特許第6247945号(P6247945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247945
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/04 20060101AFI20171204BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20171204BHJP
   A01D 34/835 20060101ALI20171204BHJP
   A01D 34/76 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A01M21/04 Z
   A01D34/78 Z
   A01D34/835
   A01D34/76 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-15744(P2014-15744)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-139430(P2015-139430A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沓名 知之
(72)【発明者】
【氏名】川嶌 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博紀
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05806294(US,A)
【文献】 特許第3606071(JP,B2)
【文献】 特開2003−250421(JP,A)
【文献】 特許第3000191(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/18
A01D 34/412−34/90
A01M 21/00 −21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面から雑草を刈る作業の際に駆動源により回転駆動される回転体と、
前記回転体に取り付けられ、前記回転体とともに回転するマグネットと、
前記回転体と近接して設けられ、前記回転体とともに回転する前記マグネットが近接して通過する際に、雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧を発生するコイルと、
を有し、
前記コイルにより発生される高電圧を、前記地面から生える草に対して印加し、
前記コイルにおいて雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧より高い所定のリミット電圧が発生した場合に前記コイルの両端を短絡する短絡回路を有する、
作業機。
【請求項2】
操作棹と、
前記操作棹の先端に固定され、前記回転体を回転可能に軸支する台座部材と、
前記回転体に取り付けられる回転刈刃を前記コイルの一端と電気的に接続する第1通電部材と、
を有する、
請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記操作棹に取り付けられる刈刃カバー、前記操作棹に取り付けられるチェーン、および前記回転刈刃を地面から浮かせるために前記回転体の下側に取り付けられるカップリング部材の中の少なくとも1つの部材と、
前記少なくとも1つの部材に取り付けられ、前記コイルの他端と電気的に接続される第2通電部材と、
を有する、
請求項2記載の作業機。
【請求項4】
前記駆動源から前記回転体までの駆動力の伝達経路に設けられるクラッチと、
前記クラッチを操作するための作業者の操作レバーと、
を有し、
前記回転体は、前記操作レバーが操作されて前記クラッチが接続された場合に前記駆動源により回転駆動される、
請求項2または3記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
雑草に高電圧パルスを放電することにより雑草の根または茎の細胞膜を破壊し、これにより雑草を除去できることが知られている(非特許文献1)。
