(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加して、前記電子放出素子から電子を放出させる駆動電源とを備えた電子放出装置であって、
前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出する素子内電流検出部と、
前記電子放出素子が置かれた環境の温度及び/又は湿度を検出する環境検出部と、
前記環境検出部により検出された温度及び/又は湿度から電子放出効率を求め、前記電子放出効率と前記素子内電流検出部により検出された素子内電流とを掛け合わせて前記電子放出素子から放出される電子放出量又は放出電流量の推定値を求め、前記推定値が前記電子放出量又は前記放出電流量の予め設定された目標値となるように前記駆動電源の駆動電圧を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電子放出装置。
第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加して、前記電子放出素子から電子を放出させる駆動電源と、前記第2電極と該第2電極に対峙する電子放出対象物との間に電界発生電圧を印加して、前記電子を前記第2電極から前記電子放出対象物へと移動させる電界を生成する電界発生用電源とを備えた電子放出装置であって、
前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出する素子内電流検出部と、
前記電子放出素子が置かれた環境の温度及び/又は湿度を検出する環境検出部と、
前記電界発生用電源から前記第2電極へと流れる電流を検出する電界電流検出部と、
前記環境検出部にて検出された温度及び/又は湿度が所定の第1環境であるときには前記素子内電流検出部により検出された素子内電流及び前記環境検出部により検出された温度及び/又は湿度に基づき前記駆動電源の駆動電圧を制御する一方、前記環境検出部にて検出された温度及び/又は湿度が前記第1環境とは異なる所定の第2環境であるときには前記電界電流検出部により検出された電流に基づき前記駆動電源の駆動電圧を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電子放出装置。
第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子から電子を放出させるために、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加する電子放出装置の制御方法であって、
前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出し、
前記電子放出素子が置かれた環境の温度及び/又は湿度を検出し、
前記検出された温度及び/又は湿度から電子放出効率を求め、前記電子放出効率と前記検出された素子内電流とを掛け合わせて前記電子放出素子から放出される電子放出量又は放出電流量の推定値を求め、前記推定値が前記電子放出量又は前記放出電流量の予め設定された目標値となるように前記駆動電圧を制御することを特徴とする電子放出装置の制御方法。
第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子から電子を放出させるために、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加し、前記電子を前記第2電極から該第2電極に対峙する電子放出対象物へと移動させる電界を生成するために、前記第2電極と前記電子放出対象物との間に電界発生電圧を印加する電子放出装置の制御方法であって、
前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出し、
前記電子放出素子が置かれた環境の温度及び/又は湿度を検出し、
前記検出された温度及び/又は湿度が所定の第1環境であるときには前記検出された素子内電流、及び、前記検出された温度及び/又は湿度に基づき駆動電源の駆動電圧を制御する一方、前記検出された温度及び/又は湿度が前記第1環境とは異なる所定の第2環境であるときには前記第2電極へと流れる電流を検出し、前記検出された電流に基づき前記駆動電圧を制御することを特徴とする電子放出装置の制御方法。
【背景技術】
【0002】
周知のように電子写真方式の画像形成装置では、帯電装置により感光体表面を均一に帯電させ、感光体表面を露光して、感光体表面に静電潜像を形成し、感光体表面の静電潜像を現像する。帯電装置としては、コロナ放電を利用したものがあるが、オゾンやNOx等の放電生成物の発生量が多いという欠点がある。このため、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3では、放電生成物の発生を抑えることが可能な電子放出素子を用いて電子放出装置を構成し、この電子放出装置を画像形成装置の帯電装置として適用している。
【0003】
次に、従来の電子放出装置の一例を
図9を参照して説明する。
図9は、従来の電子放出装置の一例を模式的に示す図である。
図9に示すように、従来の電子放出装置201は、電子放出素子211、各給電端子212a、212b、台座213、駆動電源214、電界発生用電源215、流入電流計216、回収電流計217、及び制御部218を備えている。
【0004】
ここでは、電子放出装置201の電子放出素子211が感光体ドラム221から所定の間隔をおいて配置され、感光体ドラム221が回転駆動されつつ、電子放出素子211から放出された電子により感光体ドラム221の表面が均一に帯電される。感光体ドラム221は、金属製の円筒221aの外周に感光体層等を積層したものであり、金属製の円筒221aが接地され、感光体ドラム221の表面に電荷が蓄積される。
【0005】
電子放出素子211は、台座213の下面に固定された金属製の基板211aと、この基板211a上に形成された無機絶縁体層211bと、この無機絶縁体層211b上に形成された表面電極211cとからなる3層構造である。
【0006】
また、各給電端子212a、212bは、台座213の側部に固定されて、その先端が電子放出素子211の表面電極211cに接触するように配置されている。駆動電源214は、電子放出素子211の基板211aに接続されると共に、各給電端子212a、212bを介して電子放出素子211の表面電極211cに接続され、基板211aと表面電極211cとの間に直流、パルス波形、正弦波形、三角波形等の駆動電圧Vdを印加する。この駆動電圧Vdの印加により、無機絶縁体層211bで電子が加速され、加速された電子(放出電流量Ie)が表面電極211c或いは表面電極211cの近傍から大気中に放出される。
【0007】
更に、電界発生用電源215は、各給電端子212a、212bを介して表面電極211cに接続されており、所定の電界発生電圧Veを表面電極211cと接地点との間に印加する。これにより、表面電極211cと感光体ドラム221の円筒221aとの間に電界が発生し、この電界により表面電極211c或いは表面電極211cの近傍から放出された電子が感光体ドラム221の表面へと移動する。表面電極211cと感光体ドラム221の表面との離間距離は、表面電極211cから放出された電子を感光体ドラム221の表面に到達させることができる距離であれば、特に制限されない。
