特許第6247645号(P6247645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247645ハイドロゲル形成可能なヒアルロン酸をベースとする誘導体,その調製法,前記誘導体をベースとするハイドロゲル,その調製法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247645
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ハイドロゲル形成可能なヒアルロン酸をベースとする誘導体,その調製法,前記誘導体をベースとするハイドロゲル,その調製法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20171204BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20171204BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20171204BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08B37/08 Z
   A61K8/73
   A61K31/728
   A61K47/36
   A61P17/02
   A61P19/00
   A61P19/02
   A61L27/20
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-557995(P2014-557995)
(86)(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公表番号】特表2015-508118(P2015-508118A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】CZ2013000023
(87)【国際公開番号】WO2013127374
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】PV2012-136
(32)【優先日】2012年2月28日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフォヴァ,ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】プラヴダ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フォグラロヴァ,マルチェラ
(72)【発明者】
【氏名】ネムコヴァ,ミロスラヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ニエドバ,クルツィストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−297360(JP,A)
【文献】 特開2008−174510(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059326(WO,A2)
【文献】 特開平09−087236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0137456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
(式中,ArはフェニレンでRはエチレンであるか,又はArは1Hインドール−3,5−ジイルでRはエチレンであるか,又はArは1H−インドール−3,5−ジイルでRはカルボキシエチレンであり,Rは炭素原子数3〜7のアルキレンである)
にしたがって一部の構造単位が修飾されたヒアルロン酸誘導体。
【請求項2】
(a)式A:
(式中,nは25〜5000の範囲にある)
で表されるヒアルロン酸をプロトン性媒体中で4‐アセタミド‐TEMPO及びNaClOと反応させることにより,該ヒアルロン酸のグルコサミン部6位の水酸基を酸化して,式(II):
にしたがって修飾された,置換度(ヒアルロン酸の全構単位に対する式IIにしたがって修飾された構単位の割合)が5〜15%で分子量が10,000g/mol〜2,000,000g/molの範囲にあるヒアルロン酸のアルデヒド誘導体を得ること;
(b)次に,一般式(III):
(式中,ArはフェニレンでRはエチレンであるか,又はArは1Hインドール−3,5−ジイルでRはエチレンであるか,又はArは1H−インドール−3,5−ジイルでRはカルボキシエチレンであり,Rは炭素原子数3〜7のアルキレンである)で表される化合物を調製すること,ここでは式(IV):
Z‐NH―R―COOH (IV)
(式中,Zは第一級アミノ基の保護基であり,Rは上記で定義した意味を表す)で表されるスペーサー前駆体を,該式(IV)で表されるスペーサー前駆体のカルボン酸官能基を活性化する薬剤の存在下,40℃〜150℃の範囲の温度で1〜24時間,非プロトン性溶媒中で,式(V):
(式中,Ar,Rは上記で定義した意味を表す)
で表されるリガンドと反応させて,一般式(VI):
Z‐NH―R―CO‐NH‐R‐Ar‐OH (VI)
(式中,Ar,R,Z,Rは上記で定義した意味を表す)
で表される化合物を生成し,そして保護基Zを除去して上記一般式(III)で表される化合物を得る,
(c)次に,上記式(II)にしたがって修飾されたヒアルロン酸のアルデヒド誘導体を,ピコリン‐ボラン複合体の存在下,pH3〜8,室温で1〜72時間,上記一般式(III)で表される化合物と反応させ,一般式(I):
(式中,Ar,R,Z,Rは上記で定義した意味を表す)にしたがって修飾された誘導体を得ること,
を特徴とする上記一般式(I)にしたがって一部の構造単位が修飾されたヒアルロン酸誘導体の調製法。
【請求項3】
前記一般式(V)で表されるリガンドがチラミン,セロトニン及び5‐ヒドロキシトリプトファンから成る群より選択されることを特徴とする請求項2記載の調製法。
【請求項4】
前記一般式(IV)で表される化合物において,Zは第三ブトキシカルボニル基であり,Rは炭素原子数3〜7のアルキレン基であることを特徴とする請求項2又は3記載の調製法。
【請求項5】
前記式(IV)のスペーサー前駆体と式(V)のリガンドとの反応における非プロトン性溶媒がTHF又はDMFであり,該反応が,1,1’‐カルボジイミダゾールの存在下,50℃で2〜6時間かけて行われることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の調製法。
【請求項6】
前記保護基Zをトリフルオロ酢酸又は塩酸を用いて除去することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の調製法。
【請求項7】
般式(I):
(式中,ArはフェニレンでRはエチレンであるか,又はArは1Hインドール−3,5−ジイルでRはエチレンであるか,又はArは1H−インドール−3,5−ジイルでRはカルボキシエチレンであり,Rは炭素原子数3〜7のアルキレンである)
にしたがって一部の構造単位が修飾されたヒアルロン酸誘導体を架橋してなるハイドロゲル。
【請求項8】
