特許第6247862号(P6247862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247862
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】衛生設備機器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/13 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   E03D11/13
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-169689(P2013-169689)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-38283(P2015-38283A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福谷 孝二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 健
(72)【発明者】
【氏名】野田 高弘
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−078669(JP,A)
【文献】 実開平02−027776(JP,U)
【文献】 実開平02−120571(JP,U)
【文献】 特開2001−090141(JP,A)
【文献】 実開平05−061271(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−13/00
A47K 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する機器本体と、この機器本体に着脱自在に取り付けられて前記開口部を閉鎖する蓋部材とを備えた衛生設備機器であって、
前記機器本体又は前記蓋部材の一方に設けられており、前記機器本体又は前記蓋部材の他方に設けられた被連結部に連結する連結部を有し、前記蓋部材が前記開口部を閉鎖した閉鎖状態に取り付けられると露出しないように全体が隠蔽される連結部材を備え、
前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に前記蓋部材を移動して生じる前記蓋部材と前記開口部との間の隙間から前記連結部を操作して、前記連結部が前記被連結部に係止する状態と係止しない状態に往復移動し、
前記連結部が前記被連結部に係止する状態で、前記蓋部材が前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に移動すると、前記連結部が前記被連結部に係止し、前記隙間を生じた係止状態になることを特徴とする衛生設備機器。
【請求項2】
開口部を有する機器本体と、この機器本体に着脱自在に取り付けられて前記開口部を閉鎖する蓋部材とを備えた衛生設備機器であって、
前記機器本体は前記開口部を形成した底面を有した凹部を具備しており、
前記機器本体又は前記蓋部材の一方に設けられており、前記機器本体又は前記蓋部材の他方に設けられた被連結部に連結する連結部を有し、前記蓋部材が前記凹部に嵌り込んで前記開口部を閉鎖した閉鎖状態に取り付けられると露出しないように全体が隠蔽される連結部材を備え、
前記蓋部材が前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に移動すると、前記連結部が前記被連結部に係止し、前記開口部との間に隙間を生じた係止状態になり、この係止状態において、前記蓋部材は前記凹部の立ち上がり面に対向する面の一部が前記立ち上り面に重なることを特徴とする衛生設備機器。
【請求項3】
前記連結部材はねじ部材を有しており、このねじ部材を回転させることによって、前記連結部が前記被連結部に係止する状態と係止しない状態に往復移動することを特徴とする請求項1又は2記載の衛生設備機器。
【請求項4】
前記連結部材は前記隙間から目視可能な位置に前記ねじ部材の頭部を配置したことを特徴とする請求項記載の衛生設備機器。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記ねじ部材の頭部が目視可能な位置まで前記開口部を開口する方向に移動することによって、前記係止状態になることを特徴とする請求項記載の衛生設備機器。
【請求項6】
前記機器本体と前記蓋部材との間に設けられ、前記蓋部材を前記機器本体に仮固定する固定部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の衛生設備機器。