【0008】
一方、流入電流計216は、駆動電源214と電子放出素子211の基板211aとの間に挿入されて、電子放出素子211に流入する素子内電流量Ipを測定する。また、回収電流計217は、各給電端子212a、212bを介して電子放出素子211の表面電極211cに接続され、表面電極211cから大気中に放出されずに回収された回収電流量Icを測定する。尚、
図9における素子内電流量Ip及び回収電流量Icの矢印方向は、電流の流れの向きを示しており、電子の流れの向きとは逆になっている。
【0009】
制御部218は、駆動電源214を制御して、電子放出素子211の表面電極211cに印加される駆動電圧Vdを調節するものであり、流入電流計216により測定された素子内電流量Ip及び回収電流計217により測定された回収電流量Icに基づいて放出電流量Ieが予め設定された目標値となるように駆動電圧Vdを調節する。
【0010】
このように従来は、電子放出素子211から放出される放出電流量Ieを監視し、駆動電圧Vdをリアルタイムで制御することによって、感光体ドラム221表面の帯電量並びに帯電電位を制御していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、通常、電子放出素子211の電子放出効率ηは0.01%以下と非常に小さい。この電子放出効率ηとは電子放出素子を流れる素子内電流量Ipの内、大気中に放出される放出電流量Ieの割合のことであり、次式(1)で表される。また、放出電流量Ieは次式(2)で表される。
【0013】
η=Ie/Ip=(Ip−Ic)/Ip …(1)
Ie=(Ip−Ic) …(2)
ここで、η=0.0001(0.01%)以下であるから、上記式(1)に基づきIp≒Icと考えることができる。このため、上記従来のように、素子内電流量Ip及び回収電流量Icを測定し、上記式(2)に基づいて放出電流量Ieを求めようとしても、SN比が小さすぎて正確な放出電流量Ieを求めることが困難であった。その結果、感光体ドラム221表面の帯電量並びに帯電電位を正確に制御することができないといった課題があった。
【0014】
また、電子放出装置201の耐用限度内であっても、電子放出素子211の表面電極211cが経時変化して劣化してくると、放出電流量Ieが減少してより少なくなるため、感光体ドラム221表面の帯電量並びに帯電電位の制御が益々困難になって、帯電量並びに帯電電位を所定値に維持することができなくなるといった課題があった。これを回避するために、電子放出装置201の使用初期から必要以上に高い駆動電圧を表面電極211c印加することが考えられるが、この場合は、表面電極211cの劣化が加速され、電子放出素子211の寿命が短くなるといった課題があった。
【0015】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、感光体ドラム等の電子放出対象物の帯電量並びに帯電電位を安定制御し、装置の長寿命化を実現することが可能な電子放出装置、その電子放出装置を備えた帯電装置、その帯電装置を備えた画像形成装置、及びその電子放出装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の電子放出装置は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加して、前記電子放出素子から電子を放出させる駆動電源とを備えた電子放出装置であって、前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出する素子内電流検出部と、前記電子放出素子が置かれた環境の温度
及び/又は湿度を検出する環境検出部と、
前記環境検出部により検出された温度
及び/又は湿度
から電子放出効率を求め、前記電子放出効率と前記素子内電流検出部により検出された素子内電流
とを掛け合わせて前記電子放出素子から放出される電子放出量又は放出電流量の推定値を求め、前記推定値が前記電子放出量又は前記放出電流量の予め設定された目標値となるように前記駆動電源の駆動電圧を制御する制御部とを備えている。
【0017】
このような本発明の電子放出装置では、素子内電流検出部により検出された素子内電流及び環境検出部により検出された温度
及び/又は湿度に基づき駆動電源の駆動電圧を制御している。ここで、素子内電流検出部による素子内電流の検出誤差及び環境検出部による温度
及び/又は湿度の検出誤差を小さく抑えることは容易である。このため、素子内電流及び温度
及び/又は湿度に基づく駆動電圧の制御により電子放出素子の電子放出量を高精度で制御することができる。
【0019】
しかも、電子放出量又は放出電流量の推定値は、検出誤差が小さな素子内電流及び同じく検出誤差が小さな温度
及び/又は湿度に基づき求められることから、放出電流量の近似値としての精度が高い。従って、推定値が放出電流量の目標値となるように駆動電源の駆動電圧を制御することにより、実際の放出電流量をリアルタイムで高精度に制御することができる。
【0020】
更に、本発明の電子放出装置においては、前記制御部は、前記電子放出装置の耐用限度内において前記目標値を一定値に継続的に維持している。
【0021】
これにより、電子放出装置の耐用限度内において電子放
出素子からは常に一定量の放電電子が放出されることになり、電子放出に伴う電子放
出素子の表面電極の劣化を最低限に抑えることができ、電子放出素子の長寿命化を実現することができる。
【0022】
次に、本発明の電子放出装置は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子と、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加して、前記電子放出素子から電子を放出させる駆動電源と、前記第2電極と該第2電極に対峙する電子放出対象物との間に電界発生電圧を印加して、前記電子を前記第2電極から前記電子放出対象物へと移動させる電界を生成する電界発生用電源とを備えた電子放出装置であって、
前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出する素子内電流検出部と、前記電子放出素子が置かれた環境の温度及び/又は湿度を検出する環境検出部と、前記電界発生用電源から前記第2電極へと流れる電流を検出する電界電流検出部と、
前記環境検出部にて検出された温度及び/又は湿度が所定の第1環境であるときには前記素子内電流検出部により検出された素子内電流及び前記環境検出部により検出された温度及び/又は湿度に基づき前記駆動電源の駆動電圧を制御する一方、前記環境検出部にて検出された温度及び/又は湿度が前記第1環境とは異なる所定の第2環境であるときには前記電界電流検出部により検出された電流に基づき前記駆動電源の駆動電圧を制御する制御部とを備えている。
【0023】