そして、特許文献1では、バッテリの蓄電電圧から高電圧を生成し、生成した高電圧を電極棒から地面に生える草に印加する雑草除去装置を開示する。また、特許文献2は、長尺の支持部の後端に設けられてにぎり部に固定された本体部に高電圧発生装置を設け、この高電圧発生装置に接続した正負の電極を支持部の先端において互いに離して設け、これらの電極を雑草などに当てることにより、雑草に対して高電圧を印加する雑草駆除装置を開示する。これらの装置を用いて雑草に対して高電圧を印加することにより、雑草の根を破壊でき、雑草が長期にわたり生え難くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−022672号公報
【特許文献2】特開2001−258460号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】名倉章雄他4名、高電圧パルス放電による雑草等の除去、静電気学会誌、日本国、静電気学会、1992年、第16巻、第1号、第59〜66頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に雑草が茂っている地面から雑草を除去する作業において、特許文献1、2にあるような雑草を除去するための専用の装置を用いる場合、作業者は、先ず、地面に茂っている雑草の葉を刈払機などの作業機で刈り、その後に、特許文献1、2にあるような専用の装置を用いて個々の雑草に電圧を印加しなければならない。このように地面に対する作業が二度手間になるため、作業者の手間が増え、作業時間が長くなってしまう。
【0006】
このように、雑草の除去作業では、作業者の負担を増やすことなく雑草を長期にわたり生え難くことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業機は、地面から雑草を刈る作業の際に駆動源により回転駆動される回転体と、回転体に取り付けられ、回転体とともに回転するマグネットと、回転体と近接して設けられ、回転体とともに回転するマグネットが近接して通過する際に雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧を発生するコイルと、を有し、コイルにより発生される高電圧を、地面から生える草に対して印加し、コイルにおいて雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧より高い所定のリミット電圧が発生した場合にコイルの両端を短絡する短絡回路を有する。
【0008】
好適には、操作棹と、操作棹の先端に固定され、回転体を回転可能に軸支する台座部材と、回転体に取り付けられる回転刈刃をコイルの一端と電気的に接続する第1通電部材と、を有するとよい。
【0009】
好適には、操作棹に取り付けられる刈刃カバー、操作棹に取り付けられるチェーン、および回転刈刃を地面から浮かせるために回転体の下側に取り付けられるカップリング部材の中の少なくとも1つの部材と、該少なくとも1つの部材に取り付けられ、コイルの他端と電気的に接続される第2通電部材と、を有するとよい。
【0010】
好適には、駆動源から回転体までの駆動力の伝達経路に設けられるクラッチと、クラッチを操作するための作業者の操作レバーと、を有し、回転体は、操作レバーが操作されてクラッチが接続された場合に駆動源により回転駆動される、とよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、地面から雑草を刈る作業の際に、その作業に用いる作業機において雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧を発生して雑草に印加するので、作業者は、作業機を用いて雑草を刈る作業をするだけで雑草に対して高電圧を印加できる。その結果、本発明では、作業者の負担を増やすことなく、雑草を長期にわたり生え難くことができる。
また、本発明では、地面から雑草を刈る作業の際に駆動源により回転駆動される回転体が回転することにより、回転体に取り付けられたマグネットとコイルとにより電磁誘導を起こして高電圧を発生している。よって、雑草の細胞膜を破壊するための高電圧を生成するための電源が不要であり、高電圧を発生するために作業機にバッテリを設けたり、作業機に電源ケーブルを接続したりする必要がない。また、作業機に対して高電圧発生機能を追加しているにもかかわらず、作業機の大型化を招かないようにできる。
しかも、回転体は、地面から雑草を除去する作業の際に駆動源により回転駆動されるものであるから、作業をしない場合には回転体が停止し、高電圧が発生しないようになっている。よって、回転体を停止させた状態での刈刃の交換作業などにおいて、不用意に高電圧が生成されないようにできる。
