【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1に係る水平共振器面出射型レーザ素子100の構造を
図1A及び
図1Bを用いて説明する。
図1Aは水平共振器面出射型レーザ素子100の平面図であり、
図1Bは、
図1AのI−I線に沿った断面であり、水平共振器面出射型レーザ素子100の光軸方向断面図である。水平共振器面出射型レーザ素子100は、レーザ部分においてn型InP基板110上にInGaAlAs活性層108を有し、共振器直下のp型InPクラッド層117が凸型のストライプ状にエッチングされたリッジ型導波路構造を有する。
図1Bに示すように、水平共振器面出射型レーザ素子100は、InGaAlAs活性層108の直下に回折格子109が形成された、DFBレーザである。回折格子109のピッチは1.3μm帯で発振するように設計されている。DFB共振器の長さは高速特性を考慮して、150μmの共振器長とした。以後、説明において、「前方」は、最終的に水平共振器面出射型レーザ素子100から出射されるレーザ光が、InGaAlAs活性層108から出射される方向を示し、「後方」はその反対方向を表すこととする。
図1Bにおいて出射されるレーザ光の様子は二点鎖線の矢印で示されている。
【0028】
リッジ型導波路構造の下部にはコンタクト層115(後述)が形成されており、コンタクト層115下部にはp型電極103が形成されている。また、InGaAlAs活性層108は、パッシブ導波路層127(後述)とDBR層125(後述)からなるDBRミラー部(後方分布
ブラッグ反射鏡部)107とバットジョイント接続されている。DBRミラー部107の長さは200μmとした。この構造により、従来、ヘキ開面と誘電体膜を用いていた高反射機能をDBRミラー部107で代替すると同時に、DBRミラー部107からの残存反射光を後方モノリシック集積ミラー(後方反射鏡)101を用いて基板側に放射し、後述するモノリシック集積レンズ112(集光レンズ)面上に同時に形成された基板表面上の反射防止膜111を介して外に逃がすことが可能となる。従って、ウェハ状態ですべての作製工程が完了し、ウェハを切断する前のウェハレベルでの特性検査が可能になる。なお、本実施例においては、回折格子109を形成することとしたが、回折格子109を形成せず、InGaAlAs活性層108の前方にも、パッシブ導波路とDBR層からなるDBRミラー部をバットジョイント接続した分布ブラッグ反射型レーザとしてもよい。
【0029】
InGaAlAs活性層108の光出射端の前方およびDBRミラー部107の後方にはそれぞれ、p型InPクラッド層117からなる半導体埋め込み層をエッチングして形成した、前方モノリシック集積ミラー(前方反射鏡)104と後方モノリシック集積ミラー101とが形成されている。この半導体埋め込み層は、InGaAlAs活性層108から出射されるレーザ光を吸収しないバンドギャップ構造を持ち、また、埋め込み層内部は単一の材料からなるためレーザ光はその材料屈折率に応じた所定の角度で広がりながら伝搬する。このような埋め込み構造部分は一般的に窓構造と呼ばれている。また、前方モノリシック集積ミラー104の周辺部のp型InPクラッド層117の一部をn型InP基板110が露出するまでエッチングし、n型電極コンタクト層106を形成し、n型電極105を素子表面に形成することでp、n両電極がチップ表面に配されたフリップチップ構造とした。なお、本実施形態では、n型InP基板110が露出するまでエッチングすることとしたが、n型InP基板110が露出しない深さであってもよい。
図1Bの右端からInGaAlAs活性層108まで至る長さは200μm、
図1Bの左端からDBRミラー部107まで至る長さは150μmであり、チップの共振器方向長さは700μmとした。またチップの共振器垂直方向長さは250μmである。n型InP基板110の上面には凹形状段差が形成され、更にその段差の底部にはn型InP基板110をエッチングして形成したモノリシック集積レンズ112が形成されており、モノリシック集積レンズ112の表面には例えばアルミナの薄膜からなる反射防止膜111がコーティングされている。本実施例においては、アルミナを用いることとしたが、アルミナに限らず、反射を抑える材料を用いることができる。
【0030】
次に、
図2A〜
図2Kを用いて、
図1の実施形態に係るDFB型の水平共振器面出射型レーザ素子100の詳細な作製方法を説明する。
図2A〜
図2Kは、水平共振器面出射型レーザ素子100の製造工程を順に示す断面図である。なお、これらの断面図は、積層を順に説明するため、
図1Bの視野の図を図面内で180°回転した断面で示している。
【0031】