前記一般式(I)にしたがって一部の構造単位が修飾されたヒアルロン酸誘導体を,pH4〜10で反応性フェノキシラジカルのジェネレーターと反応させることを含む請求項7記載のハイドロゲルの生成法。
【請求項9】
下記の群:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼと,過酸化水素の水溶液とを反応させること,
(ii)西洋ワサビペルオキシダーゼと,ガラクトースオキシダーゼ及びガラクトースとを反応させること,及び
(iii)西洋ワサビペルオキシダーゼと,グルコースオキシダーゼ及びグルコースとを反応させること
から成る群より選択される方法により前記反応性フェノキシラジカルのジェネレーターを調製することを含む請求項8記載の生成法。
【請求項10】
化粧品,医薬又は再生医療用の製剤の生成のための請求項7で定義されたハイドロゲルの使用。
【請求項11】
前記製剤が,創傷治療のための被覆剤,術後癒着の形成を防止する生分解性保護剤,軟組織の増強のための製剤,組織欠損の充填材,又は組織工学用のスカフォールドの形成用の基本材料である請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記製剤が関節軟骨障害及び/又は骨障害の治療用の播種型又は非播種型スカフォールドである請求項10記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイドロゲルの調製に適した新規なヒアルロン酸誘導体,及びその調製法に関する。更に前記誘導体をベースとするハイドロゲル,その特性,その使用及び調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロナンは,交互β‐1,4及びβ‐1,3グリコシド結合によって結合したD‐グルクロン酸及びD‐N‐アセチルグルコサミンで構成された二糖単位から成る多糖類である。インビボでの重量平均分子量(以下,分子量と記述されていれば,常に重量平均分子量のことである。)は3kDa〜20MDaの範囲内にある。それはその分子量及び濃度によっては高粘度溶液を形成する水性媒体に易溶である多糖類である。
【0003】
ハイドロゲルとは,少なくとも部分的に親水性であるポリマーの不溶性ネットワークにより水中で形成される材料である。最初は親水性であるポリマーから不溶性ネットワークを生成する方法はいくつかある。それはポリマー疎水化,又は3次元ポリマーネットワークの形成につながる更なる化学反応に関与する可能性のある反応性官能基を有する水溶性ポリマー誘導体の使用3〜5である。
【0004】
可溶性ヒアルロナン誘導体の調製及び以下のその架橋については多くの著者により記述されてきた3〜6。過去には,架橋反応及びハイドロゲル調製にフェノールヒアルロナン誘導体を使用したという記述もある。Calabroら4,7,8は,D‐グルクロン酸の構造内に存在するカルボキシルとフェノールのアミノアルキル誘導体との反応によりフェノールヒアルロナン誘導体を調製する方法を開示している。この反応はヒアルロナンアミドを生成する。前記合成を進めるための重要な特徴は,カルボジイミド型の脱水剤(EDC等)との反応を利用するヒアルロナンカルボキシルの活性化である。最も使用されているアミノアルキルフェノールはチラミンである。
【0005】
一般的に,フェノールヒアルロナン誘導体の架橋はペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ‐HRP等)や希釈過酸化水素溶液を添加することで開始する。西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase,HRP,E.C.1.11.1.7)は現在,有機生体内変換反応の触媒として広く使用されている9〜13。これは非常に広い基質特異性が特徴であり,よって多くの有機及び無機化合物の両方を酸化することが可能である13〜15
【0006】
それは鉄を含有するヘムを補欠分子族として含む酵素である。該鉄は酵素が非活性状態である場合は酸化度(III)である。過酸化物との反応により,HRP‐Iと称する中間体が形成される。ヘム鉄Fe(III)は酸化され,オキシフェリル(oxyferryl)基(Fe(IV)=O)になり,同時にポルフィリンサイクルにおけるカチオン性π‐ラジカルが形成される。このような活性化酵素は,この相互作用中に酸化される基質分子と複合体を形成することが可能である14,16〜18
【0007】
酸化された酵素がその初期形態に戻る変換は2つの工程で進行する。第1工程では,基質分子(S)とHRP‐Iとの間の反応が起こり,基質ラジカル(R・)及び部分的還元形態の酵素HRP‐IIが生じる。HRP‐IIは依然としてオキシフェリル基(Fe(IV)=O)は維持するが,ポルフィリンπ‐ラジカルはこの時点ではもう含んでいない。電子がポルフィリンラジカルに移行している間,同時に1個のH+がタンパク質に取り込まれる。HRP‐IIは再度基質と反応し,R・を生じさせる。この反応中,オキシフェリル基(Fe(IV)=O)は還元され,Fe(III)に戻る。このプロセスには2Hのオキシフェリル基への移行が伴う。基質(又は溶媒)からは1つのプロトンが発生し,その他はタンパク質を形成する。これにより結果として水分子が形成される(式I及びスキームI)。
式I:HRPによる基質酸化の触媒作用のメカニズムに関する基本的な説明
【0008】
生じた基質のラジカルは相互作用して二量体R‐Rを形成し得るケースであることが多い。このプロセスはこの時点ではもう酵素により影響を受けることはなく,得られたラジカルの安定性及び反応性とは関連性を持つ14,16〜26
【0009】
したがって,多糖類のフェノール誘導体の酵素架橋反応の場合,基質(フェノール‐ポリマーに結合した反応性リガンド)を酵素により反応性ラジカルへと形質転換する。その後,ラジカルは別のフェノールラジカルと反応し,ジチラミンが形成される。酵素反応の基質(リガンド)分子が自由に移動し,式Iを正確に再現する反応が進行すれば,酵素は段階的に(十分量の過酸化物を使用するなら)全基質分子を反応性ラジカルへと形質転換し,反応時間が十分に長ければ,それらのラジカルは全て徐々に二量体化(又はオリゴマー化)される。基質(リガンド)をポリマーに結合させる場合,ポリマーの架橋度は,この値への到達時間が使用の酵素量によって異なったとしても,常に同じ値になる必要がある。しかし実際は異なっている。文献27には,分子内及び分子間架橋の予測比と,架橋配置間のポリマーセグメントの分子量との関連性(架橋密度,ネットワークノード間の距離)が詳細に開示されているが,架橋をもたらす分子内相互作用は,分子間架橋と比較して弾性的な効果はないことが示されている。
【0010】
更に,HAのフェノール誘導体を使用する場合,酵素の量は架橋反応の速度のみならず,得られたハイドロゲルの機械的特性にも大きな影響を及ぼすことが文献から分かっている4,6,7,28。文献には,比較的高濃度の酵素を使用すれば,剪断弾性率(G’)が高くなることがレオロジー測定により判明したと述べられている。この現象の理由は,著者らによれば,ハイドロゲルの架橋密度が比較的高いことにある。ハイドロゲルを最大限に硬く調製する場合,ペルオキシダーゼの濃度を比較的高くし,よって高速で架橋反応を進行させる必要がある。しかし,反応の進行が速すぎると,不均質な架橋ハイドロゲルが形成されてしまう可能性がある。その後,試料中に,全く架橋しない箇所ができる可能性がある。更に,反応の進行が速すぎると,最終的にゲルを塗布する部位等にゲルを付与する際に問題も生じ得る。
