(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1実施形態
[A1.第1実施形態の構成]
(A1−1.全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力システムとしての燃料電池車両10(以下「FC車両10」又は「車両10」という。)の概略全体構成図である。車両10は、走行モータ12(以下「モータ12」又は「駆動モータ12」ともいう。)と、インバータ14と、モータ電子制御装置16(以下「モータECU16」又は「MOT ECU16」ともいう。)とを駆動系1000として有する。
【0026】
また、車両10は、燃料電池スタック20(以下「FCスタック20」又は「FC20」という。)と、燃料電池電子制御装置22(以下「FC ECU22」という。)と、燃料電池コンバータ24(以下「FCコンバータ24」という。)と、FCコンバータ電子制御装置26(以下「FCコンバータECU26」又は「ECU26」という。)と、エアポンプ28とをFC系2000として有する。
【0027】
さらに、車両10は、バッテリ30と、バッテリ電子制御装置32(以下「バッテリECU32」又は「BAT ECU32」という。)と、バッテリコンバータ34(以下「BATコンバータ34」ともいう。)と、バッテリコンバータ電子制御装置36(以下「バッテリコンバータECU36」又は「BATコンバータECU36」ともいう。)とをバッテリ系3000として有する。
【0028】
さらにまた、車両10は、エアコンディショナ40と、降圧コンバータ42と、12V系44と、統括電子制御装置50(以下「統括ECU50」又は「MG ECU50」ともいう。)とを備える。エアポンプ28、エアコンディショナ40、降圧コンバータ42及び12V系44は、車両10における補機であり、電力システムとしての車両10における負荷の一部でもある。
【0029】
(A1−2.駆動系1000)
(A1−2−1.走行モータ12)
第1実施形態のモータ12は、3相交流ブラシレス式である。モータ12は、FC20及びバッテリ30から供給される電力に基づいて駆動力を生成し、当該駆動力によりトランスミッション(図示せず)を通じて車輪(図示せず)を回転させる。また、モータ12は、回生を行うことで生成した電力(回生電力Preg)[W]をバッテリ30等に出力する。
【0030】
(A1−2−2.インバータ14)
インバータ14は、3相フルブリッジ型の構成を有し、直流−交流変換を行う。より具体的には、インバータ14は、直流を3相の交流に変換してモータ12に供給する一方、回生動作に伴う交流−直流変換後の直流をバッテリコンバータ34を通じてバッテリ30等に供給する。なお、モータ12とインバータ14は、車両10における主機であり、電力システムとしての車両10における負荷の一部でもある。
【0031】
インバータ14の入力端電圧Vinv(以下「インバータ電圧Vinv」という。)は、電圧センサ60により検出され、信号線62を介してモータECU16に出力される。インバータ14の入力端電流Iinv(以下「インバータ電流Iinv」という。)は、電流センサ64により検出され、信号線66を介してモータECU16に出力される。
【0032】
(A1−2−3.モータECU16)
モータECU16は、統括ECU50からの指令値等の入力値に基づいてモータ12及びインバータ14を制御する。また、モータECU16は、インバータ電圧Vinv、インバータ電流Iinv、インバータ電力Pinv等を通信ネットワーク70に出力する。インバータ電力Pinvは、インバータ14の入力端電力であり、インバータ電圧Vinvとインバータ電流Iinvを乗算して算出する。なお、第1実施形態における通信ネットワーク70は、CAN(controller area network)である。以下では、通信ネットワーク70をCAN70ともいう。
【0033】
モータECU16は、図示しない入出力装置、演算装置及び記憶装置を含む。他のECUも同様である。
【0034】
(A1−3.FC系2000)
(A1−3−1.FCスタック20)
FCスタック20は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セルを積層した構造を有する。FCスタック20の周辺には、アノード系、カソード系、冷却系等が含まれる。アノード系は、FCスタック20のアノードに対して水素(燃料ガス)を給排する。カソード系は、FCスタック20のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排する。冷却系は、FCスタック20を冷却する。
図1では、エアポンプ28及びFC ECU22を除き、アノード系、カソード系及び冷却系の図示を省略している。
【0035】
(A1−3−2.FC ECU22)
FC ECU22は、統括ECU50からの指令値等の入力値に基づいて、FC20に対する水素及び酸素の供給等、FC20による発電全般を制御する。すなわち、FC ECU22は、アノード系、カソード系及び冷却系を制御する。FC ECU22は、エアポンプ28の消費電力Pap[W]を、CAN70を介して統括ECU50、FCコンバータECU26等に送信する。
【0036】
(A1−3−3.FCコンバータ24)
FCコンバータ24は、FC20の出力電圧(以下「FC電圧Vfc」という。)を昇圧してインバータ14に供給する昇圧チョッパ型の電圧変換装置(DC/DCコンバータ)である。FCコンバータ24は、FC20とインバータ14との間に配置される。換言すると、FCコンバータ24は、一方がFC20のある1次側に接続され、他方がインバータ14とバッテリ30との接続点である2次側に接続されている。
【0037】
FCコンバータ24の1次側電圧Vfccon1は、電圧センサ80により検出され、信号線82を介してFCコンバータECU26に出力される。FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1は、電流センサ84により検出され、信号線86を介してFCコンバータECU26に出力される。FCコンバータ24の2次側電圧Vfccon2は、電圧センサ88により検出され、信号線90を介してFCコンバータECU26に出力される。FCコンバータ24の2次側電流Ifccon2は、電流センサ92により検出され、信号線94を介してFCコンバータECU26に出力される。
【0038】
(A1−3−4.FCコンバータECU26)
FCコンバータECU26は、統括ECU50からの指令値等の入力値に基づいて、FCコンバータ24を介してFC20を制御する。以下では、FCコンバータ24及びFCコンバータECU26を、FC20用電圧制御ユニットの意味で「FC VCU96」とも称する。
【0039】
FCコンバータECU26への入力値には、FCコンバータECU26に対して直接入力されるものと、通信ネットワーク70を介して入力されるものがある。第1実施形態では、FCコンバータECU26に対して直接入力される入力値には、後述する電流センサ104が検出したバッテリ30の入出力端電流Ibatが含まれる。これにより、バッテリ30を保護することが可能となる(詳細は後述する。)。
【0040】
(A1−4.バッテリ系3000)
(A1−4−1.バッテリ30)
バッテリ30は、複数のバッテリセルを含む蓄電装置(エネルギストレージ)であり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池等を利用することができる。第1実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。バッテリ30の代わりに、キャパシタ等の蓄電装置を用いることも可能である。
【0041】
バッテリ30の入出力端電圧(以下「BAT端電圧Vbat」という。)[V]は、電圧センサ100により検出され、信号線102を介してバッテリECU32に出力される。バッテリ30の入出力端電流(以下「BAT端電流Ibat」という。)[A]は、電流センサ104により検出され、信号線106を介してFCコンバータECU26及びバッテリECU32に出力される。バッテリ30の温度Tbat(以下「バッテリ温度Tbat」ともいう。)[℃]は、温度センサ108により検出され、信号線110を介してバッテリECU32に出力される。
【0042】
(A1−4−2.バッテリECU32)
バッテリECU32は、統括ECU50からの指令値等の入力値に基づいて、バッテリ30を制御する。バッテリECU32は、BAT端電圧VbatとBAT端電流Ibatとに基づいて、バッテリ30の残容量(以下「SOC」又は「バッテリSOC」という。)[%]を算出してバッテリ30の管理に用いる。
【0043】
例えば、バッテリECU32は、バッテリ温度Tbat及びSOCに基づいて、バッテリ30の入力制限値Pbatlimin(以下「BAT端入力制限値Pbatlimin」ともいう。)[W]及び出力制限値Pbatlimout(以下「BAT端出力制限値Pbatlimout」ともいう。)[W]を算出する。入力制限値Pbatlimin及び出力制限値Pbatlimoutの設定方法は、例えば、US 2008/0018111 A1と同様に行うことが可能である(US 2008/0018111 A1の