【請求項7】
前記機器本体は、設置される部屋の壁面に当接して固定され、前記壁面に連続して前記開口部を形成した底面を有した凹部を具備しており、
前記蓋部材は、前記凹部に嵌り込んで前記開口部を閉鎖した状態において、前記壁面に対向する面、及び前記凹部の立ち上がり面に対向する面の少なくとも一方に設けられ、前記壁面又は前記立ち上がり面に当接する弾性体を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の衛生設備機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生設備機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の衛生設備機器を開示している。この衛生設備機器は小便器である。この小便器は、便器本体、蓋部材、及び便器本体と蓋部材とを連結する一対の連結部材を備えている。便器本体はトイレルームの壁面に当接して固定されている。この便器本体は上部にバルブユニット等を収納する収納空間が設けられている。便器本体の収納空間は上方及び後方(壁面側)が開口している。また、便器本体は左右壁面の夫々の内面に後述する連結部材の連結部の下部が係止する係止孔が設けられている。
【0003】
蓋部材は、便器本体に着脱自在に取り付けられ、便器本体の上方に開口した開口部を閉鎖している。この蓋部材は、上面部、前側面部、及び左右側面部を有している。上面部は略矩形状である。前側面部は上面部の前端縁から連続して下方に延びている。左右側面部は上面部の左右端縁の夫々から連続して下方に延びている。また、左右側面部は前端縁が前側面部の左右端縁の夫々に連続している。蓋部材は、便器本体に取り付けると、上面部の後端縁及び左右側面部の後端縁がトイレルームの壁面に当接した状態になる。
【0004】
一対の連結部材は蓋部材の左右側面部の内側面に一つずつ取り付けられている。連結部材は、連結部と、連結部の移動を案内するガイド部と、連結部を軸方向に移動させる操作ねじとを有している。連結部は、平板状であり、左右側面部の下端縁より下方に延びている。連結部は下端が斜め外側下方を向くように上下方向の中間部で折曲している。連結部は上部に形成されたねじ孔に操作ねじがねじ込まれている。
【0005】
操作ねじは蓋部材の左右側面部の夫々に貫設した貫通孔を挿通している。この操作ねじは、頭部が蓋部材の左右側面部の外側面に係止しており、頭部が外部に露出している。操作ねじの頭部にドライバーの先端を当てて操作ねじを回転させると連結部が操作ねじの軸方向に往復移動する。この際、ガイド部は連結部が回転せずに往復移動するように案内する。
【0006】
この小便器において、蓋部材を便器本体に取り付ける場合、先ず、壁面に当接して固定された便器本体の上端に後端縁が壁面に当接するように蓋部材を載置する。この際、各連結部材の連結部は便器本体の上方に開口した開口部内に入り込むように内側に位置している。そして、蓋部材の左右側面部の外側に露出した操作ねじの頭部にドライバーの先端を当てて、操作ねじを一方向に回転させる。すると、連結部が外方向に移動し、連結部の下部が便器本体の係止孔に係止する。これによって、蓋部材は便器本体から持ち上げることができない状態に取り付けることができる。このように、この小便器は蓋部材を容易に取り付けることができ、便器本体内への水等の侵入を防止することができる。
【0007】
また、この小便器において、蓋部材を便器本体から取り外す場合、蓋部材の左右側面部の外側に突出した操作ねじの頭部にドライバーの先端を当てて、操作ねじを他方向に回転させる。すると、連結部が内方向に移動し、連結部の下部と便器本体の係止孔との係止状態が解除される。これによって、蓋部材は便器本体から持ち上げて取外すことができる。このように、この小便器は蓋部材を容易に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−61271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の小便器は操作ねじの頭部が蓋部材の左右側面部の外側に突出して露出している。このため、この小便器は、見栄えが悪く、第三者によって操作ねじが操作され、蓋部材が取り外されてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、見栄えが良く、第三者が蓋部材を取り外すことを困難にすることができる衛生設備機器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の衛生設備機器は、開口部を有する機器本体と、この機器本体に着脱自在に取り付けられて前記開口部を閉鎖する蓋部材とを備えた衛生設備機器であって、