【0011】
その原因は反応中心が基本ポリマー鎖から少し離れていることにある。リガンドの移動性が低いとリガンドラジカルの有効衝突の確率が低くなり,ジチラミンが形成される。したがって,系内で酵素が低濃度になれば,一定時間単位内で少量の反応性リガンド形態が形成される。よって架橋反応の進行は緩徐になり,効果は低い。
【0012】
Parkら29は,反応性リガンドとポリマー鎖との間に好適なスペーサーを挿入することでポリマーに結合したリガンドの反応性を高めようと試みた。その文献には,これらの置換基の反応性を高めるため多糖鎖とフェノール又はアニリン環との間に親水性鎖を挿入することが開示されている。親水性鎖をポリマーの構造内に導入する主な理由は,その可溶性及び反応中心(フェノール又はアニリン環)の接触性が改善できるためである。反応中心の空間的接触が容易になると,リガンド同士が反応できる確率が高まる。最も高頻度には,同じ酵素活性を維持しながらも,この工程には高置換度,高濃度及びハイドロゲル架橋の均一性の向上がもたらされる。更に,著者によると,この親水性鎖をハイドロゲル構造に導入することにより,ハイドロゲルの生体内安定性及び機械的特性が高まる。しかし,Parkらは「スペーサー」として,分子量3500Daの親水性ポリマーPEGを使用しており,よって最終的にはそれはむしろコポリマーと言える。しかし,置換度が低い場合でさえ,ハイドロゲル構造へのこのような介入により,元のポリマーの物理特性は大幅に変化する。更に,ヒアルロナンの場合,高架橋濃度はハイドロゲルの硬度を高めるが,同時に,組織工学における目的の用途に望ましからざる脆弱性も高まることになる。基礎剤用,それだけでなく例えば関節軟骨の基礎剤用と指定された材料の場合,材料の十分な強度及び抵抗以上に応力が掛けられると,脆弱な材料は高い負荷で不可逆的に変形し,ハイドロゲルの場合は,全体が破壊されさえする。
【0013】
発明の概要
したがって,発明の目的は,十分強いと同時に粘稠であり,元のポリマーと比較して生物学的及び物理学的特性の変化の大きい材料を見出すことである。ヒアルロナンをベースとするハイドロゲルの強度は通常,架橋濃度を高めることで,例えば,ハイドロゲルを形成する溶液中でポリマー濃度を高めることで,あるいはポリマーの置換度を高めることで促進し得る。しかし,当技術水準では,ヒアルロナンの場合,これら両方の方法はまた,得られたハイドロゲルの脆弱性を高め,ハイドロゲルの使用の可能性を大幅に制限している。
【0014】
本発明により解決される課題は,元のポリマーの物理的及び生物学的特性を維持しながら,リガンド反応性及びハイドロゲル強度を高めるこのような誘導体を見出すことにある。驚くべきことに,導入により,反応性リガンドとHAとの間にある本発明にしたがった比較的短い(分子量約130Da)スペーサーは結果的に,すでに非常に低い置換度にある最終ハイドロゲルの粘度を大幅に高めるということが判明した。
【0015】
したがって,1つの態様では,本発明は疎水性スペーサーを介して結合した反応性リガンドを有するHA誘導体に関連しており,これは低濃度(低置換度及び低酵素活性)の場合でもリガンドの移動性を高め,それによりその有効衝突の確率を高めることが目的である。ハイドロゲル内スペーサーが非常に低量であり,例えばわずか0.01〜0.02%しか形成しないものであるにも関わらず,ハイドロゲルの粘性及び強度は,挿入スペーサーの無い類似のHA誘導体(すなわち同じ濃度,分子量及び置換/架橋度)をベースとするハイドロゲルと比較して大幅に高いものとなることが判明した。したがって,本発明はハイドロゲルの調製に適したこの新規なヒアルロナン誘導体,及びその調製法に関する。更にこの誘導体をベースとするハイドロゲル,その使用,及びその調製法に関する。
【0016】
当該ハイドロゲルは西洋ワサビペルオキシダーゼ又はその類似体に触媒される反応による修飾ヒアルロナン鎖の架橋を利用した方法により調製する。好適なヒアルロナン誘導体はその構造内に,基本多糖鎖に共有結合したフェノール又はヘテロアリールフェノール環を含む。架橋プロセスは,系内に反応形態の酸素(ROS)を形成することで開始する連続化学反応のカスケードとして説明される場合もある。これらを混合物に添加するか,あるいは,その「ジェネレーター」として働く化学化合物の存在によりその形成を可能にする。ROSは酵素ペルオキシダーゼ又はその類似体を活性化し,その後これらはヒアルロナン誘導体の構造内に存在する芳香環又は複素芳香環の二量体化(又はオリゴマー化)を触媒する。これにより3次元ポリマーネットワークが形成される。
【0017】
本発明によれば,このハイドロゲルの調製にはアミノアルキルフェノール又はアミノアルキルヘテロアリールフェノール(例えばチラミン,5‐ヒドロキシトリプトファン,セロトニン)を含むリガンドを結合することにより修飾したヒアルロナンを使用する。本発明に記載されたヒアルロナン誘導体はスペーサーにより多糖類に結合したリガンドを含む。HA誘導体の構造内のこのスペーサーの存在により,その弾性に起因して,関与ポリマーセグメントの立体構造的配列の可能性,ひいては変形エネルギー消失の可能性における融通性及び自由度が高まる。スペーサーの導入により,基本ポリマー鎖からの反応芳香族中心(フェノール,ヘテロアリールフェノール)の距離も延長され,酵素と相互作用するためのその反応中心の接触性が向上し,架橋反応の過程や得られたハイドロゲルの特性が大幅に影響を受ける。
【0018】
第1の態様では,本発明は一般式(I)にしたがって一部の構造単位が修飾されたヒアルロン酸誘導体に関し,
式中,ArはフェニレンでRはエチレンであるか,又はArは1Hインドール−3,5−ジイルでRはエチレンであるか,又はArは1H−インドール−3,5−ジイルでRはカルボキシエチレンであり,Rは炭素原子数3〜7のアルキレンである。
別の態様では,本発明は一般式(I)にしたがって修飾されたヒアルロン酸誘導体の調製法であって,
(a)式A:
(式中,nは25〜5000の範囲にある)
で表されるヒアルロン酸をプロトン性媒体中で4‐アセタミド‐TEMPO及びNaClOと反応させることにより,該ヒアルロン酸のグルコサミン部6位の水酸基を酸化して,式(II):
にしたがって修飾された,置換度(ヒアルロン酸の全構単位に対する式(II)にしたがって修飾された構単位の割合)が5〜15%で分子量が10,000g/mol〜2,000,000g/molの範囲にあるヒアルロン酸のアルデヒド誘導体を得ること;
(b)次に,一般式(III):
(式中,ArはフェニレンでRはエチレンであるか,又はArは1Hインドール−3,5−ジイルでRはエチレンであるか,又はArは1H−インドール−3,5−ジイルでRはカルボキシエチレンであり,Rは炭素原子数3〜7のアルキレンである)で表される化合物を調製すること,ここでは式(IV):
Z‐NH―R―COOH (IV)
(式中,Zは第一級アミノ基の保護基であり,Rは上記で定義した意味を表す)で表されるスペーサー前駆体を,該式(IV)で表されるスペーサー前駆体のカルボン酸官能基を活性化する薬剤の存在下,40℃〜150℃の範囲の温度で1〜24時間,非プロトン性溶媒中で,
式(V):
