【文献】
Albert et al/翻訳 中村桂子・松原謙一,細胞の分子生物学 第4版,ニュートンプレス,2004年12月20日,p. 327-330
【文献】
Arjun et al,nature methods,2008年10月,Vol. 5, No. 10,p. 877-879
【文献】
TANKE HANS J et al,FISH AND IMMUNOCYTOCHEMISTRY: TOWARDS VISUALISING SINGLE TARGET MOLECULES IN LIVING CELLS,CURRENT OPINION IN BIOTECHNOLOGY,2005年 2月,Vol. 16,p. 49-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定可能な程度に蛍光性である場合に異なるかつ識別可能な色をもたらす異なるフルオロフォアで、蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブセットの各セットが標識される、請求項1記載の方法。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
単一ヒト細胞中のDNAは、完全に引き延ばした場合、およそ2メートルに及ぶ。しかしながら、各細胞は、これらの信じられないほど長い重合体分子を、直径わずか数ミクロンの空間である細胞核内に圧縮している。研究者らはますます、この圧縮されたコンフォメーションが、単なる無作為な「糸の玉」ではなく、むしろ高度に組織化されかつ動的に調節されていることを見出しつつある(Cremer et al., 2001, Nat Rev Genet 2: 292-301(非特許文献1))。この圧縮された形態についてのよりよい理解を進展させることによって、核内の遺伝情報の空間的組織化が、遺伝子発現を介したその読み出しにどのように影響を及ぼすのかについての重要な洞察が提供されるであろう。
【0003】
遺伝子発現は、ゲノムからのmRNA分子の転写、それに続くそれらmRNAの細胞質への輸送を伴う。証拠により、核内の区別された領域内に大まかに組織化されている染色体の構造(非特許文献1)は、両過程において役割を果たすことが示されている(Fraser et al., 2007, Nature 447: 413-417(非特許文献2);Misteli, 2007, Cell 128: 787-800(非特許文献3);Papantonis et al., 2010, Curr Opin Cell Biol. 22(3): 271-6(非特許文献4))。実際に、転写の数値的計算により、RNAの重合およびスプライシングに必要とされる巨大酵素複合体の存在量は細胞1個あたり数百〜数千個の間に及ぶことが明らかになっており、これは核内の何万もの遺伝子を何らかの形で転写しているに違いない(Jackson et al., 1998, Mol Biol Cell 9: 1523-1536(非特許文献5);Osborne et al., 2004, Nat Genet 36: 1065-1071(非特許文献6);Wansink et al., 1993, J Cell Biol 122: 283-293(非特許文献7))。あるデータにより、活発に転写される遺伝子のセットは、「転写ファクトリー」に局在することが示唆されている(Iborra et al., 1996, J Cell Sci 109: 1427-1436(非特許文献8);Schoenfelder et al., 2010, Nat Genet 42: 53-61(非特許文献9);Sexton et al,, 2007, Semin Cell Dev Biol 18: 691-697(非特許文献10))。これらのファクトリーへの限定された接近およびその一過性の形成が、本発明者らおよび他者の両方が観察している遺伝子発現の間欠的性質の根底にあり得る(Raj et al., 2006, PLoS Biol 4: e309(非特許文献11);Raj et al., 2008, Cell 135: 216-226(非特許文献12))。
【0004】
その一方で、何年もの間、研究者らは、核内の高密度の重合物質によってRNA拡散が極めて遅くなると推論し、これにより、遺伝子自体がRNAの輸送のために核周辺へ移動して、合理的に高効率となるという「遺伝子ゲート(gene gating)」仮説(Blobel, 1985, Proc Natl Acad Sci USA 82: 8527-8529(非特許文献13))に至った。実際に、これに関して、いくつかの遺伝子は活性化されると周辺へ移動し、かつ核孔複合体と物理的に結びつくといういくつかの証拠がある(Brown et al., 2007, Curr Opin Genet Dev 17: 100-106(非特許文献14);Capelson et al., 2010, Cell 140: 372-383(非特許文献15);Casolari et al., 2004, Cell 117: 427-439(非特許文献16);Kalverda et al., 2010, Cell 140: 360-371(非特許文献17))。しかしながら、生物物理学的解析により、核内におけるRNA拡散はむしろ迅速であり、ゆえに限定的でないこと(Vargas et al., 2005, Proc Natl Acad Sci USA 102: 17008-17013(非特許文献18))、および遺伝子の大多数は核内部に留まると思われる(実際のところ、周辺でサイレンシングをしばしば呈する(Chuang et al., 2006, Curr Biol 16: 825-831(非特許文献19);Kosak et al., 2002, Science 296: 158-162(非特許文献20)))ことが示されている。
【0005】
残念なことに、染色体構造と遺伝子発現の鮮明な像は無い。これは、遺伝子の構造および機能を単一細胞レベルで同時に測定するための有効なツールの欠如が原因である。染色体構造のためのほとんどの従来的イメージングアッセイは、一度に1個または2個の遺伝子座の場所にのみ焦点を合わせるのに対し、大域的な生化学的手法は、何千〜何百万個もの細胞の集団にわたって平均化した間接的測定結果を提供する。いずれの場合にも、遺伝子発現データは獲得するのが困難である。これらの理由で、空間的に整列されたもしくは整列されていない遺伝子発現がどのように間期染色体上にあるのかに関する、または染色体立体配置の変動性およびそれらは遺伝子発現の変動性にどのように寄与するのかに関する疑問が残っている。
【0006】
現在のところ、染色体構造を調査するために、2つの広い分類の方法が用いられている。1つの方法は、染色体コンフォメーション捕捉(3C)(Dekker et al., 2002, Science 295: 1306-1311(非特許文献21))およびその変異体、中でも注目すべきはHi-C(Duan et al., 2010, Nature 465(7296):363-7(非特許文献22);Lieberman-Aiden et al., 2009, Science 326: 289-293(非特許文献23))である。3Cは、細胞の集団におけるゲノム遺伝子座の間の直接的物理的相互作用の頻度を測定する生化学的技術である。該方法のHi-C型は、これらの相互作用に関するゲノム規模の情報をもたらすが、それはいくつかの欠点を有する。例えば、それは単一細胞のデータをもたらさず、それは発現についてのいかなる情報も与えず、かつそれは染色体構造そのものよりもむしろ相互作用の可能性のみをもたらす。
【0007】
もう1つの手法は、小さいまたは大きい領域のDNA(または染色体全体さえ)を標的とする蛍光標識プローブの検出を伴う、DNA FISHである。この手法はより直接的であるが、今日までの調査はいくつかの遺伝子座のみに限定されており、目的が限定されている。しかし最も重要なことに、DNA FISHの準備においてDNAを変性させるのに必要とされる厳しい条件は、かなりのRNA分解を引き起こし、それにより一般的に、存在量が極めて多い標的を除いてはRNA FISH法とこの手法の組み合わせが除外され(Chaumeil et al., 2006, Genes Dev 20: 2223-2237(非特許文献24))、または、多重化するのが困難であるシグナル増幅法が使用される(Takizawa et al., 2008, Genes Dev 22: 489-498(非特許文献25))。
【0008】
RNA FISHによって1個または多くの遺伝子の遺伝子発現を測定することを可能にする一方で染色体についての染色体構造情報を同時に獲得する方法が、必要とされている。本発明は、この必要性を満たすものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Cremer et al., 2001, Nat Rev Genet 2: 292-301
【非特許文献2】Fraser et al., 2007, Nature 447: 413-417
【非特許文献3】Misteli, 2007, Cell 128: 787-800
【非特許文献4】Papantonis et al., 2010, Curr Opin Cell Biol. 22(3): 271-6
【非特許文献5】Jackson et al., 1998, Mol Biol Cell 9: 1523-1536
【非特許文献6】Osborne et al., 2004, Nat Genet 36: 1065-1071
【非特許文献7】Wansink et al., 1993, J Cell Biol 122: 283-293
【非特許文献8】Iborra et al., 1996, J Cell Sci 109: 1427-1436
【非特許文献9】Schoenfelder et al., 2010, Nat Genet 42: 53-61
【非特許文献10】Sexton et al,, 2007, Semin Cell Dev Biol 18: 691-697
【非特許文献11】Raj et al., 2006, PLoS Biol 4: e309
【非特許文献12】Raj et al., 2008, Cell 135: 216-226
【非特許文献13】Blobel, 1985, Proc Natl Acad Sci USA 82: 8527-8529
【非特許文献14】Brown et al., 2007, Curr Opin Genet Dev 17: 100-106
【非特許文献15】Capelson et al., 2010, Cell 140: 372-383
【非特許文献16】Casolari et al., 2004, Cell 117: 427-439
【非特許文献17】Kalverda et al., 2010, Cell 140: 360-371
【非特許文献18】Vargas et al., 2005, Proc Natl Acad Sci USA 102: 17008-17013