前記機器本体又は前記蓋部材の一方に設けられており、前記機器本体又は前記蓋部材の他方に設けられた被連結部に連結する連結部を有し、前記蓋部材が前記開口部を閉鎖した閉鎖状態に取り付けられると露出しないように全体が隠蔽される連結部材を備え、
前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に前記蓋部材を移動して生じる前記蓋部材と前記開口部との間の隙間から前記連結部を操作して、前記連結部が前記被連結部に係止する状態と係止しない状態に往復移動し、
前記連結部が前記被連結部に係止する状態で、前記蓋部材が前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に移動すると、前記連結部が前記被連結部に係止し、前記隙間を生じた係止状態になることを特徴とする。
【0012】
この衛生設備機器は、蓋部材が機器本体の開口部を閉鎖した閉鎖状態に取り付けられると、機器本体又は蓋部材の一方に設けられた連結部材の全体が隠蔽されて露出しない。このため、この衛生設備機器は蓋部材を機器本体に取り付けると連結部材を外側から視認することができない。このように、この衛生設備機器は、連結部材が露出しないため、見栄えが良い。また、この衛生設備機器は、連結部材が露出しないため、第三者によって連結部と被連結部との連結を解除され難く、蓋部材が取り外され難い。
【0013】
したがって、本発明の衛生設備機器は、見栄えが良く、第三者が蓋部材を取り外すことを困難にすることができる。
【0014】
なお、本発明において、開口部とは蓋部材によって閉鎖される開口である。また、衛生設備機器とは、大便器、小便器、洗浄水を貯留するタンク等である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の小便器の要部を示す斜視図である。
図2】実施例1の小便器の要部を示す側面図である。
図3】実施例1の小便器を示す平面図である。
図4図3の矢視X−X断面図である。
図5】実施例1の小便器の要部を示す拡大断面図である。
図6】実施例2の小便器の要部を示す断面図である。
図7】実施例3の小便器の要部を示す断面図であって、(A)は蓋部材が開口部を閉鎖した閉鎖状態に取り付けられた状態を示し、(B)は蓋部材を便器本体から取り外す状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0017】
本発明の衛生設備機器において、前記連結部材はねじ部材を有しており、このねじ部材を回転させることによって、前記連結部が前記被連結部に係止する状態と係止しない状態に往復移動し得る。この場合、ねじ部材を回転させることによって、連結部が被連結部に係止する状態と係止しない状態とに確実に移動させることができる。
【0018】
本発明の衛生設備機器において、前記蓋部材は、前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に移動すると、前記連結部が前記被連結部に係止し、前記開口部との間に隙間を生じた係止状態になる。この場合、仮に、第三者が蓋部材を便器本体から取り外そうとし、蓋部材を閉鎖状態から開口部を開口する方向に移動すると、連結部が被連結部に係止した係止状態になるため、第三者はそれ以上蓋部材を移動させることができない。また、蓋部材と開口部との間の隙間を利用して、連結部と被連結部とが係止する位置、又は係止しない位置に変更することができる。つまり、蓋部材と開口部との間の隙間からドライバーを挿入してねじ部材を回転させることによって、連結部を被連結部に係止する状態と係止しない状態に往復移動させることができる。
【0019】
前記連結部材は前記隙間から目視可能な位置に前記ねじ部材の頭部を配置し得る。この場合、係止状態で蓋部材と開口部との間に生じた隙間からねじ部材の頭部を目視しながらドライバーの先端部をねじ部材の頭部に当接させて、ねじ部材を回転させることができる。このため、この衛生設備機器はねじ部材を確実かつ容易に回転させることができる。
【0020】
前記蓋部材は、前記ねじ部材の頭部が目視可能な位置まで前記開口部を開口する方向に移動することによって、前記係止状態になり得る。この場合、係止状態で確実にねじ部材の頭部を目視することができる。このため、係止状態で蓋部材と開口部との間に生じた隙間からねじ部材の頭部を目視しながらドライバーの先端部をねじ部材の頭部に当接させて、ねじ部材を回転させることができる。このため、この衛生設備機器はねじ部材を確実かつ容易に回転させることができる。
【0021】