(式中,Ar,Rは上記で定義した意味を表す)
で表されるリガンドと反応させて,一般式(VI):
Z‐NH―R―CO‐NH‐R‐Ar‐OH (VI)
(式中,Ar,R,Z,Rは上記で定義した意味を表す)
で表される化合物を生成し,そして保護基Zを除去して上記一般式(III)で表される化合物を得る,
(c)次に,上記式(II)にしたがって修飾されたヒアルロン酸のアルデヒド誘導体を,ピコリン‐ボラン複合体の存在下,pH3〜8,室温で1〜72時間,上記一般式(III)で表される化合物と反応させ,一般式(I):
(式中,Ar,R,Rは上記で定義した意味を表す)にしたがって一部の構造単位が修飾された誘導体を得ることを特徴とするヒアルロン酸誘導体の調製法に関する。
【0019】
したがって,本発明にしたがった誘導体は,好適な薬剤による処置,及びヒアルロナン鎖とリガンドとの間に挿入した弾性のあるスペーサーによりオリゴマー化することが可能なリガンドを含んでいる。本発明に記載の一般式(V)にしたがったリガンドは好ましくは,チラミン,セロトニン及び5‐ヒドロキシトリプトファンから成る群から選択される。前記一般式(IV)で表される化合物において,Zは第三ブトキシカルボニル基であり,式中,Rは炭素原子数3〜7のアルキレン基である。
【0020】
本発明の別の好適な実施形態では,前記式(IV)のスペーサー前駆体と式(V)のリガンドとの反応における非プロトン性溶媒がTHF又はDMFであり,該反応が,1,1’‐カルボジイミダゾールの存在下,50℃で2〜6時間かけて行われる。
【0021】
更に、前記保護基Zをトリフルオロ酢酸又は塩酸を用いて除去することが好適である。
【0022】
本発明のためだけに,中間体スペーサー‐リガンドは一般式:
HO‐Ar‐R‐NH‐CO‐R‐NH
にしたがった化合物に表される。
【0023】
スペーサーとして,好ましくは,一般式:
‐CO‐R‐NH
にしたがった化合物を使用し,式中,Rは炭素原子数3〜7のアルキルである。
【0024】
本発明にしたがった誘導体の調製法はスキーム1を特徴とする場合もある:
スキーム1:本発明にしたがった誘導体HA‐スペーサー‐リガンドの調製法の候補例
【0025】
更に,本発明は一般式(I)にしたがった誘導体を架橋することで形成されたハイドロゲル,及びその調製法に関する。ハイドロゲルの調製法は,pH4〜10の範囲で,一般式(I)にしたがった誘導体を反応性フェノキシラジカルジェネレーター,好ましくは西洋ワサビペルオキシダーゼとヒドロキシラジカル源との系により処理することであり,この系は過酸化水素の水溶液,又はオキシダーゼ‐酸素‐基質の系,例えばガラクトースオキシダーゼ‐ガラクトース又はグルコースオキシダーゼ‐グルコースである。
【0026】
したがって,反応性リガンドのオリゴマー化には,リガンドの芳香族環からフェノキシラジカルを形成することが可能な薬剤を使用する。本発明によれば,過酸化物/西洋ワサビペルオキシダーゼの系を使用することが好ましい。過酸化物は希釈溶液の形態の系に導入してもよく,あるいは原位置で化学反応により生成する。過酸化水素は,酸化‐還元反応中の電子受容体及びそれぞれの電子供与体として,酸素から様々な種類の酵素(オキシダーゼ)により混合液中で生成し得る。好ましくは,ガラクトースオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼとこれらの基質;ガラクトース及びグルコースとの組み合わせを使用してもよい。分子酸素の存在下でフェノキシラジカルを形成することが可能な他の薬剤は酵素チロシナーゼ,ラクターゼ等である。
【0027】
一般的に知られているとおり,これらのハイドロゲルの特性は,ポリマーの化学構造,その濃度,並びに選択された架橋剤のタイプ及びその使用量に影響を受ける。ポリマー(HA誘導体)の物理化学的特性は中でも,モノマー構造,ポリマー鎖セグメントの立体構造,架橋度及び分子量に影響される。ポリマーの機械特性もこれらに影響を受ける。ポリマーが機械的に応力を与えられると,変形が発生し,ネットワークノード及びポリマー鎖セグメントの立体構造を変化させるために,吸収された変形エネルギーの一部が消耗―消費され,エネルギーの一部が不可逆的に熱に変換される。消耗したエネルギー量と,それによるポリマー構造内の多様な立体構造的配列を採用する可能性も高分子鎖の剛性に関連しており,変形に対する材料の弾性抵抗の程度を反映している。そうすると剛性の非柔軟鎖及びそのセグメントから成るポリマー材料は,変形及び脆弱性に対する弾性抵抗の程度が低い可能性がある。
【0028】
弾性セグメントをポリマー構造に導入する本発明の方法にしたがって,これらのポリマーの弾性を増加させる。前記セグメントはその結合に関して個々の分子の自由度が高いことを特徴とし,このことにより,変形エネルギーに供された場合の立体構造的配列の可能性,及び前記エネルギーの消耗の可能性が高まる。したがってリガンドと基本ヒアルロナン鎖との間に好適な弾性スペーサーを導入すると,最終物質の弾性,粘性及び強度が高まり,このことは例えば,強い負荷を掛けた関節軟骨又は骨などの特定の組織の障害を治療するための基礎剤を対象としたハイドロゲルに非常に有益である。上述したとおり,ハイドロゲルの機械的特性が架橋反応触媒として使用した酵素の濃度に依存している場合も,リガンドと基本ヒアルロナン鎖との間への弾性スペーサーの導入を利用することが好ましい。ポリマーを部分的に架橋した後でさえ,リガンドと基本ヒアルロナン鎖との間に弾性スペーサーを導入すれば,相互二量体化のために誘導体の反応基の立体接触性が十分なものとなる。
【0029】
この溶液により,架橋反応がより効果的になり,これによって,調製したハイドロゲルの均一性が高まり,したがって架橋剤が西洋ワサビペルオキシダーゼと過酸化水素(あるいは別のタイプのフェノキシラジカルジェネレーター)である場合の,ヒドロキシフェニル又はヘテロアリールフェノール(チラミン,セロトニン等)に修飾された架橋ヒアルロナンに関する技術的問題が解消される。
【0030】
しかし,驚くべきことに,本発明者らが選択したスペーサーをリガンドと基本ヒアルノナン鎖との間に導入することで,置換度が非常に低い場合でさえ前記HA誘導体をベースとする最終的ハイドロゲルの柔軟度,粘性及び強度が有意に高まることが更に判明した。
【0031】
更に本発明は,特に組織工学,化粧品,医薬及び再生医療の分野での,本発明にしたがった誘導体がベースとなるハイドロゲルの使用に関する。本出願に記載のハイドロゲルの使用は,軟組織の増強のための製剤,組織欠損の充填等のための,術後癒着の形成を防止する生分解性保護剤として,主に創傷治療のための被覆剤など関節及び骨障害治療の分野で,特に組織工学におけるスカフォールドの形成用の基本材料を目的としている。スカフォールド用材料としてハイドロゲルを使用する場合,スカフォールド播種型,又は非播種型どちらでもよい。ハイドロゲルが播種スカフォールドである場合,スカフォールドに取り込まれるべき細胞のタイプは,塗布の目標部位によって選択する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例VIII,IX,XI及びXIIにしたがって調製した誘導体をベースとするハイドロゲルの圧縮による変形の測定中に得られた変形特性(「応力‐歪度曲線」)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.誘導体の合成例
