(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態お
よび詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本
発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態が例示する発光素子は、少なくとも、正孔輸送層に一方の面を接する第1の
発光層と、第1の発光層の他方の面に接する第2の発光層を有する発光素子である。第1
の発光層と第2の発光層はバイポーラ性のホスト材料と、発光物質であるゲスト材料を含
んでいる。また、第1の発光層は、第2の発光層が含むゲスト材料に比べて正孔を捕獲す
る力が弱いゲスト材料を含んでおり、第1の発光層の正孔輸送性は第2の発光層よりも高
い。その結果、正孔が正孔輸送層から離れた領域まで運ばれ、正孔と電子の再結合領域が
発光層内に広がって形成される。さらに、発光層を通り抜けて正孔輸送層に到達する電子
が正孔輸送層を劣化させないように、正孔輸送層は抗還元物質を含んでいる。
【0040】
本実施の形態の発光素子の構造を
図1(A)に示す。本実施の形態の発光素子は第1の電
極101と、第2の電極102と、EL層103を有する。第1の電極101は基板10
0上に形成されている。なお、本実施の形態においては、第1の電極101が陽極として
機能し、第2の電極102が陰極として機能する場合について主に説明する。
【0041】
EL層103は少なくとも、正孔輸送層112と、第1の発光層113aと、第2の発光
層113bを含み、さらに電子輸送層114、電子注入層115などを適宜組み合わせて
形成する。正孔輸送層112は、陽極として機能する電極と第1の発光層113aの間に
あって、第1の発光層113aの陽極側の面に接している。第2の発光層113bは、第
1の発光層113aと陰極として機能する電極の間にあって、第1の発光層113aの陰
極側の面に接している。電子輸送層114は、第2の発光層113bと陰極として機能す
る電極の間にあって、第2の発光層113bの陰極側の面に接している。また、電子注入
層115は、電子輸送層114と陰極として機能する電極の間にあって、陰極として機能
する電極に接している。
【0042】
次に、本実施の形態の発光素子におけるキャリアの挙動について説明する。本実施の形態
が例示する発光素子のEL層について、各層が有するバンドの相関を
図1(B)にバンド
図を用いて示す。
【0043】
はじめに、EL層の構成及びEL層中を移動する正孔の挙動について説明する。
【0044】
本実施の形態の発光素子において、正孔は正孔輸送層112を介して発光層113に運び
込まれる。正孔輸送層112は第1の有機化合物と抗還元物質を含み、正孔の輸送性に優
れる。正孔輸送層112が含む第1の有機化合物のHOMO準位121(HOMO
HTL
)は、第1の発光層113aが含むホスト材料のHOMO準位131a(HOMO
HOS
T1)より深い(絶対値は大きい)か、ほぼ等しいと、正孔輸送層112から第1の発光
層113aへの正孔の注入が容易になり、発光素子の駆動電圧を低電圧化できるため好ま
しい。
【0045】
また、第1の有機化合物と、抗還元物質として機能するアクセプター性の物質を用いた複
合材料層を正孔輸送層112として用いた場合、正孔輸送層112は正孔注入層を兼ねる
ことができ、陽極に正孔輸送層112を接して設けることができ、発光素子の構造が簡素
になる。なお、陽極として機能する第1の電極101と正孔輸送層112の間に別途正孔
注入層を挟む構造としても良い。
【0046】
第1の発光層113aと第2の発光層113bはホスト材料とゲスト材料を含む。
【0047】
第1の発光層113aと第2の発光層113bのホスト材料は同じであっても異なっても
良いが、少なくともバイポーラ性であって、酸化反応に対しても還元反応に対しても安定
である。従って、第1の発光層113aと第2の発光層113bは正孔も電子も輸送でき
る。
【0048】
また、第1の発光層113aと第2の発光層113bはゲスト材料として発光物質を含み
、その発光物質はキャリアの移動速度に影響を与える。
【0049】
第1の発光層113aが含むホスト材料のHOMO準位131a(HOMO
HOST1)
と、第1の発光層113aが含む発光物質のHOMO準位133a(HOMO
EM1)と
、第2の発光層113bが含むホスト材料のHOMO準位131b(HOMO
HOST2
)と、第2の発光層113bが含む発光物質のHOMO準位133b(HOMO
EM2)
の関係について説明する。(
図1(B)を参照。)なお、本実施の形態で例示する発光素
子の第1の電極101の仕事関数101W及び第2の電極102の仕事関数102W、並
びに正孔輸送層112のHOMO準位121及びLUMO準位122も
図1(B)に図示
する。(
図1(B)は、EL層103を構成する各層の軌道準位の相関を表す模式図であ
る。矩形は各層を表し、その下辺は各層の主たる材料またはホスト材料のHOMO準位を
表し、その上辺は各層の主たる材料またはホスト材料のLUMO準位を表している。また
、矩形の内部に描かれた破線は各層に含まれるゲスト材料のHOMO準位、及びLUMO
準位を模式的に表している。)なお、Aに比べBの軌道準位が深いとは、Aに比べBの軌
道準位のエネルギーが低いことを意味し、Aに比べBの軌道準位が浅いとは、Aに比べB
の軌道準位のエネルギーが高いことを意味する。
【0050】
EL層103において、HOMO
HOST2はHOMO
HOST1より浅いか概略等しい
。また、HOMO
EM1はHOMO
HOST1より浅いか概略等しく、HOMO
EM2は
HOMO
HOST2より浅いか概略等しく、HOMO
EM2はHOMO
EM1より浅いか
概略等しい。また、HOMO
EM1とHOMO
HOST1の差(ΔHOMO
EM1−HO
ST1)に比べ、HOMO
EM2とHOMO
HOST2の差(ΔHOMO
EM2−HOS
T2)は、その絶対値が大きい(|ΔHOMO
EM1−HOST1|<|ΔHOMO
EM
2−HOST2|)。
【0051】
ΔHOMO
EM1−HOST1はゲスト材料である発光物質によって第1の発光層113
aに形成される正孔の捕獲準位の深さと見なすことができ、ΔHOMO
EM2−HOST
2はゲスト材料である発光物質によって第2の発光層113bに形成される正孔の捕獲準
位の深さと見なすことができる。従って、本発明の一態様において、第1の発光層113
aに比べ、第2の発光層113bに形成される正孔の捕獲準位の方が深い(絶対値は大き
い)と言い換えることができる。
【0052】
正孔の捕獲準位は正孔を捕獲するため、発光層の正孔の輸送性に影響する。また、影響の
程度は捕獲準位の深さに依存する。具体的には、第1の発光層113aは、深い捕獲準位
を有する第2の発光層113bに比べて、正孔を輸送し易い。
【0053】
本実施の形態の発光素子はこのような構成により、第1の発光層113aの正孔輸送性を
、第2の発光層113bの正孔輸送性より高めることができる。その結果、陽極から正孔
輸送層112を介して第1の発光層113aに運び込まれた正孔が、正孔輸送層112か
ら離れた第2の発光層113bの内部まで輸送され、陰極側から輸送される電子と再結合
する領域が主に発光層113bに形成される。さらに、正孔の輸送性が抑制された第2の
発光層113bを設けることにより、正孔が発光層113を通り抜けて陰極側の電子輸送
層114に達する現象を抑制できる。
【0054】
次に、EL層を移動する電子の挙動と再結合について説明する。
【0055】
電子注入層115は陰極として機能する第2の電極102から電子を電子輸送層114に
運び込む。電子輸送層114は電子輸送性に優れ、第2の発光層113bに電子を運び込
む。
【0056】
第2の発光層113bの正孔輸送性はその深いトラップレベルのために抑制されているた
め、電子輸送層114から運び込まれた電子は第2の発光層113bで正孔と高い効率で
再結合する。電子と正孔が再結合してゲスト材料が励起され発光に至る。
【0057】
なお、第2の発光層113bで正孔と再結合せずに第2の発光層113bを通り抜けた電
子が、第1の発光層113aに到達した場合であっても、第1の発光層113aで正孔と
再結合し、第1の発光層113aに添加された発光物質が発光に至る。従って、発光効率
が低下することがない。このように、第2の発光層113bだけでなく、第1の発光層1
13aと第2の発光層113bの両方を含む発光層113の広い領域を発光可能な領域と
することで正孔と電子が再結合する確率を高め、発光効率を高めることができる。
【0058】
ここで、電子が第2の発光層113b及び第1の発光層113aで正孔と再結合せずに正
孔輸送層112に到達する場合、発光効率が低下するだけでなく正孔輸送層112が劣化
する恐れがある。しかし、本実施の形態で例示する正孔輸送層112は第1の有機化合物
と抗還元物質を含んでおり、抗還元物質は正孔輸送層112に到達した電子を第1の有機
化合物に代わって受け取り、第1の有機化合物が還元反応により劣化する現象を防止し、
正孔輸送層112の劣化を防ぐ。なお、抗還元物質は正孔輸送層112において発光しな
い。
【0059】
本発明の一態様の発光素子に用いる材料のHOMO準位及びLUMO準位は、種々の方法
で測定できる。具体的には、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定による方法や、光
電子分光装置を用いてHOMO準位を測定し、吸収スペクトルのTaucプロットから得
た吸収端から固体状態のエネルギーギャップを求めて、LUMO準位を見積もる方法など
が挙げられる。測定方法の詳細は実施例2にて説明する。
【0060】
本実施の形態の発光素子の各層を構成する材料について、具体的に説明する。
【0061】
基板100は、発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス
、石英、プラスチックなどを用いることができ、本実施の形態の発光素子の作製工程に耐
えうる耐熱性を有していれば良い。
【0062】
ガラス基板の具体例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、
若しくはアルミノシリケートガラスなど、フュージョン法やフロート法で作製される無ア
ルカリガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有す
るプラスチック基板等を用いることができる。例えば、成分比としてホウ酸(B
2O
3)
よりも酸化バリウム(BaO)を多く含み、歪み点が730℃以上のガラス基板を用いる
と好ましい。半導体層を700℃程度の高温で熱処理する場合でも、ガラス基板が歪まな
いで済むからである。
【0063】
基板100がマザーガラスの場合、基板の大きさは、第1世代(320mm×400mm
)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4
世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1000
mm×1200mmまたは1100mm×1250mm)、第6世代(1500mm×1
800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2
460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)
、第10世代(2950mm×3400mm)等を用いることができる。
【0064】
また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁膜を設けた基板を適用しても良い。ま
た、プラスチック基板は軽量である、可撓性を有している、可視光を透過する等、発光素
子の基板として魅力的な特徴を有する。また、プラスチック基板に防湿性を有する膜を成
膜もしくは貼り付け、発光素子を水などの不純物から保護できる基板を用いてもよい。
【0065】
また基板100上に下地膜として絶縁膜を形成してもよい。下地膜としては、CVD法や
スパッタリング法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、または窒化酸
化珪素膜の単層、又は積層で形成すればよい。また、発光装置の駆動回路などが別途作製
された基板100を用い、駆動回路に電気的に接続した第1の電極にEL層を形成しても
よい。絶縁膜を形成することで、導電性を有する基板の表面を絶縁化することができる。
また、絶縁膜を形成することで基板から発光素子に不純物が拡散する現象を防ぐことがで
きる。
【0066】
基板100上に第1の電極101を形成する。第1の電極101を陽極として利用する場
合は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、
およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウ
ム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を
含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium
Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(
IWZO)等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タ
ングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co
)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例え
ば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0067】
これらの材料は、通常スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム−酸
化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲッ
トを、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化イ
ンジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有
したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他
、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製して
もよい。
【0068】
なお、陽極として機能する第1の電極101上に形成するEL層103のうち、第1の電
極101に接する層に、後述する複合材料を含む層を用いる場合には、第1の電極101
に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、お
よびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(A
g)、アルミニウムを含む合金(AlSi)等も用いることができる。
【0069】
また、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、す
なわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(M
g)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれ
らを含む合金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)
等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。
【0070】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて第1の電極1
01を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに
、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができ
る。
【0071】
第1の電極101上に形成するEL層103には、上述したようなEL層103中の層の
バンド関係が維持される限り、公知の物質を用いることができ、低分子系化合物および高
分子系化合物のいずれを用いることができる。なお、EL層103を形成する物質には、
第1の有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるも
のとする。
【0072】
ここでは、EL層103の各層を構成する材料について具体的に説明する。
【0073】
正孔輸送層112は第1の有機化合物と抗還元物質を含んで構成する。特に、抗還元物質
としてアクセプター性物質を第1の有機化合物に添加して形成される複合材料は、正孔輸
送性と、発光層からの運び込まれた電子による還元に対する安定性を示す。また、優れた
正孔注入性も備えており複合材料を用いた正孔輸送層112は正孔注入層を兼ねることが
できる。
【0074】
抗還元物質として用いるアクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−
2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)、クロラニル等
の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4
族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム
、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マ
ンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは
大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0075】
アクセプター性物質と共に複合材料を形成する第1の有機化合物としては、トリアリール
アミンなどの芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物
(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。
なお、複合材料に用いる第1の有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物である
ことが好ましい。具体的には、10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であ
ることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のも
のを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる第1の有機化合物を具体的
に列挙する。
【0076】
複合材料に用いることのできる第1の有機化合物としては、例えば、4,4’,4’’−
トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称
:MTDATA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニ
ルアミン(略称:TDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル
)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−
[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルア
ミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルア
ミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9
−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾー
ル(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イ
