【実施例】
【0016】
図面を参照して、実施例の給湯装置10について説明する。給湯装置10は、熱供給装置の一種であり、上水を加熱することによって、浴槽4やカラン(図示省略)といった給湯箇所に湯を供給する装置である。本実施例の給湯装置10は、詳しくは後述するが、給湯運転に加えて、浴槽4の風呂水(残り湯)から熱を回収する熱回収運転と、浴槽4の風呂水に熱を供給する熱供給運転(いわゆる風呂の沸き上げや追い焚き)とを実行することができる。
図1に示すように、給湯装置10は、主に、タンク20と、ヒートポンプ30と、蓄熱循環経路40と、風呂水熱交換器50と、風呂水循環経路60と、燃焼ユニット80と、制御装置90と、リモコン92とを備えている。
【0017】
タンク20は、湯を貯めるための密閉容器であり、略円柱状の外観を有している。タンク20には、タンク20内の湯(以下、タンク湯ともいう)を出湯する出湯経路24と、タンク20内へ上水を供給する給水経路26とが接続されている。出湯経路24は、タンク20の上部(詳しくは上面)に接続されており、給水経路26は、タンク20の下部(詳しくは底面)に接続されている。また、タンク20には、上下方向に沿って、複数のタンク温度センサ22が設けられている。複数のタンク温度センサ22は、各々の位置において、タンク湯の温度を測定する。各々のタンク温度センサ22は、制御装置90と電気的に接続されており、それらの出力信号は制御装置90へ入力される。制御装置90は、各々のタンク温度センサ22の出力信号に基づいて、タンク20に貯められた熱量を把握することができる。タンク温度センサ22には、一例ではあるが、サーミスタを採用することができる(後述する各種の温度センサも同様である)。
【0018】
ヒートポンプ30は、タンク20内の湯を加熱するための熱源の一例であり、大気から採熱することによってタンク湯を加熱する。ヒートポンプ30の内部構造は、特に限定されず、公知のものと同様であるので、ここでは説明を省略する。ヒートポンプ30は、蓄熱循環経路40を介して、タンク20と接続されている。
【0019】
蓄熱循環経路40は、タンク20内の湯を、ヒートポンプ30とタンク20との間で循環させる管路である。蓄熱循環経路40には、蓄熱循環ポンプ32が設けられている。蓄熱循環ポンプ32が運転されると、蓄熱循環経路40を通じて、タンク20の下部から低温の湯(あるいは水)が、ヒートポンプ30へ送られる。そして、ヒートポンプ30で加熱された高温の湯が、タンク20の上部へ戻される。即ち、蓄熱循環経路40は、タンク20からヒートポンプ30までの上流の区間40aと、ヒートポンプ30からタンク20までの下流の区間40bとに区分することができる。ヒートポンプ30と蓄熱循環ポンプ32は、制御装置90と電気的に接続されており、その動作は制御装置90によって制御される。基本的に、制御装置90は、タンク20に貯められた熱量に基づいて、即ち、複数のタンク温度センサ22による検出温度に基づいて、ヒートポンプ30及び蓄熱循環ポンプ32を制御する。
【0020】
風呂水熱交換器50は、タンク20内の湯(詳しくは蓄熱循環経路40を流れるタンク湯)と浴槽4内の風呂水との間で熱交換をするための熱交換器である。風呂水熱交換器50は、蓄熱循環経路40に設けられており、特に、ヒートポンプ30よりも下流の区間40bに設けられている。風呂水熱交換器50の具体的な構成については特に限定されない。風呂水熱交換器50は、風呂水循環経路60を介して、浴槽4と接続されている。風呂水熱交換器50は、浴槽4内の風呂水を、浴槽4と風呂水熱交換器50との間で循環させる管路である。風呂水循環経路60には、風呂水循環ポンプ66と水流センサ68が設けられている。風呂水循環ポンプ66が運転されると、風呂水循環経路60を通じて、浴槽4内の風呂水が風呂水熱交換器50へ送られる。そして、風呂水循環経路60を通過した風呂水が、燃焼ユニット80を経由して浴槽4に戻される。このとき、風呂水循環経路60における風呂水の流れは、水流センサ68によって検出される。風呂水循環ポンプ66と水流センサ68は、制御装置90と電気的に接続されており、風呂水循環ポンプ66の動作は制御装置90によって制御され、水流センサ68の出力信号は制御装置90へ入力される。
【0021】
風呂水循環経路60には、バイパス経路70が設けられている。バイパス経路70は、風呂水熱交換器50と並列に設けられており、浴槽4からの風呂水を、風呂水熱交換器50を経由することなく、燃焼ユニット80に送ることができる。バイパス経路70には、バイパス弁72が設けられている。バイパス弁72は、例えば電磁弁であり、バイパス経路70を選択的に開放及び閉鎖することができる。バイパス弁72は、制御装置90と電気的に接続されており、その動作は制御装置90によって制御される。なお、後述する熱回収運転及び熱供給運転において、バイパス経路70はバイパス弁72によって閉鎖される。