数回の工程でヒアルロナン誘導体の合成を行った(スキーム1参照)。第1工程はアルデヒドヒアルロナン誘導体の調製である(実施例1.7)。更なる工程は,様々な中間体スペーサー‐リガンドの合成(実施例1.1〜1.6)であり,これらはその後還元的アミノ化プロセス(実施例1.9〜1.14)によりヒアルロナンに結合した。
【0034】
また実施例には,任意のスペーサーを使用せずにリガンド(チラミン,ヒドロキシトリプトファン)を直接多糖類に結合させるヒアルロナン誘導体の合成が含まれる(実施例VIII)。これらの誘導体及びそこから調製したハイドロゲルは,これらの特性と本出願に記載の誘導体の特性とを比較するために作用する(誘導体HA‐スペーサー‐リガンド ― 誘導体IX〜XIV)。
【0035】
実施例1.1:6‐アミノ‐N‐[2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]ヘキサンアミド(中間体スペーサー‐リガンド(I))の合成
6‐[(tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸(1.00g,4.3mmol)を50mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。この酸溶液に,1,1’‐カルボジイミダゾール(0.70g,4.3mmol)を添加した。混合液を50℃まで60分間加熱した。その後,反応容器を不活性ガスで洗浄した。反応混合液に,チラミン(0.59g,4.3mmol)を添加した。混合液を更に2時間加熱した。その後,THFを減圧蒸留により除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。蒸発残留物を50mlのMeOHに溶解し,2mlのトリフルオロ酢酸(TFA)を添加した。還流下で溶液を6時間加熱した。減圧蒸留により溶媒を除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。
m=0.75g(理論上70%)
H NMR(DO,ppm)δ:1.17(m,2H,γ‐CH‐ヘキサン酸),1.48(m,2H,β‐CH‐ヘキサン酸);1.58(m,2H,δ‐CH‐ヘキサン酸);2.17(t,2H,‐CH‐CO‐);2.73(m,2H,‐CH‐Ph);2.91(m,2H,‐CH‐NH);3.42(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);6.83(d,2H,arom);7.13(d,2H,arom).
13C NMR(DO,ppm)δ:24(γ‐C‐ヘキサン酸);26(δ‐C‐ヘキサン酸);33(β‐C‐ヘキサン酸);35(‐C‐CO‐);39(‐C‐NH);40(C‐Ph);63(‐C‐NH‐CO‐);115(C3 arom);126(Cl arom);130(C2 arom);153(C4 arom);176(‐CO‐).
【0036】
実施例1.2:4‐アミノ‐N‐[2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]ヘキサンアミド(中間体スペーサー‐リガンド(II))の合成
4‐[(tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]ブタン酸(0.50g,2.5mmol)を25mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。この酸溶液に,1,1’‐カルボジイミダゾール(0.40g,25mmol)を添加した。混合液を50℃まで60分間加熱した。その後,反応容器を不活性ガスで洗浄した。反応混合液に,チラミン(0.34g,25mmol)を添加した。混合液を更に2時間加熱した。その後,THFを減圧蒸留により除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。蒸発残留物を50mlのMeOHに溶解し,2mlのトリフルオロ酢酸を添加した。還流下で溶液を6時間加熱した。減圧蒸留により溶媒を除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。
m=0.44g(理論上80%)
H NMR(DO,ppm)δ:1.75(m,2H,β‐CH‐ブタン酸);2.16(t,2H,‐CH‐CO‐);2.59(m,2H,‐CH‐In);2.78(m,2H,‐CH‐NH);3.20(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);6.69(d,2H,arom);6.99(d,2H,arom).
13C NMR(DO,ppm)δ:23(β‐C‐ブタン酸);25(t,2H,‐C‐CO‐);32(‐C‐NH);45(CH‐Ar);60(‐C‐NH‐CO‐);115(C3 arom);117(Cl arom);129(C2 arom);155(C4 arom);171(‐CO‐).
【0037】
実施例1.3:8‐アミノ‐N‐[2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]オクタンアミド(中間体スペーサー‐リガンド(III))の合成
8‐[(tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]オクタン酸(0.50g,1.9mmol)を25mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。酸溶液に,1,1’‐カルボジイミダゾール(0.31g,1.9mmol)を添加した。混合液を50℃まで60分間加熱した。その後,反応容器を不活性ガスで洗浄した。反応混合液に,チラミン(0.26g,1.9mmol)を添加した。混合液を更に2時間加熱した。その後,THFを減圧蒸留により除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。蒸発残留物を50mlのMeOHに溶解し,2mlのトリフルオロ酢酸を添加した。還流下で溶液を6時間加熱した。減圧蒸留により溶媒を除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。
m=0.40g(理論上75%)
H NMR(CDCl,ppm)δ:1.16〜1.34(m,6H,C4及びC6‐CH‐オクタン酸);1.56〜1.44(m,4H,C3 a C7 オクタン酸);2.58(m,2H,‐CH‐Ar);2.78(m,2H,‐CH‐NH);3.19(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);6.68(d,2H,arom);6.98(d,2H,arom).
13C NMR(CDCl,ppm)δ:21(C7 オクタン酸);24(C4 オクタン酸);26(C6‐オクタン酸);28(C5‐オクタン酸);33(C3‐オクタン酸);35(‐C‐CO‐);39(‐C‐NH);40(C‐Ph);63(‐C‐NH‐CO‐);115(C3 arom),126(C1 arom);130(C2 arom);153(C4 arom);176(‐CO‐).
