(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動により戸を開閉する駆動部と、戸の開閉時に駆動部に流れる電流を検知する電流検出部と、駆動部を制御する制御部とを備え、制御部は、戸の開閉動作時に、戸の締め切り時及び開き切り時の電流値よりも低く設定した障害物検出電流値を検知すると、戸の開閉動作を止め、次に一定時間戸の開閉動作の反転後に停止し、その後、戸の開閉動作を再開して戸を全閉又は全開するものであり、障害物を検知するまでの戸の開閉速度は戸の締め切り時及び開き切り時よりも小さいことを特徴とする戸。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2に示すように、本実施の形態にかかる戸1は、電動駆動により開閉する突き出しサッシであり、枠3と、枠3に対して障子5が回動軸7の周りを回動することにより開閉するものである。
この戸1は、障子5を駆動する駆動部9と、電流検出部11と、駆動部9を制御する制御部13とを備えている。
駆動部9は、モーターであり、電源15に接続してある。
電流検出部11は、電源15から駆動部9に流れる電流の電流値を検知するものであり、検知した電流値の検知信号を制御部13に送る。電流値の単位はアンペアである。
【0010】
制御部13は、開閉動作部17と、電流値比較部19と、変調部21と、タイマー23と、カウンター25とを備えている。
開閉動作部17は、障子3を開閉するときに駆動部9の駆動を制御するものであり、戸の閉操作制御と、戸の開操作制御とを行なう。
電流値比較部19は、予め設定された締め切り時及び開き切り時の電流値I
L、閉操作時の障害物検出電流値I
LC、開操作時の障害物検出電流値I
LOの各々に対して、電流検出部11で検出した駆動電流値Imが高いか否かを比較する。
図1に示すように、閉操作時における締め切り時電流値I
Lは、障子5を全閉するときの締め切りを行なう電流値であり、閉操作時の障害物検出電流値I
LCは、締め切り時電流値I
Lよりも低い所定の値の電流値である。同様に、開操作時には、障子5を全開するときの開き切りを行なう電流値を開き切り時電流値I
Lとしており、本実施の形態では、締め切り時電流値と開き切り時電流値とは共に同じ大きさの電流値I
Lである。また、閉操作時の障害物検出電流値I
LCと、開操作時の障害物検出電流値I
LOとは同じ値としている。尚、
図1では、反転動作の符号cの電流(後述する)は、閉動作時又は開動作時の駆動電流Imと逆方向の電流である。
変調部21は、戸1を開閉操作するときに駆動部9に供給する電流をPWM制御(パルス幅変調)するものであり、所定のDR(デューティー比)を設定している。PWM制御は、
図5に示すように、一定周期TにおけるONの時間TonとOFFの時間Toffとの比を0〜100%で設定している。例えば、変調度小の場合にDR90%、変調度大の場合にDR20%である。即ち、変調度小の場合には変調度大の場合よりも駆動トルクが大きい。
タイマー23は、開閉動作部17で行なう障子5の反転動作時間tと停止時間mをカウントする。例えば、tは3秒であり、mは1秒である。
カウンター25は、開閉動作部17でおこなう反転動作の繰り返し回数をカウントする。
【0011】
また、制御部13には、設定条件入力部27と操作部29とが接続されている。
設定条件入力部27は、開閉動作部17でおこなう繰り返し回数N、反転動作時の反転時間tや停止時間m等の各種時間、締め切り時電流値及び開き切り時電流値I
L、障害物検出電流値I
LC、I
LO、変調部21における変調度のDRを入力し、又は変更するものである。
操作部29は、戸の開閉操作を行なうリモコン(リモートコントローラ)であり、開操作ボタン、閉操作ボタン、開閉速度アップボタン等を有し、これらのボタン操作による操作信号を赤外線通信により制御部13へ送る。
【0012】
次に、本実施の形態にかかる戸の開閉制御について説明するが、まず、
図1及び
図3を参照して、戸の閉操作について説明する。
図2に示すように、操作部29の閉操作ボタンを押すと、操作部29は制御部13に閉操作信号を発信し、これにより制御部13は開閉動作部17に設定された閉操作制御を開始する。
図3に示すように、閉操作制御を開始すると、ステップS1で閉操作時の障害物検知電流値I
LC を読み込むと共にPMWデューティー比の小(変調度大)を、カウンター値の0をそれぞれ読み込んだ後、ステップS2で閉動作を始める。
ステップS2では、電源15から供給される駆動電流値Imにより駆動部9が障子5を閉じ方向に駆動し(
図1参照)、ステップS3に移行する。一方、電流検出部11は、駆動部9に流れる駆動電流値Imを検知しており、検知電流を制御部13へ送信する(
図2参照)。
ステップS3では、電流値比較部19で比較した駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LC(
