(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等に適用されている各種電線類の中には、電線から当該電線の外周側へのノイズ(電磁波等)による影響、あるいは電線の外周側から当該電線へのノイズによる影響を起こし得るものがある。このようなノイズによる影響を抑制する手法としては、予めシールド機能(電磁シールド等)を持った所謂シールド線を適用することも考えられているが、その他に、例えば単に芯線の外周側に絶縁層が被覆されたシールド機能を持たない電線であっても、後からシールド機能を付加できるようにすることも検討されている。
【0003】
具体例として、電線の端部にコネクタが設けられたワイヤハーネスの場合、導電層を有したシート状の導電性包覆材により電線外周側(ワイヤハーネスのうちシールド機能が要求される箇所の電線外周側)を包覆してシールド構造体を構成する手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係るシールド構造体は、電線の端部にコネクタが設けられた構造に係るものであって、単に当該電線の外周側を導電性包覆材で包覆するのではなく、電線の外周側および電線側コネクタの外周側を導電性包覆材で包覆する構成である。
【0011】
本実施形態によれば、電線の外周側を電線側コネクタの外周側と共に導電性包覆材で包覆するため、電線と電線側コネクタとの間に位置するコネクタ首下部も導電性包覆材で包覆されることになる。これにより、電線から当該電線の外周側へのノイズ(電磁波等)による影響、あるいは電線の外周側から当該電線へのノイズによる影響を十分抑制することが可能となる。また、電線側コネクタでのノイズによる影響がある場合には、その電線側コネクタにおける導電性包覆材が包覆された箇所において、当該ノイズによる影響を抑制できることとなる。
【0012】
また、本実施形態によれば、例えば既製のワイヤハーネス等にも容易に追加的にシールド機能を付加するシールド構造体を構築することが可能であるという利点を有する。この利点は、例えば、ワイヤハーネス製造後の(量産前の)検査でシールド機能の必要性が判明した場合や、量産はしたがその出荷前でシールド機能の必要性が判明した場合、リコールの対応、ワイヤハーネスのごく一部のシールドのみが必要である場合、などに特に活かすことも可能であり、有用な作用効果を奏するものと言える。
【0013】
本実施形態に係るシールド構造体は、前述のように電線の外周側および電線側コネクタのコネクタハウジングの外周側を導電性包覆材で包覆する構成であれば良く、例えば各種電線類の分野,電気自動車分野,シールド分野,ラッピング分野(導電性包覆材の包覆技術に適用可能なラッピング分野)等の種々の分野で一般的に知られている技術を適用して適宜変更することが可能であり、その一例として以下に示す具体例が挙げられる。
【0014】
<シールド構造体の一例>
図1(A)〜(E)の工程図は、本実施形態によるシールド構造体(図中の符号10)の一例を示すものであり、電線1(
図1では複数の電線1が互いに束ねられた電線群)と、電線1の端部1a(または/および1b)に設けられた電線側コネクタ3と、電線1の外周側および電線側コネクタ3の外周側を包覆する導電性包覆材4と、を備えたシールド構造体10の製造工程例が示されている。
【0015】
まず、シールド構造体10の電線1には、例えば長尺線状の芯線11の外周側に絶縁性被覆材12が被覆された所謂被覆電線が適用することができ、
図1(A)に示すように、電線1の端部1a,1bの被覆材12を皮剥き等の方法により取り除いて当該端部1a,1bの芯線11を露出し、
図1(B)に示すように、露出した芯線11に対して端子2が圧着等の方法により設けられる。
【0016】
図1中では、端子2において雄型端子構造のものを適用した一例が示されているが、これに限定されるものではなく、目的とするシールド構造体に応じたものを適宜適用可能である。例えば当該端子2が雄型端子構造の場合、その端子2の相手方である雌型端子構造の受端子(例えば後述の受端子6)と電気的接続可能な形状のものを適用する。また、適用する電線1は、単に1本に限定されるものではなく、複数本(例えば
図1に示すように2本)を互いに束ね電線群としたものを適用しても良い。また、芯線11は、例えば導電性金属から成る導線を撚って横断面丸型等に成形して形成されたものを適用することが挙げられる。
【0017】
電線1の端子2側には、
図1(C)に示すように端子2を収容する電線側コネクタ3が設けられる。この電線側コネクタ3は、例えば熱硬化性樹脂等の絶縁性材料を用いて成形されたコネクタハウジング31を備えてなるものが適用される。
図1に示すように端子2が雄型端子構造の場合には、有底筒状隔壁32を有したものであって、その有底筒状隔壁32の底壁部32aを貫通(例えば後述の
図3〜
図5に示すように貫通)して有底筒状隔壁32の軸心方向に延在するように端子2を当該底壁部32aによって保持(電線群の場合は各電線1の端子2を保持)し、隔壁32の筒状側壁部32bによって端子2を包囲(筒状側壁部32bと非接触状態を保ちながら包囲)して収容できるものを適用することが挙げられる。
【0018】
このように、雄型端子構造の端子2を底壁部32aに対して貫通させた状態で保持するように収容するには、例えばコネクタハウジング31と端子2とをインサート成形法等により一体化させる方法や、予め形成したコネクタハウジング31に対して端子2を圧入(例えば底壁部32aに設けられた貫通孔(図示省略)に対し当該底壁部32aの電線1側から圧入)させる方法等を適用することが挙げられる。有底筒状隔壁32においては、その有底筒状隔壁32の開口側に位置する間口(嵌合口)33を介して嵌合対象(例えば後述する機器側コネクタ7)と着脱自在に嵌合できる形状とする。
【0019】
