(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247730
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 15/04 20060101AFI20171204BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20171204BHJP
B60C 9/02 20060101ALI20171204BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20171204BHJP
B29D 30/18 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
B60C15/04 D
B60C15/00 D
B60C9/02 A
B60C9/00 A
B29D30/18
B60C9/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-200627(P2016-200627)
(22)【出願日】2016年10月12日
(62)【分割の表示】特願2012-247715(P2012-247715)の分割
【原出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-1673(P2017-1673A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/137528(WO,A1)
【文献】
特開2006−327318(JP,A)
【文献】
特開2008−013135(JP,A)
【文献】
特表2008−526582(JP,A)
【文献】
特開2006−160236(JP,A)
【文献】
特開2006−044339(JP,A)
【文献】
特開平06−016018(JP,A)
【文献】
特開平10−305710(JP,A)
【文献】
特開平09−024712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/04
B29D 30/18
B60C 9/00
B60C 9/02
B60C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスプライからなるカーカスを具える空気入りタイヤであって、
前記ビードコアは、タイヤ軸方向内外のコア片からなり、かつ前記カーカスプライの半径方向内端部が、ビードコアの廻りで折り返されることなく前記内外のコア片間で狭持されるとともに、
前記内外のコア片は、複数本のスチール素線を撚り合わせたビードコードが、タイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねた渦巻き体からなり、
前記ビードコードは、コアと、前記コアの外側に配される複数本のスチール素線を撚り合わせたシースとからなり、
しかも前記内のコア片において、前記シースの撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視における前記ビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向であり、
かつ前記外のコア片において、前記シースの撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視における前記ビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と逆方向であり、
前記内のコア片におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向は、前記外のコア片におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスプライからなるカーカスを具える空気入りタイヤの製造方法であって、
外表面にタイヤ形成面を有する剛性中子を用い、前記タイヤ形成面上に、ビードコアとカーカスプライとを含む未加硫のタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより生タイヤを形成する生タイヤ形成工程を具えるとともに、
この生タイヤ形成工程は、前記タイヤ形成面上で、複数本のスチール素線を撚り合わせたビードコードをタイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねて内のコア片を形成する第1のコア片工程と、
前記内のコア片のタイヤ軸方向外側にカーカスプライの半径方向内端部を貼付けるステップを有するカーカス形成工程と、
前記カーカスプライの半径方向内端部のタイヤ軸方向外側で、ビードコードをタイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねて外のコア片を形成する第2のコア片工程とを含み、
前記ビードコードは、コアと、前記コアの外側に配される複数本のスチール素線を撚り合わせたシースとからなり、
しかも前記第1のコア片工程では、前記シースの撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視における前記ビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向であり、