【非特許文献19】Chuang et al., 2006, Curr Biol 16: 825-831
【非特許文献20】Kosak et al., 2002, Science 296: 158-162
【非特許文献21】Dekker et al., 2002, Science 295: 1306-1311
【非特許文献22】Duan et al., 2010, Nature 465(7296):363-7
【非特許文献23】Lieberman-Aiden et al., 2009, Science 326: 289-293
【非特許文献24】Chaumeil et al., 2006, Genes Dev 20: 2223-2237
【非特許文献25】Takizawa et al., 2008, Genes Dev 22: 489-498
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を例証するために、本発明のある特定の態様を図面において描写する。しかしながら、本発明は、図面において描写される態様の正確な編成および手段に限定されるものではない。
【
図1A】単一細胞における染色体構造および遺伝子発現の検出を描写している。転写の部位で標識されたイントロンを描写しており、これが、標的遺伝子の位置および発現レベルの両方についての情報をもたらす。色によるバーコード化スキーム(疑似カラーを含む)を利用することによって、数十または数百さえもの個々の遺伝子を染色体に沿って検出することができる。
【
図1B】単一細胞における染色体構造および遺伝子発現の検出を描写している。第19染色体上の標的化された18個の遺伝子を描写している。該染色体の最初の3分の1は赤色、中部3分の1は緑色、最後の3分の1は赤紫色である。両染色体は核内で同様に立体配置されており、最初の3分の1は、中部3分の1と最終の3分の1との間に存在する。
【
図1C】単一細胞における染色体構造および遺伝子発現の検出を描写している。同じ細胞において同時に標的化された第19染色体(青緑色)およびEEF2メッセンジャーRNA(赤紫色)を描写しており、単一細胞において染色体、遺伝子、および単一RNA分子を一斉に検出し得る能力を実証している。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bを含み、染色体転座および結果として生じる融合転写産物の単一分子検出についての描写である。
図2Aは、正常細胞の転写産物および癌細胞の融合転写産物を描写している。融合体の両末端を個々の色で標識することによって、原因となる染色体異常を検出するのと同時に、融合転写産物をインサイチューで直接検出することができる(
図2B)。
【
図3A】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。オリゴヌクレオチドに対するフルオロフォアの組み合わせを用いた、単一細胞内の染色体に沿ったいくつかの異なる遺伝子を一意的に標識するためのスキームを描写している。
【
図3B】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。スペクトル的に区別される5種のフルオロフォアのパレットからの2種または3種のフルオロフォアの組み合わせを用いた、20個の異なる遺伝子を一意的に標識するためのスキームを描写している。
【
図3C】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。核のDAPI染色を描写している。
【
図3D】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。
図3Bにおける疑似カラースキームを用いて標識された20個の遺伝子について、1種のトゥルーカラーチャンネルにおける生の蛍光画像を描写している。
【
図3E】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。
図3Bにおける疑似カラースキームを用いて標識された20個の遺伝子について、1種のトゥルーカラーチャンネルにおける生の蛍光画像を描写している。
【
図3F】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。
図3Bにおける疑似カラースキームを用いて標識された20個の遺伝子について、1種のトゥルーカラーチャンネルにおける生の蛍光画像を描写している。
【
図3G】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。
図3Bにおける疑似カラースキームを用いて標識された20個の遺伝子について、1種のトゥルーカラーチャンネルにおける生の蛍光画像を描写している。
【
図3H】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。
図3Bにおける疑似カラースキームを用いて標識された20個の遺伝子について、1種のトゥルーカラーチャンネルにおける生の蛍光画像を描写している。
【
図3I】20個の遺伝子の転写活性および場所を一度に測定するための疑似カラースキームの実証を描写している。結果として生じるコンピューターで同定された疑似カラースポットと重ね合わせた核のDAPI画像を描写している。スポットの色は、特定の遺伝子が染色体上のどこに位置するかを描写している。
【
図4】
図4A〜4Cを含み、転座した染色体からの転写を直接測定するためのスキームを描写している。
図4Aは、第19染色体の2つの無傷コピーと、一方の断片が第13染色体に融合し、もう一方が第6染色体に融合している分割された1つのコピーとを含有している、HeLa細胞における第19染色体の核型を示す略図を描写している。
図4Bは、個々の染色体および染色体フラグメントの単離による、染色体ごとの瞬間的転写活性の測定を描写している。
図4Cは、第19染色体に沿った20個の遺伝子についての測定された転写活性を示す図表を描写している。第13染色体に融合した第19染色体の一部における遺伝子の転写率は、無傷の第19染色体の遺伝子よりも高いことが見出され、一方で第6染色体に融合した第19染色体の一部は、無傷の第19染色体上のものとほぼ同じ頻度で転写されることが見出された。
【
図5】
図5A〜5Dを含み、内在性RNA分子のライブイメージングを描写している。
図5Aは、roX2に対するプローブが細胞へ送達され、核およびroX2 RNAが印付けされた、生きたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)S2細胞を描写している。
図5Bは、固定後のこれらS2細胞のDAPI(核)を描写している。
図5Cは、
図5Bのものと同じ固定された細胞における、roX2に対応するFISHシグナルを描写している。
図5Dは、
図5B〜5Cのものと同じ固定された細胞における、残りのライブイメージングシグナルを描写している。
【
図6】
図6A〜6Bを含み、生きた細胞へ送達されたプローブを用いた、内在性RNA転写部位の検出の実証を描写している。具体的には、MtnA遺伝子由来のRNAが標的化されている。
図6Aは、プローブによって標的化されたMtnAの転写部位に対応するスポットを描写している。
図6Bは、固定後、RNA FISH用プローブで標識された同じMtnA転写産物を描写している。強い共局在は、正しい転写産物が標的化されていることを示す。
【
図7】アクチノマイシンDでの転写の阻害による、HeLa細胞におけるイントロンRNAスポットの時間に伴う迅速な分解を描写している。事実上すべてのイントロンRNAが、アクチノマイシンD曝露の30分後に消失または強度が大幅に低減した。成熟mRNAがすべての時点において観察され、細胞がまだ生きていること、および処理はRNA自体には影響を及ぼさなかったことを示した。まとめると、該結果は、イントロンRNAが迅速に分解することを示しており、ゆえにイントロンRNAスポットの存在は、標的遺伝子が転写活性を有していることを表す。
【
図8】サイクリンA2 mRNAを標識することが、細胞周期のS、G2、およびM期の細胞の検出をどのように可能にするのかを描写している。高発現している細胞がS〜M期に存在することを実証するために、固定前にClick-iT EdUをインキュベートして細胞内に入れ、Click-iT EdUシグナルを呈しているあらゆる細胞が高レベルのサイクリンA2 mRNAを有していることを見出した。この結果は、サイクリンA2 mRNAが、細胞周期のある特定の期に対する強力なマーカーを提供することを示す。低レベルのサイクリンA2を有する細胞は複製を受けていないため、それらを調査のために選択した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本発明は、染色体構造および遺伝子発現を測定するためのシステムおよび方法に関する。一態様において、本発明は、核内における遺伝子発現の空間的組織化を決定するためのアッセイを含む。コンピューターによるおよび解析的なフレームワークと併用して、該アッセイを用いることができる。別の態様において、遺伝子発現の空間的組織化が疾患に果たす役割を決定するために、該アッセイを用いることができる。
【0014】
本発明は、個々の遺伝子の物理的場所および発現についての情報を同時にもたらす、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)に基づく方法も含む。バーコード化スキームを用いて特定の染色体上の多数の標的を照らし出すことによって、染色体全体の大規模な構造を決定することができる。一態様において、該方法は、特定のまたは選択された遺伝子の発現を測定する一方で同時に染色体構造を決定する工程を含み、これにより、中規模な「インサイチューの位置的発現アレイ」を提供する。本発明の方法を、染色体構造の生物物理学的モデルと比較することもでき、一方で構造と遺伝子発現との間の関係性を理解するための解析ツールも開発する。本発明は、インビボで用いられてもよく、したがって、生きた細胞における多くの遺伝子の発現と染色体構造の詳細な動態描写との両方の検出を提供し、ここで、多数の染色体座を生きたヒト細胞において検出することができ、かつそれらを経時的顕微鏡解析に供することができる。ゆえに、本発明は、染色体構造および多くの遺伝子の発現についてのデータを同時に効率的にもたらす、染色体にわたるDNA座を標的とするバーコード化RNA FISH法に関する。
【0015】
定義
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実践または試験において、本明細書において記載されるものと同様のまたは同等な任意の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料を記載する。
【0016】
本明細書において使用される以下の用語のそれぞれは、本節においてそれと関連した意味を有する。
【0017】
