特許第6247918号(P6247918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247918
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】放射線イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/144 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20171204BHJP
   H04N 5/32 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L27/144 K
   H01L27/146 F
   H04N5/32
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-254263(P2013-254263)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-115357(P2015-115357A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】市河 実
(72)【発明者】
【氏名】森 治通
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−208974(JP,A)
【文献】 特開2003−229596(JP,A)
【文献】 特開2009−246014(JP,A)
【文献】 特開2003−133538(JP,A)
【文献】 特開2000−353808(JP,A)
【文献】 特開2003−004857(JP,A)
【文献】 特開2003−240861(JP,A)
【文献】 特開2004−055590(JP,A)
【文献】 特開平07−130951(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/019609(WO,A1)
【文献】 特開2010−219339(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1334213(KR,B1)
【文献】 特開2009−212377(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/083790(WO,A1)
【文献】 L.S.Jeromin et al.,Application of a-Si Active-Matrix Technology in a X-Ray Detector Panel,1997 SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST of TECHNICAL PAPERS,1997年 5月,pp.91-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14−148
H04N 5/32−378
H01L 27/04−092
H01L 21/822−8238
G01T 1/20−24
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を吸収して電荷を発生する電荷発生部と、前記電荷発生部において発生した電荷を画素回路部毎に蓄積し、各画素回路部から前記電荷を転送する回路基板とを備え、前記電荷発生部が前記回路基板上に配置されて成る放射線イメージセンサであって、
前記回路基板は半導体基板を有し
各画素回路部は、
前記半導体基板上に形成され、前記電荷発生部において発生した電荷を蓄積する容量部と、
前記半導体基板上に形成され、前記容量部に一端が接続され、各画素回路部から出力された電荷を転送するための読出用配線に他端が接続されたMOS型トランジスタと
を有し、
前記容量部が、前記半導体基板の一部の領域と、前記一部の領域上に設けられ、各画素回路部の配線を介して前記電荷発生部と電気的に接続されるとともに、前記配線から分岐した配線を介して前記MOS型トランジスタの前記一端と電気的に接続された導電体層と、前記一部の領域及び前記導電体層の間に挟まれた絶縁層とを含むことを特徴とする、放射線イメージセンサ。
【請求項2】
前記導電体層が、前記MOS型トランジスタのゲート電極の構成材料と同一の材料から成ることを特徴とする、請求項1に記載の放射線イメージセンサ。