かつ前記第2のコア片工程では、前記シースの撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視における前記ビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と逆方向であり、
前記第1のコア片工程におけるビードコードの巻回方向は、第2のコア片工程におけるビードコードの巻回方向と同方向であることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスプライの半径方向内端部をタイヤ軸方向内外のコア片間で狭持させたビード構造を有する空気入りタイヤ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、
図11(A)に示すように、加硫済みタイヤのタイヤ内面形状とほぼ等しい外面形状を有する剛性中子aを用いたタイヤ製造方法(以下、中子工法という場合がある。)が提案されている。この中子工法では、前記剛性中子a上で、インナーライナ、カーカスプライ、ビードコア、ベルトプライ、サイドウォールゴム、トレッドゴム等のタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより、未加硫タイヤtが形成される。又前記未加硫タイヤtは、剛性中子aごと加硫金型b内に投入され、内型である剛性中子aと外型である加硫金型bとの間で加硫成形される。
【0003】
この中子工法では、従来タイヤの如くカーカスプライの両端部をビードコアの廻りで折り返して係止させる構造を採用することが難しい。そのため、下記の特許文献1には
図11(B)に示すように、ビードコアdをタイヤ軸方向内外のコア片d1、d2に分割し、カーカスプライcの両端部を前記内外のコア片d1、d2間で狭持する構造が提案されている。この内外のコア片d1、d2は、ビードコード(スチールコード)eをタイヤ軸芯廻りで渦巻き状に巻き重ねた渦巻き体として形成される。
【0004】
しかし前記中子工法により形成されたタイヤの場合、カーカスコードの張力が不十分となって操縦安定性を低下させる場合があることが判明した。その原因として、加硫中、ビードコアdによるカーカスプライcへの拘束力が不足し、カーカスプライcがコア片d1、d2間から抜ける向き(半径方向外側)に動くことが考えられる。その結果、加硫時にカーカスコードに熱収縮が発生した場合にも、前記抜け方向の動きによってカーカスコードに張力(テンション)が充分に掛からなくなるのである。
【0005】
そして本発明者の研究の結果、前記抜け方向の動きの原因として、
図12(A)に示すように、ビードコードeの撚り方向T、及びビードコードeのタイヤ軸芯J廻りの巻回方向Rが関係していることが判明した。即ち、従来のコア片d1、d2では、ビードコードeのタイヤ軸芯J廻りの巻回方向Rが互いに同じであり、かつ撚り方向Tが同じビードコードeが使用されていた。そのため、
図12(B)に例示するように、カーカスコードc1に熱収縮fが発生した場合、内外のコア片d1、d2のうちの一方のコア片(同図では外のコア片d2)では、ビードコードeが、その撚りが戻される向きに捻られる。しかしコードのスチール素線は、撚りが戻される向きに容易に動く。そのため、カーカスプライcは、熱収縮の向きに容易に動いてしまい、張力が掛からなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−160236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、内外のコア片おいて、ビードコードの最終の撚り方向と巻回方向とを規制することを基本として、内外のコア片からのカーカスプライの抜けを抑えてカーカスコードに張力を付与することができ、操縦安定性を向上しうる空気入りタイヤ、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスプライからなるカーカスを具える空気入りタイヤであって、
前記ビードコアは、タイヤ軸方向内外のコア片からなり、かつ前記カーカスプライの半径方向内端部が、ビードコアの廻りで折り返されることなく前記内外のコア片間で狭持されるとともに、
前記内外のコア片は、複数本のスチール素線を撚り合わせたビードコードが、タイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねた渦巻き体からなり、
しかも前記内のコア片において、ビードコードの最終の撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向であり、
かつ前記外のコア片において、ビードコードの最終の撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と逆方向であることを特徴としている。
【0009】
また請求項2では、前記内のコア片におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向は、前記外のコア片におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向であることを特徴としている。
【0010】
