特許第6247724号(P6247724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247724
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   G01B11/25 H
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-152283(P2016-152283)
(22)【出願日】2016年8月2日
(62)【分割の表示】特願2011-228273(P2011-228273)の分割
【原出願日】2011年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-197127(P2016-197127A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】東原 正和
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−128408(JP,A)
【文献】 特開2008−145139(JP,A)
【文献】 特開2003−287405(JP,A)
【文献】 特開昭63−191281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0017720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に明部と暗部とを含むパターンを投影する投影手段と、
前記投影手段によりパターンが投影されている間に前記物体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から前記パターンの明部と暗部の境界を示すエッジ位置を検出する検出手段と、
前記検出されたエッジ位置に基づいて、前記物体の三次元形状を計測する計測手段とを備え、
前記撮像手段の焦点位置は、前記撮像手段からみて、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸とに基づいて決定される位置を含む計測基準面よりも奥に設定されており、
前記投影手段の焦点位置は、前記計測基準面に設定されており、
前記画像における前記明部と前記暗部の間のコントラスト値は、前記計測基準面よりも奥の領域において最大値をもつことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記投影手段からみて、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸とに基づいて決定される位置は、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸との交点位置であることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記計測手段は、空間符号化法により前記物体の三次元形状を計測することを特徴とする請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記計測手段は、位相シフト法により前記物体の三次元形状を計測することを特徴とする請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記投影手段の焦点位置は、固定されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記撮像手段の撮像素子は一つであることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
物体に明部と暗部とを含むパターンを投影する投影手段と、
前記投影手段によりパターンが投影されている間に前記物体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から前記パターンの明部と暗部の境界を示すエッジ位置を検出する検出手段と、
前記検出されたエッジ位置に基づいて、前記物体の三次元形状を計測する計測手段とを備え、
前記撮像手段の焦点位置は、前記撮像手段からみて、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸とに基づいて決定される位置を含む計測基準面よりも奥に設定されており、
前記投影手段の焦点位置は、前記計測基準面に設定されており、
前記投影手段からみて、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸とに基づいて決定される位置は、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸との交点位置であることを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元形状計測装置で用いられる三次元形状計測法として、いくつかの手法が提案されている。投影装置を用いずに撮影装置だけで形状計測を行うパッシプ方式と、投影装置と撮影装置とを組み合わせて用いるアクティブ方式と、が知られている。アクティブ方式では、投影された対象物を撮影した画像から対象物の三次元形状を計測する。対象物は三次元形状を有していることから、三次元形状計測装置には、奥行方向に関しても形状計測に必要な精度を満たすことが求められる。