さらに、作業機で高電圧を発生させるため、定置式の高電圧発生装置が不要となる。これによれば、定置式の高電圧発生装置と作業機とを接続する電線が不要となり、作業範囲の制限が無くなる。したがって、高圧発生装置の移動作業などの作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る刈払機の斜視図である。
図2図2は、図1の刈払機の使用状態の説明図である。
図3図3は、高電圧発生装置の概略構成図である。
図4図4は、高電圧発生回路が組み込まれて一体化された刈払機の模式的な説明図である。
図5図5は、図4の工具装着部の縦断面図である。
図6図6は、図4の工具装着部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態の実施形態に係る作業機を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る刈払機1の斜視図である。刈払機1は、地面に生えた雑草などを刈り取る作業機であり、携帯作業機の一例である。以下、図1を基準に、前後左右上下を使用する。
図2は、図1の刈払機1の使用状態の説明図である。図2には、刈払機1とともに、作業者Mが図示されている。
図1の刈払機1は、たとえば、雑草の刈払作業に用いる図2の回転刈刃2が装着される工具装着部3と、前記回転刈刃2を回転駆動する駆動源としてのエンジンモジュール4と、工具装着部3およびエンジンモジュール4が固定される操作棹5と、操作棹5に固定される固定部6と、操作棹5に固定されるエンジンモジュール4と固定部6との間に挟持される防振ハウジング7と、操作棹5に固定されるハンドル8、を有する。
【0016】
操作棹5は、たとえば長尺なパイプ部材で形成される。操作棹5は、複数のパイプ部材を連結してなる分割構造でもよい。
操作棹5の前側である長尺方向の先端には、工具装着部3が設けられる。工具装着部3は、たとえば操作棹5の先端に取り付けて固定される台座部材11と、台座部材11に回転可能に取り付けられる回転体12と、を有する。図2に示すように、回転体12には、雑草を切断するための回転刈刃2が取り外し可能に装着される。回転体12は、操作棹5の先端を斜め下へ向けた状態で回転刈刃2が地面と略平行な水平面内で回転できるように、操作棹5の長尺方向に対して上下方向で交差する回転軸の周りで回転可能とされる。
また、操作棹5の先端近くには、刈刃カバー9が取り付けられる。刈刃カバー9により回転刈刃2の後側を覆うことで、回転刈刃2に当たった石などの飛散物から作業者Mを保護できる。
操作棹5の後側である長尺方向の後端には、エンジンモジュール4が取り付けられる。エンジンモジュール4は、後述する図4に示すように駆動源としてのエンジン本体21と、駆動源を接離するクラッチ22と、これらのエンジン部品を覆うカバー部材23と、を有する。
パイプ状の操作棹5内には、後述する図4および図5に示すように、駆動力を伝達するためのドライブシャフト31が配置される。ドライブシャフト31は、クラッチ22と回転体12との間を連結する。そして、クラッチ22が接続されている場合、ドライブシャフト31は、エンジン本体21の回転駆動力を回転体12へ伝達する。これにより、回転体12が回転駆動される。また、クラッチ22が離れている場合、ドライブシャフト31および回転体12は回転駆動されず、回転体12は、停止する。
【0017】
操作棹5の長尺方向の中央部には、固定部6が取り付けられる。
防振ハウジング7は、たとえば絶縁性の樹脂材料からなり、中空の円筒形状を有する。防振ハウジング7は、操作棹5を通した状態で、図示外の弾性部材とともにエンジンモジュール4と固定部6との間に挟まれる。このように防振ハウジング7を操作棹5から浮かした状態で取り付けることにより、エンジン本体21の振動が操作棹5を通じて防振ハウジング7に伝わり難くなる。
ハンドル8は、たとえば、U字形状のハンドルバー8Aと、絶縁性の樹脂材料からなるグリップ8Bと、を有する。U字形状のハンドルバー8Aは、たとえばそのU字底部が防振ハウジング7に取り付けられる。U字形状のハンドルバー8Aの両端には、グリップ8Bが取り付けられる。グリップ8Bの周囲には、たとえばクラッチ22を接離操作するための操作レバー41、スイッチなどの、作業者Mが操作する部材が配置される。
【0018】
そして、図2に示すように、刈払機1の防振ハウジング7の外周には、ハンガ51が取り付けられる。ハンガ51は、吊り具61のフック62と連結される。作業者Mは、吊り具61を装着することにより、刈払機1を肩から吊り下げて携帯できる。