本発明の衛生設備機器は、開口部を有する機器本体と、この機器本体に着脱自在に取り付けられて前記開口部を閉鎖する蓋部材とを備えた衛生設備機器であって、前記機器本体は前記開口部を形成した底面を有した凹部を具備しており、前記機器本体又は前記蓋部材の一方に設けられており、前記機器本体又は前記蓋部材の他方に設けられた被連結部に連結する連結部を有し、前記蓋部材前記凹部に嵌り込んで前記開口部を閉鎖した閉鎖状態に取り付けられると露出しないように全体が隠蔽される連結部材を備え、前記蓋部材が前記閉鎖状態から前記開口部を開口する方向に移動すると、前記連結部が前記被連結部に係止し、前記開口部との間に隙間を生じた係止状態になり、この係止状態において、前記蓋部材は前記凹部の立ち上がり面に対向する面の一部が前記立ち上り面に重なることを特徴とする。この場合、係止状態に蓋部材を移動させても、蓋部材の凹部の立ち上がり面に対向する面の一部が立ち上がり面に重なるため、この部分に隙間が生じない。このため、この部分から機器本体の内部を覗くことができない。また、この部分から異物が機器本体内に投入されることを防止することができる。
【0022】
本発明の衛生設備機器において、前記機器本体と前記蓋部材との間に設けられ、前記蓋部材を前記機器本体に仮固定する固定部材を備え得る。この場合、蓋部材が機器本体に仮固定されるため、蓋部材を便器本体から取り外す際の抵抗になる。このため、第三者であれば、蓋部材が便器本体に固定されていると勘違いし、蓋部材が取り外され難くなる。
【0023】
本発明の衛生設備機器において、前記機器本体は、設置される部屋の壁面に当接して固定され、前記壁面に連続して前記開口部を形成した底面を有した凹部を具備しており、前記蓋部材は、前記凹部に嵌り込んで前記開口部を閉鎖した状態において、前記壁面に対向する面、及び前記凹部の立ち上がり面に対向する面の少なくとも一方に設けられ、前記壁面又は前記立ち上がり面に当接する弾性体を有し得る。この場合、蓋部材に設けられた弾性体が壁面又は立ち上がり面に当接することによって、突っ張った状態になるため、蓋部材を取り外す際の抵抗になる。このため、第三者であれば、蓋部材が便器本体に固定されていると勘違いし、蓋部材が移動され難くなる。
【0025】
次に、本発明の衛生設備機器を具体化した実施例1〜3について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<実施例1>
実施例1の衛生設備機器は、図1図5に示すように、小便器1である。この小便器1は、機器本体に相当する便器本体10、蓋部材30、及び一対の連結部材50を備えている。
【0027】
便器本体10は、一対の左右壁部11、前壁部13、便鉢部15、及び上壁部17を有している。一対の左右壁部11は略平行に位置している。各左右壁部11は、図1及び図2に示すように、上端縁の前後方向の中間部から後方が前方に比べて一段下がっている。この一段下がった部分が後述する凹部19の底面の左右縁部19Aを構成している。便器本体10は左右壁部11の後端縁を小便器1が設置される部屋(トイレ室)の壁面Wに当接して固定されている。左右壁部11は、図2及び図4に示すように、後述する連結部材50の係止部53Bに設けられた鉤部58が係止する孔部(被連結部)12を内面に設けている。
【0028】
前壁部13は、図1に示すように、各左右壁部11の前端縁の上部に左右両端部が連続している。前壁部13は左右中央部に向けて徐々に後方(トイレ室の壁面W側)に湾曲している。前壁部13は前面の左右中央部に人体検知センサーの窓部21が設けられている。また、前壁部13は、図4に示すように、後面に人体検知センサーユニット23が取り付けられている。便器本体10は前壁部13の後方であって左右壁部11に囲まれた部分に人体検知センサーユニット23、図示しないバルブユニット、及びこのバルブユニットと後述する吐水部材25とを連結する給水管27等が収納されている収納空間Sを有している。この収納空間Sは上方及び後方(壁面W側)が開口している。
【0029】
便鉢部15は、図1図3に示すように、前壁部13の下端縁、及び前壁部13よりも下方に位置する左右壁部11の前端縁の夫々に連続している。便鉢部15は、前壁部13及び左右壁部11の前端縁より後方に凹むように湾曲し、下部で中央部が前方に突出した受け部15Aを形成している(図3参照)。この受け部15Aは底面に排水口16が設けられている。便鉢部15は、排水口16を覆い、かつ封水トラップを形成する着脱トラップ18が取り付けられている。便鉢部15は上部の前面に洗浄水を吐水する吐水部材25が取り付けられている。小便及び吐水部材25から吐水した洗浄水は、便鉢部15の表面を流下し、排水口16に流入する。
【0030】