また請求項3では、前記カーカスプライは、カーカスコードの180°Cでの熱収縮率が1.5%以上であることを特徴としている。
【0011】
また請求項4の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスプライからなるカーカスを具える空気入りタイヤの製造方法であって、
外表面にタイヤ形成面を有する剛性中子を用い、前記タイヤ形成面上に、ビードコアとカーカスプライとを含む未加硫のタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより生タイヤを形成する生タイヤ形成工程を具えるとともに、
この生タイヤ形成工程は、前記タイヤ形成面上で、複数本のスチール素線を撚り合わせたビードコードをタイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねて内のコア片を形成する第1のコア片工程と、
前記内のコア片のタイヤ軸方向外側にカーカスプライの半径方向内端部を貼付けるステップを有するカーカス形成工程と、
前記カーカスプライの半径方向内端部のタイヤ軸方向外側で、ビードコードをタイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねて外のコア片を形成する第第2のコア片工程とを含み、
しかも前記第1のコア片工程では、ビードコードの最終の撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向であり、
かつ前記第2のコア片工程では、ビードコードの最終の撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と逆方向であることを特徴としている。
【0012】
また請求項5では、前記第1のコア片工程におけるビードコードの巻回方向は、第2のコア片工程におけるビードコードの巻回方向と同方向であることを特徴としている。
【0013】
また請求項6では、前記カーカスプライは、カーカスコードの180°Cでの熱収縮率が1.5%以上であることを特徴としている。
【0014】
なお前記「熱収縮率」は、JIS−L1017の8.10(b)項の「加熱後乾熱収縮率(B法)」に準じ、コードを無荷重の状態にて温度180℃で5分間加熱した後の加熱後乾熱収縮率を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く、内のコア片においては、ビードコードの最終の撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と同方向としている。これに対して、外のコア片においては、ビードコードの最終の撚り方向は、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコードのタイヤ軸芯廻りの巻回方向と逆方向としている。
【0016】
従って、カーカスコードに熱収縮が発生したとき、内外のコア片のビードコードは、何れもコードの撚りが締まる向きに捻られる。そのため、熱収縮の向きへの拘束力が高まり、カーカスコードに張力を付与することができる。その結果、操縦安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
【
図3】内外のコア片における、ビードコードの撚り方向及び巻回方向を示す概念図である。
【
図5】(A)、(B)は、本例の内のコア片に用いるビードコードを示す断面図、及び斜視図である。
【
図6】(A)、(B)は、本例の外のコア片に用いるビードコードを示す断面図、及び斜視図である。
【
図7】本発明の作用効果を説明するビードコアの断面図である。
【
図8】内外のコア片における、ビードコードの撚り方向及び巻回方向の他の例を示す概念図である。
【
図9】(A)、(B)は、カーカスが複数枚のカーカスプライからなる場合のビード構造を例示する略断面図である。
【
図10】(A)〜(C)は、第1のコア片工程、カーカス形成工程、及び第2のコア片工程を示す断面図である。
【
図11】(A)は中子工法を説明する断面図、(B)は中子工法のタイヤに用いられるビード構造を示す断面図である。
【
図12】(A)従来のビードコアのコア片を示す概念図、(B)はそれによる問題点を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6を具える。本例では、前記カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に、ベルト層7が配される。
【0019】
前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜35゜の角度で配列した1枚以上、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから形成される。このベルト層7のベルトコードは、プライ間相互で交差する。これにより、ベルト剛性が高まり、トレッド部2が強固に補強される。
【0020】
又本例では、前記ベルト層7の半径方向外側に、高速耐久性などを高める目的で、バンドコードを周方向に対して螺旋状に巻回させたバンド層9が配される。このバンド層9として、前記ベルト層7のタイヤ軸方向外端部のみを被覆する左右一対のエッジバンドプライ、及びベルト層7の略全巾を覆うフルバンドプライが適宜使用できる。本例では、1枚のフルバンドプライによりバンド層9が形成される場合が示される。