【0022】
燃焼ユニット80は、給湯装置10の第2の熱源であり、風呂水循環経路60上に設けられている。なお、燃焼ユニット80は、風呂水循環経路60において、風呂水熱交換器50よりも下流側に位置している。燃焼ユニット80は、燃料ガス(例えば都市ガス又はプロパンガス)を燃焼させて、風呂水循環経路60を流れる風呂水を加熱する。燃焼ユニット80は、一例ではあるが、バーナ82と顕熱熱交換器84と潜熱熱交換器86とを有する。なお、燃焼ユニット80の具体的な構成は特に限定されない。燃焼ユニット80は、燃料ガスに限られず、液体燃料や固形燃料を燃焼させるものであってもよい。
【0023】
給湯装置10は、各種のセンサを有している。例えば、蓄熱循環経路40には、HP出口温度センサ42が設けられている。HP出口温度センサ42は、ヒートポンプ30と風呂水熱交換器50との間の区間に設けられており、ヒートポンプ30で加熱され、風呂水熱交換器50に流入するタンク湯の温度を測定する。HP出口温度センサ42は、制御装置90と電気的に接続されており、その出力信号は制御装置90へ入力される。
【0024】
一方、風呂水循環経路60には、第1風呂水温度センサ62、第2風呂水温度センサ64、第3風呂水温度センサ88及び水流センサ68が設けられている。第1風呂水温度センサ62は、風呂水熱交換器50の上流側に位置しており、風呂水熱交換器50に流入する風呂水の温度を測定する。第2風呂水温度センサ64は、風呂水熱交換器50の下流側に位置しており、風呂水熱交換器50から流出する風呂水の温度を測定する。第2風呂水温度センサ64は、風呂水熱交換器50の下流側に位置しており、風呂水熱交換器50から流出する風呂水の温度を測定する。第3風呂水温度センサ88は、燃焼ユニット80の下流側に位置しており、燃焼ユニット80から流出する風呂水であって、浴槽4へ戻される風呂水の温度を測定する。水流センサ68は、風呂水循環経路60における風呂水の流れを検知する。これらの各センサは、制御装置90と電気的に接続されており、その出力信号は制御装置90へ入力される。
【0025】
リモコン92は、給湯装置10におけるユーザインターフェースである。リモコン92は、ユーザからの各種の指示を受け付けるとともに、ユーザに対して各種の情報を表示することができる。リモコン92の構成は特に限定されず、その少なくとも一部がスマートフォンやタブレットといった無線情報端末を用いて構成されてもよい。
【0026】
以上の構成により、給湯装置10は、基本機能として、タンク20内の湯をヒートポンプ30によって予め加熱しておき、必要に応じて、タンク20内の湯を給湯箇所に供給する。なお、本明細書では説明を省略するが、タンク20から出湯された湯は、燃焼ユニット80又はその他の熱源によって二次的に加熱されてもよい。給湯装置10はさらに、前述したように、浴槽4内の風呂水に対して、熱回収運転と熱供給運転(いわゆる風呂の沸き上げや追い焚き)とを選択的に実行することができる。以下、
図2、3を参照して、熱回収運転と熱供給運転とについて詳細に説明する。
【0027】
先ず、
図2を参照して、熱回収運転の流れについて説明する。ユーザは、リモコン92を操作して、給湯装置10へ熱回収運転の指示を与えることができる。制御装置90は、熱回収運転の指示を受け付けると(S10でYES)、
図2に示す処理を進めていく。なお、熱回収運転は、ユーザからの指示に限られず、予め定められた条件が満たされたとき(例えば特定の時刻になったとき)に、熱回収運転に係る処理を開始してもよい。この場合、当該条件は、給湯装置10の日毎の運転態様を学習する学習機能により、ユーザの生活スタイルに応じて調整されるとよい。
【0028】
図2に示すように、制御装置90は、熱回収運転の実行に先立って、ヒートポンプ30が停止中であるのか否かを確認する(S12)。また、制御装置90は、タンク20内の湯の温度が、摂氏40度未満であるのか否かを判定する(S14)。そして、これらの条件が成立したときに(S12及びS14でYES)、その後の熱回収運転を実行する処理へ進む。一例ではあるが、制御装置10は、タンク20内の湯の温度として、最下位に位置するタンク温度センサ22の検出温度を採用することが好ましい。あるいは、制御装置10は、蓄熱循環ポンプ32を一時的に運転し、HP出口温度センサ42の温度を採用してもよい。また、上記した「摂氏40度」という値は、所定の温度の一例であり、タンク20の貯湯目標温度(例えば摂氏45度)よりも所定の温度幅(例えば摂氏10度)だけ低い温度(例えば摂氏35度)を所定の温度としてもよく、摂氏40度以下の任意の値を採用してもよい。