ル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3
−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9
−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチ
ル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、N,N’−
ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,
4’−ジアミン(略称:TPD)、N−(4−ビフェニル)−4−(カルバゾール−9−
イル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、4−フェニル−4’−(1−ナフチル
)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバ
ゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−
ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−
カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−
9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[
4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカ
ルバゾール誘導体を挙げることができる。
【0077】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−
BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9
,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−t
ert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−B
uDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−
ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(
略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン
(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert
−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン
、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香
族炭化水素化合物を挙げることができる。
【0078】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、
9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,
10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス
[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アン
トラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブ
チル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)
ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)
フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)、等の芳香族炭化水素化合物も挙げること
ができる。
【0079】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニ
ルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルア
ミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略
称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(
フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもで
きる。
【0080】
なお、第1の有機化合物に抗還元物質としてアクセプター性物質を含有させて形成される
複合材料を正孔輸送層112に用いる場合、正孔輸送層112は優れた正孔注入性を有す
るため、正孔注入層を設ける必要がない。また、仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事
関数の小さい材料を用いて、陽極として機能する第1の電極101を形成できる。
【0081】
これらの複合材料は、第1の有機化合物と抗還元物質を共蒸着することにより形成できる
。
【0082】
また、アクセプター性物質以外の抗還元物質の例としては、LUMO準位が第1の発光層
113aのホスト材料より深く、バンドギャップが第1の発光層113aの発光物質より
大きく、HOMO準位が正孔輸送層112の第1の有機化合物より深い有機化合物を挙げ
ることができる。正孔輸送層112にこのような材料を添加すると、第1の発光層から漏
れだした電子を受けとり、第1の有機化合物が還元されるのを防ぐことができる。なお、
アクセプター性物質以外の抗還元物質を用いる場合は、第1の有機化合物としては正孔輸
送性の高い物質を用いるのが好ましい。
【0083】
正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−
フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−
メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジア
ミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフ
ェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェ
ニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−
ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフ
ェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述
べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電
子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正
孔輸送層112は単層であっても、上記物質からなる層が二層以上積層されたものであっ
てもよい。
【0084】
発光層113は正孔及び電子が注入され、第1の発光層113aの正孔輸送性は第2の発
光層113bの正孔輸送性より勝る。このような発光層113は酸化反応および還元反応
が可能な材料、すなわちバイポーラ性のホスト材料とゲスト材料を適宜組み合わせて構成
すればよい。
【0085】
発光層113が含むホスト材料として用いる酸化反応および還元反応が可能な有機化合物
としては、例えば3環以上6環以下の縮合芳香族化合物が挙げられる。具体的には、アン
トラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g
,p]クリセン誘導体、トリフェニレン誘導体、ナフタセン誘導体、等が挙げられる。ま
た、カルバゾリル基を有するアントラセンが挙げられる。
【0086】
例えば、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N−ジフェニ
ル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−
3−アミン(略称:CzA1PA)、9−フェニル−9’−[4−(10−フェニル−9
−アントリル)フェニル]−3,3’−ビ(9H−カルバゾール)(略称:PCCPA)
、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセン、9−[4−(10−フェニル
−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフ
ェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾー
ル(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセ
ン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、
2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuD
NA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9−[4−(9―フェニルカルバ
ゾール−3−イル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:PCzPA)、9
−[4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−10−フェニル
アントラセン(略称:CzPAP)、9,10−ビス[4−(9−フェニルカルバゾール
−3−イル)]フェニル−2−t―ブチルアントラセン(略称:PCzBPA)、3−(
9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリ
ル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAFL)、9−{4−[3−(1−
ナフチル)−9H−カルバゾール−9−イル]フェニル}−10−フェニルアントラセン
(略称:CzPAαN)、9−{4−[10−(1−ナフチル)−9−アントリル]フェ
ニル}−9H−カルバゾール(略称:αNCzPA)、9−[3−(10−フェニル−9
−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:m―CzPA)、9,9’−(
スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(ス
チルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’
’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)等が挙げられる
。
【0087】
また、ゲスト材料を分散させるためのホスト材料は複数種混合して用いることができる。
例えば、キャリアの輸送性を調整するために電子輸送性に優れた材料に正孔輸送性に優れ
た材料を混合してホスト材料に用いることができる。
【0088】
また、発光層113が含むホスト材料に高分子化合物を用いることもできる。
【0089】
発光層113はゲスト材料として発光物質を含む。発光物質としては例えば次に挙げる有
機化合物を用いることができる。
【0090】
青色の発光を呈する物質としては、例えば発光ピーク波長が400nm以上480nm未
満に位置する物質を用いればよく、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イ
ル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA
2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アント
リル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル
)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2Y
GAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フ
ェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,
8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル
−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェ
ニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、ビス[2−(4’,6’−
ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)テトラキス(1−
ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニ
ル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic
)のような燐光を発する材料も用いることができる。
【0091】
青緑色の発光を呈する物質としては、例えば発光ピーク波長が480nm以上520nm
未満に位置する物質を用いればよく、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン
−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1
,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−
(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミ
ン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フ
ェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DP
APPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニ
ルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)
、クマリン30などが挙げられる。また、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメ
チルフェニル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:I
r(CF
3ppy)
2(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピ
リジナト−N,C
2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIrac
ac)のような燐光を発する材料も用いることができる。
【0092】
緑色系の発光を呈する物質としては、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−
N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[
9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフ
ェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10
−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレン
ジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−
イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミ
ン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−
N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−
2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−
アミン(略称:DPhAPhA)クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン
、(略称:DPQd)などが挙げられる。また、トリス(2−フェニルピリジナト)イリ
ジウム(III)(略称:Ir(ppy)
3)、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジ
ウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)
2(acac))、トリス
(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(
acac)
3(Phen))などが挙げられる。
【0093】
黄色の発光を呈する物質としては、例えば発光ピーク波長が540nm以上600nm未
満に位置する物質を用いればよく、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−
4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4
−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン
)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6
,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−
4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)などが挙げられる
。また、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(
略称:Ir(bzq)
2(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾ
ラト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)
2(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イ
リジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)
2(acac
))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチ
ルアセトナート(略称:Ir(bt)
2(acac))のような燐光を発する材料も用い
ることができる。
【0094】
赤色の発光を呈する物質としては、例えば発光ピーク波長が600nm以上700nm未
満に位置する物質を用いればよく、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニ
ル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル
−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フ
ルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピ
ル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H
,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデ
ン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2
−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベン
ゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパン
ジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)
フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:Bi
sDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル
−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)
エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJT
M)などが挙げられる。また、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリ
ジナト−N,C
3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp
)
2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C
2’)イリジウム(I
II)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)
2(acac))、(アセチルアセ
トナート)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(
III)(略称:Ir(Fdpq)
2(acac))、2,3,7,8,12,13,1
7,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOE
P)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリ
ン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)
3(Phen))、トリス[1−(
2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユー
ロピウム(III)のような燐光を発する材料も用いることができる。
【0095】
なお、第2の発光層113bに占める発光物質の濃度は、質量比で10%以下が好ましい
。また、同じホスト材料を用いて第1の発光層113aと第2の発光層113bを形成す
る場合、第1の発光層113aに占める発光物質の濃度は第2の発光層113bに占める
発光物質の濃度より小さくする。
【0096】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含んで形成する。
【0097】
例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチ
ル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq
3)、ビス(10−ヒドロキシベ
ンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq
2)、ビス(2−メチル−8−キノ
リノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン
骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス
[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)
2
)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BT
Z)
2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いること
ができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert
−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス
[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]
ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−
tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナ
ントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いること
ができる。ここに述べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の電子移動度を有する物
質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸
送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質か
らなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0098】
また、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオ
レン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)
、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピ
リジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。
【0099】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含んで形成する。
【0100】
例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(C
aF
2)等のようなアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の化合物を用いることができ
る。
【0101】
その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化
合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等
を用いてもよい。なお、この場合には、第2の電極102からの電子注入をより効率良く
行うことができる。
【0102】
第2の電極102には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電
気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の
具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(L
i)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(
Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg
Ag、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およ
びこれらを含む合金等が挙げられる。
【0103】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて第2の電極102を
形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペー
ストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0104】
なお、電子注入層115を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、
ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等、様々な導電性材
料を用いて第2の電極102を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタ
リング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0105】
本実施の形態の発光素子の発光を外部に取り出すには、透光性を有する導電膜で第1の電
極101または第2の電極102のいずれか一方、または両方を形成すればよい。
【0106】
なお、第1の電極101のみが透光性を有する電極である場合には、EL層103で生じ
た発光は第1の電極101を通って基板100側から取り出される。また、第2の電極1
02のみが透光性を有する電極である場合には、EL層103で生じた発光は第2の電極
102を通って基板100と逆側から取り出される。さらに、第1の電極101および第
2の電極102がいずれも透光性を有する電極である場合には、EL層103で生じた発
光は第1の電極101および第2の電極102を通って、基板100側および基板100
と逆側の両方から取り出される。
【0107】
以上のEL層103の作製方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いる
ことができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用いる
ことができる。なお、各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成してもよい。
【0108】
第1の電極101、及び第2の電極102の作製方法としては、スパッタリング法や真空
蒸着法などの乾式法だけでなく、ゾル−ゲル法や金属材料のペーストを用いるインクジェ
ット法等の湿式法により形成することができる。
【0109】
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられるEL層の構成は、上記の
ものには限定されない。ただし、少なくとも正孔輸送層112と、第1の発光層113a
と、第2の発光層113bを含み、第1の発光層113a及び第2の発光層113bのキ
ャリア輸送性はバイポーラ性であり、第1の発光層113aの正孔輸送性は第2の発光層
113bの正孔輸送性より勝り、第1の発光層113a及び第2の発光層113bは発光
物質を含み、正孔輸送層112は第1の有機化合物と抗還元物質を含む構成であれば、上
記以外のものでもよい。
【0110】
また、
図4に示すように、基板100上に陰極として機能する第2の電極102、EL層
103、陽極として機能する第1の電極101が順次積層された構造としてもよい。なお
、この場合のEL層103は、例えば第2の電極102上に電子注入層115、電子輸送
層114、第2の発光層113b、第1の発光層113a、正孔輸送層112が順次積層
された構造となる。
【0111】
なお、本実施の形態に示す発光素子の構成は、
図5(A)に示すように一対の電極間にE
L層1003が複数積層された構造、所謂、積層型素子の構成であってもよい。但し、複
数のEL層1003のうちの2層の間には、中間層1004がそれぞれ挟まれている。例
えば、本実施の形態に示す発光素子が、一対の電極間にn(nは2以上の自然数)層のE
L層を積層して備える場合には、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層100
3と、(m+1)番目のEL層1003の間に、中間層1004を有する。
【0112】
なお、中間層1004とは、第1の電極1011と第2の電極1012に電圧を印加した
ときに、中間層1004に接して形成される一方のEL層1003に対して正孔を注入し
、他方のEL層1003に電子を注入する機能を有する。具体的には、中間層1004は
中間層1004の陰極側の面に接するEL層1003に正孔を注入し、中間層1004の
陽極側の面に接するEL層1003に電子を注入する。
【0113】
なお、第1の電極1011を陽極とする場合は、第1の電極1011上と、中間層100
4の第2の電極1012側の面に接してEL層1003の正孔輸送層を形成すればよく、
第1の電極1011を陰極とする場合は、第1の電極1011上と、中間層1004の第
2の電極1012側の面に接してEL層1003の電子注入層を形成すればよい。
【0114】
また、中間層1004は単層であっても、複数の層を積層した複層であってもよく、上述
した有機化合物と無機化合物との複合材料(正孔注入性複合材料や電子注入性複合材料)
の他、金属酸化物等の材料を適宜組み合わせて形成することができる。なお、正孔注入性
複合材料とその他の材料とを組み合わせて用いることがより好ましい。中間層1004に
用いるこれらの材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、発光素子の
低電圧駆動を実現することができる。
【0115】
また、中間層1004を複数の層で形成した場合、最も陰極に近い層として第1の有機化
合物に、抗還元物質としてアクセプター性物質を添加して形成される複合材料層を用いる
ことができる。上述の通り、第1の有機化合物に抗還元物質としてアクセプター性物質を
添加した複合材料は、優れた正孔注入性も備えている。この場合、中間層1004の陰極
側に第1の発光層を直接接して設けることができる。この場合、中間層中の複合材料が本
発明の一態様の正孔輸送層112を兼ねていると言える。
【0116】
また、本実施の形態で例示する発光素子を用いて、照明装置や、パッシブマトリクス型の
発光装置を作製できる。また、薄膜トランジスタ(TFT)により発光素子を制御して、
アクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。
【0117】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置におけるTFTの構造は、特に限定されない。
例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に
形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N
型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。また、
TFTに用いられる半導体膜としてSiに代表される元素周期表の14族の元素からなる
半導体膜であってもよいし、化合物半導体膜、酸化物半導体膜、特にインジウム、ガリウ
ム、亜鉛等を含む複合酸化物半導体膜であってもよい。さらに、TFTに用いられる半導
体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半
導体膜を用いてもよい。
【0118】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0119】
本実施の形態で例示する発光素子は、発光層のキャリア輸送性がバイポーラ性であって、
発光層の陰極に近い側に比べ、発光層の陽極に近い側の正孔の輸送性が勝る発光層を有し
ており、発光層の内部にキャリアの再結合領域が形成されている。また、正孔が発光層を
通り抜けて再結合せずに電子輸送層に達する現象が抑制されているため、電子輸送層から
運び込まれた電子は発光層で正孔と高い効率で再結合する。その結果、本実施の形態で例
示する発光素子は高い発光効率を有する。
【0120】
また、本実施の形態で例示する発光素子は電子輸送層側から発光層を通り抜けた電子が正
孔輸送層に到達しても、正孔輸送層が抗還元物質を含んでいるため、正孔輸送層の劣化が
抑制されている。その結果、本実施の形態で例示する発光素子は高い信頼性を有する。
【0121】
(実施の形態2)
本実施の形態が例示する発光素子は、少なくとも、正孔輸送層に一方の面を接する第1の
発光層と、第1の発光層の他方の面に接する第2の発光層を有する発光素子である。第1
の発光層と第2の発光層はバイポーラ性のホスト材料と、発光物質であるゲスト材料を含
んでいる。また、第1の発光層は、第2の発光層が含むゲスト材料に比べて正孔を捕獲す
る力が弱いゲスト材料を含んでおり、第1の発光層の正孔輸送性は第2の発光層よりも高
い。その結果、正孔が正孔輸送層から離れた領域まで運ばれ、正孔と電子の再結合領域が
発光層内に広がって形成される。また、第1の発光層が含む発光物質と第2の発光層が含
む発光物質は発光色が異なっている。さらに、発光層を通り抜けて正孔輸送層に到達する
電子が正孔輸送層を劣化させないように、正孔輸送層が抗還元物質を含んでいる。
【0122】
本実施の形態の発光素子の構造を
図2(A)に示す。本実施の形態の発光素子は第1の電
極101と、第2の電極102と、EL層103を有する。第1の電極101は基板10
0上に形成されている。なお、本実施の形態においては、第1の電極101が陽極として
機能し、第2の電極102が陰極として機能する場合について主に説明する。
【0123】
EL層103は少なくとも正孔輸送層112と、第1の発光層113aと、第2の発光層
113bを含み、さらに電子輸送層114、電子注入層115などを適宜組み合わせて形
成する。正孔輸送層112は、陽極として機能する電極と第1の発光層113aの間にあ
って、第1の発光層113aの陽極側の面に接している。第2の発光層113bは、第1
の発光層113aと陰極として機能する電極の間にあって、第1の発光層113aの陰極
側の面に接している。電子輸送層114は、第2の発光層113bと陰極として機能する
電極の間にあって、第2の発光層113bの陰極側の面に接している。また、電子注入層
115は、電子輸送層114と陰極として機能する電極の間にあって、陰極として機能す
る電極に接している。
【0124】
次に、本実施の形態の発光素子におけるキャリアの挙動について説明する。本実施の形態
が例示する発光素子のEL層について、各層が有するバンドの相関を
図2(B)に示す。
【0125】
本実施の形態の発光素子は実施の形態1で例示した発光素子と、発光層113の構成にお
いて異なる。従って本実施の形態では発光層113に関する部分についてのみ説明する。
【0126】
第1の発光層113aと第2の発光層113bはホスト材料とゲスト材料を含む。また、
第1の発光層が含む発光物質と第2の発光層が含む発光物質は発光色が異なっている。
【0127】
第1の発光層113aと第2の発光層113bのホスト材料は同じであっても異なっても
良いが、少なくともバイポーラ性であって、酸化反応に対しても還元反応に対しても安定
である。従って、第1の発光層113aと第2の発光層113bは正孔も電子も輸送でき
る。
【0128】
また、第1の発光層113aと第2の発光層113bはゲスト材料として発光物質を含み
、その発光物質はキャリアの移動速度に影響を与える。
【0129】
第1の発光層113aが含むホスト材料のHOMO準位131a(HOMO
HOST1)
と、第1の発光層113aが含む発光物質のHOMO準位133a(HOMO
EM1)と
、第2の発光層113bが含むホスト材料のHOMO準位131b(HOMO
HOST2
)と、第2の発光層113bが含む発光物質のHOMO準位133b(HOMO
EM2)
の関係について説明する。(
図2(B)を参照。)なお、本実施の形態で例示する発光素
子の第1の電極101の仕事関数101W及び第2の電極102の仕事関数102W、並
びに正孔輸送層112のHOMO準位121及びLUMO準位122も
図2(B)に図示
する。
【0130】
EL層103において、HOMO
HOST2はHOMO
HOST1より浅いか、概略等し
い。また、HOMO
EM1はHOMO
HOST1より浅いか、概略等しく、HOMO
EM
2はHOMO
HOST2より浅いか、概略等しく、HOMO
EM1はHOMO
EM2より
深いか概略等しい。また、HOMO
EM1とHOMO
HOST1の差(ΔHOMO
EM1
−HOST1)に比べ、HOMO
EM2とHOMO
HOST2の差(ΔHOMO
EM2−
HOST2)は、その絶対値が大きい。(|ΔHOMO
EM2−HOST2|>|ΔHO
MO
EM1−HOST1|)
【0131】
ΔHOMO
EM1−HOST1はゲスト材料である発光物質によって第1の発光層113
aに形成される正孔の捕獲準位の深さと見なすことができ、ΔHOMO
EM2−HOST
2はゲスト材料である発光物質によって第2の発光層113bに形成される正孔の捕獲準
位の深さと見なすことができる。従って、本発明の一態様において、第1の発光層113
aに比べ、第2の発光層113bに形成される正孔の捕獲準位の方が深い(絶対値は大き
