(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クロックオフセット計算モジュールが、前記ローカル端子と、前記リモート端子のそれぞれとの間の通信時間遅延を平均することによって、前記平均時間オフセットを求めるように構成され、
前記時刻測定値交換モジュールが、前記ローカル端子のメッセージ送信時刻およびメッセージ受信時刻を含む前記タイムスタンプデータと、リモート端子のメッセージ送信時刻およびメッセージ受信時刻を含む前記タイムスタンプデータとを交換するように構成され、
前記クロックオフセット計算モジュールが、前記リモート端子の前記メッセージ送信時刻と前記メッセージ受信時刻との合計と、前記ローカル端子の前記メッセージ送信時刻と前記メッセージ受信時刻との合計との減算に基づいて、前記ローカル端子と、前記リモート端子のそれぞれとの間の前記通信時間遅延を求めるように構成され、
前記クロックオフセット計算モジュールが、前記上側レンジクロックのロールオーバ事例に基づいて、前記通信時間遅延を求めるように構成され、
前記クロックオフセット計算モジュールが、前記上側レンジクロックが前記メッセージ送信時刻と前記メッセージ受信時刻との間でロールオーバしている場合、前記上側レンジクロックの前記第1の時間周期によって前記メッセージ受信時刻を調整するように構成され、
前記クロックオフセット計算モジュールが、前記上側レンジクロックが前記メッセージ送信時刻の前にロールオーバしている場合、前記通信時間遅延を調整するように構成される、請求項1記載の電流差動保護システム。
前記障害検出モジュールが、ローカル端子の前記電流と、前記リモート端子の少なくとも1つの第2の電流とのベクトルの加算によって、前記差動電流を求めるように構成される、請求項1または2に記載の電流差動保護システム。
前記障害検出モジュールが、前記多端子送電線を流れることができる最小差動電流と、前記最小差動電流を超えて許容される抑制電流との和によって、前記閾値を求めるように構成される、請求項1乃至3のいずれかに記載の電流差動保護システム。
前記多端子送電線における前記障害を検出する段階が、ローカル端子の前記電流と、前記リモート端子の少なくとも1つの第2の電流とのベクトルの加算によって、前記差動電流を求める段階を含む、請求項6または7に記載の多端子送電線を保護する方法。
前記多端子送電線における前記障害を検出する段階が、前記多端子送電線を流れることができる最小差動電流と、前記最小差動電流を超えて許容される抑制電流との和によって、前記閾値を求める段階を含む、請求項6または7に記載の多端子送電線を保護する方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、送電系統の多数の端子でクロックの同期を可能とする電力系統保護システムを対象とする。クロック同期の実施形態について、送電系統の例をとって説明するが、このシステムは、配電系統、電力継電器、事象の順序決定、経済給電、およびクロックの同期が必要となる他の任意の状況など、他の用途にも使用できることが当業者には理解されよう。
【0011】
本明細書では、用語「モジュール」または「制御器」は、ソフトウェア、ハードウェア、もしくはファームウェア、またはこれらの任意の組合せ、あるいは本明細書に記載の工程を実施する、または容易にする任意のシステム、工程、または機能を指すものである。
【0012】
図1は、3つの端子46、48、および50を含み、それらの端子間に電源線58、および通信線60a、60b、および60cがある多端子送電系統30のブロック図である。一実施形態では、通信冗長化の目的で、2つの端子間に2本の通信線を使用することができる。電流センサ52、54、および56は、それぞれのローカル継電器または制御器40、42、および44に電流信号を供給する。一実施形態では、制御器40、42、および44は、リモート端子、ならびに関連するローカル端子からの電流測定値を受け取り、電源線58における障害状態を識別する。一般に、電流差動リレーは、キルヒホッフの電流則の基本的な応用例である。したがって、制御器40、42、および44は、ローカル電流とリモート電流との差に基づいた障害検出論理を応用している。
【0013】
障害検出論理の簡単な一例を本明細書に挙げる。この例では、ローカル位相電流I1と、リモート位相電流I2およびI3との差である差動電流I
diffが、閾値I
tを超えると、障害が検出される。本明細書では、リモート端子のリモート電流I2およびI3は逆方向に測定され、したがってその極性は反転していることに留意されたい。したがって、差動電流I
diffは、以下の通り3つの電流のベクトルの和として得られる。
【0014】
【数1】
