(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化炭素の吸着材を用いて二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を分離するとともに、二酸化炭素吸着後の前記吸着材を再生する二酸化炭素分離回収システムであって、
所定の吸着温度の前記吸着材で前記被処理ガス中の二酸化炭素を吸着し、二酸化炭素が除去された前記被処理ガスを排出する吸着塔と、
二酸化炭素を吸着した前記吸着材に脱着用水蒸気を凝縮させることにより前記吸着材から二酸化炭素を脱着させる再生塔と、
湿球温度が前記吸着温度である乾燥用ガスで二酸化炭素を脱着した前記吸着材に含まれる凝縮水を水蒸気として蒸発させることにより、含水率が限界含水率又はそれ以上の所定値となるまで前記吸着材を乾燥させる乾燥塔と、
前記乾燥塔から排出された前記吸着材を前記吸着塔へ移送する移送手段とを備える、
二酸化炭素分離回収システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1に記載のCO
2回収プラントの再生塔では、シェルアンドチューブ構造による接触伝熱方式が採用されている。即ち、再生塔のシェル側に吸着剤が導入され、同じくチューブ側に過熱水蒸気が導入されることにより、間接加熱方式で吸着剤の温度を上昇させている。しかし、過熱水蒸気から得られる顕熱は小さく、また、再生塔から流出する水蒸気の潜熱は利用されずに捨てられている。吸着剤であるゼオライトは、温度が高いほどCO
2吸着量が低減する。ところが、再生後の吸着剤は高温(例えば、140℃)となっているため、吸着剤を所定の吸着温度(例えば、40℃)まで冷却して吸着性能を回復せねばならない。このため、再生塔の下流には吸着剤を冷却するための貯槽と冷却塔が必要である。以上のように、従来のCO
2回収プラントには省エネルギー化の余地が残されており、CO
2回収技術を実用化するためには、CO
2回収のために投入されるエネルギーの更なる削減が望まれる。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、固体吸着剤を含む吸着材を用いて排ガス中のCO
2を選択的に分離してCO
2を回収する二酸化炭素分離回収システムにおいて、CO
2回収と吸着材再生のために投入されるエネルギーの更なる削減を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、二酸化炭素分離回収システムを開発するにあたって、吸着材からCO
2を脱着させるために、吸着材を間接加熱するのではなく、吸着材と水蒸気とを直接的に接触させる直接加熱方式を採用することとした。この方式を採用することにより、CO
2の脱着で水蒸気の潜熱をエネルギーとして利用することができる。水蒸気の潜熱は、水蒸気の顕熱と比較して同量の水分から得られるエネルギーが大きく、吸着材からCO
2を脱着させるために必要な水分量を低減することができる。また、再生塔から水蒸気が排出されないので、従来のように、利用されずに捨てられていた水蒸気エネルギーのロスを抑制することができる。さらに、CO
2濃度を上昇させるための濃縮塔が不要になり、設備コストを削減することができる。
【0010】
以上のように、二酸化炭素分離回収システムが吸着材と水蒸気とを直接的に接触させる方式の再生塔を備える場合、再生塔から排出された吸着材には凝縮水が付着しているので、この凝縮水を蒸発させるために、再生塔の下流に乾燥塔が必要となる。従来の一般的な乾燥塔は、乾燥空気を材料に吹き付けることにより材料を乾燥させるように構成されている。この一般的な乾燥塔を二酸化炭素分離回収システムに採用する場合、乾燥塔から排出された吸着材は乾燥に伴い温度上昇しているので、吸着塔でのCO
2吸着に適した吸着温度まで冷却するために、乾燥塔の下流に冷却塔が必要となる。
【0011】
ところで、以下に示す乾燥に関する基礎的事項が知られている。
図10の平均含水率と材料温度の経時変化を示すグラフに示されるように、十分に湿った材料を定常条件下で乾燥すると、材料予熱期間I、定率乾燥期間II及び減率乾燥期間IIIの3期間が存在する。定率乾燥期間II中は、自由水面からの蒸発が起こり、材料の水分量が減少する。定率乾燥期間II中は、材料への流入熱量はすべて水分蒸発に費やされるため、材料温度はほぼ一定であって、熱風乾燥の場合には材料の温度は接する熱風の湿球温度に一致する。減率乾燥期間III中は、材料内部での水分の蒸発と材料表面までの水分の移動が起こり、材料の水分量の減少が緩慢となる。減率乾燥期間IIIに入ると材料温度は上昇し、材料内部に温度分布を生じる。
【0012】
発明者らは、上記乾燥に関する基礎的事項に基づき、次に示す知見に至った。即ち、乾燥塔において、所定温度の乾燥用ガスで吸着材を熱風乾燥し、吸着材の乾燥の程度が減率乾燥期間IIIに入る前に、即ち、吸着材の含水率が限界含水率w
c以上で乾燥を終了すれば、吸着材の温度をCO
2吸着に適した吸着温度又はその近傍まで冷却することができる。つまり、乾燥塔の下流に冷却塔が不要となり、また、乾燥塔から排出された吸着材をそのまま吸着塔へ搬入することができるので貯槽が不要となる。発明者らは以上の知見に基づき、本発明を考案した。
【0013】
本発明の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、二酸化炭素の吸着材を用いて二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を分離するとともに、二酸化炭素吸着後の前記吸着材を再生する二酸化炭素分離回収システムであって、
所定の吸着温度の前記吸着材で前記被処理ガス中の二酸化炭素を吸着し、二酸化炭素が除去された前記被処理ガスを排出する吸着塔と、
二酸化炭素を吸着した前記吸着材に脱着用水蒸気を凝縮させることにより前記吸着材から二酸化炭素を脱着させる再生塔と、
湿球温度が前記吸着温度である乾燥用ガスで二酸化炭素を脱着した前記吸着材に含まれる凝縮水を水蒸気として蒸発させることにより、含水率が限界含水率又はそれ以上の所定値となるまで前記吸着材を乾燥させる乾燥塔と
、