本明細書において、「ある」および「1つの」という冠詞を用いて、1つまたは1つを上回る(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法的対象を表す。例として、「ある要素」は、1つの要素または1つを上回る要素を意味する。
【0018】
量、時間的期間などの測定可能な値を表す場合に本明細書において用いられる「約」は、指定の値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、なお一層より好ましくは±1%、そしてさらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は開示される方法を実施するのに適切である。
【0019】
「コードする」とは、所与のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または所与のアミノ酸配列のいずれかを有しかつそれに起因する生物学的特性を有する他の重合体および巨大分子の生物学的過程における合成のための鋳型として働くという、遺伝子、cDNA、またはmRNA等のポリヌクレオチドにおける特定ヌクレオチド配列の固有の特性を表す。ゆえに、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって、細胞内でまたは他の生物学的システムにおいてタンパク質が生成される場合、該遺伝子は該タンパク質をコードする。mRNA配列と同一のヌクレオチド配列を有しかつ配列表で通常提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の生成物をコードしていると表すことができる。
【0020】
本明細書において用いられる「相同な」とは、2つの重合体分子間の、例えば2つの核酸分子、例えば2つのDNA分子間もしくは2つのRNA分子間の、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を表す。2つの分子の両方におけるあるサブユニットの場所が同じ単量体サブユニットによって占められている場合、例えば2つのDNA分子のそれぞれにおけるある場所がアデニンによって占められている場合、それらはその場所において相同である。2つの配列間の相同性は、一致しているまたは相同な場所の数の一次関数であり、例えば2つの化合物配列中の半分の場所(例えば、長さが10サブユニットの重合体における5つの場所)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、90%の場所、例えば10個のうちの9個が一致しているまたは相同である場合、2つの配列は互いに90%の相同性を有する。例として、3'-ATTGCC-5'および3'-TATGGC-5'というDNA配列は、互いに75%の相同性を有する。
【0021】
本明細書において使用される「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を表す。そのような天然の対立遺伝子変異は、典型的に、既定の遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の差異をもたらし得る。いくつかの異なる個体における対象となる遺伝子をシークエンシングすることによって、代替的な対立遺伝子を同定することができる。これは、多様な個体における同じ遺伝子座を同定するためのハイブリダイゼーション用プローブを用いることによって容易に行われ得る。天然の対立遺伝子変異の結果でありかつ機能的活性を変えていない、全てのそのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型または変異は、本発明の範囲内にあることを意図される。
【0022】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなり、これらはそれぞれ、該遺伝子の転写によって生成されるmRNA分子のコード領域に相同的または相補的である。
【0023】
mRNA分子の「コード領域」もまた、mRNA分子の翻訳の際の転移RNA分子のアンチコドン領域と一致するまたは終始コドンをコードする、mRNA分子のヌクレオチド残基からなる。ゆえに、コード領域は、mRNA分子によってコードされる成熟タンパク質に存在しないアミノ酸残基に対応するヌクレオチド残基を含み得る(例えば、タンパク質輸送シグナル配列におけるアミノ酸残基)。
【0024】
「コードする」とは、所与のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または所与のアミノ酸配列のいずれかを有しかつそれに起因する生物学的特性を有する他の重合体および巨大分子の生物学的過程における合成のための鋳型として働くという、遺伝子、cDNA、またはmRNA等のポリヌクレオチドにおける特定ヌクレオチド配列の固有の特性を表す。ゆえに、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって、細胞内でまたは他の生物学的システムにおいてタンパク質が生成される場合、該遺伝子は該タンパク質をコードする。mRNA配列と同一のヌクレオチド配列を有しかつ配列表で通常提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の生成物をコードしていると表すことができる。
【0025】
別様に指定されていない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであるすべてのヌクレオチド配列および同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列には、イントロンが含まれてよい。
【0026】
「単離した核酸」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から分離されている核酸セグメントまたはフラグメント、例えば、DNAフラグメントに通常隣接している配列から、例えばそれが天然に存在するゲノムにおいて該フラグメントに隣接する配列から取り出されている該フラグメントを表す。該用語は、核酸、例えばRNAもしくはDNAに天然に付随する他の成分、または細胞内においてそれに天然に付随するタンパク質から実質的に精製されている核酸にも適用される。したがって、該用語は、例えばベクター内、自己複製するプラスミドもしくはウイルス内、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA内に組み入れられた組換えDNA、あるいは、他の配列から独立した分離分子として(例えば、PCRまたは制限酵素消化によって生成されたcDNAまたはゲノムもしくはcDNAフラグメントとして)存在する組換えDNAを含む。それは、付加的ポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。
【0027】
「疾患」とは、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトの健康状態であって、該動物は恒常性を維持することができず、かつ疾患が改善されない場合、該動物の健康は悪化し続ける状態である。
【0028】
対照的に、動物における「障害」とは、該動物は恒常性を維持することができるが、該動物の健康状態は、障害のない場合にそれがあるであろう状態よりも望ましくないという健康状態である。処置せずに放置した場合、障害は、該動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こさない。
【0029】
疾患または障害は、該疾患または障害の症状の重症度、患者によって経験されるそのような症状の頻度、または両方が低減した場合に「緩和」される。
【0030】
化合物の「有効量」または「治療上有効量」とは、該化合物を投与される対象に有益な効果を提供するのに充分な化合物の量のことである。送達媒体の「有効量」とは、化合物を効果的に結合させるかまたは送達するのに充分な量のことである。
【0031】
本明細書において使用される核酸に適用される「フラグメント」という用語は、比較的大きな核酸の部分配列を表す。核酸の「フラグメント」は、長さが少なくとも約15ヌクレオチド、例えば少なくとも約50ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、少なくとも約100〜約500ヌクレオチド、少なくとも約500〜約1000ヌクレオチド、少なくとも約1000ヌクレオチド〜約1500ヌクレオチド、または約1500ヌクレオチド〜約2500ヌクレオチド、または約2500ヌクレオチド(およびその間の任意の整数値)であってよい。
【0032】
本明細書において使用されるタンパク質またはペプチドに適用される「フラグメント」という用語は、比較的大きなタンパク質またはペプチドの部分配列を表す。タンパク質またはペプチドの「フラグメント」は、長さが少なくとも約20アミノ酸、例えば長さが少なくとも約50アミノ酸、長さが少なくとも約100アミノ酸、長さが少なくとも約200アミノ酸、長さが少なくとも約300アミノ酸、および長さが少なくとも約400アミノ酸(およびその間の任意の整数値)であってよい。
【0033】
ポリヌクレオチドの「一部」とは、該ポリヌクレオチドの少なくとも約15〜約50個の連続したヌクレオチド残基を意味する。ポリヌクレオチドの一部には、該ポリヌクレオチドのあらゆるヌクレオチド残基が含まれ得ると理解される。
【0034】
本明細書において使用される「指示資料」には、本明細書において記述される種々の疾患または障害の緩和を生じさせるための、キットにおける本発明の化合物、組成物、ベクター、または送達システムの有用性を伝えるために用いられ得る刊行物、記録、略図、または他の任意の表現媒体が含まれる。任意で、または代替的に(alternately)、指示資料は、哺乳類の細胞または組織における疾患または障害を緩和する1つまたは複数の方法を記載し得る。本発明のキットの指示資料は、例えば本発明の同定された化合物、組成物、ベクター、もしくは送達システムを含有する容器に添えられてよく、または同定された化合物、組成物、ベクター、もしくは送達システムを含有する容器とともに出荷されてよい。あるいは、受取人によって指示資料および化合物が協調的に用いられることを意図して、指示資料は容器から分離して出荷されてよい。
【0035】
「単離した」とは、天然の状態から変更したまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離」されていないが、その天然の状態の共存する物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離」されている。単離した核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してよく、または例えば宿主細胞等の非天然の環境に存在してよい。
【0036】