【請求項3】
前記容量部が、前記半導体基板とは異なる導電型を与える不純物が前記半導体基板の前記一部の領域に隣接する領域に拡散されて成る不純物拡散領域を更に有し、
前記不純物拡散領域と前記導電体層とが互いに電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の放射線イメージセンサ。
【請求項4】
バルク状の前記電荷発生部と前記回路基板とがバンプボンディングにより互いに接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線イメージセンサ。
【請求項5】
前記電荷発生部は、放射線を吸収して電荷を発生する材料が前記回路基板上に蒸着されて成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線イメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線イメージセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディジタル放射線写真イメージを得るための装置が記載されている。この装置は、放射線を電気信号に直接的に変換する直接変換型の構成を備えており、誘電体基板の上面に隣接して配置された電荷蓄積用のキャパシタ及び電荷転送用のトランジスタを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−342098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線像などの放射線像を電気的な画像データに変換するための固体撮像装置として、放射線像を光像に変換したのち、その光像を撮像して画像データを得る方式(間接変換方式)が知られているが、これに対し、放射線像を直接的に撮像して画像データを得る方式(直接変換方式)がある。直接変換方式では、例えば放射線を直接的に電荷に変換する固体材料(CdTeなど)が、電荷の蓄積および転送を行う回路基板上に設けられる。
【0005】
直接変換方式では、電荷の蓄積を行うための容量素子(キャパシタ)を、回路基板上において各画素毎に形成する必要がある。容量素子は、例えばガラス基板上において、金属膜やポリシリコン膜などの導電材料からなる第1層を形成し、その上にSiOなどの絶縁材料からなる絶縁膜を成膜し、更に、その上に導電材料からなる第2層を形成することにより好適に実現される。しかしながら、このようにして形成される容量素子には、次の問題点がある。すなわち、絶縁膜の厚さを薄くするほど単位面積当たりの容量値が大きくなるが、絶縁膜をCVD等により成膜する際、第1層と第2層との短絡を防ぐためには或る程度の厚さが必要となる。従って、単位面積当たりの容量値を大きくすることが難しい。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、容量素子の単位面積当たりの容量値を容易に大きくすることができる放射線イメージセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明による放射線イメージセンサは、放射線を吸収して電荷を発生する電荷発生部と、前記電荷発生部において発生した電荷を画素回路部毎に蓄積し、各画素回路部から前記電荷を転送する回路基板とを備え、前記電荷発生部が前記回路基板上に配置されて成る放射線イメージセンサであって、前記回路基板は半導体基板を有し各画素回路部は、前記半導体基板上に形成され、前記電荷発生部において発生した電荷を蓄積する容量部と、前記半導体基板上に形成され、前記容量部に一端が接続され、各画素回路部から出力された電荷を転送するための読出用配線に他端が接続されたMOS型トランジスタとを有し、前記容量部が、前記半導体基板の一部の領域と、前記一部の領域上に設けられ、各画素回路部の配線を介して前記電荷発生部と電気的に接続されるとともに、前記配線から分岐した配線を介して前記MOS型トランジスタの前記一端と電気的に接続された導電体層と、前記一部の領域及び前記導電体層の間に挟まれた絶縁層とを含むことを特徴とする。
【0008】
