(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
第1電極を有する第1電極シートと、第2電極を有する第2電極シートと、前記第1電極シートと前記第2電極シートに挟まれて配置され、開口を有し、前記開口において前記第1電極と前記第2電極とが対向するスペーサと、前記第1電極シートの前記スペーサ側とは反対側に配置されたクッション部材とを備え、前記クッション部材の前記第1電極シート側の面に分離部が形成されており、前記分離部の内側には、前記分離部によって、前記第1電極と前記第2電極とを接近させる方向に前記第1電極シートを押し込む押し子部が形成されており、前記第1電極シート及び前記第2電極シートに平行な面に投影すると、前記押し子部の少なくとも一部と前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一部とは重なっていることを特徴とする感圧センサが明らかとなる。
このような感圧センサによれば、第1電極の湾曲を抑制できる。
【0013】
前記第1電極シート及び前記第2電極シートに平行な面に投影すると、前記押し子部は、前記開口の内側に位置することが望ましい。これにより、押し子部の全体が第1電極シートを押し込むことができる。
【0014】
前記分離部の深さは、前記スペーサの厚さよりも大きいことが望ましい。これにより、第1電極の湾曲を更に抑制できる。
【0015】
前記押し子部の剛性は、前記第1電極シートの剛性よりも高いことが望ましい。これにより、押し子部が第1電極シートを押し込みやすくなる。
【0016】
前記分離部は、環状溝であることが望ましい。これにより、環状溝の内側の領域の下面の全周の縁が外側の領域から拘束を受けずに済むため、第1電極の湾曲を更に抑制できる。
【0017】
前記環状溝の外側の周面の直径は、前記スペーサの前記開口の直径よりも大きいことが望ましい。これにより、第1電極シートが塑性変形しにくくなる。
【0018】
前記クッション部材は、前記分離部よりも外側の領域で前記第1電極シートに接着されており、前記分離部よりも内側の領域は、前記第1電極シートに接着されていないことが望ましい。これにより、感圧センサの特性が温度の影響を受けにくくなる。
【0019】
===第1実施形態===
<感圧センサ1の構成>
図1Aは、第1実施形態の感圧センサ1の断面図である。
図1Bは、感圧センサ1を設置面51に設置した状態の断面図である。
図2は、第1実施形態の感圧センサ1に用いられるクッション部材40の下面の斜視図である。以下の説明では、感圧センサ1の一対の電極の対向する方向を上下方向とし、電極から見てクッション部材40の側を「上」とし、逆側を「下」とすることがある。
【0020】
感圧センサ1は、荷重がかかると対向する電極が接触し、その接触面積に応じた抵抗値の変化を利用して圧力を検出するセンサ(圧力センサ)である。第1実施形態の感圧センサ1は、対向する電極の接触/非接触に応じたON/OFFの2値を出力する感圧スイッチである。
【0021】
感圧センサ1は、第1電極シート10と、第2電極シート20と、スペーサ30と、クッション部材40とを有し、これらの部材を積層して構成されている。各部材の表面には接着剤が塗布されており、接着固定によって一体化されている。
【0022】
第1電極シート10は、第1絶縁シート11と第1電極12とを有するフィルム状のシート部材である。
第1絶縁シート11は、可撓性を有する絶縁性の樹脂フィルムから構成される。ここでは、第1絶縁シート11は、厚さ100μmのポリエチレンナフタレート(PEN)製のフィルムである。但し、第1絶縁シート11を構成する樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)等を採用しても良い。また、第1絶縁シート11の厚さは、感圧センサ1に要求される仕様に応じて設計変更可能である。
第1電極12は、第1絶縁シート11の下面に形成された電極である。第1実施形態の第1電極12は、銀電極やカーボン電極等の導電性の金属膜によって形成された電極である。電極は、銀ペーストやカーボンペーストなどの導電性ペーストから構成してもよいし、めっきにより形成される金属箔などから構成しても良い。めっきにより形成される金属箔としては、銅やニッケル、あるいは、これらの積層体等が挙げられる。電極の一部を導電性ペーストにより構成し、他の部分をめっきによる金属箔により構成しても良い。
【0023】
第2電極シート20は、第2絶縁シート21と第2電極22とを有するフィルム状のシート部材である。第2電極シート20は、第1電極シート10とほぼ同様に構成されており、第1電極シート10とほぼ上下対称に配置されている。第2電極シート20の第2電極22は、第2絶縁シート21の上面に形成されており、第1電極シート10の第1電極12と対向している。