い)と言い換えることができる。
【0132】
正孔の捕獲準位は正孔を捕獲するため、発光層の正孔の輸送性に影響する。また、影響の
程度は捕獲準位の深さに依存する。具体的には、第1の発光層113aは、深い捕獲準位
を有する第2の発光層113bに比べて、正孔を輸送し易い。
【0133】
本実施の形態の発光素子はこのような構成により、第1の発光層113aの正孔輸送性を
、第2の発光層113bの正孔輸送性より高めることができる。その結果、陽極から正孔
輸送層112を介して第1の発光層113aに運び込まれた正孔が、正孔輸送層112か
ら離れた第2の発光層113bの内部まで輸送され、再結合領域が主に第2の発光層11
3bに形成される。さらに、正孔の輸送性が抑制された第2の発光層113bにより、正
孔が発光層113を通り抜けて陰極側の電子輸送層114に達する現象を抑制できる。
【0134】
次に、第1の発光層113aが含むホスト材料のLUMO準位132a(LUMO
HOS
T1)と、第1の発光層113aが含む発光物質のLUMO準位134a(LUMO
EM
1)と、第2の発光層113bが含むホスト材料のLUMO準位132b(LUMO
HO
ST2)と、第2の発光層113bが含む発光物質のLUMO準位134b(LUMO
E
M2)の関係について説明する。(
図2(B)を参照。)
【0135】
EL層103において、LUMO
HOST1はLUMO
HOST2より浅いか(絶対値は
小さい)概略等しい。LUMO
EM1はLUMO
HOST1より深く(絶対値は大さく)
、LUMO
EM2はLUMO
HOST2より深く(絶対値は大きく)、LUMO
EM1は
LUMO
EM2より深いか概略等しい。また、LUMO
HOST1とLUMO
EM1の差
(ΔLUMO
HOST1−EM1)は、LUMO
HOST2とLUMO
EM2の差(ΔL
UMO
HOST2−EM2)に比べ、その絶対値が大きい(|ΔLUMO
HOST1−E
M1|>|ΔLUMO
HOST2−EM2|)。
【0136】
ΔLUMO
HOST2−EM2はゲスト材料である発光物質によって第2の発光層113
bに形成される電子の捕獲準位の深さと見なすことができ、ΔLUMO
HOST1−EM
1はゲスト材料である発光物質によって第1の発光層113aに形成される電子の捕獲準
位の深さと見なすことができる。従って、本実施の形態が例示する発光素子においては、
第2の発光層113bに比べ、第1の発光層113aに形成される電子の捕獲準位の方が
深い(絶対値は大きい)。
【0137】
電子の捕獲準位は電子を捕獲するため、発光層の電子の輸送性に影響する。また、影響の
程度は捕獲準位の深さに依存する。具体的には、第2の発光層113bに比べて第1の発
光層113aが深い捕獲準位を有しているので、第1の発光層113aは第2の発光層1
13bに比べ電子を輸送し難くなる。すなわち、第1の発光層113aの電子輸送性は第
2の発光層113bの電子輸送性よりも低い。
【0138】
このような構成を有する場合、第1の発光層113aの電子輸送性を、第2の発光層11
3bの電子輸送性より抑制することができる。その結果、第2の発光層113bから第1
の発光層113aに運び込まれた電子が、正孔輸送層112に到達する現象を抑制できる
ため特に好ましい。また、LUMO
EM1をLUMO
EM2より深いか概略等しくするこ
とにより、電子輸送層114から第2の発光層113bに運び込まれた電子が第2の発光
層113bから第1の発光層113aに移動し易くなる。その結果、正孔と電子が再結合
する領域が発光層113全体に広がり、第2の発光層113bに加え、第1の発光層11
3aからも発光を得ることができる。
【0139】
なお、本実施の形態において、第1の発光層113aと第2の発光層113bは発光色が
異なる発光物質を含んでいるため、本実施の形態の発光素子が発する光は、二つの発光物
質が発する光が混合されたものになる。なお、第1の発光層が含む発光物質と、第2の発
光層が含む発光物質の組み合わせとしては、蛍光性物質同士であっても、燐光性物質同士
であっても、蛍光性物質と燐光性物質の組み合わせであっても構わない。
【0140】
例えば、本実施の形態の発光素子の第1の発光層113aが黄色の蛍光性物質を含み、第
2の発光層113bが青色の蛍光性物質を含む場合、白色の発光が得られる。また、第1
の発光層113aが赤色の燐光性物質を含み、第2の発光層113bが緑色の燐光性物質
を含む場合、黄色の発光が得られる。
【0141】
なお、電子が第2の発光層113b及び第1の発光層113aで正孔と再結合せずに正孔
輸送層112に到達する場合、正孔輸送層112が劣化する恐れがある。しかし、本実施
の形態で例示する正孔輸送層112は第1の有機化合物と抗還元物質を含んでおり、抗還
元物質は正孔輸送層112に到達した電子を第1の有機化合物に代わって受け取り、第1
の有機化合物が還元反応により劣化する現象を防止する。
【0142】
また、正孔輸送層112が含む第1の有機化合物のLUMO準位(LUMO
HTL)は、
第1の発光層113aが含むホスト材料のLUMO準位(LUMO
HOST1)より浅い
と、第1の発光層113aからの電子の注入は困難であり、電子を第1の発光層113a
に閉じ込めることができるため、第1の発光層113aにおける電子と正孔の再結合を促
進できる。
【0143】
本実施の形態の発光素子の第1の電極101、第2の電極102及び、EL層103の各
層を構成する材料は、実施の形態1と同様の材料を適宜用いることができる。また、発光
の取り出し方向、EL層103の積層順番等についても、実施の形態1と同様に適宜選択
して用いることができる。また、本実施の形態で例示されたEL層103を、実施の形態
1において
図4及び
図5(A)に例示した積層型の発光素子の構成に適用することもでき
る。
【0144】
なお、積層型素子の構成は白色の発光を得る場合に好適であり、本実施の形態の構成と組
み合わせることで、長寿命、高効率な発光装置を作製できる。
【0145】
複数の発光層の組み合わせとしては、赤、青及び緑色の光を含んで白色に発光する構成を
その例に挙げることができる。例えば、青色の蛍光材料を発光物質として含む第1のEL
層と、緑色と赤色の燐光材料を発光物質として含む第2のEL層を有する構成が挙げられ
る。
【0146】
また、補色の関係にある光を発する発光層を有する構成であっても白色発光が得られる。
EL層が2層積層された積層型素子において、第1のEL層から得られる発光の発光色と
第2のEL層から得られる発光の発光色を補色の関係にする場合、補色の関係としては、
青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。青色、黄色、青緑色、赤色に発光
する物質としては、例えば、先に列挙した発光物質の中から適宜選択すればよい。
【0147】
以下に、第1のEL層および第2のEL層のそれぞれが補色の関係にある複数の発光層を
有し、白色発光が得られる構成の一例を示す。
図5(B)に二つのEL層を積層した場合
の構成を図示する。
図5(B)において、第1のEL層631と第2のEL層632は、
第1の電極601と第2の電極602との間に積層されている。この場合、第1のEL層
631と第2のEL層632の間には、中間層604を設けることが好ましい。
【0148】
図5(B)に例示する発光素子は、第1の電極601と第2の電極602の間に第1のE
L層631と中間層604と第2のEL層632を有する。第1のEL層631は、青色
〜青緑色の波長領域に発光ピークを示す第1の発光層と、黄色〜橙色の波長領域に発光ピ
ークを示す第2の発光層とを有し、第2のEL層632は、青緑色〜緑色の波長領域に発
光ピークを示す第3の発光層と、橙色〜赤色の波長領域に発光ピークを示す第4の発光層
とを有するものとする。
【0149】
この場合、第1のEL層631からの発光は、第1の発光層および第2の発光層の両方か
らの発光を合わせたものであるので、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領
域の両方に発光ピークを示す。すなわち、第1のEL層631は2波長型の白色または白
色に近い色の発光を呈する。
【0150】
また、第2のEL層632からの発光は、第3の発光層および第4の発光層の両方からの
発光を合わせたものであるので、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の
両方に発光ピークを示す。すなわち、第2のEL層632は、第1のEL層631とは異
なる2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈する。
【0151】
したがって、第1のEL層631からの発光および第2のEL層632からの発光を重ね
合わせることにより、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の
波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする白色発光を得ることができる。
【0152】
なお、上述した積層型素子の構成において、積層されるEL層の間に中間層を配置するこ
とにより、低い電流密度で高輝度の発光が可能である。電流密度を低く保てるため、長寿
命素子を実現することができる。また、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるの
で、大面積での均一発光が可能となる。
【0153】
本実施の形態で例示する発光素子は、発光層のキャリア輸送性がバイポーラ性であって、
発光層の陰極に近い側に比べ、発光層の陽極に近い側の正孔の輸送性が勝る発光層を有し
ており、発光層の内部にキャリアの再結合領域が形成されている。また、正孔および電子
が発光層を通り抜けて再結合せずにそれぞれ電子輸送層および正孔輸送層に達する現象が
抑制されているため、電子とホールは発光層で高い効率で再結合する。その結果、本実施
の形態で例示する発光素子は高い発光効率を有する。
【0154】
また、本実施の形態で例示する発光素子は電子輸送層側から発光層を通り抜けた電子が正
孔輸送層に到達しても、正孔輸送層が抗還元物質を含んでいるため、正孔輸送層の劣化が
抑制されている。その結果、本実施の形態で例示する発光素子は高い信頼性を有する。
【0155】
また、本実施の形態で例示する発光素子は、発光色が異なる複数の発光層が積層された発
光層を有し、キャリアの再結合領域が当該複数の発光層に広く広がっている。その結果、
本実施の形態で例示する発光素子は広い発光波長域を有する。
【0156】
(実施の形態3)
本実施の形態が例示する発光素子は、少なくとも、正孔輸送層に一方の面を接する第1の
発光層と、第1の発光層の他方の面に接する第2の発光層と、第2の発光層の陰極側の面
に接する第3の発光層を有する発光素子である。第1の発光層、第2の発光層及び第3の
発光層はそれぞれバイポーラ性のホスト材料と、発光物質であるゲスト材料を含んでいる
。また、第1の発光層は、第2の発光層が含むゲスト材料に比べて正孔を捕獲する力が弱
いゲスト材料を含んでおり、第2の発光層は、第3の発光層が含むゲスト材料に比べて正
孔を捕獲する力が弱いゲスト材料を含んでいる。第1の発光層の正孔輸送性は第2の発光
層以上であって、第2の発光層の正孔輸送性は第3の発光層よりも高い。その結果、正孔
が正孔輸送層から離れた領域まで運ばれ、正孔と電子の再結合領域が発光層内に広がって
形成される。さらに、発光層を通り抜けて正孔輸送層に到達する電子が正孔輸送層を劣化
させないように、正孔輸送層が抗還元物質を含んでいる。
【0157】
本実施の形態の発光素子の構造を
図3(A)に示す。本実施の形態の発光素子は第1の電
極101と、第2の電極102と、EL層103を有する。第1の電極101は基板10
0上に形成されている。なお、本実施の形態においては、第1の電極101が陽極として
機能し、第2の電極102が陰極として機能する場合について主に説明する。
【0158】
EL層103は少なくとも正孔輸送層112と、発光層113(第1の発光層113a、
第2の発光層113b、及び第3の発光層113c)を含み、さらに電子輸送層114、
及び電子注入層115などを適宜組み合わせて形成する。正孔輸送層112は、陽極とし
て機能する電極と第1の発光層113aの間にあって、第1の発光層113aの陽極側の
面に接している。第2の発光層113bは、第1の発光層113aと陰極として機能する
電極の間にあって、第1の発光層113aの陰極側の面に接している。第3の発光層11
3cは、第2の発光層113bと陰極として機能する電極の間にあって、第2の発光層1
13bの陰極側の面に接している。電子輸送層114は、第3の発光層113cと陰極と
して機能する電極の間にあって、第3の発光層113cの陰極側の面に接している。また
、電子注入層115は、電子輸送層114と陰極として機能する電極の間にあって、陰極
として機能する電極に接している。
【0159】
次に、本実施の形態の発光素子におけるキャリアの挙動について説明する。本実施の形態
が例示する発光素子のEL層について、各層が有するバンドの相関を
図3(B)に示す。
【0160】
本実施の形態の発光素子は実施の形態1及び実施の形態2で例示した発光素子と、発光層
113の構成において異なる。従って本実施の形態では発光層113に関する部分につい
てのみ説明する。
【0161】
第1の発光層113aと第2の発光層113bと第3の発光層113cはホスト材料とゲ
スト材料を含む。
【0162】
第1の発光層113aと第2の発光層113bと第3の発光層113cのホスト材料は同
じであっても異なっても良いが、少なくともバイポーラ性であって、酸化反応に対しても
還元反応に対しても安定である。従って、第1の発光層113aと第2の発光層113b
と第3の発光層113cは正孔も電子も輸送できる。
【0163】
また、第1の発光層113aと第2の発光層113bと第3の発光層113cはゲスト材
料として発光物質を含み、その発光物質はキャリアの移動速度に影響を与える。
【0164】
第1の発光層113aが含むホスト材料のHOMO準位131a(HOMO
HOST1)
と、第1の発光層113aが含む発光物質のHOMO準位133a(HOMO
EM1)と
、第2の発光層113bが含むホスト材料のHOMO準位131b(HOMO
HOST2
)と、第2の発光層113bが含む発光物質のHOMO準位133b(HOMO
EM2)
と、第3の発光層113cが含むホスト材料のHOMO準位131c(HOMO
HOST
3)と、第3の発光層113cが含む発光物質のHOMO準位133c(HOMO
EM3
)の関係について説明する。(
図3(B)を参照。)なお、本実施の形態で例示する発光
素子の第1の電極101の仕事関数101W及び第2の電極102の仕事関数102W、
並びに正孔輸送層112のHOMO準位121及びLUMO準位122も
図3(B)に図
示する。
【0165】
EL層103において、HOMO
HOST1はHOMO
HOST2より深いか概略等しい
。また、HOMO
EM1はHOMO
HOST1より浅いか概略等しく、HOMO
EM2は
HOMO
HOST2より浅いか概略等しく、HOMO
EM1はHOMO
EM2より深いか
概略等しい。HOMO
EM3はHOMO
HOST3より浅い。また、HOMO
EM1とH
OMO
HOST1の差(ΔHOMO
EM1−HOST1)の絶対値は、HOMO
EM2と
HOMO
HOST2の差(ΔHOMO
EM2−HOST2)の絶対値以下であって、HO
MO
EM3とHOMO
HOST3の差(ΔHOMO
EM3−HOST3)の絶対値は、H
OMO
EM2とHOMO
HOST2の差(ΔHOMO
EM2−HOST2)の絶対値より
大きい(|ΔHOMO
EM1−HOST1|≦|ΔHOMO
EM2−HOST2|<|Δ
HOMO
EM3−HOST3|)。
【0166】
ΔHOMO
EM1−HOST1はゲスト材料である発光物質によって第1の発光層113
aに形成される正孔の捕獲準位の深さと見なすことができ、ΔHOMO
EM2−HOST
2はゲスト材料である発光物質によって第2の発光層113bに形成される正孔の捕獲準
位の深さと見なすことができ、ΔHOMO
EM3−HOST3はゲスト材料である発光物
質によって第3の発光層113cに形成される正孔の捕獲準位の深さと見なすことができ
る。従って、本発明の一態様において、第2の発光層113bに形成される正孔の捕獲準
位の深さは、第1の発光層113aに形成される正孔の捕獲準位の深さ以上に深く(絶対
値が大きく)、第3の発光層113cに形成される正孔の捕獲準位の深さは第2の発光層
113bに形成される正孔の捕獲準位より深い(絶対値は大きい)と言い換えることがで
きる。
【0167】
正孔の捕獲準位は正孔を捕獲するため、発光層の正孔の輸送性に影響する。また、影響の
程度は捕獲準位の深さに依存する。具体的には、第1の発光層113a以下に第2の発光
層113bは正孔の輸送性が抑制され、第2の発光層113bに比べ、第3の発光層11
3cは正孔の輸送性が抑制される。
【0168】
本実施の形態の発光素子はこのような構成により、正孔輸送層112から第1の発光層1
13aに運び込まれた正孔は、正孔輸送層112から離れた第3の発光層113cに運び
込まれる。また、正孔輸送性が抑制された第3の発光層113cにより、正孔が電子輸送
層114に到達する現象が抑制される。
【0169】
次に、EL層を移動する電子の挙動と再結合について説明する。
【0170】
電子注入層115は陰極として機能する第2の電極102から電子を電子輸送層114に
運び込む。電子輸送層114は電子輸送性に優れ、第3の発光層113cに電子を運び込
む。
【0171】
第3の発光層113cの正孔輸送性は抑制されているため、電子輸送層114から運び込
まれた電子は第3の発光層113cで正孔と高い効率で再結合し、ゲスト材料である発光
物質が励起され発光に至る。
【0172】
なお、第3の発光層113cにおいて正孔と再結合せずに通り抜けた電子が、第2発光層
113bに到達した場合、第2の発光層113bにおいて正孔と再結合し、第2の発光層
113bに添加された発光物質が発光に至る。同様に、第2の発光層113bにおいて正
孔と再結合せずに通り抜けた電子が、第1の発光層113aに到達した場合、第1の発光
層113aにおいて正孔と再結合し、第1の発光層113aに添加された発光物質が発光
に至る。従って、発光効率が低下することがない。このように、発光層113の広い領域
を発光可能な領域とすることで正孔と電子が再結合する確率を高め、発光効率を高めるこ
とができる。
【0173】
ここで、電子が発光層113で正孔と再結合せずに正孔輸送層112に到達する場合、正
孔輸送層112が劣化する恐れがある。しかし、本実施の形態で例示する正孔輸送層11
2は第1の有機化合物と抗還元物質を含んでおり、抗還元物質は正孔輸送層112に到達
した電子を第1の有機化合物に代わって受け取り、第1の有機化合物が還元反応により劣
化する現象を防止する。
【0174】
なお、本実施の形態において、第1の発光層113a、第2の発光層113b、及び第3
の発光層113cに添加する発光物質は適宜選ぶことができる。従って、第1の発光層1
13a、第2の発光層113b、及び第3の発光層113cは発光色が異なる発光層であ
ってもよい。発光色が異なる発光層を積層した場合、発光素子が発する光はそれぞれの発
光層の発光が混合されたものになる。なお、第1乃至第3の発光層が含む発光物質は、蛍
光性物質でも燐光性物質でも構わない。
【0175】
例えば、本実施の形態の発光素子の第1の発光層113aが赤色の蛍光性物質を含み、第
2の発光層113bが緑色の蛍光性物質を含み、第3の発光層113cが青色の蛍光性物
質を含む場合、白色の発光が得られる。また、本実施の形態の発光素子の第1の発光層1
13aが黄色の蛍光性物質を含み、第2の発光層113b及び第3の発光層113cが青
色の蛍光性物質を含む場合、白色の発光が得られる。
【0176】
本実施の形態の発光素子の第1の電極101、第2の電極102及び、EL層103の各
層を構成する材料は、実施の形態1と同様の材料を適宜用いることができる。また、発光
の取り出し方向、EL層103の積層順番等についても、実施の形態1と同様に適宜選択
して用いることができる。また、本実施の形態で例示されたEL層103を、実施の形態
1において
図4及び
図5(A)に例示した発光素子の構成に適用することもできる。従っ
て、ここでは詳細な説明を省略する。
【0177】
本実施の形態で例示する発光素子は、発光層のキャリア輸送性がバイポーラ性であって、