この放射線イメージセンサでは、電荷を蓄積する容量部が、半導体基板の一部の領域と、該一部の領域上に設けられた導電体層と、該一部の領域及び該導電体層の間に挟まれた絶縁層とを含んでいる。このように、導電材料からなる容量部の第1層が半導体基板の一部によって構成されることにより、以下の効果が得られる。すなわち、(1)絶縁層を例えば半導体基板表面の酸化によって形成することができるので、CVD等により成膜する場合と比較して、絶縁層を高品質で且つ薄く形成することができ、単位面積当たりの容量値を大きくすることができる。従って、各画素の面積を抑えつつ容量部の蓄積電荷量を多くすることができる。また、(2)このことは、各画素の飽和電荷量の増加につながり、飽和の抑制にも寄与する。従って、或る画素の電荷転送用のトランジスタが何らかの理由により動作しない場合や、大量の放射線の入射によって過剰な電荷が発生した場合であっても、その画素の容量部の飽和を抑えて、容量部の故障や電荷の溢れ出しを低減することができる。更に(3)容量部をMOS型トランジスタの絶縁酸化膜やゲート電極と同様のプロセスにより形成することが可能なので、製造工程を簡易にすることができる。
【0009】
また、放射線イメージセンサは、導電体層が、MOS型トランジスタのゲート電極の構成材料と同一の材料から成ることを特徴としてもよい。これにより、MOS型トランジスタを形成する工程において容量部を同時に形成することができるので、製造工程数をより少なくすることができる。
【0010】
また、放射線イメージセンサは、容量部が、半導体基板とは異なる導電型を与える不純物が半導体基板の一部の領域に隣接する領域に拡散されて成る不純物拡散領域を更に有し、不純物拡散領域と導電体層とが互いに電気的に接続されていることを特徴としてもよい。これにより、半導体基板と不純物拡散領域との間でpn接合が形成されるので、容量部の電荷蓄積量が或る閾値を超えた場合に、余剰電荷が不純物拡散領域を介して導電体層と半導体基板との間を流れ、余剰電荷を解消することができる。従って、或る画素の電荷転送用のトランジスタが何らかの理由により動作しない場合や、大量の放射線の入射によって過剰な電荷が発生した場合における、容量部の故障や電荷の溢れ出しを更に低減することができる。また、上記半導体基板と不純物拡散領域との間のpn接合部分が有する容量成分が容量部の容量値の増大に寄与するので、各画素の面積を抑えつつ容量部の蓄積電荷量を更に多くすることができる。
【0011】
また、放射線イメージセンサは、バルク状の電荷発生部と回路基板とがバンプボンディングにより互いに接続されていることを特徴としてもよい。或いは、放射線イメージセンサは、電荷発生部は、放射線を吸収して電荷を発生する材料が回路基板上に蒸着されて成ることを特徴としてもよい。これらの何れかによって、電荷発生部を回路基板上に好適に配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容量素子の単位面積当たりの容量値を容易に大きくすることができ、電荷転送用のトランジスタが動作しない場合であっても容量素子の故障を低減でき、簡易なプロセスによって形成可能な放射線イメージセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る放射線イメージセンサの構成を示す側断面図である。
図2】放射線イメージセンサが備える回路基板の構成を示す平面図である。
図3】回路基板の内部構成を概略的に示す図である。
図4】回路基板の一部を拡大して示す上面図である。
図5】回路基板の一部を拡大して示す上面図である。
図6図5のVI−VI断面を示す断面図である。
図7図5のVII−VII断面を示す断面図である。
図8】第1変形例に係る回路基板の一部を拡大して示す上面図である。
図9】第2変形例に係る放射線イメージセンサの構成を示す断面図である。
図10】第2変形例に係る放射線イメージセンサの構成を示す断面図である。
図11】第3変形例として、回路基板の一部を拡大して示す上面図である。
図12図11のXII−XII断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明による放射線イメージセンサの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る放射線イメージセンサ1Aの構成を示す側断面図である。また、図2は、放射線イメージセンサ1Aが備える回路基板3の構成を示す平面図である。図1に示されるように、本実施形態の放射線イメージセンサ1Aは、ベース基板2と、ベース基板2上に搭載された回路基板3と、回路基板3上に設けられた電荷発生部4とを備えている。
【0016】