まず、
図2Aに示すように、レーザ部分の構造を形成するために、n型InP基板110上にn型InGaAlAsで構成された光閉じ込め層、InGaAlAsで構成された歪多重量子井戸層、およびp型InGaAlAsで構成された光閉じ込め層からなるInGaAlAsで構成されたInGaAlAs活性層108と、InPスペーサ層113と、InGaAsP系材料からなる回折格子層126を含む半導体多層体を形成する。このInGaAlAs活性層108は、n型InGaAlAsで構成されたn側光閉じ込め層、p型InGaAlAsで構成されたp型光閉じ込め層の間に、アンドープなInGaAlAsで構成され、厚さ7nmのウェル層WLと厚さ8nmのバリア層BLを5周期積層した多重量子井戸構造を備えている。このような多重量子井戸構造は、出力されるレーザが十分な特性を実現できるように設計される。
【0032】
次にこのInGaAlAs活性層108、InPスペーサ層113及び回折格子層126の一部をSiO2パターニングマスクと硫酸系エッチャントを用いてエッチングした。続いて、有機金属気相成長法を用いて、そのエッチングした部分にInGaAsPの多重量子井戸を含むパッシブ導波路層127、パッシブ導波路層127と共にDBRミラー部107を形成するためInGaAsP系材料からなるDBR層125を成長した(
図2B)。
【0033】
その後、電子ビーム露光法を用いて、InGaAlAs活性層108とパッシブ導波路層127の直上に回折格子109及び114を形成し、InGaAlAs活性層108とパッシブ導波路層127の先端部を硫酸系エッチャントによりエッチングした(
図2C)。この時、InGaAlAs活性層108とDBRミラー部107の共振器方向の長さをそれぞれ、150μmと200μmとした。InGaAlAs活性層108直上の回折格子109の構造は、室温でのDFBレーザの発振波長が1310nmとなるように形成した。なお、本実施例では、回折格子109がDFBレーザの全領域で均一に形成されたものを説明したが、必要に応じて、InGaAlAs活性層108と重なる領域の一部に回折格子109の位相をずらして構成した、いわゆる位相シフト構造を設けても良い。或いは回折格子109の周期が軸方向に変化している構造でもよい。また、パッシブ導波路層127直上の回折格子114の構造は、その反射スペクトルが1310nmを中心に約60nmの幅で反射率が98%以上のストップバンドを持つように設計した。また、InGaAlAs活性層108とパッシブ導波路層127の実効的な伝搬定数が同じとなるように層構造を最適化した。
【0034】
次に、その上方にp型InPで構成されたp型InPクラッド層117を形成し、次にp型InGaAsで構成されたコンタクト層115を形成する(
図2D)。ドーピングによるキャリア濃度は10の18乗cm−3にした。この多層構造を有するInPウェハ上に、レジストパターニングマスクとリン酸系エッチャントを用いて、InGaAlAs活性層108の直上以外のコンタクト層115をエッチングにより除去した(
図2E)。続いて、このInPウェハ上に二酸化珪素膜を被覆して保護マスクとする。この二酸化珪素マスクを用いて、InGaAlAs活性層108直上にリッジ型導波路構造を形成した(
図2F)。また、図示しないが、リッジ型導波路構造形成と同時に、後にn型電極コンタクト層106を形成する領域のp型InPクラッド層117の除去も行った。
【0035】
その後、
図2Gに示すように、エッチングマスク用の窒化珪素膜(SiN保護膜116)を形成し、InGaAlAs活性層108の前方部分とパッシブ導波路127の後方部分を、45°の傾斜角度にそれぞれエッチングすることにより、p型InPクラッド層117およびn型InP基板で構成された前方モノリシック集積ミラー104及び後方モノリシック集積ミラー101を形成した。この傾斜エッチングには、塩素とアルゴンガスを用いた化学アシストイオンビームエッチング(CAIBE:Chemically Assisted Ion Beam Etching)を用い、ウェハを45°の角度に傾斜させてエッチングすることにより45°のエッチングを実現した。なお、本実施例ではCAIBEを用いたエッチング方法について記載したが、塩素系ガスの反応性イオンビームエッチング(RIBE:Reactive Ion Beam Etching)や、ウェットエッチングを用いても良い。反射鏡である前方モノリシック集積ミラー104の光軸方向断面形状は、一方の切断面がn型InP基板110の面に垂直であるカタカナの“レ”の字型としたが、両方の切断面がn型InP基板110の面に斜めであるV型でも可能であり、また、斜面のみからなる構造でも可能である。本実施例においては、45°の角度にモノリシック集積ミラーを形成することとしたが、これ以外の角度であってもよい。特に後方モノリシック集積ミラー101の場合には、前方でのレーザ出射に影響を与えない方向に反射させるように形成することができる。一方で、後方モノリシック集積ミラー101及び前方モノリシック集積ミラー104を同じ形状とすることにより、同時に形成することができ、製造工程を簡略化し、製造コストを抑えることができる。