しかし、リモート端子でもやはり、電流がローカル端子と同じ方向に測定されている場合、差動電流は、3つの電流のベクトルの差となる。閾値は、送電線を流れることができる最小差動電流I
minと、最小差動電流I
minを超えて許容されるバイアス値である抑制電流I
rとの和である。
【0015】
【数2】
抑制電流I
rは、次式から得られる。
【0016】
【数3】
式中、kは、差動電流の値に依存して、定数値でも、または変数でもよい。抑制電流I
rを求める他の方法として、次式も挙げられる。I
r=k
*maximum(I1,I2,I3…)、およびI
r=sqrt(I1
*I1+I2
*I2+I3
*I3)。
【0017】
各端子46、48、および50は、それぞれの電流センサに加えて、他にも構成要素はあるが、回路遮断器46a、48a、および50a、ならびにバス46b、48b、および50bをそれぞれ含む。回路遮断器46a、48a、および50aは、障害が生じた場合に、それぞれのバス46b、48b、および50bと電源線58との間の接続を遮断する。送電線が三相を有する一実施形態では、電流センサ52、54、および56はそれぞれ、3つのセンサを含み、各センサは、送電線のそれぞれの位相電流を感知する。
【0018】
一実施形態では、制御器40、42、および44はそれぞれ、それだけに限られるものではないが、少なくとも1つのマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、図形プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、または他の任意の種類のプロセッサまたは処理回路などのプロセッサを含むことができる。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、1つまたは複数のハードドライブ、および/または取り外し可能な媒体および表示装置を扱う1つまたは複数のドライブをさらに含むことができる。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態による多端子送電系統の各端子で使用される制御器80のブロック図である。制御器80は、それぞれの電流センサ(図示せず)から電流信号84を受け取るアナログ−デジタル(A/D)変換器82と、リモート端子から時刻信号87およびインデックスが付与された電流信号88を受け取る受信器86とを含む。各端子では、三相電流、すなわちフェーザを、1サイクルにつき、ある回数(K)でサンプリングする。制御器80は、クロック90、ならびにタイムスタンピングおよび同期モジュール94をさらに含む。クロック90は、一般的な任意のクロックではなく、カウンタに基づいたクロックであり、このクロックは、通信帯域幅を節約するために最大時間が制限されている。一実施形態では、クロック90は、後段で説明するデュアルレンジクロックである。
【0020】
一実施形態では、タイムスタンピングおよび同期モジュール94は、3つの機能を有する。これらの3つの機能とは、i)異なる2つの端子間のクロック同期、ii)フェーザのタグ付け、およびローカル電流測定値のインデックス付与、およびiii)ローカル端子のインデックスが付与された電流測定値と、リモート端子のインデックスが付与された電流測定値との整合である。クロック同期は、位相−周波数ロックループ(PFLL)によって実現される。インデックス付与および整合は、ローカルフェーザにシーケンス番号をタグ付けすることによって実現される。例えば、最大シーケンス番号がKである場合、各時間サイクルにおいて、フェーザをK回サンプリングし、適切なインデックス番号でタグ付けする。したがって、異なる2つの端子にある2つのクロックが同期しておらず、時間差がある場合、または一方の端子からもう一方の端子へ信号を送信する際に時間遅延がある場合、インデックスに不整合が生じることになる。
【0021】
差動電流計算器96によって、ローカル端子からの電流測定値と、リモート端子からの電流測定値との整合を利用し、差動電流値を求める。さらに、障害検出論理98によって、この差動電流値を閾値と比較し、出力信号100を回路遮断器に送信するものであり、障害指示を表示することもできる。送信器102は、インデックスが付与された電流測定値104、およびローカル時刻信号106を他の端子に送信する。本明細書に示す制御器80の構成要素は例示の目的で示すものにすぎず、これらの構成要素のいくつかは、必要に応じて改変、追加、または削除できることに留意されたい。例えば、一実施形態では、受信器86は、2つ以上の端子から信号を受け取ることができ、それに応じて構成要素が改変されることになる。
【0022】
図3は、2つの端子クロック間の時間シフト誤差を表すプロット
