特許第6247772号(P6247772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247772
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】マット用留め具
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20171204BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20171204BHJP
   F16B 19/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B60N3/04 B
   F16B21/04 H
   F16B19/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-548875(P2016-548875)
(86)(22)【出願日】2015年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2015075985
(87)【国際公開番号】WO2016043151
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-188410(P2014-188410)
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】三田 一博
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−20024(JP,A)
【文献】 特開2000−153731(JP,A)
【文献】 実開昭58−135331(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
F16B 19/10
F16B 21/04
A47G 27/00 − 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットのマット固定用孔の表面周縁に係合する基部、及び該基部の裏面側から延出され、前記マット固定用孔に挿入されてその裏面周縁に係合する係止脚片を有するグロメットと、該グロメットに挿入される軸部及び前記カーペットの上に配置されるマットの取付孔に挿入される頭部を有するピンとを備えたマット用留め具において、
前記グロメットの基部は、前記ピンの軸部が挿入されるピン挿通孔を有し、前記係止脚片は、前記ピン挿通孔の裏面周縁から延出され、前記ピンの軸部を前記ピン挿通孔に挿入することにより、前記軸部によって押し開かれて、前記カーペットのマット固定用孔の裏面周縁に係合するように構成されており、
前記グロメットと前記ピンとの間には、前記ピンの軸部を前記グロメットのピン挿通孔に挿入した状態で、前記ピンの軸部を抜け止めする係合部が設けられ、
前記ピンの頭部は、前記マットの取付孔に挿入されて、前記ピンを回転させることにより、前記マットの取付孔の表面周縁に係合するように構成されていることを特徴とするマット用留め具。
【請求項2】
前記ピンの軸部には、前記グロメットの基部と前記マットとの間に配置され、前記マットの取付孔の裏面周縁に当接する第1フランジ部が設けられている請求項1記載のマット用留め具。
【請求項3】
前記グロメットの基部には、前記ピンの第1フランジ部の裏面に対向する第2フランジ部と、該第2フランジ部よりも大きな外径を有し、前記カーペットの表面に係合する第3フランジ部とが設けられ、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の少なくとも一方には、その周縁から延出されて他方の周縁を抱き込む保持片が設けられている請求項2記載のマット用留め具。
【請求項4】
前記係止脚片が前記軸部によって押し開かれた状態で、前記軸部の前記係止脚片に当接する部分は円柱状をなし、前記係止脚片の前記軸部に当接する部分は前記軸部の円柱状部分に適合する円弧状をなす請求項1〜3のいずれか1つに記載のマット用留め具。
【請求項5】
前記係止脚片は、少なくとも一対のものからなり、前記係合部は、前記グロメットのピン挿通孔内周と、前記ピンの軸部外周との間に形成される、周方向に対向して設けられた一対の第1係合部と、前記係止脚片が前記軸部によって押し開かれた状態で、前記係止脚片と前記軸部外周との当接部に形成される、周方向に対向して設けられた一対の第2係合部とを有し、前記一対の第1係合部と、前記一対の第2係合部とは、前記軸部の軸方向に沿って見たとき、互いに直交する位置に設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載のマット用留め具。