図2及び
図3参照)。
【0044】
また、第1実施形態のバッテリECU32は、統括ECU50からの指令値等の入力値に基づいて降圧コンバータ42を制御する。降圧コンバータ42の入力端電圧(以下「降圧コンバータ端電圧Vlow」という。)[V]は、電圧センサ120により検出され、信号線122を介してバッテリECU32に出力される。降圧コンバータ42の入力端電流(以下「降圧コンバータ端電流Ilow」という。)[A]は、電流センサ124により検出され、信号線126を介してバッテリECU32に出力される。バッテリECU32は、降圧コンバータ端電圧Vlowと降圧コンバータ端電流Ilowを乗算して降圧コンバータ端電力Plow(以下「降圧コンバータ消費電力Plow」又は「消費電力Plow」ともいう。)[W]を算出する。
【0045】
バッテリECU32は、BAT端電圧Vbat、BAT端電流Ibat、バッテリ温度Tbat、バッテリSOC、BAT端入力制限値Pbatlimin、BAT端出力制限値Pbatlimout及び降圧コンバータ端電力Plowを、CAN70を介してMG ECU50、FCコンバータECU26等に送信する。
【0046】
(A1−4−3.バッテリコンバータ34)
BATコンバータ34は、昇降圧チョッパ型の電圧変換装置(DC/DCコンバータ)である。すなわち、BATコンバータ34は、バッテリ30の出力電圧(BAT端電圧Vbat)を昇圧してインバータ14に供給する。加えて、BATコンバータ34は、モータ12の回生電圧(以下「回生電圧Vreg」という。)又はFCコンバータ24の2次側電圧Vfccon2を降圧してバッテリ30に供給する。
【0047】
BATコンバータ34は、バッテリ30とインバータ14との間に配置される。換言すると、BATコンバータ34は、一方がバッテリ30のある1次側に接続され、他方がFC20とインバータ14との接続点である2次側に接続されている。
【0048】
BATコンバータ34の1次側電圧Vbatcon1は、電圧センサ130により検出され、信号線132を介してBATコンバータECU36に出力される。BATコンバータ34の1次側電流Ibatcon1は、電流センサ134により検出され、信号線136を介してBATコンバータECU36に出力される。BATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2は、電流センサ138により検出され、信号線140を介してBATコンバータECU36に出力される。
【0049】
なお、1次側電圧Vbatcon1は、バッテリ30とBATコンバータ34を結ぶ電力線142のうち補機用の接続点144よりもBATコンバータ34側の電圧である。同様に、1次側電流Ibatcon1は、バッテリ30とBATコンバータ34を結ぶ電力線142のうち補機用の接続点144よりもBATコンバータ34側の電流である。電力線142に補機(エアポンプ28等)を接続しない場合、電圧センサ100、130の一方を省略すること及び電流センサ104、134の一方を省略することが可能である。
【0050】
(A1−4−4.バッテリコンバータECU36)
BATコンバータECU36は、統括ECU50からの指令値等の入力値に基づいて、BATコンバータ34を制御する。以下では、BATコンバータ34及びBATコンバータECU36を、バッテリ30用電圧制御ユニットの意味で「BAT VCU150」とも称する。
【0051】
BATコンバータECU36は、1次側電圧Vbatcon1、1次側電流Ibatcon1、2次側電流Ibatcon2及び通過電流Ibattを、CAN70を介してMG ECU50、FCコンバータECU26等に送信する。通過電流Ibattは、BATコンバータ34を通過している電流である。BATコンバータECU36は、1次側電流Ibatcon1と2次側電流Ibatcon2のうちBATコンバータ34から出力された方を通過電流Ibattとする。例えば、バッテリ30が充電中である場合、1次側電流Ibatcon1を通過電流Ibattとする。
【0052】
(A1−5.補機類)
上記のように、第1実施形態では、例えば、エアポンプ28、エアコンディショナ40、降圧コンバータ42(降圧型DC−DCコンバータ)及び12V系44が補機として含まれる。これに加え、FC系2000の冷却系に含まれ、FC20を冷却する冷媒としての水を循環させるウォータポンプ(図示せず)を補機とすることも可能である。
【0053】
エアコンディショナ40は、車両10内の気温等を調整する。エアコンディショナ40の消費電力Pac[W]は、エアコンディショナ40の図示しない制御装置から、CAN70を介してMG ECU50、FCコンバータECU26等に送信される。
【0054】
降圧コンバータ42は、BATコンバータ34(BAT VCU150)の1次側における電圧を降圧して12V系44に供給する。12V系44には、図示しない12Vバッテリ、アクセサリ、ラジエータファン、ヘッドライト等が含まれる。前記アクセサリは、オーディオ機器、ナビゲーション装置等の機器を含む。前記ラジエータファンは、前記ウォータポンプにより循環させる冷媒をラジエータにおいて冷却させるためのファンである。
【0055】
(A1−6.統括ECU50)
統括ECU50は、通信ネットワーク70(
図1)を介して、MOT ECU16、FC ECU22、FCコンバータECU26、BAT ECU32、BATコンバータECU36等に指令値を送信する。これにより、モータ12、インバータ14、FC20、FCコンバータ24、バッテリ30、BATコンバータ34及び補機類を制御する。当該制御に際しては、MG ECU50は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを実行する。また、MG ECU50は、電圧センサ60、80、88、100、120、130、電流センサ64、84、92、104、124、134、138等の各種センサの検出値を用いる。
【0056】
ここでの各種センサには、上記センサに加え、アクセルペダル操作量センサ(以下「AP操作量センサ」という。)、モータ回転数センサ及び車輪速センサ(いずれも図示せず)が含まれる。AP操作量センサは、図示しないアクセルペダルの操作量[%]を検出する。モータ回転数センサは、モータ12の回転数(以下「モータ回転数Nmot」又は「回転数Nmot」という。)[rpm]を検出する。MG ECU50は、回転数Nmotを用いてFC車両10の車速V[km/h]を検出する。車輪速センサは、図示しない各車輪の速度(車輪速)を検出する。
【0057】
MG ECU50は、FCスタック20の状態、バッテリ30の状態及びモータ12の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき、FC車両10全体として要求される負荷(全体負荷)を算出する。そして、MG ECU50は、全体負荷から、FCスタック20が負担すべき負荷(FC負荷)と、バッテリ30が負担すべき負荷(バッテリ負荷)と、回生電源(モータ12)が負担すべき負荷(回生負荷)の配分(分担)を調停しながら決定する。そして、MG ECU50は、これらの各負荷に応じて、MOT ECU16、FC ECU22、FCコンバータECU26、BAT ECU32、BATコンバータECU36等に指令値を送信する。
【0058】
MG ECU50からFCコンバータECU26に対して送信される指令値の中には、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1の要求値(以下「要求1次側電流Ifccon1req」という。)が含まれる。要求1次側電流Ifccon1reqは、FC20の出力電流の要求値として捉えることも可能である。換言すると、要求1次側電流Ifccon1reqは、FC20が負担すべき負荷(すなわち、FC20の目標出力)を示す。
【0059】
[A2.第1実施形態の制御]
次に、主として、FCコンバータECU26によるFCコンバータ24の制御(FCコンバータ制御)について説明する。
【0060】
(A2−1.FCコンバータ制御の概要)
図2には、第1実施形態において、FCコンバータECU26によるFCコンバータ24の制御(FCコンバータ制御)のフローチャートが示されている。ステップS1において、FCコンバータECU26は、FCコンバータECU26に対して直接入力される各種のセンサ値Mdirを更新する。
【0061】
ここでの各種のセンサ値Mdirには、電圧センサ80からのFCコンバータ1次側電圧Vfccon1、電流センサ84からのFCコンバータ1次側電流Ifccon1及び電圧センサ88からのFCコンバータ2次側電圧Vfccon2が含まれる。さらに第1実施形態では、電流センサ104がFCコンバータECU26に直接接続されているため(
図1)、BAT端電流Ibatもセンサ値Mdirに含まれる。
【0062】
これらセンサ値Mdirの更新周期Tdirは、例えば、数msecとする。センサ値Mdir毎に更新周期Tdirを相違させることも可能である。
【0063】