【0036】
次に、p型InGaAsコンタクト層115の上部のSiN保護膜116を除去し(
図2H)、p型電極103を蒸着し、続いて、n型電極105を蒸着した(
図2I)。その後、
図2Jに示すように、基板裏面を150μmの厚みまで研磨した後、基板裏面に窒化珪素マスク121を形成した。続いて、メタンと水素の混合ガスを用いた反応性イオンエッチングにより、直径125μm深さ30μmの円形状にエッチングした。この時、円柱の円の中心軸(β)が、パッシブ導波路層127の延長線(α)と45度傾斜ミラー上で交差するように上記窒化珪素マスク121を形成している。なお円の形状は用途によって楕円形状の場合もある。引き続いて、ドーナツ状に掘りこんだ部分に囲まれた柱状部分122の上部の窒化珪素マスクを除去し、ウェットエッチングを行った。これにより柱状の部分表面から食刻されて角が取れ、裏面InPレンズであるモノリシック集積レンズ112が形成された(
図2K)。なお、モノリシック集積レンズ112の表面は、後の工程で、反射防止膜111で覆われる。この時、反射防止膜111はレンズ面上だけでなく、後方モノリシック集積ミラーにより、基板方向へ放射される残存透過光の放射面に延在して形成した。
【0037】
本実施例のレーザは以上の工程により全てのレーザ作製プロセスが完了する。続いて、ウェハ状態のまま、p型電極103とn型電極105に針プローバを接触さて通電し、各レーザの初期特性をチェックした。その後、所望の特性を満たすレーザ素子をダイシングにより切り出し、チップ化した。
【0038】
以上の工程により作製された水平共振器面出射型レーザ素子100のレーザの発振特性を評価したところ、室温での発振しきい電流は7mA、スロープ効率は0.3W/Aであり、副モード抑圧比40dB以上の良好な単一波長発振を得た。また、電流光出力特性及び発振スペクトルにはDBRミラー部107からの残存反射に依存した特性劣化は見られず、ヘキ開端面に高反射な誘電体膜を形成した場合と同等な特性が得られた。このことから本発明の高反射構造と反射防止構造が効果的に機能していることが確認できた。
【0039】
本実施例では、レンズの直径は120μmとし、レンズの曲率は0.004μm−1とした。また、レンズ表面から発光点までの距離は160μmとした。この設計により、レーザ光はレンズ表面から約100μmの位置に集光する。この時、レーザ光のファーフィールドパターン(FFP)は共振器垂直方向、水平方向共に半地全幅で約13°であり、前記集光位置での光スポットサイズは直径約40μmであった。
【0040】
このレーザアレイとコア系50μmのグレーデッドインデックス(GI)マルチモードファイバ(MMF:Multi Mode Fiber)を用いて光結合実験を実施した結果、光の集光位置へMMFを配置することで結合損失0.3dB以下の低損失な光結合を得ることができた。また、短共振器構造を反映した良好な高速特性を示し、85℃において、バイアス電流60mA、振幅電流40mApp、の駆動条件で25Gbpsの動作を実現した。以上のように、本発明を適用することで、低コストな次世代光通信向けの高速動作レーザを作製することができた。
【0041】
なお、本実施例ではInP基板上に形成された波長帯1.3μmのInGaAlAs量子井戸型レーザに適用した例を示したが、基板材料や活性層材料、そして発振波長はこの例に限定されるものではない。本発明は例えば1.55μm帯InGaAsPレーザ等のその他の材料系にも同様に適用可能である。
【0042】
また、以上においては、リッジ構造の実施例を示したが、本発明は、埋め込みヘテロ型構造(BH構造)にも適用が可能である。また、本素子は、作製工程で隣接素子間に電気分離溝を形成している。このため、チップ化の際にアレイ上に切り出すことで、アレイ素子とすることも可能である。
【実施例2】
【0043】
本発明の実施例2に係る1.3μm波長帯の短共振器型の水平共振器面出射型レーザ素子200の構造を
図3A及び
図3Bを用いて説明する。
図3Aは水平共振器面出射型レーザ素子200の平面図であり、
図3Bは、
