特許第6247841号(P6247841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247841
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】球技用レガース
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/08 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A63B71/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-121456(P2013-121456)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-236893(P2014-236893A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】大冢 陽右
(72)【発明者】
【氏名】森 貞樹
(72)【発明者】
【氏名】西川 範浩
(72)【発明者】
【氏名】河本 勇真
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0250977(US,A1)
【文献】 特開2003−180905(JP,A)
【文献】 特開2008−308788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/08
A63B 71/12
A41D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下腿の前面部を被覆可能な脛プロテクタと、前記脛プロテクタを下腿に対して装着する装着部材とが備えられ、
前記脛プロテクタが、下腿の前面部に対応する大きさの内側の衝撃緩衝部材と、外側の保護プロテクタ部材とから構成されている球技用レガースにおいて、
前記保護プロテクタ部材が、中央プロテクタ部と、左右のプロテクタ部とに分割され、前記中央プロテクタ部は、上部の幅広部と、下部の幅狭部と、この幅広部と幅狭部とを繋ぐ傾斜部で構成され、前記左右のプロテクタ部は、前記中央プロテクタ部の幅広部、傾斜部及び幅狭部に対して隣接して配置されるように、前記中央プロテクタ部の形状に沿うように形成されていることを特徴とする球技用レガース。
【請求項2】
前記左右のプロテクタ部は、前記中央プロテクタ部の幅広部から傾斜部、幅狭部に向かって拡がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の球技用レガース。
【請求項3】
前記左右のプロテクタ部は、前記中央プロテクタ部の上部幅広部の上端に位置する箇所から下部の幅狭部の下端に位置する箇所まで設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の球技用レガース。
【請求項4】
前記中央プロテクタ部は、下腿の内側において脛骨と腓腹筋の内側頭との境界及び脛骨とヒラメ筋との境界が連なる境界線、下腿の外側において長趾伸筋と前脛骨筋との境界及び長趾伸筋と長母趾伸筋との境界が連なる境界線に対応して、前記幅広部、幅狭部、傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の球技用レガース。
【請求項5】
前記中央プロテクタ部の幅広部の上端の長さは、膝関節において関節裂隙を通る周囲径の1/2以下、下端の長さは、上端の長さ以下であり、前記幅狭部の上端の長さは、下腿において内踝及び外踝を通る周囲径の1/2以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の球技用レガース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球技、例えば、野球やソフトボール等を行う際に下腿に装着して使用される球技用レガースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球やソフトボールの捕手は、ヘルメット、フェースガード、プロテクタ、レガースなどの防具の装着が義務付けられている。その中でもレガースは、ファールチップやスライディングなどによる怪我から捕手を守る重要な防具である。
【0003】
怪我防止を重要視すると、硬くて肉厚にした頑丈なレガースとなる。しかし、硬くて肉厚なレガースは、送球やダッシュ動作を阻害し、捕手のパフォーマンスを低下させることになる。
