特許第6247903号(P6247903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247903
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】寿命予測構造
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/04 20060101AFI20171204BHJP
   G01N 19/00 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G01N17/04
   G01N19/00 G
   H05K3/34 512A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-230788(P2013-230788)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-90332(P2015-90332A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ディグナ リナジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】秦 昌平
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−128431(JP,A)
【文献】 特開2003−270060(JP,A)
【文献】 特開2012−063279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/04
G01N 19/00
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体内で非水平の回路基板を有し、前記回路基板上に狭小間隙をもって形成した、断線検出回路に接続された2つのランドに金属個片がはんだ付けされていることを特徴とした寿命予測構造
【請求項2】
前記回路基板上に形成した2個以上のランドの基板面内重心が前記金属個片のはんだ付け面内の重心と異なるようにしたことを特徴とする請求項1記載の寿命予測構造
【請求項3】
前記重心と異ならしめるため、前記金属個片を細長い形状にし、かつ略水平に基板に取り付けることを特徴とする請求項2記載の寿命予測構造
【請求項4】
前記回路基板上に形成した2個以上のランド間に、ばね力によるポテンシャルエネルギーを蓄積している導電性の弾性体をはんだ付けすることを特徴とする請求項1記載の寿命予測構造。
【請求項5】
前記導電性の弾性体をU字あるいはV字形状の板ばねとし、前記回路基板と接続される電極をその片方の端部に設け、もう片方の端部は前記回路基板から外に出ているか、あるいは前記回路基板外からの外力を受けることが可能な位置に配置されることにより、製品への前記回路基板取り付け時の動作により前記板ばねがポテンシャルエネルギーを蓄積できることを特徴とする請求項4記載の寿命予測構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命予測構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品と回路基板の接続には、例えば220℃付近ではんだ接続することが出来るSn−37Pb(単位:質量%)や、鉛を用いない鉛フリーはんだ合金Sn−3Ag−0.5Cu(単位:質量%)が使用されている。
【0003】
現在鉛フリーはんだを用いた挿入・表面実装両方において材料コストの低い低銀はんだが注目され、現行のSn−3Ag−0.5Cu等と併せ、様々なはんだで電子部品が実装される状況となっている。
【0004】
その結果、同一部品でも様々な条件(基板仕様・環境)で使用される寿命予測が困難という状況がある。
【0005】
これに対し特許文献1では、基板の温度を計測することにより寿命を予測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−253971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の技術では温度測定のための特別の回路が必要でありコストアップとなるという課題がある。また温度により寿命をあくまで推定する方式であるため、その正確さにぶれが生じることが不可避である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板上に設けられた2つの接続部間をつなぐ導電部材を有し、該導電部材が該接続部の少なくとも一方から離脱することにより寿命を判断することを特徴とする寿命予測構造。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、実仕様状態に即した確実な寿命予測が可能となる。
【0010】
本発明のさらなる手段、効果は以下明細書から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施例に関わる説明図である。