このような本発明の電子放出装置では、電界電流検出部により検出された電界発生用電源から第2電極へと流れる電流に基づき駆動電源の駆動電圧を制御している。ここで、電界電流検出部による電流の検出誤差を小さく抑えることは容易である。このため、その検出された電流に基づく駆動電圧の制御により電子放出素子の電子放出量を高精度で制御することができる。
【0024】
また、本発明の電子放出装置においては、前記制御部は、前記電界電流検出部により検出された電流を前記電子放出素子から放出される電子放出量又は放出電流量の推定値として設定し、前記推定値が前記電子放出量又は前記放出電流量の予め設定された目標値となるように前記駆動電源の駆動電圧を制御している。
【0025】
電子放出量又は放出電流量の推定値は、電界発生用電源から第2電極へと流れる検出誤差が小さな電流に基づき求められることから、放出電流量の近似値としての精度が高い。従って、推定値が放出電流量の目標値となるように駆動電源の駆動電圧を制御することにより、実際の放出電流量をリアルタイムで高精度に制御することができる。
【0026】
更に、本発明の電子放出装置においては、前記制御部は、前記電子放出装置の耐用限度内において前記目標値を一定値に継続的に維持している。
【0027】
これにより、電子放出装置の耐用限度内において電子放
出素子からは常に一定量の放電電子が放出されることになり、電子放出に伴う電子放
出素子の表面電極の劣化を最低限に抑えることができ、電子放出素子の長寿命化を実現することができる。
【0028】
次に、本発明の帯電装置は、上記本発明の電子放出装置を備えている。
【0029】
また、本発明の画像形成装置は、上記本発明の帯電装置を備えている。
【0030】
このような帯電装置及び画像形成装置においても、上記本発明の電子放出装置と同様の作用効果を奏する。
【0031】
次に、本発明の電子放出装置の制御方法は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子から電子を放出させるために、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加する電子放出装置の制御方法であって、前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出し、前記電子放出素子が置かれた環境の温度
及び/又は湿度を検出し、
前記検出された温度
及び/又は湿度
から電子放出効率を求め、前記電子放出効率と前記検出された素子内電流
とを掛け合わせて前記電子放出素子から放出される電子放出量又は放出電流量の推定値を求め、前記推定値が前記電子放出量又は前記放出電流量の予め設定された目標値となるように前
記駆動電圧を制御している。
【0032】
また、本発明の電子放出装置の制御方法は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた中間層を有する電子放出素子から電子を放出させるために、前記第1電極と前記第2電極との間に駆動電圧を印加し、前記電子を前記第2電極から該第2電極に対峙する電子放出対象物へと移動させる電界を生成するために、前記第2電極と前記電子放出対象物との間に電界発生電圧を印加する電子放出装置の制御方法であって、
前記電子放出素子を流れる素子内電流を検出し、前記電子放出素子が置かれた環境の温度及び/又は湿度を検出し、前記検出された温度及び/又は湿度が所定の第1環境であるときには前記検出された素子内電流及び前記検出された温度及び/又は湿度に基づき駆動電源の駆動電圧を制御する一方、前記検出された温度及び/又は湿度が前記第1環境とは異なる所定の第2環境であるときには前記第2電極へと流れる電流を検出し、前記検出された電流に基づき前
記駆動電圧を制御している。
【0033】
このような電子放
出装置の制御方法においても、上記本発明の電子放出装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、素子内電流検出部により検出された素子内電流及び環境検出部により検出された温度
及び/又は湿度に基づき駆動電源の駆動電圧を制御している。ここで、素子内電流検出部による素子内電流の検出誤差及び環境検出部による温度
及び/又は湿度の検出誤差を小さく抑えることは容易である。このため、素子内電流及び温度
及び/又は湿度に基づく駆動電圧の制御により電子放出素子の電子放出量を高精度で制御することができる。
【0035】
また、電界電流検出部により検出された電界発生用電源から第2電極へと流れる電流に基づき駆動電源の駆動電圧を制御している。ここで、電界電流検出部による電流の検出誤差を小さく抑えることは容易である。このため、その検出された電流に基づく駆動電圧の制御により電子放出素子の電子放出量を高精度で制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の電子放
出装置の実施形態を適用した画像形成システム1の内部構成を示す断面図である。この画像形成システム1は、画像形成装置2を中心にして、スキャナ3、自動原稿搬送装置4、後処理装置5、用紙供給装置6、中継搬送ユニット8、及び両面搬送装置10等の周辺機器を組み合わせてなり、そのシステムとしての機能が拡張されている。このうち、画像形成装置2及び後処理装置5は、用紙供給装置6の上に並べて載置されている。また、スキャナ3及び自動原稿搬送装置4は、システムラック7の上に重ねて設けられて、画像形成装置2及び後処理装置5の上方に配置されている。また、用紙供給装置6の下面には移動コロ55及び固定部54が設けられている。固定部54を回転させて上昇させ、この固定部54を床面から離間させて、移動コロ55を床面に接触させ、この状態で用紙供給装置6を移動させて、用紙供給装置6、画像形成装置2、及び後処理装置5をシステムラック7の内側に配置し、固定部54を回転させて下降させ、この固定部54を床面に接触させて、移動コロ55を床面から離間させ、用紙供給装置6を固定している。
【0039】
画像形成装置2は、スキャナ3にて読み込まれた画像の記録出力はもとより、パーソナルコンピュータなどの外部機器からネットワーク等を通じて受信入力した画像の記録出力も行う。
【0040】
画像形成装置2の略中央左側には、電子写真プロセス部11が配置されている。この電子写真プロセス部11では、感光体ドラム15の周囲に、感光体ドラム15表面を均一に帯電させる帯電ユニット21、均一に帯電された感光体ドラム15表面に光像を走査して静電潜像を書き込む光走査ユニット22、光走査ユニット22により書き込まれた静電潜像をトナーにより現像する現像ユニット12、感光体ドラム15表面に形成されたトナー像を記録用紙に転写する転写ユニット13、転写後の感光体ドラム15表面に残留した現像剤を除去して感光体ドラム15表面に新たなトナー像を記録することを可能にするクリーニングユニット14、及び感光体ドラム15表面の電荷を除去する除電ランプユニット(不図示)などを配置している。
【0041】
また、画像形成装置2本体の下部には、記録用紙を収容して供給する用紙供給部16が配置されている。この用紙供給部16は、記録用紙を収容する用紙収容トレイ16aと、用紙収容トレイ16aに収容された記録用紙を1枚ずつ分離給紙する分離供給部16bとで構成されている。この分離供給部16bにて1枚ずつ分離給紙された記録用紙は、感光体ドラム15と転写ユニット13との間のニップ域へと搬送されて、感光体ドラム15表面に形成されたトナー像を転写される。
