特許第6247875号(P6247875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6247875スルホニウム塩型カチオン発生剤及びそれを含むカチオン重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247875
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】スルホニウム塩型カチオン発生剤及びそれを含むカチオン重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20171204BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20171204BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08G59/68
   C07C381/12
   C07F5/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-198802(P2013-198802)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-63624(P2015-63624A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】志村 忠
(72)【発明者】
【氏名】島田 仁
(72)【発明者】
【氏名】片岡 康浩
(72)【発明者】
【氏名】上村 直弥
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/042796(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/113829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物Aと、
下記一般式(2)で表される化合物Bと、
を含み、
当該化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比が、0.5以上0.995以下である、スルホニウム塩型カチオン発生剤。
【化1】
【化2】
(上記一般式(1)及び一般式(2)中、R2は、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等、アルキル基、アラルキル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールチオカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基からなる群より選ばれる基を表し、R3は、アルキル基であり、R4は、アラルキル基、又はβ位に不飽和基を有するアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは1〜5の整数を表す。nは0〜3の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、nとmはn+m≦4を満たす。R1はSbY6-、PY6-、AsY6-、BY4-、CY3SO3-、及びCY3SO3-(ただし、上記YはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、からなる群より選ばれる1つである、又は下記一般式(3)若しくは下記式(4)である。)
【化3】
(上記一般式(3)中、Y’は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、当該Y’の少なくとも一つはハロゲン原子である。)
【化4】
【請求項2】
前記R2が、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、メトキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ボロン酸、リン酸、メトキシカルボニル、ヒドロキシメチル基、リン酸ジメチル基、イソブチロ基、イソチオシアネート基、チオウレア基、ニトロ基、トリフルオロ基、アセチル基、カルボニルヒドラジド基、メチルアミノ基、テトラメチルジオキソボラン基、プロピオン酸基からなる群より選ばれる基である、請求項に記載のスルホニウム塩型カチオン発生剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスルホニウム塩型カチオン発生剤と、カチオン重合性有機化合物と、を含む、カチオン重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホニウム塩型カチオン発生剤及びそれを含むカチオン重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ICチップなどの電子部品を配線基板に実装する際に使用する接着剤の一種として、光カチオン重合性のエポキシ系樹脂組成物が用いられている。このような光カチオン重合性のエポキシ系樹脂組成物には、光によりプロトンを発生してカチオン重合を開始させる光カチオン重合開始剤が配合されており、そのような光カチオン重合開始剤としてスルホニウムアンチモネート錯体が知られている。
【0003】
上記スルホニウムアンチモネート錯体は、金属であるアンチモンにフッ素原子が結合しているSbF6-をカウンターアニオンとして有する。そのため、カチオン重合時にフッ素イオンが多量に発生してしまい、異種金属間におけるマイグレーションを誘発し、金属配線や接続パッドを腐蝕させるという問題があった。そのため、SbF6-に代えて、フッ素原子が炭素原子に結合しているテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン[(C654-]を使用したスルホニウムボレート錯体をカチオン重合開始剤として使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−176112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子部品を配線基板に実装する際に、接合部に光照射ができない場合も数多く生ずる。スルホニウムボレート錯体を熱カチオン重合性のエポキシ樹脂組成物のための熱カチオン重合開始剤に転用することができれば、上記の場合であっても支障がないと考えられる。しかしながら、単に特許文献1に記載の技術を熱カチオン重合開始剤に転用するのみでは、(a)フッ素イオンの発生を低減させることによるエポキシ系樹脂組成物の耐電食性の確保、(b)硬化剤(重合開始剤)の使用量を少量に抑えることによる生産性の向上、(c)エポキシ系樹脂組成物の低温硬化性の向上、及び(d)保存安定性確保、を同時に満足することができない。
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、エポキシ系樹脂組成物の耐電食性を確保しつつ、優れた低温硬化性、保存安定性を有し、少量でも硬化性を発揮するスルホニウム塩型カチオン発生剤及びカチオン重合性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表される化合物Aと、
下記一般式(2)で表される化合物Bと、
を含み、
当該化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比が、0.5以上0.995以下である、スルホニウム塩型カチオン発生剤。
【化1】
【化2】
(上記一般式(1)及び一般式(2)中、R2は、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等、アルキル基、アラルキル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールチオカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基からなる群より選ばれる基を表し、R3は、アルキル基であり、R4は、アラルキル基、又はβ位に不飽和基を有するアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは1〜5の整数を表す。nは0〜3の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、nとmはn+m≦4を満たす。R1はSbY6-、PY6-、AsY6-、BY4-、CY3SO3-、及びCY3SO3-(ただし、上記YはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、からなる群より選ばれる1つである、又は下記一般式(3)若しくは下記式(4)である。)
【化3】
(上記一般式(3)中、Y’は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、当該Y’の少なくとも一つはハロゲン原子である。)
【化4】
[2
前記R2が、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、メトキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ボロン酸、リン酸、メトキシカルボニル、ヒドロキシメチル基、リン酸ジメチル基、イソブチロ基、イソチオシアネート基、チオウレア基、ニトロ基、トリフルオロ基、アセチル基、カルボニルヒドラジド基、メチルアミノ基、テトラメチルジオキソボラン基、プロピオン酸基からなる群より選ばれる基である、[1]に記載のスルホニウム塩型カチオン発生剤
[3
[1]又は[2]に記載のスルホニウム塩型カチオン発生剤と、カチオン重合性有機化合物と、を含む、カチオン重合性組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エポキシ系樹脂組成物の耐電食性を確保しつつ、優れた低温硬化性、保存安定性を有し、少量でも硬化性を発揮するスルホニウム塩型カチオン発生剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0010】