【0021】
次に、前記カーカス6は、有機繊維のカーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば70〜90゜の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。このカーカスプライ6Aは、前記ビード部4、4間を跨るトロイド状をなすとともに、その半径方向内端部6AEは、前記ビードコア5の廻りで折り返されることなく該ビードコア5内に挟まれて係止される。
【0022】
具体的には、前記ビードコア5は、タイヤ軸方向内外のコア片5i、5oから形成される。そして、この内外のコア片5i、5o間で、前記カーカスプライ6Aの半径方向内端部6AEが挟まれて保持される。なおビード部4には、前記内外のコア片5i、5oからそれぞれ半径方外側に向かって先細状にのびる内外のビードエーペックスゴム8i、8oが設けられ、ビード部4からサイドウォール部3にかけて補強している。図中の符号15は、リムずれ防止用のチェーファーゴムである
。
【0023】
図2に示すように、前記内外のコア片5i、5oは、ビードコード10をタイヤ軸芯J廻りで、半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねた渦巻き
体から形成される。本例では、前記
図1の如く、各コア片5i、5oが、タイヤ軸方向に一列で形成される場合が示される。これにより、限られたビードコード10の巻回数の中でコア片5i、5oの半径方向高さを最大限に高めることができ、カーカスプライ6Aとの接触面積を増し、
カーカスプライ6Aの半径方向内端部6AEへの係止力を高める。なお要求により、コア片5i、5oの一方又は双方を、例えば二列で形成し、ビード剛性を高めることもできる。
【0024】
そして本発明では、
図3に概念的に示すように、
(1)前記内のコア片5iにおいて、ビードコード10iの最終の撚り方向Tiは、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコード10のタイヤ軸芯J廻りの巻回方向Riと同方向であり、かつ
(2)前記外のコア片5oにおいて、ビードコード10oの最終の撚り方向Toは、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコード10のタイヤ軸芯J廻りの巻回方向Roと逆方向である。即ち、Ti=Ri、To≠Roである。
【0025】
例えば
図4に略示するように、各コア片5i、5oは、回転する剛性中子aにビードコード10を押し付けることで、それぞれ渦巻き状に形成される。従って、通常の場合、前記内のコア片5iにおけるビードコード10iの巻回方向Riと、外のコア片5oにおけるビードコード10oの巻回方向Roとは、同方向(Ri=Ro)となる。
図2、3には、巻回方向Ri、Roが「左回り」である場合が示される。
【0026】
従って、本例の場合、前記内のコア片5iには、最終の撚り方向Tiが、前記巻回方向Ri(本例では「左回り」
)と同方向である「左回り」(Z撚り)のビードコード10iが採用されるとともに、前記外のコア片5oには、最終の撚り方向Toが、前記巻回方向Ro(本例では「左回り」)と異なる同きである「右回り」(S撚り)のビードコード10oが採用される。即ち、Ti≠Toとしている。
【0027】
具体的には、前記ビードコード10iは、
図5に示すように、複数本のスチール素線Fを撚り合わせることにより形成される。本例では、ビードコード10iは、3本のスチール素線Fを撚り合わせたコア11と、その外側に配される8本のスチール素線Fを撚り合わせたシース12とからなる層撚り構造を有する。この時、最終の撚り方向Tiである前記シース12の撚り方向を、「左回り」(Z撚り)としている。
【0028】
他方、前記ビードコード10oは、
図6に示すように、撚り方向以外前記ビードコード10iと同構成であり、最終の撚り方向Toであるシース12の撚り方向を、「右回り」(S撚り)としている。
【0029】
なおビードコード10i、10oとしては、最終の撚り方向
Ti、
Toが特定されていれば、例えばn本のスチール素線Fを束ねて撚り合わせた束撚り(1×n)、コアとシースとで撚り方向、撚りピッチを同一としたスラッシュ撚り(m/n)、n本のスチール素線Fを下撚りしたストランドのm本を撚り合わせた複撚り(m×n)など、種々の撚り構造が採用しうる。
【0030】
このように構成することにより、
図7に示すように、カーカスコード6cに熱収縮fが発生したとき、内のコア片5iのビードコード10i、及び外のコア片5oのビードコード10oは、何れもコードの最外側の撚りが締まる向きに捻られる。そのため、熱収縮fの向きに対する拘束力を強く発揮させることができ、カーカスコード6cに張力を付与し、操縦安定性能を向上させることが可能となる。このような効果は、コードの最終の撚りピッチが50mm以下の時、より高く発揮しうる。
【0031】
なお、カーカスコード6cの熱収縮率自体が小さすぎる場合には、前記拘束力を高めても、カーカスコード6cに張力が付与されず操縦安定性能を向上することができない。従って、本発明は、カーカスコード6cの180°Cでの熱収縮率が1.5%以上、より好ましくは2.0%以上において操縦安定性能の向上効果がより有効に発揮される。