前記乾燥塔から排出された前記吸着材を前記吸着塔へ移送する移送手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の別の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、二酸化炭素の吸着材を用いて二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を分離するとともに、二酸化炭素吸着後の前記吸着材を再生する二酸化炭素分離回収システムであって、
所定の吸着温度の前記吸着材で前記被処理ガス中の二酸化炭素を吸着し、二酸化炭素が除去された前記被処理ガスを排出する吸着塔と、
二酸化炭素を吸着した前記吸着材に脱着用水蒸気を凝縮させることにより前記吸着材から二酸化炭素を脱着させる再生塔と、
湿球温度が前記吸着温度である乾燥用ガスで二酸化炭素を脱着した前記吸着材に含まれる凝縮水を水蒸気として蒸発させることにより、前記吸着材の温度が低下し、ほぼ一定となったあと、前記吸着材の温度が上昇する前まで前記吸着材を乾燥させる乾燥塔と、
前記乾燥塔から排出された前記吸着材を前記吸着塔へ移送する移送手段とを備えることを特徴としている。
【0015】
上記二酸化炭素分離回収システムによれば、再生塔でCO
2が脱着されたあとの吸着材は、脱着のための水蒸気の温度近傍まで温度上昇している。この吸着材を乾燥塔で乾燥用ガスと接触させると、吸着材に付着している水分の蒸発に伴って吸着材から熱が奪われて、吸着材の温度は乾燥用ガスの湿球温度である吸着温度まで低下する。吸着温度の吸着材は、乾燥塔から排出されて吸着塔でCO
2の吸着に利用される。上記システムでは、乾燥塔で乾燥した後の吸着材が吸着温度であることから、吸着材を吸着温度まで冷却するための設備(例えば、冷却塔)が不要となり、乾燥塔から排出された吸着材をそのまま吸着塔へ搬入することができるので吸着材の貯蔵設備が不要となる。よって、CO
2回収と吸着材再生のための設備コストやその設備の運転エネルギーの削減が可能であり、CO
2回収と吸着材再生のために投入されるエネルギーの更なる削減を実現できる。
【0016】
また、本発明の別の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、二酸化炭素の吸着材を用いて二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を分離するとともに、二酸化炭素吸着後の前記吸着材を再生する二酸化炭素分離回収システムであって、
二酸化炭素を吸着した前記吸着材と脱着用水蒸気とにより移動層が形成され、前記吸着材に前記脱着用水蒸気を凝縮させることにより前記吸着材から二酸化炭素を脱着させる第1の塔と、
前記第1の塔から排出された前記吸着材と前記被処理ガスとにより移動層が形成され、前記吸着材を前記被処理ガスと接触させて前記被処理ガス中の二酸化炭素を当該吸着材に吸着させ、前記吸着材を乾燥用ガスとしての前記被処理ガスと接触させて前記吸着材に凝縮した水蒸気を蒸発させ、含水率が限界含水率又はそれ以上の所定値となった前記吸着材を排出する第2の塔と、
前記第2の塔から前記第1の塔へ、前記吸着材を移送する移送手段とを備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の別の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、二酸化炭素の吸着材を用いて二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を分離するとともに、二酸化炭素吸着後の前記吸着材を再生する二酸化炭素分離回収システムであって、
二酸化炭素を吸着した前記吸着材と脱着用水蒸気とにより移動層が形成され、前記吸着材に前記脱着用水蒸気を凝縮させることにより前記吸着材から二酸化炭素を脱着させる第1の塔と、
前記第1の塔から排出された前記吸着材と前記被処理ガスとにより移動層が形成され、前記吸着材を前記被処理ガスと接触させて前記被処理ガス中の二酸化炭素を当該吸着材に吸着させ、前記吸着材を乾燥用ガスとしての前記被処理ガスと接触させて前記吸着材に凝縮した水蒸気を蒸発させ、前記吸着材の温度が低下し、ほぼ一定となったあと、前記吸着材の温度が上昇する前の前記吸着材を排出する第2の塔と、
前記第2の塔から前記第1の塔へ、前記吸着材を移送する移送手段とを備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、二酸化炭素分離回収システムが再生塔と、吸着塔と乾燥塔の機能を併せ備えた塔の2つの塔を備えることとなる。設備が簡略化されるので、イニシャルコストやランニングコストや運転エネルギーを削減することができる。
【0019】
本発明
の一態様に係る二酸化炭素分離回収方法は、
吸着容器内で、所定の吸着温度の二酸化炭素の吸着材に、二酸化炭素を含有する被処理ガス中の二酸化炭素を吸着させることと、
前記吸着材を脱着用水蒸気と接触させて前記吸着材に前記脱着用水蒸気を凝縮させることにより、前記吸着材から二酸化炭素を脱着させることと、
湿球温度が前記吸着温度である乾燥用ガスを
乾燥容器内で前記吸着材と接触させて前記吸着材に含まれる凝縮水を水蒸気として蒸発させることにより、前記吸着材の含水率が限界含水率又はそれ以上の所定値となるまで乾燥
した吸着材を前記乾燥容器から排出して前記吸着容器へ搬送することとを含むものである。
【0020】
また、本発明の別の一態様に係る二酸化炭素分離回収方法は、吸着容器内で、所定の吸着温度の二酸化炭素の吸着材に、二酸化炭素を含有する被処理ガス中の二酸化炭素を吸着させることと、
前記吸着材を脱着用水蒸気と接触させて前記吸着材に前記脱着用水蒸気を凝縮させることにより、前記吸着材から二酸化炭素を脱着させることと、
二酸化炭素が脱着した前記吸着材を乾燥容器内で湿球温度が前記吸着温度である乾燥用ガスと接触させることにより、前記吸着材の温度が低下し、ほぼ一定となったあと、前記吸着材の温度が上昇する前まで乾燥した前記吸着材を前記乾燥容器から排出して前記吸着容器へ搬送することとを含むものである。
【0021】
上記二酸化炭素分離回収方法によれば、CO