【0042】
更に、用紙供給装置6は、オプションで付設されたものであって、3つの用紙供給部56、57、58を有している。用紙供給部56、57、58では、用紙収容トレイ56a、57a、58aに収容されている記録用紙を、各々に備えられた分離給送部56b、57b、58bによってそれぞれ1枚ずつに分離して、用紙排出口53及び画像形成装置2本体の下部に形成された用紙受口27を通じて画像形成装置2へと供給する。画像形成装置2では、用紙受口27を通じて供給された記録用紙を感光体ドラム15と転写ユニット13との間のニップ域へと搬送して、この記録用紙に感光体ドラム15表面に形成されたトナー像を転写する。
【0043】
ここで、画像形成装置2の稼働時には、所望とするサイズの記録用紙を収容した用紙供給部16及び各用紙供給部56、57、58のいずれかを選択的に動作させて、記録用紙を感光体ドラム15と転写ユニット13との間のニップ域へと搬送供給し、この記録用紙にトナー像を転写することができる。
【0044】
電子写真プロセス部11の上方には定着装置23が配置されている。定着装置23は、トナー像が転写された記録用紙を受け入れて、記録用紙上に転写されたトナー像を加熱定着して、記録用紙を排出する。この記録用紙は、排紙ローラ28を通じて画像形成装置2本体の上側の中継搬送ユニット8へと搬送される。従って、画像形成装置2の用紙搬送パスは、下から上に向かって略縦型に構成されている。
【0045】
中継搬送ユニット8は、画像形成装置2の排紙ローラ28から搬出された記録用紙を後処理装置5へと中継搬送したり排出トレイ9に排出したりする。後処理装置5への記録用紙の中継搬送と排出トレイ9への記録用紙の排出との切替えは、記録用紙の搬送路の分岐部に配置されたゲート46により行われる。
【0046】
後処理装置5では、記録用紙が画像形成装置2から中継搬送ユニット8を通じて搬送されて来ると、この記録用紙を搬入ローラ41を通じて導入し、この記録用紙に対して後処理を施す。後処理としては、ステープル処理、パンチング処理、ソート処理等あるが、この後処理装置5では、ステープル処理を行っており、ステープル処理を施した記録用紙を下段の排紙トレイ45に排出し、またステープル処理を施さなかった記録用紙を上段の排紙トレイ44に排出する。各排紙トレイ44、45に対する記録用紙の排出の切替えは、切替えゲート43により行われる。
【0047】
また、両面搬送装置10は、記録用紙の両面にトナー像を記録するときに記録用紙の表裏を反転させる。記録用紙の両面にトナー像を記録する場合は、記録用紙の表面にトナー像が記録されて、この記録用紙が排紙ローラ28へと搬送されて来ると、排紙ローラ28による記録用紙の搬送途中で該排紙ローラ28が一旦停止されて、排紙ローラ28が逆回転され、記録用紙がゲート47の切替えにより両面搬送装置10へと導かれ、記録用紙が両面搬送装置10を通じて電子写真プロセス部11へと再度導かれて、記録用紙の表裏が反転され、電子写真プロセス部11により記録用紙の裏面にトナー像が記録され、記録用紙が排紙ローラ28を通じて中継搬送ユニット8へと搬送される。
【0048】
一方、スキャナ3は、自動原稿搬送装置4により原稿載置台30上で搬送される原稿の画像を読み取る自動読み取りモードと、ユーザのマニュアル操作により原稿載置台30上に載置された原稿の画像を読み取る手動読み取りモードとのいずれかで動作する。このスキャナ3では、第1走査ユニット31及び第2走査ユニット32を相互に所定の速度関係で移動させるかあるいはそれぞれの規定位置に位置決めし、第1走査ユニット31の光源により原稿載置台30上の原稿を露光して、第1走査ユニット31及び第2走査ユニット32の各ミラーにより原稿からの反射光を結像レンズ33を通じて光電変換素子34へと導き、光電変換素子34により原稿の画像を読取って、原稿の画像を示す画像データを出力する。
【0049】
自動原稿搬送装置4では、自動読み取りモードのときに、原稿を原稿セットトレイ40から引き出して原稿載置台30上へと搬送し、更に原稿を原稿載置台30から原稿排出トレイ42へと搬送して排出する。また、手動読み取りモードのときには原稿を原稿載置台30上に載置する必要があるため、自動原稿搬送装置4を該装置4の後側を支点にして往復回転可能に支持し、該装置4の手前側を開放することができるようにしている。
【0050】
また、光走査ユニット22の上下の空間には、装置制御部24、画像制御部25、及びこれらに電力を供給する電源ユニット26などが配置されている。装置制御部24は、電子写真プロセス部11をコントロールするプロセスコントロールユニット(PCU)基板と、パーソナルコンピュータなどの外部機器からの画像データを受信入力するインターフェイス基板とを有している。また、画像制御部25は、スキャナ3から出力された画像データあるいはインターフェイス基板に受信入力された画像データに対して所定の画像処理を施し、光走査ユニット22を制御して、画像データに対応する静電潜像を感光体ドラム15表面に形成するイメージコントロールユニット(ICU)基板を有している。
【0051】
ところで、画像形成装置2の電子写真プロセス部11における帯電ユニット21は、本発明の電子放
出装置の実施形態を適用したものである。この実施形態の電子放
出装置では、電圧を印加することにより電子を放出する電子放出素子を用いているため、オゾンやNOx等の放電生成物の発生を抑えることができ、また感光体ドラム15表面の帯電電位を安定制御し、電子放
出装置の長寿命化を実現することが可能である。
<第1実施形態>
次に、本発明の電子放
出装置の第1実施形態である帯電ユニット21について、
図2及び
図3(a)、(b)を参照して詳細に説明する。
【0052】
図2は、第1実施形態の帯電ユニット21及び感光体ドラム15を模式的に示す図である。また、
図3(a)は、帯電ユニット21を電子放出面から見て示す平面図であり、
図3(b)は、帯電ユニット21を示す断面図である。
【0053】
図2及び
図3(a)、(b)に示す帯電ユニット21は、電子放出素子111、各給電端子112、113、台座114、駆動電源115、電界発生用電源116、流入電流計117、環境検出部118、及び制御部119を備えている。
【0054】
ここでは、帯電ユニット21の電子放出素子111が感光体ドラム15表面から所定の間隔をおいて配置され、感光体ドラム15が回転駆動されつつ、電子放出素子111から放出された電子により感光体ドラム15表面が均一に帯電される。感光体ドラム15は、金属製の円筒15aの外周に感光体層等を積層したものであり、金属製の円筒15aが接地され、感光体ドラム15表面に電荷が蓄積される。
【0055】
電子放出素子111は、台座114の下面に固定支持された金属製の基板121と、この基板121上に形成された無機絶縁体層122と、この無機絶縁体層122上に形成された表面電極123とからなる3層構造である。
【0056】