【0038】
実施例1.4:4‐アミノ‐N‐[2‐(5‐ヒドロキシ‐1H‐インドール‐3‐イル)エチル]ブタンアミド(中間体スペーサー‐リガンド(IV))の合成
4‐[(tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]ブタン酸(0.50g,2.5mmol)を25mlのN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。酸溶液に,1,1’‐カルボジイミダゾール(0.40g,2.5mmol)を添加した。混合液を50℃まで60分間加熱した。その後,反応容器を不活性ガスで洗浄した。反応混合液に,5‐ヒドロキシトリプタミン塩酸塩(0.52g,2.5mmol)及びトリエチルアミン(0.68ml;4.9mmol)を含有するDMF溶液25mlを添加した。混合液を更に2時間加熱した。酢酸エチル(100ml)を添加して混合液を希釈した。得られた溶液を300mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。蒸発残留物を50mlのMeOHに溶解し,2mlのトリフルオロ酢酸を添加した。還流下で溶液を6時間加熱した。減圧蒸留により溶媒を除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。
m=0.43g(理論上65%)
H NMR:(DMSO,ppm)δ:1.77(m,2H,β‐CH‐ブタン酸),2.20(t,2H,‐CH‐CO‐);2.73(m,2H,‐CH‐In);2.81(m,2H,‐CH‐NH);3.30(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);6.60(d,1H,C6‐arom);6.82(s,1H,C4‐arom);7.03(s,1H,C2‐arom);7.13(d,1H,C7‐arom).
13C NMR(DMSO,ppm)δ:23(β‐C‐ブタン酸);25(t,2H,‐C‐CO‐);32(‐C‐NH);39(CH‐In);60(‐C‐NH‐CO‐);102(C4 arom);110(C6 arom);111(C7 arom);111(C3 arom);123(C2 arom);127(C7‐C‐NH‐arom);131(C4‐C‐C3‐arom);150(C5 arom);171(‐CO‐).
【0039】
実施例1.5:6‐アミノ‐N‐[2‐(5‐ヒドロキシ‐1H‐インドール‐3‐イル)エチル]ヘキサンアミド(中間体スペーサー‐リガンド(V))の合成
6‐[(tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸(1.00g,4.3mmol)を50mlのN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。酸溶液に,1,1’‐カルボジイミダゾール(0.70g,4.3mmol)を添加した。混合液を50℃まで60分間加熱した。その後,反応容器を不活性ガスで洗浄した。反応混合液に,5‐ヒドロキシトリプタミン塩酸塩(0.91g,4.3mmol)及びトリエチルアミン(0.68ml;4.9mmol)を含有するDMF溶液25mlを添加した。混合液を更に2時間加熱した。酢酸エチル(100ml)を添加して混合液を希釈した。得られた溶液を300mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。蒸発残留物を50mlのMeOHに溶解し,2mlのトリフルオロ酢酸を添加した。還流下で溶液を6時間加熱した。減圧蒸留により溶媒を除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。
m=0.75g(理論上60%)
H NMR:(DMSO,ppm)δ:1.17(m,2H,γ‐CH‐ヘキサン酸);1.48(m,2H,β‐CH‐ヘキサン酸);1.58(m,2H,δ‐CH‐ヘキサン酸);2.17(t,2H,‐CH‐CO‐);2.73(m,2H,‐CH‐In);2.91(m,2H,‐CH‐NH);3.42(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);6.60(d,1H,C6‐arom);6.82(s,1H,C4‐arom);7.03(s,1H,C2‐arom);7.13(d,1H,C7‐arom).
13C NMR(DMSO,ppm)δ:24(γ‐C‐ヘキサン酸);26(δ‐C‐ヘキサン酸);33(β‐C‐ヘキサン酸);35(‐C‐CO‐);39(‐C‐NH);40(C‐In);63(‐C‐NH‐CO‐);102(C4 arom);110(C6 arom);111(C7 arom);111(C3 arom);123(C2 arom);127(C7‐C‐NH‐arom);131(C4‐C‐C3‐arom);150(C5 arom);171(‐CO‐).
【0040】
実施例1.6:2‐[(6‐アミノヘキサノイル)アミノ]‐3‐(5‐ヒドロキシ‐1H‐インドール‐3‐イル)‐プロパン酸(中間体スペーサー‐リガンド(VI))の調製
6‐[(tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]ヘキサン酸(0.50g,2.2mmol)を50mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。酸溶液に,1,1’‐カルボジイミダゾール(0.35g,2.2mmol)を添加した。混合液を50℃まで60分間加熱した。その後,反応容器を不活性ガスで洗浄した。反応混合液に,5‐ヒドロキシトリプトファン(0.48g,2.2mmol)を添加した。混合液を更に2時間加熱した。酢酸エチル(100ml)を添加して混合液を希釈した。得られた溶液を300mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。蒸発残留物を50mlのMeOHに溶解し,2mlのトリフルオロ酢酸を添加した。還流下で溶液を6時間加熱した。減圧蒸留により溶液を除去した。蒸発残留物を50mlの酢酸エチルに溶解した。溶液を150mlの精製水で(3回分に分けて)洗浄した。有機層を分子篩上で乾燥させた。減圧蒸留により酢酸エチルを除去した。
m=0.62g(理論上85%)
H NMR(DMSO,ppm)δ:1.17(m,2H,γ‐CH‐ヘキサン酸);1.48(m,2H,β‐CH‐ヘキサン酸);1.58(m,2H,δ‐CH‐ヘキサン酸);2.19(t,2H,‐CH‐CO‐);2.51(m,2H,‐CH‐In);2.90(m,2H,‐CH‐NH);3.81(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);(m,2H,‐CH‐NH‐CO‐);6.61(d,1H,C6‐arom);6.95(s,1H,C4‐arom);7.02(s,1H,C2‐arom);7.13(d,1H,C7‐arom).
13C NMR(DMSO,ppm)δ:24(γ‐C‐ヘキサン酸);26(δ‐C‐ヘキサン酸);33(β‐C‐ヘキサン酸);35(‐C‐CO‐);39(‐C‐NH);40(C‐Ph);55(‐C‐NH‐CO‐);102(C4 arom);110(C6 arom);111(C7 arom);111(C3 arom);123(C2 arom);127(C7‐C‐NH‐arom);131(C4‐C‐C3‐arom);150(C5 arom);171(‐CO‐).