刈刃作業を実施する場合、作業者Mは、図2に示すように、刈払機1を肩から吊り下げ、防振ハウジング7を腰に当てた状態でハンドル8を両手で持つ。そして、作業者Mは、回転刈刃2が地面から少し浮いた状態となるようにハンドル8を保持し、操作レバー41を操作して回転刈刃2を回転させ、刈払機1をたとえば左右に振りながら前進する。これにより、作業者Mの前方の地面に生えている草を刈り取ることができる。
【0019】
このように、図1の刈払機1を用いることにより作業者Mは雑草が生える地面から雑草を刈り取ることができる。しかしながら、地面の上に伸びている雑草の葉や茎を刈払機1で刈り取ったとしても、雑草の根が生きているため、雑草がすぐに伸びてしまう。このため、刈払機1のみで雑草を除去する場合、雑草を頻繁に刈り取らなければならない。
【0020】
そこで、雑草の根を破壊する高電圧発生装置101を使用することが考えられる。図3は、高電圧発生装置101の概略構成図である。図3の高電圧発生装置101は、電源部102、プラス電極棒103、アース電極棒104、およびこれらを接続する配線105、を有する。電源部102は、バッテリなどを有し、雑草の根を枯らすことができる高電圧を発生する。
そして、作業者Mは、アース電極棒104を地面Sに刺し、その近くで地面Sから生えている雑草Gにプラス電極棒103を当てる。これにより、電源部102、プラス電極棒103、雑草G、地面S、およびアース電極棒104による閉じた電流路が形成され、図3に点線で示す電流が雑草Gの根および茎に流して流れ、雑草Gの根および茎の細胞膜を破壊できる。根が破壊された雑草Gは、成長し難くなり、高電圧を印加した数日後に枯れる。作業者Mは、刈払機1により葉を刈った後、高電圧発生装置101を用いて雑草Gに高電圧を印加することにより、雑草Gが長期にわたり生え難くできる。また、雑草Gとともに地面Sに高電圧を印加するので、地面Sの土が除菌され、その後に植えた作物の育ちが良くなる。
しかしながら、この場合、作業者Mは、地面Sに対して、刈払作業と電圧印加作業とを実施しなければならない。作業者Mによる地面Sに対する作業は二度手間になり、作業時間も長くなってしまう。
このように、雑草Gの除去作業では、作業者Mの負担を増やすことなく雑草Gを長期にわたり生え難くできるようにすることが求められている。
【0021】
図4は、高電圧発生回路が組み込まれて一体化された刈払機1の模式的な説明図である。
図5は、図4の工具装着部3の縦断面図である。
図6は、図4の工具装着部3の上面図である。
図4から図6に示すように、刈払機1において、工具装着部3の回転体12は、台座部材11側である上側の上部回転体71と、上部回転体71の下側に設けられる下部回転体72とを有し、回転体12の全体が略円柱形状に形成される。そして、下部回転体72が絶縁材料からなるため、金属製の回転刈刃2を台座部材11および操作棹5から絶縁できる。
また、雑草の根の細胞膜を破壊する高電圧を発生するための高電圧発生回路は、コイル73と、コイル73に高電圧を発生させるマグネット74と、コイル73の高電圧を雑草に印加するための第1通電部材75および第2通電板76と、これらを接続する配線77と、を有する。
【0022】
マグネット74は、電磁誘導により雑草の根の細胞膜を破壊する高電圧をコイル73に発生させる永久磁石である。マグネット74は、図5に示すように上部回転体71に埋設される。マグネット74は、上部回転体71の外周面の一部に設けられる。これにより、マグネット74は、回転体12とともに回転できる。なお、上部回転体71には、複数のマグネット74が上部回転体71の周方向に並べて複数埋設されてよい。
【0023】
コイル73は、図5に示すようにマグネット74の軌道と近接するように上部回転体71の外周面と近接して離間する位置に設けられる。そして、回転体12とともに回転するマグネット74がコイル73の近くを通過する際、コイル73に電流が誘導され、これによりコイル73に高電圧が発生する。
【0024】
なお、コイル73が発生する電圧は、たとえば数ミリメートルから数センチメートルの太さになった雑草の茎や根の細胞膜を破壊することができる電圧とすればよい。このような電圧としては、たとえば1kV以上から50kV以下の高電圧であればよく、好ましくは10kV以上、30kV以下の高電圧であればよい。
1kV以下では、雑草などの細胞膜を破壊する能力が低下し、一般的な雑草などの細胞膜を破壊するためには10kV以上の電圧であることが望ましいためである。
また、30kV以上の高電圧を発生させるには特別な点火器が必要となり、50kV以上の高電圧を上記した作業機で発生させるのは著しく困難であるためである。