電荷発生部4は、X線などの放射線を吸収し、その放射線量に対応する数の電荷を発生するバルク状の部材である。電荷発生部4は、回路基板3の上面に沿って拡がる板状を呈しており、表面4a及び裏面4bを有する。表面4aには、X線像などの放射線像が入射する。裏面4bは回路基板3と対向しており、複数のバンプ電極51を用いたバンプボンディング(例えばフリップチップボンディング)により、回路基板3と互いに電気的に接続されている。電荷発生部4は、例えばCdTe、CdZnTe、GaAs、InP、TlBr、HgI、PbI、Si、Ge、及びa−Seのうち少なくとも一つを含む材料によって構成されている。電荷発生部4の表面4a上には、該表面4a全体を覆うように電極52が設けられ、バイアス電圧を印加するためのボンディングワイヤ41aの一端が電極52の表面に接続されている。
【0017】
回路基板3は、電荷発生部4において発生した電荷を蓄積し転送する部材である。回路基板3は、例えばASICといった集積回路であり、ボンディングワイヤ41bを介してベース基板2と電気的に接続されている。図2に示されるように、回路基板3は、M行×N列(M,Nは2以上の整数)の二次元状に配列された複数の画素回路部3aを有する。複数の画素回路部3aは、放射線イメージセンサ1Aの複数の画素をそれぞれ構成する。各画素回路部3aは、電荷発生部4から受けた電荷を蓄積するための容量部と、蓄積された電荷を容量部から出力するためのMOS型トランジスタとを有する。上述した複数のバンプ電極51それぞれは、複数の画素回路部3aそれぞれに一対一で対応して設けられており、各画素回路部3aが有する容量部に接続されている。
【0018】
また、回路基板3は、垂直シフトレジスタ部3bと、読出回路部3cとを更に有する。垂直シフトレジスタ部3bは、複数の画素回路部3aに対して行方向に並んで配置されており、各行の画素回路部3aに蓄積された電荷を各行毎に順に出力させる。読出回路部3cは、複数の画素回路部3aに対して列方向に並んで配置されている。読出回路部3cは、複数の画素回路部3aの各列に対応して設けられた複数の積分回路を含んでおり、これら複数の積分回路は、対応する列の画素回路部3aから出力される電荷の量に応じた電圧値をそれぞれ生成する。読出回路部3cは、各積分回路から出力された電圧値を保持し、その保持した電圧値を逐次的に出力する。
【0019】
図3は、回路基板3の内部構成を概略的に示す図である。なお、図3には、(M×N)個の画素回路部3aを代表して、4×4個の画素回路部3aが示されている。画素回路部3aそれぞれは、容量部(キャパシタ)5及びMOS型トランジスタ7を含んで構成されている。
【0020】
容量部5は、電荷発生部4から受け取った電荷を蓄積する。容量部5の一方の電極は、バンプ電極51(図1を参照)が接続される接続パッド37と、MOS型トランジスタ7の一端(例えばドレイン領域)とに電気的に接続されている。容量部5の他方の電極は、接地電位線(GND線)38に電気的に接続されている。
【0021】
MOS型トランジスタ7の他端(例えばソース領域)は、電荷を転送するために各列毎に設けられたN本のデータ配線(読出用配線)34のうち、当該MOS型トランジスタ7を有する画素回路部3aが属する列に対応するデータ配線34に接続されている。N本のデータ配線34それぞれの一端は、読出回路部3cが有するN個の積分回路42それぞれに接続されている。また、MOS型トランジスタ7の制御端子(ゲート端子)は、各行毎に設けられたM本のゲート配線(制御用配線)33のうち、当該MOS型トランジスタ7を有する画素回路部3aが属する行に対応するゲート配線33に接続されている。M本のゲート配線33は、垂直シフトレジスタ部3bに接続されている。垂直シフトレジスタ部3bは、MOS型トランジスタ7の導通状態/非導通状態を各行毎に制御するための行選択信号を生成し、この行選択信号を、各行のゲート配線33に対して順次提供する。
【0022】
垂直シフトレジスタ部3bからゲート配線33に出力される行選択信号が非有意値(MOS型トランジスタ7のオフ電圧)であるとき、電荷発生部4から送られる電荷は、データ配線34に出力されることなく容量部5に蓄積される。一方、行選択信号が有意値(MOS型トランジスタ7のオン電圧)であるとき、MOS型トランジスタ7が導通状態となり、容量部5に蓄積されていた電荷は、MOS型トランジスタ7を経てデータ配線34へ出力される。容量部5から出力された電荷は、データ配線34を通って積分回路42へ送られる。
【0023】