基板121は、導電性材料からなる矩形の薄板状のものであり、無機絶縁体層122が基板121上に形成され、更に表面電極123が無機絶縁体層122上に形成されて、基板121と表面電極123との間に無機絶縁体層122が挟み込まれている。また、表面電極123は、電子放出素子111の長手方向に延びた2本のバスライン部123a、123bと、各バスライン部123a、123bを接続する複数の櫛歯電極部123cとからなる。各櫛歯電極部123cは、電子放出素子111の長手方向に対して斜め方向に延びて、互いに間隔を開けて平行に配置されており、各櫛歯電極部123cの間で無機絶縁体層122が露呈している。
【0057】
例えば、基板121は、厚さ0.4mmのアルミ板を成形したものである。また、無機絶縁体層122は、主体となる樹脂と、この樹脂中に分散された導電性微粒子とを含む材料からなり、スピンコート法、ドクターブレード法、スプレー法、ディッピング法等により基板121表面に厚さ約1μmで塗布されて形成される。従って、無機絶縁体層122は、絶縁体乃至半導体としての特性を有する。樹脂としては、シリコーン樹脂等の絶縁性の樹脂材料を適用することができる。導電性微粒子としては、導体や半導体などの微粒子を用いることが可能であり、導体の微粒子の具体例として金、銀、白金、パラジウム等からなる金属微粒子を挙げることができる。また、無機絶縁体層122として、他の種類の絶縁体層や半導体層等、あるいは複数の材質を組み合わせたもの等を適用してもよく、要するに基板121と表面電極123との間で電子を加速することができれば如何なる種類のものであっても構わない。
【0058】
表面電極123については、無機絶縁体層122内への電圧の印加が可能であれば、その材質が特に制限されることはない。ただし、表面電極123としては、無機絶縁体層122内で加速され高エネルギーとなった電子を、なるべくエネルギーの損失無く通過させて放出可能であるものが望ましい。この観点から、表面電極123を、仕事関数が低くて、薄膜を形成することが可能な材料で形成するのが好ましい。このような材料としては、例えば、金、銀、炭素、チタン、ニッケル、アルミニウムなどを挙げることができる。第1実施形態では、スパッタ法により厚さ50nmの金の薄膜を形成して表面電極123としている。また、表面電極123として、他の種類の導体等、あるいは複数の材質を組み合わせたもの等、更には無機絶縁体層122表面全体を覆うものなどを適用してもよく、要するに電子を放出することができれば如何なる種類及び形状のものであっても構わない。
【0059】
台座114は、絶縁性材料からなり、基板121と同様に平面視すると矩形であって、直方体の形状を有し、その長さが電子放出素子111の全長に相当する。この台座114は、電子放出素子111及び各給電端子112、113を固定支持するためのものであり、その直方体の形状の両側面には、各給電端子112、113をビス止めするための複数のビス孔(図示せず)が形成されている。第1実施形態では、台座114の材料として絶縁性樹脂であるポリアセタール(POM)を用いている。
【0060】
各給電端子112、113は、薄い金属板からなり、それぞれの側板部112a、113aと、各側板部112a、113aの下端で折り曲げられた複数の接触部112b、113bと有し、側面視すると概ねL字形となっている。第1実施形態では、各給電端子112、113を厚さ0.15mmのステンレス板から形成している。
【0061】
各給電端子112、113の側板部112a、113aは、電子放出素子111よりもやや短い長さを有しており、各側板部112a、113aを台座114の両側面に当接させて、複数のビスを各側板部112a、113aの各孔を通じて台座114の両側面の各ビス孔にねじ込んで、各給電端子112、113を固定している。また、各給電端子112、113の接触部112b、113bは、該各給電端子112、113の側板部112a、113aが台座114の両側面に固定されることにより表面電極123の各バスライン部123a、123bに押圧されて接触した状態となる。これにより、各給電端子112、113と表面電極123の各バスライン部123a、123bとが電気的に接続される。同時に、電子放出素子111は、各給電端子112、113のばね力により該電子放出素子111の幅方向両側から台座114に押し付けられて固定支持される。
【0062】
次に、電子放出素子111を駆動及び制御するための駆動電源115、電界発生用電源116、流入電流計117、環境検出部118、及び制御部119について説明する。
【0063】
図2に示すように駆動電源115は、電子放出素子111の基板121に接続されると共に、各給電端子112、113を介して電子放出素子111の表面電極123に接続され、基板121と表面電極123との間に直流、パルス波形、正弦波形、三角波形等の駆動電圧Vdを印加する。第1実施形態では、直流電圧の駆動電圧Vdを印加している。
【0064】
電子放出素子111においては、基板121と表面電極123との間に駆動電圧Vdが印加されると、無機絶縁体層122で電子が加速され、加速された電子が表面電極123或いは表面電極123の近傍から放出電子として大気中に放出される。
【0065】
また、電界発生用電源116は、各給電端子112、113を介して表面電極123に接続されており、所定の電界発生電圧Veを表面電極123と接地点との間に印加する。この電界発生電圧Veにより、表面電極123から放出された電子を感光体ドラム15表面に引き寄せる電界が発生する。感光体ドラム15表面と表面電極123との離間距離は、表面電極123から放出された電子を感光体ドラム15表面に到達させることができる距離であれば、特に制限されない。第1実施形態では、離間距離を1mmに設定している。
【0066】
更に、流入電流計117は、駆動電源115と基板121との間に挿入されて、電子放出素子111に流入する素子内電流量Ipを測定し、この測定した素子内電流量Ipを制御部119に通知する。尚、
図2における素子内電流量Ipの矢印方向は、電流の流れの向きを示しており、電子の流れの向きとは逆になっている。
【0067】
また、環境検出部118は、台座114の上面に固定され、電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hを測定して、この測定した温度T及び湿度Hを制御部119に通知する。
【0068】
そして、制御部119は、流入電流計117により測定された素子内電流量Ip及び環境検出部118により測定された電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hに基づき電子放出素子111から放出される放出電子の量(電子放出量)に対応する放出電流量Ieの推定値MIeを求め、この推定値MIeが放出電流量Ieの予め設定された目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御する。
【0069】
ここで、推定値MIeを求めるための具体的な手順は、次の実験例1で詳しく説明するが、概ね次の通りである。まず、前提として、電子放出素子111の電子放出効率ηが電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hに対応して変化することから、温度T及び湿度Hに対応する電子放出効率ηを予め測定して求め、