【0003】
このような、アクティブ方式の三次元形状計測装置の例として、特許文献1および特許文献2が開示されている。特許文献1では、スリット状の投影を対象物に照射して、積算照射強度分布が三角波状になるように光源を制御し、位相シフト法の原理を用いて三次元形状計測を行う技術が開示されている。特許文献2では、デジタル階調値の投影パターンをデフォーカスさせることで、正弦波パターンにし、特許文献1と同様に位相シフト法の原理を用いて三次元形状計測を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−118443号公報
【特許文献2】特開2007−85862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の三次元形状計測装置では、計測基準面の上にある対象物の奥行方向の全域において、必要な精度を満たすことが難しい。また、特許文献2に記載の三次元形状計測装置でも、同様に、対象物の奥行方向の全域において必要な精度を満たすことが難しい。なぜならば、対象物を撮影した画像は、撮影光学系のフォーカス面からのデフォーカスに伴いコントラストが悪化し、コントラストが悪化した画像から算出された三次元形状の精度は悪化するからである。
【0006】
具体的には、特許文献1のように、計測基準面が撮影光学系のフォーカス面である場合、計測基準面に置かれた対象物は、計測基準面から離れるほど撮影画像のコントラストが低下し、計測精度が悪化する。そのため、計測基準面での対象物の計測精度に対して、撮影装置に最も近い面での計測精度の悪化が大きく、奥行方向の全域において必要な精度を満たすことが難しいという課題がある。
【0007】
また特許文献2のように、投影パターンのフォーカス面が、対象物が存在する領域の外にある場合、投影パターンのコントラストは、投影パターンのフォーカス面に近い対象物の面から遠い面に向かって低下する。それに伴い撮影画像のコントラストが低下するため、計測精度が悪化し、特許文献1と同様に奥行方向の全域において必要な精度を満たすことが難しいという課題がある。
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、奥行方向に対する計測精度の低下を抑制し、計測空間全域において良好な計測精度を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明に係る計測装置は、
物体に明部と暗部とを含むパターンを投影する投影手段と、
前記投影手段によりパターンが投影されている間に前記物体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から前記パターンの明部と暗部の境界を示すエッジ位置を検出する検出手段と、
前記検出されたエッジ位置に基づいて、前記物体の三次元形状を計測する計測手段とを備え、
前記撮像手段の焦点位置は、前記撮像手段からみて、前記投影手段の投影範囲の中心位置を通る軸と前記撮像手段の撮像範囲の中心位置を通る軸とに基づいて決定される位置を含む計測基準面よりも奥に設定されており、
前記投影手段の焦点位置は、前記計測基準面に設定されており、
前記画像における前記明部と前記暗部の間のコントラスト値は、前記計測基準面よりも奥の領域において最大値をもつことを特徴とする。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、奥行方向に対する計測精度の低下を抑制し、計測空間全域において良好な計測精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る三次元形状計測装置の構成図。
図2】第1実施形態に係る計測基準面及び計測空間を示す図。
図3】第1実施形態に係る投影パターンを示す図。
図4】第1実施形態に係る光学系の模式図。
図5】第1実施形態に係る光学系の模式図。
図6】第2実施形態に係る三次元形状計測装置の構成図。
図7】第2実施形態に係る計測基準面及び計測空間を示す図。
図8】第2実施形態に係る光学系の模式図。
図9】第2実施形態に係る光学系の模式図。
図10】第3実施形態に係る三次元形状計測装置の構成図。
図11】第3実施形態に係る計測基準面及び計測空間を示す図。
図12】第3実施形態に係る光学系の模式図。
図13】第1実施形態に係る撮影距離とコントラストとの関係、または、撮影距離と撮影画像の明るさとの関係を示す図。
図14】第1実施形態に係る撮影距離と計測誤差との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る三次元形状計測装置の構成を説明する。三次元形状計測装置は、投影部101と、撮影部102と、制御部103とを備える。