図1参照)以上か否かを判断し、駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LC以上の場合にはステップS4に移行し、駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LCよりも小さい場合には、ステップS2へ戻り、閉動作を継続する。駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LC以上になったときは、
図1に符号aで示している。
ステップS4では、駆動部9の駆動を停止して、ステップS5に移行する。ステップS5ではt秒間障子5の反転動作をする。駆動の停止は
図1において、符号bで示し、反転動作は、符号cで示す。反転動作は、駆動部13に閉動作時の駆動電流Imと逆方向の電流を流して障子5を開く。
次に、ステップS6でm秒間障子の駆動を停止する。このステップS6では、
図1にdで示すように、一定時間駆動を停止した後、ステップS7に移行する。
ステップS7では、N回繰り返したか否かを判断し、N回繰り返していない場合には、ステップS8でカウンター値に「1」を加えてステップS2に戻る。ステップS7でN回繰り返した場合には、ステップ9に移行する。Nは例えば、3回、4回等である。
このように、ステップS2〜ステップS8をN回繰り返することで、
図1に示すb、c、d、aで示す停止、反転、停止、閉動作をN回繰り返すことになる。
ステップS9では、締め切り時電流値I
Lを読み込み、駆動電流についてPWMデューティー比の大(変調度小)を読み込んだ後、ステップS10に移行して、駆動部9にPWMデューティー比大の駆動電流Imを流して障子5の閉動作を行い、ステップS11へ移行する。
ステップ11では、駆動電流Imが締め切り時電流値I
L以上か否かを判断し、駆動電流Imが締め切り時電流値I
Lよりも小さい場合には、ステップS10へ戻り閉動作を継続し、駆動電流Imが締め切り時電流値I
L以上の場合には、ステップS12へ移行して、駆動部9の駆動を停止し、閉操作を終了する。
このステップS10〜S12により、
図1に示すように、閉動作eの後に、fで示すように戸を閉じ状態にした後、駆動電流Imの電流値がgで示すように上昇し、次にhで示すように締め切り時電流値I
Lでロック状態(全閉状態)になる。
【0013】
次に、
図4を参照して、本実施の形態にかかる戸1の開操作について説明するが、
図3に示す戸の閉操作と同様の作用効果を奏する部分には同一の符号を付し、以下の説明では、上述した戸の閉操作と異なる点を主に説明する。
図2に示すように、操作部29で開操作ボタンを押すと、操作部29は制御部13に開操作信号を発信し、これにより制御部13は開閉動作部17に設定された開操作制御を開始する。
図4に示すように、開操作制御を開始すると、ステップS21で開操作時の障害物検知電流値I
LOを読み込むと共にPMWデューティー比の小(変調度大)を、カウンター値の0をそれぞれ読み込んだ後、ステップS22で開動作を始める。本実施の形態では、開操作時の障害物検知電流値I
LOは閉操作時の障害物検知電流値I
LCと逆方向の電流値であるが大きさは同じ値である。また、開き切り時電流値I
Lは、締め切り時電流値I
Lと大きさが同じで逆方向の電流である。
ステップS22では、電源15から供給される駆動電流値Imにより駆動部9が駆動し、障子5を開方向に駆動し、ステップS23に移行する。尚、
図1において、開動作時の駆動電流Imは閉操作時の駆動電流Imと逆方向の電流である。
ステップS23では、電流値比較部19で比較した駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LO以上か否かを判断し、駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LO以上の場合にはステップS4に移行し、駆動電流値Imが障害物検出電流値I
LOよりも小さい場合には、ステップS22へ戻る。
ステップS4〜S8では、上述した閉操作の制御フローと同様に、開動作における停止と反転動作を行なう。
この開操作の場合には、ステップS22〜ステップS8をN回繰り返することで、閉操作と同様に
図1に示すb、c、d、aで示す停止、反転、停止、駆動をN回繰り返すことになる。尚、開操作では、符号cの反転動作は、障子を閉じ方向に動かしている。
そして、ステップS22〜ステップS8の停止、反転、停止、駆動をN回繰り返した後、ステップS9では開き切り時電流値I
Lを読み込み、駆動電流についてPWMデューティー比の大(変調度小)を読み込んだ後、ステップS24に移行して、駆動部9にPWMデューティー比大の駆動電流Imを流して障子5の開動作を行い、ステップS11へ移行する。
ステップS11では、駆動電流Imが開き切り時電流値I
L以上か否かを判断し、駆動電流Imが開き切り時電流値I
Lよりも小さい場合には、ステップS24へ戻って開動作を継続し、駆動電流Imが締め切り時電流値I
L以上の場合には、ステップS12へ移行して、駆動部9の駆動を停止し、開操作を終了する。
このステップS24〜S12により、開き切り時電流値I
Lで障子5を全開することができる。