図4に示すようなデータテーブルDtを作成して制御部119に内蔵のメモリ(図示せず)に記憶しておく。このデータテーブルDtには、低温低湿環境LL、常温常湿環境NN、及び高温高湿環境HHに対応する電子放出効率ηの値が格納されている。そして、制御部119は、環境検出部118により測定された電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hが各環境LL、NN、HHのいずれに対応するか又は最も近似するかを判定し、データテーブルDtを参照して、この判定した環境に対応する電子放出効率ηを検索して求め、この検索した電子放出効率η及び流入電流計117により測定された素子内電流量Ipに基づき放出電流量Ie(電子放出量)の推定値MIeを算出して求める。この放出電流量Ieの推定値MIeは、放出電流量Ieが上記式(1)に示した関係にあることから次の式(3)により求めることができる。
【0070】
MIe=η×Ip …(3)
このように電子放出素子111の素子内電流量Ip及び電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hに基づき電子放出素子111の放出電流量Ie(電子放出量)の推定値MIeを求めることができる。この放出電流量Ieの推定値MIeは、測定誤差が小さな素子内電流量Ip、温度T、及び湿度Hに基づき求められることから、放出電流量Ieの近似値としての精度が高い。従って、推定値MIeが放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御することにより、実際の放出電流量Ieをリアルタイムで高精度に制御することができ、感光体ドラム15表面の帯電量並びに帯電電位を適切に制御することが可能となる。
【0071】
これに対して
図9の従来の電子放出装置201では、流入電流計216により測定された素子内電流量Ipと回収電流計217により測定された回収電流量Icとの差を放出電流量Ieとして求めているが、Ip≒Icであるため、正確な放出電流量Ieを求めることができず、感光体ドラム221表面の帯電量並びに帯電電位を正確に制御することができない。
<第1実施形態に係わる実験例1>
次に、実験例1において、流入電流計117により測定された素子内電流量Ipと、環境検出部118により測定された電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hと、電子放出素子111の放出電流量Ieの推定値MIeとの関係を明確する。
【0072】
まず、本発明者等は、駆動電圧Vdと電子放出効率ηの関係について、低温低湿環境LL、常温常湿環境NN、及び高温高湿環境HHの3環境下でのエージング試験に基づく検討を行った。3環境の条件は、具体的には下記の通りである。
【0073】
低温低湿環境LL:5℃、15%
常温常湿環境NN:25℃、50%
高温高湿環境HH:30℃、80%
また、第1実施形態における電子放出素子111の目標耐用限度は、電子写真プロセス部11による少なくとも60,000枚(60K枚)の記録用紙の処理が遂行されるまでは感光体ドラム15表面の帯電量並びに帯電電位を繰り返し適確に設定することができるというものである。
【0074】
このため、低温低湿環境LL、常温常湿環境NN、及び高温高湿環境HHのいずれにおいても、電子写真プロセス部11による記録用紙の処理枚数が0枚のときの駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの特性、記録用紙の処理枚数が30K枚のときの駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの特性、及び記録用紙の処理枚数が60K枚のときの駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの特性を求めた。
【0075】
また、電子放出効率ηは、素子内電流量Ip及び回収電流量Ic(
図9に示す)を高精度で測定して、上記式(1)に基づき求めることができる。あるいは、感光体ドラム15の周囲に帯電ユニット21だけを設け、他の現像ユニット12や転写ユニット13等を排除した実験用のシステムを構成した上で、電子放出素子111により感光体ドラム15表面を所定の帯電量並びに帯電電位に帯電させ、このときに感光体ドラム15に流れるドラム電流量Ipc(
図6に示す)、及び素子内電流量Ipを高精度で測定して、そのドラム電流量Ipcを放出電流量Ieの推定値として扱えば、上記式(1)に基づき電子放出効率ηを求めることができる。
【0076】
その結果を、
図5のグラフに示す。
図5のグラフにおいては、横軸に駆動電圧Vdを示し、縦軸に電子放出効率ηを示している。また、グループGLは、低温低湿環境LLにおいて、記録用紙の処理枚数0枚、30K枚、60K枚別に、駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηを2回ずつ測定したときの測定値群からなる。同様に、グループGNは、常温常湿環境NNにおいて、記録用紙の処理枚数0枚、30K枚、60K枚別に、駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηを2回ずつ測定したときの測定値群からなり、またグループGHは、高温高湿環境HHにおいて、記録用紙の処理枚数0枚、30K枚、60K枚別に、駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηを2回ずつ測定したときの測定値群からなる。
【0077】
図5のグラフから明らかなように低温低湿環境LL、常温常湿環境NN、及び高温高湿環境HHのいずれにおいても、駆動電圧Vdと電子放出効率ηとが略比例関係にあり、記録用紙の処理枚数の影響が殆どみられない。また、各環境LL、NN、HHのいずれにおいても、駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの変動幅が特定されている。更に、各環境LL、NN、HHの間では、駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの値に明確な差異がある。このため、各環境LL、NN、HH別に、平均的な電子放出効率ηを設定しておけば、その平均的な電子放出効率ηと素子内電流量Ipとを用いて、放出電流量Ieの推定値MIeを求めることができる。この放出電流量Ieの推定値MIeは、上記式(3)により求められる。
【0078】
この放出電流量Ieの推定値MIeは、測定誤差が小さな素子内電流量Ip、温度T、及び湿度Hに基づき求められることから、放出電流量Ieの近似値としての精度が高く、よって推定値MIeが放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御することにより、実際の放出電流量Ieをリアルタイムに高精度で制御することができる。
【0079】