2が脱着されたあとの吸着材は、脱着のための水蒸気の温度近傍まで温度上昇している。この吸着材を乾燥用ガスと接触させると、吸着材に付着している水分の蒸発に伴って吸着材から熱が奪われて、吸着材の温度は低下する。したがって、吸着材を冷却するための設備(例えば、冷却塔)が不要となり、乾燥後の吸着材をそのままCO
2吸着に供することができるので吸着材の貯蔵設備が不要となる。よって、CO
2回収と吸着材再生のための設備コストやその設備の運転エネルギーの削減が可能であり、CO
2回収と吸着材再生のために投入されるエネルギーの更なる削減を実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乾燥後の吸着材を冷却するための設備が不要となり、そのための設備コストやその設備の運転エネルギーの削減が可能である。よって、CO
2回収のために投入されるエネルギーの更なる削減を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る二酸化炭素分離回収システムは、燃焼排ガス等の被処理ガスに含まれる二酸化炭素(CO
2)の回収と、CO
2回収に使用された吸着材の再生とを行うシステムである。より詳細には、二酸化炭素分離回収システムでは、被処理ガス中のCO
2を固形二酸化炭素吸着材(以下、単に吸着材という)に吸着させることと、CO
2を吸着したあとの吸着材からCO
2を脱着して吸着材を再生することと、吸着材から脱着されたCO
2を回収することと、再生された吸着材を乾燥することとが行われる。
【0025】
本発明において使用される吸着材を構成している固体吸着剤は、多孔性物質にアミン化合物を担持させることにより調製し得る。二酸化炭素吸着剤の調製に使用し得る多孔性物質としては、シリカゲル、活性炭、活性アルミナ、金属酸化物などを例示することができる。
【0026】
[第1実施形態]
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム100の概略構成を示す図である。
図1に示すように、二酸化炭素分離回収システム100には、吸着材を移動層とする移動層式の吸着塔2、再生塔3及び乾燥塔4、並びにコンベア5が備えられている。本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム100はセメントプラントに併設されており、セメントプラントのプレヒータボイラから排出される石炭燃焼排ガスを被処理ガスとしている。
【0027】
吸着塔2には、入口22と出口23を有する吸着容器21、被処理ガス供給口24、及びオフガス排出口25が少なくとも備えられている。吸着塔2では、コンベア5によって搬送される吸着材を受容することと、吸着材に被処理ガス中のCO
2を吸着させることと、CO
2が除去された被処理ガス(オフガス)を排出することと、CO
2を吸着した吸着材を排出することとが行われる。
【0028】
吸着容器21には、上から下へ移動する移動層を形成している吸着材が収容されている。吸着容器21の入口22は、塔頂部に設けられており、ここから吸着容器21へコンベア5によって所定の速度で吸着材が供給される。吸着容器21の出口23は、塔底部に設けられており、ここからCO
2を吸着した吸着材が排出される。被処理ガス供給口24は、塔下部に設けられており、ここから吸着容器21へ被処理ガスが供給される。被処理ガス供給口24はガス供給路11と接続されており、ガス供給路11を通じて被処理ガス源10から吸着塔2へ被処理ガスが送られる。ガス供給路11には、被処理ガスを所定温度(Tg[℃])まで冷却する冷却塔8が設けられている。上記ガス供給路11、被処理ガス源10及び冷却塔8等により、吸着塔2へ被処理ガスを供給する被処理ガス供給手段が構成されている。被処理ガスは、その成分や温度に応じた脱硫、脱塵、冷却、除湿などの前処理が吸着塔2へ導入される前に行われていることが望ましい。オフガス排出口25は、塔上部に設けられており、ここから系外へ被処理ガスからCO
2が除去されたオフガス(CO
2フリーガス)が排出される。なお、オフガス排出口25から排出されるオフガスの組成によっては、オフガス排出口25にフィルタ等の浄化手段が備えられていてもよい。
【0029】
再生塔3は、吸着塔2の直ぐ下方に設けられている。再生塔3には、入口32と出口33を有する再生容器31、水蒸気供給口34、及び二酸化炭素排出口35が少なくとも備えられている。再生塔3では、吸着塔2から排出された吸着材を受容することと、吸着材に脱着用水蒸気を凝縮させることにより吸着材からCO
2を脱着させることと、脱着させたCO
2を排出することと、CO
2の脱着により再生された吸着材を排出することとが行われる。
【0030】
再生容器31には、吸着塔2から排出された吸着材が収容されており、この吸着材により再生容器31内を上から下へ移動する移動層が形成されている。再生容器31では、供給された脱着用水蒸気を吸着材に凝縮させることにより、吸着材からCO
2が脱着し、吸着材が再生される。再生容器31の入口32は、塔頂部に設けられており、ここから再生容器31へ吸着塔2でCO
2を吸着した吸着材が投入される。再生容器31の出口33は、塔底部に設けられており、ここから再生された吸着材が排出される。水蒸気供給口34は、塔下部に設けられており、ここから再生容器31へ脱着用水蒸気が供給される。水蒸気供給口34は水蒸気供給路36と接続されており、水蒸気供給路36を通じて蒸気発生器9から再生塔3へ脱着用水蒸気が送られる。水蒸気供給路36には脱着用水蒸気の流量を検出する流量計56が設けられている。上記水蒸気供給路36及び蒸気発生器9等により、再生塔3へ脱着用水蒸気を供給する水蒸気供給手段が構成されている。二酸化炭素排出口35は、塔上部に設けられており、ここから系外へ吸着材から脱着されたCO
2が排出される。二酸化炭素排出口35は、二酸化炭素回収路37を介して二酸化炭素ホルダー7と接続されている。二酸化炭素回収路37に回収ポンプ6が設けられており、この回収ポンプ6で圧縮されたCO
2が二酸化炭素ホルダー7に回収されて貯溜される。上記二酸化炭素回収路37、回収ポンプ6及び二酸化炭素ホルダー7等により、再生塔3で吸着材から脱着したCO
2を回収するCO
2回収手段が構成されている。
【0031】