上壁部17は、前壁部13の上端縁、及び各左右壁部11の前後方向の中間部より前方の上端縁に連続している。上壁部17の後端縁は左右中央部に向けて僅かに後方に膨らんで湾曲している。
【0031】
便器本体10は、図1及び図2に示すように、上壁部17より後方に一段凹んだ凹部19が形成されている。この凹部19の底面は、便器本体10の左右壁部11の前後方向の中間部より後方の上端面が前後方向に延びる左右縁部19Aを構成しており、これら左右縁部19Aの間は上下方向に開口した開口部19Bを構成している(図4及び図5参照)。つまり、便器本体10が壁面Wに固定されると、凹部19の底面に壁面Wに連続して開口した開口部19Bが形成される。開口部19Bは収納空間Sの上方を開口している。この開口部19Bを利用して、収納空間S内に収納した人体検知センサーユニット23、バルブユニット、及び給水管等27のメンテナンスをすることができる。凹部19の前側の立ち上がり面19Cは、便器本体10の上壁部17の後端縁から凹部19の底面(左右縁部19Aの上端面)まで延びて形成されている。この立ち上がり面19Cは左右中央部に向けて僅かに後方に膨らんだ湾曲面である。
【0032】
蓋部材30は、図3に示すように、上方から見た平面視が左右方向に長い略横長矩形状である。蓋部材30の左右幅は便器本体10の上壁部17より後方の左右幅と同じであり、前後幅は便器本体10に形成した凹部19の前後幅よりわずかに小さい。蓋部材30は、便器本体10の凹部19に嵌り込んで開口部19Bを閉鎖し、便器本体10に取付けられる。蓋部材30は、図4に示すように、下面の中央部が凹んでいる。蓋部材30は、便器本体10に取り付けられた状態で、上面が便器本体10の上壁部17の上面と面一になるように形成されている。
【0033】
蓋部材30は、図1図3に示すように、前面及び後面に左右方向に長い平板状の弾性体31A、31Bが取り付けられている。蓋部材30は、凹部19に嵌り込んで便器本体10に取り付けられると、前面に取り付けられた弾性体31Aが便器本体10に形成した凹部19の立ち上がり面19Cに当接し、後面に取付けた弾性体31Bが壁面Wに当接する。このため、蓋部材30が凹部19の立ち上がり面19Cと壁面Wとの間に突っ張った状態になるため、蓋部材30を取り外す際の抵抗になる。このため、第三者であれば、蓋部材30が便器本体10に固定されていると勘違いし、蓋部材30が移動され難くなる。
【0034】
1対の連結部材50は、図1図2図4、及び図5に示すように、蓋部材30の下面の前後方向の中央であり、左右端部に近い2か所に1個ずつ固定されている。各連結部材50は、図5に示すように、固定部51、連結部53、及びねじ部材55を有している。固定部51は、上面部51A、側面部51B、及び一対のガイド部51Cを有している。上面部51Aは蓋部材30の下面に図示しないボルトによって固定されている。側面部51Bは、上面部51Aが蓋部材30の下面に固定された状態で、蓋部材30の左右端部に近い上面部51Aの端部から垂下して形成されている。側面部51Bは、上面部51Aが蓋部材30の下面に固定された状態で、蓋部材30の左右端部に近い側面の中央にねじ部材55の頭部55Aが嵌り込む凹部52が形成されている。側面部は凹部52の中央にねじ部材55の軸部55Bを挿通する挿通孔52Aが貫設されている。一対のガイド部51Cは前後方向に離れて平行な状態で上面部から垂下している。一対のガイド部51Cは連結部53の上端部を間に挟み込んでいる。一対のガイド部51Cは、ねじ部材55を回転することによって連結部53を左右方向に往復移動させる際、ねじ部材55と共に連結部53が回転せずに往復移動するように案内する。
【0035】
連結部53は、連結部本体53A、及び係止部53Bを有している。連結部本体53Aは上方に開口した凹部53Cを設けている。この凹部53CにナットNが収納されており、ナットNを貫通するねじ孔に連続する貫通孔54が連結部本体の凹部19の対向面に貫設されている。係止部53Bは、連結部材50が蓋部材30の下面に固定されている状態で、連結部本体53Aの下部から垂直下方に延びた垂下片部56と、垂下片部56の下端から外方向に向けて水平方向に延びた鉤部58とを有している。鉤部58の下部はラウンド形状のリブ58Aが形成されている。連結部材50は、ねじ部材55が固定部51の挿通孔52Aを挿通し、連結部53の貫通孔54を挿通してナットNのねじ孔にねじ込まれることによって、固定部51、ねじ部材55、及び連結部53が一体化されている。
【0036】