【請求項6】
前記係止脚片が前記軸部によって押し開かれた状態で、前記カーペットの裏面に対向する面には、食い込み凸部が形成されており、前記基部の前記カーペットの表面に対向する面には、押し込み凸部が形成されており、前記食い込み凸部及び前記押し込み凸部の少なくとも一方の凸部は複数個あり、前記食い込み凸部及び前記押し込み凸部の少なくとも一方の複数の凸部の間に、前記食い込み凸部及び前記押し込み凸部の他方の凸部が配置されている請求項1〜5のいずれか1つに記載のマット用留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の床等に設置されるカーペット上に、マットを固定するためのマット用留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の自動車の床には、カーペットが敷かれており、このカーペットが汚れないようにするため、カーペットの上に更にマットを載せて使用している。この場合、カーペットに対して、マットが不用意に動かないようにするため、カーペット上にマットを着脱自在に固定するマット用留め具が用いられている。
【0003】
このような留め具として、下記特許文献1には、ティビアパッドに雌部材を取付けておき、ダッシュサイレンサには雌部材と係合可能な雄部材を取付け、雄部材と雌部材とを係合させることにより、ダッシュサイレンサにティビアパッドを固定できるようにしたクリップが開示されている。このクリップの雄部材は、ダッシュサイレンサに形成された挿通穴の表側に係合する雄フランジと、この雄フランジの裏面に設けられた被係止部から延出され、挿通穴に挿入される脚体とを有しており、脚体をダッシュサイレンサの裏側から押して被係止部に係止させることにより、脚体が折り畳まれて広がり、挿通穴の下面側の周縁に係合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−294071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリップでは、雄部材をダッシュサイレンサに取付ける際に、ダッシュサイレンサの裏側から脚体を押して、脚体を広げて被係止部に係止させる必要があり、取付作業性が良くなかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、カーペットへの取付作業性のよいマット用留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のマット用留め具は、カーペットのマット固定用孔の表面周縁に係合する基部、及び該基部の裏面側から延出され、前記マット固定用孔に挿入されてその裏面周縁に係合する係止脚片を有するグロメットと、該グロメットに挿入される軸部及び前記カーペットの上に配置されるマットの取付孔に挿入される頭部を有するピンとを備えたマット用留め具において、
前記グロメットの基部は、前記ピンの軸部が挿入されるピン挿通孔を有し、前記係止脚片は、前記ピン挿通孔の裏面周縁から延出され、前記ピンの軸部を前記ピン挿通孔に挿入することにより、前記軸部によって押し開かれて、前記カーペットのマット固定用孔の裏面周縁に係合するように構成されており、
前記グロメットと前記ピンとの間には、前記ピンの軸部を前記グロメットのピン挿通孔に挿入した状態で、前記ピンの軸部を抜け止めする係合部が設けられ、
前記ピンの頭部は、前記マットの取付孔に挿入されて、前記ピンを回転させることにより、前記マットの取付孔の表面周縁に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のマット用留め具においては、前記ピンの軸部には、前記グロメットの基部と前記マットとの間に配置され、前記マットの取付孔の裏面周縁に当接する第1フランジ部が設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記グロメットの基部には、前記ピンの第1フランジ部の裏面に対向する第2フランジ部と、該第2フランジ部よりも大きな外径を有し、前記カーペットの表面に係合する第3フランジ部とが設けられ、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の少なくとも一方には、その周縁から延出されて他方の周縁を抱き込む保持片が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記係止脚片が前記軸部によって押し開かれた状態で、前記軸部の前記係止脚片に当接する部分は円柱状をなし、前記係止脚片の前記軸部に当接する部分は前記軸部の円柱状部分に適合する円弧状をなすことが好ましい。