【0004】
捕手は、両膝を曲げて座った捕球姿勢を基本に、膝を地面につけたり、片足を伸ばしたり、或いは立ち姿勢になったり、走ったりするなど多彩な姿勢形態を採る。このような捕手の身体保護を十分に図ると共に、レガースを装着した状態において、捕手の運動性能を十分に発揮させるために、膝プロテクタ、脛プロテクタ、足甲プロテクタを隣接プロテクタ間で屈曲自在に一連に連結することで、足関節及び膝関節での屈曲を許容するように構成されている。
【0005】
上記レガースの中で、保護する領域が最も広いのが、脛プロテクタである。この脛プロテクタは、直接のボール打撃、スライディング、ファールチップなどの衝撃から脛を保護するために肉厚で頑丈な樹脂が使用されている。
【0006】
そのため、曲げ剛性が非常に高く、場所によって異なる曲率分布を有する下腿(脛)部において、結束バンドでフィット性を確保することが困難である。
【0007】
また、下腿の形状は個人差が大きく、万人にフィットする形状の設計は困難である。そのため、脛プロテクタの保護エリアを広げすぎるとフィット性を阻害するために、保護エリアが狭い範囲になりがちである。
【0008】
しかし、レガースには、高い衝撃緩衝性を広い保護エリアで担保しつつ、種々の下腿形状にもフィットする構造が望まれている。
【0009】
サッカー、ラグビー、ホッケーなどに用いられる脛当てにおいて、足沿いを良好とするために、中央プレートと側方プレートを保持部材のプレート挿入部に挿入したものが提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
この脛当ては、脛当てのプレートを縦に3分割し、足沿いを良好とするものである。
【0011】
また、アメアスポーツジャパン株式会社が販売している商品名「ウィルソン ジェリーデービスレガース」は、図8に示すように、脛プロテクタ100が縦に3分割され、そして、脛プロテクタ100の中央プロテクタ100Cが樽形状に、即ち、下腿の前面部を投影したラインの形状に形成され、その左右にそれぞれ側方プロテクタ100L、100Rが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実用新案登録公報第2547492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した縦方向に3分割したレガース等においては、保護エリアを広くできると共に、フィット性を向上させることができる。しかしながら、後述するように、単に、縦方向にプレートを分割するだけでは、十分なフィット性が得られないことが分かった。
【0014】
この発明は、上記した従来の問題点を解消するためになされたものにして、高い衝撃緩衝性を広い保護エリアで担保すると共に、十分なフィット性が得られる球技用レガースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、下腿の前面部を被覆可能な脛プロテクタと、前記脛プロテクタを下腿に対して装着する装着部材とが備えられ、
前記脛プロテクタが、下腿の前面部に対応する大きさの内側の衝撃緩衝部材と、外側の保護プロテクタ部材とから構成されている球技用レガースにおいて、
前記保護プロテクタ部材が、中央プロテクタ部と、左右のプロテクタ部とに分割され、前記中央プロテクタ部は、上部の幅広部と、下部の幅狭部と、この幅広部と幅狭部とを繋ぐ傾斜部で構成され、前記左右のプロテクタ部は、前記中央プロテクタ部の幅広部、傾斜部及び幅狭部に対して隣接して配置されるように、前記中央プロテクタ部の形状に沿うように形成されていることを特徴とする。また、前記左右プロテクタ部は、前記中央プロテクタ部の幅広部から傾斜部、幅狭部に向かって拡がるように形成することができる。
【0016】
そして、前記中央プロテクタ部は、下腿の内側(medial)において脛骨と腓腹筋の内側頭との境界及び脛骨とヒラメ筋との境界が連なる境界線、下腿の外側(lateral)において長趾伸筋と前脛骨筋との境界及び長趾伸筋と長母趾伸筋との境界が連なる境界線に対応して、前記幅広部、幅狭部、傾斜部を設けるとよい。ここで、「上記の境界線に対応して、前記幅広部、幅狭部、傾斜部を設ける」とは、前記幅広部、幅狭部、傾斜部が上記の境界線に沿っていることを意味する。また、「前記幅広部、幅狭部、傾斜部が上記の境界線に沿っている」とは、上記の境界線上に存在するものの他に、高いフィット性を阻害しない範囲で上記の境界線に概ね沿っているものも含まれ、前記幅広部、幅狭部、傾斜部の位置を適宜設定することができる。すなわち、上記の境界線付近に、前記幅広部、幅狭部、傾斜部を設けるとよい。