このような構成を有する小便器1において、蓋部材30を便器本体10に取り付ける場合、先ず、図1に示すように、一方の連結部材50の連結部53を内側に移動させた状態にし、他方の連結部材50の連結部53を所定の距離だけ外側へ移動させた状態にする。そして、蓋部材30を便器本体10の凹部19に嵌め込むように下降させる。この際、他方の連結部材50の連結部53を所定の距離だけ外側へ移動させているので、その係止部53Bに設けられた鉤部58は便器本体10の左右壁部11の内面に設けられた孔部12に係止可能な状態になっている。
【0037】
そして、図5に示すように、連結部53が内側に移動している一方の連結部材50が固定されている側の蓋部材30の端部を持ち上げ、蓋部材30の下面と便器本体10の凹部19の底面の左右縁部19A(便器本体10の左右壁部11の上端面)との間の隙間ZからドライバーDを挿入する。そして、ドライバーDの先端をねじ部材55の頭部55Aに当接してねじ部材55を一方向に回転させる。すると、連結部材50の連結部53が外側に移動する。連結部53の係止部53Bに設けられた垂下片部56の外側面が便器本体10の凹部19の底面の左右縁部19A(便器本体10の左右壁部11)の内側側面19Dに当接するまで、ねじ部材55を一方向に回転させる。そして、持ち上げていた蓋部材30の端部を便器本体10上に下ろす。蓋部材30が便器本体10に対して左右にずれている場合は、蓋部材30の左右端部を片方ずつ持ち上げて、隙間ZからドライバーDを挿入してねじ部材55を回転させ、左右の連結部材50の連結部53の位置を微調整する。このようにして、蓋部材30を開口部19Bを閉鎖した閉鎖状態に取り付ける。これによって、図4に示すように、各連結部材50の連結部53の係止部53Bに設けられた鉤部58が便器本体10の左右壁部11の内面に設けられた各孔部12に係止可能な状態になる。
【0038】
このようにして、蓋部材30が開口部19Bを閉鎖した閉鎖状態に便器本体10に取り付けられた小便器1は、蓋部材30に設けられた各連結部材50の全体が隠蔽されて露出しない。このため、この小便器1は蓋部材30を便器本体10に取り付ける連結部材50を外側から視認することができない。このように、この小便器1は、連結部材50が露出しないため、見栄えが良い。また、この小便器1は、連結部材50が露出しないため、第三者によって、連結部53の係止部53Bに設けられた鉤部58が被連結部である各孔部12との係止可能な状態を解除され難く、蓋部材30が取り外され難い。
【0039】
したがって、実施例1の小便器は、見栄えが良く、第三者が蓋部材30を取り外すことを困難にすることができる。
【0040】
また、この小便器1において、蓋部材30を便器本体10から取り外す場合、少なくとも一方の連結部材50の連結部53を内側に移動させる。つまり、蓋部材30の端部の一方を持ち上げて、隙間ZからドライバーDを挿入し、ねじ部材55を他方向に回転させて、連結部材50の連結部53を内側に移動させる。これによって、連結部材50の連結部53の係止部53Bに設けられた鉤部58が便器本体10の左右壁部11の内面に設けられた孔部12に係止した状態を解除する。これによって、蓋部材30を上方に移動させることができ、蓋部材30を便器本体10から取り外すことができる。
【0041】
このように、この小便器1は、ねじ部材55を回転させることによって、連結部53の係止部53Bに設けられた鉤部58を被連結部である各孔部12に対して係止する位置と係止しない位置とに確実に移動させることができる。
【0042】
また、この小便器1は、図2及び図4に示すように、連結部材50の連結部53の係止部53Bに設けられた鉤部58が便器本体10の左右壁部11の内面に設けられた各孔部12に係止可能な位置で便器本体10に取り付けられた状態で、蓋部材30を持ち上げる(蓋部材30を開口部19Bが開口する方向に移動させる)と、鉤部58が各孔部12に係止し、蓋部材30と開口部19Bとの間に隙間Zを生じた係止状態になる。仮に、第三者が蓋部材30を便器本体10から取り外そうとし、蓋部材30を持ち上げると、鉤部58が各孔部12に係止した係止状態になるため、第三者はそれ以上蓋部材30を持ち上げることができない。
【0043】
また、連結部材50は、蓋部材30を持ち上げて、鉤部58が各孔部12に係止し、蓋部材30と開口部19Bとの間に隙間Zを生じた係止状態において、その隙間Zから目視可能な位置にねじ部材55の頭部55Aを配置している。言い換えれば、蓋部材30は、ねじ部材55の頭部55Aが目視可能な位置まで持ち上げられる(開口部19Bを開口する方向に移動する)ことによって、鉤部58が各孔部12に係止する係止状態になる。このため、蓋部材30を持ち上げて、開口部19Bとの間に生じた隙間Zからねじ部材55の頭部55Aを目視しながらドライバーDの先端部をねじ部材55の頭部55Aに当接させて、ねじ部材55を回転させることができる。このため、この小便器1はねじ部材55を確実かつ容易に回転させることができる。