【0011】
更に、前記係止脚片は、少なくとも一対のものからなり、前記係合部は、前記グロメットのピン挿通孔内周と、前記ピンの軸部外周との間に形成される、周方向に対向して設けられた一対の第1係合部と、前記係止脚片が前記軸部によって押し開かれた状態で、前記係止脚片と前記軸部外周との当接部に形成される、周方向に対向して設けられた一対の第2係合部とを有し、前記一対の第1係合部と、前記一対の第2係合部とは、前記軸部の軸方向に沿って見たとき、互いに直交する位置に設けられていることが好ましい。
【0012】
更にまた、前記係止脚片が前記軸部によって押し開かれた状態で、前記カーペットの裏面に対向する面には、食い込み凸部が形成されており、前記基部の前記カーペットの表面に対向する面には、押し込み凸部が形成されており、前記食い込み凸部及び前記押し込み凸部の少なくとも一方の凸部は複数個あり、前記食い込み凸部及び前記押し込み凸部の少なくとも一方の複数の凸部の間に、前記食い込み凸部及び前記押し込み凸部の他方の凸部が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマット用留め具においては、グロメットの係止脚片を、カーペットの表側から、マット固定用孔に挿通し、ピンの軸部をグロメットのピン挿入孔に挿入して、係止脚片を押し開くだけで、カーペットに取付けることができるので、取付作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のマット用留め具の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同マット用留め具のグロメットにピンを差し込んで仮止めした状態を示す斜視図である。
図3】同マット用留め具のグロメットを示し、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図4】同マット用留め具のグロメットの断面斜視図である。
図5】同マット用留め具のピンを示し、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図6】同マット用留め具のグロメットにピンを差し込んで仮止めした状態を示す断面斜視図である。
図7】同マット用留め具のグロメットにピンを差し込んだ状態を示す、中央の一点鎖線の右側と左側とで90度角度を変えて見た断面図であり、(a)は仮止めした状態を示す断面図、(b)は仮止め状態から更にピンを押し込んだ状態を示す断面図である。
図8】同マット用留め具のグロメットにピンを完全に差し込んだ状態を示す断面図であり、(a)は係合脚片の中心を通る部分で切った断面図、(b)は(a)とは90度交差する部分で切った断面図である。
図9】同マット用留め具でカーペット上にマットを固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明によるマット用留め具の一実施形態を説明する。
【0016】
図1に示すように、このマット用留め具100は、例えば乗用車等の床に敷かれるカーペット101上に、マット103を乗せて固定するのに使用される。この実施形態の場合、カーペット101には、角孔状のマット固定用孔102が設けられ、マット103には、ほぼ円形の中央部105と、その対向する部分から延出されたスリット状延出部106とからなる取付孔104が設けられている。
【0017】
マット用留め具100は、グロメット200と、ピン300とで構成されている。グロメット200は、ピン挿通孔202が中央に設けられ、カーペット101のマット固定用孔102の表面周縁に係合する基部201と、基部201の裏面から延出され、ピン300を挿入することにより、押し開かれてカーペット101のマット固定用孔102の裏面周縁に係合する一対の係止脚片203を有している。ピン300は、グロメット200のピン挿通孔202に挿入される軸部301と、マット103の取付孔104に挿入されて、ピン300を回転させることにより、取付孔104の表面周縁に係合する頭部302とを有している。
【0018】
図2,3,4を参照して、グロメット200について更に詳しく説明する。グロメット200の基部201は、カーペット101のマット固定用孔102に挿入される角形の枠状部204と、この枠状部204の4つの角部から下方に延出された柱状ガイド205と、カーペット101のマット固定用孔102の表面周縁に係合するフランジ状延出部206と、その周縁から上下に分かれて延出された第2フランジ部207、第3フランジ部208とで構成されている。第3フランジ部208の外径は、第2フランジ部207の外径よりもやや大きくされている。この実施形態では、第2フランジ部207、第3フランジ部208の内径側部分がフランジ状延出部206に連結されて一体化しているが、以下の説明では、便宜上、フランジ状延出部206の上面をなす部分を第2フランジ部207とし、フランジ状延出部206の下面をなす部分を第3フランジ部208として説明することにする。