発光層の陰極に近い側に比べ、発光層の陽極に近い側の正孔の輸送性が勝る発光層を有し
ており、発光層の内部にキャリアの再結合領域が形成されている。また、正孔および電子
が発光層を通り抜けて再結合せずにそれぞれ電子輸送層および正孔輸送層に達する現象が
抑制されているため、電子とホールは発光層で高い効率で再結合する。その結果、本実施
の形態で例示する発光素子は高い発光効率を有する。
【0178】
また、本実施の形態で例示する発光素子は電子輸送層側から発光層を通り抜けた電子が正
孔輸送層に到達しても、正孔輸送層が抗還元物質を含んでいるため、正孔輸送層の劣化が
抑制されている。その結果、本実施の形態で例示する発光素子は高い信頼性を有する。
【0179】
また、本実施の形態で例示する発光素子は、発光色が異なる複数の発光層を積層した発光
層を適用できるうえ、当該複数の発光層にキャリアの再結合領域が広がっている。その結
果、本実施の形態で例示する発光素子は、広い発光波長を有する発光素子に好適である。
【0180】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を用いて作製された発光装置について
図1
2および
図13を用いて説明する。なお、
図12(A)は、発光装置を示す上面図、
図1
2(B)は
図12(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された401は駆
動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回
路)である。また、404は封止基板、405はシール材であり、シール材405で囲ま
れた内側は、空間407になっている。
【0181】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力
される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリ
ントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等
を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配
線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装
置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとす
る。
【0182】
次に、断面構造について
図12(B)を用いて説明する。基板410上には駆動回路部及
び複数の画素を有する画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側
駆動回路401と画素部402に複数形成された画素のうち一つの画素が示されている。
【0183】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424
とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで形成される種
々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施
の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要
はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0184】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのド
レインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。な
お、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型
の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0185】
また、カバレッジを良好なものとするため、絶縁物414の上端部または下端部に曲率を
有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性
アクリルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を
有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、光によってエッチャ
ントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のい
ずれも使用することができる。
【0186】
第1の電極413上には、EL層416、および第2の電極417がそれぞれ形成されて
いる。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては、仕事関数の
大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)膜、また
は珪素を含有したインジウムスズ酸化物膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO)膜、窒化チ
タン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜と
アルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜
と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線と
しての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させるこ
とができる。
【0187】
第1の電極413と第2の電極417に挟まれたEL層416は、実施の形態1乃至実施
の形態3と同様に形成する。
【0188】
また、EL層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法
等の種々の方法により形成できる。
【0189】
さらに、EL層416上に形成される第2の電極417に用いる材料としては、仕事関数
の小さい材料(例えば、Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgA
g、MgIn、AlLi)を用いることが好ましい。なお、EL層416で生じた光が陰
極として機能する第2の電極417を透過させる場合には、第2の電極417として、膜
厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化イ
ンジウム酸化亜鉛合金(In
2O
3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用い
るのが良い。
【0190】
さらにシール材405で封止基板404を基板410と貼り合わせることにより、基板4
10、封止基板404、およびシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が
備えられた構造になっている。なお、空間407には、不活性気体(窒素やアルゴン等)
が充填される場合の他、シール材405で充填される構成も含むものとする。
【0191】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、シール材405
の材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板
404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−
Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエ
ステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0192】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を用いて作製された発光装置を得ることが
できる。
【0193】
本発明の発光装置は、実施の形態1乃至実施の形態3で示した発光素子を用いているため
、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、発光効率の高い発光素
子を有しているため、消費電力が低減され、さらに長時間駆動可能な発光装置を得ること
ができる。
【0194】
以上では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発
光装置について説明したが、この他、パッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。
図13には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図
13(A)は、パッシブマトリクス型の発光装置を示す斜視図、
図13(B)は
図13(
A)をX−Yで切断した断面図である。
図13において、基板951上には、電極952
と電極956と、それらの間にEL層955とが設けられている。電極952の端部は絶
縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている
。
【0195】
隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が
狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状
であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の
方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)より
も短い。このように、隔壁層954を設けることで、クロストークに起因した発光素子の
不良を防ぐことが出来る。
【0196】
電極952と電極956に挟まれたEL層955は、実施の形態1乃至実施の形態3と同
様に形成する。
【0197】
本発明の発光装置は、実施の形態1または実施の形態2で示した発光素子を用いているた
め、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、発光効率の高い発光
素子を有しているため、消費電力が低減され、さらに長時間駆動可能な発光装置を得るこ
とができる。
【0198】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4に示す発光装置を適用した電子機器について説明する。
本発明の電子機器は、実施の形態1乃至は実施の形態3に示した発光素子を含み、消費電
力が低減され、長時間駆動可能な表示部を有する。また、色再現性に優れた表示部を有す
る。
【0199】
本発明の一態様の発光素子を用いて作製された発光素子を有する電子機器として、ビデオ
カメラやデジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム
、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、
携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、
記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には、Digital Versatile D
isc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)
などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を
図14に示す。
【0200】
図14(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部
9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置に
おいて、表示部9103は、実施の形態1乃至は実施の形態3で説明した発光素子をマト
リクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高いという特徴を有し
ている。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、このテレ
ビ装置は、高輝度の発光が可能であり、低消費電力化が図られている。また、信頼性に優
れ、長期間の使用に耐えられる。本発明に係るテレビ装置は、低消費電力、高画質化が図
られているので、それにより住環境に適合した製品を提供することができる。
【0201】
図14(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部
9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス92
06等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態1乃至は実施
の形態3で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は
、発光効率が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9203も
同様の特徴を有するため、高輝度の発光が可能であり、低消費電力化が図られている。ま
た、信頼性に優れ、長期間の使用に耐えられる。本発明に係るコンピュータは、低消費電
力、高画質化が図られているので、環境に適合した製品を提供することができる。
【0202】
図14(C)は本発明に係る携帯電話1020であり、筐体1021に組み込まれた表示
部1022の他、操作ボタン1023、外部接続ポート1024、スピーカ1025、マ
イク1026などを備えている。表示部1022を指などで触れることで、情報を入力こ
とができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つ操作は、表示部1022を指など
で触れることにより行うことができる。この携帯電話において、表示部1022は、実施
の形態1乃至は実施の形態3で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されてい
る。当該発光素子は、発光効率が高いという特徴を有している。その発光素子で構成され
る表示部1022も同様の特徴を有するため、高輝度の発光が可能であり、低消費電力化
が図られている。また、信頼性に優れ、長期間の使用に耐えられる。本発明に係る携帯電
話は、低消費電力、高画質化が図られているので、携帯に適した製品を提供することがで
きる。
【0203】
図14(D)は本発明に係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体950
3、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9
507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラ
において、表示部9502は、実施の形態1乃至は実施の形態3で説明した発光素子をマ
トリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、長時間駆動可
能であるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特
徴を有するため、高輝度の発光が可能であり、低消費電力化が図られている。また、信頼
性に優れ、長期間の使用に耐えられる。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質化が
図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0204】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の
電子機器に適用することが可能である。本発明の一態様の発光素子を用いることにより、
発光効率が高く、長時間駆動可能であり、消費電力の低減された表示部を有する電子機器
を提供することが可能となる。
【0205】
また、本発明の発光装置は、照明装置として用いることもできる。本発明の発光素子を照
明装置として用いる一態様を、
図15を用いて説明する。
【0206】
図15は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図
15に示した液晶表示装置は、筐体9601、液晶層9602、バックライト9603、
筐体9604を有し、液晶層9602は、ドライバーIC9605と接続されている。ま
た、バックライト9603は、本発明の発光装置が用いられており、端子9606により
、電流が供給されている。
【0207】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、発光効率が高
く、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光
の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液
晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、本発明の発光装置は薄型で低消費電力であ
るため、表示装置の薄型化、低消費電力化も可能となる。また、本発明の発光装置は高輝
度の発光が可能であるため、本発明の発光装置を用いた液晶表示装置も高輝度の発光が可
能である。
【0208】
図16は、本発明を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例で
ある。
図16に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源200
2として、本発明の発光装置が用いられている。本発明の発光装置は、発光効率が高く、
長時間駆動可能であり、また低消費電力であるため、電気スタンドも発光効率が高く、長
時間駆動可能であり、また低消費電力である。
【0209】
図17は、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた例である
。
【0210】
本発明の発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることがで
きる。また、本発明の発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化
の照明装置として用いることが可能となる。このように、本発明を適用した発光装置を、
室内の照明装置3001として用いた部屋に、
図14(A)で説明したような、本発明に
係るテレビ装置3002を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような
場合、両装置は低消費電力であるので、電気料金を心配せずに、明るい部屋で迫力のある
映像を鑑賞することができる。また、本発明の発光装置を適用した照明装置は、信頼性に
優れ、長期間の使用に耐えられる。
【実施例1】
【0211】
本発明の一態様の発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を示す。作製した発光素
子の概要を表1に示す。
【0212】
【表1】
【0213】
また、本実施例で用いる有機化合物のHOMO準位、及びLUMO準位を表2に示す。な
お、ここでは、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定から求めたHOMO準位、及び
LUMO準位を記載する。サイクリックボルタンメトリ(CV)測定からHOMO準位、
及びLUMO準位を決定する方法を後述の実施例2に例示する。
【0214】
【表2】
【0215】
また、本実施例で用いる有機化合物の構造式を以下に示す。
【0216】
【化1】
【化2】
【0217】
(発光素子1の作製)
本実施例で示す発光素子1の素子構造を
図6(A)に、バンド構造の一部を
図6(B)に
示す。発光素子1は第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成