【0044】
また、蓋部材30は鉤部58が各孔部12に係止する係止状態に持ち上げられた際、図2に示すように、前面の下部が便器本体10の凹部19の立ち上がり面19Cに重なる。このため、蓋部材30が係止状態に持ち上げられても、この部分に隙間が生じず、この部分から便器本体10の内部を覗くことができない。また、この部分から異物が便器本体10内に投入されることを防止することができる。
【0045】
<実施例2>
実施例2の衛生設備機器である小便器101は、図6に示すように、便器本体10と蓋部材30との間に蓋部材30を便器本体10に仮固定する固定部材110を備えている点で実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構0成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
固定部材110は、便器本体10の凹部19の底面の左右縁部19Aを構成する左右壁部11の上面に張り付けられた鉄板110Aと、蓋部材30を便器本体10に取り付けた際にこの鉄板110Aに対向する蓋部材30の底面に張り付けられた磁石110Bとから構成されている。つまり、この固定部材110は、蓋部材30を持ち上げようとすると、磁力が働き、持ち上げる抵抗になる。このため、第三者であれば、蓋部材30が便器本体10に固定されていると勘違いし、蓋部材30が取り外され難くなる。
【0047】
<実施例3>
実施例3の衛生設備機器である小便器201は、図7に示すように、連結部材250の形態が実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
この連結部材250は、固定部251、連結部253、ねじ部材55、及びスプリング257を有している。固定部251は、上面部251A、第1側面部251B、第2側面部251C、及び一対のガイド部251Dを有している。上面部251Aは蓋部材30の下面に図示しないボルトによって固定されている。第1側面部251Bは、上面部251Aが蓋部材30の下面に固定された状態で、蓋部材30の左右端部に近い上面部251Aの端部から垂下して形成されている。第1側面部251Bは、上面部251Aが蓋部材30の下面に固定された状態で、蓋部材30の左右端部に近い側面の中央にねじ部材55の頭部が嵌り込む凹部252が形成されている。第1側面部251Bは凹部252の中央にねじ部材55の軸部55Bを挿通する挿通孔252Aが貫設されている。第2側面部251Cは、第1側面部251Bから内側に離れた位置に上面部251Aから垂下して形成されている。第2側面部251Cはねじ部材55が挿通する挿通孔251Eが貫設されている。また、第2側面部251Cは内側にナットNが取り付けられている。ナットNのねじ孔と第2側面部251Cの挿通孔251Eとは同軸である。一対のガイド部251Dは前後方向に離れて平行な状態で上面部251Aから垂下している。一対のガイド部251Dは連結部253の上端部を間に挟み込みんでいる。
【0049】
連結部253は、連結部本体253A、及び係止部253Bを有している。連結部本体253Aは上方にねじ部材55が挿通する挿通孔254が貫設されている。係止部253Bは、連結部材250が蓋部材30の下面に固定されている状態で、連結部本体253Aの下部から垂直下方に延びた垂下片部256と、垂下片部256の下端から外方向に向けて水平方向に延びた鉤部258とを有している。鉤部258の下部はラウンド形状のリブ258Aが形成されている。
【0050】
スプリング257は、固定部251の第2側面部251Cと連結部本体253Aとの間に介在し、内側にねじ部材55の軸部55Bが挿入されている。ねじ部材55は、第1側面部251Bの凹部252から第1側面部251Bの挿通孔252A、連結部本体253Aの挿通孔254、スプリング257、及び第2側面部251Cの挿通孔241Eを挿通して、第2側面部251Cの内側に取り付けられたナットNにねじ込まれている。この連結部材250はスプリング257の弾性力が連結部253を外側に移動させる方向に働いている。
【0051】