【0013】
投影部101は、パターン光を対象物104へ投影する投影動作を実行するプロジェクタである。投影部101は、投影範囲105で示される空間へ投影可能である。投影部101は、会議室等で上方投影用に使用されるプロジェクタと同様に、投影軸と投影画像中心とが一致していないものとする。ここで、投影軸とは投影中心に向かう光軸である。
【0014】
撮影部102は、パターン光が投影された対象物104を撮影するカメラである。撮影部102は、撮影範囲106で示される空間を撮影可能である。制御部103は、例えばパーソナル・コンピュータであり、投影部101および撮影部102の動作を制御する。制御部103は、対象物104の三次元形状を計測する処理も実行する。
【0015】
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る計測基準面及び計測空間を説明する。光軸107は、投影部101から投影画像中心へ向かう光軸であり、投影軸と一致していない。光軸108は、撮影部102の光軸(撮影中心へ向かう撮影軸)である。計測基準面109は、光軸107と光軸108とが交差する点を含む面である。計測空間110は、投影範囲105と撮影範囲106との両方に含まれ、当該投影範囲105と撮影範囲106とにより規定される空間である。本実施形態では、計測基準面109は、計測空間中に含まれ、撮影部102から観察した場合に計測空間110の奥行方向距離を二等分するように配置されている。計測面116は、計測空間110の中で、投影部101および撮影部102から最も近い計測面である。計測面117は、計測空間110の中で、投影部101および撮影部102から最も遠い計測面である。本実施形態では、計測基準面109は、計測空間110の内部に設定されているが、必ずしも当該内部に限定されず外部であってもよい。
【0016】
本実施形態に係る三次元形状計測装置は、空間符号化法による形状計測を行う。まず投影部101が、図3に示されるような明暗パターン111を対象物104へ投影する。そして、撮影部102は、明暗パターン111が投影された対象物104を撮影する。制御部103は、撮影部102により撮影された画像を処理して、対象物104の三次元形状を計測する。より具体的には、明暗パターン111の明暗のエッジ位置を検出し、エッジ位置に対応する投影部101の投影軸と撮影部102の撮影軸とのなす角度に基づいて、三角測量の原理で投影部101および撮影部102から対象物104までの距離を算出する。
【0017】
本実施形態では、明暗パターン111のエッジ位置の検出方法として、ネガポジ交点検出法を用いる。ネガポジ交点検出法は、投影部101が明暗パターン111の明暗位置を切り替えたパターンを連続して投影し、撮影部102が撮影した画像の強度分布の交点をエッジ位置とする方法である。
【0018】
ネガポジ交点検出法では、一般的に撮影部102により撮影される明暗パターンのコントラストが高い方がエッジ位置の検出精度が高いことが知られている。また、撮影部102により撮影された画像の明度が高い方が撮影部102のSN(信号とノイズとの比)が向上する。そのため、投影部101からの投影は明度が高い方がエッジ位置の検出精度が高くなる。
【0019】
本実施形態に係る三次元形状計測装置では、計測空間110の全域において必要な精度以上で形状計測する必要がある。しかしながら、撮影部102により撮影された画像は、図13(a)に示されるように、フォーカス位置ではコントラストが高いが、フォーカス位置からずれるとコントラストが低下する。また、図13(b)に示されるように、撮影部102からの距離が近いと取込角度が大きくなり画像は明るくなるが、撮影部102からの距離が遠いと取込角度が小さくなり画像は暗くなる。
【0020】
そのため、撮影部102のフォーカス位置を計測基準面109に合わせた場合、計測面116では、デフォーカスによりコントラストが低下するが、計測面116が撮影部102に近いため撮影画像は明るい。一方、計測面117では、デフォーカスによりコントラストが低下し、計測面117が撮影部102から遠いため撮影画像も暗くなる。したがって、撮影距離と計測誤差との関係は、図14(a)に示されるような関係になり、計測面116に比べて計測面117では計測精度は低下する。
【0021】
そこで本実施形態では、投影部101のフォーカス位置を計測基準面109に合わせ、撮影部102のフォーカス位置を計測基準面109よりも撮影部102から奥側に合わせる。
【0022】
図4は、投影部101のフォーカス位置の様子を示している。レンズ112は、投影部101の投影光学系を模式的に1枚のレンズとして表したものであり、表示素子113は、明暗パターンを表示する。図4に示されるように、投影部101のフォーカス位置は、計測基準面109に合わせている。
【0023】