また、電子放出素子111の目標耐用限度、つまり電子写真プロセス部11による少なくとも60,000枚(60K枚)の記録用紙の処理が遂行されるまで、常に必要な放出電流量Ieを得るのに必要最低限な駆動電圧Vdを電子放出素子111の表面電極123に印加することが可能となるため、表面電極123の劣化を抑制することができ、電子放出素子111の長寿命化を実現できると同時に、その電子放出素子111の目標耐用限度の間は感光体ドラム15表面を安定的に帯電することが可能となる。
【0080】
尚、第1実施形態及び実験例1では、電子放出素子111周辺の温度湿度環境を判定して、この温度湿度環境に対応する電子放出効率ηを求めているが、電子放出素子111周辺の温度及び湿度のいずれか一方を測定して、この測定した温度又は湿度の環境に対応する電子放出効率ηを求めるようにしても構わない。
<第2実施形態>
次に、本発明の電子放
出装置の第2実施形態である帯電ユニット21Aについて、
図6を参照して詳細に説明する。第2実施形態の帯電ユニット21Aは、第1実施形態の帯電ユニット21の代りに、
図1に示す電子写真プロセス部11における感光体ドラム15表面の近傍に設けられ、感光体ドラム15表面を均一に帯電させるものである。
【0081】
図6は、第2実施形態の帯電ユニット21A及び感光体ドラム15を模式的に示す図である。尚、
図6において、
図2及び
図3(a)、(b)と同じ作用を果す部位には同一の符号を付す。
【0082】
まず、第2実施形態の帯電ユニット21Aにおいては、
図2及び
図3(a)、(b)に示す第1実施形態の帯電ユニット21と同様に電子放
出素子111、各給電端子112、113、台座114、駆動電源115、電界発生用電源116、環境検出部118、及び制御部119を設けているが、
図2及び
図3(a)、(b)に示す帯電ユニット21における流入電流計117を省略して、電界電流計131を追加している点が第1実施形態の帯電ユニット21とは異なる。
【0083】
このような構成の帯電ユニット21Aにおいて、電子放
出素子111は、台座114の下面に固定支持された基板121と、この基板121上に形成された無機絶縁体層122と、この無機絶縁体層122上に形成された表面電極123とからなる3層構造である。また、表面電極123は、2本のバスライン部123a、123bと、各バスライン部123a、123bを接続する複数の櫛歯電極部123cとからなる。更に、各給電端子112、113は、台座114の両側面に固定されて、表面電極123の各バスライン部123a、123bに接触し、電子放
出素子111を台座114に押し付けて固定支持する。
【0084】
また、駆動電源115は、電子放出素子111における基板121と表面電極123との間に直流、パルス波形、正弦波形、三角波形等の駆動電圧Vdを印加する。第2実施形態では、直流電圧の駆動電圧Vdを印加している。これにより、電子放出素子111における無機絶縁体層122で電子が加速され、加速された電子が表面電極123或いは表面電極123の近傍から放出電子として大気中に放出される。
【0085】
更に、電界発生用電源116は、所定の電界発生電圧Veを表面電極123と接地点との間に印加する。これにより、表面電極123から放出された電子を感光体ドラム15表面に引き寄せる電界が発生する。感光体ドラム15表面と表面電極123との離間距離は、表面電極123から放出された電子を感光体ドラム15表面に到達させることができる距離であれば、特に制限されない。
【0086】
また、電界電流計131は、電界発生用電源116と接地点との間に挿入されて、接地箇所から電界発生用電源116へと流れる電界発生電流量Ieaを検出し、この電界発生電流量Ieaを制御部119に通知する。
【0087】
更に、環境検出部118は、台座114の上面に固定され、電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hを測定して、この測定した温度T及び湿度Hを制御部119に通知する。
【0088】
そして、制御部119は、電界電流計131により測定された電界発生電流量Ieaを電子放出素子111から放出される放出電子の量(電子放出量)に対応する放出電流量Ieの推定値として設定し、この推定値(電界発生電流量Iea)が目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御する。
【0089】
ここで、電界発生電流量Ieaは、次の実験例2で詳しく説明するが、感光体ドラム15と接地点の間に流れるドラム電流量Ipcに略一致する。そして、ドラム電流量Ipcは、放出電流量Ieが感光体ドラム15に流れることにより生じる電流の量であり、放出電流量Ieに概ね等しい。このため、電界電流計131により測定された電界発生電流量Ieaを放出電流量Ieの推定値として設定し、この推定値(電界発生電流量Iea)が放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御することにより、実際の放出電流量Ieをリアルタイムで高精度に制御することができ、感光体ドラム15表面の帯電量並びに帯電電位を適切に制御することが可能となる。
<第2実施形態に係る実験例2>
次に、実験例2において、電界電流計131により測定された電界発生電流量Ieaと、放出電流量Ieとの関係を明確する。
【0090】
まず、電子放出素子111の放出電流量Ieを直接側定することができなくても、感光体ドラム15と接地点との間に流れるドラム電流量Ipcを測定すれば、次式(4)に示すようにドラム電流量Ipcを放出電流量Ieの推定値として扱うことができる。
【0091】
Ie≒Ipc …(4)
ところが、
図1から明らかなように感光体ドラム15の周囲には、帯電ユニット21だけでなく、現像ユニット12や転写ユニット13等が配置されているため、感光体ドラム15には、放出電流量Ieに対応するドラム電流量Ipcだけでなく、現像ユニット12や転写ユニット13等から様々な電流が流れる。このため、稼動中の電子写真プロセス部11における感光体ドラム15に流れる電流を測定しても、この測定した電流を放出電流量Ieとみなすことはできない。
【0092】
そこで、本発明者等は、感光体ドラム15の周囲に帯電ユニット21だけを設け、他の現像ユニット12や転写ユニット13等を排除して、上記式(4)が成立するような実験用のシステムを構成した上で、電子放出素子111により感光体ドラム15表面を所定の帯電量並びに帯電電位に帯電させ、このときに感光体ドラム15に流れるドラム電流量Ipc及び電界発生用電源116に流れる電界発生電流量Iea等を測定した。
【0093】
図6から明らかなようにドラム電流量Ipcは、感光体ドラム15の金属製の円筒15aと接地点との間で測定することができる。また、電界発生電流量Ieaは、電界電流計131により測定することができる。
【0094】
更に、環境検出部118により電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hを測定して、低温低湿環境LL、常温常湿環境NN、及び高温高湿環境HHを選択的に設定したり、あるいは感光体ドラム15の周面速度(プロセス速度)Pvを変更したりして、多様な環境及び動作条件におけるドラム電流量Ipc及び電界発生電流量Ieaを測定して求めた。
【0095】
その結果を、
図7の図表Stに示す。この