【0024】
スペーサ30は、第1電極シート10と第2電極シート20との間に挟まれたフィルム状のシート部材である。スペーサ30は、可撓性を有する絶縁性の樹脂フィルムから構成される。ここでは、スペーサ30は、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。但し、スペーサ30を構成する樹脂として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等を採用しても良い。
スペーサ30には、開口31が形成されている。開口31は、周縁が略円形の形状である。開口31の直径Dは、第1電極12及び第2電極22の直径よりも僅かに大きい。そして、開口31の上側に第1電極12が配置され、開口31の下側に第2電極22が配置され、開口31の内部において第1電極12と第2電極22とが、所定の間隔を空けて対向配置されている。なお、スペーサ30の厚さや開口31の直径Dは、感圧センサ1に要求される仕様に応じて設計変更可能である。
【0025】
スペーサ30の上下の両面には接着剤が塗布されており、第1電極シート10及び第2電極シート20がスペーサ30を介して一体的に固定されている。なお、スペーサ30の外形は、第1電極シート10及び第2電極シート20の外形とほぼ一致している。スペーサ30には空気抜き用のスリット(不図示)が形成されている。このスリットが第1電極シート10及び第2電極シート20によって上下から塞がれることによって、開口31の内部と外部とを連通させる空気抜き用の通路(不図示)が形成される。
【0026】
クッション部材40は、弾力性を有し、圧力(荷重)を受けると弾性変形する。クッション部材40は、例えばゴム製のシート状の部材であり、ここでは厚さ1mmのシリコンゴムから構成されている。
クッション部材40は、第1電極シート10の上側に配置されている。すなわち、クッション部材40は、第1電極シート10の表面のうち、スペーサ30の側とは反対側の表面に配置されている。クッション部材40によって荷重が分散されるため、高荷重がクッション部材40の上面に作用しても、電極の破損を抑制できる。つまり、クッション部材40によって、感圧センサ1に高荷重を作用させることが可能になる。
【0027】
クッション部材40の下面には、環状溝43Aが形成されている。環状溝43Aよりも内側の領域である押し子部41は、第1電極シート10を下側へ押し込む押し子として機能する。環状溝43Aよりも外側の領域である荷重受け部42は、スペーサ30にて荷重を受ける機能を有する。環状溝43Aは、押し子部41の下面と荷重受け部42の下面とを分離する分離部(分離帯)として機能する。なお、分離部とは、その内側の領域(押し子部41)とその外側の領域(荷重受け部42)とを分離する部位(手段)であり、本実施形態の環状溝43Aや、後述の隙間43B、円弧状溝43C及びスリット43Dなどを含む。クッション部材40の下面に環状溝43Aが形成されることによって、押し子部41の下面は、荷重受け部42の拘束を受けずに、下側(第1電極12と第2電極22とを接近させる方向)に変位して第1電極シート10を押し込むことが可能である。
【0028】
押し子部41の外周の直径D1(環状溝43Aの内側の周面の直径)は、スペーサ30の開口31の直径Dよりも小さい。一方、荷重受け部42の内周の直径D2(環状溝43Aの外側の周面の直径)は、スペーサ30の開口31の直径D以上であり、ここではスペーサ30の開口31の直径Dよりも僅かに大きい。このため、スペーサ30の開口31の縁の上方に、第1電極シート10を挟んで環状溝43Aが配置されている。
【0029】
押し子部41の外周の直径D1(環状溝43Aの内側の周面の直径)は、第1電極12の直径以上であり、ここでは第1電極12の直径よりも僅かに大きい。これは、第1電極12の全体を押し子部41の下側に配置することによって、第1電極12の湾曲を抑制するためである。また、環状溝43Aの深さdは、スペーサ30の厚さtよりも大きい。これも、第1電極12の湾曲を抑制するためである。なお、クッション部材40の厚さや材質、環状溝43Aの寸法等は、感圧センサ1に要求される仕様に応じて設計変更可能である。
【0030】
クッション部材40は、荷重受け部42の下面と第1電極シート10との間に塗布された接着剤によって、第1電極シート10に接着されている。クッション部材40の押し子部41の下面には接着剤は塗布されていない。このため、押し子部41と第1電極シート10との間には、接着層が無い。
【0031】
<感圧センサ1の動作>
まず、比較例の感圧センサ1の動作について説明する。
図3A〜
図3Cは、比較例の感圧センサ1の動作の説明図である。比較例の感圧センサ1では、クッション部材40の下面には環状溝43Aが無く、押し子部41が形成されていない。