このような高電圧を発生するマグネット74およびコイル73としては、たとえば刈払機1などの作業機においてエンジンの点火電圧を発生するために使用されているマグネットおよびコイルがある。本実施形態では、これら点火電圧生成用のマグネットおよびコイルを流用している。この場合、回転体12が数千回転以上の高速で回転することにより、コイルに所望の電磁誘導が起き、所望の高電圧を得ることかできる。また、数百回転以下の低速回転時でもコイルに電磁誘導が起き得るが、高電圧にはならない。回転体12を停止した状態での回転刈刃2の交換作業中に、回転体12が少し回転したとしても、作業者Mに高電圧が印加されることはない。
【0025】
第1通電部材75は、図4に示すようにコイル73の巻線の一端に、配線77により電気的に接続される。第1通電部材75はたとえば導電性材料で形成されたブラシ形状を有し、図5に示すようにこのブラシ形状の先端が金属の回転刈刃2と擦接する。そして、金属製の回転刈刃2は下部回転体72に取り付けられる。したがって、コイル73の巻線の一端は、第1通電部材75を通じて、地面から生える雑草を刈る回転刈刃2と電気的に接続される。
また、コイル73および第1通電部材75は、図4に示すように高電圧発生モジュール78として一体化され、図5に示すように工具装着部3の台座部材11の突出部の下側に取り付けられる。これにより、コイル73および第1通電部材75を防水構造にできる。また、高電圧発生モジュール78として回転可能な上部回転体71と微小間隔で離間する位置にコイル73を配置できるので、コイル73とマグネット74との間隔を狭めて、コイル73に所望の高電圧を発生させることができる。また、ブラシ形状の第1通電部材75は、回転する金属の回転刈刃2と常に擦接できる。
【0026】
第2通電板76は、図5に示すように回転体12および回転刈刃2の後方位置に離間して設けられる刈刃カバー9の前面に設けられる。第2通電板76は、図6に示すように刈刃カバー9の前面において全体的に設けられる。また、第2通電板76は、刈刃カバー9の下端から下方へ突出している。このため、第2通電板76は、刈り取られた雑草の茎や地面と接触し易くなっている。第2通電板76は、作業中において略常に刈り取られた雑草の茎または地面と接触し得るようになっている。
また、第2通電板76は、図4に示すようにコイル73の巻線の他端と接続される。したがって、コイル73の巻線の他端は、配線77により、刈刃カバー9の前面に設けた第2通電板76と電気的に接続される。
【0027】
また、図4に示すように刈刃カバー9の前面に設けた第2通電板76は、回転刈刃2と所定の間隔(AIR GAP)で離間して配置される。よって、コイル73において雑草を除去することができる高電圧より高い所定のリミット電圧が発生した場合、この第2通電板76と回転刈刃2との間の空気が絶縁破壊され、第2通電板76と回転刈刃2との間に電流が流れる。すなわち、所定の間隔(AIR GAP)で離間する第2通電板76と回転刈刃2とは、コイル73の両端を短絡する短絡回路として機能し得る。これにより、たとえば回転刈刃2が雑草などのいずれにも接触していない状況下において、コイル73にリミット電圧以上の異常な高電圧が生成されないようにできる。
【0028】
次に、図4の高電圧発生回路の動作について説明する。
地面に生える雑草を刈るために、作業者Mは、刈払機1のエンジン本体21をスタートさせ、図2に示すように刈払機1を携帯し、操作レバー41を操作する。これにより、クラッチ22が接続され、エンジン本体21の駆動力によりドライブシャフト31、回転体12および回転刈刃2が回転し始める。この状態で、作業者Mは、回転している回転刈刃2を雑草の茎に当てて茎を切断する。そして、刈払作業が終了すると、作業者Mは、操作レバー41から手を離し、刈払機1を下ろす。
回転刈刃2を回転させるこの刈払作業中において、マグネット74は回転体12とともに回転する。高速に回転するマグネット74が近くを通過すると、コイル73には誘導電流による高電圧が生成される。コイル73に発生した誘導電圧は、導電性の回転刈刃2と、刈刃カバー9の前面に設けられた導電性の第2通電板76との間に印加される。
そして、たとえば刈刃カバー9の前面の第2通電板76が地面に接した状態で回転刈刃2が雑草の茎に当たると、回転刈刃2と第2通電板76との間に、図3に点線で示す電流路と同様に、雑草および地面による電流路が形成される。コイル73により発生される高電圧は刈り取られる草に印加され、刈り取られる雑草の根に電流が流れる。