【0017】
また、前記中央プロテクタ部の幅広部の上端の長さは、膝関節において関節裂隙を通る周囲径の1/2以下、下端の長さは、上端の長さ以下であり、前記幅狭部の上端の長さは、下腿において内踝及び外踝を通る周囲径の1/2以下に設定するとよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の球技用レガースは、高い衝撃緩衝性を広い保護エリアで担保すると共に、十分なフィット性が得られ、激しい動作にも追従性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の球技用レガースを示す正面図である。
図2】この発明の球技用レガースを下肢に装着した状態を示す正面図である。
図3】この発明の脛プロテクタを構成するプロテクタ部材を示す正面図である。
図4】この発明の実施形態における右足の下腿部の筋肉構成とプロテクタの位置関係を示す説明図である。
図5】この発明の実施形態における右足の下腿部の筋肉構成とプロテクタの位置関係を示す説明図である。
図6】従来例における右足の下腿部の筋肉構成とプロテクタの位置関係を示す説明図である。
図7】従来例における右足の下腿部の筋肉構成とプロテクタの位置関係を示す説明図である。
図8】従来の球技用レガースを示す正面図である。
図9】従来の球技用レガースのコンピュータシミュレーション結果を示す模式図であり、(a)、(b)はレガースを下腿に装着した状態を示し、(c)は下腿の内側(medial)の解析結果、(d)は下腿の外側(lateral)の解析結果、(e)は下腿の中央(center)の解析結果を示している。
図10】従来の球技用レガースコンピュータシミュレーション結果を示す模式図であり、(a)、(b)はレガースを下腿に装着した状態を示し、(c)は下腿の内側(medial)の解析結果、(d)は下腿の外側(lateral)の解析結果、(e)は下腿の中央(center)の解析結果を示している。
図11】この発明の球技用レガースのコンピュータシミュレーション結果を示す模式図であり、(a)、(b)はレガースを下腿に装着した状態を示し、(c)は下腿の内側(medial)の解析結果、(d)は下腿の外側(lateral)の解析結果、(e)は下腿の中央(center)の解析結果を示している。
図12】従来の球技用レガースのコンピュータシミュレーション結果を示す模式図であり、(a)、(b)はレガースを下腿に装着した状態を示し、(c)は下腿の内側(medial)の解析結果、(d)は下腿の外側(lateral)の解析結果、(e)は下腿の中央(center)の解析結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態の球技用レガースについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、左足用のレガースと右足用のレガースとは、左右対称であるので、一方(右足用)だけを取り上げて説明する。
【0021】
図1は、この発明の球技用レガースを示す正面図、図2は、この発明の球技用レガースを下肢に装着した状態を示す正面図、図3は、この発明の脛プロテクタを構成するプロテクタ部材を示す正面図である。
【0022】
図1図3に示すように、この実施形態の球技用レガースは、大腿下部プロテクタ3、大腿下部−膝架橋プロテクタ4、膝プロテクタ2、下腿の前面部を被覆可能な脛プロテクタ1、足甲プロテクタ5が隣接するプロテクタ間で屈曲自在に一連に連結して構成されている。そして、膝大腿下部から足甲に至る大腿及び下腿に対し複数の結束バンド7を介して着脱自在に構成されている。図2に示すように、このレガースを装着すると、スパイク9の上には、足甲プロテクタ5が載置される。
【0023】
各プロテクタ1、2、3、4、5は、プラスチックや複合材料などの硬質材からなる保護プロテクタ部材1a、2a、3a、4a、5aの裏側に、スポンジ材やシリコン材や他のクッション材などの軟質弾性材を主体とする衝撃緩衝部材1b、2b、3b、4b、5bが装着されて構成されている。
【0024】