積分回路42は、アンプ42a、容量素子42b、及び放電用スイッチ42cを含む、いわゆる電荷積分型の構成を備えている。容量素子42b及び放電用スイッチ42cは、互いに並列に接続され、且つアンプ42aの入力端子と出力端子との間に接続されている。アンプ42aの入力端子はデータ配線34に接続されている。放電用スイッチ42cには、リセット用配線46を介してリセット制御信号REが提供される。
【0024】
リセット制御信号REは、N個の積分回路42それぞれの放電用スイッチ42cの開閉動作を指示する。例えば、リセット制御信号REが非有意値(例えばハイレベル)であるときに、放電用スイッチ42cが閉じて、容量素子42bが放電され、積分回路42の出力電圧値が初期化される。また、リセット制御信号REが有意値(例えばローレベル)であるときに、放電用スイッチ42cが開いて、積分回路42に入力された電荷が容量素子42bに蓄積され、その蓄積電荷量に応じた電圧値が積分回路42から出力される。
【0025】
読出回路部3cは、N個の保持回路44を更に有する。各保持回路44は、入力用スイッチ44a、出力用スイッチ44b及び電圧保持部44cを含む。電圧保持部44cの一端は、入力用スイッチ44aを介して積分回路42の出力端に接続され、電圧保持部44cの他端は、出力用スイッチ44bを介して電圧出力用配線48と接続されている。入力用スイッチ44aには、保持用配線45を介して保持制御信号Hdが与えられる。保持制御信号Hdは、N個の保持回路44それぞれの入力用スイッチ44aの開閉動作を指示する。保持回路44の出力用スイッチ44bには、水平シフトレジスタ49から列選択信号が与えられる。列選択信号は、対応する列の保持回路44の出力用スイッチ44bの開閉動作を指示する。
【0026】
保持制御信号Hdがハイレベルからローレベルに転じると、入力用スイッチ44aが閉状態から開状態に転じて、そのときに保持回路44に入力されている電圧値が電圧保持部44cに保持される。その後、水平シフトレジスタ49からの列選択信号が各列毎にローレベルからハイレベルに順に転じると、出力用スイッチ44bが順次閉じて、電圧保持部44cに保持されている電圧値が各列毎に電圧出力用配線48へ順次出力される。
【0027】
図4図7は、回路基板3の詳細な構造を示す図である。図4及び図5は、回路基板3の一部を拡大して示す上面図である。なお、図5は、各画素回路部3aが有する上部金属膜(トップメタル)36を省略した様子を示している。図6は、図5のVI−VI断面を示す断面図である。図7は、図5のVII−VII断面を示す断面図である。図6及び図7には、電荷発生部4及びバンプ電極51が併せて示されている。
【0028】
図4図7に示されるように、本実施形態の回路基板3は、半導体基板10と、半導体基板10の表面10a上に設けられた配線層20とを有する。半導体基板10は、例えばSiからなり、その導電型は例えばp型である。表面10aには、不純物拡散領域12a〜12dが各画素回路部3a毎に一つずつ形成されている。不純物拡散領域12a〜12dは、半導体基板10とは異なる導電型(例えばn型)を与える不純物が半導体基板10の表面10aに高濃度に拡散されて成る。
【0029】
配線層20は、絶縁層21の内部に形成された4層の配線層を有する。絶縁層21は、例えば半導体基板10上にCVD等により成膜されたシリコン酸化物(一例ではSiO)によって構成されている。半導体基板10に最も近い第1層目には、ゲート電極32及び導電体層31が各画素回路部3a毎に一つずつ形成されている。ゲート電極32は、MOS型トランジスタ7のゲート電極であり、半導体基板10の一部の領域上に絶縁酸化膜23を挟んで配置されている。絶縁酸化膜23は、例えば半導体基板10の表面を酸化することによって好適に形成される。従って、半導体基板10がSi基板である場合、絶縁酸化膜23はSiOを主に含む。前述した不純物拡散領域12a及び12bは、半導体基板10の該一部の領域を挟んで配置されている。不純物拡散領域12a及び12bは、MOS型トランジスタ7のドレイン領域及びソース領域として機能する。
【0030】
