいはいわゆる気相グラフト法等が挙げられる。処理温度としては、ポリエチレン樹脂の劣化、酸又は酸無水物の分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、通常190〜350℃であり、とりわけ200〜300℃が好適である。
【0052】
本発明に係る変性ポリエチレン樹脂を製造するにあたり、加熱や洗浄などによって未反応モノマー(不飽和カルボン酸やその誘導体)や副生する諸成分などを除去する方法を採用することができる。
【0053】
グラフト変性に用いるラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジt−ブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、アセチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの中でも、半減期1分を得るための分解温度が、160〜200℃のものが好ましい。分解温度が低すぎると原料のポリエチレン樹脂(A)が押出機内で十分可塑化しないうちに分解反応が始まるため、反応率が低くなり、逆に分解温度が高すぎると、押出機内等で反応が完結せず、未反応の不飽和カルボン酸およびその誘導体の量が多くなる。
【0054】
変性の対象となるポリエチレン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂あるいは超低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
ポリエチレン樹脂を変性する酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
ポリエチレン樹脂を変性する酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ナジツク酸、無水メチルナジツク酸などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記変性ポリエチレン樹脂の中では、特に無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン樹脂が好ましい。この場合、変性ポリエチレン樹脂が無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン樹脂以外の変性ポリエチレン樹脂である場合に比べて、ポリアセタール樹脂の分解をより十分に抑制することができ、ポリアセタール樹脂を溶融混練した際のポリアセタール樹脂との相溶性、分散性に優れる。
【0058】
ポリエチレン樹脂(B)は変性ポリエチレン樹脂のほかに1種以上の未変性ポリエチレン樹脂を含んでいてもよい。このときのポリエチレン樹脂(B)における変性ポリエチレン樹脂の割合は1〜100質量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜100質量%である。
【0059】
未変性ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0060】
上記ポリエチレン樹脂(B)の変性率は、上述したようにポリエチレン樹脂の総質量に対して0.01質量%以上である。変性率が0.01質量%未満である場合、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30とが優れた接着性を有することができず、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30との剥離を十分に抑制することができない。ポリエチレン樹脂(B)の変性率は好ましくは0.05〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.10〜1.0質量%である。ここで、上記ポリエチレン樹脂(B)の変性率は以下のように定義される。すなわちポリエチレン樹脂(B)の変性率は、ポリエチレン樹脂100質量部に対する、ポリエチレン分子にグラフトされた酸又は酸無水物の質量部の割合(百分率)で定義する。
【0061】
上記ポリエチレン樹脂(B)の密度は0.954g/cm
3以下であることが好ましい。この場合、密度が0.954g/cm
3を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂成形体10に対してより優れた接着性を有することが可能となる。上記ポリエチレン樹脂(B)の密度は、さらに好ましくは0.912〜0.945g/cm
3である。ここで、上記ポリエチレン樹脂(B)の密度は、JIS K7112に準拠した方法により測定される。
【0062】
上記ポリエチレン樹脂(B)の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRは、上述したように2.5g/10分以下である。ここで、上記ポリエチレン樹脂(B)のMFRは、ASTM−D1238規格に準拠した方法により測定される。
【0063】
MFRが2.5g/10分を超える場合、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30とが優れた接着性を有することができず、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30との剥離を十分に抑制することができない。ポリエチレン樹脂(B)のMFRは好ましくは0.01〜2.0g/10分であり、特に好ましくは0.01〜1.8g/10分である。
【0064】
上記中間層30においては、上述したように、ポリアセタール樹脂(A)およびポリエチレン樹脂(B)の総質量に占めるポリアセタール樹脂(A)の配合率は10〜90質量%である。
【0065】
ポリアセタール樹脂(A)の配合率が10質量%未満である場合、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30とが優れた接着性を有することができず、ポリアセタール樹脂成形体10と中間層30との剥離を十分に抑制することができない。一方、ポリアセタール樹脂(A)の配合率が90質量%を超える場合、ポリエチレン樹脂成形体20と中間層30とが優れた接着性を有することができず、ポリエチレン樹脂成形体20と中間層30との剥離を十分に抑制することができない。ポリアセタール樹脂(A)およびポリエチレン樹脂(B)の総質量に占めるポリアセタール樹脂(A)の配合率は、好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。
【0066】
(C)その他の成分