衝撃緩衝部材1b、2b、3b、4b、5bは、軟質弾性材の表裏両面に皮、天然皮革、人工皮革、合成皮革、布生地などの当て生地を取り付けている。そして、その周縁部が各保護プロテクタ部材1a、2a、3a、4a、5aの周縁部からはみだすように各保護プロテクタ部材1a、2a、3a、4a、5aよりも大面積に構成してあり、衝撃緩衝部材1b、2b、3b、4b、5bの裏面(図示しない)がプロテクタ1、2、3、4、5のそれぞれの下肢に対する当て付け面を構成している。
【0025】
脛プロテクタ1、膝プロテクタ2、大腿下部プロテクタ3、大腿下部−膝架橋プロテクタ4、足甲プロテクタ5は、それぞれの保護プロテクタ部材1a、2a、3a、4a、5aに対し衝撃緩衝部材1b、2b、3b、4b、5bをリベット、ハトメ、縫製などの止着手段によって止着して構成している。
【0026】
この実施形態の脛プロテクタ1は、保護プロテクタ部材1aが、中央プロテクタ部10と、左右のプロテクタ部11、12とに分割されている。図3に示すように、中央プロテクタ部10は、上部の幅広部10aと、下部の幅狭部10bと、この幅広10a部と幅狭部10bとを繋ぐ傾斜部10cで構成されている。ここで、「保護プロテクタ部材1aが、中央プロテクタ部10と、左右のプロテクタ部11、12とに分割されている」とは、必ずしも完全に分割されている必要はなく、高いフィット性を阻害しない範囲で一部分が分割されているものも含まれる。そして、分割の手法としては、保護プロテクタ部材1aを繋がらない状態にすること、保護プロテクタ部材1aを蛇腹状にすること、保護プロテクタ部材1aを繋げた状態で剛性(曲げ剛性等)を低くすること、などが挙げられる。
【0027】
左右のプロテクタ部11、12は、中央プロテクタ部10の形状に沿うように、中央プロテクタ部10の幅広部10aから傾斜部10c、幅狭部10bに向かって拡がるように形成されている。これにより、後述するように、脛プロテクタ1を高い衝撃緩衝性を広い保護エリアで担保すると共に、十分なフィット性を得られるように構成している。
【0028】
膝プロテクタ2と脛プロテクタ1との間は、膝プロテクタ2の衝撃緩衝部材2bの下端部と脛プロテクタ1の保護プロテクタ部材1aの上端部が重なるように連結して、膝プロテクタ2の衝撃緩衝部材2bの柔軟性をもって屈曲自在に構成する。脛プロテクタ1と足甲プロテクタ5との間は、脛プロテクタ1の衝撃緩衝部材1bの下端部と足甲プロテクタ5の衝撃緩衝部材5bの上端部が重なるように連結して、両プロテクタ1、5の衝撃緩衝部材1b、5bの柔軟性をもって屈曲自在に構成している。
【0029】
装着部材としての結束バンド7は、大腿下部プロテクタ3に1組、膝プロテクタ2に1組、脛プロテクタ1に2組の計4組を配備してあり、先端にサイドリリース型のワンタッチバックルのうちの雄型係止体7aを配備してある結束帯7cを各プロテクタ1、2、3の一側方に対し基端部で長さ調整が可能な止め着具を介して取り付ける。そして、サイドリリース型のワンタッチバックルのうちの雌型係止体7bを各プロテクタ1、2、3の他側方に対し止め着具を介して取り付けて構成してある。
【0030】
脛プロテクタ1について図4及び図5を参照して詳しく説明する。図4及び図5は、右足の下腿部の筋肉構成とプロテクタの位置関係を示す説明図である。これら図に示すように、下腿8の外側(lateral)から長腓骨筋M1、短腓骨筋M4、長趾伸筋M3、前脛骨筋M2、下腿8の内側(medial)から腓腹筋内側頭M5とヒラメ筋M6がある。膝関節の関節裂隙M10と内踝と外踝を通る線M11との間に脛プロテクタ1が装着される。
【0031】
この脛プロテクタ1の保護プロテクタ部材1aは、中央プロテクタ部10と、左右のプロテクタ部11、12とに分割されている。図4に示すように、下腿8の内側(medial)において脛骨Bと腓腹筋の内側頭M5との境界及び脛骨Bとヒラメ筋M6との境界が連なる境界線L1、下腿8の外側(lateral)において長趾伸筋M3と前脛骨筋M2との境界及び長趾伸筋M3と長母趾伸筋M7との境界が連なる境界線L2に沿うことで、下腿の形状に合致し、下腿へのフィット性に優れるということが推察される。しかし、これらの境界線L1、L2は多少の個人差があるため、この実施形態の中央プロテクタ部10では、図5に示すように、下腿の形状を考慮しながらも個人差も許容できるように、傾斜部10cを設けたボトルネック形状のライン10L1、10L2に沿って形成し、幅広部10a、幅狭部10b、傾斜部10cを設けている。
【0032】
幅広部10aから幅狭部10bとの間に傾斜部10cを設けて、幅広部10aから幅狭部10bまでボトル形状、即ち、段階的に細くなるように構成している。
【0033】