【0019】
第2フランジ部207の上面には、90度ずつの角度で、ピン挿通孔202の内周の各辺の中央に位置して、半径方向に伸びる位置決め溝209が形成されている。また、第3フランジ部208の裏面には、係止脚片203が延出された部分に対応する、周方向に対向する2箇所に、外径方向に伸びる一対の平行な押し込み凸部216が、それぞれ形成されている(図3(b)参照)。押し込み凸部216の数は、一対に限定されず、1つ以上あればよい。また、ピン挿通孔202の内周の、係止脚片203が位置しない方向の2辺の中央部には、第2フランジ部207の上面側からピン挿通孔202の内方やや下方に向けて延出された一対の第1係合片210が設けられている(図3(a)参照)。第1係合片210の数は、一対に限定されず、1つ以上あればよい。
【0020】
角形の枠状部204の対向する2辺の下縁部からは、薄肉状のヒンジ部211を介して、前記係止脚片203がそれぞれ延出されている。係止脚片203は、ヒンジ部211を介して、拡開可能とされている。係止脚片203の基部には、ヒンジ部211より基端側に突出する基端部212が設けられている。この基端部212は、ピン300の軸部301をピン挿通孔202に挿入したとき、軸部301の先端部に当接して、係止脚片203を拡開させる部分となる(図7参照)。基端部212の端面に、ピン300の軸部301の外周に適合する円弧状当接面213と、その幅方向中央に沿って形成された第2係合溝214とが形成されている。なお、係止脚片203の数は、一対に限定されず、1つ以上あればよい。
【0021】
また、一対の係止脚片203の外側面、言い換えると、拡開したときにカーペット101のマット固定用孔102の裏面周縁に当接する部分には、複数の食い込み凸部215が複数の列(この実施形態では幅方向に3列)をなして形成されている。これに関連して、前述したように、第3フランジ部208の裏面には、食い込み凸部215の列の間に位置するように、凸条をなす一対の押し込み凸部216が形成されている。
【0022】
なお、食い込み凸部215の突出量が長い場合、係止脚片203が拡開したとき、係止脚片203の外側面とカーペット101の裏面とが直接接触しないで、食い込み凸部215だけがカーペット101の裏面に当接した状態となってもよい。
【0023】
また、食い込み凸部215及び押し込み凸部216の数は、限定されず、少なくとも一方の凸部が複数個あり、食い込み凸部215及び押し込み凸部216の少なくとも一方の複数の凸部の間に、食い込み凸部215及び押し込み凸部216の他方の凸部が配置されていればよい(図9参照)。
【0024】
次に、図2,5,6を参照して、ピン300について更に詳しく説明する。ピン300の頭部302は、柄部303とツマミ部304とからなる。柄部303は、図1の取付孔104の中央部105に挿入可能な外径をなし、ツマミ部304は、取付孔104のスリット状延出部106に挿入可能であって、ピン300を回転させてツマミ部304をスリット状延出部106と直交する角度にすると、取付孔104に係合する幅及び長さとされている(図9参照)。
【0025】
ピン300の軸部301と頭部302との間には、図1のマット103の取付孔104の裏面周縁に係合する第1フランジ部305が設けられている。第1フランジ部305は、グロメット200の第3フランジ部208とほぼ同じ外径をなし、第1フランジ部305の周方向に対向する2箇所には、第1フランジ部305を第2フランジ部207に当接させたとき、第2フランジ部207の周縁を抱き込むように延出された保持片306が設けられている。第1フランジ部305の裏面の、保持片306と直交する方向にあって周方向に対向する2箇所には、前述したグロメット200の第2フランジ部207上面の位置決め溝209に係合する位置決め凸部307が形成されている。
【0026】
なお、この実施例の場合、保持片306の位置は、ツマミ部304の突出方向と同じ方向に位置している。ただし、保持片306の数は、特に限定されず、少なくとも1つ以上あればよいが、好ましくは周方向に均等な角度で配置された2つ以上とされる。また、保持片306は、第2フランジ部207から延出されて、第1フランジ部305の周縁を抱き込むように形成してもよい。
【0027】