中間層30を構成するポリアセタール樹脂組成物には、改質剤がさらに含まれていてもよい。ここで、改質剤としては、例えばイソシアネートなどが挙げられる。イソシアネートとしては、具体的にはイソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸へキシル、イソシアン酸オクチル、イソシアン酸デシル、イソシアン酸ドデシル、イソシアン酸ヘキサデシル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸エイコシル、メタクリル酸2−イソシアネートエチル、フェニルイソシアネートなどの一価のイソシアネート化合物、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサデカメチレンジイソシアネート、エイコサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネートやそのカルボジイミド変性体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートやそのカルボジイミド変性体、1,5−ナフタレンジイルジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイルジイソシアネートなどの二価イソシアネート化合物などが挙げられる。改質剤は、ポリアセタール樹脂及びポリエチレン樹脂の合計を100質量部とした場合に、0.05〜5.0質量部配合されることが好ましく、0.1〜1.0質量部配合されることがより好ましい。この場合、中間層30の靱性や接着性が改良されるという利点が得られる。
【0067】
次に、複合成形体100の製造方法について詳細に説明する。
【0068】
複合体100の製造方法は、中間層30を準備する第1工程と、ポリアセタール樹脂成形体10を準備する第2工程と、ポリエチレン樹脂成形体20を準備する第3工程とを含み、第1工程、第2工程及び第3工程を経て複合成形体100を製造するものである。ここで、第1工程、第2工程、第3工程の順番は問わない。すなわち、第1工程、第2工程及び第3工程を順次行ってもよいし、第2工程、第1工程及び第3工程を順次行ってもよいし、第3工程、第1工程、第2工程を順次行ってもよい。また第1工程、第2工程、第3工程は同時に行うことも可能である。
【0069】
具体的には、複合成形体100は、ポリアセタール樹脂成形体10、中間層30およびポリエチレン樹脂成形体20をそれぞれ成形した後、これらを互いに溶着する方法、ポリアセタール樹脂成形体10および中間層30を2色成形して2色成形体を形成した後、2色成形体にポリエチレン樹脂成形体20を溶着する方法、ポリエチレン樹脂成形体20および中間層30を2色成形して2色成形体を形成した後、2色成形体にポリアセタール樹脂成形体10を溶着する方法、ポリアセタール樹脂成形体10、中間層30およびポリエチレン樹脂成形体20を3色成形する方法、中間層30を準備した後、中間層30の両側にそれぞれポリアセタール樹脂成形体10及びポリエチレン樹脂成形体20を形成する方法等により製造される。この中では、生産性の観点からは、特にポリアセタール樹脂成形体10、中間層30およびポリエチレン樹脂成形体20を3色成形して複合成形体100を形成する方法が好ましい。
【0070】
ここで、ポリアセタール樹脂成形体10、中間層30およびポリエチレン樹脂成形体20を3色成形することにより複合成形体100を製造する方法について説明する。
【0071】
まず同一形状を有する3個の共通金型を回転板上に配置する。一方、互いに異なる形状を有する1次金型、2次金型及び3次金型を用意する。1次金型は共通金型とともにポリアセタール樹脂成形体10を製造するためのものであり、2次金型は、共通金型及びポリアセタール樹脂成形体10とともに、中間層30を製造するためのものである。3次金型は、共通金型、ポリアセタール樹脂成形体10および中間層30とともにポリエチレン樹脂成形体20を製造するためのものである。
【0072】
はじめに、1個の共通金型と、1次金型とでポリアセタール樹脂成形体10を製造する(第2工程)。次に、回転板を回転させ、ポリアセタール樹脂成形体10、共通金型及び2次金型によって形成される空間内に中間層形成用のポリアセタール樹脂組成物を加熱しながら供給した後、冷却する。
【0073】
こうしてポリアセタール樹脂成形体10上に中間層30が形成され、構造体が得られる(第1工程)。
【0074】
次に、回転板を回転させ、構造体、共通金型および3次金型によって形成される空間内にポリエチレン樹脂成形体20を形成するための原料を加熱しながら供給した後、冷却する。
【0075】
こうして構造体の中間層30上にポリエチレン樹脂成形体20が形成され(第3工程)、複合成形体100が得られる。
【0076】
なお、上記の製造方法においては、第2工程と第3工程の順番が入れ替わってもよい。
【0077】
また、上記製造方法のうち、複合成形体100における層間剥離を抑制する観点からは、中間層30を準備した後、中間層30の両側にそれぞれポリアセタール樹脂成形体10及びポリエチレン樹脂成形体20を形成する方法が好ましい。
【0078】
ここで、この製造方法について詳細に説明する。
【0079】
この製造方法では、まず中間層30を準備する(第1工程)。
【0080】
次に、ポリアセタール樹脂を溶融状態で中間層30に接触させ、中間層30上にポリアセタール樹脂成形体10を形成することによりポリアセタール樹脂成形体10を準備する(第2工程)。
【0081】
次に、ポリエチレン樹脂を溶融状態で中間層30に接触させ、中間層30上にポリエチレン樹脂成形体20を形成することによりポリエチレン樹脂成形体20を準備する(第3工程)。
【0082】
こうして複合成形体100が得られる。
【0083】
この製造方法によれば、第1工程を第2工程及び第3工程よりも前に行わない場合に比べて、得られる複合成形体100において、中間層30とポリアセタール樹脂成形体10との接着強度、中間層30とポリエチレン樹脂成形体20との接着強度をより向上させることができる。
【0084】
上記の製造方法においては、第2工程と第3工程の順番が入れ替わってもよいし、第2工程と第3工程とが同時に行われてもよい。
【0085】
上記第1工程、第2工程及び第3工程は、具体的には3色成形又はインサート成形により行うことができる。
【0086】
本発明の複合成形体は、例えばバルブ装置、リサーキュレーションライン、ベントライン、フューエルセンダーモジュール用フランジ、及び、燃料タンクの内壁面に接着される旋回槽等の燃料タンク接続部品などに適用することが可能である。
【0087】
また上記実施形態では、本発明のポリアセタール樹脂組成物が複合成形体100の中間層30を構成しているが、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、複合成形体100の中間層30を構成する材料のみならず、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体10と、ポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体20とを接続するための接着剤としても適用することが可能である。