図120を示す。プロット120では、横軸122は実時間を表し、縦軸124はクロック時間を表す。2つのクロック、すなわちクロックAおよびクロックBがあり、1つが端子Aに、1つが端子Bにそれぞれある。これらのクロックは、周期T
clockでロールオーバする(すなわち、時間周期T
clock後、クロックのカウンタはリセットされる)。図示の実施形態では、クロックBは、クロックAに対して時間T
BAだけ遅れている、または時間シフトしている。これは、クロックBの周波数がクロックAの周波数と同期しており、通信遅延のため、クロックBは、クロックAがロールオーバした後にロールオーバしているからである。しかし、別の実施形態では、両クロックとも互いに同期しているので、クロックAがクロックBに対して遅れていると考えることもできる。本明細書では、一実施形態において、同期とは、通信遅延を各制御器でPFLLへの入力として供給し、それに応じてそれぞれのクロック時刻を調整することを意味することに留意されたい。したがって、T
BA値は、クロックBがクロックAの後にロールオーバする場合は正の値となり、クロックBがクロックAの前にロールオーバする場合は負の値となる。さらに、この論理では、T
BA値は常に、−T
clock/2よりも大きく、かつT
clock/2よりも小さくなる。プロット120から分かるように、時刻t1では、クロックAのカウンタはN1を指し、クロックBのカウンタはN2を指す。したがって、端子AおよびBの電流信号I
AおよびI
Bは、上記に従ってインデックスが付与されることになる(すなわち、時刻t1では、I
AはI
A(N1)とインデックスが付与され、I
BはI
B(N2)とインデックスが付与される)。このため、同じインデックスが付与された2つの端子からの電流信号(I
A(N1)およびI
B(N1))は、同じ時刻t1から得られたものではないのに、一緒に比較されると、誤差が生じることになり、したがって誤った障害検出または誤った回路遮断器の引き外しが行われることになり得る。したがって、2つのクロックの時刻同期は重要である。
【0023】
図4は、クロックロールオーバシナリオにおける2つの端子間の通信遅延を表すプロット
図130を示す。プロット130には、端子AおよびBの2つのクロックに関連する2つのクロック時間132および134がそれぞれ示されている。端子Aと端子Bとの間の各往復メッセージ交換で、4回のローカル時刻測定が行われる。例えば、端子Aと端子Bとの間での1往復のメッセージ交換では、以下の4回の測定が行われる。
i)T1 − メッセージが端子Aから端子Bに送信されたときの、クロックAで測定した時刻。
ii)T2 − 端子Aからメッセージを受信したときの、クロックBで測定した時刻。
iii)T3 − 返送メッセージが端子BからAに送信されたときの、クロックBで測定した時刻。
iv)T4 − 返送メッセージを受信したときの、クロックAで測定した時刻。
【0024】
端子Aからの端子Bへの通信遅延が、端子Bから端子Aへの通信遅延と同じであるとすると、AのBに対する位相誤差(すなわち端子Bと端子Aとの間の通信時間遅延)は、次式から計算することができる。
【0025】
【数4】
上式は、時間T1、T2、T3、およびT4をカウンタ値とみなすとより理解しやすいであろう。しかし、クロックのロールオーバ状態により、電流測定のタイミングに対するロールオーバ事象のタイミングに依存して、いくつかの異なる解が得られることがあり、これはクロック間の相対的なオフセット、通信遅延、および処理遅延を含めたいくつかの変数に依存する。実際の電流測定時刻と、メッセージがリモート端子に実際に送信された時刻とで時間差があることに留意されたい。例えば、1〜10のカウントベースでは、T1がカウント8に等しい場合、実際の電流測定は、カウント7で行われた可能性がある。
【0026】
差動電流の計算に影響を及ぼし得るロールオーバとして、以下の2つの事例がある。i)1対の測定値のうちの第1の測定値の前(すなわち、T1またはT2の前)のロールオーバ、ii)1対の測定値間(すなわちT1とT4との間、またはT2とT3との間のいずれか)でのロールオーバ。
【0027】
説明の目的で、第1のケースについて
図5aに、第2のケースについて
図5bに例示する。
図5aは、端子における実際の電流測定時刻T0前のクロックロールオーバのプロット142を示す。プロット142はまた、メッセージが端子2で受信された時刻t2を示す。プロット142から分かるように、ロールオーバ事例がT0とT1との間で生じている。