導電体層31は、半導体基板10の別の一部の領域10b上に設けられている。一部の領域10bは、半導体基板10の厚さ方向においては半導体基板10の表面10aを含む表層部分に存在し、半導体基板10の表面10aに沿った面内においては、導電体層31の直下に位置する領域を含む。また、一部の領域10bは、導電体層31の直下に位置する領域の周囲の領域をも含むことがある。但し、本実施形態では、後述する不純物拡散領域12c,12dは一部の領域10bに含まれない。導電体層31と半導体基板10の該一部の領域との間には、絶縁層22が挟まれている。絶縁層22は、絶縁酸化膜23と同様に、例えば半導体基板10の表面を酸化することによって好適に形成される。従って、半導体基板10がSi基板である場合、絶縁層22はSiOを主に含む。好適な実施例では、絶縁層22は絶縁酸化膜23と同時に形成される。また、好適な実施例では、導電体層31は、MOS型トランジスタ7のゲート電極32の構成材料と同一の材料から成り、ゲート電極32と同時に形成される。導電体層31、絶縁層22、及び半導体基板10の一部の領域10bは容量部5を構成し、導電体層31に電荷が蓄積される。
【0031】
本実施形態の容量部5は、前述した不純物拡散領域12c及び12dを更に有する。不純物拡散領域12c及び12dは、半導体基板10の一部の領域10bを挟むように、一部の領域10bに隣接して配置されている。好適な実施例では、不純物拡散領域12c及び12dは、MOS型トランジスタ7の不純物拡散領域12a及び12bと同時に形成される。
【0032】
配線層20は、第2層目及び第3層目に形成された複数の層内配線24と、第3層目に形成されたゲート配線33と、第4層目(最上層)に形成されたデータ配線34、バイアス配線35、及び上部金属膜(トップメタル)36とを更に有する。
【0033】
容量部5の導電体層31は、図7に示されるように、層内配線24及び層間配線26を介して、上部金属膜36と電気的に接続されている。更に、導電体層31は、層内配線24及び層間配線26を介して、MOS型トランジスタ7のドレイン領域である不純物拡散領域12aと電気的に接続されている。なお、上部金属膜36の上面には、絶縁層21がエッチングにより除去されて開口が形成されている。該開口から露出した金属膜36の表面は接続パッド37となっており、接続パッド37上にはバンプ電極51が配置されている。これにより、導電体層31は、上部金属膜36及びバンプ電極51を介して電荷発生部4と電気的に接続されることとなる。また、不純物拡散領域12c及び12dは、図5に示されるように、層内配線24及び図示しない層間配線を介して、バイアス配線35と電気的に接続されている。なお、バイアス配線35には、所定の大きさの一定電圧が常に印加される。
【0034】
MOS型トランジスタ7のゲート電極32は、図5に示されるように、層内配線24及び図示しない層間配線を介して、ゲート配線33と電気的に接続されている。また、MOS型トランジスタ7のソース領域である不純物拡散領域12bは、図5に示されるように、層内配線24及び図示しない層間配線を介して、データ配線34と電気的に接続されている。
【0035】
なお、半導体基板10の表面10aには、不純物拡散領域12a〜12dとは別に、複数の不純物拡散領域14が形成されている。複数の不純物拡散領域14は、半導体基板10と同じ導電型(例えばp型)を与える不純物が半導体基板10の表面10aに高濃度に拡散されて成る。図4及び図5に示されるように、複数の不純物拡散領域14は、列方向に延びる細長形状をしており、行方向において複数の画素回路部3aと交互に配置されている。図5に示されるように、各不純物拡散領域14は、層内配線24及び図示しない層間配線を介して、バイアス配線35と電気的に接続されている。
【0036】
以上の構成を備える本実施形態による放射線イメージセンサ1Aによって得られる効果について説明する。本実施形態の放射線イメージセンサ1Aでは、電荷を蓄積する容量部5が、半導体基板10の一部の領域10bと、該一部の領域10b上に設けられた導電体層31と、該一部の領域10b及び該導電体層31の間に挟まれた絶縁層22とを含んでいる。このように、容量部5の一対の電極のうち一方が半導体基板10の一部によって構成されることにより、以下の効果が得られる。
【0037】
すなわち、絶縁層22を例えば半導体基板10の表面の酸化によって形成することができるので、CVD等により成膜する場合と比較して、絶縁層22を高品質で且つ薄く形成することができる。従って、容量部5の単位面積当たりの容量値を大きくすることができる。これにより、一つの画素回路部3aに必要な面積を抑えつつ、容量部5の蓄積電荷量を多くすることができる。
【0038】