一方、図5は、撮影部102のフォーカス位置の様子を示している。レンズ114は、撮影部102の撮影光学系を模式的に1枚のレンズとして表したものであり、撮影素子115は、レンズ114から入ってきた光を電気信号に変換する。図5に示されるように、撮影部102のフォーカス位置は、計測基準面109よりも奥側に合わせている。
【0024】
図4および図5に示されるような構成にすることにより、図13(c)に示されるように、計測面116での撮影部102のデフォーカスによるコントラスト低下は、計測面117でのコントラスト低下よりも大きくなる。したがって、撮影距離と計測誤差との関係は、図14(b)に示されるような関係になり、撮影部102からの距離による撮影画像の明るさの変化と合わせると、計測面116の計測精度と計測面117の計測精度とは同程度となる。また、撮影部102のフォーカス位置が計測基準面109よりも奥にあるため、フォーカス位置が計測基準面109にある場合に比べて、計測面117でのコントラストの低下は小さい。そのため、フォーカス位置が計測基準面109にある場合に比べると計測面117での計測精度は向上する。すなわち、撮影距離全体に渡って計測誤差が一定の範囲に収まり精度の極端な低下が生じず、全体として一定の計測精度を得ることができる。
【0025】
以上説明したように、撮影部102のフォーカス位置を計測基準面109よりも奥に設定することにより、計測空間110全域において一定の計測精度を得ることができる。撮影部102のフォーカス位置を計測基準面109に合わせた場合、計測空間110全域で本実施形態と同程度の計測精度を得るためには、撮影部102の結像性能を上げて撮影画像のコントラストを向上させるか、投影部101から投影される光量を上げる必要がある。しかし、本実施形態ではその必要がないため、撮影部102の結像性能を必要以上に上げる必要がなく、撮影部102を構成するレンズ枚数を削減することができ、全体としてコスト削減につながる。また、投影部101の光源の出力を小さくすることで低消費電力化や、光源から発生する熱が少なくなるため冷却系を小さくすることができ、小型化につながる。
【0026】
ここで、計測空間の奥行が大きく、計測面116と計測面117との距離がより離れている場合、計測面116の撮影画像の明るさと計測面117の撮影画像の明るさとの差がより大きくなるため、撮影部102のフォーカス位置を計測面117により近い位置に設定する。これにより、計測面117でのデフォーカスによるコントラスト低下が小さくなり、計測面117での精度低下をより軽減できる。
【0027】
また、撮影部102のレンズ114のデフォーカスによるコントラスト低下が大きい場合、撮影部102のフォーカス位置を計測基準面109に近い位置に設定する。これにより、計測面116でのデフォーカスによるコントラスト低下が小さくなり、計測面116での精度低下をより軽減できる。
【0028】
なお、撮影部102のフォーカス位置を計測基準面109よりも奥に合わせる方法としては、撮影部102の撮影光学系を設計する際にフォーカス位置を計測基準面109よりも奥にしてもよい。また、撮影部102がオートフォーカス機能を有する場合には、フォーカスを合わせるべき位置にフォーカス合わせ用のチャートを配置してフォーカスを合わせる方法、もしくは、計測基準面109でフォーカスを合わせた後に、フォーカス調整用のレンズを用いて奥側にフォーカスを合わせる方法を取ってもよい。また、フォーカス位置が奥になりすぎると計測精度が低くなる箇所が表れてくるため、フォーカス位置は、コントラストと画像の明るさとの関係によって適切な位置に設定するとよい。
【0029】
本実施形態では、空間符号化法による三次元形状計測を行っており、エッジ位置の検出方法としてはネガポジ交点検出法を用いている。しかしながら、ネガポジ交点検出法に限定されず、微分フィルタによるエッジ位置の検出や強度分布の重心検出を行う方法を用いてもよい。また、三次元形状計測の方法も空間符号化法だけでなく、正弦波パターンを投影する位相シフト法や光切断法を用いてもよい。
【0030】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態に係る三次元形状計測装置の構成を説明する。三次元形状計測装置は、投影部201と、撮影部202と、制御部203とを備える。
【0031】
投影部201は、パターン光を対象物204へ投影する投影動作を実行するプロジェクタである。投影部201は、投影範囲205で示される空間へ投影可能である。投影部201は、第1実施形態とは異なり、投影軸と投影画像中心とが一致しているものとする。
【0032】
撮影部202は、パターン光が投影された対象物204を撮影するカメラである。撮影部202は、撮影範囲206で示される空間を撮影可能である。制御部203は、例えばパーソナル・コンピュータであり、投影部201および撮影部202の動作を制御する。制御部203は、対象物204の三次元形状を計測する処理も実行する。
【0033】