ピン300の軸部301外周の周方向に対応する2箇所には、前記グロメット200の第1係合片210が係合する仮止用係合溝308が形成されている。ピン300の軸部301をグロメット200のピン挿通孔202に挿入する際、第1係合片210を仮止用係合溝308に係合させることにより、ピン300をグロメット200に仮止めすることができる(図6参照)。その状態で工場から出荷することにより、ユーザーは、ピン300をグロメット200に組付ける手間が省けるので、作業性を良好にすることができる。なお、第1係合片210及び仮止用係合溝308の数は、一対に限定されず、少なくとも1つずつあればよい。
【0028】
また、ピン300の軸部301の基部外周には、環状の第1係合溝309が形成されている。ピン300の軸部301をグロメット200のピン挿通孔202に最大限に押し込むと、ピン300の第1係合溝309にグロメット200の第1係合片210が係合して、グロメット200に対してピン300が抜け止めされるようになっている(図8(b)参照)。上記基部201と第1係合溝309とが、本発明における第1係合部を構成している。
【0029】
更に、ピン300の軸部301の先端部外周には、環状の第2係合凸部310が形成されている。ピン300の軸部301をグロメット200のピン挿通孔202に最大限に押し込むと、グロメット200の係止脚片203が押し広げられて拡開し、軸部301の外周に円弧状当接面213が当接すると共に、第2係合溝214に第2係合凸部310が係合するようになっている(図8(a)参照)。これによっても、グロメット200に対してピン300が抜け止めされるようになっている。上記第2係合溝214と第2係合凸部310とが、本発明における第2係合部を構成している。なお、第1係合部及び第2係合部の係合溝と係合凸部との関係は、上記と逆になっていてもよい。
【0030】
次に、上記構成からなる本発明のマット用留め具100の作用効果について説明する。
【0031】
図6に示すように、ピン300の軸部301をグロメット200のピン挿通孔202に挿入し、第1係合片210を仮止用係合溝308に係合させることにより、ピン300をグロメット200に仮止めすることができる。この状態で工場から出荷することにより、ユーザーは、ピン300がグロメット200に既に組付けられた状態で、マット用留め具100を利用できるので、作業性が良好となる。
【0032】
そして、グロメット200の柱状ガイド205をマット固定用孔102の4隅に位置させて、カーペット101のマット固定用孔102に係止脚片203を挿入すると、図7(a)に示すように、第3フランジ部208の裏面がマット固定用孔102の表面周縁に当接する。ただし、押し込み凸部216の突出量が長い場合、押し込み凸部216がマット固定用孔102の表面周縁に当接して、第3フランジ部208の裏面は、マット固定用孔102の表面周縁に直接当接しなくてもよい。
【0033】
この状態で、ピン300の軸部301をグロメット200のピン挿通孔202に更に押し込むと、図7(b)に示すように、軸部301の先端部が係止脚片203の基端部212に当接し、係止脚片203が軸部301によって押し広げられる。
【0034】
そして、ピン300の軸部301をグロメット200のピン挿通孔202に最大限に押し込むと、図8(a)、(b)に示すように、係止脚片203が更に拡開してカーペット101の裏面に圧接される。また、グロメット200の第1係合片210がピン300の第1係合溝309に係合し、係止脚片203の円弧状当接面213にピン300の軸部301が当接すると共に、係止脚片203の第2係合溝214にピン300の軸部301の第2係合凸部310が係合する。ここで、前述したように、第1係合片210と第1係合溝309が本発明による第1係合部をなし、第2係合溝214と第2係合凸部310が本発明による第2係合部をなしていて、第1係合部の係合位置と、第2係合部の係合位置とは、互いに直交する位置にあるので、グロメット200に対してピン300を安定して抜け止めすることができる。
【0035】
また、この状態では、図9に示すように、カーペット101は、第3フランジ部208と係止脚片203とに挟持され、係止脚片203の複数の食い込み凸部215がカーペット101の裏面に食い込み、第3フランジ部208の押し込み凸部216が、食い込み凸部215の列の間に位置して、カーペット101の表面に押し込まれるので、カーペット101を断面波形に挟み込み、カーペット101に対してマット用留め具100をしっかりと固定することができる。
【0036】