乾燥塔4は、再生塔3の直ぐ下方に設けられている。乾燥塔4には、入口42及び出口43を有する乾燥容器41、乾燥用ガス供給口44、及び高湿度排気ガス出口45が少なくとも備えられている。乾燥塔4では、再生塔3から排出された吸着材を受容することと、乾燥用ガスで吸着材に含まれる凝縮水を水蒸気として蒸発させることにより、含水率が限界含水率又はそれ以上の所定値となるまで吸着材を乾燥させることと、吸着材を乾燥することにより発生する水蒸気を含む排気ガスを排出することと、乾燥した吸着材を排出することとが行われる。
【0032】
乾燥容器41には、再生塔3から排出された吸着材が収容されており、この吸着材により乾燥容器41内を上から下へ移動する移動層が形成されている。乾燥容器41の入口42は、塔頂部に設けられており、ここから乾燥容器41へ再生塔3で再生された吸着材が投入される。乾燥容器41の出口43は、塔底部に設けられており、ここから乾燥した吸着材が排出される。乾燥塔4から排出された吸着材は、移送手段であるコンベア5により吸着塔2の入口22へ搬送される。高湿度排気ガス出口45は、塔上部に設けられており、ここから水蒸気排出路49を通じて系外へ排出ガスが排出される。排出ガスは、再生容器31から吸着材に同伴していた水蒸気や乾燥容器41で発生した水蒸気を多く含んでいる。なお、水蒸気排出路49を再生塔3の水蒸気供給口34と接続して、乾燥塔4の排出ガスを再生塔3の脱着用水蒸気として用いることもできる。この場合、蒸気発生器9が不要となるとともに、脱着用水蒸気が再生塔3と乾燥塔4とを循環するので、ロスする少量の純水を補充するだけで、吸着材によるCO
2の吸着と脱着とを継続することができる。
【0033】
乾燥用ガス供給口44は、塔下部に設けられており、ここから乾燥容器41へ乾燥用ガスが供給される。乾燥用ガス供給口44と乾燥用ガス供給路46が接続されており、この乾燥用ガス供給路46を通じて乾燥用ガス源47から乾燥塔4へ乾燥用ガスが送られる。本実施形態において乾燥用ガス源47はセメントプラントのエアクエンチングクーラーであって、エアクエンチングクーラーでクリンカと熱交換した高温の乾燥空気が乾燥用ガスとして利用される。エアクエンチングクーラーから排出される高温の乾燥空気は、乾燥塔4の乾燥用ガスが備えるべき温度と比較して低温であるため、高温の乾燥空気を所定温度(Td[℃])まで加熱するバーナーが乾燥用ガス供給路46に設けられている。さらに、乾燥用ガス供給路46には、流量調整器48が設けられている。流量調整器48は、乾燥容器41へ供給される乾燥用ガスの流量を調整することができる。上記乾燥用ガス供給路46、乾燥用ガス源47及び流量調整器48等により、乾燥塔4へ乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給手段が構成されている。
【0034】
乾燥塔4には、温度計51、含水率計52、及び水分量計53の少なくとも1つ、並びに乾燥塔制御装置55が更に備えられている。温度計51は、そのプローブが乾燥容器41の出口43近傍に設置され、出口43から排出されようとする吸着材の温度を検出する。なお、温度計51のプローブを出口43近傍の複数箇所に設けて、温度計51が吸着材の平均温度を検出するようにしてもよい。含水率計52は、そのプローブが乾燥容器41の出口43近傍に設置され、出口43から排出されようとする吸着材の含水率を検出する。なお、含水率計52のプローブを出口43近傍の複数箇所に設けて、含水率計52が吸着材の平均含水率を検出するようにしてもよい。水分量計53は、高湿度排気ガス出口45又はこれに接続された水蒸気排出路49に設けられている。水分量計53は、高湿度排気ガス出口45から排出される排気ガス中の水分量を検出する。
【0035】
乾燥塔制御装置55は、1以上のプロセッサ(図示せず)で構成されている。プロセッサは、1以上のCPU(Central Processing Unit)の他、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、I/O(Input/output Port)等を有している(いずれも図示せず)。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。CPUが実行するプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカード等の各種記憶媒体に保存されており、これらの記憶媒体からROMにインストールされる。RAMには、プログラム実行時に必要なデータが一時的に記憶される。I/Fは、外部装置(乾燥塔制御装置55に接続されたパーソナルコンピュータ等)とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサからの検出信号の入力/出力を行う。プロセッサでは、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとCPU等のハードウェアとが協働することにより、乾燥塔制御装置55としての機能を実現する処理が行われる。
【0036】
図2は乾燥塔の制御構成を示す図である。
図2に示すように、乾燥塔制御装置55は、乾燥用ガス源47と電気的に接続されており、乾燥塔4へ供給される乾燥用ガスの温度が所望の温度(Td[℃])となるように乾燥用ガス源47を制御する。なお、本実施形態では、乾燥塔4へ供給される乾燥用ガスの温度を調整するために、エアクエンチングクーラーから排出される高温空気を加熱するバーナーの火力が乾燥塔制御装置55により制御される。また、乾燥塔制御装置55は、流量調整器48と電気的に接続されており、乾燥塔4へ供給される乾燥用ガスの流量が所望の流量となるように流量調整器48を制御する。さらに、乾燥塔制御装置55は、コンベア5と電気的に接続されており、吸着材(移動層)の乾燥塔4での滞留時間が所望の時間となるようにコンベア5を制御する。なお、本実施形態では、吸着塔2、再生塔3及び乾燥塔4が直列的に接続されているので、吸着塔2への吸着材の供給量を増減することにより、乾燥塔4への吸着材の供給量を増減することができる。そして、乾燥塔4への吸着材の供給量を増減して、吸着材(移動層)の移動速度を変化させることにより、吸着材の乾燥塔4での滞留時間を調整することができる。