ステップS2において、FCコンバータECU26は、CAN70を通じて入力される各種の制御値Ccan及びセンサ値Mcanを更新する。ここでの制御値Ccanには、例えば、FCコンバータ24の要求1次側電流Ifccon1req並びにバッテリ30の入力制限値Pbatlimin及び出力制限値Pbatlimoutが含まれる。また、ここでのセンサ値Mcanには、インバータ電力Pinv、エアコンディショナ消費電力Pac、エアポンプ消費電力Pap、降圧コンバータ消費電力Plow、BAT端電圧Vbat、BATコンバータ34の1次側電圧Vbatcon1、1次側電流Ibatcon1、2次側電流Ibatcon2及び通過電流Ibattが含まれる。
【0064】
これらの制御値Ccan及びセンサ値Mcanの更新周期Tcanは、例えば、数十msecであり、ステップS1の更新周期Tdirよりも長い。制御値Ccan毎又はセンサ値Mcan毎に更新周期Tdirを相違させることも可能である。なお、第1実施形態における
図2のステップS1〜S4の演算周期(以下「制御周期Tc」という。)は、例えば、数msecであり、センサ値Mdirの更新周期Tdirと等しい。例えば、更新周期Tdir及び制御周期Tcを更新周期Tcanよりも短くする観点からすれば、制御周期Tcは、更新周期Tdirよりも短くする又は長くすることも可能である。
【0065】
ステップS3において、FCコンバータECU26は、制御値Ccan及びセンサ値Mdir、Mcanに基づいてFCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarを算出する(詳細は、
図3〜
図6を参照して後述する。)。
【0066】
ステップS4において、ECU26は、ステップS3で算出した目標1次側電流Ifccon1tarを実現するようにFCコンバータ24を制御する。具体的には、1次側電流Ifccon1が目標1次側電流Ifccon1tarよりも小さい場合、FCコンバータ24に対する駆動デューティ比を増加させる。1次側電流Ifccon1が目標1次側電流Ifccon1tarよりも大きい場合、FCコンバータ24に対する駆動デューティ比を減少させる。1次側電流Ifccon1が目標1次側電流Ifccon1tarと等しい場合、FCコンバータ24に対する現在の駆動デューティ比を維持する。
【0067】
(A2−2.FCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarの算出(
図2のS3))
(A2−2−1.目標1次側電流Ifccon1tarの算出の全体的な流れ)
図3は、第1実施形態におけるFCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarの算出を説明する説明図である。
図4は、第1実施形態において、FCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarを算出するフローチャート(
図2のS3の詳細)である。
図3及び
図4は、いずれもバッテリ30の充電時に係るものである。
【0068】
図3において、楕円で囲まれているものは、制御値Ccan又はセンサ値Mdir、Mcanを示している。特に、太字の楕円で囲まれているものは、センサ値Mdir(FCコンバータECU26に直接入力される値)であり、太字以外の楕円で囲まれているものは、制御値Ccan又はセンサ値Mcan(CAN70を介してFCコンバータECU26に入力される値)を示す。また、
図3における四角200、202、204、206、210、212、214(以下「演算ブロック200、202、204、206、210、212、214」又は「ブロック200、202、204、206、210、212、214」ともいう。)及び加算器208は、FCコンバータECU26における処理を示す。
【0069】
図3の演算ブロック200(
図4のステップS11)において、FCコンバータECU26は、バッテリ30保護の観点でのFCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim1を算出する。詳細は、
図5を参照して後述する。
【0070】
図3の演算ブロック202(
図4のステップS12)において、FCコンバータECU26は、FCコンバータ24保護の観点でのFCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim2を、バッテリ30の入力制限値Pbatlimin及びBAT端電圧Vbatに基づいて算出する。例えば、ECU26は、入力制限値PbatliminをBAT端電圧Vbatで割った値を1次側電流制限値Ifccon1lim2とする。
【0071】
図3の演算ブロック204(
図4のステップS13)において、ECU26は、MG ECU50からの要求1次側電流Ifccon1req並びに演算ブロック200、202(ステップS11、S12)で算出した1次側電流制限値Ifccon1lim1、Ifccon1lim2のうち最小値を、仮目標1次側電流Ifccon1tarpとして選択する。これにより、要求1次側電流Ifccon1reqに対して制限を掛けることとなる。
【0072】
図3の演算ブロック206(
図4のステップS14)において、ECU26は、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1のフィードバック補正値ΔIfccon1cor(以下「F/B補正値ΔIfccon1cor」ともいう。)を算出する。詳細は、
図6を参照して後述する。
【0073】
図3の加算器208(
図4のステップS15)において、FCコンバータECU26は、演算ブロック204(
図4のS13)で算出した仮目標1次側電流Ifccon1tarpに、演算ブロック206(
図4のS14)で算出したF/B補正値ΔIfccon1corを加算して目標1次側電流Ifccon1tarを算出する。
【0074】
(A2−2−2.1次側電流制限値Ifccon1lim1の算出)
図5は、第1実施形態において、バッテリ30保護の観点でのFCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim1を算出するフローチャート(
図4のS11の詳細)である。
図5のステップS21(
図3の演算ブロック210)において、FCコンバータECU26は、エアポンプ消費電力Pap、エアコンディショナ消費電力Pac及び降圧コンバータ42の消費電力Plowを加算して補機消費電力Pauxを算出する。これらの消費電力Pap、Pac、Plowは、いずれもCAN70を介してFCコンバータ24が取得したセンサ値Mcanである。
【0075】
図5のステップS22(
図3の演算ブロック212)において、ECU26は、BATコンバータ34の通過電流Ibatt及び1次側電圧Vbatcon1並びにFCコンバータ24の2次側電圧Vfccon2に基づいて、BATコンバータ34の推定消費電力Lbatconを算出する。すなわち、FCコンバータECU26の記憶部には、通過電流Ibatt、1次側電圧Vbatcon1及び2次側電圧Vfccon2の組合せと、推定消費電力Lbatconとの関係を規定したマップを予め記憶しておく。そして、FCコンバータECU26は、通過電流Ibatt、1次側電圧Vbatcon1及び2次側電圧Vfccon2の組合せに基づいて推定消費電力Lbatconを特定する。
【0076】
通過電流Ibatt及び1次側電圧Vbatcon1は、CAN70を介して取得したセンサ値Mcanである。2次側電圧Vfccon2は、FCコンバータECU26が電圧センサ88から直接取得したセンサ値Mdirである。従って、
図5のステップS21〜S24を繰り返す際、通過電流Ibatt及び1次側電圧Vbatcon1については、更新周期Tcanで更新され、2次側電圧Vfccon2については、制御周期Tc(=更新周期Tdir<Tcan)で更新される。
【0077】
図5のステップS23(
図3の演算ブロック200)において、FCコンバータECU26は、インバータ電力PinvからBAT端入力制限値Pbatliminを引き、さらに制御マージンPmar、補機消費電力Paux及び推定消費電力Lbatconを足して、FCコンバータ24の電力制限値Pfcconlimを算出する。インバータ電力Pinv及びBAT端入力制限値Pbatliminは、CAN70を介してFCコンバータ24が取得したセンサ値Mcan及び制御値Ccanである。制御マージンPmarは、FCコンバータECU26の記憶部に記憶されている記憶値である。推定消費電力Lbatconは、演算ブロック212(
図5のS22)で算出した値である。
【0078】
図5のステップS24(
図3の演算ブロック200)において、FCコンバータECU26は、ステップS23で算出した電力制限値Pfcconlimを、FCコンバータ24の1次側電圧Vfccon1で割って1次側電流制限値Ifccon1lim1を算出する。1次側電圧Vfccon1は、FCコンバータECU26が電圧センサ80から直接取得したセンサ値Mdirである。
【0079】
(A2−2−3.F/B補正値ΔIfccon1corの算出)