比較例の場合、開口31上のクッション部材40の下面は、その外側(外周)の下面に拘束されている。このため、クッション部材40の上面に荷重がかかると、開口31上のクッション部材40の中央部が下に突出しながら、開口31上の第1電極シート10を下側へ押し込むことになる。この結果、第1電極12が第2電極22に向かって変位するときに、第1電極12の中央部が下に突出するように湾曲する。つまり、比較例では、第1電極12が湾曲しやすく、湾曲した第1電極12が第2電極22に接触することになる。
【0032】
次に、第1実施形態の感圧センサ1の動作について説明する。
図4A〜
図4Cは、第1実施形態の感圧センサ1の動作の説明図である。
第1実施形態の場合、押し子部41の下面の外縁は、環状溝43Aによって、その外側の荷重受け部42の下面とは分離している。クッション部材40の上面に荷重がかかると、押し子部41の下面の外縁は荷重受け部42の下面から拘束されないため、押し子部41の下面は、殆ど湾曲しないまま、第1電極シート10を下側へ押し込むことになる。この結果、第1電極12が第2電極22に向かって変位するときに、第1電極12は湾曲しにくい。つまり、第1実施形態では、比較例(
図3A〜
図3C)と比べて第1電極12が湾曲せずに、第2電極22と接触することになる。
【0033】
図5は、荷重と接触面積の関係の説明図である。横軸は、クッション部材40の上面に作用する荷重を示している。縦軸は、第1電極12と第2電極22との接触面積を示している。点線のグラフは比較例の感圧センサ1の荷重と接触面積の関係を示しており、実線のグラフは第1実施形態の感圧センサ1の両者の関係を示している。
【0034】
以下の説明では、第1電極12と第2電極22が接触したときの荷重のことを「接触荷重」と呼び、電極同士の接触面積が増えなくなる荷重のことを「飽和荷重」と呼ぶことがある。また、飽和荷重時の接触面積のことを「飽和面積」と呼ぶことがある。図中の2つのグラフは、本実施形態の理解を容易にするために、「接触荷重」と「飽和面積」を共通にしている。
【0035】
比較例の場合、第1電極12が湾曲しながら第2電極22に接触するため、接触荷重から荷重が高くなるに従って、徐々に接触面積が増えることになる(
図5点線参照)。このため、比較例では、接触荷重と飽和荷重との差が大きくなり、その間のグラフの傾き(接触面積の変化)は緩やかになる。
【0036】
一方、第1実施形態の場合、比較例と比べて第1電極12が湾曲せずに第2電極22と接触するため、接触荷重から荷重が高くなると急速に接触面積が増えることになる(
図5実線参照)。このため、第1実施形態では、接触荷重と飽和荷重との差が小さくなり、その間のグラフの傾きは急峻になる。
【0037】
感圧センサ1がスイッチ(感圧スイッチ)の場合、接触面積が所定の閾値に達すると感圧センサ1がON状態になる。比較例の場合、接触荷重と飽和荷重との差が大きく、その間の接触面積の変化が緩やかなので、感圧センサ1(感圧スイッチ)がON状態になる荷重にばらつきが生じやすい。これに対し、第1実施形態の場合、接触荷重と飽和荷重との差が小さく、その間の接触面積の変化が急峻なので、感圧センサ1がON状態になる荷重は、ばらつきにくくなり、安定する。
【0038】
上記の通り、第1実施形態の感圧センサ1では、クッション部材40の下面(第1電極シート10側の面)に環状溝43A(分離部)が形成されている(
図2参照)。環状溝43Aの内側には、環状溝43によって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されている。第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の少なくとも一部は、第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部と重なっている。このような構造により、第1電極12の湾曲を抑制させながら、第1電極12を第2電極22に接触させることができる。この結果、荷重に対する感圧センサ1の出力が安定する。
【0039】
なお、第1実施形態の構造によれば、クッション部材40が荷重を受けたときに、押し子部41(環状溝43Aよりも内側の領域)が、環状溝43Aよりも外側の荷重受け部42から拘束されずに、第1電極シート10を下側(第1電極12と第2電極22とを接近させる方向)に押し込むことになる(
図4A〜
図4C参照)。このため、第1電極12の湾曲を抑制させながら、第1電極12を第2電極22に接触させることができるのである。
【0040】
また、第1実施形態では、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41は、スペーサ30の開口31の内側に位置することになる。これにより、押し子部41の全体が第1電極シート10を押し込むことができる。なお、仮に押し子部41の一部が開口31の外側に位置してしまうと(押し子部41が開口31内に収まっていないと)、押し子部41が第1電極シート10を押し込むときに、押し子部41が湾曲してしまう。