【実施例】
【0088】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例および比較例において用いた材料は次のとおりである。
【0090】
(A)ポリアセタール樹脂
(A−1)ポリアセタール樹脂−1
オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が3.4molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が10g/10分であるアセタールコポリマー
(A−2)ポリアセタール樹脂−2
オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が1.4molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が9.0g/10分であるアセタールコポリマー
(A−3)ポリアセタール樹脂−3
オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が1.4molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が52g/10分であるアセタールコポリマー
(A−4)ポリアセタール樹脂−4
オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が1.4molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が2.5g/10分であるアセタールコポリマー
(A−5)ポリアセタール樹脂−5
オキシメチレン基を100molとした場合のオキシエチレン基含有量が3.4molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が27g/10分であるアセタールコポリマー
【0091】
重合体中のオキシメチレン基100mol当りのオキシエチレン基のmol数: 共重合体10gを100mlの3N−HCl水溶液に入れ、密閉容器中で、120℃、2時間加熱し分解させる。冷却後水溶液をガスクロマトグラフィー(FID)にて測定し、オキシエチレン基含有量を重合体のオキシメチレン基100molに対するmol数で表す。
【0092】
(B)ポリエチレン樹脂
(B−1)ポリエチレン樹脂―1
密度が0.922g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.35g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.28質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−2)ポリエチレン樹脂―2
密度が0.922g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.24g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.64質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−3)ポリエチレン樹脂―3
密度が0.954g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.26g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.29質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−4)ポリエチレン樹脂―4
密度が0.954g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.17g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.54質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−5)ポリエチレン樹脂―5
密度が0.925g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が11.6g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.20質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−6)ポリエチレン樹脂―6
密度が0.925g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が9.7g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.42質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−7)ポリエチレン樹脂―7
密度が0.956g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が15.9g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.21質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−8)ポリエチレン樹脂―8
密度が0.956g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が12.1g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.40質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−9)ポリエチレン樹脂―9
密度が0.922g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が1.0g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0質量%であるポリエチレン樹脂
(B−10)ポリエチレン樹脂―10
密度が0.922g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.9g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.28質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−11)ポリエチレン樹脂―11