図5bは、端子Aにおけるクロックロールオーバを、実際の電流測定時刻T0、ならびにメッセージ送信時刻T1および受信時刻T4とともに示すプロット144を示す。両プロット142および144とも、横軸148は実時間を秒で表し、縦軸146はクロック時間をカウント数で表す。ロールオーバ事例がT1とT4との間で生じた場合に、T1の値がT4の値よりも大きくなることが、プロット144から分かる。これは、クロックAのカウンタが時刻T1で最大カウント付近であり、その後、T4では新しいカウントが始まっているため生じている。したがって、クロックAのT1とT4との間のロールオーバを検出し、補償するアルゴリズムは、以下の通りである。
(T1>T4)の場合、(T4=T4+T
clock) (5)
同様に、クロックBのT2とT3との間のロールオーバを検出し、補償するアルゴリズムは、以下の通りである。
(T2>T3)の場合、(T3=T3+T
clock) (6)
第1のケースでは、クロックAがT1よりも先にロールオーバすることによって、T1およびT4の両方において−T
clockの誤差が生じることになり、クロックBがT2よりも先にロールオーバすることによって、T2およびT3の両方においてT
clockの誤差が生じることになり、したがってT
ABに−T
clockの誤差が生じることになる。T
ABの有効範囲が−T
clock/2からT
clock/2であるので、+または−T
clockの誤差によって、結果が上記範囲から外れることになる。したがって、以下の補正を使用する。
(T
AB>T
clock/2)の場合、(T
AB=T
AB−T
clock) (7)
(T
AB<−T
clock/2)の場合、(T
AB=T
AB+T
clock) (8)
図6は、上記で論じた2つの端子間の通信時間遅延を求める方法の流れ
図150を示す。この方法は、段階151で、T1とT4とを比較することによって、T1とT4との間でロールオーバが生じているかを判定する段階を含む。ロールオーバが生じている場合、この方法は段階152に進み、そうでない場合には段階153に進む。段階152で、T1とT4との間でロールオーバが生じている場合、すなわちT1がT4よりも大きい場合、時刻T4をT4+T
clockに修正する。段階153で、T2とT3との間でロールオーバが生じているかを判定し、回答が「はい」である場合、この方法は段階154に進み、そうでない場合には段階156に進む。段階154で、T2とT3との間でロールオーバが生じている場合、すなわちT2がT3よりも大きい場合、時刻T3をT3+T
clockに修正する。この方法は、段階156で、式T
AB=(T1+T4−T2−T3)/2を使用することによって、第1の時間遅延を求める段階をさらに含む。段階157で、T
ABがT
clock/2よりも大きいか判定することによって、クロックロールオーバがT1の前に生じているかを判定し、クロックロールオーバが生じている場合、この方法は段階158に進み、そうでない場合には段階159に進む。段階158で、第1の遅延をT
AB=T
AB−T
clockに修正する。段階159で、T
ABが(−T
clock/2)よりも小さいか判定することによって、クロックロールオーバがT2の前に生じているか否かを再度判定し、「はい」の場合、この方法は段階160に進み、そうでない場合には、この方法は終了する。最後に、段階160で、クロックロールオーバがT2の前に生じている場合、時間遅延T
ABを、T
AB=T
AB+T
clockにさらに修正する。次いで、結果として得られる時間シフト推定値または修正した時間遅延をPFLLへの位相入力として用いて、2つの端子のクロックを同期させ、通信遅延を補償する。
【0028】
図6で論じたアルゴリズムは、2端子システムで機能する。3つ以上の端子を有する多端子システムでは、リング通信システムを使用することができる。この場合、クロックは、リングの形で互いに同期し、その結果時間遅延が第1のクロックから最後のクロックへと伝播する。一例として、3端子システムでは、端子Aが端子Bとの間でメッセージを送受信し、端子Bが端子Cとの間でメッセージを送受信し、端子Cもやはり端子Aとの間でメッセージを送受信する。このような場合、時間遅延が、あるクロックから別のクロックへと伝播するので、第1のクロックから最後のクロックまでの全遅延は高くなる。さらに、時間遅延が高いため、クロックの時間周期T
clockが小さくなった場合には、クロックが互いに同期することがなくなることがあり得る。その結果、フェーザが誤ってタグ付けされ、回路遮断器が誤って引き外されるおそれがある。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、デュアルレンジクロックを用いてクロックを同期させる。このデュアルレンジクロックには、上側レンジクロックおよび下側レンジクロックが含まれる。