図6は、第1実施形態において、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1のF/B補正値ΔIfccon1corを算出するフローチャート(
図4のS14の詳細)である。
図6のステップS31(
図3の演算ブロック214)において、FCコンバータECU26は、BAT端電圧VbatとBAT端電流Ibatを乗算してBAT端電力Pbatを算出する。
【0080】
上記の通り、第1実施形態では、電圧センサ100からのBAT端電圧Vbatは、CAN70を介してFCコンバータECU26に入力される一方、電流センサ104からのBAT端電流Ibatは、FCコンバータECU26に直接入力される(
図1)。このため、BAT端電圧Vbatは、FCコンバータECU26がCAN70を介したセンサ値Mcanであり、BAT端電流Ibatは、FCコンバータECU26が電流センサ104から直接取得したセンサ値Mdirである。従って、BAT端電圧Vbatは、更新周期Tcanで更新される一方、BAT端電流Ibatは、更新周期Tdir(<Tcan)で更新される。
【0081】
図6のステップS32(
図3の演算ブロック206)において、FCコンバータECU26は、BAT端電力PbatからBAT端入力制限値Pbatliminを引き、さらに制御マージンPmarを足して、偏差ΔPbatを算出する。BAT端電力Pbatは、演算ブロック214(
図6のS31)で演算される。BAT端入力制限値Pbatliminは、CAN70を介してFCコンバータ24が取得したセンサ値Mcanである。さらに制御マージンPmarは、FCコンバータECU26の記憶部に記憶されている記憶値である。BAT端電力Pbatは、制御周期Tc(<更新周期Tcan)で演算されるため、偏差ΔPbatも制御周期Tc(<更新周期Tcan)で演算される。
【0082】
図6のステップS33(
図3の演算ブロック206)において、FCコンバータECU26は、ステップS32で算出した偏差ΔPbatに基づくPID制御(PID:Proportional Integral Derivative)を行ってF/B補正値ΔIfccon1corを算出する。
【0083】
[A3.第1実施形態の効果]
以上説明したように、第1実施形態によれば、FCコンバータECU26(発電制御装置の一部)は、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50(電力管理装置)から取得した要求1次側電流Ifccon1req(FC20(発電装置)の発電指令値)と、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)(
図1)とを用いてFC20を制御する。このため、例えば、通常時は、主として要求1次側電流Ifccon1reqを用いる一方、バッテリ30(蓄電装置)の入力又は出力に関するBAT端電流Ibat等の瞬間的な変化(例えば、車輪のロック等による駆動モータ12の消費電力の急減に伴うバッテリ30への入力電力の急激な増加)が生じたときは、BAT端電流Ibat等の変化に重点を置いてバッテリ30の発電を制御することが可能となる。従って、バッテリ30への入力又は出力の急激な変化に応じてバッテリ30を保護することが可能となる。
【0084】
第1実施形態において、FCコンバータECU26(発電制御装置の一部)は、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50(電力管理装置)から取得した要求1次側電流Ifccon1req(FC20(発電装置)の発電指令値)を、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)(
図1)で補正してFC20(発電装置)を制御する(
図3、
図6等)。これにより、バッテリ30(蓄電装置)への入力又は出力の急激な変化を避けてバッテリ30を保護することが可能となる。
【0085】
なお、瞬間的なBAT端電流Ibatの変化の要因としては、例えば、車輪のロック等による駆動モータ12の消費電力の急減に伴うバッテリ30(蓄電装置)への入力電力の急激な増加が考えられる。或いは、エアポンプ28の出力変動やリップルノイズも瞬間的なBAT端電流Ibatの変化の要因となり得る。
【0086】
第1実施形態において、FCコンバータECU26(発電制御装置の一部)は、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50(電力管理装置)から要求1次側電流Ifccon1reqを更新周期Tcan(第1周期)で取得する(
図2のS2)。さらに、ECU26は、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)からBAT端電流Ibat(パラメータ)を、更新周期Tcanよりも短い更新周期Tdir(第2周期)で取得する(
図2のS1)。そして、ECU26は、BAT端電流Ibat等により補正した要求1次側電流Ifccon1req(目標1次側電流Ifccon1tar)を用いたFC20の制御を、更新周期Tcanよりも短い制御周期Tc(第3周期)で行う。
【0087】
上記のような第1実施形態によれば、FCコンバータECU26は、CAN70を介してMG ECU50から取得した要求1次側電流Ifccon1reqを、信号線106を介して電流センサ104から直接取得したBAT端電流Ibat等で補正してFC20を制御する(
図6、
図3等)。また、要求1次側電流Ifccon1reqを取得する更新周期Tcanよりも、BAT端電流Ibatを取得する更新周期Tdir及びFC20の制御周期Tc(第3周期)の方が短い。このため、瞬間的なBAT端電流Ibatの変化(例えば、車輪のロック等による駆動モータ12の消費電力の急減に伴うバッテリ30への入力電力の急激な増加)に応じてバッテリ30の発電を制御することが可能となる。従って、バッテリ30への入力又は出力の急激な変化を避けることで、バッテリ30を保護することが可能となる。
【0088】
第1実施形態において、FCコンバータECU26(発電制御装置の一部)は、MG ECU50から取得した要求1次側電流Ifccon1reqが、1次側電流制限値Ifccon1lim1又はIfccon1lim2を超えるとき、1次側電流制限値Ifccon1lim1又はIfccon1lim2を目標1次側電流Ifccon1tarとする(
図3のブロック204、
図4のS13)。換言すると、FCコンバータECU26は、バッテリ30(蓄電装置)への入力電力が入力電力閾値を超えるとき、FC20の出力を制限する。これにより、バッテリ30への入力電力を低下させ、バッテリ30の過充電を回避することで、バッテリ30を保護することが可能となる。
【0089】
第1実施形態において、FC VCU96(発電制御装置)は、FC20側のFCコンバータ24(第1コンバータ)と、FCコンバータ24を制御するFCコンバータECU26(第1コンバータ制御装置)とを含む(
図1)。また、車両10(電力システム)は、バッテリ30(蓄電装置)側のBATコンバータ34(第2コンバータ)と、BATコンバータ34を制御するBATコンバータECU36(第2コンバータ制御装置)とを含む(
図1)。
【0090】
そして、FCコンバータECU26は、MG ECU50から取得した要求1次側電流Ifccon1reqが、1次側電流制限値Ifccon1lim1(又はIfccon1lim2)を超えるとき、1次側電流制限値Ifccon1lim1(又はIfccon1lim2)を目標1次側電流Ifccon1tarとする(
図3のブロック204、
図4のS13)。換言すると、FCコンバータECU26は、バッテリ30への入力電力が入力電力閾値を超えるとき、FC20の出力電流を制限し、バッテリ30の前記入力電力閾値に基づいてFCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim1(又はIfccon1lim2)(出力電流制限値)を変化させる(
図5)。これにより、FC20の出力電流に対して、バッテリ30の入力電力閾値に応じた適切な制限を課すことが可能となる。
【0091】
第1実施形態において、FCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim2(バッテリ30(蓄電装置)の入力電力閾値)は、バッテリ温度Tbat及びSOCに基づいて設定される。これにより、1次側電流制限値Ifccon1lim2を適切に設定し、さらには、FC20の出力電流に対しても適切な制限を課すことが可能となる。
【0092】
第1実施形態において、FCコンバータECU26(第1コンバータ制御装置)は、BAT端電力Pbat(蓄電装置の入力電力)とBAT端入力制限値Pbatlimin(入力電力閾値)との偏差ΔPbatに基づいてFC20の出力を補正する(
図6、
図3等)。これにより、偏差ΔPbatを踏まえることで適切にFC20の出力を補正することが可能となる。
【0093】
B.第2実施形態
[B1.第2実施形態の構成(第1実施形態との相違)]
図7は、本発明の第2実施形態に係る電力システムとしての燃料電池車両10A(以下「FC車両10A」又は「車両10A」という。)の概略全体構成図である。第1実施形態と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