加えて、容量部5の蓄積電荷量が多くなると飽和電荷量の増加につながり、飽和の抑制にも寄与する。従って、或る画素回路部3aのMOS型トランジスタ7が何らかの理由により動作しない場合や、大量の放射線の入射により電荷発生部4から過剰な電荷が流入した場合であっても、その画素回路部3aの容量部5の飽和を抑えて、容量部5の故障や電荷の溢れ出しを低減することができる。
【0039】
更に、容量部5の絶縁層22及び導電体層31を、MOS型トランジスタ7の絶縁酸化膜23及びゲート電極32と同様のプロセスにより形成することが可能となる。従って、製造工程を簡易にすることができ、また、容量部5をMOS型トランジスタ7と同時に形成すれば、製造工程を少なくすることができる。
【0040】
また、本実施形態のように、導電体層31は、MOS型トランジスタ7のゲート電極32の構成材料と同一の材料から成ることができる。これにより、MOS型トランジスタ7を形成する工程において容量部5を同時に形成することができるので、製造工程数をより少なくすることができる。
【0041】
また、本実施形態のように、バルク状の電荷発生部4と回路基板3とは、フリップチップボンディング等のバンプボンディングにより互いに接続されてもよい。これにより、電荷発生部4を回路基板3上に好適に配置することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、半導体基板10をp型とし、不純物拡散領域12a〜12dをn型とする例が示された。この場合、MOS型トランジスタ7はnMOS型となる。半導体基板10及び不純物拡散領域12a〜12dの導電型はこの組み合わせに限られず、例えば、半導体基板10をn型とし、不純物拡散領域12a〜12dをp型としてもよい。この場合、MOS型トランジスタ7はpMOS型となる。なお、この場合、不純物拡散領域14は高濃度のn型であるとよい。
【0043】
(第1の変形例)
図8は、上記実施形態の第1変形例に係る回路基板3Aの一部を拡大して示す上面図であって、図5と同様に、各画素回路部3aが有する上部金属膜(トップメタル)を省略した様子を示している。なお、本変形例の回路基板3Aの構成は、以下に述べる点を除き、上記実施形態の回路基板3の構成と同様である。
【0044】
図8に示されるように、本変形例の回路基板3Aでは、上記実施形態とは異なり、バイアス配線35と不純物拡散領域12c,12dとを接続する層内配線が設けられていない。その代わりに、不純物拡散領域12c及び12dと導電体層31とを互いに電気的に接続する層内配線24が設けられている。
【0045】
不純物拡散領域12c及び12dは半導体基板10の一部の領域10b(図6を参照)に隣接して配置されているので、不純物拡散領域12c及び12dと半導体基板10とは互いにpn接合を成す。そして、本変形例では、不純物拡散領域12c及び12dが導電体層31と短絡されている。このような構成において、容量部5の電荷蓄積量が或る閾値を超えた場合、余剰電荷が不純物拡散領域12c及び12dを介して導電体層31と半導体基板10との間を流れるので、余剰電荷を解消することができる。従って、本変形例によれば、或る画素回路部3aのMOS型トランジスタ7が何らかの理由により動作しない場合や、大量の放射線の入射によって過剰な電荷が発生した場合においても、容量部5の故障や電荷の溢れ出しを更に低減することができる。
【0046】
また、半導体基板10と不純物拡散領域12c及び12dとの間のpn接合部分には、容量成分が存在する。そして、この容量成分が容量部5の容量値の増大に寄与することとなる。従って、本変形例によれば、各画素回路部3aの面積を抑えつつ、容量部5の蓄積電荷量を更に多くすることができる。
【0047】
なお、本変形例では、一部の領域10bと不純物拡散領域12c及び12dとの間のpn接合部分は、回路基板3Aの厚さ方向から見て、導電体層31と重ならない位置に離間して設けられるとよい。言い換えれば、これらのpn接合部分は、導電体層31の下部を覆うように一体的には形成されない。これにより、pn接合部分の表面積を抑え、暗電流を低減することができる。また、本変形例のように、導電体層31の直下の領域から不純物拡散領域12c及び12dが離間していないことが好ましい。直下の領域と不純物拡散領域12c及び12dとが離間することで増大した容量部5の面積が画素ピッチの増大を招くと、バンプ電極51同士の間隔が広がることとなり、電荷発生部4で発生した電荷をバンプ電極51を介して容量部5へ伝送するために必要な電圧が大きくなる。また、導電体層31の直下の領域から不純物拡散領域12c及び12dが離間していないことによって画素面積を小さくできるので、画素ピッチを狭くして解像度を高めることもできる。すなわち、回路基板3Aの厚さ方向から見たとき、導電体層31の縁と不純物拡散領域12c及び12dの縁とが略一致することで、最も効率的に本変形例の効果を得ることができる。