図2】第2の実施例に関わる説明図である。
図3】第3の実施例に関わる説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は回路基板1上に断線検出ランド(接続部)11を2つ有し、その2つを金属子片2が導電接続している構造である。この導電接続はハンダによって行われている。2つの断線検出ランドは、該断線検出ランド間の導電、絶縁状態を判別する断線検知回路12に接続されている。
【0014】
回路基板1を筺体に対し例えば垂直のように角度を持って設置した場合、金属子片2にはそれ自身の自重により落下力が働く。はんだによる接続構造が寿命を迎えた場合、断線検出ランドの少なくとも1方と金属子片の接続が停止する。特に、両方の接続が寿命を迎えた際には金属子片自体が脱落し、断線検出回路は絶縁状態を検知することになる。これにより、はんだの寿命を実使用状態で正確に測定することが可能となる。
【0015】
言い換えると、基板が垂直や斜めに固定される場合や、あるいは、使用環境によって一時的に回路基板が垂直に立ってしまうか斜めに傾いてしまう場合のある回路基板に対して、この基板に接続されている実装部品のはんだ接続部のクリープ破断寿命が来ることを、部品接続部よりも先に断線して電気的手法により予測する機構を、高実装密度化の妨げにもならず、現行実装プロセスを用いたはんだ付けと同時に、回路基板に実装することが可能となる。
【0016】
この方法の一つとしては、回路基板に接続されている実装部品のはんだ接続部のクリープ破断寿命が来ることを、部品接続部よりも先に断線して電気的手法により予測する機構を基板に実装する方法である。
【0017】
その際に望ましくは、はんだによる実装部品接続部に加わる最大応力よりも大きな応力が恒常的に加わり、実装部品接続部よりも先にクリープ破断することで電気的断線を作り出すことができることが望ましい。
このとき、高実装密度化の妨げにならないよう、大きな実装面積を要しない、また厳しい作りこみ寸法精度を必要とせず、簡易な設計・製法で安定して部材を作りこめることや、通常の実装プロセス(リフロー・フロー)の中で同時に作りこめ、生産工程を増加させないことなどが同時に達成されることが望ましく、本実施例の構造はこれら要求を同時に満たすことが可能である。
【0018】
また換言すると、寿命予測機構としての金属子片は位置エネルギーを持つことになるため、このエネルギーを断線の駆動力に使用することができるものである。
【0019】
そこで、図1に示すように、回路基板1上に狭少間隙をもって形成した2個以上の断線検出ランド11に銅などのはんだ付け可能な細長い金属個片2の端部を他の部品と同時にリフロー接続し、金属個片2がなるべく水平方向に配置されるようにして、回路基板1を筐体に垂直や斜めに固定する。
【0020】
上記方法により形成した2個以上の断線検出ランド接続部には、てこの原理による応力倍化で、大きな一定負荷を容易に作り出せ、破断を事前検出する機構として利用できる。
【0021】
具体的には、この予測機構は銅などのはんだが濡れやすい金属片で作製し、回路基板へ他の表面実装部品と同時に実装して使用する。
【0022】
また、金属個片2の回路基板1への実装面において、はんだが濡れが必要ないところには、ソルダレジストを塗布すれば、塗布した以外のところだけに安定してはんだ接続が行われるため、回路基板1との接続面積のばらつきを少なくでき、接続寿命予測の精度を向上させることが可能である。
【0023】
さらに、回路基板1との接続をとる電極の位置は、各々、金属個片2の実装面内で互いの距離を離すことにより、前述のてこの原理による応力倍化の効果が小さくなってしまうため、できるだけ互いに近づけて形成したり、金属個片2をできるだけ細長い形状とし、その長手方向をできるだけ水平に配置すると、少ない体積の金属の使用で機構が実現できるため、この機構が回路基板を占有するスペースを少なくすることが可能となる。
【0024】
回路基板1側の電極形状としては上記予測機構のものと同じ形状の電極を形成する必要がある。また、この回路基板側の電極は断線検知回路12と表面配線で結合させ、接続に使用しているはんだ材料のクリープ変形による金属片の落下時に起きる断線を電気的に検出するようにする必要がある。
【0025】
一実施例としては、回路基板は縦置きであり、大型QFPや表面実装型のトランスやコイルが実装されている。さらに、重力により断線するタイプの予測機構がはんだ接続されている。この予測機構は直方体の銅でできており、回路基板への実装面の寸法は縦37mm、横6mmで、厚さ3mmである。また、回路基板への実装面には、電極となる縦1mm、横0.5mmの長方形領域2個を残して、はんだが濡れないようソルダレジストが塗布されている。
【0026】
さらに、上記2個の電極は、各々、実装面(縦37mm、横6mm)の対角位置付近に形成されている。
【0027】
回路基板側の電極も予測機構のものと同じ形状の電極が形成されており、断線検知回路と接続されている。
【0028】
この回路基板を100℃の高温恒温槽の中に入れて、断線検知回路をONにした状態クリープ寿命加速試験を実施した。