図3AのIII−III線における光軸方向断面図である。水平共振器面出射型レーザ素子200の基本的な構造は、リッジ型導波路構造を有するDFBレーザである。本実施例の水平共振器面出射型レーザ素子200は、DFB共振器となる活性層の両端にDBRミラー部107及び207がバットジョイント集積されており、DBRミラー部107及び207のそれぞれ後方及び前方に、後方モノリシック集積ミラー101及び前方モノリシック集積ミラー104が配置されていることを特徴とする。
【0044】
以下、
図3A及び3Bを用いて構造を詳述する。レーザ部分はn型InP基板110上にInGaAlAs活性層108とp型InPクラッド層117が積層され、InGaAsAl活性層108の直下には回折格子109が集積されている。回折格子109は室温での発振波が1300nmとなるようにピッチを設計した。なお、本実施例ではλ/4シフト型の回折格子109を用いたが、均一回折格子や、回折格子109が光軸方向に変化する回折格子109でもよい。また、InGaAsAl活性層108の前方にはパッシブ導波路層127及びDBR層125からなるDBRミラー部207がバットジョイント集積され、後方にはDBRミラー部107がバットジョイント集積されている。なお、InGaAlAs活性層108部分とその前後のDBRミラー部107及び207はそれらの実効的な伝搬定数が同じになるようにそれぞれの実行屈折率を調整している。
【0045】
図示していないが、これらの積層構造がリッジ型導波路構造へ加工されている。リッジ形成工程は実施例1と同様である。また、実施例1と同様にリッジ形成と同時にn型電極が形成される領域のp型InPクラッド層117を除去し、ミラー形成部のコンタクト層115除去同時にn型電極コンタクト層106を形成した。そして、素子の表面に、p型電極103とn型電極105が形成されたフリップチップ構造とした。
【0046】
また、基板裏面の光出射部にはn型InP基板110をエッチングして、モノリシック集積レンズ112が形成されており、モノリシック集積レンズ112表面から基板表面の後方モノリシック集積ミラー101直上まで例えばAlOxからなる反射防止膜111が積層されている。本実施例においては、DFBの共振器長は70μmとし、回折格子の結合係数は100cm−1としているが、これら以外の値を用いてもよい。また、InGaAlAs活性層108前方のDBRミラー部207の長さは30μm、後方のDBRミラー部107の長さは100μmとし、それぞれ、波長1300nmに対する反射率が70%、98%とした。また、チップの全長は700μmとした。しかしながら、寸法及び係数は、上述の値に限られるものではなく、要求や性能に合わせて適宜変更することができる。
【0047】
本実施例のレーザは実施例1と同様に、全てのレーザ作製工程がウェハプロセスで完了し、ウェハレベルで初期選別検査を実施することができた。つづいて、良好な初期特性を示した素子をダイシングによりチップ化し、コプレーナ型の高周波線路を有するAlNサブマウントにジャンクションダウンでフリップチップ実装した。この形態で、水平共振器面出射型レーザ素子200の直流電流特性を評価したところ、室温でしきい電流が5mA、スロープ効率が0.35W/Aの良好な発振特性を得た。また、波長1300nmで良好な単一波長発振した。また、4/λシフト構造を反映してブラッグ波長で発振した。これらの特性において、後方または前方DBRからの残存反射に依存した特性劣化は観察されなかった。次にこのレーザの高周波特性を測定したところ、室温での変調帯域がバイアス電流40mAの低電流で室温での変調帯域が30GHzと短共振器構造を反映した、広い帯域を得ることができた。以上のように、本発明を適用することで、次世代の高速光源として好適な高速素子を低コストで作製することができた。
【実施例3】
【0048】
本発明の実施例3に係る1.3μm波長帯の短共振器型の水平共振器面出射型レーザ素子300の構造を
図4A及び
図4Bを用いて説明する。
図4Aは水平共振器面出射型レーザ素子300の平面図であり、
図4Bは、
図4AのIV−IV線における光軸方向断面図である。水平共振器面出射型レーザ素子300の基本的な構造は、実施例1と同様である。DBRミラー部107の後方に曲げ導波路を配置している点が実施例1と異なる。以下にその構造と効果を
図4A及び4Bを用いて詳述する。これらの図に示すように、レーザ部分はn型InP基板110上にInGaAsAl活性層108とp型InPクラッド層117が積層され、InGaAsAl活性層108の直上には回折格子109が集積されている。回折格子109は室温での発振波が1300nmとなるようにピッチを設計した。なお、本実施例ではλ/4シフト型の回折格子109を用いたが、均一回折格子や、回折格子が光軸方向に変化する回折格子109でもよい。また、InGaAlAs活性層108の後方にはパッシブ導波路層127とDBR層125からなるDBRミラー部107がバットジョイント集積されている。なお、InGaAlAs活性層108部分とその後方のDBRミラー部107は全て、実施例1と同じ設計である。そして、DBRミラー部107は曲げ導波路301がバットジョイント集積されている。この時、曲げ導波路301の実効的な伝搬定数はInGaAlAs活性層108、及びDBRミラー部107に近い値となるように設計した。また、曲げ導波路の週端にはp型InPクラッド層117からなる窓構造が形成されている。