【0029】
なお、雑草の根には電解質が含まれるため、回転刈刃2から雑草に流れる電流は、地表面よりも雑草の根に流れ易い。また、第2通電板76が刈り取られた他の雑草に当たっている場合には、刈り取られる雑草の根と刈り取られた他の雑草の根との間に電流が流れ、刈り取られた他の雑草の根に対しても高電圧による電流を流すことができる。その結果、本実施形態ではコイル73の近くをマグネット74が通過するタイミングにおいて間欠的にパルス状の高電圧を生成し、その間欠的なパルス状の高電圧を雑草に印加しているが、高電圧が生成されない期間において刈り取られた雑草に対しても高電圧を印加することができる。雑草がまんべんなく生え難くすることができる効果を期待できる。
高電圧の電流が流れることにより、雑草の根の細胞膜が破壊される。刈り取られた雑草は、茎および根の細胞膜が破壊されることにより、茎が倒れ、根が殺される。
【0030】
また、作業者Mは、刈払作業をしないときには、基本的に操作レバー41を操作しない。たとえば回転刈刃2を交換する場合には、操作レバー41を操作しない。よって、刈払作業中以外において回転体12が回転駆動されることはなく、回転刈刃2と第2通電板76との間に高電圧が印加されることはない。作業者Mは、安全に回転刈刃2を交換できる。
【0031】
以上のように、本実施形態では、刈払機1に高電圧発生機能を設けているので、地面から雑草を刈る作業の際に、その作業に用いる刈払機1において雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧を発生して雑草に印加することができる。よって、作業者Mは、刈払機1を用いて雑草を刈る作業をするだけで雑草に対して高電圧を印加できる。その結果、本実施形態では、作業者Mの負担を増やすことなく、雑草を長期にわたり生え難くことができる。
また、本実施形態では、地面から雑草を刈る作業の際に駆動源により回転駆動される回転体12が回転することにより、回転体12に取り付けられたマグネット74とコイル73とにより電磁誘導を起こして高電圧を発生している。よって、雑草の細胞膜を破壊するための高電圧を生成するための電源が不要であり、高電圧を発生するために刈払機1にバッテリを設けたり、刈払機1に電源ケーブルを接続したりする必要がない。また、刈払機1に対して高電圧発生機能を追加しているにもかかわらず、刈払機1の大型化を招かないようにできる。
しかも、回転体12は、地面から雑草を刈る作業の際に駆動源により回転駆動されるものであるから、作業をしない場合には回転体12が停止し、高電圧が発生しないようになっている。よって、回転体12を停止させた状態での回転刈刃2の交換作業などにおいて、不用意に高電圧が生成されないようにできる。
【0032】
また、本実施形態では、操作棹5の先端において台座部材11に回転可能に取り付けられ、雑草を刈るための回転刈刃2が取り付けられる回転体12を、マグネット74を取り付ける回転体12として利用している。雑草を刈るための刈払機1の構成を変更することなく、操作棹5の先端部分にマグネット74およびコイル73を設けるだけで、刈払機1に高電圧印加機能を付加することができる。また、回転刈刃2を取り付ける回転体12を、マグネット74を取り付けるための回転体12として共通化しているので、刈払機1に高電圧印加機能を追加するための部品数の増加を抑制できる。
しかも、回転刈刃2が第1通電部材75によりコイル73の一端と電気的に接続されているので、回転刈刃2が刈り取る草に対して、刈り取りの際に高電圧を印加できる。回転刈刃2とは別に電圧を印加する端子を設ける場合には、その端子を刈り取った草に当てるための操作が必要になるが、そのような手間を増やすことなく、刈り取る雑草に対して効率よく高電圧を印加できる。
【0033】
また、本実施形態では、刈払機1で用いられる刈刃カバー9に、地面に生える雑草に対して電圧を印加するための第2通電板76を設けている。よって、第2通電板76を安定的に地面などに接地させることができる。また、刈払機1に既存の刈刃カバー9を第2通電部材として利用しているので、刈払機1に高電圧印加機能を追加するための部品数の増加を抑制できる。
【0034】