[スルホニウム塩型カチオン発生剤]
本実施形態のスルホニウム塩型カチオン発生剤は、下記一般式(1)で表される化合物Aと、下記一般式(2)で表される化合物Bと、を含み、当該化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比は、0.5以上0.995以下である。このように構成されているため、本実施形態のスルホニウム塩型カチオン発生剤は、エポキシ系樹脂組成物の防食効果を確保しつつ、優れた低温硬化性、保存安定性を有し、少量でも硬化性を発揮することができる。
【0011】
【化4】
【0012】
【化5】
【0013】
上記一般式(1)及び一般式(2)中、R2、R3、R4はそれぞれ、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等、アルキル基、アラルキル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールチオカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基からなる群より選ばれる基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは1〜5の整数を表す。nは0〜3の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、nとmはn+m≦4を満たす。R1は1価のアニオンになりうる原子団を表す。なお、n+m>4の場合は、立体障害のために、R4を含むカルボカチオンが脱離しやすく、本実施形態所望の温度よりも低温で容易にカチオンを生成しやすくなり、安定性が低下する傾向がある。
【0014】
本実施形態のスルホニウム塩型カチオン発生剤において、化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比が、0.5以上0.995以下であり、好ましくは0.6以上0.99以下であり、より好ましくは0.7以上0.985以下である。上記質量比が0.995以下であることにより、スルホニウム塩の拡散性が低下することで重合性化合物を含む組成物中にスルホニウム塩が残存しやすくなり硬化性が低下する、という不都合を効果的に防止できる傾向にある。また、上記質量比が0.5以上であることにより、より優れた保存安定性を確保することができる。一方、上記質量比が0.995を超える場合、スルホニウム塩の拡散性が低下し、重合性化合物を含む組成物中に未反応のスルホニウム塩が残存しやすくなり、硬化性が低下する。また、上記質量比が0.5未満である場合、保存安定性が低下する。このメカニズムは明らかではないが、次のように考えることができる。すなわち、化合物Bの比率が増加すると、1分子内にR4を複数含む構造が増えることにより、スルホニウム基に対して、R4を含む部分の立体障害が大きくなる傾向にあると考えられる。R4を複数含む構造は共鳴構造が大きくなるために安定なカチオンを生成するが、所望の温度よりも低温で容易にカチオンを生成しやすくなる傾向にあると考えられる。
【0015】
本実施形態における化合物A及び化合物Bの質量比は、LC−MS分析により同定される各ピークに基づいて特定することができる。より詳細には、LCによる面積比はJIS K0124により求めることができる。より具体的には、R4がナフチル基の場合を例にすると、MSスペクトルにおける検出イオンm/zが140異なるピークから、それぞれ化合物A及び化合物Bの各ピークを同定することができる。
【0016】
(LC測定)
化合物Aと化合物Bとの質量比率Xは、HPLCで観測されるピークの面積の比率(%)から次の計算式により求めることができる。化合物A及び化合物BのLCのピークは、それぞれマススペクトルを測定することにより行うことができる。各ピークの面積は、各ピークに対して直線のベースラインを引き、ベースラインとピークによって囲まれる面積で近似できる。すなわち、Xは次式により求めることができる。
X=(化合物Aの面積の比率%)/(化合物Aの面積の比率%+化合物Bの面積の比率%)
【0017】
LCはWaters社製高速液体クロマトグラフィー UPLC H Class〔カラム:Waters社製 CSH C18(カラム寸法2.1mmI.D.×50mm)、溶離液:アセトニトリル/0.1質量%ギ酸水溶液=0/100を20分で100/0にするグラジエント分析、流速:0.2mL/min、検出器:PDA(UV280nm)、温度40℃、試料濃度0.5質量%、インジェクション量:1μL、ピーク面積の解析ソフト:Waters社Empower〕により測定することができる。
【0018】
本実施形態のスルホニウム塩型カチオン発生剤に含まれる化合物A、化合物Bの化学構造は、それぞれ一般的な分析手法(たとえば、1H−核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル及び/又は元素分析等)によって同定することができる。
【0019】
上記一般式(2)のより詳細な例としては、下記の一般式(2−1)〜(2−12)を挙げることができる。
【0020】


【化6】
【0021】
上記の一般式(2−1)〜(2−12)におけるR1〜R4、x、m、nは、それぞれ前述と同様である。なお、本実施形態における化合物Bは、上記の一般式(2−1)〜(2−12)に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態において、スルホニウム化反応の収率をより向上させる観点から、上記R3がアルキル基であることが好ましい。そのようなR3の例としては、アルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル及びn−オクタデシル等)、炭素数1〜18の分枝鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシル及びイソオクタデシル)、及び炭素数3〜18のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及び4−デシルシクロヘキシル等)等が挙げられる。上記した中でも、立体障害の観点から、メチル基、エチル基、n―プロピル、イソプロピル基がより好ましい。
【0023】
本実施形態におけるR2の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、メトキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ボロン酸、リン酸、メトキシカルボニル、ヒドロキシメチル基、リン酸ジメチル基、イソブチロ基、イソチオシアネート基、チオウレア基、ニトロ基、トリフルオロ基、アセチル基、カルボニルヒドラジド基、メチルアミノ基、テトラメチルジオキソボラン基、プロピオン酸基が挙げられ、それらを組み合わせてもよい。また、R2の位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよい。また、合成プロセスの容易性の観点から、上記R2がカルボキシル基、アミノ基、水酸基、メトキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ボロン酸、リン酸、メトキシカルボニル、ヒドロキシメチル基、リン酸ジメチル基、イソブチロ基、イソチオシアネート基、チオウレア基、ニトロ基、トリフルオロ基、アセチル基、カルボニルヒドラジド基、メチルアミノ基、テトラメチルジオキソボラン基、プロピオン酸基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。中でも、芳香環への電子供与性、電子吸引性の観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、メトキシ基、フッ素、水素、アミノ基が好ましい。
【0024】
本実施形態におけるR4は、発生カチオンの共役の観点から、アラルキル基、又はβ位に不飽和基を有するアルキル基が好ましい。アラルキル基としては炭素数6〜10のアリール基で置換されている低級アルキル基(ベンジル、2−メチルベンジル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル等)等が挙げられる。R4の例としてはトリフェニルメチル基、ジフェニルメチル基、(1,2−ジフェニルエタン)メチル基、o−/m−/p−ニトロベンジル基、メトキシベンジル基、メチルベンジル基、(安息香酸エチル)メチル基、(安息香酸メチル)エチル基、(安息香酸メチル)メチル基、(安息香酸エチル)エチル基、(トリフルオロメチル)ベンジル基、シアノベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、テトラメチルベンジル基、ビス(トリフルオロメチル)ベンジル基、4−メトキシ−3−メチルベンジル基、トリメトキシベンジル基、ジメトキシベンジル基、メチルスルホニルベンジル基、4−メチル−ナフチル基、α―ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、メチルスチリル基、アントラセンメチル基、フルオレンメチル基、4−メトキシトリチル基、メチルビフェニル基、ベンジル基である。中でも立体障害の観点から、α−ナフチルメチル基、2−メチルベンジル基、プロパルギル基、ブテン基がより好ましい。
【0025】
本実施形態において、酸性度の観点から、上記R1がSbY6-、PY6-、AsY6-、BY4-、CY3SO3-、及びCY3SO3-(ただし、上記YはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、からなる群より選ばれる1つである、又は下記一般式(3)であることが好ましい。
【0026】
【化7】
(上記一般式(3)中、Y’は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、当該Y’の少なくとも一つはハロゲン原子である。)