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る計測基準面及び計測空間を説明する。光軸207は、当該投影軸は投影部201から投影画像中心へ向かう光軸であり、投影軸と一致している。光軸208は、撮影部202の光軸(撮影中心へ向かう撮影軸)である。計測基準面209は、光軸207と光軸208とが交差する点を含む面である。計測空間210は、投影範囲205と撮影範囲206との両方に含まれ、当該投影範囲105と撮影範囲106とにより規定される空間である。本実施形態では、計測基準面209は、計測空間中に含まれ、撮影部202から観察した場合に計測空間210の奥行方向距離を二等分するように配置されている。計測面216は、計測空間210の中で、投影部201および撮影部202から最も近い計測面である。計測面217は、計測空間210の中で、投影部201および撮影部202から最も遠い計測面である。本実施形態では、計測基準面209は、計測空間210の内部に設定されているが、必ずしも当該内部に限定されず外部であってもよい。
【0034】
第1実施形態と同様に、本実施形態に係る三次元形状計測装置は、空間符号化法による形状計測を行い、エッジ位置の検出方法としてネガポジ交点検出法を用いる。
【0035】
本実施形態においても、投影部201のフォーカス位置を計測基準面209に合わせ、撮影部202のフォーカス位置を計測基準面209よりも奥側に合わせる。
【0036】
図8は、投影部201のフォーカス位置の様子を示している。レンズ212は、投影部201の投影光学系を模式的に1枚のレンズとして表したものであり、表示素子213は、明暗パターンを表示する。図8に示されるように、投影部201のフォーカス位置は、計測基準面209に合わせている。
【0037】
一方、図9は、撮影部202のフォーカス位置の様子を示している。レンズ214は、撮影部202の撮影光学系を模式的に1枚のレンズとして表したものであり、撮影素子215は、レンズ214から入ってきた光を電気信号に変換する。図9に示されるように、撮影部202のフォーカス位置は、計測基準面209よりも奥側に合わせている。
【0038】
図8および図9に示されるような構成にすることにより、計測面216での撮影部202のデフォーカスによるコントラスト低下は、計測面217でのコントラスト低下よりも大きくなる。したがって、撮影部202からの距離による撮影画像の明るさの変化と合わせると、計測面216の計測精度と計測面217の計測精度とは同程度となる。また、撮影部202のフォーカス位置が計測基準面209よりも奥にあるため、フォーカス位置が計測基準面209にある場合に比べて、計測面217でのコントラストの低下は小さい。そのため、フォーカス位置が計測基準面209にある場合に比べると計測面217での計測精度は向上する。すなわち、撮影距離全体に渡って計測誤差が一定の範囲に収まり精度の極端な低下が生じず、全体として一定の計測精度を得ることができる。
【0039】
以上説明したように、撮影部202のフォーカス位置を計測基準面209よりも奥に設定することにより、計測空間210全域において一定の計測精度を得ることができる。撮影部202のフォーカス位置を計測基準面209に合わせた場合、計測空間210全域で本実施形態と同程度の計測精度を得るためには、撮影部202の結像性能を上げて撮影画像のコントラストを向上させるか、投影部101から投影される光量を上げる必要がある。しかし、本実施形態ではその必要がないため、撮影部202の結像性能を必要以上に上げる必要がなく、撮影部202を構成するレンズ枚数を削減することができ、全体としてコスト削減につながる。また、投影部201の光源の出力を小さくすることで低消費電力化や、光源から発生する熱が少なくなるため冷却系を小さくすることができ、小型化につながる。
【0040】
(第3実施形態)
図6を参照して、第3実施形態に係る三次元形状計測装置の構成を説明する。三次元形状計測装置は、投影部301と、撮影部302と、撮影部303(第2の撮影部)と、制御部304とを備える。
【0041】
投影部301は、本実施形態ではアクティブステレオ方式を用いているため、対象物305へ、ベタ画像を投影するか、または、光源を照射する投影動作を実行する。投影部301は、投影範囲306で示される空間へ投影可能である。
【0042】
撮影部302および撮影部303は、投影部301により投影が行われた対象物305を撮影するカメラである。撮影部302は、撮影範囲307で示される空間を撮影可能である。撮影部303は、撮影範囲308で示される空間を撮影可能である。すなわち撮影部302および撮影部303は、撮影方向が相互に異なっている。制御部304は、例えばパーソナル・コンピュータであり、投影部301、撮影部302、および撮影部303の各動作を制御する。制御部304は、対象物305の三次元形状を計測する処理も実行する。
【0043】