第1実施形態の車両10では、電流センサ104が信号線106を介してFCコンバータECU26に接続され、BAT端電流IbatがECU26に直接入力された(
図1)。これに対し、第2実施形態の車両10Aでは、電流センサ134が信号線136を介してFCコンバータ電子制御装置26a(以下「FCコンバータECU26a」又は「ECU26a」という。)に接続され、BATコンバータ34の1次側電流Ibatcon1がECU26aに直接入力される(
図7)。
【0095】
また、第1実施形態のFCコンバータECU26では、BAT端電圧Vbat及びBAT端電流Ibatに基づいて算出したBAT端電力Pbatを用いた(
図3の演算ブロック214、
図6のS31)。これに対し、第2実施形態のFCコンバータECU26aでは、BATコンバータ34の1次側電圧Vbatcon1及び1次側電流Ibatcon1等に基づいて推定した推定BAT端電力Pbatestを用いる(
図8の演算ブロック214a、
図9のS43)。
【0096】
[B2.第2実施形態の制御]
(B2−1.FCコンバータ制御の概要)
第2実施形態におけるFCコンバータECU26aによるFCコンバータ24の制御(FCコンバータ制御)の概要は、第1実施形態(
図2)と同様である。
【0097】
但し、上記のように、第2実施形態では、電流センサ134が信号線136を介してFCコンバータECU26aに接続され、BATコンバータ34の1次側電流Ibatcon1がECU26aに直接入力される(
図7)。このため、第2実施形態の場合、
図2のステップS1においてECU26aに直接入力される各種センサ値Mdirには、1次側電流Ibatcon1が含まれる一方、BAT端電流Ibatは含まれない。また、
図2のステップS2においてCAN70を介してECU26aに入力される各種センサ値Mcanには、BAT端電流Ibatは含まれる一方、1次側電流Ibatcon1は含まれない。
【0098】
図2のステップS1における更新周期Tdirが、ステップS2における更新周期Tcanよりも短い点については、第2実施形態でも同じである。
【0099】
(B2−2.FCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarの算出(
図2のS3))
(B2−2−1.目標1次側電流Ifccon1tarの算出の全体的な流れ)
図8は、第2実施形態におけるFCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarの算出を説明する説明図である。第2実施形態において、FCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarを算出するフローチャート(
図2のS3の詳細)の概要は、第1実施形態(
図4)と同様である。また、バッテリ30保護の観点でのFCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim1の算出(
図4のS11)の概要についても、第1実施形態(
図5)と同様である。第1実施形態の
図3と第2実施形態の
図8との相違点については、
図9を参照して後述する。
【0100】
(B2−2−2.F/B補正値ΔIfccon1corの算出)
図9は、第2実施形態において、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1のF/B補正値ΔIfccon1corを算出するフローチャート(
図4のS14の詳細)である。
図9のステップS41(
図8の演算ブロック220)において、FCコンバータECU26aは、BATコンバータ34の1次側電圧Vbatcon1と1次側電流Ibatcon1を乗算して1次側電力Pbatcon1を算出する。
【0101】
上記の通り、第2実施形態では、電圧センサ130からの1次側電圧Vbatcon1は、CAN70を介してECU26aに入力される一方、電流センサ134からの1次側電流Ibatcon1は、ECU26aに直接入力される(
図7)。このため、1次側電圧Vbatcon1は、ECU26aがCAN70を介したセンサ値Mcanであり、1次側電流Ibatcon1は、ECU26aが電流センサ134から直接取得したセンサ値Mdirである。このため、1次側電圧Vbatcon1は、更新周期Tcanで更新される一方、1次側電流Ibatcon1は、更新周期Tdir(<Tcan)で更新される。
【0102】
図9のステップS42(
図8の演算ブロック214a)において、FCコンバータECU26aは、
図5のステップS21(
図8の演算ブロック210)で算出した補機消費電力Pauxを取得する。
【0103】
ステップS43(
図8の演算ブロック214a)において、ECU26aは、BATコンバータ34の1次側電力Pbatcon1と補機消費電力Pauxを加算して推定BAT端電力Pbatestを算出する。
【0104】
図9のステップS44(
図8の演算ブロック206a)において、FCコンバータECU26aは、推定BAT端電力PbatestからBAT端入力制限値Pbatliminを引き、さらに制御マージンPmarを足して、偏差ΔPbat2を算出する。推定BAT端電力Pbatestは、演算ブロック214a(
図9のS43)で演算される。BAT端入力制限値Pbatliminは、CAN70を介してFCコンバータ24が取得したセンサ値Mcanである。さらに制御マージンPmarは、FCコンバータECU26aの記憶部に記憶されている記憶値である。推定BAT端電力Pbatestは、制御周期Tc(<更新周期Tcan)で演算されるため、偏差ΔPbat2も制御周期Tc(<更新周期Tcan)で演算される。
【0105】
図9のステップS45(
図8の演算ブロック206a)において、FCコンバータECU26aは、ステップS44で算出した偏差ΔPbat2に基づくPID制御を行ってF/B補正値ΔIfccon1corを算出する。
【0106】
[B3.第2実施形態と比較例]
図10は、比較例に係る燃料電池車両における各種のセンサ値Mdir、Mcan及び制御値Ccanを示すタイムチャートである。
図11は、第2実施形態に係るFC車両10Aにおける各種のセンサ値Mdir、Mcan及び制御値Ccanを示すタイムチャートである。
図10の比較例では、電流センサ134からの1次側電流Ibatcon1は、FCコンバータECU26aに直接入力されるのではなく、CAN70を介してFCコンバータECU26aに入力される。
【0107】
図10及び
図11の1段目には、車輪速Vw[km/h]が示されている。
図10及び
図11の2段目には、FC端電力Pfc[W]と、BAT端電力Pbat[W]と、推定BAT端電力Pbatest[W]と、MG ECU50が送信した際のインバータ電力Pinv[W]とが示されている。加えて、
図10では、FCコンバータECU26aが受信した際のインバータ電力Pinv[W]が示されている。
【0108】
図10及び
図11の3段目には、BAT端電力Pbat[W]が示されている。3段目のBAT端電力Pbatは、2段目のBAT端電力Pbatを拡大したものであり、両者は、同じデータを示している。また、BAT端入力制限値Pbatlimin及びBAT端出力制限値Pbatlimoutの位置からもわかるように、
図10及び
図11では、3段目におけるBAT端電力Pbatの縮尺(縦方向)が相違することに留意されたい。
【0109】
図10及び
図11の4段目には、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1[A]、MG ECU50が送信した際の要求1次側電流Ifccon1req[A]と、FCコンバータECU26aが受信した際の要求1次側電流Ifccon1req[A]と、目標1次側電流Ifccon1tar[A]が示されている。なお、
図10、
図11の4段目では、1次側電流Ifccon1及び目標1次側電流Ifccon1tarが一致している。これは、比較例では、1次側電流Ifccon1の低下時には、目標1次側電流Ifccon1tarを1次側電流Ifccon1以下とする制御を含めているためである。
【0110】
図10及び
図11の時点t1において、図示しない油圧ブレーキ機構が作動したことにより、図示しない車輪がロック状態となる。時点t1以降、急激な車輪速Vwの減少に伴って、BAT端電力Pbatが放電状態から充電状態に移行する。
【0111】
この際、比較例と比較して、第2実施形態では、目標1次側電流Ifccon1tarの減少が早期に開始される。すなわち、比較例では、時点t3から目標1次側電流Ifccon1tarが減少するのに対し、第2実施形態では、時点t2から目標1次側電流Ifccon1tarの減少が開始する。
【0112】
目標1次側電流Ifccon1tar(BATコンバータ1次側電力Pbatcon1)の算出時には、BATコンバータ34の1次側電圧Vbatcon1が用いられる(
図8の演算ブロック220及び
図9のS41)。また、第2実施形態では、1次側電流Ibatcon1が電流センサ134からFCコンバータECU26aに直接入力される(