本明細書において用いられる「天然に存在する」とは、人工的に生成されているものとは区別される天然に見出され得る組成物を言い表す。例えば、天然にある供給源から単離され得、かつ実験室で人間によって意図的に改変されていない生命体に存在するヌクレオチド配列は、天然に存在している。
【0037】
別様に指定されていない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであり、かつ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、あるバージョンではイントロンを含有し得るという程度にイントロンも含まれてよい。
【0038】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドの重合体である。ゆえに、本明細書において用いられる核酸およびポリヌクレオチドは置換え可能である。当業者であれば、核酸は、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書において使用されるポリヌクレオチドは、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCR(商標)を用いた組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングなどを含むがこれに限定されない当技術分野において利用可能な任意の手段によって、ならびに合成手段によって獲得されるすべての核酸配列を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
本明細書において使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、置換え可能に用いられ、ペプチド結合によって共有結合で連結したアミノ酸残基から構成される化合物を表す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含有していなければならず、タンパク質配列またはペプチド配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限は課されない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに接合した2個またはそれを上回るアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書において使用される該用語は、例えば当技術分野において一般にペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも表される短い鎖、ならびに、当技術分野において一般的に(多くの種類を有する)タンパク質と表されるより長い鎖の両方を表す。「ポリペプチド」は、とりわけ、例えば生物学的に活性のあるフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0040】
「患者」、「対象」、「個体」などという用語は、本明細書において置換え可能に用いられ、任意の動物、または、本明細書において記載される方法に従う、インビトロであるのかインサイチューであるのかに関わらないそれらの細胞を表す。好ましくは、患者、対象、または個体は哺乳類であり、より好ましくはヒトである。
【0041】
本発明の文脈の中で用いられる「処置」という用語は、治療的処置、ならびに疾患または障害のための予防的または抑制的手段を含むことを意味する。ゆえに、例えば、処置という用語は、疾患または障害の発症の前または後の薬剤を投与し、それにより該疾患または障害のすべての兆候を予防または除去することを含む。別の例として、疾患の症状と闘うための、疾患の臨床的徴候の後の薬剤の投与は、疾患の「処置」を構成する。
【0042】
「治療的」処置とは、病状の兆候を呈する対象に、その兆候を軽減するまたは取り除くことを目的として施される処置である。
【0043】
本明細書において使用される「疾患または障害を処置する」とは、患者によって経験される疾患または障害の症状の頻度を低減することを意味する。本明細書において、疾患および障害は置換え可能に用いられる。
【0044】
本明細書において用いられる用語である「変異体」とは、参照の核酸配列またはペプチド配列それぞれとは配列が異なるが、該参照分子の本質的な特性を維持している、核酸配列またはペプチド配列である。核酸変異体の配列の変化は、参照核酸によってコードされるペプチドのアミノ酸配列を変更しなくてもよく、またはアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および切断をもたらしてもよい。ペプチド変異体の配列の変化は、典型的には限定的または保存的であり、そのため参照ペプチドおよび変異体の配列は、全体的に極めて類似しており、かつ多くの領域で同一である。変異体および参照ペプチドは、任意の組み合わせでの1つまたは複数の置換、付加、欠失によってアミノ酸配列が異なり得る。核酸またはペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体のように天然に存在してもよく、または天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。核酸およびペプチドの天然に存在しない変異体は、突然変異誘発技術によってまたは直接合成によって作製され得る。
【0045】
配列比較に関して、典型的には1つの配列が、試験配列を比較し得る参照配列となる。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピューターに入力し、必要であればその後の調整を指定し、かつ配列アルゴリズムのプログラムパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムにより、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した試験配列の配列同一性パーセンテージが算出される。
【0046】
範囲:本開示を通して、本発明の種々の局面は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないと理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、すべての可能性のある部分的範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1〜6等の範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0047】
説明
本発明のシステムおよび方法によって、蛍光に基づくツールの使用によりリアルタイムで生きた細胞の核の構造および機能を直接照らし、次いでそのツールを用いて構造と機能との間の関係性についての包括的な定量的モデルを構築することが可能となる。本発明の適用は多く、疾患および臨床診断についてのより深い理解を提供し得る。
【0048】
本発明は、数十および数百さえもの遺伝子を含む複数遺伝子の発現および場所を一度に測定する一方で系統的ゲノム規模の摂動(perturbation)も実施することによって、単一分子の画像データの豊かさ(これは生体分子の存在量、位置、および動態に関する非常に質の高いデータを与える)と、より大域的な生物学的概観を産生し得る能力とを組み合わせる。さらに、今日までの調査の大多数が全体的なmRNAまたはタンパク質の存在量にほぼ集中していることを考慮すると、細胞内の空間情報の産生および解析は、システム生物学における新しい方向性を象徴する。本発明のシステムおよび方法を用いることによって、染色体構造の空間的地図を産生することができ、かつ空間的組織化の生物学的重要性についての理解において新しいパラダイムを創出することができる。
【0049】
本明細書において記載されるインサイチュー実験の場合、本発明は、遺伝的改変が必要とされないという意味において、システムを摂動させない。これにより、多様な状況における敏速かつ広範な採用が可能となり、とくに臨床診断において本発明のシステムおよび方法を使用する可能性を高めることができる。
【0050】
遺伝子発現の測定および染色体構造の決定
本発明は、核内の遺伝子発現の空間的組織化を決定するためのシステムおよび方法を含む。染色体構造の空間的制御は、細胞ごとの遺伝子発現の変動性に影響を与え得るため、遺伝子発現の制御における重大な調節上の特徴である。染色体構造の空間的制御は、核内の遺伝子ネットワークモジュールの調整のための構造的基礎を提供さえし得る。本発明は、コンピューターによるおよび解析的なフレームワークと組み合わせて、遺伝情報の調節および組織化の理解に空間的情報を組み込むための新しい基礎をさらに提供し得、かつ遺伝子発現の空間的組織化が疾患および臨床診断に果たす役割についての理解を大幅に拡大させ得る。
【0051】
本発明は、直接可視化、定量的測定、および解析的かつコンピューターによるモデル化を利用して、生物学的機能を解明する。一態様において、本発明は、個々の遺伝子の物理的場所および発現についての情報を同時にもたらす、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)に基づく方法を含む。
【0052】
例えば、バーコード化スキームを用いて特定の染色体上の多数のこれらの標的を一斉に照らし出すことによって、染色体全体の大規模な構造を効果的に読み出すことができ、一方でそれらの遺伝子の発現を測定もし、中規模な「インサイチューの位置的発現アレイ」を提供する(
図1A)。一態様において、標的の数は、約1〜1000個の独特な標的の範囲内であってよい。別の態様において、標的の数は、約5〜200個の独特な標的の範囲内であってよい。さらに別の態様において、標的の数は、約10〜100個の独特な標的の範囲内であってよい。あるいは、標的の数は、1000個を上回っても、5000個を上回っても、またはさらに10,000個を上回ってもよい。
【0053】
一態様において、これらの標的領域は、特定の染色体上の遺伝子の位置に対応する。本発明の方法は、多くの遺伝子および遺伝子位置の同時標識を一斉に可能にし、標的染色体を効果的に「ペイント」する。一態様において、同時に標識され得る遺伝子の数は1〜100個の間であってよい。別の態様において、標識される遺伝子の数は5〜50個の間であってよい。さらに別の態様において、標識される遺伝子の数は10〜30個の間であってよい。例えば、単一細胞における単一染色体に沿った20個の独特な遺伝子の転写部位を、本明細書における他の箇所に記載される、色でコード化されたプローブを用いて検出することができる(
図1および4)。別の態様において、20個の遺伝子に対するこれらのスポットデータを用いて、活発に転写している遺伝子の染色体コンフォメーションを再構築することができる(
図4)。本発明は、10%を下回る、好ましくは5%を下回る、さらにより好ましくは4%を下回る、3%を下回る、2%を下回る、そして1%さえ下回る偽スポット同定率を提供する。
【0054】