また、本実施形態では、回転体12は、作業者Mが作業レバーを操作して刈払機1を用いた雑草の刈払作業を実施する場合にのみ回転駆動されるようになる。それ以外の場合には、回転体12は回転駆動されない。よって、たとえば図4の回転刈刃2、第1通電部材75、コイル73、第2通電板76を含む雑草との閉じた電流路にスイッチなどを設けることなく、刈払機1を用いた雑草の除去作業を実施する場合にのみ高電圧を発生するようにできる。しかも、該スイッチを設ける場合には、そのスイッチの配線105を刈払機1のたとえば操作棹5を通してハンドル8まで引き回す必要があるが、本実施形態では必要ない。このような配線の長さによる電圧ドロップを最小限に抑え、刈払機1の構造の複雑化を抑制し、しかも操作スイッチの操作などの作業者Mの負担増加を軽減できる。
【0035】
また、本実施形態では、雑草の細胞膜を破壊することができる高電圧より高い所定のリミット電圧がコイル73に発生した場合、所定の間隔(AIR GAP)で離間する回転刈刃2と刈刃カバー9の第2通電板76との間の短絡回路により、コイル73の両端が短絡される。よって、通電がなされないまま回転体12が回転し続け、その結果としてコイル73において不要に高い高電圧が生成されてしまうような状況においても、コイル73にそのように不要に高い電圧が発生されないようにできる。
【0036】
以上の実施形態は、本実施形態の好適な実施形態の例であるが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0037】
たとえば上記実施形態では、高電圧を発生するためのマグネット74およびコイル73は、操作棹5の先端に回転可能に設けられる回転体12に対して設けられている。
この他にもたとえば、高電圧を発生するためのマグネット74およびコイル73は、操作棹5の後側においてクラッチ22、エンジン本体21で回転するフライホイールなどに対して設けられてもよい。ただし、この場合、コイル73と第1通電部材75(回転刈刃2)および第2通電板76とを電気的に接続するための配線を操作棹5の長尺方向に沿って設ける必要がある。分割可能な操作棹5の場合、その分割部分にコネクタなどを配置しなければならない。
【0038】
上記実施形態では、コイル73の一端には、ブラシ形状の第1通電部材75が接続され、この第1通電部材75を介して導電性の回転刈刃2が電気的に接続されている。
この他にもたとえば、第1通電部材75が回転刈刃2より下へ突出し、第1通電部材75が地面または雑草と直接に当たるようにしてもよい。
【0039】
上記実施形態では、コイル73の他端と電気的に接続される第2通電板76は、刈刃カバー9の前面に設けられている。
この他にもたとえば、図4において点線で示すように、回転刈刃2を地面から浮かせた状態に保持しやすくするために、回転体12の下部回転体72の下側にカップリング部材81を設け、このカップリング部材81に対して第2通電部材を設けてもよい。この場合、第2通電部材は、地面と接した状態で地面の上をすべることができる。
また、刈刃カバー9の換わりに、操作棹5からチェーンを垂れ下げ、この地面に接するチェーンに対して第2通電部材を設けてもよい。
また、第2通電部材は、刈刃カバー9、カップリング部材81およびチェーンに設けられてもよい。
【0040】
上記実施形態では、第2通電板76と回転刈刃2とを、コイル73の両端を短絡する短絡回路として機能させている。この他にもたとえば、図4の第1通電部材75および第2通電板76と並列に短絡回路を接続し、この短絡回路のリミット電圧で短絡させてもよい。短絡回路は、たとえば所定のエアギャップで対向する一対の電極部材で構成できる。この場合には、回転刈刃2と刈刃カバー9の第2通電板76との間隔は、リミット電圧で短絡する間隔とする必要が無くなるので、たとえば間隔を広げて物が詰まり難くできる。
【0041】
上記実施形態は、本実施形態を携帯式の刈払機1に適用した例である。この他にもたとえば、本実施形態は、携帯式のブロワ、自走式の刈払機などの他の作業機に適用してもよい。また、駆動源は、電動モータなどでもよい。電動モータは、バッテリに接続されても、商用交流電源に接続されてもよい。この場合、回転体12は、モータの回転子に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 刈払機(作業機)、2 回転刈刃(短絡回路)、5 操作棹、9 刈刃カバー、11 台座部材、12 回転体、21 エンジン本体(駆動源)、22 クラッチ、41 操作レバー、73 コイル、74 マグネット、75 第1通電部材、76 第2通電板(第2通電部材、短絡回路)、81 カップリング部材、AIR GAP 所定の間隔、G 雑草、M 作業者、S 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6