【0041】
また、第1実施形態では、環状溝43A(分離部)の深さdが、スペーサ30の厚さt(若しくは、第1電極12と第2電極22との間隔)よりも大きい(
図1A参照)。これにより、第1電極12の湾曲を更に抑制できる。もし仮に環状溝43Aの深さdがスペーサ30の厚さtよりも小さいと、少なくとも押し子部41の下面が下に突出するほど変形させなければ第1電極12が第2電極22に届かないため、第1実施形態と比べて第1電極12が湾曲してしまう。
【0042】
また、第1実施形態では、押し子部41の剛性は、第1電極シート10の剛性よりも高い。これにより、押し子部41の変形が小さい状態で押し子部41が第1電極シート10を押し込むため、押し子部41が第1電極シートを押し込みやすくなる。
【0043】
図6Aは、押し子部41の変形量の説明図である。
図6Bは、第1電極シート10の変形量の説明図である。押し子部41の下面が第1電極シート10から受ける圧力(荷重)と、第1電極シート10が押し子部41の下面から受ける圧力(荷重)は同じである。このとき、厚さdの押し子部41の上下方向(荷重方向)の変形量X1は、第1電極シート10の上下方向の変形量X2よりも小さい。言い換えると、押し子部41の剛性が第1電極シート10の剛性よりも高くなる材料が選択された結果、クッション部材40は、押し子部41の変形量X1が第1電極シート10の変形量X2よりも小さくなる。このように、押し子部41の剛性が第1電極シート10の剛性よりも高くなれば、第1電極シート10が押し子部41よりも変形しやすいため、押し子部41が第1電極シート10を下に押し込みやすくなる。なお、第1実施形態では、クッション部材40の材質として、スポンジ状の柔らかい素材ではなく、ゴムが採用されている。
【0044】
第1実施形態では、クッション部材40の下面に環状溝43Aが形成されている。これにより、押し子部41の下面の全周の縁が外側の荷重受け部42から拘束を受けずに済むため、第1電極12の湾曲を抑制できる。また、第1実施形態では、押し子部41の下面と荷重受け部42の下面とを分離する分離部が溝状であるため、その上側では押し子部41と荷重受け部42とが連結しており、クッション部材40(押し子部41及び荷重受け部42)を一体化して構成できる。
【0045】
また、第1実施形態では、環状溝43Aの外側の周面の直径D2は、スペーサ30の開口31の直径D以上である(
図1A参照)。
図7Aは、D2≧Dにした効果の説明図である。
図7Bは、D2<Dとした比較例の説明図である。
比較例では、
図7Bに示すように環状溝43Aの外側の周面の直径D2がスペーサ30の開口31の直径Dよりも小さいため(D2<D)、第1電極シート10は、スペーサ30上だけでなくスペーサ30の開口31内の領域においても荷重受け部42から圧力を受けている。この結果、開口31の内側で第1電極シート10がクッション部材40から下側に押し込まれたときに、スペーサ30の開口31の縁(角部)で第1電極シート10の応力が高くなりやすく、第1電極シート10が、スペーサ30の開口31の縁(角部)で塑性変形しやすくなる(
図7Bの点線参照)。第1電極シート10が塑性変形してしまうと、その後の感圧センサ1の特性(荷重に対する電極同士の接触面積や抵抗値)が変化してしまう。
これに対し、第1実施形態では、
図7Aに示すように環状溝43Aの外側の周面の直径D2がスペーサ30の開口31の直径D以上であるため(D2≧D)、第1電極シート10は、スペーサ30上において荷重受け部42から圧力を受けており、開口31の内側の領域では荷重受け部42から圧力を受けていない。このため、第1電極シート10がクッション部材40から下側に押し込まれたときに、比較例と比べると、スペーサ30の開口31の縁(角部)での第1電極シート10の応力が抑制される。つまり、D2≧Dにすることによって、第1電極シート10がスペーサ30の開口31の縁(角部)で塑性変形しにくくなるという効果が得られる。また、第1電極シート10が塑性変形しにくくなることに伴って、感圧センサ1の特性が変化しにくくなるという効果も得られる。
【0046】
ところで、感圧センサ1の特性(荷重に対する電極同士の接触面積や抵抗値)は、温度の影響を受けることが知られている。これは、感圧センサ1の構成要素の硬さ等が温度に応じて変化することが一因であり、温度の影響を受ける構成要素には、電極シートやスペーサ30だけでなく、接着剤(接着層)も含まれている。
そして、第1実施形態では、クッション部材40は荷重受け部42(分離部よりも外側の領域)で第1電極シート10に接着されており、押し子部41の下面(分離部よりも内側の領域)は第1電極シート10に接着されていない。このため、押し子部41と第1電極シート10との間には接着層が無いので、感圧センサ1の特性が温度の影響を受けにくくなる。