密度が0.922g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が1.8g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.28質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−12)ポリエチレン樹脂―12
密度が0.922g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が2.8g/10分であり、無水マレイン酸変性率が0.28質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
(B−13)ポリエチレン樹脂−13
密度が0.954g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.26g/10分、無水マレイン酸変性率が0.29質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂40質量%と、密度が0.928g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.90g/10分の未変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂35質量%と、密度が0.908g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が1.0g/10分の未変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂25質量%からなる、密度が0.933g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.50g/10分、無水マレイン酸変性率が0.11質量%であるポリエチレン樹脂
(B−14)ポリエチレン樹脂−14
密度が0.954g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.17g/10分、無水マレイン酸変性率が0.54質量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂40質量%と、密度が0.928g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.90g/10分の未変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂35質量%と、密度が0.908g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が1.0g/10分の未変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂25質量%からなる、密度が0.933g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が0.50g/10分、無水マレイン酸変性率が0.21質量%であるポリエチレン樹脂
【0093】
(実施例1〜15及び比較例1〜11)
表1〜4に示すポリアセタール樹脂(A)およびポリエチレン樹脂(B)を、表1〜4に示す配合量にて川田製作所社製スーパーミキサーで混合して混合物を得た後に、この混合物を2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」、スクリュー径30mm)で溶融混練して押出を行い、押出機から吐出されるストランドを水槽で冷却しペレタイザーでカットして実施例1〜15および比較例1〜11のポリアセタール樹脂組成物のペレットを得た。なお、表1〜4において配合量の単位は質量%である。
【0094】
<接着性評価>
(1)ポリアセタール樹脂成形体(POM成形体)に対する接着性試験1
実施例1〜15および比較例1〜11のポリアセタール樹脂組成物のペレットを、射出成型機(日精樹脂工業社製PS−40)を用いて樹脂温度240℃、金型温度40℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の試験フィルムを得た。得られた試験フィルムの最も面積の大きい両面のうちの片面における片側半分(62mm長)を厚さ0.03mmのポリイミドからなる耐熱シールで保護した(ここで、上記片面のうち耐熱シールで保護した面を「保護面1」と呼び、耐熱シールで保護されていない面を「非保護面1」と呼ぶ)。そして、その試験フィルムを123mm×13mm×4.0mm(厚さ)の金型キャビティにインサートし、そこへポリアセタール樹脂(オキシメチレン基およびオキシエチレン基の総質量に占めるオキシエチレン基の割合が1.7molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が9g/10分であるアセタールコポリマー)を樹脂温度230℃、金型温度120℃の条件にて導入し試験フィルムの非保護面1及び耐熱シール上にポリアセタール樹脂成形体を形成し、積層体Aを得た。
【0095】
こうして得られた積層体Aから耐熱シールを、その耐熱シールの上に形成されたポリアセタール樹脂成形体の一部とともに剥がした。そして、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の下側治具(固定側)には、試験フィルムの非保護面1上に形成されたポリアセタール樹脂成形体の残部を固定し、上側治具(可動側)には試験フィルムを固定した。次いで、上側治具を上方向、すなわちポリアセタール樹脂成形体の残部と試験フィルムとの界面に対して垂直な方向に速度200mm/minで変位させることによりポリアセタール樹脂成形体から試験フィルムを剥離させた。すなわち、試験フィルムとポリアセタール樹脂成形体との間で90°剥離試験を行った。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張強度をポリアセタール樹脂成形体に対する試験フィルムの接着強度とした。結果を表1〜4に示す。
【0096】
(2)ポリアセタール樹脂成形体(POM成形体)に対する接着性試験2
ポリアセタール樹脂(オキシメチレン基およびオキシエチレン基の総質量に占めるオキシエチレン基の割合が1.7molであり、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、2.16kg)が9g/10分であるアセタールコポリマー)を、射出成型機(日精樹脂工業社製PS−40)を用いて樹脂温度230℃、金型温度120℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×3.2mm(厚さ)のポリアセタール樹脂成形体を得た。得られたポリアセタール樹脂成形体の最も面積の大きい両面のうち片面における片側半分(62mm長)を厚さ0.03mmのポリイミドからなる耐熱シールで保護した(ここで、上記片面のうち耐熱シールで保護した面を「保護面2」と呼び、耐熱シールで保護されていない面を「非保護面2」と呼ぶ)。そして、そのポリアセタール樹脂成形体を123mm×13mm×4.0mm(厚さ)の金型キャビティにインサートし、そこへ実施例1〜15および比較例1〜11のポリアセタール樹脂組成物のペレットを、樹脂温度230℃、金型温度120℃の条件にて導入しポリアセタール樹脂成形体の非保護面2及び耐熱シール上に試験フィルムを形成し、積層体Bを得た。