そして、左右のプロテクタ部11、12は、中央プロテクタ部10のライン10L1、10L2の形状に沿うように、中央プロテクタ部10の幅広部10aから傾斜部10c、幅狭部10bに向かって拡がるように形成されている。
【0034】
また、傾斜部10cの上部は、中央プロテクタ部10の下端を外踝の高さ、上端を膝関節裂隙M10の高さとし、膝関節裂隙M10を0%とする場合、40%〜60%の付近である。これは、境界線L1及び境界線L2の曲率変化が大きい10c部に相当する位置には個人差が有るが、ほとんどの場合、上記の範囲に収まるためである。
【0035】
中央プロテクタ部10の幅広部10aの上端の長さは、膝関節において関節裂隙を通る周囲径の1/2以下、下端の長さは、上端の長さ以下に設定されている。また、幅狭部10bの上端の長さは、下腿8において内踝及び外踝を通る周囲径の1/2以下に設定している。
【0036】
次に、この発明の実施形態にかかる球技用レガースの効果を従来のレガースと比較して確認した。比較は、この発明の実施形態による球技用レガース、分割をしていない球技用レガース、単に直線状に3分割した球技用レガース、図8に示す従来の球技用レガースを用意し、結束バンドを想定して下腿の周方向に1kgの荷重を与え、そのときの下腿とレガースとの接触している部位を確認した。図5ないし図7は、下腿部における中央プロテクタ部分と左右のプロテクタ部分との分割ラインを示し、図5は、この発明の実施形態を示し、中央プロテクタ部は、ライン10L1、10L2で左右のプロテクタ部と分割されている。図6は、単に直線状に3分割し、中央部分はライン11L1、11L2で左右部分と分割されている。図7は、図8に示すものに対応し、中央部分はライン12L1、12L2で左右部分と分割されている。
【0037】
測定は、コンピュータシミュレーション(FEM)を用いてフィット性に及ぼす分割形状の影響を検討した。FEMでは、成人男性の下肢形態データを基にモデル化を行って解析した。図9ないし図12に、コンピュータシミュレーション結果を示す。各図において、(a)、(b)はレガースを下腿に装着した状態を示し、(c)は内側(medial)の解析結果、(d)は外側(lateral)の解析結果、(e)は中央(center)の解析結果を示している。ハッチングを施している領域pが、圧力が高いことを示している。即ち、ハッチングを施している領域が広いほど接触面積が広いことを示している。
【0038】
図9に示す、分割していない一体もののレガースでは、接触しているエリアを示す領域pが狭い範囲で点在している。
【0039】
図10に示す、直線状に3分割したレガースでは、接触しているエリアを示す領域pが拡がり、図9に示す分割していないレガースに比してフィット性に関して効果が見られた。
【0040】
また、図12に示すレガースでは、直線状に3分割したレガースと同様に、接触しているエリアを示す領域pが拡がり、分割していないレガースに比してフィット性に関して効果が見られた。
【0041】
図11に示す、下腿の形状を考慮しながらも個人差も許容できるように傾斜部を設けたボトルネック形状に形成したこの実施形態のレガースでは、単に直線状に分割したレガースや図8に示す形状のレガースに比べて接触している領域pが更に広がり、フィット性が良くなっていることが分かる。しかも、接触している領域pの部分がUの字状につながっているために、接触している領域pが点在する他のレガースに比べて更にフィット性が良好なことが明らかである。
【0042】
なお、上記した実施形態の脛プロテクタ1は、中央プロテクタ部10と、左右のプロテクタ部11、12との3つのパーツに分割しているが、各プロテクタを横方向に複数に分割したり、縦方向に更に分割したりして、緩衝体にそれぞれ固定するように構成してもよい。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 脛プロテクタ
1a 保護プロテクタ部材
1b 衝撃緩衝部材
2 膝プロテクタ
2b 衝撃緩衝部材
3 大腿下部プロテクタ
4 大腿下部−膝架橋プロテクタ
5 足甲プロテクタ
5b 衝撃緩衝部材
7 結束バンド
8 下腿
10 中央プロテクタ部
10a 幅広部
10b 幅狭部
10c 傾斜部
M1 長腓骨筋
M10 膝関節裂隙
M2 前脛骨筋
M3 長趾伸筋
M4 短腓骨筋
M5 腓腹筋の内側頭
M6 ヒラメ筋
M7 長母趾伸筋
B 脛骨
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12