【0037】
乾燥塔制御装置55には、温度計51、含水率計52、水分量計53及び流量計56の各計器からの検出信号が入力される。そして、乾燥塔制御装置55は、温度計51、含水率計52及び水分量計53の少なくとも1の計測結果に基づいて、乾燥塔4から排出される吸着材の含水率が限界含水率又はそれ以上の所定の値となるように、乾燥用ガスの流量、乾燥用ガスの温度及び吸着材の乾燥塔4での滞留時間のうち少なくとも1つを調整する。
【0038】
続いて、上記構成の二酸化炭素分離回収システム100による二酸化炭素分離回収方法について説明する。
【0039】
吸着塔2には、CO
2吸着に好適な温度(以下、吸着温度Taという)の吸着材が所定の供給速度で供給されている。吸着温度Taは20−80℃が好適であって、本実施形態ではTa=約40[℃]である。吸着材が充填された吸着塔2へ、10−30%のCO
2を含む常圧近傍の被処理ガスが所定の供給速度で供給される。吸着塔2へ導入される被処理ガスは、冷却塔8で温度Tg=約35[℃]まで冷却されている。移動層である吸着材は、吸着容器21を上から下へ所定の移動速度で自重により流動し、この間に被処理ガスと接触して被処理ガス中のCO
2を吸着し、出口23から排出されて再生塔3へ送られる。被処理ガスの供給速度及び吸着材の移動速度は、吸着塔2での滞留時間内にCO
2の吸着が完了するように、また、後述するように、再生塔3での滞留時間内に吸着材の再生が完了し、且つ、乾燥塔4での滞留時間内に吸着材の乾燥が完了するように定められる。
【0040】
再生塔3には、温度がTs[℃]で圧力がPs[kPa]の脱着用水蒸気が供給されている。温度Tsは40−100[℃]が、温度Tsに対応する圧力Psは7−101[kPa]が、それぞれ好適である。本実施形態の脱着用水蒸気は、温度Ts=約60[℃]、圧力Ps=約20[kPa]の飽和水蒸気である。このため、再生塔3内の圧力が回収ポンプ6によって約20[kPa]に調整されている。移動層である吸着材は、再生容器31を上から下へ所定の移動速度で自重により流動し、この間に脱着用水蒸気と接触する。吸着材と接触した脱着用水蒸気は吸着材の表面で凝縮し、この際に生じる脱着用水蒸気の凝縮熱がCO
2脱着のエネルギーとして利用される。このような脱着用水蒸気の凝縮によるCO
2の脱着は短時間で完了し、定常状態で再生塔3はほぼ100%のCO
2で満たされる。吸着材から脱着されたCO
2は、再生塔3から排出され、回収ポンプ6により圧縮され、二酸化炭素ホルダー7に貯留される。一方、CO
2が脱着されて再生された吸着材は、再生塔3から排出されて乾燥塔4へ送られる。再生塔3で再生された吸着材は、脱着用水蒸気の凝縮水を含んでいる。
【0041】
乾燥塔4には、温度がTd[℃]の乾燥用ガスが所定の供給速度で供給されている。温度Tdは40−120[℃]が好適であり、本実施形態ではTd=約80[℃]である。移動層である吸着材は、乾燥容器41を上から下へ所定の移動速度で自重により流動し、この間に乾燥用ガスと接触する。乾燥用ガスと接触した吸着材に含まれている凝縮水は蒸発して水蒸気となり、この水蒸気を含む排気ガスが高湿度排気ガス出口45から系外へ排出される。一方、凝縮水の蒸発により乾燥した吸着材は、出口43から排出され、コンベア5により吸着塔2へ移送され、吸着塔2で再びCO
2を吸着する。
【0042】
上記吸着材の乾燥工程において、吸着材は、定率乾燥期間IIの間であって、その含水率(又は平均含水率)が限界含水率w
c(
図10)又はそれ以上の所定の値となるまで乾燥した状態で乾燥塔4から排出される。吸着材の含水率は、湿っている吸着材の全体の重量に対する、水分の重量の比として表わすことができる。湿っている吸着材の全体の重量をW[kg]とし、吸着材の乾燥固体重量をW
0[kg]とすると、乾量基準の含水率wは次式(1)で表される。
w=(W−W
0)/W
0 ・・・(1)
また、限界含水率w
cは、定率乾燥期間IIから減率乾燥期間IIIに移行するときの含水率である。限界含水率w
cは、吸着材の特性に加えて、加熱方式などの外的操作条件によっても変化する。なお、上記「限界含水率w
c以上の所定の値」とは、
図10に示すように、限界含水率w
cから当該限界含水率w
cに所定の許容値α
Wを加えた値(w
c+α
W)までの範囲に含まれる値である。許容値α
Wは、限界含水率w
cに対して安定性や誤差等を見込んで予め定められた値であって、実験的に又は理論的に求められる。
【0043】
図3は、吸着材温度と乾燥時間の関係を示すグラフである。
図3に示すように、乾燥塔4で乾燥開始当初の吸着材の温度は、再生塔3へ供給される脱着用水蒸気の温度Ts(本実施例では、約60℃)近傍である。吸着材の乾燥が進むにつれて、吸着材に付着している水分の蒸発に伴い吸着材から熱が奪われるので、吸着材の温度は乾燥用ガスの湿球温度まで下がり(予熱期間I)、やがて一定となる(定率乾燥期間II)。定率乾燥期間IIにおいて、吸着材の含水率が限界含水率w
cに低下するまでの間は、吸着材へ与えられた熱量は全て水分蒸発に費やされるので、吸着材の温度は乾燥用ガスの湿球温度でほぼ一定である。乾燥塔4では、定率乾燥期間II中に、即ち、減率乾燥期間IIIに入って温度が再び上昇する前に、適正な含水率(限界含水率w
c又はそれ以上の所定の値)で吸着材が排出される。乾燥用ガスは、その湿球温度が吸着温度Ta(本実施形態では約40℃)となるように被処理ガス源10を含む被処理ガス供給手段によって温度及び湿度が調整されており、乾燥塔4から排出される乾燥した吸着材の温度は吸着温度Taとなる。
【0044】
ここで、乾燥塔制御装置55による、乾燥塔4の乾燥条件を調整するための制御について説明する。以下では、〔1〕吸着材の温度に基づく制御、〔2〕吸着材の含水率に基づく制御、〔3〕乾燥塔4から排出される水蒸気中の水分量に基づく制御の、それぞれに分けて説明する。乾燥塔制御装置55は、基本的にはこれら〔1〕−〔3〕の制御のうちいずれか一つの制御を行うように構成されている。採用された制御に必要のない計器は、二酸化炭素分離回収システム100から省くことができる。但し、乾燥塔制御装置55が、〔1〕−〔3〕の制御の2つ以上の組み合わせで乾燥塔4を制御するように構成されていてもよい。