【0097】
上記積層体Bから耐熱シールを、その上に形成された試験フィルムの一部とともに剥がした。そして、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の下側治具(固定側)には、ポリアセタール樹脂成形体の非保護面2上に形成された試験フィルムの残部を固定し、上側治具(可動側)にはポリアセタール樹脂成形体を固定した。次いで、上側治具を上方向、すなわち試験フィルムの残部とポリアセタール樹脂成形体との界面に対して垂直な方向に速度200mm/minで変位させることにより試験フィルムからポリアセタール樹脂成形体を剥離させた。すなわち、試験フィルムとポリアセタール樹脂成形体との間で90°剥離試験を行った。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張強度をポリアセタール樹脂成形体に対する試験フィルムの接着強度とした。結果を表1〜4に示す。
【0098】
(3)ポリエチレン樹脂成形体(PE成形体)に対する接着性試験3
実施例1〜15および比較例1〜11のポリアセタール樹脂組成物のペレットを、射出成型機(日精樹脂工業社製PS−40)を用いて樹脂温度240℃、金型温度40℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の試験フィルムを得た。得られた試験フィルムの最も面積の大きい両面のうち片面における片側半分(62mm長)を厚さ0.03mmのポリイミドからなる耐熱シールで保護した(ここで、上記片面のうち耐熱シールで保護した面を「保護面3」と呼び、耐熱シールで保護されていない面を「非保護面3」と呼ぶ)。そして、その試験フィルムを123mm×13mm×4.0mm(厚さ)の金型キャビティにインサートし、そこへポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックHD HJ221」、密度0.949g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、21.6kg)13g/10分)を樹脂温度230℃、金型温度120℃の条件にて導入し試験フィルムの非保護面3及び耐熱シール上にポリエチレン樹脂成形体を形成し、積層体Cを得た。
【0099】
こうして得られた積層体Cから耐熱シールを、その上に形成されたポリエチレン樹脂成形体の一部とともに剥がした。そして、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の下側治具(固定側)には、試験フィルムの非保護面3上に形成されたポリエチレン樹脂成形体の残部を固定し、上側治具(可動側)には試験フィルムを固定した。次いで、上側治具を上方向、すなわちポリエチレン樹脂成形体の残部と試験フィルムとの界面に対して垂直な方向に速度200mm/minで変位させることによりポリエチレン樹脂成形体から試験フィルムを剥離させた。すなわち、試験フィルムとポリエチレン樹脂成形体との間で90°剥離試験を行った。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張強度をポリエチレン樹脂成形体に対する試験フィルムの接着強度とした。結果を表1〜4に示す。
【0100】
(4)ポリエチレン樹脂成形体(PE成形体)に対する接着性試験4
ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックHD HJ221」、密度0.949g/cm
3(JIS K7112準拠)、MFR(ASTM−D1238規格:190℃、21.6kg)13g/10分)を、射出成型機(日精樹脂工業社製PS−40)を用いて樹脂温度240℃、金型温度40℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×3.2mm(厚さ)のポリエチレン樹脂成形体を得た。得られたポリエチレン樹脂成形体の最も面積の大きい両面のうち片面における片側半分(62mm長)を厚さ0.03mmのポリイミドからなる耐熱シールで保護した(ここで、上記片面のうち耐熱シールで保護した面を「保護面4」と呼び、耐熱シールで保護されていない面を「非保護面4」と呼ぶ)。そして、そのポリエチレン樹脂成形体を123mm×13mm×4.0mm(厚さ)の金型キャビティにインサートし、そこへ実施例1〜15および比較例1〜11のポリアセタール樹脂組成物のペレットを、樹脂温度230℃、金型温度120℃の条件にて導入しポリエチレン樹脂成形体の非保護面4及び耐熱シール上に試験フィルムを形成し、積層体Dを得た。
【0101】
上記積層体Dから耐熱シールを、その上に形成された試験フィルムの一部とともに剥がした。そして、引張試験機(インストロン社製、製品名「5544」)の下側治具(固定側)には、ポリエチレン樹脂成形体の非保護面4上に形成された試験フィルムの残部を固定し、上側治具(可動側)にはポリエチレン樹脂成形体を固定した。次いで、上側治具を上方向、すなわち試験フィルムの残部とポリエチレン樹脂成形体との界面に対して垂直な方向に速度200mm/minで変位させることにより試験フィルムからポリエチレン樹脂成形体を剥離させた。すなわち、試験フィルムとポリエチレン樹脂成形体との間で90°剥離試験を行った。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張強度をポリエチレン樹脂成形体に対する試験フィルムの接着強度とした。結果を表1〜4に示す。
【0102】
接着性についての合格基準は下記の通りとした。
合格基準:接着性試験1〜4における接着強度がいずれも25N以上
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0103】
表1〜4に示す結果より、実施例1〜15で得られたポリアセタール樹脂組成物は全て、接着性について合格基準を満たした。それに対し、比較例1〜11で得られたポリアセタール樹脂組成物はそれぞれ、接着性について合格基準を満たさなかった。
【0104】
従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂成形体およびポリエチレン樹脂を含むポリエチレン樹脂成形体のいずれに対しても優れた接着性を有することが確認された。