【0027】
より具体的には、好ましいR1として、SbF6-、PF6-、AsF6-、BF4-、SbCl6-、ClO4-、CF3SO3-、CH3SO3-、FSO3-、F2PO2-、p−トルエンスルフォネート、カンファースルフォネート、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロ基等を挙げることができる。上記ボレート化合物のカチオン部分は、リチウムカチオン又はナトリウムカチオンであることが好ましく、ナトリウムカチオンであることがより好ましい。
【0028】
本実施形態における化合物A,B(スルホニウム塩)は、カチオン(酸)発生剤として好適である。本明細書において、「カチオン発生剤」とは、加熱又はエネルギー照射によりその化学構造が分解し、カチオン(酸)を発生するものをいう。発生した酸は、重合性化合物の硬化反応等の触媒として使用することができる。
【0029】
本実施形態における酸発生剤は、本実施形態における化合物A,B(スルホニウム塩)をそのまま使用してもよいし、これに他の酸発生剤を含有させて使用してもよい。他の酸発生剤を含有する場合、他の酸発生剤の含有量(質量部)は、本実施形態におけるスルホニウム塩の総モル数に対して、1〜100質量部が好ましく、さらに好ましくは5〜50質量部である。他の酸発生剤としては、オニウム塩(スルホニウム、ヨードニウム、セレニウム、アンモニウム、ホスホニウム等)並びに遷移金属錯体イオンと、アニオンとの塩等の従来公知のものが含まれる。
【0030】
本実施形態におけるスルホニウム塩型カチオン発生剤は、すなわち、酸発生剤としての機能を有する。上記酸発生剤は、後述するカチオン重合性化合物への溶解を容易にするため、あらかじめ溶剤及び/又はカチオン重合性化合物に溶かしておいてもよい。
【0031】
上記溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどのカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0032】
溶剤を使用する場合、溶剤の使用割合は、本実施形態におけるスルホニウム塩型カチオン発生剤(酸発生剤)100質量部に対して、15〜1000質量部が好ましく、さらに好ましくは30〜500質量部である。使用する溶媒は、単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
[スルホニウム塩型カチオン発生剤の製造方法]
本実施形態のスルホニウム塩型カチオン発生剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の反応式1〜3に従って製造することができる。なお、反応式1〜3中におけるR1〜R4、x、m、nは前述した定義と同一である。また、Zはハロゲンを表し、AgZはアルカリ金属カチオンとハロゲンアニオンとの塩を表す。さらにまた、Y1はアルカリ金属イオン(Li、Na、K)を表す。
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
反応式1中で、AgZはイオン半径の大きいアニオンを有するAg化合物であることが好ましい。反応式1に示す態様では、銀化合物及び硫黄化合物を溶媒に溶解あるいは分散し、その溶液にメチレン基を有する化合物を混合する。次いで、得られた混合物からAgZを除去して、Y11を混合する。得られた混合物を脱塩し、有機溶媒層を分液した後、有機溶媒を留去することにより化合物A,B(スルホニウム塩)を得ることができる。
【0038】
反応式2に示す態様では、水銀化合物及び硫黄化合物を溶媒に溶解あるいは分散し、その溶液にメチレン基を有する化合物を混合する。得られた混合物にY11を混合する。得られた混合物を脱塩し、有機溶媒層を分液した後、有機溶媒を留去することにより化合物A,B(スルホニウム塩)を得ることができる。
【0039】
反応式3に示す態様では、同式に示すスルフィドをジクロロメタン等の有機溶媒に溶解あるいは分散し、その溶液にアルキル化剤(Meerwein試薬)を等モル量で混合し、得られた2層系混合物を20〜80℃の温度で1〜3時間撹拌する。次いで、スルホニウムハライドとフッ素化アルキルリン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとの塩を反応させ、有機溶媒層を分液した後、有機溶媒を留去することにより化合物A,B(スルホニウム塩)を得ることができる。
【0040】
上記反応式1〜3の反応は、必要により有機溶媒(ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、アセトン等)中で行ってもよい。反応温度は、0〜120℃程度とすることができる。反応時間は、1〜数十時間程度とすることができる。
【0041】
第2段目の反応は、第1段目の反応に引き続いて行ってもよいし、反応中間体を単離(必要に応じて精製)してから行ってもよい。反応中間体を混合・撹拌して、複分解反応を行い、析出する固体をろ別するか、又は分離した油状物を有機溶媒で抽出して有機溶媒を除去することにより、本実施形態のスルホニウム塩が固体あるいは粘稠な液体として得られる。得られる固体又は粘稠液体は必要に応じて適当な有機溶媒で洗浄するか、再結晶法もしくはカラムクロマトグラフィー法により精製することができる。
【0042】
[カチオン重合性組成物]
本実施形態のカチオン重合性組成物とは、本実施形態のスルホニウム塩型カチオン発生剤(カチオン重合開始剤)、及びカチオン重合性有機化合物を含有するものである。本実施形態におけるカチオン重合性有機化合物は、1種類又は2種類以上混合して使用される。
【0043】
上記カチオン重合性有機化合物の代表的な化合物としては、エポキシ化合物及びオキセタン化合物が挙げられる。これらは入手が容易であり、取り扱いが便利である点で好ましい。
【0044】
上記エポキシ化合物としては、特に限定されないが、脂環族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが適している。
【0045】
上記脂環族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない。より詳細には、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0046】
また、上記脂環族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM−2110、KRM−2199(以上、(株)ADEKA製)などを挙げることができる。
【0047】
上記芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂などが挙げられる。しかしながら上記に限定されない。
【0048】
上記芳香族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としてはエピコート825、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828US、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート806、エピコート806L、エピコート806H、エピコート807、1750、YL980、YL983U(三菱化学社製)、EPICLON840、EPICLON840−S、EPICLON850、EPICLON850CRP、EPICLON850LC、EPICLON860、EPICLON830、EPICLON830S、EXA−830LVP、EPICLON835、EXA−835LV(DIC社製)KRM−2720、EP−4100、EP−4100F、EP−4000、EP−4080、EP−4900、EP4901、ED−505、ED−506(以上、(株)ADEKA製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学(株)製)、サントートST0000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−172、YDPN638、YD−8125、YD−825DS、YD−825GSH、ZX−1059(以上、新日鐵住金化学製)、RE−310S、RE−303S−H、RE−303S−L、RE−602S、RE−305、RE−305S、RE−306(日本化薬社製)、D.E.R.317、D.E.R.330、D.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.337、D.E.R.362、D.E.R.364、D.E.R.383、D.E.R.324、D.E.R.325、D.E.R.732、D.E.R.736(DOW社製)などを挙げることができる。
【0049】
なお、上記脂肪族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、YH−300、YH−301、YH−315、YH−324、YH−325(新日鐵住金化学製)、EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(ナガセケムテックス製)が挙げられる。
【0050】
また、上記オキセタン化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の化合物を挙げることができる。すなわち、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3´−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどを例示することができる。これらオキセタン化合物は、特に可撓性を必要とする場合に使用すると効果的であり、好ましい。
【0051】