本発明は、遺伝子発現を測定する方法を含む。特定の遺伝子に対するスポットの有無は、該遺伝子が特定の時点において時間内に活発に転写しているかどうかを示す。転写はそれ自体が脈動的過程であるため、あらゆる細胞においてあらゆる遺伝子が発現しているわけではない。一態様において、細胞集団全体でスポットが観察される頻度または観察されたスポットの強度の両方(またはそのいずれか)を定量化することによって、特定の遺伝子の全転写率を決定することができる。空間的な染色体隔離により、各スポットの位置、およびしたがって各遺伝子またはその一部を、特定の染色体に割り当てることができる。多数の細胞に対してこの過程を繰り返すことによって、染色体ごとに転写頻度および遺伝子発現(転写の割合に比例する)を決定することができる。ゆえに、本発明は、特定の染色体からの遺伝子発現を測定するためのメカニズムを提供する。
【0055】
別の態様において、染色体フラグメントについての遺伝子発現を測定することができる。さらに別の態様において、転座した染色体から生じる染色体フラグメントについての遺伝子発現を測定することができる。例えば、転座した染色体フラグメントを該染色体の無傷コピーと比較して、該染色体フラグメントの遺伝子発現が同じか異なるかを判定することができる。
【0056】
本発明は、染色体ごとに遺伝子発現をプロファイリングする方法も含む。これにより、染色体コピー特異的な発現レベルの解析が可能となり、ゆえに今日まで達成するのが非常に困難であった、単一細胞におけるSNP(単一ヌクレオチド多型)発現解析のための方法が可能となる。例えば、正常細胞において、染色体の母系および父系コピー間の相違を、インプリンティング遺伝子によって決定する。科学者によって少数しか単離されていないこれらの遺伝子は、母系または父系コピーのいずれかからのみ転写するが両方からは決して転写しないことが示されている。そのような遺伝子をマーカーとして用いて、対象となる特定の染色体のどのコピーが母系コピーであり、どれが父系コピーであるかを決定することができる。一態様において、インプリンティング遺伝子に対する遺伝子発現を測定することができる。例えば、マーカーとしてインプリンティング遺伝子を用いることによって、特定の染色体のどのコピーが母系コピーであり、どれが父系コピーであるかを決定することができる。
【0057】
本発明の方法を、染色体構造の生物物理学的モデルと比較することもでき、一方で構造と遺伝子発現との間の関係性を理解するための解析ツールも開発される。本明細書において実証されるように、染色体は多種多様な立体配置を採用し得、かつこれらの立体配置は遺伝子発現に関係する(
図1B)。観察されたパターンの根底にある分子メカニズムを精査するために、RNAiスクリーニングプラットフォームを用いて、遺伝子発現の空間的局面に影響を及ぼすタンパク質を探索することができ、大規模スクリーニングでのイメージングの使用において新しい高度化(a new bar of sophistication)を確立する。
【0058】
本発明のシステムおよび方法によって産生されたデータを、定量的解析とさらにつなぎ合わせることができる。例えば、画像解析ソフトウェアを用いて、顕微鏡データからの場所および発現の両方の値の正確な抽出を促進することができる。処理されると、解析のレベルは、染色体上で活発に発現された遺伝子の立体配置空間を簡単に解析することである。既存のモデルは、ランダムウォーク、ランダムループ、およびグロビュールの記載からなる、染色体構造の重合体モデルに主に焦点を合わせている(Lieberman-Aiden et al., 2009, Science 326: 289-293;Cook et al., 2009, J Cell Biol 186: 825-834)。本発明により産生されたデータは、そのようなモデルに確実に情報を与えると考えられるが、場所データを産生し得かつそれを遺伝子発現データと関連付け得る能力は、転写状態についての情報を一般的に組み入れないそのようなモデルに重要な新しい次元を付加し得る。ゆえに、本発明は、発現が構造と関連のないヌルモデルからの逸脱についての仮説を試験するため、すなわち、染色体がある特定のコンフォメーションを採用した場合にのみある特定の遺伝子が発現するかどうかを試験するためのプラットフォームおよび方法を提供する。
【0059】
生きた細胞および疾患への適用
本発明を、生きた細胞においても用いることができる。新しいインビボ核酸検出技術の開発および適用によって、多数の染色体座を生きたヒト細胞において検出することができ、かつ経時的顕微鏡解析に供することができる。ゆえに本発明は、両方の検出のために、生きた細胞における多くの遺伝子の発現および染色体構造の詳細な動態の説明を提供し、当分野において大きな進歩を記す。本発明は、他の分野においても同様に広範な影響を有し得る。例えば、核構造および遺伝子発現の直接可視化は、線虫(C. elegans)等の発生システムにおける適用を含んでよい。
【0060】
本発明は、細胞におけるライブイメージングのための方法も含む。例えば、ライブイメージング用プローブを生きた細胞内に送達することができ、次いで本明細書において記載される方法を用いてプローブシグナルを検出することができる。一態様において、ライブイメージング用プローブは、約1〜100種の標識オリゴヌクレオチドを含有する。別の態様において、プローブは、約4〜50種の標識オリゴヌクレオチドを含有する。次いで、本明細書において記載されるRNA FISH法によって、シグナルを立証することができる。ライブイメージング法の適用の非限定的な例には、単一の生きた細胞における内在性RNAの検出または染色体構造の決定が含まれる。本明細書において検討されるように、ヒト疾患への本発明の適用には、癌における画一的な染色体転座の形成を同定し得る能力が含まれる。癌における遺伝子融合の広範な発生および本発明の方法の直接性を考慮すると、転座が生成されるメカニズムについてのよりさらに深い理解を有することができる。本発明の非摂動的性質は、これらの方法が組織切片にも適用され得、考えられる限りでは、腫瘍における転座の詳細な検査により分子診断ツールの改善をもたらすことも意味する。より一般的には、転座が遺伝子発現に影響を及ぼす方式を解明することができ、かつ構造/機能の関係性を疾患に対するバイオマーカーとして確立することができる。
【0061】
例えば、本発明を、臨床的実現可能性への決定的一歩を象徴する、凍結させかつパラフィン包埋した組織サンプルに適用することができる。単一分子レベルでの遺伝子発現における誘発された相違とともに転座自体の動態を調査することによって、特異的転座の起源および関係する融合転写産物の発現にそれらがどのように影響を与えるのかを決定することができる。本発明を、臨床診断法およびスクリーニング化合物に対する新しいアッセイとして用いてもよく、またはそれらと併用してもよい。ゆえに、本発明は、固定した細胞および生きた細胞における核過程を直接可視化することによって、核の構造が遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかについてのよりよい理解を提供する。
【0062】
RNA FISH法
本発明は、
図1Aに示されるように、遺伝子のイントロンを標識するための、非常に高感度でかつ特異的なRNA FISH法の使用を含む。RNA FISH方法論についてのさらなる記載および説明を、その全内容が参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、同時係属中の特許出願公報第WO/2010/030818において見出すことができる。
【0063】
イントロンは、典型的には、それらが転写の部位自体から離れる機会を有する前に、転写後まもなく分解される。本発明のRNA FISH法によって標的化された場合、2つの情報をもたらすスポットを顕微鏡において見ることができる。第一に、スポットの明るさまたはその有無は、瞬間的転写率に関係しており、かつスポットの位置は、顕微鏡の回折限界のものより下の長さまで正確な遺伝子の場所を与える。この方法は、単一染色体に沿って配置された数十および数百さえものイントロンの同時標識化のためのプローブの設計をさらに伴い、それによって、それぞれ個々の点が単一遺伝子に対応する、染色体の三次元「点描画法ペイント」を創出する。
【0064】
例えば、同様のまたは異なるフルオロフォアでそれぞれ標識された約1〜1000種の異なるプローブを、RNA分子等のヌクレオチド分子標的配列に同時にハイブリダイズさせる。ある態様において、プローブの数は、4〜100種、10〜80種、15〜70種、または20〜60種に及んでよい。複数のプローブの組み合わせた蛍光から検出され得る蛍光スポットが創出される。プローブは重複していなくてよく、これは、各プローブがハイブリダイズする標的配列の領域が固有である(または少なくとも重複していない)ことを意味する。選択された標的配列に対する2セットまたはそれを上回るセットのプローブを、いかなるプローブとも相補的でない、1ヌクレオチド〜100ヌクレオチドまたはそれを上回る一続きの標的配列と互いに隣接してハイブリダイズするように、または隣接せずにハイブリダイズするように設計することができる。
【0065】
したがって、本発明は、固定して透過処理した細胞または生きた細胞において、例えばRNA等の核酸分子標的配列をプロービングするための方法を提供し、前記標的配列は、15〜100ヌクレオチドの領域に結合する少なくとも2種の重複しないプローブを含む。該方法は、それぞれが蛍光標識で単一標識され、かつそれぞれが標的配列の異なるプローブ結合領域に相補的である核酸配列を含有している、少なくとも30種の過剰な核酸ハイブリダイゼーション用プローブ中に細胞を浸す工程、該細胞を洗浄して結合していないプローブを除去する工程、およびプローブからの蛍光を検出する工程を含んでよい。
【0066】
本発明において有用なプローブは、DNA、RNA、またはDNAとRNAとの混合物であってよい。それらは非天然ヌクレオチドを含んでよく、かつそれらは非天然のヌクレオチド間連結を含んでよい。プローブの結合アフィニティーを増大させる非天然ヌクレオチドは、例えば2'-O-メチルリボヌクレオチドを含む。本発明において有用なプローブの長さは、平均的結合アフィニティーの典型的なDNAまたはRNAプローブに関して約15〜40ヌクレオチドであってよい。DNAプローブおよびRNAプローブの好ましい長さは、約15〜20ヌクレオチド、より好ましくは17〜25ヌクレオチド、さらにより好ましくは17〜22ヌクレオチドの範囲内である。ある態様において、プローブは約20ヌクレオチド長である。プローブの結合アフィニティーを増大させるための手段を含む場合、当業者であれば認識するであろうように、プローブはより短く、7ヌクレオチド程度の短さであってよい。フルオロフォアを、任意の場所でプローブに接着させることができ、例えば、フルオロフォアをプローブの一方の末端に、好ましくは3'末端に接着させるが、これに限定されない。過剰量の、一般に0.2〜1ng/μLの範囲で、複数のプローブを含有しているハイブリダイゼーション溶液の中にプローブを含めてよい。細胞がプローブ含有溶液に浸されるように、充分な溶液を添加して細胞を覆いかつ湿らせる。別の態様において、自動DNA合成の間に、フルオロフォアをプローブ(probesn)内に組み入れることができる。