【0047】
===第2実施形態===
第1実施形態では、押し子部41の下面と荷重受け部42の下面は、同じ高さであり、面一であった。但し、クッション部材40の下面は、このような形状に限られるものではない。
【0048】
図8Aは、第2実施形態の感圧センサ1の断面図である。
図8Bは、感圧センサ1を設置面51に設置した状態の断面図である。第2実施形態では、押し子部41の下面が荷重受け部42の下面よりも上側に位置している。このため、感圧センサ1が荷重を受けていない状態では、押し子部41の下面が第1電極シート10から離れている。
【0049】
第2実施形態においても、クッション部材40の下面(第1電極シート10側の面)に環状溝43A(分離部)が形成されており、環状溝43Aの内側には、環状溝43によって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されており、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の少なくとも一部は、第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部と重なっている。このため、第2実施形態においても、第1電極12の湾曲を抑制させながら、第1電極12を第2電極22に接触させることができる。
【0050】
なお、第2実施形態においても、クッション部材40が荷重を受けたときに、押し子部41(環状溝43Aよりも内側の領域)が、環状溝43Aよりも外側の荷重受け部42から拘束されずに、第1電極シート10を下側に押し込むことが可能である。
【0051】
===第3実施形態===
第1実施形態及び第2実施形態では、クッション部材40の下面に環状溝43Aが形成されており、クッション部材40の上面側では押し子部41と荷重受け部42とが連結されていた。但し、押し子部41と荷重受け部42とを連結する部位(連結部)は、クッション部材40の上面側に限られるものではない。
【0052】
図9Aは、第3実施形態の感圧センサ1の断面図である。
図9Bは、第3実施形態のクッション部材40を上側から見た図である。第3実施形態では、押し子部41と荷重受け部42とを連結する連結部44は、上面側ではなく、厚さ方向の中央部分に形成されている。
【0053】
第3実施形態においても、クッション部材40の下面(第1電極シート10側の面)に環状溝43A(分離部)が形成されており、環状溝43Aの内側には、環状溝43によって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されており、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の少なくとも一部は、第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部と重なっている。このため、第3実施形態においても、第1電極12の湾曲を抑制させながら、第1電極12を第2電極22に接触させることができる。
【0054】
<変形例>
上記の実施形態では、環状溝43Aの上側の全ての領域において、押し子部41と荷重受け部42とが連結されていた。つまり、押し子部41と荷重受け部42とを連結する連結部44が環状に形成されていた。しかし、連結部44の形状は、環状に限られるものではない。
【0055】
図9Cは、第3実施形態の変形例の説明図である。変形例の連結部44は、環状ではなく、放射状に形成されている。連結部44をこのように形成しても、クッション部材40(押し子部41及び荷重受け部42)を一体化して構成できる。
【0056】
===第4実施形態===
第1〜第3実施形態では、クッション部材40の押し子部41と荷重受け部42とが連結されていた。但し、クッション部材40の押し子部41と荷重受け部42とを別体で構成することも可能である。
【0057】
図10Aは、第4実施形態の感圧センサ1の断面図である。
図10Bは、第4実施形態の感圧センサ1を設置した状態の断面図である。第4実施形態のクッション部材40は、押し子部41と荷重受け部42とが一体化されてなく、別体に構成されている。荷重受け部42には中空円柱状の開口が形成されており、荷重受け部42の開口の中に円柱状の押し子部41が配置されている。押し子部41と荷重受け部42との間には隙間43Bが形成されている。
【0058】