【0045】
〔1〕吸着材の温度に基づく制御
乾燥塔制御装置55は、乾燥塔4の出口近傍の吸着材の温度(又は平均温度)が所定温度、つまり吸着材の限界含水率w
cに対応する温度T
c(
図10)となるように、乾燥塔4の乾燥条件を調整する。乾燥塔4の出口近傍の吸着材の温度は、温度計51で検出される。限界含水率w
cに対応する温度T
cは、乾燥用ガスの湿球温度(吸着温度Ta)である。吸着材の温度に基づいて吸着材の含水率を推定する場合、吸着材の温度が限界含水率w
cに対応する温度T
cとなっていても、吸着材の含水率が限界含水率w
cまで低下していないことがある。つまり、吸着材の含水率が限界含水率w
cよりも高いまま乾燥塔4から排出されることがある。しかし、吸着材は多孔質材料から成り、多孔質材料は定率乾燥期間IIが短い特徴を有することが知られている。よって、吸着材の温度を限界含水率w
cに対応する温度T
cまで低下させることで、吸着材は適正な範囲の含水率で乾燥塔4から排出されることとなる。
【0046】
乾燥塔制御装置55が制御する乾燥条件は、乾燥用ガスの流量、乾燥用ガスの温度及び吸着材の乾燥塔4での滞留時間の乾燥条件のうち少なくとも一つである。これらの乾燥条件のうちの一つが制御されてもよいが、2つ以上の組み合わせが制御されることにより、より効率的に乾燥塔4の乾燥条件を吸着材の乾燥に適するように調整することができる。
【0047】
乾燥用ガスの流量は、乾燥用ガス供給路46に設けられた流量調整器48で調整することができる。流量調整器48は、例えば、乾燥塔制御装置55の制御を受けて動作するバルブ、ポンプ及びファンなどの流量調整手段のうちの一つである。
図3に示すように、吸着材の温度は、予熱期間Iで徐々に低下し、定率乾燥期間IIで限界含水率w
cに対応する温度T
cでほぼ一定となる。仮に、吸着材を限界含水率w
cよりも低い含水率まで乾燥させると、減率乾燥期間IIIに入り吸着材の温度が上昇する。乾燥塔制御装置55は、吸着材の温度が限界含水率w
cに対応する温度T
cとなったあと上昇する前に、吸着材が乾燥塔4から排出されるように乾燥条件を制御する。具体的には、乾燥塔制御装置55は、限界含水率w
cに対応する温度T
cよりも高い吸着材の温度が検出されたときは、予熱期間Iであれば乾燥用ガスの流量を増加させ、減率乾燥期間IIIであれば乾燥用ガス流量を低減させるように、流量調整器48を制御する。
【0048】
乾燥用ガスの温度は、乾燥用ガス源47で乾燥用ガスの加熱温度を変化させることによって、調整することができる。乾燥塔制御装置55は、限界含水率w
cに対応する温度T
cよりも高い吸着材の温度が検出されたときは、予熱期間Iであれば乾燥用ガスの温度を上昇させ、減率乾燥期間IIIであれば乾燥用ガスの温度を低下させるように、乾燥用ガス源47を制御する。
【0049】
吸着材の乾燥塔4での滞留時間は、コンベア5による吸着塔2への吸着材の供給速度を変化させることによって、調整することができる。なお、吸着材の乾燥塔4での滞留時間は、出口43にバルブを設けて当該バルブの開度を調整して乾燥塔4からの吸着材の排出速度を変化させることによって、調整することもできる。乾燥塔制御装置55は、限界含水率w
cに対応する温度T
cよりも高い吸着材の温度が検出されたときは、予熱期間Iであれば移動層の移動速度を低下させて吸着材の滞留時間を長くし、減率乾燥期間IIIであれば移動層の移動速度を増大させて吸着材の滞留時間を短くするように、コンベア5を制御する。
【0050】
〔2〕吸着材の含水率に基づく制御
乾燥塔制御装置55は、含水率計52で計測された吸着材の含水率(又は平均含水率)が限界含水率w
c(
図10)又はそれ以上の所定の値となると吸着材が乾燥塔4から排出されるように、乾燥塔4の乾燥条件を制御する。ここで、「限界含水率w
c以上の所定の値」とは、
図10に示すように、限界含水率w
cから当該限界含水率w
cに所定の許容値α
Wを加えた値(w
c+α
W)までの範囲に含まれる値である。
【0051】
乾燥塔制御装置55が制御する乾燥条件は、乾燥用ガスの流量、乾燥用ガスの温度及び吸着材の乾燥塔4での滞留時間の乾燥条件のうち少なくとも一つである。乾燥塔制御装置55は、限界含水率w
c又はそれ以上の所定の値と比較して、高い含水率が検出されたときは乾燥用ガスの流量を増加させ、低い吸着材の含水率が検出されたときは乾燥用ガス流量を低減させるように、流量調整器48を制御する。また、乾燥塔制御装置55は、限界含水率w
c又はそれ以上の所定の値と比較して、高い含水率が検出されたときは乾燥用ガスの温度を上昇させ、低い含水率が検出されたときは乾燥用ガスの温度を降下させるように、乾燥用ガス源47を制御する。また、乾燥塔制御装置55は、限界含水率w
c又はそれ以上の所定の値と比較して、高い含水率が検出されたときは移動層の移動速度を低下させて吸着材の滞留時間を長くし、低い含水率が検出されたときは移動層の移動速度を増大させて吸着材の滞留時間を短くするように、コンベア5を制御する。
【0052】
〔3〕乾燥塔4から排出される水蒸気中の水分量に基づく制御
乾燥塔制御装置55は、乾燥塔4からの排出ガスに含まれる水蒸気中の水分量が再生塔3へ脱着用水蒸気として供給される水分量(再生塔3で吸着材に凝縮した水分量)となるように、乾燥塔4の運転を制御する。再生塔3へ脱着用水蒸気として供給される水分量は、水蒸気供給路36に設けた流量計56で検出された脱着用水蒸気の流量と、蒸気発生器9で生成された脱着用水蒸気の水分量とに基づいて求められる。また、乾燥塔4から排出される排気ガス中の水分量は水分量計53で検出される。水分量計53は、温度センサ、流量センサ、及び湿度センサを少なくとも備えており、これらのセンサの検出値に基づいて乾燥塔4の高湿度排気ガス出口45から排出される水分量を計測している。
【0053】
図4は、二酸化炭素分離回収システム100で出入する水分量を示す図である。