図7)。このため、1次側電流Ibatcon1の変化(減少)に伴って、第2実施形態のFCコンバータECU26aは、目標1次側電流Ifccon1tarの低下を迅速に開始することができる。一方、比較例では、1次側電流Ibatcon1がCAN70を介してFCコンバータECU26aに入力される。このため、1次側電流Ibatcon1がFCコンバータECU26aに入力されるまでの時間差Dが生じる結果、目標1次側電流Ifccon1tarの低下を迅速に開始することができない。
【0113】
1次側電流Ibatcon1の取扱いに上記のような相違があることから、比較例と比較して、第2実施形態では、BAT端電力Pbatの過度の低下を抑制することができる。すなわち、第2実施形態のBAT端電力Pbatは、BAT端入力制限値Pbatliminをわずかに超える(下回る)だけであるが、比較例のBAT端電力Pbatは、BAT端入力制限値Pbatliminを大幅に超える(下回る)。
【0114】
[B4.第2実施形態の効果]
上記のような第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え又はこれに代えて、以下の効果を奏することができる。
【0115】
第2実施形態によれば、バッテリ30(蓄電装置)とBATコンバータ34(第2コンバータ)を結ぶ電力線142には、駆動モータ12とは異なる負荷としてエアポンプ28等の補機が接続される(
図7)。また、FCコンバータECU26a(第1コンバータ制御装置)は、BATコンバータ34の1次側電力Pbatcon1に基づいてバッテリ30への入力電力又はバッテリ30からの出力電力を推定する(
図9参照)。これにより、バッテリ30の状態監視が可能となる。その結果、設計の自由度が向上すると共にフェールセーフの点で優れることとなる。
【0116】
C.第3実施形態
[C1.第3実施形態の構成(第1・第2実施形態との相違)]
図12は、本発明の第3実施形態に係る電力システムとしての燃料電池車両10B(以下「FC車両10B」又は「車両10B」という。)の概略全体構成図である。第1・第2実施形態と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0117】
第1実施形態の車両10では、電流センサ104が信号線106を介してFCコンバータECU26に接続され、BAT端電流IbatがFCコンバータECU26に直接入力された(
図1)。第2実施形態の車両10Aでは、電流センサ134が信号線136を介してFCコンバータECU26aに接続され、BATコンバータ34の1次側電流Ibatcon1がFCコンバータECU26aに直接入力された(
図7)。これに対し、第3実施形態の車両10Bでは、電流センサ138が信号線140を介してFCコンバータ電子制御装置26b(以下「FCコンバータECU26b」又は「ECU26b」という。)に接続され、BATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2がFCコンバータECU26bに直接入力される(
図12)。
【0118】
また、第1実施形態のFCコンバータECU26では、BAT端電圧Vbat及びBAT端電流Ibatに基づいて算出したBAT端電力Pbatを用いた(
図3の演算ブロック214、
図6のS31)。第2実施形態のFCコンバータECU26aでは、BATコンバータ34の1次側電圧Vbatcon1及び1次側電流Ibatcon1等に基づいて推定した推定BAT端電力Pbatestを用いた(
図8の演算ブロック214a、220、
図9のS41〜S43)。これに対し、第3実施形態のFCコンバータECU26bでは、FCコンバータ24の2次側電圧Vfccon2(BATコンバータ34の2次側電圧と略等しい)及びBATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2等に基づいて推定した推定BAT端電力Pbatest2を用いる。
【0119】
[C2.第3実施形態の制御]
(C2−1.FCコンバータ制御の概要)
第3実施形態におけるFCコンバータECU26bによるFCコンバータ24の制御(FCコンバータ制御)の概要は、第1・第2実施形態(
図2)と同様である。
【0120】
上記のように、第3実施形態では、電流センサ138が信号線140を介してFCコンバータECU26bに接続され、BATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2がFCコンバータECU26bに直接入力される(
図12)。このため、第3実施形態の場合、
図2のステップS1においてFCコンバータECU26bに直接入力される各種センサ値Mdirには、2次側電流Ibatcon2が含まれる一方、BAT端電流Ibat及び1次側電流Ibatcon1は含まれない。また、
図2のステップS2においてCAN70を介してFCコンバータECU26bに入力される各種センサ値Mcanには、BAT端電流Ibat及び1次側電流Ibatcon1は含まれる一方、2次側電流Ibatcon2は含まれない。
【0121】
図2のステップS1における更新周期Tdirが、ステップS2における更新周期Tcanよりも短い点については、第3実施形態でも同じである。
【0122】
(C2−2.FCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarの算出(
図2のS3))
(C2−2−1.目標1次側電流Ifccon1tarの算出の全体的な流れ)
図13は、第3実施形態におけるFCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarの算出を説明する説明図である。第3実施形態において、FCコンバータ24の目標1次側電流Ifccon1tarを算出するフローチャート(
図2のS3の詳細)の概要は、第1・第2実施形態(
図4)と同様である。また、バッテリ30保護の観点でのFCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim1の算出(
図4のS11)の概要についても、第1・第2実施形態(
図5)と同様である。第1実施形態の
図3及び第2実施形態の
図8と第3実施形態の
図13との相違点については、
図14を参照して後述する。
【0123】
(C2−2−2.F/B補正値ΔIfccon1corの算出)
図14は、第3実施形態において、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1のF/B補正値ΔIfccon1corを算出するフローチャート(
図4のS14の詳細)である。
図14のステップS51(
図13の演算ブロック220a)において、FCコンバータECU26bは、FCコンバータ24の2次側電圧Vfccon2とBATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2を乗算してBATコンバータ34の2次側電力Pbatcon2を算出する。
【0124】
上記の通り、第3実施形態では、電圧センサ88からの2次側電圧Vfccon2及び電流センサ138からの2次側電流Ibatcon2は、FCコンバータECU26bに直接入力される(
図12)。このため、2次側電圧Vfccon2及び2次側電流Ibatcon2は、FCコンバータECU26bが電圧センサ88及び電流センサ138から直接取得したセンサ値Mdirである。このため、2次側電圧Vfccon2及び2次側電流Ibatcon2は、更新周期Tdirで更新される。
【0125】
図14のステップS52(
図13の演算ブロック214b)において、FCコンバータECU26bは、
図5のステップS21(
図13の演算ブロック210)で算出した補機消費電力Pauxを取得する。
【0126】
ステップS53(
図13の演算ブロック214b)において、ECU26bは、BATコンバータ34の2次側電力Pbatcon2と補機消費電力Pauxを加算して推定BAT端電力Pbatest2を算出する。
【0127】
図14のステップS54(
図13の演算ブロック206b)において、ECU26bは、推定BAT端電力Pbatest2からBAT端入力制限値Pbatliminを引き、さらに制御マージンPmarを足して、偏差ΔPbat3を算出する。推定BAT端電力Pbatest2は、演算ブロック214b(
図14のS53)で演算される。BAT端入力制限値Pbatliminは、CAN70を介してFCコンバータ24が取得したセンサ値Mcanである。さらに制御マージンPmarは、FCコンバータECU26bの記憶部に記憶されている記憶値である。推定BAT端電力Pbatest2は、制御周期Tc(<更新周期Tcan)で演算されるため、偏差ΔPbat3も制御周期Tc(<更新周期Tcan)で演算される。
【0128】
図14のステップS55(
図13の演算ブロック206b)において、FCコンバータECU26bは、ステップS54で算出した偏差ΔPbat3に基づくPID制御を行ってF/B補正値ΔIfccon1corを算出する。
【0129】
[C3.第3実施形態の効果]