【0067】
1つのRNA分子の2つ以上の標的配列、または異なるRNA分子の1つもしくは複数の配列のいずれかである複数のRNA標的配列について、単一細胞を同時にプロービングすることができる。加えて、1つのRNA分子の1つの標的配列を、2セット以上のプローブでプロービングすることができ、ここで各セットは識別可能なフルオロフォアで標識され、かつ該フルオロフォアは識別可能である。例えば、遺伝子配列をプロービングする際に、少なくとも2種の緑色標識プローブを用いて、該遺伝子配列の一部分をその標的配列としてプロービングし、かつ少なくとも2種の赤色標識プローブを用いて、該遺伝子配列の異なる部分をその標的配列としてプロービングすることができる。本発明によれば、複数の標的のそれぞれに対して1種を上回る色を用いることによって、非常に多重化されたプロービング法における色によるコード化スキームの使用が可能となる。
【0068】
本発明の方法は、標的配列を表す1つまたは複数のスポットが存在するかどうかを判定することも含んでよい。本発明に従った方法は、既定のRNA種に対応する既定の色のスポットを計数することも含む。1種を上回るRNAを検出することが望まれる場合、区別されるフルオロフォアで標識された異なるプローブセットを、同じハイブリダイゼーション混合物において用いることができる。異なる色のスポットを計数することによって、それぞれの種のRNAについての遺伝子発現プロファイルを構築する。
【0069】
顕微鏡法を利用することによって、スポットを検出することができる。広視野蛍光顕微鏡で充分であるため、共焦点顕微鏡を用いる必要はない。標的配列を陽性に表しているスポットを、バックグラウンド蛍光または非特異的結合を反映し得る薄暗い蛍光から識別するために、本発明に従った方法は検出を含む。一態様において、該検出は、三次元ラプラシアン・ガウシアン(Laplacian of Gaussian)線形フィルターを用いて画像をフィルタリングすること、および検出閾値を適用することを含む。フィルタリングした画像において、ゼロから最大までの画素強度に及ぶすべての閾値に対して三次元のスポットの数をプロットする場合、検出されたスポットの数が閾値の影響を受けない領域の指標である、広範なプラトーが存在する。ゆえに、該方法は、スポットの数をプロットすること、プラトー領域の境界を決定すること、および好ましくはその領域内の閾値を選択することをさらに含む。
【0070】
別の局面において、本発明は、細胞内の個々のRNA分子の検出を可能にするインサイチューハイブリダイゼーション用のプローブのセットを含む。該プローブは、各分子に、蛍光顕微鏡において微細な蛍光スポットとしてそれを見ることができるほど強い蛍光を与える。コンピュータープログラムを用いて、細胞内のすべてのRNA分子を顕微鏡画像から同定かつ計数することができる。上記のプローブのセットを用いて実施されるインサイチューハイブリダイゼーションによって、正確かつ簡単な染色体構造解析、遺伝子発現解析、病原体および癌等の病原性状態の検出が可能となる。
【0071】
さらに別の局面において、本発明は、2-D蛍光画像の3-Dスタックを獲得すること、3-Dフィルターを用いて該3-Dスタックをフィルタリングすること、複数の強度閾値のそれぞれに対して、フィルタリングした3-Dスタックにおける3-Dスポットの総数を計数すること、総数が計数された強度閾値に対する(verses)3-Dスポットの総数のプロットにおいて、プラトー領域の指標となる最適な強度閾値を獲得すること、および最適な閾値で獲得された3-Dスポットの総数を、3-Dスタックにおいて検出された多数の蛍光粒子の指標として用いることに対する使用説明書を含む、コンピューター可読媒体を提供する。
【0072】
さらに別の局面において、本発明は、上記の閾値化アルゴリズムを遂行するソフトウェアを提供する。一態様において、三次元ラプラシアン・ガウシアン線形フィルターを用いることによって、閾値化を達成する。
【0073】
本発明は、概して、プローブのセット、本明細書において検討される方法のいずれかを実施するための取扱説明書、および任意で、本明細書に記載されるコンピューター可読媒体を含むキットも提供する。
【0074】
染色体のバーコード化
本発明の別の局面において、
図1Aに描写されるように、バーコード化スキームを用いることによって、集合体におけるそれぞれ個々の遺伝子の発現を識別するために、多色FISHを用いることができる。これは、顕微鏡において3種の蛍光色を判別し得る能力を提供し、5色までのRNAを一斉に識別し得る能力をさらに提供する。他の態様において、5色の基本色の組み合わせを用いて31色もの有効色をもたらすことによって、色のパレットを拡大することができる。本発明は任意の特定の数の色によって限定されるものではなく、したがって本発明のシステムおよび方法は、分離した色としてまたは色の組み合わせによって、利用可能な任意の種類および数の識別可能な色を利用することができると認識されるべきである。加えて、多色FISHの使用は、バーコード化スキームを用いて染色体を標識することによって独特に標的化される遺伝子の数を増加させることを可能にする。例えば、色の非反復的な配列(例えば、RRGRRBBG...)を用いておよびスポットの空間的近接性をガイドとして用いて各スポットを標識することによって、コードにより核内の「点を結ぶ」ことが可能となり、両方ともにそれぞれ個々の遺伝子の位置および発現レベルを独特に同定する。他の態様において、標的遺伝子の変動し得る発現によるコードの「穴」を許容するように、コードを構築することができる。この方法は、「インサイチューマイクロアレイ」の形態を成す数百の遺伝子についての発現パターンを提供し得る。他の態様において、位置または機能のいずれかによって組織化された遺伝子の群に、当面の生物学的課題に応じて色付けすることができる。
【0075】
核構造の分子基盤を決定するためのRNAiスクリーニングの使用
本発明のシステムおよび方法は、染色体構造および遺伝子発現を測定するためのコンパクトなアッセイを提供する。分子メカニズムの根底にある包括的見解を得るために、あらゆる遺伝子を体系的に摂動することができ、かつ高解像度FISHデータを解析するためのRNAiプラットフォームを構築することによってその効果を測定することができる。そのようなプラットフォームによって、本発明のシステムおよび方法から生じるFISHデータにおいて観察される構造パターンに関与する特定のタンパク質についての大域的な画像の創出が可能となる。
【0076】
画像に基づくRNAiスクリーニングの最終的な成功は、単純で再現可能なアッセイを有すること、およびプラットフォームが産生するデータの流れを迅速に解析する手段を有することに依存する。アッセイ自体は、本明細書において記載されるFISHに基づくアッセイであってよいが、情報を最大限にするように単純化されている一方で、アッセイの堅牢性を最大限に高めかつアッセイの複雑性を最小限に低める。例えば、一態様において、初期アッセイは、異なる色で標識された染色体のいくつかの異なる領域を含んでよく、比較的解析しやすくかつ情報量の多いデータを提供する。データの収集自体は、FISH等の高解像度の方法の必要条件を満たし得る自動化顕微鏡プラットフォームを含んでよい。この目的のために、遺伝子発現におけるわずかな空間的相違をFISHによって検出し得るRNA FISH法の能力を、384ウェルプレート形式で実証することができる。別の態様において、RNAiスクリーニングが産生する大量のデータを保存かつ解析し得るコンピュータープラットフォームが含まれてよい。
【0077】
本発明は、概して、染色体構造に関わるアッセイに関するが、単一分子顕微鏡法とつなぎ合わせたスクリーニングのための高性能プラットフォームも含まれてよい。この適用には、クロマチンを修飾し、ゆえに染色体構造に影響を及ぼすと考えられる非コードRNAの調査が含まれてよい。一態様において、本発明は、染色体構造と一緒にncRNA発現を測定し、次いで反応を仲介することに関わるタンパク質をスクリーニングするためのアッセイを含む。
【実施例】
【0078】
実験実施例
ここで、本発明を、以下の実施例を参照して記載する。これらの実施例は、例証のみを目的として提供されるものであり、本発明は、これらの実施例に限定されると解釈されるべきでは決してなく、むしろ、本明細書において提供される教示の結果として明らかになる全ての変異型を包含すると解釈されるべきである。
【0079】
実験実施例の実施において、以下の方法を用いた。
【0080】
細胞培養、固定、および蛍光インサイチューハイブリダイゼーション
ヒト包皮初代線維芽細胞(ATCC CRL 2097)またはHeLa細胞(Phillip Sharpの研究室からの贈与)を、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補充した、glutamaxを含むDulbecco改変イーグル培地(DMEM、Life Technologies)中で増殖させた。G0/G1期の細胞について、ダブルチミジンブロック(培地中に2μg/mLのチミジン)手順および固定前の適切な期間の解放によって、細胞を濃縮した。細胞を固定するために、Rajらのプロトコール(Nat. Meth. 2008, 5, 877-879)に従った。要するに、1×リン酸緩衝生理食塩溶液(PBS)中の4%ホルムアルデヒド/10%ホルマリンを用いて細胞を固定し、その後に1×PBSで2回すすぎ、その後、70%EtOHを用いて細胞を透過処理し、少なくとも一晩4℃で保存した。
【0081】
蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を実施するために、いくらかの微修正をしてRajらの手順(Nat. Meth. 2008, 5, 877-879)に従った。10%ホルムアミドおよび2×クエン酸ナトリウム生理食塩水(SSC)を含有している洗浄用緩衝液を用いて前洗浄を行い、次いで10%ホルムアミド、2×SSC、および10%硫酸デキストラン(W/V)を含有している緩衝液中に適切な量および種類のプローブ(後に記載される)を添加することによって、ハイブリダイゼーションを実施した。37℃に維持された加湿チャンバー内でサンプルを一晩ハイブリダイズさせ、次いで洗浄用緩衝液を用いて37℃で30分間2回洗浄し(2回目の洗浄の際、50ng/mLの濃度でDAPIを添加する)、次いで以下に記載されるように2×SSC中で撮像した。
【0082】
アクチノマイシンDを伴う実験の場合、2μg/mLのアクチノマイシンD(Sigma)中でHeLa細胞を0、30、60、および120分間インキュベートし、その後細胞を固定し、
図7に記載されるようにFISHを実施した。薬物の活性の空間的不均一性を回避するために、添加前にアクチノマイシンDを培地中で徹底的に混合した。
【0083】