なお、この実施形態の場合、食い込み凸部215の列は、係止脚片203の突出方向に2個の食い込み凸部215が並び、係止脚片203の幅方向に3列をなして形成され、押し込み凸部216は、上記食い込み凸部215の列の間に位置するように、枠状部204の辺に対して直角方向に延出されているが、食い込み凸部215の列の方向や、押し込み凸部216の延出方向は、特に限定されるものではない。
【0037】
また、ピン300の第1フランジ部305は、グロメット200の第2フランジ部207の上面に当接し、第1フランジ部305の保持片306が第2フランジ部207の周縁を抱え込むように保持する。
【0038】
そして、図1に示したマット103の取付孔104に、ピン300の頭部302を挿入する。その際、取付孔104のスリット状延出部106とツマミ部304の長手方向とを合わせることにより、ツマミ部304をスリット状延出部106にスムーズに挿入することができる。
【0039】
この状態で、ツマミ部304を手で持って、ピン300全体を回転させて、ツマミ部304の長手方向を取付孔104のスリット状延出部106と直交する方向とすることにより、ツマミ部304が取付孔104に係合して、マット103をカーペット101に固定することができる。このとき、第1フランジ部305の保持片306が第2フランジ部207の周縁を抱え込むように保持すると共に、ピン300の軸部301がグロメット200の円弧状当接面213に当接しているので、ピン300の回転をスムーズに行わせることができる。また、第2フランジ部207の周縁が第3フランジ部208に対してめくれ上がることを抑制できる。更に、保持片306が第2フランジ部207の周縁を抱き込むため、ピン300の回転時のガイドにもなる。
【0040】
なお、マット103の取付孔104に、もう一つのグロメットを取付けておき、ピン300のツマミ部304が、そのグロメットに形成された取付孔に係合するようにしてもよい。本発明において、「マットの取付孔」とは、マットに直接形成された取付孔に限らず、マットに取付けられたグロメットに形成された取付孔も含む意味である。
【0041】
また、第3フランジ部208は、第2フランジ部207よりも外径が大きくされているので、ピン300を回転させる際、カーペット101の表面のケバが、第2フランジ部207と保持片306との隙間に挟み込まれることが抑制され、スムーズな回転を維持することができる。
【0042】
なお、ピン300の回転位置は、ピン300の第1フランジ部305裏面の位置決め凸部307を、グロメット200の第2フランジ部207表面の位置決め溝209に係合させることにより、所定の位置でクリック感を伴って停止できるので、頭部302のツマミ部304の長手方向が、カーペット101の取付孔104のスリット状延出部106の方向に対して直交する位置で停止させて、その位置に保持させることができる。
【0043】
このように、本発明によれば、カーペット101の表面側から、マット用留め具100のグロメット200の係止脚片203をマット固定用孔102に挿入し、その状態で、ピン300の軸部301を押し込むだけで、マット用留め具100をカーペット101に固定できるので、カーペット101の裏面側からの作業が必要でなく、取付作業性を良好にすることができる。また、マット用留め具100は、グロメット200とピン300との2部品で構成できるので、部品点数を軽減して製造コストを低減できると共に、組立作業性や取り扱い性を向上させることができる。
【0044】
また、図9に示す状態で、乗員がマット103上に乗ると、ピン300の第1フランジ部305に面圧がかかるので、ピン300が回転しにくくなり、ピン300が不用意に回転して、ツマミ部304が図1のスリット状延出部106と平行になって、取付孔104から抜けてしまうことを防止できる。また、第1フランジ部305を設けることにより、ピン300の押し込み位置を規制できる。
【符号の説明】
【0045】
100 マット用留め具
101 カーペット
102 マット固定用孔
103 マット
104 取付孔
105 中央部
106 スリット状延出部
200 グロメット
201 基部
202 ピン挿通孔
203 係止脚片
204 枠状部
205 柱状ガイド
206 フランジ状延出部
207 第2フランジ部
208 第3フランジ部
209 位置決め溝
210 第1係合片
211 ヒンジ部
212 基端部
213 円弧状当接面
214 第2係合溝
215 食い込み凸部
216 押し込み凸部
300 ピン
301 軸部
302 頭部
303 柄部
304 ツマミ部
305 第1フランジ部
306 保持片
307 位置決め凸部
308 仮止用係合溝
309 第1係合溝
310 第2係合凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9