図7の図表Stでは、各実験番号1〜6別に、プロセス速度Pv、温度湿度環境、及び感光体ドラム15の帯電電位Vsを様々に設定して組み合わせた上で、ドラム電流量Ipc及び電界発生電流量Ieaを測定した結果を示している。
【0096】
例えば、各実験番号1〜3では、常温常湿環境NNを設定し、感光体ドラム15の帯電電位Vsを−600Vに設定した上で、プロセス速度Pvを112.5mm/sec、165mm/sec、225mm/secに変更して、ドラム電流量Ipc及び電界発生電流量Ieaを測定した結果を示している。各実験番号1〜3の測定結果の比較により、プロセス速度Pvが変更されても、ドラム電流量Ipcと電界発生電流量Ieaとが概ね等しいことが分かる。
【0097】
また、各実験番号1、4、5では、プロセス速度Pvを112.5mm/secに設定し、感光体ドラム15の帯電電位Vsを−600Vに設定した上で、温度湿度環境を低温低湿環境LL、高温高湿環境HHに変更して、ドラム電流量Ipc及び電界発生電流量Ieaを測定した結果を示している。各実験番号1、4、5の測定結果の比較により、温度湿度環境が変更されても、ドラム電流量Ipcと電界発生電流量Ieaとが概ね等しいことが分かる。
【0098】
更に、各実験番号1、6では、常温常湿環境NNを設定し、プロセス速度Pvを112.5mm/secに設定した上で、感光体ドラム15の帯電電位Vsを−600V、−800Vに変更して、ドラム電流量Ipc及び電界発生電流量Ieaを測定した結果を示している。各実験番号1、6の測定結果の比較により、感光体ドラム15の帯電電位Vsが変更されても、ドラム電流量Ipcと電界発生電流量Ieaとが概ね等しいことが分かる。
【0099】
すなわち、プロセス速度Pv、温度湿度環境、及び感光体ドラム15の帯電電位Vsを様々に設定して組み合わせたにもかかわらず、次式(5)に示すようにドラム電流量Ipcと電界発生電流量Ieaとが概ね等しくなる。
【0100】
Ipc≒Iea …(5)
従って、上記各式(4)、(5)に基づき電界発生電流量Ieaを放出電流量Ieの推定値として設定することが可能であり、しかも電界電流計131により電界発生電流量Ieaを直接測定することから、放出電流量Ieに近似する推定値(電界発生電流量Iea)を高精度で求めることができ、この推定値(電界発生電流量Iea)が放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御することにより、実際の放出電流量Ieをリアルタイムで高精度に制御することができる。
【0101】
尚、実験例2では、環境検出部118を用いているが、第2実施形態では、環境検出部118を必要としないので、環境検出部118を省略することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の電子放
出装置の第3実施形態である帯電ユニット21Bについて、
図8を参照して詳細に説明する。第3実施形態の帯電ユニット21Bは、第1実施形態の帯電ユニット21の代りに、
図1に示す電子写真プロセス部11における感光体ドラム15表面の近傍に設けられ、感光体ドラム15表面を均一に帯電させるものである。
【0102】
図8は、第3実施形態の帯電ユニット21B及び感光体ドラム15を模式的に示す図である。尚、
図8において、
図2、
図3(a)、(b)、及び
図6と同じ作用を果す部位には同一の符号を付す。
【0103】
この第3実施形態の帯電ユニット21Bにおいては、
図2及び
図3(a)、(b)に示す帯電ユニット21と同様に電子放
出素子111、各給電端子112、113、台座114、駆動電源115、電界発生用電源116、流入電流計117、環境検出部118、及び制御部119を設け、更に
図6に示す電界電流計131をも設けている。
【0104】
この第3実施形態では、電子放出素子111周辺の環境が低温低湿環境LL又は常温常湿環境NNであるときには、
図5のグラフから明らかなように駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの変動幅が著しく小さいことから、第1実施形態と同様に低温低湿環境LL又は常温常湿環境NNに対応する電子放出効率ηを求めて、上記式(3)に基づき放出電流量Ieの推定値MIeを求めている。これにより、放出電流量Ieの正確な推定値MIeを取得することができ、この放出電流量Ieの推定値MIeが放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御することにより実際の放出電流量Ieを高精度に制御することができる。
【0105】
また、電子放出素子111周辺の環境が高温高湿環境HHであるときには、
図5のグラフから明らかなように駆動電圧Vdに対する電子放出効率ηの変動幅が僅かながらも拡がることから、第1実施形態と同様に放出電流量Ieの推定値MIeを求めるよりも、第2実施形態と同様に電界電流計131により測定された電界発生電流量Ieaを放出電流量Ieの推定値として設定するのが好ましい。そして、この推定値(電界発生電流量Iea)が放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御することにより実際の放出電流量Ieを高精度に制御している。
【0106】
具体的には、制御部119は、
図4に示すデータテーブルDtを参照して、環境検出部118により測定された電子放出素子111周辺の温度T及び湿度Hが各環境LL、NN、HHのいずれに対応するか又は最も近似するかを判定し、この判定した環境が低温低湿環境LL又は常温常湿環境NNに対応するか又は最も近似すれば、この判定した環境に対応する電子放出効率ηをデータテーブルDtから検索して求め、上記式(3)にその検索した電子放出効率η及び流入電流計117により測定された素子内電流量Ipを代入して、放出電流量Ieの推定値MIeを算出して求め、この推定値MIeが放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御する。
【0107】
また、制御部119は、その判定した環境が高温高湿環境HHであれば、電界電流計131により測定された電界発生電流量Ieaを放出電流量Ieの推定値として設定し、この推定値(電界発生電流量Iea)が放出電流量Ieの目標値AIeとなるように駆動電源115の駆動電圧Vdを制御する。
【0108】
このような放出電流量Ieの推定値の算出方法の使い分けにより、環境変化の影響や電流測定誤差の原因となるノイズの影響を効果的に抑えて、実際の放出電流量Ieをリアルタイムで高精度に制御することができ、感光体ドラム15表面の帯電量並びに帯電電位を適切に制御することが可能となる。
【0109】
尚、上記各実施形態では、モノクロ用の画像形成装置の帯電体ユニットを例示しているが、本発明の電子放
出装置は、カラー用の画像形成装置における帯電ユニットとしても適用することができる。また、本発明の電子放
出装置は、感光体ドラム表面を帯電させるためにだけではなく、他の種類の電子放出対象物を帯電させたり、あるいは電子を空間に放出させたりするためにも適用することができる。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。