RNase実験のために、上記に概説されるように細胞を固定かつ透過処理し、その後、70%EtOHを吸引し、1×PBSで1回洗浄し、その後に10μg/mLのRNase A(Sigma)を含む1×PBSの添加が続いた。固定した細胞を37℃で30分間インキュベートし、1×PBSで洗浄し、次いで上記に概説されるようにFISHを実施した。対照として、近隣ウェル中の細胞に対して、全く同じ手順を実施したが、インキュベーション用の1×PBSにはRNase Aを添加しなかった。
【0084】
イメージングおよび画像解析
100×Plan-Apo対物レンズおよび冷却したCCDカメラ(Princeton Instruments製のPixis 1024B)を用いたNikon Ti-E倒立蛍光顕微鏡上で、すべてのサンプルを撮像した。DAPI、Atto 488、Cy3、Alexa 594、Atto 647N、およびAtto 700に対するフィルターセットを用いた6個の異なる蛍光チャンネルにおいて、蛍光画像の三次元スタックを連続的に取得した。DAPI(約100ミリ秒間露光した)およびAtto 700(装置上における若干のより弱い照射のために、約5秒間露光した)を除いて、色素のほとんどに対して露光時間はおよそ2〜3秒間であった。スタックにおける連続面の間の間隔は0.3μmであった。
【0085】
画像が取得されると、MATLABで書かれた特注の半自動スポット認識ソフトウェアから作り上げられた、以下の一連の工程を有する画像解析パイプラインにそれらを通した。:
1)ラプラシアン・ガウシアンフィルターを用いて画像をフィルタリングし、上位300個のスポットを候補として選ぶことによって、三次元画像において候補スポットをまず同定した。いくつかの場合には、細胞周期におけるそれらの段階に基づき、解析のために細胞を選出した。それらの場合には、サイクリンA2 mRNAをほとんど有さないまたは有さない細胞を選出した。この手法は、付加的実験によって検証されている(
図8)。2)次いで、各候補をガウシアンの強度プロファイルに適合させ、それによってスポットの中央、幅、および強度の正確な推定値が与えられる。3)強度および幅のヒストグラムに基づき、バックグラウンドよりも高い質(均一な幅、より高い強度)を有するスポットの部分集団を手動で選択した。これは、閾値を選出してバックグラウンドのスポットから本物のRNAスポットを分離するRajら(Nat. Meth. 2008, 5, 877-879)に記載される手順と、趣旨が類似している。スポットの割り当てのための多色スキームにより、バックグラウンドのスポットを切り捨てるための別の手段が提供されるため、この場合には、バックグラウンドであり得るスポットが含まれた。4)スポットが選択されると、基準マーカー(この場合、SuZ12 mRNAを標的とする、5種すべてのRNAの色のプローブ)を見出すソフトウェアを実行した。このようにして、各細胞における異なる蛍光チャンネル間の変位を個々に測定した。次いで、これらのズレを適用して、異なる蛍光チャンネル間で、コンピューターによって同定されたスポットを整列させた。5)整列後、標的イントロンに対して選出された特定の疑似カラースキームに対応する共局在したスポットを探すソフトウェアを実行した。該ソフトウェアは、この段階で、共局在したスポットを特定の遺伝子に割り当てることにおいておよそ75%正確であると推定された。6)スポットを同定する際にソフトウェアが犯した間違いを修正する手動の修正過程を行った。共通の課題には、蛍光チャンネルの1つにおいて薄暗い(が明らかに存在する)シグナルを検出しそこなうこと、ならびにラプラシアン・ガウシアンフィルタリングおよび候補同定工程が単一スポットとして標識した、空間的に近い2つの蛍光スポットを分解し損なうことが含まれた。7)遺伝子座の標識されたイントロンが正しく注釈付けされたら、細胞を手動で検査して、個々の染色体を分離した。特定のスポットを特定の染色体に割り当てるのを困難にする、染色体が重複した細胞を切り捨てた。
【0086】
HeLa細胞の核型分析
標準的手順に従って、HeLa細胞の中期スプレッドに対して、Gバンド解析(核型分析)を実施した。これによって、該細胞は、第19染色体の2つの無傷コピー、および2つのフラグメントに分割して他の染色体に融合した第19染色体の完全な第三のコピーを含有していることが示された。第一のフラグメントは、第19染色体短腕の前半を含み、第6染色体の大きな部分に融合した。第二のフラグメントは、第19染色体の残存部分(セントロメアに至るまでの短腕半分および長腕全体)であり、第13染色体の長腕に融合した。第19染色体がこの特有の方式で分割したことを決定的に実証するために、Gバンド解析を実施した同じ中期スプレッドに対して、DNA FISH解析を実施した。それぞれが異なるフルオロフォア(Abbott Molecular)で標識された、第19染色体上の19p13および19q13領域内の遺伝子座を標的とするプローブを用いた。結果は、Gバンド解析の結果を裏付けた。この解析を、そのそれぞれが同じ遺伝学的異常を示す10個の細胞に対して実施し、該細胞は細胞ごとのこの特有の特徴に大幅な違いがないことが示された。
【0087】
細胞周期の進行についてのClick-iT EdU解析
サイクリンA2 mRNAが細胞周期における場所の正確なマーカーであることを実証するために、新しく複製されたDNA内に標的可能な化学物質を組み入れる、Click-iT EdU Alexa Fluor 594 Imaging kit(Invitrogen)を用いた。この場合、細胞を固定する前に、細胞を10μM Click-iT EdU試薬とともに5分間インキュベートした。サイクリンA2 mRNA Cy3プローブを用いて、これらの細胞に対してFISHプロトコールを実施し、ハイブリダイゼーション工程および洗浄工程の後、組み入れられたEdUを蛍光標識するために、キットとともに提供された使用説明書に従った。
【0088】
ショウジョウバエS2細胞の培養
ショウジョウバエS2細胞をATCCから入手し、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したSchneider完全培地中で増殖させた。培養物がコンフルエントに到達した時点で、3〜4日に1回新たな培地に10倍希釈することによって細胞を継代培養した。
【0089】
MtnA発現を誘導する実験では、細胞培地に1mMの最終濃度まで硫酸銅を添加し、ライブイメージングの前に細胞を5時間インキュベートした。
【0090】
プローブの設計
特注のFISH設計ソフトウェア(http://www.biosearchtech.com/stellarisdesigner/)を用いて、イントロンに対する20塩基のオリゴヌクレオチドプローブを設計した。可能な場合には、遺伝子の第1イントロンを標的とする16種のオリゴヌクレオチドの設計を試みた。3'末端に接着したアミン基を有するオリゴヌクレオチドを合成する、Biosearch Technologies(Novato、CA)にオリゴヌクレオチドを発注した。これらの3'末端を、本文および表1に示される種々の有機色素(Atto 488(Atto-Tec)、Cy3(GE)、Alexa 594(Invitrogen)、Atto 647N(Atto-Tec)、およびAtto 700(Atto-Tec)を含む)とつなぎ合わせた。Rajら(Nat. Meth. 2008, 5, 877-879)に記載されるHPLCによって、プローブを精製した。
【0091】
ライブイメージングに用いられたプローブ
本調査に用いられたすべてのプローブは、2'O-メチル修飾された核酸骨格を用いて合成された20merの一本鎖オリゴヌクレオチドであった。すべてのオリゴヌクレオチドは、3'末端に共有結合で接着したテトラメチルローダミン(TAMRA)を有する。
【0092】
roX2 RNAを標的とするオリゴヌクレオチドに用いられた特異的配列は、(5'から3')であり、表1に列挙される。同じく表1に列挙される、MtnA遺伝子を標的化するのに用いられたオリゴヌクレオチドの配列も(5'から3')である。
【0093】
FISHに用いられたプローブ
ライブイメージング用プローブと同じ標的RNAに対するプローブであるが、プローブ間の競合を回避するために標的RNA内の異なる配列を標的とするFISH用のオリゴヌクレオチドを有するプローブを用いて、FISHを実施した。FISHに用いられたオリゴヌクレオチドのすべてが、3'末端に共有結合で接着したCy5蛍光分子を有する一本鎖DNAオリゴヌクレオチドであった(Cy5は、それが、ライブイメージング用プローブとして用いられたTAMRAとスペクトル的に区別されるため選出された)。FISH共局在解析のためのroX2 RNAを標的化するのに用いられたオリゴヌクレオチドの配列は(5'から3')であり、表1に列挙される。
【0094】
FISH共局在解析のためのMtnA mRNAを標的化するのに用いられたオリゴヌクレオチドの配列は(5'から3')であり、表1に提供される。
【0095】
ライブイメージング用オリゴヌクレオチドの送達
対象となる標的に特異的なライブイメージング用オリゴヌクレオチドを、Neonトランスフェクションシステム(Invitrogen/Life Technologies)を用いたエレクトロポレーションにより、生きたショウジョウバエS2細胞内に導入した。ライブイメージング用オリゴヌクレオチドのプールを、細胞を含有している緩衝液に1オリゴヌクレオチドあたり0.8μMの濃度で直接添加し、その後に、5msの幅および2000Vの電圧を有する4パルスを用いた、メーカーの使用説明書に本質的に従ったマイクロポレーションを行った。細胞をマイクロポレーションし、次いで、細胞接着を促すコンカナバリンAで被覆したチャンバー付きカバースリップ上に設置した。1時間後にイメージングを開始した。
【0096】
ライブイメージング後の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)
これらの実験では、ライブイメージング用プローブを上記のように送達した。6時間後、Rajらのプロトコール(Nat. Meth. 2008, 5, 877-879)に従って細胞を固定した;要するに、1×リン酸緩衝生理食塩(PBS)溶液中の4%ホルムアルデヒドで細胞を固定し、1×PBSで2回洗浄し、次いで70%EtOHで透過処理した。固定後、およそ0.2ng/μl(総オリゴヌクレオチド濃度)のFISH用プローブをハイブリダイゼーション溶液に添加し、1時間ハイブリダイズさせ、次いで、2×クエン酸ナトリウム生理食塩水(SSC)および10%ホルムアミドを含有している洗浄用緩衝液を用いた2回の洗浄であって、2回目の洗浄にDAPIを添加しそれに続いて洗浄する、ハイブリダイゼーションを行った。2×SSCをサンプルに添加し、次いで以下に記載されるように撮像した。
【0097】
ライブRNAイメージング