カチオン重合性有機化合物のその他の具体例としては、テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフランなどのオキソラン化合物、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール化合物、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物、エチレンスルフィド、チオエピクロルヒドリンなどのチイラン化合物、1,3−プロピンスルフィド、3,3−ジメチルチエタンなどのチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体などの環状チオエーテル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロピレングリコールのプロペニルエーテルなどのビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物、スチレン、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物、シリコーン類等周知の化合物が挙げられる。しかしながらこれらに限定されない。
【0052】
本実施形態のカチオン重合性組成物は、必要に応じて更にラジカル重合性有機化合物及びエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を混合して用いることもできる。
【0053】
本実施形態において使用できるラジカル重合性有機化合物は、エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤の存在下、エネルギー線照射により高分子化又は架橋反応するラジカル重合性有機化合物であり、好ましくは、1分子中に少なくとも1個以上の不飽和二重結合を有する化合物である。
【0054】
上記ラジカル重合性有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、アリルウレタン化合物、不飽和ポリエステル化合物、スチレン系化合物等が挙げられる。上記したラジカル重合性有機化合物の中でも(メタ)アクリル基を有する化合物は、合成、入手及び取り扱いが容易であり、好ましい。例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0055】
ここで、エポキシ(メタ)アクリレートとは、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などと、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるアクリレートである。これらのエポキシ(メタ)アクリレートのうち、特に好ましいものは、芳香族エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレートである。例えば、ビスフェノールA、又はそのアルキレンオキサイド付加体をエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとして好ましいものは、1種又は2種以上の水酸基含有ポリエステルや水酸基含有ポリエーテルに水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレートや、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレート等である。
【0057】
本実施形態において使用できる水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種又は2種以上の多塩基酸との反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。上記脂肪族多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。上記多塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。
【0058】
上記水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0059】
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。
【0060】
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸のうち、脂肪族二価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは特に好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
上記イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が、特に好ましい。
【0062】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。本実施形態において使用できる水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種又は2種以上の1塩基酸、多塩基酸及びフェノール類とのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。上記脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。上記1塩基酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。上記多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。上記フェノール類としては、例えば、フェノール、p−ノニルフェノール、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0063】
上記ポリエーテル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエーテルと、メタ(アクリル)酸とを反応させて得られるポリエーテル(メタ)アクリレートである。本実施形態において使用できる水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルである。上記脂肪族多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0064】
アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、分子中に少なくとも1個の水酸基を持つ芳香族又は脂肪族アルコール、及びそのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートのうち、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0065】
これらラジカル重合性有機化合物の市販品としては、特に限定されないが、単官能の例として、アロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亜合成(株)製)、KAYARADTC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0066】
また、多官能の例としては、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亜合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、TEICA、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鉄住金化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)などを挙げることができる。しかしながら、これらに限定されない。
【0067】
上記ラジカル重合性有機化合物は1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。中でも、ラジカル重合性有機物質のうち50質量%以上が、分子中に(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。
【0068】
本実施形態におけるラジカル重合性有機化合物を使用する場合の配合については、カチオン重合性有機化合物100質量部に対してラジカル重合性有機化合物が200質量部以下であることが好ましく、10〜100質量部であることが特に好ましい。
【0069】
本実施形態におけるエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は、エネルギー線照射を受けることによってラジカル重合を開始させることが可能となる化合物であれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などのケトン系化合物を好ましいものとして例示することができる。
【0070】
上記アセトフェノン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ターシャリブチルジクロロアセトフェノン、p−ターシャリブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0071】
上記ベンジル系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル、アニシル等が挙げられる。
【0072】
上記ベンゾフェノン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0073】
上記チオキサントン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0074】
本実施形態において、その他のエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフェインオキサイド、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル]チタンなどが挙げられる。