第4実施形態では、隙間43Bが、押し子部41と荷重受け部42とを分離する分離部として機能している。この隙間43Bの内側には、この隙間43Bによって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されており、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の少なくとも一部は、第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部と重なっている。このため、押し子部41の下面の全周の縁が外側の荷重受け部42から拘束を受けずに済むため、第1電極12の湾曲を抑制できる。
【0059】
なお、第4実施形態では、クッション部材40の押し子部41と荷重受け部42とが別体で構成されているため、押し子部41を固定するために、押し子部41の下面と第1電極シート10との間を接着剤で固定する必要がある。また、第4実施形態では、押し子部41が単独で荷重を受けないようにするため、押し子部41の上面と荷重受け部42の上面に板状の部材を配置して、感圧センサ1の受ける荷重を荷重受け部42に分散させることが好ましい(
図10B参照)。
【0060】
===第5実施形態===
第1〜第4実施形態では、クッション部材40の下面に環状の分離部(環状溝43A又は隙間43B)が形成されており、押し子部41の下面の全周の縁が外側の荷重受け部42から拘束を受けずに済んでいた。但し、分離部は環状に形成されていなくても良い。
【0061】
図11は、第5実施形態の感圧センサ1に用いられるクッション部材40の下面の斜視図である。第5実施形態のクッション部材40の下面には、4つの円弧状溝43Cが形成されている。4つの円弧状溝43Cによって囲まれた内側の領域は、第1電極シート10を下側へ押し込む押し子部41となる。4つの円弧状溝43Cよりも外側の領域は、荷重を受ける荷重受け部42となる。なお、第5実施形態においても、不図示の第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の少なくとも一部は、第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部と重なっている。
【0062】
円弧状溝43Cの両端(円弧状溝43Cと円弧状溝43Cとの間)では、押し子部41の下面と荷重受け部42の下面とが連結しているため、押し子部41が第1電極シート10を下側に押し込むときに、押し子部41の下面の外縁が荷重受け部42の下面から拘束されてしまう。このため、第5実施形態では、第1実施形態と比べると、第1電極12が湾曲しやすくなってしまう。
【0063】
但し、第5実施形態においても、円弧状溝43C(分離部)の内側には、円弧状溝43Cによって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されており、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の少なくとも一部は、第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部と重なっている。このような構造により、第1電極12の湾曲を抑制できる。
【0064】
なお、第5実施形態の構造によれば、円弧状溝43Cが形成された領域では、押し子部41の下面の外縁が荷重受け部42の下面から拘束されていないため、円弧状溝43Cが形成された領域では、クッション部材40が荷重を受けたときに、押し子部41が荷重受け部42から拘束されずに、第1電極シート10を下側に押し込むことになる。このため、分離部の全く無い構成(
図3A〜
図3Cの比較例参照)と比べれば、第5実施形態においても、第1電極12の湾曲を抑制できるのである。
【0065】
===第6実施形態===
第1〜第5実施形態では、分離部の深さが、スペーサ30の厚さ(若しくは第1電極12と第2電極22との間隔)よりも大きかった。但し、分離部の深さは、スペーサ30の厚さよりも小さくすることが可能である。
【0066】
図12は、第6実施形態の感圧センサ1の断面図である。
第6実施形態では、第1電極シート10の上側にクッション部材40(第1クッション部材40)が配置されているだけでなく、第2電極シート20の下側にもクッション部材(第2クッション部材40’)が配置されている。第2クッション部材40’の上面にも環状溝43A’が形成されており、この環状溝43A’によって第2クッション部材40’の上面に押し子部41’と荷重受け部42’が形成されている。
【0067】
第1電極シート10の上側の第1クッション部材40の下面には、第1実施形態と同様に、環状溝43Aが形成されている。但し、第6実施形態の環状溝43Aの深さd’は、スペーサ30の厚さtよりも小さい。また、第2クッション部材40’の環状溝43A’の深さもスペーサ30の厚さtよりも小さい。
【0068】
図13A及び
図13Bは、第6実施形態の感圧センサ1の動作の説明図である。