上記のような第3実施形態によれば、第1・第2実施形態の効果に加え又はこれに代えて、以下の効果を奏することができる。
【0130】
第3実施形態において、FCコンバータECU26b(第1コンバータ制御装置)は、BATコンバータ34(第2コンバータ)の2次側電力Pbatcon2に基づいてバッテリ30(蓄電装置)への入力電力又はバッテリ30からの出力電力を推定する(
図14参照)。これにより、バッテリ30の状態監視が可能となる。その結果、設計の自由度が向上すると共にフェールセーフの点で優れることとなる。
【0131】
なお、第3実施形態についても、
図11と同様の波形を得ることができる。
【0132】
D.第4実施形態
[D1.第4実施形態の構成(第1〜第3実施形態との相違)]
図15は、本発明の第4実施形態に係る電力システムとしての燃料電池車両10C(以下「FC車両10C」又は「車両10C」という。)の概略全体構成図である。第1〜第3実施形態と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0133】
第1〜第3実施形態の車両10、10A、10Bでは、FCコンバータECU26、26a、26bでの制御を介してバッテリ30の保護を図った。これに対し、第4実施形態の車両10Cでは、FCコンバータ電子制御装置26c(以下「FCコンバータECU26c」又は「ECU26c」という。)及びモータ電子制御装置16a(以下「モータECU16a」又は「ECU16a」という。)での制御を介してバッテリ30の保護を図る。
図15に示すように、電流センサ104は、信号線106を介してFCコンバータECU26c及びモータECU16aに接続され、BAT端電流IbatがECU16a、26cに直接入力される(
図15)。
【0134】
FCコンバータECU26cは、第1実施形態のECU26と実質的に同一である、車輪のロック等により、バッテリ30への入力電力が過大となることを防ぐよう制御する。また、モータECU16aは、車輪のスピン等により、バッテリ30からの出力電力が過大となることを防ぐように制御する。
【0135】
[D2.第4実施形態の制御]
(D2−1.FCコンバータECU26cの制御)
第4実施形態におけるFCコンバータECU26cによるFCコンバータ24の制御(FCコンバータ制御)の概要は、第1実施形態(
図2等)と同様である。
図2のステップS1における更新周期Tdirが、ステップS2における更新周期Tcanよりも短い点については、第4実施形態でも同じである。
【0136】
(D2−2.モータECU16aの制御)
(D2−2−1.バッテリ保護制御)
図16には、第4実施形態におけるモータECU16aによるバッテリ保護制御のフローチャートが示されている。バッテリ保護制御では、モータECU16aがインバータ14を介してモータ12の出力を変化させることで、バッテリ30の保護を図る。
【0137】
図16のステップS61において、モータECU16aは、モータECU16aに対して直接入力される各種のセンサ値Mdir2を更新する。ここでの各種のセンサ値Mdir2には、電圧センサ60からのインバータ電圧Vinv及び電流センサ64からのインバータ電流Iinvが含まれる。さらに第4実施形態では、電流センサ104が直接モータECU16aに接続されているため、BAT端電流Ibatもセンサ値Mdir2に含まれる。これらセンサ値Mdir2の更新周期Tdir2は、例えば、数msecとする。センサ値Mdir2毎に更新周期Tdir2を相違させることも可能である。
【0138】
ステップS62において、モータECU16aは、CAN70を通じて入力される各種の制御値Ccan2及びセンサ値Mcan2を更新する。ここでの制御値Ccan2には、例えば、MG ECU50からのモータ12の要求トルクTmreqが含まれる。加えて、BAT ECU32からのBAT端出力制限値Pbatlimoutが含まれる。また、ここでのセンサ値Mcan2には、例えば、BAT端電圧Vbatが含まれる。
【0139】
これら制御値Ccan2及びセンサ値Mcan2の更新周期Tcan2は、例えば、数十msecであり、更新周期Tdir2よりも長い。制御値Ccan2毎又はセンサ値Mcan2毎に更新周期Tdir2を相違させることも可能である。なお、第4実施形態における
図16のステップS61〜S66の演算周期(以下「制御周期Tc2」という。)は、例えば、数msecであり、センサ値Mdir2の更新周期Tdir2と等しい。例えば、更新周期Tdir2及び制御周期Tc2を更新周期Tcan2よりも短くする観点からすれば、制御周期Tc2は、更新周期Tdir2よりも短くする又は長くすることも可能である。
【0140】
ステップS63において、モータECU16aは、BAT端電圧VbatとBAT端電流Ibatを乗算してBAT端電力Pbatを算出する。上記の通り、第4実施形態では、電圧センサ100からのBAT端電圧Vbatは、CAN70を介してECU16aに入力される一方、電流センサ104からのBAT端電流Ibatは、ECU16aに直接入力される(
図15)。このため、BAT端電圧Vbatは、ECU16aがCAN70を介したセンサ値Mcan2であり、BAT端電流Ibatは、ECU16aが電流センサ104から直接取得したセンサ値Mdir2である。従って、BAT端電圧Vbatは、更新周期Tcan2で更新される一方、BAT端電流Ibatは、更新周期Tdir2(<Tcan2)で更新される。
【0141】
ステップS64において、モータECU16aは、BAT端電力Pbat(S63)が、BAT端出力制限値Pbatlimout以上であるか否かを判定する。BAT端電力Pbatが制限値Pbatlimout以上である場合(S64:YES)、ステップS65において、ECU16aは、バッテリ30保護の観点でモータ12の出力制限を行う。例えば、ECU16aは、モータ12の要求トルクTmreqを所定量減少させて用いる。一方、BAT端電力Pbatが制限値Pbatlimout以上でない場合(S64:NO)、ステップS66において、ECU16aは、バッテリ30保護の観点ではモータ12の出力制限を行わない。例えば、ECU16aは、バッテリ30保護の観点では要求トルクTmreqを変化させずに用いる(その他の観点で出力制限を行う場合はあり得る。)。
【0142】
[D3.第4実施形態の効果]
上記のような第4実施形態によれば、第1〜第3実施形態の効果に加え又はこれに代えて、以下の効果を奏することができる。
【0143】
第4実施形態によれば、モータECU16a(モータ制御装置)は、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50(電力管理装置)から取得した駆動モータ12の要求トルクTmreq(出力指令値)と、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)とを用いて駆動モータ12を制御する(
図16)。これにより、例えば、通常時は、主として要求トルクTmreqを用いる一方、バッテリ30(蓄電装置)の入力又は出力に関するBAT端電流Ibat等の瞬間的な変化(例えば、車輪のスリップ等による駆動モータ12の消費電力の急増に伴うバッテリ30からの出力電力の急激な増加)が生じたときは、BAT端電流Ibat等の変化に重点を置いてFC20(発電装置)の発電を制御することが可能となる。従って、バッテリ30への入力又は出力の急激な変化に応じてバッテリ30を保護することが可能となる。
【0144】
E.変形例
なお、本発明は、上記各実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0145】
[E1.搭載対象]
上記各実施形態では、車両10、10A〜10Cを電力システムとして本発明を適用した。しかしながら、例えば、CAN70等の通信ネットワーク(第1信号系統)とは異なる信号経路(第2信号系統)を利用する観点からすれば、これに限らない。例えば、別の対象を電力システムとして本発明を適用してもよい。例えば、船舶や航空機等の移動物体を電力システムとして本発明を適用することもできる。或いは、ロボット、製造装置、家庭用電力システム又は家電製品を電力システムとして本発明を適用してもよい。
【0146】
[E2.車両10、10A〜10Cの構成]
(E2−1.FC20(発電装置))
上記各実施形態では、バッテリ30に電力を供給可能な発電装置としてFC20(及び回生時のモータ12)を用いた(
図1等)。しかしながら、例えば、バッテリ30に電力を供給可能な発電装置の観点からすれば、これに限らない。例えば、FC20に代えて又はこれに加えて、エンジンにより駆動されるジェネレータ又はバッテリ30とは別の蓄電装置(別のバッテリ、キャパシタ等)を用いることも可能である。
【0147】
(E2−2.駆動モータ12)
上記各実施形態では、モータ12を交流式としたが、例えば、CAN70等の通信ネットワーク(第1信号系統)とは異なる信号経路(第2信号系統)を利用する観点からすれば、これに限らない。例えば、モータ12は、直流式とすることも可能である。この場合、インバータ14の代わりにオンオフスイッチを設けることも可能である。
【0148】