図4に示すように、吸着材に含まれた状態でa[t/hour]の水分量が吸着塔2へ供給されており、脱着用水蒸気としてA[t/hour]の水分量が再生塔3へ供給されていると、それぞれ仮定する。再生塔3で吸着材に脱着用水蒸気が凝縮するので、再生塔3から排出されて乾燥塔4へ導入される水分量は(a+A)[t/hour]である。吸着塔2へ供給される吸着材と乾燥塔4から排出される吸着材の含水率はいずれも限界含水率又はそれ以上の所定の値であることから、乾燥塔4から吸着材に含まれた状態で排出される水分量はa[t/hour]である。乾燥塔4から排出ガスとして排出される水分量はA[t/hour]となる。上記仮定に基づけば、乾燥塔4から排出ガスとして排出される水分量をA[t/hour]とすれば、乾燥塔4から限界含水率の吸着材が排出されることとなる。そこで、乾燥塔制御装置55は、水分量計53で検出される水分量が再生塔3へ脱着用水蒸気として供給される水分量となるように、乾燥塔4の乾燥条件を制御する。
【0054】
乾燥塔制御装置55が制御する乾燥条件は、乾燥用ガスの流量、乾燥用ガスの温度及び吸着材の乾燥塔4での滞留時間の乾燥条件のうち少なくとも一つである。乾燥塔制御装置55は、再生塔3へ脱着用水蒸気として供給される水分量と比較して、多い水分量が検出されたときは乾燥用ガスの流量を低減させ、少ない水分量が検出されたときは乾燥用ガス流量を増加させるように、流量調整器48を制御する。また、乾燥塔制御装置55は、再生塔3へ脱着用水蒸気として供給される水分量と比較して、多い水分量が検出されたときは乾燥用ガスの温度を降下させ、少ない水分量が検出されたときは乾燥用ガスの温度を上昇させるように、乾燥用ガス源47を制御する。また、乾燥塔制御装置55は、再生塔3へ脱着用水蒸気として供給される水分量と比較して、多い水分量が検出されたときは移動層の移動速度を増大させて吸着材の滞留時間を短くし、少ない水分量が検出されたときは移動層の移動速度を低下させて吸着材の滞留時間を長くするように、コンベア5を制御する。
【0055】
以上説明した通り、本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム100の再生塔3では、吸着材からCO
2を脱着させるために、吸着材と水蒸気とを直接的に接触させる方式を採用している。この方式を採用することにより、CO
2の脱着で水蒸気の潜熱をエネルギーとして得ることができる。水蒸気の潜熱は、水蒸気の顕熱と比較して同量の水分から得られるエネルギーが大きく、吸着材からCO
2を脱着させるために必要な水分量を低減することができる。また、再生塔から水蒸気が排出されないので、従来のように、利用されずに捨てられていた水蒸気エネルギーのロスを抑制することができる。
【0056】
そして、上記二酸化炭素分離回収システムによれば、再生塔でCO
2が脱着されたあとの吸着材は、脱着用水蒸気の温度近傍まで温度上昇している。この吸着材を乾燥塔4で乾燥用ガスと接触させると、吸着材に付着している水分の蒸発に伴って吸着材から熱が奪われて、吸着材の温度は乾燥用ガスの湿球温度である吸着温度Taまで低下する。吸着温度Taの吸着材は、乾燥塔から排出されて吸着塔でCO
2の吸着に利用される。上記システムでは、乾燥塔4で乾燥した後の吸着材が吸着温度Taであることから、吸着材を吸着温度まで冷却するための設備(例えば、冷却塔)が不要となり、乾燥塔4から排出された吸着材をそのまま吸着塔へ搬入することができるので吸着材の貯蔵設備が不要となる。よって、CO
2回収と吸着材再生のための設備コストやその設備の運転エネルギーの削減が可能であり、CO
2回収と吸着材再生のために投入されるエネルギーの更なる削減を実現できる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図5は、第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101の概略構成を示す図である。
図5に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101の第1実施形態からの相違点は、乾燥用ガス源47が被処理ガス源10である点であり、他は同じ構成である。なお、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101では、乾燥用ガスとして被処理ガスと同じガスを用いている。被処理ガス源10が乾燥用ガス源47でもあり、被処理ガス源10と乾燥塔4の乾燥用ガス供給口44とが乾燥用ガス供給路46で接続されている。本実施形態に係る被処理ガスは石炭燃焼排ガスであり、この石炭燃焼排ガスが乾燥用ガスとして乾燥用ガス供給路46を通じて乾燥塔4へ供給される。
【0059】
石炭燃焼排ガスは、CO
2含有ガスである。再生塔3で再生された吸着材にCO
2含有ガスを接触させると、一部のCO
2が吸着材に吸着され、その際に吸着熱が発生する。この吸着熱の熱量が、乾燥塔4での吸着材の乾燥のために利用される。
図6は、乾燥用ガスとして、乾燥空気と20%のCO
2含有ガスをそれぞれ別に乾燥塔4へ供給した場合の、吸着材からの蒸発水分量と乾燥時間の関係を示すグラフである。このグラフの縦軸は吸着材からの蒸発水分量であり、横軸は乾燥時間である。なお、乾燥空気とCO
2含有ガスの温度と風量はそれぞれ同じである。
図6のグラフからわかるように、乾燥空気を乾燥用ガスとしたときよりも、CO
2含有ガスを乾燥用ガスとしたときの方が、同じ乾燥時間で多くの水分が蒸発している。このことから、CO
2含有ガスを乾燥用ガスとすることにより、乾燥空気を乾燥用ガスとする場合と比較して、早い時間で、また、少ない乾燥用ガスの風量で吸着材を乾燥させることが可能となる。
【0060】
以上の通り、第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101では、乾燥塔4において、被処理ガスに含まれるCO
2が吸着材に吸着されることにより生じる吸着熱の熱量を、吸着材の乾燥のために利用できる。加えて、乾燥用ガスを生成するための機器(ダクトバーナなど)や燃料が不要となる。よって、乾燥用ガスとして乾燥空気を用いる場合と比較して、吸着材を乾燥させるためのエネルギーを削減することができ、乾燥塔4及びその周辺機器(配管など)を小規模化又は削除することができる。また、被処理ガス中の一部のCO
2が乾燥塔4の吸着材に吸着され、残りのCO
2が吸着塔2の吸着材に吸着されることとなる。このため、乾燥用ガスとして乾燥空気を用いる場合と比較して、吸着塔2で吸着すべきCO
