【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌粒子の製造方法の特徴構成は、
保肥性を有するコアをシェルで被覆してなる人工土壌粒子の製造方法であって、
フィラー及びゲル化剤を含むコア形成液と、少なくともゲル化剤を含むシェル形成液とを調製する準備工程と、
前記コア形成液を中心として前記シェル形成液が周囲に配置されるように多重ノズルを用いて前記コア形成液及び前記シェル形成液を、架橋剤を含む架橋液に滴下する滴下工程と、
を包含することにある。
【0009】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、コア形成液及びシェル形成液は、コア形成液を中心としてシェル形成液が周囲に配置された状態で多重ノズルから滴下される。コア形成液及びシェル形成液が多重ノズルの先端から離脱すると、表面張力の作用によりコア形成液の液滴がシェル形成液に覆われて球状になる。この状態で液滴が架橋剤を含む架橋液に接触すると、コア形成液及びシェル形成液に含まれるゲル化剤が架橋反応によってゲル化し、コアが均一な厚さのシェルで覆われた人工土壌粒子が生成する。この人工土壌粒子は、均一なシェルに起因する高い強度を備えていることに加えて、ゲルの架橋構造及びフィラーに起因する保水性及び保肥性を併せ持つため、高強度でありながら、良好な保水性及び肥料の徐放性を備えた人工土壌粒子となる。また、本構成のように滴下工程によって人工土壌粒子を造粒する方法では、人工土壌粒子の粒径を均一に調整し易いため、品質にバラツキが少ない一定以上の強度を備える人工土壌粒子を容易に製造することができる。
【0010】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、前記シェル形成液は、前記コア形成液より高粘度に調整されることが好ましい。
【0011】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、シェル形成液は、コア形成液より高粘度に調整されることから、滴下工程を行うときにシェル形成液とコア形成液とが混ざり難くなる。その結果、コアが均一な厚さのシェルで覆われた人工土壌粒子を容易に製造することができる。
【0012】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記コア形成液の粘度は20℃において100mPa・s以下であり、前記シェル形成液の粘度は20℃において200mPa・s以上であることが好ましい。
【0013】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、コア形成液及びシェル形成液の粘度が適切な値に調整されていることから、滴下工程を行うときにシェル形成液とコア形成液との混合が抑制され、その結果、生成した人工土壌粒子のコアとシェルとの境界が明確になる。このような人工土壌粒子は、コア及びシェルの機能が確実に発揮されるため、シェルに起因する高い強度と、コア及びシェルに起因する良好な保水性及び肥料の徐放性とを兼ね備えたものとなる。
【0014】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、前記コア形成液及び前記シェル形成液の少なくとも一方に補強剤を添加することが好ましい。
【0015】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、生成した人工土壌粒子のコア又はシェル、あるいはその両方が補強剤によって補強されるため、人工土壌粒子の強度を高めることができる。
【0016】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記コア形成液及び前記シェル形成液に含まれるゲル化剤は、アルギン酸塩であることが好ましい。
【0017】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、ゲル化剤として用いるアルギン酸塩は親水性材料であるため、ゲル化させた人工土壌粒子は優れた保水性を有するものとなる。また、アルギン酸塩の架橋反応は架橋剤によって制御可能であるため、人工土壌粒子のコア及びシェルの多孔質構造を制御することができる。その結果、所望の保水性と肥料の徐放性とを備えた人工土壌粒子を容易に製造することができる。
【0018】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、前記シェル形成液にフィラーを添加することが好ましい。
【0019】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、コアに加えてシェルにも保肥性が付与された人工土壌粒子を製造することができる。従って、例えば、コアとシェルとで担持する肥料成分を異ならせた人工土壌粒子を製造することも可能となる。
【0020】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記準備工程において、粘度の異なるシェル形成液を複数調製し、
前記滴下工程において、前記コア形成液を中心として前記粘度の異なるシェル形成液が同心円状に配置されるように滴下することが好ましい。
【0021】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、コアが複層のシェルで多重に覆われた人工土壌粒子を製造することができるため、人工土壌粒子としての強度、保水性、肥料の徐放性を精密に制御することができる。
【0022】
本発明に係る人工土壌粒子の製造方法において、
前記フィラーは、陽イオン交換能が付与された材料と陰イオン交換能が付与された材料との混合物であることが好ましい。
【0023】
本構成の人工土壌粒子の製造方法によれば、フィラーとして、陽イオン交換能が付与された材料と陰イオン交換能が付与された材料との混合物を使用しているため、コアの保肥性が高まり、長期に亘って肥料の徐放性を維持できる人工土壌粒子を製造することが可能となる。また、製造された人工土壌粒子は、陽イオン交換能と陰イオン交換能との両方を兼ね備えたものとなるため、複数種の肥料成分を担持することができる。従って、栽培植物の種類や栽培段階に応じて、適切な特性を備えた人工土壌粒子を設計することが可能となる。
【0024】
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌粒子の特徴構成は、
保肥性を有するコアをシェルで被覆してなる人工土壌粒子であって、
前記コア及び前記シェルは、ゲルの架橋構造で固化されていることにある。
【0025】
本構成の人工土壌粒子によれば、コア及びシェルは、ゲルの架橋構造で固化されているため、強度を維持しながら、保水性及び肥料の徐放性を備えた人工土壌粒子を実現することができる。
【0026】
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記シェルは、前記コアより架橋密度が高く設定されていることが好ましい。
【0027】
本構成の人工土壌粒子によれば、シェルはコアより架橋密度が高く設定されているため、人工土壌粒子の強度をより高く維持しながら、良好な保水性及び肥料の徐放性を実現することができる。
【0028】
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記コアは、陽イオン交換能が付与された材料と陰イオン交換能が付与された材料との混合物を含有することが好ましい。
【0029】
本構成の人工土壌粒子によれば、コアが、陽イオン交換能が付与された材料と陰イオン交換能が付与された材料との混合物を含有するため、コアの保肥性が高まり、長期に亘って肥料の徐放性を維持することが可能となる。また、人工土壌粒子は、陽イオン交換能と陰イオン交換能との両方を兼ね備えたものとなるため、複数種の肥料成分を担持することができる。従って、栽培植物の種類や栽培段階に応じて、適切な特性を備えた人工土壌粒子を設計することが可能となる。