第6実施形態では、第2クッション部材40’の押し子部41’が第2電極シート20を上側に押し込むことになり、第1電極12と第2電極22とが互いに接近する。このため、環状溝43Aの深さd’がスペーサ30の厚さtよりも小さくても、第1電極12(及び第2電極22)の湾曲を抑制しながら、第1電極12と第2電極22とを接触させることができる。
【0069】
<変形例>
図14A〜
図14Cは、第6実施形態の変形例の感圧センサ1の動作の説明図である。この変形例では、上記の第6実施形態と同様に、クッション部材40の環状溝43Aの深さd’がスペーサ30の厚さtよりも小さい。変形例では、上記の第6実施形態とは異なり、第2電極シート20の側にクッション部材(第2クッション部材40’)は設けられていない。
【0070】
環状溝43Aの深さd’がスペーサ30の厚さtよりも小さいため、少なくとも押し子部41の下面を下に突出するほど変形させなければ、第1電極12が第2電極22に届かない(
図14C参照)。このため、この変形例では、第1実施形態(
図4C参照)と比べて第1電極12が湾曲してしまう。但し、変形例においても環状溝43Aが形成されているため、分離部の全く無い構成(
図3A〜
図3Cの比較例参照)と比べれば、第1電極12の湾曲を抑制させながら、第1電極12を第2電極22に接触させることができる。
【0071】
===第7実施形態===
第1〜第6実施形態では、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、押し子部41の全体がスペーサ30の開口31の内側に位置していた。但し、押し子部41の一部が開口31の外側に位置していても良い。
【0072】
図15Aは、第7実施形態のクッション部材40の下面の斜視図である。
第7実施形態のクッション部材40の下面には、一対のスリット43Dが形成されている。一対のスリット43Dによって囲まれた内側の矩形状の領域は、第1電極シート10を下側に押し込む押し子部41となる。このように、第7実施形態においても、スリット43D(分離部)の内側には、スリット43Dによって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されている。なお、一対のスリット43Dよりも外側の領域は、荷重を受ける荷重受け部42となる。
【0073】
図15Bは、クッション部材40の下面(第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面)にスペーサ30の開口31を投影させて、開口31とスリット43Dとの位置関係を示した図である。
図に示すように、第7実施形態では、分離部となるスリット43Dが、スペーサ30の開口31の外側に位置している。この結果、第7実施形態では、押し子部41の一部がスペーサ30の開口31の外側に位置している(押し子部41が開口31内に収まっていない)。このため、第7実施形態では、第1実施形態と比べると、第1電極12が湾曲しやすくなってしまう。
【0074】
但し、第7実施形態においても、スリット43D(分離部)の内側には、スリット43Dによって、第1電極12と第2電極22とを接近させる方向に第1電極シート10を押し込む押し子部41が形成されている。この構造により、スリット43Dが形成された領域では、クッション部材40が荷重を受けたときに、スリット43Dよりも外側の荷重受け部42から拘束されずに、第1電極シート10を下側に押し込むことになる。このため、分離部の全く無い構成(
図3A〜
図3Cの比較例参照)と比べれば、第7実施形態においても、第1電極12の湾曲を抑制できるのである。
【0075】
===感圧センサ1の固定方法===
図16A及び
図16Bは、感圧センサ1の固定方法の説明図である。
図16A及び
図16Bでは、どちらも第1実施形態の感圧センサ1が用いられているが、その固定方法が異なっている。
【0076】
図16Aに示す固定方法では、クッション部材40の下面には、下側に向かって突出した位置決めピン46が形成されている。一方、感圧センサ1の設置面51を有する設置部材50には、予め位置決め穴52が形成されている。そして、設置部材50の位置決め穴52にクッション部材40の位置決めピン46を上から挿入することによって、感圧センサ1を設置面51に設置している。位置決めピン46が位置決め穴52に挿入されているため、感圧センサ1が設置面51からずれにくくなる。
【0077】
この固定方法によれば、クッション部材40の下面から下側に突出した位置決めピン46を上側から位置決め穴52に挿入しているため、クッション部材40の上面で荷重を受けても、位置決めピン46が干渉することはない。これに対し、
図16Bの固定方法のように、設置部材50の設置面51から上側に突出した位置決めピンを、クッション部材40の位置決め穴に下側から挿入した固定方法では、クッション部材40の上面で荷重を受けて、クッション部材40が収縮したときに位置決めピンが突出するおそれがある。