する。本実施例において、EL層1503は、正孔輸送層1512、発光層1513(第
1の発光層1513a、及び第2の発光層1513b)、電子輸送層1514、電子注入
層1515が順次積層された構造を有する。
【0218】
また、本実施例の発光素子1の電子輸送層1514は、第1の電子輸送層1514a及び
第2の電子輸送層1514bの2層からなる。発光素子1が有する正孔輸送層1512、
第1の発光層1513a、第2の発光層1513b及び、第1の電子輸送層1514aに
ついて、各層が有するバンドの相関を
図6(B)に示す。
【0219】
発光素子1では、同一の有機材料(PCzPA)を正孔輸送層1512、第1の発光層1
513a、第2の発光層1513bのホスト材料として用いる。すなわち、これらの層は
同じHOMO準位及びLUMO準位を有する。第1の発光層1513aが含む発光物質の
HOMO準位はそのホスト材料のHOMO準位と概略等しい。第2の発光層1513bが
含む発光物質のHOMO準位はそのホスト材料のHOMO準位より、0.50eV浅く、
正孔の捕獲準位を形成する。
【0220】
次に、発光素子1の作製方法について説明する。まず、ガラス基板1501上に、酸化珪
素を含む酸化インジウム−酸化スズ(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の
電極1502を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mm
とした。
【0221】
第1の電極1502が形成された面が下方となるように、第1の電極1502が形成され
た基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、装置のチャンバー内を10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1502上に正孔輸送層1512を形成した。
正孔輸送層1512は、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)
フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデン(VI)を共蒸
着した膜からなり、その膜厚は50nmとした。PCzPAと酸化モリブデン(VI)の
比率は、重量比で4:1(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調
節した。なお、共蒸着とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法
である。
【0222】
次に、正孔輸送層1512上に、第1の発光層1513aを形成した。第1の発光層15
13aは、PCzPAとN,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)を共蒸着
した膜からなり、その膜厚は20nmとした。PCzPAとDPQdとの重量比は、1:
0.02(=PCzPA:DPQd)となるように蒸着レートを調節した。
【0223】
次に、第1の発光層1513a上に、第2の発光層1513bを形成した。第2の発光層
1513bはPCzPAと、N,9−ジフェニル−N−(9,10−ジフェニル−2−ア
ントリル)−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)を共蒸着した膜か
らなり、その膜厚は30nmとした。PCzPAと2PCAPAの重量比は、1:0.0
4(=PCzPA:2PCAPA)となるように蒸着レートを調節した。
【0224】
さらに、第2の発光層1513b上に、電子輸送層1514を形成した。電子輸送層15
14は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)を10nm、その上
にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように成膜した積
層膜からなる。
【0225】
電子輸送層1514上に、電子注入層1515を形成した。電子注入層1515は、フッ
化リチウム(LiF)からなり、その膜厚を1nmとした。
【0226】
最後に、電子注入層1515上に第2の電極1504を形成した。第2の電極1504は
、アルミニウムからなり、その膜厚を200nmとして発光素子1を作製した。
【0227】
以上により得られた本発明の発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、
発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、この発光素子の動作特性に
ついて測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0228】
発光素子1の電流密度−輝度特性を
図8に示す。また、電圧−輝度特性を
図9に示す。ま
た、輝度−電流効率特性を
図10に示す。また、初期輝度を約5000cd/m
2とした
ときの発光素子1の規格化輝度時間変化を
図11に示す。
【0229】
発光素子1は、輝度1000cd/m
2のときのCIE色度座標は(x=0.27、y=
0.65)であり、緑色の発光を示した。また、輝度1000cd/m
2のときの電流効
率は18.8cd/Aであり、電圧は4.4V、電流密度は、41.7mA/cm
2であ
った。また、
図11から、発光素子1は、400時間後でも初期輝度の92%の輝度を保
っており、長寿命な発光素子であることがわかる。
【0230】
以上のように、本発明を適用することにより、効率の良い長寿命な発光素子が得られた。
【0231】
(発光素子2の作製)
本実施例で示す発光素子2の素子構造を
図6(A)に、バンド構造の一部を
図6(C)に
示す。発光素子2が有する第2の発光層1513bのホスト材料は、発光素子1が有する
第2の発光層1513bのホスト材料と異なる。それ以外は発光素子1と同じ構成を有す
るためここでは詳細な説明を省略する。
【0232】
また、本実施例の発光素子2の電子輸送層1514は2層からなる。発光素子2が有する
正孔輸送層1512、第1の発光層1513a、第2の発光層1513b及び、第1の電
子輸送層1514aについて、各層が有するバンドの相関を
図6(C)に示す。
【0233】
発光素子2はほぼ同じHOMO準位及びLUMO準位を有する有機材料を用いて、正孔輸
送層1512、発光層1513(第1の発光層1513a、及び第2の発光層1513b
)を形成した。第1の発光層1513aが含む発光物質のHOMO準位はそのホスト材料
のHOMO準位と概略等しい。第2の発光層1513bが含む発光物質のHOMO準位は
そのホスト材料のHOMO準位より、0.50eV浅く、正孔の捕獲準位を形成する。
【0234】
次に、発光素子2の作製方法について説明する。発光素子1と同様の基板を用い、第1の
電極1502上に正孔輸送層1512を形成した。正孔輸送層1512は、PCzPAと
酸化モリブデン(VI)を共蒸着した膜からなり、その膜厚は50nmとした。PCzP
Aと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:1(=PCzPA:酸化モリブデン
)となるように蒸着レートを調節した。
【0235】
次に、正孔輸送層1512上に、第1の発光層1513aを形成した。第1の発光層15
13aは、PCzPAとDPQdを共蒸着した膜からなり、その膜厚は30nmとした。
PCzPAとDPQdとの重量比は、1:0.02(=PCzPA:DPQd)となるよ
うに蒸着レートを調節した。
【0236】
次に、第1の発光層1513a上に、第2の発光層1513bを形成した。第2の発光層
1513bは9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン
(略称:CzPA)と2PCAPAを共蒸着した膜からなり、その膜厚は30nmとした
。CzPAと2PCAPAの重量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)とな
るように蒸着レートを調節した。
【0237】
さらに、第2の発光層1513b上に、電子輸送層1514を形成した。電子輸送層15
14は、第1の電子輸送層1514a及び第2の電子輸送層1514bの2層からなる。
第1の電子輸送層1514aとしてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)
(略称:Alq)を10nm、その上に第2の電子輸送層1514bとしてバソフェナン
トロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように成膜した。
【0238】
電子輸送層1514上に、電子注入層1515を形成した。電子注入層1515は、フッ
化リチウム(LiF)からなり、その膜厚を1nmとした。
【0239】
最後に、電子注入層1515上に第2の電極1504を形成した。第2の電極1504は
、アルミニウムからなり、その膜厚を200nmとして発光素子2を作製した。
【0240】
以上により得られた本発明の発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、
発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、この発光素子の動作特性に
ついて測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0241】
発光素子2の電流密度−輝度特性を
図8に示す。また、電圧−輝度特性を
図9に示す。ま
た、輝度−電流効率特性を
図10に示す。また、初期輝度を約5000cd/m
2とした
ときの発光素子2の規格化輝度時間変化を
図11に示す。
【0242】
発光素子2は、輝度1000cd/m
2のときのCIE色度座標は(x=0.32、y=
0.60)であり、緑色の発光を示した。また、輝度1000cd/m
2のときの電流効
率は13.3cd/Aであり、電圧は4.2V、電流密度は、7.4mA/cm
2であっ
た。また、
図11から、発光素子2は、200時間後でも初期輝度の97%の輝度を保っ
ており、長寿命な発光素子であることがわかる。
【0243】
以上のように、本発明を適用することにより、効率の良い長寿命な発光素子が得られた。
【0244】
(発光素子3の作製)
本実施例で示す発光素子3の素子構造を
図7(A)に、バンド構造の一部を
図7(B)に
示す。発光素子3は第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層1503を形成
する。本実施例において、EL層1503は、正孔輸送層1512、第1の発光層151
3a、第2の発光層1513b、第3の発光層1513c、電子輸送層1514、電子注
入層1515が順次積層された構造を有する。
【0245】
また、本実施例の電子輸送層1514は、第1の電子輸送層1514a及び第2の電子輸
送層1514bの2層からなる。発光素子3が有する正孔輸送層1512、第1の発光層
1513a、第2の発光層1513b、第3の発光層1513c、及び第1の電子輸送層
1514aについて、各層が有するバンドの相関を
図7(B)に示す。
【0246】
発光素子3はほぼ同じHOMO準位及びLUMO準位を有する有機材料を用いて、正孔輸
送層1512、第1の発光層1513a、第2の発光層1513b、第3の発光層151
3cを形成した。第1の発光層1513aが含む発光物質のHOMO準位はそのホスト材
料のHOMO準位と概略等しい。第2の発光層1513bが含む発光物質のHOMO準位
はそのホスト材料のHOMO準位より0.38eV浅く、第3の発光層1513cが含む
発光物質のHOMO準位はそのホスト材料のHOMO準位より0.61eV高く、それぞ
れ正孔の捕獲準位を形成する。
【0247】
次に、発光素子3の作製方法について説明する。発光素子1と同様の基板を用い、第1の
電極1502上に正孔輸送層1512を形成した。正孔輸送層1512は、CzPAと酸
化モリブデン(VI)を共蒸着した膜からなり、その膜厚は50nmとした。CzPAと
酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:2(=CzPA:酸化モリブデン)とな
るように蒸着レートを調節した。
【0248】
次に、正孔輸送層1512上に、第1の発光層1513aを形成した。第1の発光層15
13aは、PCzPAとDPQdを共蒸着した膜からなり、その膜厚は30nmとした。
PCzPAとDPQdとの重量比は、1:0.02(=PCzPA:DPQd)となるよ
うに蒸着レートを調節した。
【0249】
次に、第1の発光層1513a上に、第2の発光層1513bを形成した。第2の発光層
1513bは3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−9−フェニル−9H−カ
ルパゾール(略称:2PCzPA)と2PCAPAを共蒸着した膜からなり、その膜厚は
20nmとした。2PCzPAと2PCAPAの重量比は、1:0.05(=2PCzP
A:2PCAPA)となるように蒸着レートを調節した。
【0250】
次に、第2の発光層1513b上に、第3の発光層1513cを形成した。第3の発光層
1513cはCzPAと9,10−ジフェニル−2−(N,N’,N’−トリフェニル−
1,4−フェニレンジアミン−N−イル)アントラセン(略称:2DPAPA)を共蒸着
した膜からなり、その膜厚は30nmとした。CzPAと2DPAPAの重量比は、1:
0.04(=CzPA:2DPAPA)となるように蒸着レートを調節した。
【0251】
さらに、第3の発光層1513c上に、電子輸送層1514を形成した。電子輸送層15
14は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を10n
m、その上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように
成膜した積層膜からなる。
【0252】
電子輸送層1514上に、電子注入層1515を形成した。電子注入層1515は、フッ
化リチウム(LiF)からなり、その膜厚を1nmとした。
【0253】
最後に、電子注入層1515上に第2の電極1504を形成した。第2の電極1504は
、アルミニウムからなり、その膜厚を200nmとして発光素子3を作製した。
【0254】
以上により得られた本発明の発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、
発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、この発光素子の動作特性に
ついて測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0255】
発光素子3の電流密度−輝度特性を
図8に示す。また、電圧−輝度特性を
図9に示す。ま
た、輝度−電流効率特性を
図10に示す。また、初期輝度を約5000cd/m
2とした
ときの発光素子3の規格化輝度時間変化を
図11に示す。
【0256】
発光素子3は、輝度1000cd/m
2のときのCIE色度座標は(x=0.30、y=
0.61)であり、緑色の発光を示した。また、輝度1000cd/m
2のときの電流効
率は14.6cd/Aであり、電圧は4.6V、電流密度は、6.1mA/cm
2であっ
た。また、
図11から、発光素子3は、400時間後でも初期輝度の87%の輝度を保っ
ており、長寿命な発光素子であることがわかる。
【0257】
以上のように、本発明を適用することにより、効率の良い長寿命な発光素子が得られた。
【実施例2】
【0258】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子に用いる材料のHOMO準位及びLUMO準位
の測定方法について説明する。
【0259】
ここでは、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定から、HOMO準位、及びLUMO
準位を測定する方法の一態様について説明する。
【0260】
酸化還元反応特性をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定には
、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまた
は600C)を用いた。
【0261】
また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補
助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(
5cm))を、参照電極としてはAg/Ag
+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7
非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。
また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一した。
【0262】
なお、CV測定における試料溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)(
(株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解
質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu
4NClO
4)((株)東
京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解さ
せ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。
【0263】
(参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーの算出)
測定に用いる参照電極(Ag/Ag
+電極)の真空準位に対するポテンシャルエネルギー
(eV)を算出する方法について説明する。なお、参照電極(Ag/Ag
+電極)の真空
準位に対するポテンシャルエネルギーは、Ag/Ag
+電極のフェルミ準位に相当する。
【0264】
参照電極(Ag/Ag
+電極)の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、その参照
電極(Ag/Ag
+電極)を用いて真空準位からのポテンシャルエネルギーが既知の物質
を測定した値から、算出すればよい。
【0265】
具体的には、標準水素電極の真空準位からのポテンシャルエネルギーは−4.44eVで
あることが知られている(参考文献;大西敏博・小山珠美著、高分子EL材料(共立出版
)、p.64−67)。また、メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位は、標準
水素電極に対して+0.610[V vs. SHE]であることが知られている(参考
文献;ChristianR.Goldsmith et al., J.Am.Che
m.Soc., Vol.124, No.1,83−96, 2002)。従って、フ
ェロセンの酸化還元電位は真空準位に対して−4.44−0.61=−5.05[eV]
である。
【0266】
一例として、本実施例で用いる参照電極(Ag/Ag
+電極)を用いてメタノール中にお
けるフェロセンの酸化還元電位を求めたところ、+0.11V[vs.Ag/Ag
+]で
あった。従って、本実施例で用いる参照電極(Ag/Ag
+電極)の真空準位からのポテ
ンシャルエネルギーは−5.05+0.11=−4.94[eV]であると算出できる。
【0267】
(HOMO準位の算出)
参照電極に対する作用電極の電位を正の値の範囲で走査し、前述の要領で調整した試料溶
液をCV測定する。ここでの正の値の範囲は、酸化反応が起こる範囲であって、代表的に
は試料の一電子酸化が起こる範囲とする。
【0268】
CV測定から酸化ピーク電位Epa、及び還元ピーク電位Epcを求め、半波電位(Ep
aとEpcの中間の電位)を算出する。半波電位の値(Epa+Epc)/2[V vs
.Ag/Ag
+]は、参照電極を基準として、作用電極上で酸化反応に要する電気エネル
ギーを測定した値である。従って、真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.