【0048】
(第2の変形例)
図9及び図10は、上記実施形態の第2変形例に係る放射線イメージセンサ1Cの構成を示す断面図であって、図5のVI−VI断面及びVII−VII断面に相当する断面をそれぞれ示している。
【0049】
本変形例の放射線イメージセンサ1Cと上記実施形態の放射線イメージセンサ1Aとの相違点は、回路基板と電荷発生部との接続方式である。図9及び図10に示されるように、本変形例では、回路基板3と電荷発生部4Aとの間にバンプ電極が設けられておらず、回路基板3(特に接続パッド37)と電荷発生部4Aとが直接接触している。この場合、電荷発生部4Aは、上記実施形態のようにバルク状のものが用いられる形態とは異なり、放射線を吸収して電荷を発生する材料(例えばCdTe)が、回路基板3上に蒸着されて成る。
【0050】
本変形例のように、電荷発生部4Aは、回路基板3上に蒸着により形成されてもよい。これにより、電荷発生部4を回路基板3上に好適に配置することができる。
【0051】
(第3の変形例)
【0052】
図11及び図12は、上記実施形態の第3変形例を示す図である。図11は、本変形例の回路基板3Bの一部を拡大して示す上面図である。なお、図11は、各画素回路部3aが有する上部金属膜36を省略した様子を示している。図12は、図11のXII−XII断面を示す断面図である。図12には、電荷発生部4及びバンプ電極51が併せて示されている。
【0053】
図11及び図12に示されるように、本変形例の回路基板3Bは、上記実施形態の回路基板3の構成に加えて、第2の導電体層39aと、第3の導電体層39bとを更に有している。第2の導電体層39aは、配線層20の第2層目に形成されており、上部金属膜36の下面に沿って延びている。第2の導電体層39aは、層間配線26を介して導電体層31及び上部金属膜36と電気的に接続されている。第3の導電体層39bは、配線層20の第3層目に形成され、上部金属膜36と第2の導電体層39aとの間に配置されており、上部金属膜36の下面に沿って延びている。第3の導電体層39bは、層間配線26を介してバイアス配線35と電気的に接続されており、また、層内配線24及び層間配線26を介して不純物拡散領域14と電気的に接続されている。
【0054】
本変形例では、第2の導電体層39aと第3の導電体層39bとが絶縁層21を挟んで互いに対向しており、また、上部金属膜36と第3の導電体層39bとが絶縁層21を挟んで互いに対向している。従って、第2の導電体層39aと第3の導電体層39bとの間、及び上部金属膜36と第3の導電体層39bとの間に、電荷を蓄積するための容量成分が生じる。このように、導電体層が2層以上設けられることによって、容量部5の容量値を更に高め、電荷をより多く蓄積することができる。従って、MOS型トランジスタ7が何らかの理由により動作しない場合や、電荷発生部4から過剰な電荷が流入した場合であっても、容量部5の飽和を抑えて、容量部5の故障や電荷の溢れ出しをより一層低減することができる。
【0055】
本発明による放射線イメージセンサは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では半導体基板としてSi基板を例示したが、本発明の半導体基板としてはこれ以外にも様々な半導体材料を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1A,1C…放射線イメージセンサ、2…ベース基板、3,3A,3B…回路基板、3a…画素回路部、3b…垂直シフトレジスタ部、3c…読出回路部、4,4A…電荷発生部、5…容量部、7…MOS型トランジスタ、10…半導体基板、12a〜12d…不純物拡散領域、14…不純物拡散領域、20…配線層、21,22…絶縁層、23…絶縁酸化膜、24…層内配線、26…層間配線、31…導電体層、32…ゲート電極、33…ゲート配線、34…データ配線、35…バイアス配線、36…上部金属膜、37…接続パッド、42…積分回路、44…保持回路、51…バンプ電極。
図1
図2
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