【0075】
上記したエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は、1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
【0076】
本実施形態におけるエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性有機化合物に対して化学量論的必要量を使用すればよいが、好ましくはラジカル重合性有機化合物100質量部に対して0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部配合するのがよい。エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤の配合量が10質量%を超えると十分な強度を有する硬化物が得られず、0.05質量部未満であると樹脂が十分硬化しない場合がある。
【0077】
本実施形態において、スルホニウム塩型カチオン発生剤の使用量を、上記のカチオン重合性有機化合物100質量部に対して、0.01質量部以上とすることで、十分な硬化性を確保できる傾向にあり、10質量部以下とすることで、スルホニウム塩型カチオン発生剤の使用効果を十分に確保しつつ硬化物の諸物性をより良好なものにできる傾向にある。このような観点から、上記のとおり0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.1質量部〜5質量部がより好ましい。
【0078】
また、本実施形態のカチオン重合性組成物には、その他の任意成分として、各種添加剤を配合して用いることもある。各種添加剤としては、特に限定されないが、例えば、有機溶剤、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物、(ポリ)リン酸メラミン、(ポリ)リン酸ピペラジン等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系又は金属石けん系の滑剤;染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤;フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、珪藻土、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト、シリカ等の珪酸系無機添加剤;ガラス繊維、炭酸カルシウム等の充填剤;造核剤、結晶促進剤等の結晶化剤;シランカップリング剤;可撓性(プレ)ポリマー等のゴム弾性付与剤;ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等の縮合多環芳香族誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、アクリジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スピロピラン誘導体、紫外から近赤外線領域に吸収を示す色素等の増感剤;多価アルコール、水酸基含有ポリエーテル、水酸基含有ポリエステル、多価フェノールなどの1分子中に2個以上の水酸基を含有する有機化合物、熱可塑性高分子化合物、レベリング剤、増粘剤、安定剤が挙げられる。
【0079】
また、本実施形態のカチオン重合性組成物へのスルホニウム塩型カチオン発生剤(カチオン重合開始剤)の溶解を容易にするため、予めカチオン重合開始剤を適当な溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチロラクトン等)に溶解して使用することができる。
【0080】
本実施形態のカチオン重合性組成物は、カチオン重合性化合物、カチオン重合開始剤、及び必要に応じてその他の任意成分を混合、溶解あるいは混練等することで調製することができる。
【0081】
本実施形態のカチオン重合性組成物は、紫外線等のエネルギー線を照射することにより、通常は0.1秒〜数分後に指触乾燥状態、あるいは溶媒不溶性の状態に硬化することができる。適当なエネルギー線としては、カチオン重合開始剤の分解を誘発する限り特に限定されないが、好ましくは、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、YAGレーザー、発光ダイオード、CRT光源などから得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができる。
【0082】
本実施形態のカチオン重合性組成物は、保存安定性の観点から、安定剤を含んでもよい。上記安定剤としては、特に限定されないが、グアニジン系化合物としては、N,N′−ジメチルグアニジン、N,N′−ジフェニルグアニジン等が挙げられる。また、チアゾール系化合物を例示すれば、2−メルカプトチアゾール、2−アミノチアゾール等が挙げられる。さらに、チオウレア系化合物を例示すれば、チオウレア、エチレンチオウレア、N,N−ジメチルチオウレア、N,N′−ジエチルチオウレア、N,N′−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、ジシクロヘキシルチオウレア、テトラメチルチオウレア、テトラエチルチオウレアが挙げられる。さらにまた、アルキルフェニルスルフィド系化合物を例示すれば、4−ヒドロキシフェニルメチルスルフィド、4−ヒドロキシフェニルエチルスルフィド、4−ヒドロキシフェニルベンジルスルフィド、4−メトキシフェニルメチルスルフィド等が挙げられる。
【0083】
上記のほか、本実施形態のカチオン重合性組成物に対して安定化のために加えられるスルホニウム塩としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,ベンジル−4−ヒドロキシフェニルエチルスルホニウムクロライド,ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルメチルサルフェート,p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,o−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,m−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,ベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,ベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニルメチルスルホニウムクロライド,α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムクロライド,4−ヒドロキシフェニルジメチルメチルサルフェート,4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルジメチルメチルサルフェートを挙げることができ、1種もしくは2種以上を併用して用いることができる。これらは予め適当な溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチロラクトン等)に溶解して使用することもできる。
【実施例】
【0084】
次に実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものでない。なお、特に断りがない限り、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、質量基準に基づくものである。
【0085】
[評価]
後述する実施例1〜38及び比較例1〜2で製造した化合物について、下記の評価を行った。
【0086】
(1)低温硬化性
100質量部のAER2603(旭化成イーマテリアルズ社製)に対して、各例で製造したスルホニウム塩1.0質量部を均一に混合した。このようにして得られた混合物(組成物)を発熱ピークを示差走査熱量測定(DSC)に供した。測定は、示差走査熱量測定機(エスアイアイナノテクノロジー社製、示差走査熱量測定システム、「EXSTAR6000」)を用いて、サンプル量10mgを、昇温速度10℃/分で、40℃から300℃まで昇温させて、窒素気流下にて行った。上記のように測定された発熱ピークの温度を、下記のように評価した。すなわち、「A」及び「B」であれば低温硬化性を有するものと判断した。
「A」:95℃未満
「B」:95℃以上115℃未満
「C」:115℃以上135℃未満
「D」:135℃以上
【0087】
(2)硬化剤量
100質量部のAER2603(旭化成イーマテリアルズ社製)に対して、各例で製造したスルホニウム塩を均一に混合した。各例について、混合量を0.1、0.2、0.4、0.5、1.0、1.2、1.5、2.0、2.5、3.0質量部としたものを準備した。準備した混合物について、それぞれの総発熱量を示差走査熱量測定(DSC)により測定した。スルホニウム塩が増加するにしたがって総発熱量が増加するが、最大となる総発熱量を与える硬化剤量を「最少硬化剤量」とした。測定は、示差走査熱量測定機(エスアイアイナノテクノロジー社製、示差走査熱量測定システム、「EXSTAR6000」)を用いて、サンプル量10mgを、昇温速度10℃/分で、40℃から300℃まで昇温させて、窒素気流下にて行った。なお、次の「A」及び「B」に該当する場合、十分少量の硬化剤量で硬化性能を有するものと判断した。
「A」:0.4質量部未満
「B」:0.4質量部以上1.0質量部未満
「C」:1.0質量部以上2.0質量部未満
「D」:2.0質量部以上
【0088】
(3)保存安定性
(2)低温硬化性を評価する際に作製した組成物を30℃で1週間保存した。各例の組成物について、保存する前と保存した後との粘度をそれぞれ測定し、その粘度上昇倍率を求めた。各例の組成物の貯蔵安定性については、以下の基準に基づき、上記粘度上昇倍率を評価することとした。なお、上記粘度は、25℃でBM型粘度計を使用して測定した。次のとおり、「A」及び「B」に該当する場合、保存安定性は十分であると評価した。