【0041】
実施例1.7:アルデヒド誘導体(HA‐CHO)の調製‐一般的手順(VII)
ヒアルロナン(10.00g,Mw=2MDa)をNaHPO・12HOの2.5%(w/w)溶液750mlに溶解した。溶液を5℃に冷却した。得られた溶液に,2.60gのNaBr及び0.05gの4‐アセトアミド‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐オキシを添加した。溶液を完全に均質化させた後,NaClO(得られるClは10〜15%)の溶液3mlを反応混合液に添加した。15分間連続的に撹拌しながら反応を進行させた。プロパン‐2‐オールの40%溶液100mlを添加して反応を停止させた。限外濾過により精製し,プロパン‐2‐オールでの沈殿により単離した。
IR(KBr);3417,2886,2152,1659,1620,1550,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:2.01(s,3H,CH‐),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H,アノマー),4.54(s,1H アノマー,‐O‐CH(OH)‐),5.27(ジェミナルグリコール‐CH‐(OH)).
【0042】
実施例1.8:チラミン誘導体(VIII)の合成
アルデヒドHA誘導体(VII)(5.00g)を500mlの脱塩水に溶解した。酢酸により溶液のpHを3に調整した。その後,100mlの40%プロパン‐2‐オール中に含まれる溶液の形態でチラミンを反応混合液(1.70g)に添加した。混合液を室温で1時間更に撹拌した。その後,50mlの40%プロパン‐2‐オール中に含まれるピコリン‐ボラン複合体(0.50g)の溶液を混合液に添加した。反応混合液を室温で12時間更に撹拌した。限外濾過により生成物から低分子のバラスト物質を除去した。プロパン‐2‐オールで沈殿させることで生成物を得た。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3400,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:2.01(s,3H,CH‐),2.66〜2.77(m,4H,‐CH‐CH‐NH‐),3.00(s,1H,H‐CH‐NH‐),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H アノマー),4.54(s,1H,アノマー,‐O‐CH(OH)‐),6.59(d,2H,arom.),7.04(d,2H,arom).
【0043】
実施例1.9:Cスペーサーを含むチラミンHA誘導体(IX)の調製
アルデヒドHA誘導体(VII)(5.00g)を500mlの脱塩水に溶解した。酢酸により溶液のpHを3に調整した。その後,6‐アミノ‐N‐[2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]ヘキサンアミド(中間体(I))(0.625g,2.5mmol)をHA‐CHOの溶液に添加した。混合液を室温で2時間撹拌した。その後,ピコリン‐ボランの複合体(0.270g,2.5mmol)を反応混合液に添加した。混合液を室温で更に12時間撹拌した。限外濾過により生成物を精製し,プロパン‐2‐オールで沈殿させることで残余分から単離した。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3425,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:1.25(t,2H,γ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.48(m,2H,δ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.51(m,2H,β‐CH‐アミノヘキサン酸),2.01(s,3H,CH‐),2.65(m,2H,Ph‐CH‐),2.73(m,2H,ε‐CH‐アミノヘキサン酸),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H,アノマー),4.54(s,1H アノマー,‐O‐CH(OH)‐),6.59(d,2H,arom.),7.01(d,2H,arom).
【0044】
実施例1.10:Cスペーサー及び5‐ヒドロキシトリプタミンを含むHA誘導体(X)の調製
アルデヒドHA誘導体(VII)(3.00g)及びNaHPO・12HO(7.50g)を300mlの脱塩水に溶解した。その後,4‐アミノ‐N‐[2‐(5‐ヒドロキシ‐1H‐インドール‐3‐イル)エチル]ブタンアミド(0.40g,1.5mmol)‐(中間体(IV))をHA‐CHOの溶液に添加した。混合液を室温で2時間撹拌した。その後,ピコリン‐ボランの複合体(0.16g,1.5mmol)を反応混合液に添加した。混合液を室温で更に12時間撹拌した。限外濾過により生成物を精製し,プロパン‐2‐オールで沈殿させることで残余分から単離した。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3400,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:1.73(m,2H,β‐CH‐アミノブタン酸),2.01(s,3H,CH),2.60(m,2H,γ‐CH‐アミノブタン酸),2.93(m,2H,Ind‐CH‐),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H,アノマー),4.54(s,1H アノマー.,‐O‐CH(OH)‐),6.85(d,1H,arom.),7.09(s,1H.arom),7.21 (s,1H.arom),7.40(s,1H.arom).
【0045】
実施例1.11:Cスペーサーを含むチラミン化HA誘導体(XI)の調製
アルデヒドHA誘導体(VII)(3.50g)を350mlの脱塩水に溶解した。酢酸により溶液のpHを3に調整した。その後,4‐アミノ‐N‐[2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]ブタンアミド(0.40g,1.8mmol)‐(中間体(II))をHA‐CHOの溶液に添加した。混合液を室温で2時間撹拌した。その後,ピコリン‐ボランの複合体(0.19g,1.8mmol)を反応混合液に添加した。混合液を室温で更に12時間撹拌した。限外濾過により生成物を精製し,プロパン‐2‐オールで沈殿させることで残余分から単離した。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3425,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:1.25(t,2H,γ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.48(m,2H,δ‐CH‐アミノヘキサン酸)1.51(m,2H,β‐CH‐アミノヘキサン酸),2.01(s,3H,CH‐),2.65(m,2H,Ph‐CH‐),2.73(m,2H,ε‐CH‐アミノヘキサン酸),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s, 1H,アノマー),4.54(s,1Hアノマー,‐O‐CH(OH)‐), 6.59(d,2H,arom.),7.01(d,2H.arom).
【0046】
実施例1.12:Cスペーサーを含むチラミン化HA誘導体(XII)の調製
アルデヒドHA誘導体(VII)(2.90g)を300mlの脱塩水に溶解した。酢酸により溶液のpHを3に調整した。その後,8‐アミノ‐N‐[2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル]オクタンアミド(0.40g,1.4mmol)‐(中間体(III))をHA‐CHOの溶液に添加した。混合液を室温で2時間撹拌した。その後,ピコリン‐ボランの複合体(0.15g,1.4mmol)を反応混合液に添加した。混合液を室温で更に12時間撹拌した。限外濾過により生成物を精製し,プロパン‐2‐オールで沈殿させることで残余分から単離した。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3425,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:1.16〜1.34(m,6H,C4及びC6‐CH‐オクタン酸);1.56〜1.44(m,4H,C3〜C7オクタン酸);2.01(s,3H,CH‐),2.58(m,2H,‐CH‐Ar);2.78(m,2H,‐CH‐NH‐),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H,アノマー),4.54(s,1H アノマー,‐O‐CH(OH)‐),6.59(d,2H,arom.),7.01(d,2H.arom).