図6で説明したように、下側レンジクロックを用いてフェーザにタグ付けし、上側レンジクロックを用いて時刻またはクロックの同期を行う。さらに、各端子は、リング通信網上の最も近い2つの端子と同期する。例えば、端子A、B、C、およびDがその順序で通信網上にあるとすると、端子Aは、端子BおよびDと同期し、端子Bは、端子AおよびCと同期する、といった具合である。
【0030】
図7は、本発明の一実施形態によるクロック同期システム180を示す。クロック同期システム180は、異なる2つの端子に配置された2つの制御器182、184を含む。制御器182、184はそれぞれ、時刻測定値交換モジュール186、クロックオフセット計算モジュール188、位相−周波数ロックループ(PFLL)190、ならびに上側レンジおよび下側レンジをそれぞれ有するデュアルクロック192および194を含む。制御器182、184はまた、
図2に示す他の構成要素も有する。しかし、分かりやすいように、この図では、クロック同期に関連する構成要素のみ示してある。時刻測定値交換モジュール186は、リモート端子からの時刻信号(例えばT1、T2、T3など)を受信し、送信する。
図7には、ただ2つの端子間の通信を示しているが、時刻測定値交換モジュール186は、3つ以上の端子と通信し、時刻信号を交換することができる。一例として、時刻測定値交換モジュール186が3つの端子と通信していると仮定する。その場合、クロックオフセット計算モジュール188で、
図6のアルゴリズムを使用し、3つの端子間での時間遅延を平均することによって、全体の時間遅延をさらに求める。3つの端子システム(A−B−C)では、クロックオフセット計算モジュール188によって、まず
図6のアルゴリズムを用いて2つの時間遅延T
ABおよびT
ACを求め、次いで以下の関係を用いて平均時間遅延T
A、
BCを求める。
T
A、
BC=(T
AB+T
AC)/2 (9)
したがって、クロックオフセット計算モジュール188は、平均時間オフセットまたは全体の時間遅延をPFLL190への位相入力として供給する。例示的なPFLL190が、General Electric Companyに譲渡された発行済の米国特許第5,958,060号に開示されており、該特許を参照により本明細書に組み込む。PFLL190は、クロック192、194の周波数を調整するように、それらのクロックに信号を供給する。次いで、クロック194は、フェーザにタグ付けする第1のクロック信号を供給し、クロック192は、クロック同期を目的とする第2のクロック信号を時刻測定値交換モジュール186に供給する。
【0031】
クロック192の第1の時間周期は、クロック194の第2の時間周期のN倍に等しくなるように維持され、Nはクロック同期に使用される端子の個数である。一例として、端子が4個あり、クロック194が12カウントに等しい時間周期を有する場合、クロック192は、48カウントの時間周期を有することになり、すなわち、クロック194は、12カウント後にロールオーバすることになり、一方クロック192は、48カウント後にロールオーバすることになる。
【0032】
図8は、3端子システム向けのクロック同期のシミュレーション結果の2つのプロット
図200および202を示す。プロット200および202の横軸204は実時間を秒で表し、縦軸206はクロック時間をカウント数で表す。プロット200は、クロック同期に使用する、3端子の上側レンジクロックに関連する3つのクロック波形208、210、および212を示し、プロット202は、フェーザのタグ付けに使用する、3端子の下側レンジクロックに関連する3つのクロック波形214、216、および218を示す。クロック波形214、216、および218は、T=16カウントに連動した時間周期を有し、クロック波形208、210、および212は、NT=3
*16=48カウントに連動した時間周期を有する。クロック波形208、210、および212が互いに同期していなくとも、クロック波形214、216、および218は、間もなく確かに同期しており、したがってフェーザのタグ付けが同期していることが分かる。
【0033】
本発明のデジタル電流差動保護システムの利点の1つとして、地理的位置測位システム(GPS)を使用せずに、多端子のクロックを同期させることができるという利点が含まれる。さらに、このデジタル電流差動保護システムは、いくつの端子にも応用することができる。
【0034】
本明細書では、本発明のある特徴についてのみ例示し、説明してきたが、多くの改変形態、および変形形態が当業者には想到されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる改変形態および変形形態は全て、本発明の真の趣旨の範囲内に含まれるものとして網羅するものであることを理解されたい。