「A」:保存後の粘度上昇率が2倍未満のもの
「B」:2倍以上5倍未満のもの
「C」:5倍以上10倍未満のもの
「D」:10倍以上又はゲル化したもの
【0089】
(4)化合物A,Bの構造決定及び定量
化合物A,Bの構造の決定は1H−NMR(JNM−GX400、JEOL製)、およびLC−MS(Waters社製 UPLC+Waters SynaptG2)により行った。また、化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比並びに化合物Aの質量及び化合物Bの質量はUPLC(Waters社製)にて測定し、それぞれ観測されるピークの面積比から算出した。
【0090】
[実施例1]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物1を7.80質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.970であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は80.0%であった。化合物Aの質量は7.57g、化合物Bの質量は0.23gであった。
【0091】
[実施例2]
4−メチルチオフェノール1.41質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.31質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物2を7.88質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.972であった。4−メチルチオフェノールに対する収率は82%であった。化合物Aの質量は7.66g、化合物Bの質量は0.22gであった。
【0092】
[実施例3]
4−メチルチオトルエン1.25質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.17質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物3を7.08質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.971であった。4−メチルチオトルエンに対する収率は75%であった。化合物Aの質量は6.87g、化合物Bの質量は0.21gであった。
【0093】
[実施例4]
4−メチルチオアセトフェノン1.53質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.42質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物4を7.49質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.969であった。4−メチルチオアセトフェノンに対する収率は77%であった。化合物Aの質量は7.26g、化合物Bの質量は0.23gであった。
【0094】
[実施例5]
4−アセトキシチオアニソール1.69質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.57質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物5を7.81質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.967であった。4−メチルチオトルエンに対する収率は79%であった。化合物Aの質量は7.55g、化合物Bの質量は0.26gであった。
【0095】
[実施例6]
4−メチルカーボネートチオアニソール1.99質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.84質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物6を7.64質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.974であった。4−メチルカーボネートチオアニソールに対する収率は75%であった。化合物Aの質量は7.44g、化合物Bの質量は0.20gであった。
【0096】
[実施例7]
4−フッ化チオアニソール1.43質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.33質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物7を7.70質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.962であった。4−メチルカーボネートチオアニソールに対する収率は80%であった。化合物Aの質量は7.41g、化合物Bの質量は0.29gであった。
【0097】
[実施例8]
4−メチルチオアニソール1.39質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.30質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物8を7.09質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.973であった。4−メチルチオトルエンに対する収率は74%であった。化合物Aの質量は6.90g、化合物Bの質量は0.19gであった。
【0098】
[実施例9]
4−フッ化チオアニソール1.43質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.33質量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1.56質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物9を3.24質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.965であった。4−フッ化チオアニソールに対する収率は75%であった。化合物Aの質量は3.13g、化合物Bの質量は0.11gであった。
【0099】
[実施例10]
4−クロロチオアニソール1.60質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.48質量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1.56質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物10を3.19質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.972であった。4−クロロチオアニソールに対する収率は71%であった。化合物Aの質量は3.10g、化合物Bの質量は0.09gであった。
【0100】
[実施例11]
4−ブロモチオアニソール2.04質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.88質量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1.56質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物11を4.05質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.970であった。4−ブロモチオアニソールに対する収率は82%であった。化合物Aの質量は3.93g、化合物Bの質量は0.12gであった。
【0101】
[実施例12]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、α−クロロ−o−キシレン1.41質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.46質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物12を7.41質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.974であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は79%であった。化合物Aの質量は7.22g、化合物Bの質量は0.19gであった。
【0102】
[実施例13]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、α−クロロ−p−キシレン1.41質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.46質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物13を7.60質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.962であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は81%であった。化合物Aの質量は7.31g、化合物Bの質量は0.29gであった。
【0103】
[実施例14]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、α−クロロ−m−キシレン1.41質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.46質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物14を7.50質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.968であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は80%であった。化合物Aの質量は7.26g、化合物Bの質量は0.24gであった。