100×Plan-Apo対物レンズおよび冷却したCCDカメラ(Princeton Instruments製のPixis 1024B)を用いたLeica DMI6000B倒立蛍光顕微鏡上で、すべてのサンプルを撮像した。TAMRAフルオロフォアに最適化したフィルターセットを用いた。2秒間の露光時間を用い、露光の回数を10回に制限して光毒性を回避した。いくつかの場合には、細胞のすべての部分を十分に撮像するために、0.3μMの光学的断片間の間隔で、異なる焦点面に対応する一連の光学的断面(z-スタック)を取得した。
【0098】
同じRNAを標的とするライブイメージング用プローブおよびFISHシグナルを同時に撮像する実験では、TAMRA(ライブイメージング用プローブ)およびCy5(FISH用プローブ)を識別し得、それによってシグナルの共局在を可能にするフィルターを用いて、連続的z-スタックを取得した。
【0099】
【表1】
【0100】
さらなる記載なしで、当業者であれば、前述の説明および以下の例証的実施例を用いることによって、本発明を行いかつ利用し、および特許請求される方法を実践することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい態様に特に注目するものであって、本開示の残りの部分を任意の方式で限定するものとして解釈されるべきではない。
【0101】
実施例1:染色体構造および遺伝子発現の同時決定
図1Bに描写されるように、染色体をしっかりと照らしかつ低いバックグラウンドを有する、第19染色体に沿った18個の遺伝子を標的化した。本発明の方法はRNA FISHに基づくため、
図1Cに描写されるように、mRNAを標識するRNA FISHと組み合わせて、特定の遺伝子の発現を同時に測定することが容易である。ほとんどの遺伝子のイントロンは、50%未満の細胞においてスポットをもたらすため、イントロン自体も重大な遺伝子発現情報をもたらす。つまり、本発明の方法による全体的染色体構造の決定は、多数の遺伝子の標識、ゆえに該方法に冗長性を与えることを付加的に含んでよく、かつ豊富なイントロン標的の生物情報工学的同定に役立つRT-PCRスクリーニングをさらに含んでよい。
【0102】
図1Bに描写されるように、第19染色体の3つの異なる領域における区別して標識された遺伝子は、顕著に規則正しい染色体内立体配置を呈する。異なる細胞におけるスポットパターンと比較した場合、染色体は多種多様な形状を取り得る。驚くべきことに、集められたいくつかのデータにより、ある特定の細胞内では、
図1Bに描写されるように、染色体の2つのコピーが非常に類似したスポットパターンを採用することがあることが示唆されている。このことは、発現および形状が、単一細胞内の染色体の2つのコピー間で関連し合っていることを示している。
【0103】
第二の実験セットでは、
図3に描写されるように、第19染色体に沿った20個の独特な遺伝子の転写部位を、色でコード化されたプローブを用いて検出した。ここでは、5%を下回る偽スポット同定率が実証されている。20個の遺伝子についてのこれらのスポットデータを用いて、活発に転写している遺伝子の染色体コンフォメーションを再構築した(
図3)。
【0104】
実施例2:染色体構造および遺伝子発現のインビボでの測定
システム生物学における多くの洞察は、細胞過程の動態を理解するための経時的顕微鏡使用から生まれている。この理由で、本発明の方法を生きた細胞にも適用して、染色体構造および遺伝子発現の動態についての見解を提供することができる。今日まで、単一の生きた細胞における顕微鏡法による非摂動的な(すなわち、遺伝子操作なしの)様式で、染色体構造または遺伝子発現を見る方式は存在しない。
【0105】
実験を実施して、インビボで核酸を標的化するという難題に取り組むことができる。例えば、検討事項には、いくつかの中でも、ハイブリダイゼーションの動態、配列設計、オリゴヌクレオチド化学、および送達方法が含まれる。細胞内における単一位置への多数のオリゴヌクレオチドの結合によって、検出可能なスポットがもたらされ得るという考えで、一連の16〜48種のオリゴヌクレオチドを設計することによって、高発現した遺伝子由来の単一イントロンのRNAを標的化することができる。種々の細胞内ヌクレアーゼに対する不浸透性をオリゴヌクレオチドに与えるのに必要である、多様な修飾された骨格の化学的性質(2'O-メチル等)を用いて、これらのオリゴヌクレオチドを合成することができる。結果に応じて、特に核内におけるクエンチャーの使用により、バックグラウンドを減少させ得る「分子指標」または他のプローブ設計をおそらく利用して、オリゴヌクレオチドの設計を変更することができる。プローブの送達方法には、例えばマイクロインジェクション、マイクロポレーション、および脂質ベースのトランスフェクション試薬が含まれてよい。単一RNAを検出し得る方法、およびほとんどのイントロンスポットが標的に対して5〜10個の間のイントロンRNA分子を含有しているという事実を考慮すると、検証のための対照としてFISHを用いることによって、個々のイントロンスポットをインビボで検出することができる。
【0106】
単一イントロンを検出した後、染色体全体をインビボで標識し、一方で遺伝子発現のいくらか粗い測定も提供することを目的として、本発明の方法を用いて、複数のイントロンを同時に標識することができる。次いで、スポットを色でコード化して、生きた細胞においてバーコード化された染色体を再現することができる。
【0107】
本明細書において記載される方法は、ライブRNAイメージングを実施するための方式を提供する。このイメージングを、キイロショウジョウバエ細胞における長い非コードRNA(roX2)に対して実施することができる。この特定のRNAは、X染色体を覆い、細胞において非常に独特な空間分布をもたらす。この空間分布を活用して、記載される方法が、単一の生きた細胞において内在性RNAを検出し得るかどうか、かつX染色体の構造を示し得るかどうかを明確に試験した。例えば、ライブイメージング用プローブ(8種の標識オリゴヌクレオチドからなる)はroX2 RNAを検出することが見出され、かつシグナルはRNA FISHによって裏付けされた(
図5)。別の例では、キイロショウジョウバエ細胞における内在性遺伝子に対してライブRNAイメージングを実施した。銅の存在下でオンになるMtnA遺伝子を特異的に標的化した。オリゴヌクレオチドプローブを生きた細胞に送達し、次いで固定後にプローブを検出した。異なって標識されたプローブを用いるRNA FISHを用いて、固定後に同じ標的を標的化することによってシグナルの特異性を立証し、その結果、シグナルが共局在していた(
図6)。
【0108】
実施例3:染色体フラグメントの位置および転写頻度の決定
本明細書に記載される方法を用いて、HeLa細胞における異なる染色体フラグメントの位置を単一細胞基準で決定した。
図4に示されるように、これらの染色体フラグメントは、第19染色体の2つの無傷コピー、ならびに半分に分割している第19染色体の別のコピーであって、一方の半分は第13染色体の一部に融合しており、第二の半分は第6染色体の一部に融合しているコピーを含む。
【0109】
次いで、第19染色体の無傷コピーの転写頻度を、転座したフラグメントと比較した。核の近接性に基づいてイントロンを空間的に隔離することによって、個々の染色体および染色体フラグメントを単離し、瞬間的転写活性を染色体ごとに測定した。第19染色体に沿った20個の遺伝子に対する既定の遺伝子に対してイントロンスポットを呈した染色体画分の単位で、転写活性を測定した。第6染色体に融合した第19染色体の一部における遺伝子は、無傷の第19染色体におけるものとほぼ同じ頻度で転写し、一方で第13染色体に融合した第19染色体の一部における遺伝子は、概して、無傷コピーにおけるものよりも相当高い割合で発現することが見出された。ゆえに、本発明は、染色体ごとの転写を測定するための方法を提供する。
【0110】
実施例4:癌における転座
癌の多くの形態は、画一的な染色体転座を呈し(Mitelman et al., 2007, Nat Rev Cancer 7: 233-245)、おそらく最も有名なフィラデルフィア転座は、回りまわって慢性骨髄性白血病につながる発癌性融合タンパク質(BRC-ABL)の形成をもたらす。RNAシークエンシング技術の開発により、多様な癌における特異的融合体の普及が示されている。それにもかかわらず、これらの非常に特異的な転座は正確にはどのように起こっているのかについての疑問が残っている。特異的遺伝子の転写の間の、ある特定の染色体位置の共局在により、特異的転座が生じ得る。
【0111】
本明細書に記載される方法は、これらの転座を測定するための新しい方式を提供する。本発明により染色体構造を測定することによって、転座自体を直接検出することができる。さらに、該方法をRNA FISHと容易に組み合わせて、それにより、異なって色付けされたプローブを用いて融合体の2つの半分を標識することによって、融合転写産物の検出を促進する。これにより、単一細胞内の発癌性融合転写産物の発現レベル、ならびに染色体転座の測定が可能となるであろう。
【0112】
例えば、子宮内膜癌の形成に関係している、JAZF1およびJJAZ1タンパク質の融合をもたらす転座を調査することができる。興味深いことに、融合転写産物は転座を含有していない非癌性細胞においてさえ出現し、これらの遺伝子の正常な転写産物が、次いでトランススプライシング事象につながるそれらの物理的近接性をもたらすことがあり得ることを示唆している。関与する2つの染色体(第7および第17)を、野生型細胞および転座を有する細胞の両方における単一分子RNA FISHにより、融合転写産物の2つの半分と一緒に標的化することができる(
図2および
図1C)。2つの染色体に関する共局在解析によって、関係する遺伝子座の相対的位置、およびそれらが染色体の全体的形状にどのように関係するのかについて決定することが可能となる。その一方で、融合転写産物の2つの半分の共局在を同時に探すことができる。2つのプローブの共局在は、融合転写産物の存在を暗示し、一方で個々のプローブ由来のシグナルは、融合していない転写産物を表す。現在のところ、野生型細胞が、あらゆる細胞においてある程度の量の融合転写産物を含有しているのか、または細胞のほんのわずかな部分集団だけが融合転写産物を多量に生成しているのかは不明である。いずれの場合にも、本発明の単一細胞、単一分子解析によって、この疑問に直接答えることが可能となり、かつ任意の知見を関与する染色体の構造に関係付けることが可能となる。
【0113】
本明細書において引用される全ての特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、本明細書によって参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
【0114】
本発明は特定の態様を参照して開示されているが、本発明の他の態様および変異型が、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、他の当業者によって考案され得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および同等の変異型を含むと解釈されることを意図される。