【0029】
結果、表面実装型コイルがクリープ断線する時間の80%で直方体の銅の接続部が断線し、予測機構として成立することがわかった。
【実施例2】
【0030】
本実施例は、位置エネルギー以外のエネルギーを使用して予測機構を形成する例である。
【0031】
図2に示すように、回路基板1上に狭少間隙をもって形成した2個以上の断線検出ランド11に、板ばねのような弾性体3を接続し、ばね力によるポテンシャルエネルギーを利用した予測機構を作りこむことができる。
【0032】
具体的には、ばね力によるポテンシャルエネルギーを蓄積する機構としては、弾力性のあるステンレス板を2つ折りにし、弾性範囲内の変形でU字形状をしたものを提案する。
ただし、2つ折りにした各々の先端には回路基板への接続用に長方形電極が形成されている必要がある。
【0033】
この場合も同様に、回路基板1側の電極形状としては上記予測機構のものと同じ形状の電極を形成する必要がある。また、この回路基板1側の電極は断線検知回路12と表面配線で結合させ、接続に使用しているはんだ材料のクリープ変形による金属片の落下時に起きる断線を電気的に検出するようにする必要がある。
【0034】
本実施例の構成の一例は以下の通りである。
【0035】
回路基板は縦置きであり、大型QFPや表面実装型のトランスやコイルが実装されている。さらに、ばね力により断線するタイプの予測機構がはんだ接続されている。
【0036】
この予測機構は0.2mm厚のステンレス板を2つ折りにしたU字形状をしており、その寸法は長さ30mm、幅(2つ折りにした先端が向かい合う距離)2mmで、高さ3mmで、U字部の曲率半径は1mmである。ただし、2つ折りにした各々の先端には縦1mm、横0.5mmの長方形電極が形成されており、これらが回路基板への実装部となる。
【0037】
回路基板側の電極も予測機構のものと同じ形状の電極が形成されており、断線検知回路と接続されている。
【0038】
この回路基板を100℃の高温恒温槽の中に入れて、断線検知回路をONにした状態でクリープ寿命加速試験を実施した。
【0039】
結果、表面実装型コイルがクリープ断線する時間の80%で直方体の銅の接続部が断線し、予測機構として成立することがわかった。
【実施例3】
【0040】
ばねへのポテンシャルエネルギー蓄積の方法として、製品生産時に回路基板に加わる外力を利用する方法がある。
【0041】
その一つの例として、回路基板の製品筐体への取り付けの際の回路基板を押し込む力の利用である。
【0042】
この場合の予測機構は図3に示すように、弾力性を持つ金属板を2つ折りにしたV字形状であると良く、2つ折りにした片側の先端から近い位置に2個以上の電極が形成した板ばねを弾性体3とし、これらの電極を回路基板への実装部とする。
【0043】
また、回路基板1側の電極も予測機構のものと同じ形状の電極が形成し、断線検知回路12と接続させる。
【0044】
2つ折りにしたもう一つの先端は回路基板から外にでており、基板を製品筐体50にスライドさせて挿入する際、先端は基板に押し戻される構造になっている。
【0045】
この押し戻される力により、金属板にばね力のポテンシャルエネルギーを蓄積させることが可能となる。
【0046】
本実施例での構成を以下に示す。
【0047】
回路基板は縦置きであり、大型QFPや表面実装型のトランスやコイルが実装されている。さらに、ばね力により断線するタイプの予測機構がはんだ接続されている。
【0048】
この予測機構は0.2mm厚のステンレス板を2つ折りにしたV字形状をしており、その寸法はV字形状1辺の長さが50mm、幅(2つ折りにした先端が向かい合う距離)2mmで、高さ3mmで、折り曲げ部の曲率半径は1mmである。ただし、2つ折りにした片側の先端から2mm、4mmの位置に縦1mm、横0.5mmの長方形電極が形成されており、これらが回路基板への実装部となる。
【0049】
回路基板側の電極も予測機構のものと同じ形状の電極が形成されており、断線検知回路と接続されている。
【0050】
2つ折りにしたもう一つの先端は回路基板から2mm外にでており、基板を筐体にスライドさせて挿入する際、先端は回路基板に押し戻される構造になっている。
【0051】
この基板を100℃の高温恒温槽の中に入れて、断線検知回路をONにした状態でクリープ寿命加速試験を実施した。
【0052】
結果、表面実装型コイルがクリープ断線する時間の80%で直方体の銅の接続部が断線し、予測機構として成立することがわかった。
【0053】
上述した実施例はその思想を組み合わせて用いても良い。
【0054】
また基板上に形成した2個以上のランドの基板面内重心が金属個片のはんだ付け面内の重心と異なるようにしてもよい。
【0055】
以上詳述のように、本発明の寿命予測機構を適用すれば種々の電気回路ではんだの寿命の予測が可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・回路基板
11・・・断線検出ランド
12・・・断線検知回路
2・・・金属個片
3・・・弾性体
50・・・製品筐体
図1
図2
図3