このような構成を有する小便器201において、蓋部材30を便器本体10に取り付ける場合、蓋部材30を便器本体10の凹部19に嵌め込むように下降させる。すると、連結部材250の連結部253の係止部253Bに設けられた鉤部258の下部のラウンド形状のリブ258Aが便器本体10の開口部19Bの内側(器本体の左右壁部11の内側)に当接し、スプリング257の弾性力に抗して連結部253が内側に移動する。そして、蓋部材30を開口部19Bが閉鎖した閉鎖状態に取り付ける。これによって、図7(A)に示すように、各連結部材250の連結部253の係止部253Bに設けられた鉤部258が便器本体10の左右壁部11の内面に設けられた各孔部12に係止可能な状態になる。このように、この小便器201は、スプリング257の弾性変形によって、連結部253が往復移動する。そして、蓋部材30を開口部19Bが閉鎖した閉鎖状態に取り付けると、鉤部258が孔部12に係止可能な状態になるため、蓋部材30を便器本体10の所定の位置に配置するだけで、鉤部258と孔部12とが係止可能な状態になる。
【0052】
このようにして、蓋部材30が便器本体10に取り付けられた小便器201は、便器本体10と蓋部材30とによって、蓋部材30に設けられた各連結部材250の全体が隠蔽されて露出しない。このため、この小便器201は蓋部材30を便器本体10に取り付ける連結部材250を外側から視認することができない。このように、この小便器201は、連結部材250が露出しないため、見栄えが良い。また、この小便器201は、連結部材250が露出しないため、第三者によって、連結部253の係止部253Bに設けられた鉤部258が被連結部である各孔部12との係止可能な状態を解除され難く、蓋部材30が取り外され難い。
【0053】
したがって、実施例3の小便器201も、見栄えが良く、第三者が蓋部材30を取り外すことを困難にすることができる。
【0054】
また、この小便器201において、蓋部材30を便器本体10から取り外す場合、図7(B)に示すように、一方の連結部材250のスプリング257の弾性力に抗して連結部253が蓋部材30に対して内側に移動するように、蓋部材30を左右一方向に移動させる。これによって、蓋部材30が左右の一方向に移動し、この連結部材250とは反対側に固定された連結部材250の鉤部258が孔部12に係止した状態を解除することができる。これによって、蓋部材30を上方に移動させることができ、蓋部材30を便器本体10から取り外すことができる。
【0055】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1〜3に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1〜3では、蓋部材に連結部材を設けたが、便器本体(衛生設備機器本体)に連結部材を設けてもよい。この場合、蓋部材に被連結部である孔部を設ける。
(2)実施例1〜3では、蓋部材に固定した連結部材の係止部に鉤部を設け、鉤部に係止する孔部を便器本体に設けることによって、鉤部と孔部を係止するように蓋部材を便器本体に取り付けたが、連結部材が便器本体の左右壁部の内面に当接して突っ張らせることによって、蓋部材が取り外されないように便器本体に取り付けるようにしてもよい。
(3)実施例1〜3では、便器本体の上下方向に開口する開口部を閉鎖する蓋部材であったが、左右方向に開口する開口部を閉鎖する蓋部材に適用してもよい。
(4)実施例1〜3では、蓋部材に設けられた一対の連結部材が同じ形態であったが、一方の連結部材において連結部が固定式のものであってもよい。
(5)実施例1〜3では、係止状態において、蓋部材の前面に一部が凹部の立ち上がり面に重なったが、重ならなくてもよい。
(6)実施例1〜3では、鉤部が係止する孔部を略四角形状にしたが、円形状であってもよい。
(7)実施例2では、磁石と鉄板を利用して蓋部材を便器本体に仮固定する固定部材を構成したが、固定部材を面ファスナーや、粘着剤を利用して構成してもよい。
(8)実施例3では、スプリングの弾性力を利用して連結部を往復移動するようにしたが、連結部を弾性体によって作成し、連結部の弾性変形によって鉤部を孔部に係止するように移動可能にしてもよい。
(9)実施例3では、ねじ部材を利用したが、ねじ部材でなくても、第1側面部と第2側面部との間に配置され、スプリングの内側に挿入されるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、大便器、小便器、洗浄水を貯留するタンク等の衛生設備機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、101、201…小便器(衛生設備機器)
10…便器本体(機器本体)
12…孔部(被連結部)
19…凹部
19B…開口部
19C…立ち上がり面
30…蓋部材
31A、31B…弾性体
50、250…連結部材
53、253…連結部
55…ねじ部材
55A…(ねじ部材の)頭部
Z…隙間
110…固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7