【0047】
実施例1.13:Cスペーサー及び5‐ヒドロキシトリプタミンを含むHA誘導体(XIII)の調製
アルデヒドHA誘導体(VII)(5.00g)及びNaHPO・12HO(12.5g)を500mlの脱塩水に溶解した。その後,6‐アミノ‐N‐[2‐(5‐ヒドロキシ‐1H‐インドール‐3‐イル)エチル]ヘキサンアミド(0.73g,2.5mmol)‐(中間体(V))をHA‐CHOの溶液に添加した。混合液を室温で2時間撹拌した。その後,ピコリン‐ボランの複合体(0.27g,2.5mmol)を反応混合液に添加した。混合液を室温で更に12時間撹拌した。限外濾過により生成物を精製し,プロパン‐2‐オールで沈殿させることで残余分から単離した。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3400,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:1.25(t,2H,γ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.48(m,2H,δ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.51(m,2H,β‐CH‐アミノヘキサン酸),2.01(s,3H,CH‐),2.65(m,2H,Ph‐CH‐),2.73(m,2H,ε‐CH‐アミノヘキサン酸),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H,アノマー),4.54(s,1H アノマー.,‐O‐CH(OH)‐),6.85(d,1H,arom.),7.09(s,1H.arom),7.21(s,1H.arom),7.40(s,1H,arom.).
【0048】
実施例1.14:Cスペーサー及び5‐ヒドロキシトリプトファンを含むHA誘導体(XIV)の調製
アルデヒドHA誘導体(VII)(3.50g)及びNaHPO・12HO(8.75g)を350mlの脱塩水に溶解した。その後,2‐[(6‐アミノヘキサノイル)アミノ]‐3‐(5‐ヒドロキシ‐1H‐インドール‐3‐イル)プロパン酸(0.60g,1.8mmol)‐(中間体(VI))をHA‐CHO溶液に添加した。混合液を室温で2時間混合した。その後,ピコリン‐ボランの複合体(0.19g,1.8mmol)を反応混合液に添加した。混合液を室温で更に12時間撹拌した。限外濾過により生成物を精製し,プロパン‐2‐オールで沈殿させることで残余分から単離した。温風乾燥機内での乾燥(40℃,3日)により沈殿物から湿気と残留プロパン‐2‐オールを取り除いた。
IR(KBr)::3400,2893,2148,1660,1620,1549,1412,1378,1323,1236,1204,1154,1078,1038,945,893cm−1
H NMR(DO)δ:1.25(t,2H,γ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.48(m,2H,δ‐CH‐アミノヘキサン酸),1.51(m,2H,β‐CH‐アミノヘキサン酸),2.01(s,3H,CH‐),2.65(m,2H,Ph‐CH‐),2.73(m,2H,ε‐CH‐アミノヘキサン酸),3.37〜3.93(m,ヒアルロナン体),4.46(s,1H,アノマー),4.54(s,1H アノマー.,‐O‐CH(OH)‐),6.85(d,1H,arom.),7.09(s,1H,arom),7.21(s,1H,arom),7.40(s,1H,arom).
【0049】
実施例1.15:スペーサー及び5‐ヒドロキシトリプトファンを含むHA誘導体並びにチラミン誘導体をベースとするハイドロゲルの調製の一般的手順
選択したHA誘導体をpH7.4の0.1MのPBSに溶解する。望ましい濃度にしたがって誘導体の量を選択する。誘導体の溶液に,望ましい量の酵素を添加する。完全に均質化した後,希釈した過酸化水素溶液を添加する。混合液を再度均質化し,透明ゲルを形成する。
【0050】
実施例1.16:チラミン誘導体をベースとするハイドロゲルの調製
実施例1.8(VIII)にしたがって調製したHA誘導体HA40〜60mg(ポリマー溶液の望ましい濃度による)を,pH7.4の0.1MのPBS2mlに溶解する。その後,20ulの酵素HRP溶液(pH7.4の0.1MのPBS1ml中に溶解した酵素HRP24mg)を誘導体溶液に添加した。完全に均質化した後,100μlのH溶液(pH7.4の0.1MのPBS10ml中に溶解した33μlの30%H)を添加した。混合液を均質化し,透明ゲルを形成する。
【0051】
実施例1.17 スペーサーを有するチラミンHA誘導体をベースとするハイドロゲルの調製
実施例1.9(IX),1.11(XI)又は1.12(XII)にしたがって調製したHA誘導体40〜60mg(ポリマー溶液の望ましい濃度による)を,pH7.4の0.1MのPBS2mlに溶解する。誘導体の溶液に,10ulの酵素HRPの溶液(pH7.4の0.1MのPBS1ml中に溶解した酵素HRP2.4mg)を添加した。均質化を完了した後,100μlのH溶液(pH7.4の0.1MのPBS10ml中に溶解した30%H33μl)を添加した。混合液を均質化し,透明ゲルを形成する。
【0052】
2.ハイドロゲル特性の差異
実施例2.1:使用のHA誘導体のタイプ及び添加する酵素の量によるハイドロゲルの機械的特性の差異
誘導体VIII(スペーサーが組み込まれていないチラミン),IX,XI及びXII(スペーサーが組み込まれている)から得たハイドロゲルの試料を実施例1.16又は1.17にしたがって,使用する誘導体のタイプにより調製した。完全に均質化した後,室温で120分間かけて試料を成熟させた。比較対象のハイドロゲルを調製するために使用する誘導体の類似体はそれに匹敵する分子量及び置換度を必ず有している。試料はすべて同じ大きさであり,一定の実験室条件(温度,圧力,湿度)で試験した。
【0053】
圧縮弾性のヤング率,粘性,圧縮強度及び対応する試料変形を各試料で測定し;更に試料の粘弾性特性について,剪断弾性係数及び損失角を測定した。
得られたデータは,リガンドと基本ヒアルロナン鎖との間に弾性スペーサーを導入すると,前記誘導体をベースとするハイドロゲルの弾性,粘性及び強度は,スペーサーを持たない類似のヒアルロナン誘導体をベースとするハイドロゲルに比べて高くなることを明らかに示唆している。
【0054】
表1には,ハイドロゲル調製に使用された誘導体のタイプ別に,ハイドロゲルの機械的特性の比較が示されている。濃度(%)は,ハイドロゲルを調製した溶液中のポリマー濃度を意味し,置換度(%)は,反応性/架橋性リガンド,すなわちポリマー構造単位100当たりの結合リガンドの数を表し,ここではHAの場合,ポリマーの構造単位は二糖(二量体)のグリコサミン+グルクロン酸である。
【0055】
【表1】
図1