次に、図11を参照して、第3実施形態に係る計測基準面及び計測空間を説明する。光軸309は、撮影部302の光軸(撮影中心へ向かう撮影軸)である。光軸310は、撮影部303の光軸(撮影中心へ向かう撮影軸)である。計測基準面311は、投影部301の投影軸と、光軸309および光軸310と、が交差する点を含む面である。計測空間312は、投影範囲306と撮影範囲307と撮影範囲308とに含まれ、当該投影範囲と撮影範囲307と撮影範囲308とにより規定される空間である。本実施形態では、計測基準面311は、計測空間中に含まれ、撮影部302から観察した場合に計測空間312の奥行方向距離を二等分するように配置されている。計測面313は、計測空間312の中で、投影部301、撮影部302、および撮影部303から最も近い計測面である。計測面314は、計測空間312の中で、投影部301、撮影部302、および撮影部303から最も遠い計測面である。本実施形態では、計測基準面311は、計測空間312の内部に設定されているが、必ずしも当該内部に限定されず外部であってもよい。
【0044】
本実施形態に係る三次元形状計測装置では、第1および第2実施形態とは異なり、投影部301により投影された対象物305を、撮影部302と、撮影部303とにより撮影した各画像から三角測量の原理を用いて対象物305までの距離を算出する、アクティブステレオ方式(ステレオ法)を採用している。そのため、第1および第2実施形態とは異なり、投影部301からパターンを投影する必要がないため、投影部301からはベタ画像を投影すればよい。さらには、投影部301は、電球などの照明部であってもよい。
【0045】
アクティブステレオ方式では、撮影画像から対象物305のエッジなどの特徴量を検出し、撮影部302および撮影部303により撮影された画像を対応付けて三角測量を行う。そのため、撮影部302および撮影部303により撮影された対象物305のエッジのコントラストが高い程、エッジ位置の検出精度が高くなる。また、撮影部302および撮影部303により撮影された画像の明度が高い方が、撮影部302および撮影部303のSNが向上する。そのため、投影部301からの投影は明度が高い方がエッジ位置の検出精度が高くなる。
【0046】
そこで、本実施形態でも第1および第2実施形態と同様に、撮影部302および撮影部303のフォーカス位置を計測基準面311よりも奥側に合わせる。
【0047】
図12は、撮影部302および撮影部303のフォーカス位置の様子を示している。レンズ315は、撮影部302の撮影光学系を模式的に1枚のレンズで表したものである。レンズ317は、撮影部303の撮影光学系を模式的に1枚のレンズで表したものである。撮影素子316および撮影素子318は、それぞれレンズ315およびレンズ317から入ってきた光を電気信号に変換する。
【0048】
図12に示されるような構成にすることにより、計測面313での撮影部302、撮影部303のデフォーカスによるコントラスト低下は、計測面314でのコントラスト低下よりも大きくなる。したがって、撮影部302、撮影部303からの距離による撮影画像の明るさの変化と合わせると、計測面313の計測精度と計測面314の計測精度とは同程度となる。また、撮影部302、撮影部303のフォーカス位置が計測基準面311よりも奥にあるため、フォーカス位置が計測基準面311にある場合に比べて、計測面314でのコントラスト低下は小さい。そのため、フォーカス位置が計測基準面311にある場合に比べると計測面314での計測精度は向上する。すなわち、撮影距離全体に渡って計測誤差が一定の範囲に収まり精度の極端な低下が生じず、全体として一定の計測精度を得ることができる。
【0049】
以上説明したように、撮影部302および撮影部303のフォーカス位置を計測基準面311よりも奥に設定することにより、計測空間312全域において一定の計測精度を得ることができる。撮影部302および撮影部303のフォーカス位置を計測基準面311に合わせた場合、計測空間312全域で本実施形態と同程度の計測精度を得るためには、撮影部302および撮影部303の結像性能を上げて撮影画像のコントラストを向上させるか、投影部301から投影される光量を上げる必要がある。しかし、本実施形態ではその必要がないため、撮影部302および撮影部303の結像性能を必要以上に上げる必要がなく、撮影部302および撮影部303を構成するレンズ枚数を削減することができ、全体としてコスト削減につながる。また、投影部301の光源の出力を小さくすることで低消費電力化や、光源から発生する熱が少なくなるため冷却系を小さくすることができ、小型化につながる。
【0050】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0051】
101:投影部、102:撮影部、103:制御部、104:対象物、105:投影範囲、106:撮影範囲、107,108:光軸、109:計測基準面、110:計測空間、111:明暗パターン、112,114:レンズ、113:表示素子、115:撮影素子、116,117:計測面
図1
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