【0104】
[実施例15]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロ−2−ブテン0.91質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿2.67質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物15を6.66質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.972であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は75%であった。化合物Aの質量は6.47g、化合物Bの質量は0.19gであった。
【0105】
[実施例16]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、9−クロロメチルアントラセン2.26質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿4.32質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウムx質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物16を8.50質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.968であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は83%であった。化合物Aの質量は8.23g、化合物Bの質量は0.27gであった。
【0106】
[実施例17]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、4−(クロロメチル)ビフェニル2.03質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.67質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物17を8.10質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.974であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は81%であった。化合物Aの質量は7.89g、化合物Bの質量は0.21gであった。
【0107】
[実施例18]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、クロロジフェニルメタン2.03質量部、アセトン1.44質量部13.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿4.22質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物18を7.40質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.982であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は74%であった。化合物Aの質量は7.27g、化合物Bの質量は0.13gであった。
【0108】
[実施例19]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、2−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物19を7.31質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.968であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は75%であった。
【0109】
[実施例20]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、p−メトキシベンジルクロリド1.57質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.26質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物20を7.06質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.965であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は74%であった。化合物Aの質量は6.81g、化合物Bの質量は0.25gであった。
【0110】
[実施例21]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(p−フルオロフェニル)ボレートリチウム3.98質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物21を4.87質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.975であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は73%であった。化合物Aの質量は4.75g、化合物Bの質量は0.12gであった。
【0111】
[実施例22]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(p−メチル−フェニル)ボレートリチウム3.82質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物22を4.69質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.974であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は72%であった。化合物Aの質量は4.57g、化合物Bの質量は0.12gであった。
【0112】
[実施例23]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.44質量部、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム1.56質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物23を3.87質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.965であった。4−ブロモチオアニソールに対する収率は87%であった。化合物Aの質量は3.73g、化合物Bの質量は0.14gであった。
【0113】
[実施例24]
4−メトキシチオアニソール1.68質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.57質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物24を7.91質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.952であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は80.0%であった。化合物Aの質量は7.53g、化合物Bの質量は0.38gであった。
【0114】
[実施例25]
4−(n−プロピルチオ)フェニルエーテル1.82質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.69質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物25を8.32質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.963であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は80.3%であった。化合物Aの質量は8.01g、化合物Bの質量は0.31gであった。
【0115】
[実施例26]
4−(iso−プロピルチオ)フェニルエーテル1.82質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.69質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物26を8.32質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.962であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は80.3%であった。化合物Aの質量は8.00g、化合物の質量は0.32gであった。
【0116】
[実施例27]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、ジエチルエーテル10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再結晶を行った。化合物27を6.82質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.985であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は70.0%であった。化合物Aの質量は6.72g、化合物Bの質量は0.10gであった。