上記各実施形態では、モータ12をFC車両10、10A〜10Cの走行用又は駆動用とした。しかしながら、例えば、CAN70等の通信ネットワーク(第1信号系統)とは異なる信号経路(第2信号系統)を利用する観点からすれば、これに限らない。例えば、モータ12を車載機器(例えば、電動パワーステアリング、エアコンプレッサ、エアコンディショナ40)用に用いてもよい。
【0149】
(E2−3.FCコンバータ24及びBATコンバータ34)
上記各実施形態では、FC20とバッテリ30を並列に配置し、FC20の手前に昇圧コンバータであるFCコンバータ24を配置し、バッテリ30の手前に昇降圧コンバータであるBATコンバータ34を配置する構成とした(
図1等)。しかしながら、例えば、CAN70等の通信ネットワーク(第1信号系統)とは異なる信号経路(第2信号系統)を利用する観点からすれば、これに限らない。例えば、FC20の手前に配置するFCコンバータ24を昇圧式ではなく、昇降圧式又は降圧式としてもよい。或いは、
図17に示すように、FC20とバッテリ30を並列に配置し、昇圧式、降圧式又は昇降圧式のDC/DCコンバータであるFCコンバータ24をFC20の手前に配置する構成であってもよい。
【0150】
(E2−4.電流センサ104、134、138等(パラメータ取得部))
第1・第4実施形態(
図1、
図15)では、信号線106を介して電流センサ104をFCコンバータECU26、26cに接続して、BAT端電流IbatをFCコンバータECU26、26cに直接入力した。第2実施形態(
図7)では、信号線136を介して電流センサ134をFCコンバータECU26aに接続して、BATコンバータ34の1次側電流Ibatcon1をECU26aに直接入力した。第3実施形態(
図12)では、信号線140を介して電流センサ138をFCコンバータECU26bに接続して、BATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2をECU26bに直接入力した。
【0151】
しかしながら、例えば、バッテリ30(蓄電装置)の入力又は出力に関するパラメータをFCコンバータECU26、26a〜26cに直接入力する観点からすれば、これに限らない。例えば、第1・第4実施形態の場合、BAT端電流Ibatに加えて又はこれに代えて、BAT端電圧VbatをFCコンバータECU26、26cに直接入力することも可能である。第2実施形態の場合、1次側電流Ibatcon1に加えて又はこれに代えて、1次側電圧Vbatcon1をFCコンバータECU26aに直接入力することも可能である。
【0152】
第4実施形態では、信号線106を介して電流センサ104をモータECU16aに接続して、BAT端電流IbatをECU16aに直接入力した(
図15)。しかしながら、例えば、バッテリ30(蓄電装置)の入力又は出力に関するパラメータをモータECU16aに直接入力する観点からすれば、これに限らない。例えば、BAT端電流Ibatに加えて又はこれに代えて、BAT端電圧VbatをモータECU16aに直接入力することも可能である。また、例えば、モータECU16aにおいて推定BAT端電力Pbatest、Pbatest2(
図9のS43、
図14のS53)を用いる観点からすれば、電流センサ134が検出したBATコンバータ34の1次側電流Ibatcon1又は電流センサ138が検出したBATコンバータ34の2次側電流Ibatcon2を、ECU16aに直接入力することも可能である(第2・第3実施形態参照)。
【0153】
(E2−5.CAN70及び信号線106、136、140(第1信号系統及び第2信号系統))
第1・第4実施形態では、CAN70及び信号線106を用いてセンサ値Mdir、Mdir2、Mcan、Mcan2及び制御値Ccan、Ccan2をFCコンバータECU26、26c及びモータECU16aに入力した(
図1、
図15)。しかしながら、例えば、センサ値Mcan、Mcan2及び制御値Ccan、Ccan2を送信するための第1信号系統よりも目的地(例えば、FCコンバータECU26、26a〜26c)に到達する時間が短い第2信号系統を利用する観点からすれば、これに限らない。例えば、センサ値Mcan、Mcan2及び制御値Ccan、Ccan2を送信する第1信号系統を低速CANとし、センサ値Mdir、Mdir2を送信する第2信号系統を高速CANとすることも可能である。或いは、第1信号系統又は第2信号系統としては、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRay等を用いることも可能である。
【0154】
(E2−6.FCコンバータECU26、26a〜26c)
上記各実施形態のFCコンバータECU26、26a〜26cでは、バッテリ30での過充電を避けるため、バッテリ30への入力電力が大きくなる場合に、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1を低下させた(
図6等参照)。しかしながら、例えば、バッテリ30の保護の観点からすれば、これに限らない。例えば、FCコンバータECU26、26a〜26cでは、バッテリ30での過放電を避けるため、バッテリ30からの出力電力が大きくなる場合(出力電力又はこれに関連するパラメータが所定の閾値を超える場合)、FCコンバータ24の1次側電流Ifccon1を増加させることも可能である。
【0155】
第1実施形態において、FCコンバータECU26は、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50から取得した要求1次側電流Ifccon1req(FC20(発電装置)の発電指令値)を、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)(
図1)で補正してFC20(発電装置)を制御した(
図3、
図6等)。
【0156】
しかしながら、例えば、CAN70(第1信号系統)を介して取得した要求1次側電流Ifccon1req(FC20(発電装置)の発電指令値)と、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)とを用いる観点からすれば、これに限らない。例えば、BAT端電流Ibatに急激な変化(閾値を超える変化)が生じた場合、要求1次側電流Ifccon1reqを用いずに、BAT端電流Ibatに基づいてFC20を制御することも可能である。第2〜第4実施形態のFCコンバータECU26a〜26cについても同様である。
【0157】
上記各実施形態において、FCコンバータECU26、26a〜26cは、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50から取得した要求1次側電流Ifccon1reqをFC20(発電装置)の発電指令値として用いた(
図1等)。しかしながら、例えば、FC20(発電装置)の発電を制御する観点からすれば、これに限らず、FCコンバータECU26、26a〜26cの2次側電流Ifccon2の要求値を、FC20の発電指令値として用いることも可能である。
【0158】
上記各実施形態では、FCコンバータ24の1次側電流制限値Ifccon1lim2(バッテリ30(蓄電装置)の入力電力閾値)を、バッテリ30の温度Tbat及びSOCに基づいて設定した(
図4のS12)。しかしながら、例えば、1次側電流制限値Ifccon1lim2を設定する観点からすれば、バッテリ30の温度Tbat及びSOCの一方のみを用いて1次側電流制限値Ifccon1lim2を設定することも可能である。また、例えば、1次側電流制限値Ifccon1lim1を設定する観点からすれば、1次側電流制限値Ifccon1lim2を設定しないことも可能である。
【0159】
(E2−7.モータECU16a)
第4実施形態のモータECU16aでは、バッテリ30での過放電を避けるため、バッテリ30からの出力電力が大きくなる場合に、モータ12の出力を制限した(
図16参照)。しかしながら、例えば、バッテリ30の保護の観点からすれば、これに限らない。例えば、モータECU16aでは、バッテリ30での過充電を避けるため、バッテリ30への入力電力が大きくなる場合(入力電力又はこれに関連するパラメータが所定の閾値を超える場合)、モータ12の出力を一時的に増加させることも可能である。
【0160】
第4実施形態において、モータECU16aは、CAN70(第1信号系統)を介してMG ECU50から取得した要求トルクTmreq(モータ12の出力指令値)を、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)(
図15)で補正してモータ12を制御した(
図16)。
【0161】
しかしながら、例えば、CAN70(第1信号系統)を介して取得した要求トルクTmreq(モータ12の出力指令値)と、信号線106(第2信号系統)を介して電流センサ104(パラメータ取得部)から取得したBAT端電流Ibat(パラメータ)とを用いる観点からすれば、これに限らない。例えば、BAT端電流Ibatに急激な変化(閾値を超える変化)が生じた場合、要求トルクTmreqを用いずに、BAT端電流Ibatに基づいてモータ12を制御することも可能である。