【0032】
当然ではあるが、内のコア片5iにおけるビードコード10iの巻回方向Riと、外のコア片5oにおけるビードコード10oの巻回方向Roとが、共に「右回り」である場合には、内のコア片5iには、最終の撚り方向Tiを「右回り」(S撚り)としたビードコード10iが採用され、かつ外のコア片5oに、最終の撚り方向Toを「左回り」(Z撚り)としたビードコード10oが採用される。
【0033】
又
図8に概念的に示すように、内のコア片5iにおけるビードコード10iの巻回方向Riが「左回り」で、かつ外のコア片5oにおけるビードコード10oの巻回方向Roが「右回り」の場合には、前記ビードコード10i、10oに、それぞれ最終の撚り方向Ti、Toを「左回り」(Z撚り)とした同じコードを採用することができる。なお内のコア片5iにおけるビードコード10iの巻回方向Riが「右回り」で、かつ外のコア片5oにおけるビードコード10oの巻回方向Roが「左回り」の場合には、前記ビードコード10i、10oに、それぞれ最終の撚り方向Ti、Toを「右回り」(S撚り)とした同じコードを採用することができる。
【0034】
又、カーカスプライ6Aが例えば2枚等の複数枚の場合、
図9(A)に示すように、複数枚のカーカスプライ6Aを、内外のコア片5i、5o間で狭持することができる。しかし、
図9(B)に示すように、内外のコア片5i、5oの組を複数設け、各カーカスプライ6Aを、それぞれ内外のコア片5i、5o間で狭持するのが、拘束力をより高く発揮する上で好ましい。
【0035】
次に、前記空気入りタイヤ1の製造方法を説明する。この製造方法は、外表面にタイヤ形成面asを有する剛性中子a(
図4に示す。)を用い、前記タイヤ形成面as上に、未加硫のタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより生タイヤtを形成する生タイヤ形成工程と、この生タイヤtを前記剛性中子aごと加硫金型b内に投入して加硫成形する加硫工程(
図11(A)に示す。)とを含んで構成される。
【0036】
又、前記生タイヤ形成工程では、
図10(A)〜(C)に示すように、第1のコア片工程S1と、カーカス形成工程S2と、第2のコア片工程S3とを含む。前記第1のコア片工程S1では、前記タイヤ形成面as上で、未加硫のゴムで被覆されたゴム引きのビードコード10iをタイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねて内のコア片5iを形成する。符号16は、インナーライナゴムである。
【0037】
前記カーカス形成工程S2では、前記内のコア片5iのタイヤ軸方向外側にカーカスプライ6Aの半径方向内端部6AEを巻き下ろして貼付けるステップS2aを有する。
【0038】
前記第2のコア片工程S3では、前記カーカスプライ6Aの半径方向内端部6AEのタイヤ軸方向外側で、前記ゴム引きのビードコード10oをタイヤ軸芯廻りで半径方向内側から外側に渦巻き状に巻き重ねて外のコア片5
oを形成する。
【0039】
この時、
図3、8に示すように、前記第1のコア片工程S1では、ビードコード10iの最終の撚り方向Tiは、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコード10iのタイヤ軸芯J廻りの巻回方向Riと同方向である。又第2のコア片工程S3では、ビードコード10oの最終の撚り方向Toは、タイヤ軸方向外側からの側面視におけるビードコード10oのタイヤ軸芯J廻りの巻回方向Roと逆方向である。
【0040】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0041】
本発明の効果を確認すべく、
図1に示す内部構造を有する空気入りタイヤ(225/40R18)を、中子工法を用いて作成した。各試供タイヤのビード構造は、表1の仕様に基づく。そして各試供タイヤについて、操縦安定性能をテストし、その結果を比較した。各タイヤとも、タイヤ赤道一方側、他方側のビードア構造は、表1のとうり同構成である。
【0042】
なお表1中のビードコードは、撚り構造(2/7×0.37)、コード径1.41mm、撚りピッチ50mmであり、撚り方向以外同仕様である。カーカスコードにおいて、PETは1670/2dtex、レーヨンは1840/2dtex、アラミドは1100/2dtexのコードである。
【0043】
操縦安定性能:
タイヤをリム(8.5J)、内圧(210kPa)の条件下で、車両(2000cc、FR車)の全輪に装着し、岡山国際サーキットコースを実車走行(5周連続走行)し、ブレーキング、旋回、加速、ハンドリング、ラップタイムについて、プロドライバーによる官能評価によって総合的に判定した。評価は10点法で評価している。値が大きいほど操縦安定性能に優れている。
【0044】
【表1】
【0045】
表の如く実施例のタイヤは、操縦安定性能に優れているのが確認できる。
【符号の説明】
【0046】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
5i 内のコア片
5o 外のコア片
6 カーカス
6A カーカスプライ
6AE 内端部
10、10i、10o ビードコード
F スチール素線
Ri、Ro 巻回方向
S1 第1のコア片工程
S2 カーカス形成工程
S3 第2のコア片工程
Ti、To 撚り方向