導電性包覆材4は、電線1から当該電線1の外周側へのノイズ(電磁波等)、あるいは電線1の外周側から当該電線1へのノイズに対するシールド性を持った導電層41を有したものであって、電線1の外周側および電線側コネクタ3の外周側を包覆できるものが適用される。これにより、電線1と電線側コネクタ3との間に位置するコネクタ首下部5が、導電性包覆材4によって包覆されることになる。
【0020】
図1(D)に示すようなシート状に成形された形状の場合には、
図1(E)に示すように電線1の外周側および電線側コネクタ3の外周側を包覆できるものであって、その具体例としては、例えば銅,アルミニウム等の導電性金属材料をシート状に成形して得られる金属シートを導電層41としたものや、
図2に示すように導電層41の表面に絶縁性材料等からなる保護層42が被覆された積層構造(例えば特許文献1のシート体22A,22Bのような積層構造)のものが挙げられる。
【0021】
前述のように電線1の外周側および電線側コネクタ3の外周側を包覆できるものであれば、導電性包覆材4の形状は特にシート状に限定されるものではなく、例えば
図1(D)に示したようなシート状の導電性包覆材4を複数適用して包覆しても良く、またチューブ状(例えば
図2に示すように横断面リング状)やテープ状など種々の形状に成形された導電性包覆材4により包覆することが挙げられる。
【0022】
また、導電性包覆材4による包覆においては、例えば間口33を塞がないようにして、電線側コネクタ3と嵌合対象との嵌合を妨げないようにする。具体例としては、電線側コネクタ3が雄型端子構造の端子2を収容する雄型コネクタであって、嵌合対象が電子機器(後述の機器8)等に設けられる機器側コネクタ7(詳細を後述する)の場合、例えば
図3に示すように雌型端子構造の受端子6を収容する機器側コネクタ7との嵌合を妨げないようにすることが挙げられる。すなわち、
図3に示すように、導電性包覆材4の周縁側で間口33側に位置する周縁部43を、電線側コネクタ3の外周側から間口33を介してコネクタハウジング31内に入り込ませ、その入り込んだ導電性包覆材4の周縁部43を有底筒状隔壁32内に筒状側壁部32bの内周面34に沿って延在させて、その内周面34に被覆させることが挙げられる。この
図3のような構造であれば、電線側コネクタ3と機器側コネクタ7との嵌合を妨げないようにすることが可能である。
【0023】
また、電線側コネクタ3が防水構造の場合、例えば
図4に示すように電線側コネクタ3の筒状側壁部32bの内周面34における底壁部32a側に防水栓(
図4中では内周面34に沿って延在するリング状の防水栓)35が設けられ電線側コネクタ3と機器側コネクタ7との間の防水性を有する構造の場合には、その防水栓35による防水性を妨げないように(すなわち、防水栓35が導電性包覆材4で被覆されないように)、導電性包覆材4の周縁部43を内周面34に被覆させることが挙げられる。
【0024】
さらに、導電性包覆材4は、例えばラッピング分野の周知技術を適宜適用することにより、電線1の外周側,電線側コネクタ3の外周側,内周面34等に対して密着(例えば
図2に示すように密着)させることができ、導電性包覆材によって外観性が損なわれないようにすることも可能である。
【0025】
導電性包覆材4のドレン処理(接地処理)においては、例えば導電層41にドレン線(drain wire)の一端側を接続し、当該ドレン線の他端側を所定箇所に電気的接続させる方法を適用しても良いが、これに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、電線側コネクタ3の嵌合対象である機器側コネクタ7が、金属製の筐体部材81を用いて成る機器8の当該筐体部材81に設けられ、電線側コネクタ3と機器側コネクタ7との嵌合により、導電性包覆材4の導電層41と筐体部材81とが容易に接合(例えば
図5に示すように電線側コネクタ3と機器側コネクタ7との間に導電性包覆材4が介在して、導電層41と筐体部材81とが接地するように接合)して電気的接続できる構造の場合には、前述のようなドレン線を用いなくとも、所望のドレン処理をすることが可能である。
【0026】
また、電線側コネクタ3および機器側コネクタ7が、ロックビークや可塑ロックアームを用いた周知の着脱自在な嵌合構造(例えば特許第4031374号のロックビーク41や可塑ロックアーム21)、例えば電線側コネクタ3および機器側コネクタ7のうち何れか一方にロックビークが設けられ、他方において当該一方との嵌合時に前記ロックビークを乗り越える可撓ロックアームが設けられた構造であって、当該嵌合時にロックビークや可塑ロックアームを介して、導電性包覆材4の導電層41と筐体部材81とが電気的接続できる構造である場合には、前述のようなドレン線を用いなくても、所望のドレン処理をすることが可能となる。
【0027】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。ここで、以上示した本実施形態等から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に列挙する。
<イ>電線側コネクタおよび機器側コネクタのうち何れか一方にロックビークが設けられ、他方において当該一方との嵌合時に前記ロックビークを乗り越える可撓ロックアームが設けられ、当該嵌合時にロックビークおよび可塑ロックアームを介して、導電性包覆材の導電層と筐体部材とが電気的接続した構造であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシールド構造。
<ロ>芯線の外周側に絶縁性被覆材が被覆された電線と、前記電線の端部に設けられた端子を収容する電線側コネクタとを、導電層を有した導電性包覆材により包覆したことを特徴とするシールド構造体の製造方法。