【0014】
次に、本実施の形態にかかる戸1の作用効果について説明する。
図1に示すように、本実施の形態にかかる戸1によれば、障害物検出電流値I
LC、I
LOは、戸の締め切り時及び開き切り時の電流値I
Lよりも低く設定することで、より小さいはさみ荷重を検出できるので検知感度があがると共に戸の締め付け力が小さくなり、障害物検出時の安全性が向上する。
図3にステップS3〜S8で示し及び
図4にS23〜S8で示すように、障害物検出時には、障子5の開閉動作が停止し、次に反転後に停止することで、戸1に挟まった障害物や指等を取り除くことができる。
障害物を検知すると、障子5の開閉動作が停止し、次に反転して停止するが、
図3にステップS7〜S10で示し及び
図4にS7〜S24で示すように、その後、障子5の開閉動作を再開することで、追加命令を出さなくても自動的に全閉又は全開動作に移行するため、操作性に優れる。
本実施の形態では、障害物検知電流値I
LC、I
LOを検知するだけであるから、障子の現在位置をモーター電流累積値から特定する方法に比較して、障子の現在位置を特定する必要やモーターの負荷変動による誤差が生じるおそれがないうえ、障害物がない場合でも、例えば、閉動作時に全閉付近で障子5がタイト材にぶつかることで障害物検出電流値I
LC、を検知して、停止し、その後反転と停止が行われることからも、障子5がどの位置にあっても障害物に対応でき、信頼性に優れる。
更に、
図1に示すように、締め切り時及び開き切り時には、障害物検出電流値I
LC、I
LOよりも高い電流値I
Lで戸を駆動するので、全開センサ及び全閉センサ等が無くても、戸の締め切り及び開き切りを確実にできる。
【0015】
閉操作及び開操作において、障害物を検知して停止及び反転をN回繰り返すまでのPWMデューティー比を、反転をN回繰り返した後のPWMデューティー比よりも小さくする(変調度大にする)ことにより、障害物を検知するまでは開閉速度を締め切り時及び開き切り時よりも小さくしているので、障害物への衝撃を低減できると共に、戸の開閉動作の静音化を図ることができる。
閉操作及び開操作において、
図3及び
図4のステップS11、12で示すように、駆動電流Imが締め切り時電流値及び開き切り時電流値I
L以上になると開閉動作を停止することから、駆動電流Imが
図1に符号kで示すような過大な電流値まで上昇しないので、駆動部9やギア等の動力伝達機構にダメージを与えることなく、適正なトルクで全閉及び全開操作ができる。
設定条件入力部27は、繰り返し回数N、反転動作時間t及び停止時間m等の時間、障害物検知電流値I
LC、I
LO、締め切り時電流値及び開き切り時電流値I
L、PWMデューティー比(変調度)等を変更可能であるから、戸の種類や使用状態等に応じた設定が容易にできる。
操作部29は、開閉速度アップボタンを有し、開閉速度アップボタンを入力することにより、障害物検出電流値I
LOを検出までや障害物検出電流値I
LOを検出した後の閉操作及び開操作時のPWMデューティー比を大きくして(変調度を小さくして)、開閉速度を速めることができる。これにより、状況に応じて早期の開閉が必要な場合には、速やかな開操作や閉操作ができる。
【0016】
本発明によれば、障害物を検知すると、停止し、次に反転して停止するが、その後、戸の開閉動作を再開することで、追加命令を出さなくても自動的に全閉又は全開動作に移行するため、操作性に優れる。
障害物検知のため、障子の現在位置をモーター電流累積値から特定する方法があるが、この方法では強風時には通常時に比べモーターへの負荷が増大し、モーター電流累積値に誤差が生じるおそれがあり信頼性に欠ける。しかし、本願発明は障害物検知電流値を検知するだけであるから、障子の現在位置を特定する必要や誤差が生じるおそれがないうえ、障害物がない場合でも、例えば、閉動作時に全閉付近で障子がタイト材にぶつかることで停止し、その後反転と停止が行われることからも、障子がどの位置にあっても障害物に対応でき、信頼性に優れる。
更に、締め切り時及び開き切り時には、障害物検出電流値よりも高い電流値で戸を駆動するので、全開センサ及び全閉センサ等が無くても、戸の締め切り及び開き切りを確実にできる。
【0017】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、戸1は、突き出しサッシに限らず、内倒しサッシ、回転サッシ等のサッシや、開きドア、引戸、間仕切り等であっても良く、電動により開閉する戸であれば良い。
閉操作時の障害物検出電流値I
LC及び開操作時の障害物検出電流値I
LOは異なる電流値としても良いし、締め切り時電流値及び開き切り時電流値I
Lも異なる電流値としてもよい。
第1及び第2実施の形態では、
図3及び
図4に示すように、障害物検知電流値I
LC、I
LOを検知すると、ステップS4で戸1の開閉動作が停止し、ステップS5で反転した後にステップS6で停止することをステップS7でN回繰り返したが、ステップS7を設けないで、ステップS6の後にステップS9〜S12に進んで戸1の開閉動作を再開しても良い。