94−(Epa+Epc)/2[eV]となる。
【0269】
(LUMO準位の算出)
参照電極に対する作用電極の電位を負の値の範囲で走査し、前述の要領で調整した試料溶
液をCV測定する。ここでの負の値の範囲は、還元反応が起こる範囲であって、代表的に
は試料の一電子還元が起こる範囲とする。
【0270】
CV測定から還元ピーク電位Epc、及び酸化ピーク電位Epaを求め、半波電位(Ep
cとEpaの中間の電位)を算出する。半波電位の値(Epa+Epc)/2[V vs
.Ag/Ag
+]は、参照電極を基準として、作用電極上で還元反応に要する電気エネル
ギーを測定した値である。従って、真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.
94−(Epa+Epc)/2[eV]となる。
【0271】
なお、本発明の一態様の発光素子に用いる材料のHOMO準位及びLUMO準位を、光電
子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定することもできる。光電子分光装置
(理研計器社製、AC−2)を用いて大気中にて薄膜試料のHOMO準位を測定する。ま
た、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いて薄膜試料の吸収ス
ペクトルを測定し、吸収スペクトルをTaucプロットして吸収端を求め、吸収端から固
体状態のエネルギーギャップを見積もる。そして、HOMO準位にエネルギーギャップを
加えてLUMO準位を見積もることができる。
【実施例3】
【0272】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子における正孔と電子の再結合領域を計算した結
果を説明する。
【0273】
本実施例で計算した発光素子の構成を
図18(A)に示す。本実施例の発光素子は第1の
電極101と、第2の電極102と、EL層103を有する。第1の電極101は基板1
00上に形成されている。また、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極10
2が陰極として機能する。
【0274】
EL層103は正孔輸送層112と、第1の発光層113aと、第2の発光層113bと
、電子輸送層114を有する。正孔輸送層112は、陽極として機能する電極と第1の発
光層113aの間にあって、陽極及び第1の発光層113aの陽極側の面に接している。
第2の発光層113bは、第1の発光層113aと陰極として機能する電極の間にあって
、第1の発光層113aの陰極側の面に接している。電子輸送層114は、第2の発光層
113bと陰極として機能する電極の間にあって、第2の発光層113bの陰極側の面及
び陰極として機能する電極に接している。
【0275】
次に、本実施例の発光素子を構成するEL層について、各層が有するバンドの相関を
図1
8(B)に示す。
【0276】
本実施例で例示する発光素子の第1の電極101の仕事関数101Wは−5.3eVとし
た。また、第2の電極102の仕事関数102Wは−3.2eVとした。
【0277】
正孔輸送層112が含む第1の有機化合物のHOMO準位121(HOMO
HTL)、第
1の発光層113aが含むホスト材料のHOMO準位131a(HOMO
HOST1)及
び、第2の発光層113bが含むホスト材料のHOMO準位131b(HOMO
HOST
2)は−5.6eVとした。なお、第1の発光層113aが含む発光物質のHOMO準位
133a(HOMO
EM1)及び第2の発光層113bが含む発光物質のHOMO準位1
33b(HOMO
EM2)も、
図18(B)に図示する。
【0278】
また、正孔輸送層112が含む第1の有機化合物のLUMO準位122(LUMO
HTL
)、第1の発光層113aが含むホスト材料のLUMO準位132a(LUMO
HOST
1)及び、第2の発光層113bが含むホスト材料のLUMO準位132b(LUMO
H
OST2)は−2.7eVとした。
【0279】
なお、正孔輸送層112、第1の発光層113a及び、第2の発光層113bにおける電
子の移動度を1×10
−7cm
2/Vsとし、正孔の移動度を1×10
−5cm
2/Vs
とした。また、正孔輸送層112が有する正孔の濃度を1×10
16/cm
3とした。
【0280】
一方、電子輸送層114のHOMO準位141(HOMO
ETL)は−5.8eVとし、
LUMO準位142(LUMO
ETL)は−2.9eVとした。また、電子輸送層114
における正孔の移動度を1.5×10
−7cm
2/Vsとし、電子の移動度を1.5×1
0
−5cm
2/Vsとした。また、電子輸送層114が有する電子の濃度を1×10
16
/cm
3とした。
【0281】
また、第1の発光層113a及び、第2の発光層113bが有する正孔捕獲準位の濃度を
1×10
19/cm
3とした。
【0282】
なお、第1の電極101に比べて第2の電極102を10V低い電位とした。
【0283】
上記の構成を有する発光素子について、デバイスシミュレータAtlas(Silvac
o Data Systems Inc.)を用いてシミュレーションを行い、EL層中
の正孔と電子の再結合確率の分布を算出した。シミュレーションでは再結合が生じる位置
を発光領域とみなすことができる。第1の発光層113aが有する正孔捕獲準位の深さE
trap_EM1(|HOMO
EM1−HOMO
HOST1|)と、第2の発光層113
bが有する正孔捕獲準位の深さE
trap_EM2(|HOMO
EM2−HOMO
HOS
T2|)に、0.1eVから0.4eVまでの4種類の値をそれぞれあてはめ、計16種
類の組み合わせについて計算を行った。
【0284】
なお、計算結果は
図18(C)に示す模式図のごとく、第1の電極101の表面からの距
離に対して、正孔と電子の再結合確率をプロットして示す。また
図18(C)には、正孔
輸送層112、第1の発光層113a、第2の発光層113b、及び電子輸送層114の
位置が、矢印および点線によって図示されている。
【0285】
図19に、16種類の組み合わせについて行った計算結果を示す。なお、第1の発光層1
13aが有する正孔捕獲準位の深さに比べ、第2の発光層113bが有する正孔捕獲準位
が深い組み合わせについて、太い線で囲んで示す。
【0286】
第1の発光層113aが有する正孔捕獲準位の深さに比べ、第2の発光層113bが有す
る正孔捕獲準位が深い組み合わせにおいて、正孔と電子の再結合確率が第1の発光層11
3aと第2の発光層113bに広く分布し、発光領域が発光層全体に広がることが確認で
きた。例えば、第1の発光層113aが有する正孔捕獲準位の深さが0.1eVの場合、
第2の発光層113bが有する正孔捕獲準位を深くするにつれて、第2の発光層113b
と電子輸送層114の間における正孔と電子の再結合確率が小さく抑制され、発光層での
再結合が増加する様子が確認された。これは第2の発光層113bの正孔捕獲準位が深く
なるに従って発光層を通り抜けて電子輸送層側に到達する正孔が少なくなることを表して
いる。このように、本実施例の素子構成は、発光領域を発光層全体に広げて発光効率を高
めつつ、電子輸送層に到達する正孔による電子輸送層の劣化を防ぐ効果を有することが確
認できた。
【実施例4】
【0287】
本実施例で作製した発光素子、及び比較素子の概要を表3に示す。
【0288】
【表3】
【0289】
なお、本実施例で用いる有機化合物の構造式を以下に示す。
【0290】
【化3】
【0291】
また、本実施例で用いた有機化合物のHOMO準位、及びLUMO準位を表4に示す。な
お、HOMO準位、及びLUMO準位は実施例2に記載したサイクリックボルタンメトリ
(CV)測定から求めた。
【0292】
【表4】
【0293】
(発光素子4の作製)
本実施例で作製した発光素子4の素子構造を
図20(A)に、バンド構造の一部を
図20
(B)に示す。発光素子4は第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層150
3を有する。本実施例の発光素子4のEL層1503は、正孔輸送層1512、発光層1
513、電子輸送層1514、並びに電子注入層1515が順次積層された構造を有する
。なお、発光層1513は第1の発光層1513aに第2の発光層1513bを積層した
構成を備え、電子輸送層1514は第1の電子輸送層1514aに第2の電子輸送層15
14bを積層した構成を備える。
【0294】
発光素子4が備える各層のバンドの相関を説明するために、正孔輸送層1512、第1の
発光層1513a、第2の発光層1513b、並びに第1の電子輸送層1514aのHO
MO準位、及びLUMO準位を
図20(B)に示す。なお、発光素子4の正孔輸送層15
12、第1の発光層1513a、及び第2の発光層1513bは共通のホスト材料を含む
。共通のホスト材料として、mDBTPTp−IIを用いた。
【0295】
第1の発光層1513aは、ホスト材料に発光物質としてIr(mppr−Me)
2dp
mが分散されている。発光物質のHOMO準位(−5.50eV)は、ホスト材料のHO
MO準位(−6.24eV)に比べて浅いため、0.74eVの大きさの正孔の捕獲準位
が第1の発光層1513aに形成される。
【0296】
また、第2の発光層1513bは、ホスト材料に発光物質としてIr(2phq)
3が分
散されている。発光物質のHOMO準位(−5.43eV)は、ホスト材料のHOMO準
位(−6.24eV)に比べて浅いため、0.81eVの正孔の捕獲準位が第2の発光層
1513bに形成される。依って、第1の発光層は第2の発光層より正孔を捕獲する力が
弱く、第1の発光層の正孔輸送性は第2の発光層より高い。
【0297】
次に、発光素子4の作製方法について説明する。発光素子1と同様に、ガラス基板150
1に設けられた第1の電極1502上に正孔輸送層1512を形成した。正孔輸送層15
12はmDBTPTp−IIと酸化モリブデン(VI)を、50nmの膜厚となるように
共蒸着して形成した。mDBTPTp−IIと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比
で4:2(=mDBTPTp−II:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節し
た。
【0298】
次に、第1の発光層1513aを正孔輸送層1512上に形成した。第1の発光層151
3aは、mDBTPTp−IIとIr(mppr−Me)
2dpmを、20nmの膜厚と
なるように共蒸着して形成した。mDBTPTp−IIとIr(mppr−Me)
2dp
mとの重量比は、1:0.05(=mDBTPTp−II:Ir(mppr−Me)
2d
pm)となるように蒸着レートを調節した。
【0299】
次に、第1の発光層1513a上に、第2の発光層1513bを形成した。第2の発光層
1513bはmDBTPTp−IIとIr(2phq)
3を、30nmの膜厚となるよう
に共蒸着して作製した。mDBTPTp−IIとIr(2phq)
3の重量比は、1:0
.04(=mDBTPTp−II:Ir(2phq)
3)となるように蒸着レートを調節
した。
【0300】
さらに、第2の発光層1513b上に、電子輸送層1514を形成した。電子輸送層15
14は、第1の電子輸送層1514a及び第2の電子輸送層1514bの2層からなる。
なお、第1の電子輸送層1514aとしてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(I
II)(略称:Alq)を10nm、その上に第2の電子輸送層1514bとしてバソフ
ェナントロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように成膜した。
【0301】
電子輸送層1514上に、電子注入層1515を形成した。電子注入層1515としてフ
ッ化リチウム(LiF)を、1nmの膜厚となるように蒸着した。
【0302】
最後に、電子注入層1515上に第2の電極1504を形成した。第2の電極1504と
してアルミニウムを、200nmの膜厚となるよう蒸着して発光素子4を作製した。
【0303】
以上により得られた発光素子4を大気に曝さないように窒素雰囲気のグローブボックス内
において封止した後、この発光素子4の動作特性について測定を行った。なお、測定は室
温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0304】
(発光素子5の作製)
本実施例で作製した発光素子5の素子構造を
図20(A)に、バンド構造の一部を
図20
(C)に示す。発光素子5は第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層150
3を有する。本実施例の発光素子5のEL層1503は、正孔輸送層1512、発光層1
513、電子輸送層1514、並びに電子注入層1515が順次積層された構造を有する
。なお、発光層1513は第1の発光層1513aに第2の発光層1513bを積層した
構成を備え、電子輸送層1514は第1の電子輸送層1514aに第2の電子輸送層15
14bを積層した構成を備える。
【0305】
発光素子5が備える各層のバンドの相関を説明するために、正孔輸送層1512、第1の
発光層1513a、第2の発光層1513b、並びに第1の電子輸送層1514aのHO
MO準位、及びLUMO準位を
図20(C)に示す。なお、発光素子5は正孔輸送層15
12、第1の発光層1513a、及び第2の発光層1513bは共通のホスト材料を含む
。共通のホスト材料として、mDBTPTp−IIを用いた。
【0306】
第1の発光層1513aは、ホスト材料に発光物質としてIr(mppr−Me)
2dp
mが分散されている。発光物質のHOMO準位(−5.50eV)は、ホスト材料のHO
MO準位(−6.24eV)に比べて浅いため、0.74eVの大きさの正孔の捕獲準位
が第1の発光層1513aに形成される。
【0307】
また、第2の発光層1513bは、ホスト材料に発光物質としてIr(ppy)
3が分散
されている。発光物質のHOMO準位(−5.32eV)は、ホスト材料のHOMO準位
(−6.24eV)に比べて浅いため、0.92eVの正孔の捕獲準位が第2の発光層1
513bに形成される。依って、第1の発光層は第2の発光層より正孔を捕獲する力が弱
く、第1の発光層の正孔輸送性は第2の発光層より高い。
【0308】
次に、発光素子5の作製方法について説明する。発光素子5は、上述の発光素子4と第2
の発光層1513bの構成のみが異なる構成を有する。よって、ここでは第2の発光層1
513bの作製方法のみを説明し、他の構成については、発光素子4の作製方法の記載を
参酌することがきる。
【0309】
第1の発光層1513a上に、第2の発光層1513bを形成した。第2の発光層151
3bはmDBTPTp−IIとIr(ppy)
3を、30nmの膜厚となるように共蒸着
して作製した。mDBTPTp−IIとIr(ppy)
3の重量比は、1:0.04(=
mDBTPTp−II:Ir(ppy)
3)となるように蒸着レートを調節した。
【0310】
以上により得られた発光素子5を大気に曝さないように窒素雰囲気のグローブボックス内
において封止した後、この発光素子5の動作特性について測定を行った。なお、測定は室
温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0311】
(比較素子1の作製)
本実施例で作製した比較素子1の素子構造を
図21(A)に、バンド構造の一部を
図21
(B)に示す。比較素子1は第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層150
3を有する。比較素子1のEL層1503は、正孔輸送層1512、発光層1513b、
電子輸送層1514、並びに電子注入層1515が順次積層された構造を有する。なお、
発光層1513bは一層のみからなり、電子輸送層1514は第1の電子輸送層1514
aに第2の電子輸送層1514bを積層した構成を備える。
【0312】
比較素子1が備える各層のバンドの相関を説明するために、正孔輸送層1512、発光層
1513b、並びに第1の電子輸送層1514aのHOMO準位、及びLUMO準位を図
21(B)に示す。なお、比較素子1の正孔輸送層1512、並びに発光層1513bは
共通のホスト材料を含む。共通のホスト材料として、mDBTPTp−IIを用いた。
【0313】
発光層1513bは、ホスト材料に発光物質としてIr(2phq)
3が分散されている
。発光物質のHOMO準位(−5.43eV)は、ホスト材料のHOMO準位(−6.2
4eV)に比べて浅いため、0.81eVの正孔の捕獲準位が発光層1513bに形成さ
れる。
【0314】
次に、比較素子1の作製方法について説明する。発光素子1と同様に、基板に設けられた
第1の電極1502上に正孔輸送層1512を形成した。正孔輸送層1512はmDBT
PTp−IIと酸化モリブデン(VI)を、70nmの膜厚となるように共蒸着して形成
した。mDBTPTp−IIと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で4:2(=m
DBTPTp−II:酸化モリブデン)となるように蒸着レートを調節した。
【0315】
次に、正孔輸送層1512上に、発光層1513bを形成した。発光層1513bはmD
BTPTp−IIとIr(2phq)
3を、30nmの膜厚となるように共蒸着して作製
した。mDBTPTp−IIとIr(2phq)
3の重量比は、1:0.04(=mDB
TPTp−II:Ir(2phq)
3)となるように蒸着レートを調節した。
【0316】
さらに、発光層1513b上に、電子輸送層1514を形成した。電子輸送層1514は
、第1の電子輸送層1514a及び第2の電子輸送層1514bの2層からなる。なお、
第1の電子輸送層1514aとしてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)
(略称:Alq)を10nm、その上に第2の電子輸送層1514bとしてバソフェナン
トロリン(略称:BPhen)を20nmの膜厚となるように成膜した。
【0317】
電子輸送層1514上に、電子注入層1515を形成した。電子注入層1515としてフ
ッ化リチウム(LiF)を、1nmの膜厚となるように蒸着した。
【0318】
最後に、電子注入層1515上に第2の電極1504を形成した。第2の電極1504と
してアルミニウムを、200nmの膜厚となるよう蒸着して比較素子1を作製した。
【0319】
以上により得られた比較素子1を大気に曝さないように窒素雰囲気のグローブボックス内
において封止した後、この比較素子1の動作特性について測定を行った。なお、測定は室
温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0320】
(比較素子2の作製)
本実施例で作製した比較素子2の素子構造を
図21(A)に、バンド構造の一部を
図21
(C)に示す。比較素子2は第1の電極1502上に複数の層が積層されたEL層150
3を有する。比較素子2のEL層1503は、正孔輸送層1512、発光層1513b、
電子輸送層1514、並びに電子注入層1515が順次積層された構造を有する。なお、
発光層1513bは一層のみからなり、電子輸送層1514は第1の電子輸送層1514
aに第2の電子輸送層1514bを積層した構成を備える。
【0321】
比較素子2が備える各層のバンドの相関を説明するために、正孔輸送層1512、発光層
1513b、並びに第1の電子輸送層1514aのHOMO準位、及びLUMO準位を図
21(C)に示す。なお、比較素子2の正孔輸送層1512、並びに発光層1513bは
共通のホスト材料を含む。共通のホスト材料として、mDBTPTp−IIを用いた。
【0322】
発光層1513bは、ホスト材料に発光物質としてIr(ppy)
3が分散されている。
発光物質のHOMO準位(−5.32eV)は、ホスト材料のHOMO準位(−6.24
eV)に比べて浅いため、0.92eVの正孔の捕獲準位が発光層1513bに形成され
る。
【0323】
次に、比較素子2の作製方法について説明する。比較素子2は、上述の比較素子1と第2
の発光層1513bの構成のみが異なる構成を有する。よって、ここでは第2の発光層1
513bの作製方法のみを説明し、他の構成については、比較素子1の作製方法の記載を
参酌することがきる。
【0324】
正孔輸送層1512上に、発光層1513bを形成した。発光層1513bはmDBTP
Tp−IIとIr(ppy)
3を、30nmの膜厚となるように共蒸着して作製した。m
DBTPTp−IIとIr(ppy)
3の重量比は、1:0.04(=mDBTPTp−
II:Ir(ppy)
3)となるように蒸着レートを調節した。
【0325】
以上により得られた比較素子2を大気に曝さないように窒素雰囲気のグローブボックス内
において封止した後、この比較素子2の動作特性について測定を行った。なお、測定は室
温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0326】
(評価結果)
発光素子4と比較素子1の電流密度−輝度特性を
図22、電圧−輝度特性を
図23に、ま
た輝度−電流効率特性を
図24に示す。
【0327】
発光素子4は、輝度1131cd/m
2のときのCIE色度座標は(x=0.558、y
=0.441)であり、緑色の発光を示した。また、輝度1131cd/m
2のときの電
流効率は29.0cd/Aであり、電圧は7.0V、電流密度は、3.9mA/cm
2で
あった。一方、比較素子1は、輝度848.6cd/m
2のときのCIE色度座標は(x
=0.577、y=0.421)であり、橙色の発光を示した。また、輝度848.6c
d/m
2のときの電流効率は6.87cd/Aであり、電圧は6.0V、電流密度は、1
2.3mA/cm
2であった。
【0328】
以上の測定結果から、発光素子4は比較素子1より高い電流効率で発光した。本発明の一
態様の発光素子4は正孔捕獲準位が形成された第1の発光層1513aを第2の発光層1
513bの正孔輸送層1512側に備えているため、発光効率が高い。
【0329】
発光素子5と比較素子2の電流密度−輝度特性を
図25、電圧−輝度特性を
図26に、ま
た輝度−電流効率特性を
図27に示す。
【0330】
発光素子5は、輝度1000cd/m
2のときのCIE色度座標は(x=0.523、y
=0.467)であり、橙色の発光を示した。また、輝度1112cd/m
2のときの電
流効率は29.9cd/Aであり、電圧は7.8V、電流密度は、3.71mA/cm
2
であった。一方、比較素子2は、輝度1176cd/m
2のときのCIE色度座標は(x
=0.335、y=0.610)であり、緑色の発光を示した。また、輝度1176cd
/m
2のときの電流効率は11.2cd/Aであり、電圧は6.8V、電流密度は、10
.5mA/cm
2であった。
【0331】
以上の測定結果から、発光素子5は高い電流効率で発光した。本発明の一態様の発光素子
5は正孔捕獲準位が形成された第1の発光層1513aを第2の発光層1513bの正孔
輸送層1512側に備えているため、発光効率が高い。