【0117】
[実施例28]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、35℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去した。化合物28を7.99質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.900であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は82%であった。化合物Aの質量は7.19g、化合物Bの質量は0.80gであった。
【0118】
[実施例29]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、45℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去した。化合物29を8.28質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.550であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は85%であった。化合物Aの質量は4.55g、化合物Bの質量は3.73gであった。
【0119】
[実施例30]
4−メチルチオフェノール1.41質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.31質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、ジエチルエーテル10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再結晶を行い、化合物30を6.72質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.985であった。4−メチルチオフェノールに対する収率は70%であった。化合物Aの質量は6.62g、化合物Bの質量は0.10gであった。
【0120】
[実施例31]
4−メチルチオフェノール1.41質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、35℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.31質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去し、化合物31を7.88質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.900であった。4−メチルチオフェノールに対する収率は82%であった。化合物Aの質量は7.09g、化合物Bの質量は0.79gであった。
【0121】
[実施例32]
4−メチルチオフェノール1.41質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、45℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.31質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去し、化合物32を8.16質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.550であった。4−メチルチオフェノールに対する収率は85%であった。化合物Aの質量は4.49g、化合物Bの質量は3.67gであった。
【0122】
[実施例33]
4−フッ化チオアニソール1.43質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.33質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、ジエチルエーテル10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再結晶を行い、化合物33を6.74質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.985であった。4−フッ化チオアニソールに対する収率は70%であった。化合物Aの質量は6.64g、化合物Bの質量は0.10gであった。
【0123】
[実施例34]
4−フッ化チオアニソール1.43質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.33質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去し、化合物34を7.89質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.900であった。4−フッ化チオアニソールに対する収率は82%であった。化合物Aの質量は7.10g、化合物Bの質量は0.79gであった。
【0124】
[実施例35]
4−フッ化チオアニソール1.43質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.33質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去し、化合物35を8.18質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.550であった。4−フッ化チオアニソールに対する収率は85%であった。化合物Aの質量は4.50g、化合物Bの質量は3.68gであった。
【0125】
[実施例36]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレートリチウム6.09質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物36を7.80質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.930であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は81.0%であった。化合物Aの質量は7.57g、化合物Bの質量は0.51gであった。
【0126】
[実施例37]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレートリチウム6.09質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物37を7.52質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.940であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は82.0%であった。化合物Aの質量は7.07g、化合物Bの質量は0.45gであった。
【0127】
[実施例38]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレートリチウム6.09質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物38を7.77質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.935であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は83.0%であった。化合物Aの質量は7.26g、化合物Bの質量は0.51gであった。
【0128】
[比較例1]
4−メトキシチオアニソール1.55質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.43質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、ジエチルエーテルにより再結晶を行い、化合物36を3.90質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.997であった。4−メトキシチオアニソールに対する収率は10.0%であった。化合物Aの質量は0.38883gであった。化合物Bの質量は0.00117gであった。
【0129】
[比較例2]
4−メチルチオフェノール1.41質量部、ホウフッ化銀1.95質量部、1−クロロメチルナフタレン1.77質量部、アセトン10.0質量部を均一混合し、25℃で72時間反応させた。塩化銀を除去してから、反応液をロータリーエバポレーターに移して,溶媒を留去し、アセトン10.0質量部、ヘキサン10.0質量部にて再沈殿を行った。得られた沈殿3.48質量部、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウム6.86質量部、アセトン10質量部を均一混合し、25℃で24時間反応させた。反応液に蒸留水10.0質量部を加えて、生成物を洗浄した。有機層より溶媒を減圧除去して、化合物37を8.65質量部得た。化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比=0.450であった。4−メチルチオフェノールに対する収率は90%であった。化合物Aの質量は3.89であった。化合物Bの質量は4.76であった。
【0130】
以上の結果を表1〜表7に示す。なお、各表において、「化合物Aと化合物Bとの合計質量に対する当該化合物Aの質量の比」を単に「(1)/(2)」と略記し、単位を%として示す。各実施例のスルホニウム塩は、低温硬化性、硬化剤量、保存安定性のバランスに優れることが確認された。一方、上記(1)/(2)が0.995より大きい比較例1、及び上記(1)/(2)が0.5より小さい比較例2のいずれもが、低温硬化性、硬化剤量、保存安定性のいずれかが不十分であることが確認された。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】