【0049】
図示していないが、これらの積層構造がリッジ型導波路構造へ加工されている。リッジ形成工程は実施例1と全く同様である。また、実施例1と同様にリッジ形成と同時にn型電極が形成される領域のp型InPクラッド層117を除去し、ミラー形成部のコンタクト層115除去同時にn型電極コンタクト層106を形成した。そして、素子の表面に、p型電極103とn型電極105が形成されたフリップチップ構造とした。また、基板裏面の光出射部にはn型InP基板110をエッチングして、モノリシック集積レンズ112が形成されており、モノリシック集積レンズ112表面には反射防止膜111を積層した。
【0050】
本水平共振器面出射型レーザ素子300では、DBRミラー部107端へ透過するレーザ光の一部は曲げ導波路によって、チップの外側へ逃がし、残留反射成分を除去している。従って、本水平共振器面出射型レーザ素子300においても、レーザ作製工程はウェハプロセスで完了させることができた。ウェハプロセスと、ウェハ状態にて初期特性を評価し、良好な素子を実施例1と同様に評価したところ、実施例1と同じレーザ特性を得ることができ、本発明の第2の構造がウェハレベル検査に対応した、高速低コスト光源として好適であることを示した。
【実施例5】
【0054】
本発明の実施例5に係る小型光モジュール500について
図6A及び
図6Bを用いて説明する。
図6Aは小型光モジュール500の鳥瞰図であり、
図6Bは小型光モジュール500の側面図である。本実施例のモジュールはストリップ線路を有する多層配線セラミック基板504上に、実施例1の水平共振器面出射型レーザ素子100を1次元の4チャンネルアレイ状に切り出した多波長水平共振器面出射レーザチップ502とレーザを駆動するための集積回路505が金バンプ508によって電気的接続を取りながら実装されている。多波長水平共振器面出射レーザチップ502の上方にはコネクタ支柱503によって、ファイバアレイコネクタ501が最適な光結合を有する位置に実装されている。ファイバアレイコネクタ501には4本のMMFが90°曲げられて実装されており、ファイバ受光面とレーザチップの光出射面が最適な光結合を有する位置に実装されている。
【0055】
この小型光モジュール500を用いることによって、チャンネル当り25Gbps、合計100Gbpsの信号を波長多重し伝送することができた。以上により、本発明を適用したレーザアレイを用いることで、ルータ装置内用として好適な小型かつ低コストな多チャンネル光モジュールを作製できた。
【0056】
以上説明したように、上述の各実施例における水平共振器面出射型レーザ素子によれば、従来ヘキ開端面に形成していた誘電体膜で提供していた高反射構造または反射防止構造をウェハプロセスで集積可能である。従って、レーザ作製工程がウェハプロセスのみで閉じ、ウェハレベル検査が可能となる。また、ヘキ開面を利用しないことから、精密なヘキ開工程が不要となり、ダイシングでチップ化が可能となる。これによって、発光点からレンズまでの距離に相当するチップの厚さを自由に設計可能となり、レンズ設計の自由度が大幅に上がるという新たな効果が得られる。また、端面に高反射あるいは反射防止の膜を形成する場合、これらの膜剥がれが信頼性劣化要因の一つとして懸念される。しかし、本発明では端面膜を必要としないため、このような劣化要因を除去することができる。以上のように、本発明を用いることで、ウェアを切断する前のウェハレベル検査が可能な水平共振器垂直出射レーザ素子を提供できる。したがって、本実施形態に係る水平共振器面出射型レーザ素子は、検査コストを抑えると共に、十分な出力特性を備えることができる。
【0057】
また、先述のように、水平共振器面出射型レーザ素子は、水平共振器端面出射レーザの出射端面に光路変換ミラーを配して面出射化している。従って、本発明の、高反射構造または反射防止構造と光路変換ミラーを用いると、原理的には全ての水平共振器端面出射レーザをウェハレベル検査対応可能にすることができる。
【0058】
また、上述の水平共振器面出射型レーザ素子における水平共振器には、波長可変部を備える波長可変型水平共振器その他の水平共振器を用いることができる。