【0078】
また、仮に感圧センサ1を着座センサとして用いる場合、クッション部材40の上面で人の臀部からの荷重を受けることになる。このとき、
図16Bの固定方法では、クッション部材40の上面の近くに位置決めピンが位置するため、着座した人の臀部に違和感を与えてしまう。これに対し、
図16Aの固定方法によれば、人の臀部に違和感を与えずに済む。
【0079】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0080】
<電極について>
前述の実施形態では、第1電極12及び第2電極22は、
図17Aに示すような円形状の電極であった。但し、第1電極12及び第2電極22は、このような形状に限られるものではない。例えば、
図17Bに示すように、第2電極22(又は第1電極12)を2つに分割して構成しても良い。このように電極を構成すれば、一方の電極シート(この場合、第2電極シート20)に感圧センサの端子を形成するだけで済む。また、
図17Cに示すように、電極を円形状ではなく、櫛歯状にしても良い。
【0081】
前述の実施形態では、押し子部41の外周の直径D1は第1電極12の直径よりも僅かに大きい状態であった。このため、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影すると、第1電極12が押し子部41に包含されるように、押し子部41と第1電極12とが重なっていた。但し、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影したときの押し子部41、第1電極12及び第2電極22との重なり方は、これに限られるものではない。
例えば、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影したときに、押し子部41と第1電極とが横にずれて位置した状態で、押し子部41と第1電極12(又は第2電極22)とが一部重なっていても良い。要するに、第1電極シート10及び第2電極シート20に平行な面に投影したときに、押し子部41の少なくとも一部と第1電極12及び第2電極22の少なくとも一部が重なっていれば良い。これにより、その重複領域における電極の湾曲を抑制できる。
【0082】
<感圧センサについて>
前述の感圧センサは、対向する電極の接触/非接触に応じたON/OFFの2値を出力する感圧スイッチであった。但し、感圧センサは、感圧スイッチに限られるものではない。例えば、感圧センサは、圧力に応じて接触面積が徐々に変化するように電極を構成することにより、電極間の抵抗値の変化に基づいて圧力値を検知するセンサであっても良い。
【0083】
電極間の抵抗値の変化に基づいて圧力値を検知するタイプの感圧センサも、前述の実施形態と同様に構成される。すなわち、このタイプの感圧センサも、第1電極12を有する第1電極シート10と、第2電極22を有する第2電極シート20と、第1電極シート10と第2電極シート20に挟まれて配置されるスペーサ30と、第1電極シート10の上側に配置されたクッション部材40とを有する。但し、電極(第1電極12及び第2電極22)は、銀電極やカーボン電極の表面に導電性の感圧インクを塗布することによって形成された感圧電極である。感圧電極の塗膜表面には微小な凹凸が形成されており、電極同士の接触面積が荷重に応じて変化する。
【0084】
図18は、感圧電極を用いた感圧センサの荷重と抵抗値との関係の説明図である。荷重が高くなるほど電極同士の接触面積が増えるため、徐々に抵抗値が低下する。感圧センサの抵抗値を測定すれば、そのときの荷重を計測することができる(図中の点線参照)。
【0085】
このタイプの感圧センサにおいても、クッション部材40に環状溝43A等の分離部を形成し、分離部の内側の領域(押し子部41)が、その外側の領域(荷重受け部42)から拘束されずに第1電極シート10を押し込めば、第1電極12の湾曲を抑制できる。これにより、電極同士が表面全体で接触するため、その接触範囲は荷重に影響を受けずにほぼ一定の状態で、感圧電極の微小な凹凸によって接触面積が荷重に応じて変化する。この結果、荷重に対する抵抗値の変化(
図18のグラフの傾き)は、主に感圧電極の表面形状(凹凸の度合い、表面粗さ)に依存することになるため、感圧センサの特性(荷重に対する電極同士の接触面積や抵抗値)は、ばらつきにくくなり、安定する。
【0086】
<分離部について>
前述の分離部は、押し子部41の下面が円形状になるように形成されていた。但し、円形状ではなく、他の形状に沿うように分離部を形成しても良い。
また、前述の分離部(環状溝43A、隙間43B又は円弧状溝43C)は、所定の幅を空けて押し子部41と荷重受け部42と分離していた。但し、分離部をスリット状に形成することによって、幅を空けずに押し子部41と荷重受け部42と分離しても良い。