2量が減少するので吸着塔2を小規模化することができ、ひいてはシステム全体を小規模化することができる。
【0061】
[変形例1]
次に、上記第2実施形態の変形例1を説明する。
図7は本発明の第2実施形態の変形例1に係る二酸化炭素分離回収システム101Aの概略構成を示す図である。
図7に示すように、変形例1に係る二酸化炭素分離回収システム101Aでは、乾燥塔4の高湿度排気ガス出口45と、吸着塔2の被処理ガス供給口24とが、ガス供給路11で接続されている。そして、ガス供給路11には、冷却塔8が設けられている。上記構成により、乾燥塔4から排出された排気ガスが、冷却塔8で所定の温度Tg[℃]まで冷却されてから、吸着塔2へ被処理ガスとして供給される。
【0062】
変形例1に係る二酸化炭素分離回収システム101Aでは、被処理ガスに含まれるCO
2が、乾燥塔4と吸着塔2とにおいて吸着材に吸着される。被処理ガスの流れに沿って説明すると、まず、乾燥塔4の吸着材により被処理ガス中のCO
2が吸着され、次いで、吸着塔2の吸着材により被処理ガス中のCO
2が吸着される。なお、吸着材のCO
2吸着量は温度が高いほど低いことがわかっており、乾燥塔4よりも吸着塔2でより多くの被処理ガス中のCO
2が除去される。以上の通り、第1及び第2実施形態と比較して、変形例1に係る二酸化炭素分離回収システム100では、吸着塔2で除去せねばならないCO2の量が減るので、吸着塔2を小規模化することができる。
【0063】
[
第3実施形態]
次に、
本発明の第3実施形態を説明する。
図8は本発明の第
3実施形態
に係る二酸化炭素分離回収システム101Bの概略構成を示す図である。
図8に示すように、
第3実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101Bでは、
前述の第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システムに対し、乾燥塔4の乾燥容器41が拡張されるとともに、吸着塔2が省略されている。この
二酸化炭素分離回収システム101Bでは、乾燥塔4が第1実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム100の吸着塔2としての機能を併せ備えている。
【0064】
本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101Bでは、乾燥塔4から排出された吸着材は、吸着塔2を介さずに再生塔3へ搬入される。再生塔3で再生された吸着材は、乾燥塔4へ供給される。乾燥塔4には被処理ガス源10から被処理ガスである石炭燃焼排ガスが供給されており、この被処理ガスに含まれるCO
2が乾燥塔4の吸着材に吸着され、CO
2が除去されたオフガスが高湿度排気ガス出口45から水蒸気とともに放出される。一方で、乾燥塔4に供給された被処理ガスは乾燥用ガスとして機能し、第1実施形態で説明した通り、乾燥塔4の吸着材は限界水分率まで乾燥されたのち乾燥塔4から排出される。
【0065】
本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム101Bは再生塔と、吸着塔の乾燥塔の機能を併せ備えた塔のとの2つの塔を備えている。したがって、第1実施形態並びに第2実施形態及びその変形例1と比較して、吸着塔2及びその周辺設備が省略され設備が全体として簡略化されるので、イニシャルコストやランニングコストや運転エネルギーを削減することができる。
【0066】
以上に本発明の好適な実施の形態(第1
〜3実施形態)及びその変形例(変形例
1)を説明したが、上記の構成は以下のように変更することができる。
【0067】
上述の二酸化炭素分離回収システムは、吸着材を移動層とする移動層式の処理塔(吸着塔2、再生塔3及び乾燥塔4)を採用している。但し、二酸化炭素分離回収システムは、例えば、バッチ式の処理塔を用いて構成されていてもよい。各処理塔をバッチ式とする場合には、吸着塔2、再生塔3および乾燥塔4の各下部にバルブ又はシャッターなどの開閉部材を設け、各処理塔での処理が終了するとこれらの開閉部材を開閉して、吸着材を1バッチずつ吸着材を下方の処理塔へ移動させる。この場合、吸着材の温度を検出する温度計51のプローブ、吸着材の含水率を検出する含水率計52のプローブが、乾燥容器41の出口近傍ではなく、乾燥容器41中の乾燥用空気の流路の最も下流部分に設けられたり、乾燥容器41中に複数が分散して設けられたりすることが望ましい。
【0068】
また、例えば、上述の二酸化炭素分離回収システムは固定層式の処理塔を用いて構成されていてもよい。固定層式の処理塔を用いる場合には、一つの処理容器に、被処理ガスを供給するための配管、CO
2が除去されたオフガスを排出するための配管、脱着用水蒸気を供給するための配管、吸着材から脱着されたCO
2を排出するための配管、乾燥用ガスを供給するための配管、及び、水蒸気を含む排気ガスを排出するための配管の各々を接続し、各配管と処理塔との流体(気体)の流通の接続と遮断とを切り替える弁を設ける。この場合、吸着材の温度を検出する温度計51のプローブ、吸着材の含水率を検出する含水率計52のプローブが、処理容器の出口近傍ではなく、処理容器中の乾燥用空気の流路の最も下流部分に設けられたり、処理容器中に複数が分散して設けられたりすることが望ましい。
【0069】
また、例えば、上述の二酸化炭素分離回収システムはセメントプラントに併設されておりプレヒータボイラの石炭燃焼排ガスを処理するシステムとしているが、本発明はこれに限定されず、CO
2を含むガスからCO
2を分離・回収するシステムに広く適用することができる。
二酸化炭素分離回収システムが、吸着材で被処理ガス中の二酸化炭素を吸着し、二酸化炭素が除去された被処理ガスを排出し、二酸化炭素を吸着した吸着材を排出する吸着塔2と、吸着塔2から排出された吸着材を受容し、該吸着材に脱着用水蒸気を凝縮させることにより吸着材から二酸化炭素を脱着させた後、吸着材を排出する再生塔3と、再生塔3から排出された吸着材を受容し、乾燥用ガスで吸着材に含まれる凝縮水を水蒸気として蒸発させることにより、含水率が限界含水率又はそれ以上の所定値となるまで乾燥した吸着材を排出する乾燥塔4とを備える。