【0029】
上記した条件が満たされない場合(S12又はS14でNO)、効果的な熱回収運転を実行することは困難といえる。例えば、ヒートポンプ30が運転中のときは、ヒートポンプ30によって加熱された湯によって、逆に風呂水が加熱されてしまうことがある。また、タンク20内の湯が高温であるときも、タンク20から送られたタンク湯によって、逆に風呂水が加熱されてしまうことがある。従って、制御装置90は、上記した条件が満たされない場合(S12又はS14でNO)、それらの条件が満たされるまで、熱回収運転の実行を保留する。但し、熱回収運転を開始すべき時点(S10でYESの時点)から、8時間に亘って熱回収運転の実行を保留したときは(S16でYES)、熱回収運転の実行を中止する。その時点では、浴槽4内の風呂水が放熱によって既に冷めており、十分な熱回収が望めないためである。なお、上記した「8時間」という値は、所定の時間の一例であり、例えば浴槽4のサイズや断熱性等を考慮して、他の値を適宜採用することができる。
【0030】
熱回収運転の条件が満たされた場合(S12及びS14でYES)、制御装置90は、風呂水循環ポンプ66の運転を開始する(S18)。このとき、水流センサ68が風呂水の流れを検知しないときは(S20でNO)、浴槽4に風呂水が無いと判断し、風呂循環ポンプ66を停止して(S28)、熱回収運転を中止する。なお、浴槽4内の風呂水の有無については、水流センサ68に限られず、水位センサ(図示省略)やその他の手段によって検知してもよい。
【0031】
一方、制御装置90は、水流センサ68が風呂水の流れを検知していれば(S20でYES)、蓄熱循環ポンプ32の運転を開始する(S22)。それにより、ヒートポンプ30が停止している状態で、蓄熱循環経路40における湯の循環と、風呂水循環経路60における風呂水の循環とが行われる。この状態では、風呂水熱交換器50に、タンク20からの低温の湯と、浴槽4からの高温の風呂水とがそれぞれ流入し、前者が後者によって加熱されていく。その結果、浴槽4内の風呂水の熱は、タンク湯によって回収され、タンク20内に蓄積されていく。
【0032】
風呂水からの熱回収が進んでいくと、風呂水の温度は低下していき、風呂水とタンク20からの湯との間の温度差も縮小していく。当該温度差が小さくなると、効果的な熱回収は難しくなる。そこで、制御装置90は、HP出口温度センサ42による検出温度と、第1風呂水温度センサ62による検出温度の間の温度差が、摂氏5度未満となった時に(S24でYES)、熱回収運転を終了する。具体的には、蓄熱循環ポンプ32及び風呂水循環ポンプ66の運転をそれぞれ停止する(S26及びS28)。ここで、上記した「摂氏5度」という値は、所定の温度差の一例であり、例えば風呂水熱交換器50の能力等を考慮して、他の値を適宜採用することができる。
【0033】
次に、
図3を参照して、熱供給運転(いわゆる沸き上げ又は追い焚き)の流れについて説明する。ユーザは、リモコン92を操作して、風呂水の目標温度である風呂設定温度とともに、給湯装置10へ熱供給運転の指示を与えることができる。制御装置90は、熱供給運転の指示を受け付けると(S30でYES)、
図3に示す処理を進めていく。なお、本実施例の給湯装置10では、下記する熱供給運転に代えて、燃焼ユニット80を主に用いた第2の熱供給運転を実行することもできる。第2の熱供給運転は、従来より公知の手法であるので、ここでは説明を省略する。
【0034】
図3に示すように、制御装置90は、熱供給運転の実行に先立って、ヒートポンプ30が運転中であるのか否かを確認する(S32)。ヒートポンプ30が停止中の場合、制御装置90は、ヒートポンプ30の運転可否を確認した上で(S34でYES)、蓄熱循環ポンプ32の運転を開始するとともに(S36)、ヒートポンプ30の運転を開始する(S38)。一方、外気温が極めて低温であるときなど、ヒートポンプ30の運転が不可能であるときは(S34でNO)、熱供給運転を中止する。この場合、制御装置90は、燃焼ユニット80を用いた第2の熱供給運転を実行してもよい。
【0035】
次いで、制御装置90は、HP出口温度センサ42の検出温度が、風呂設定温度に摂氏5度を加えた温度を上回っていれば(S40でYES)、風呂水循環ポンプ66の運転を開始する(S42)。それに対して、上記の条件(S40)が満たされないときは、ヒートポンプ30の予熱が不十分として、風呂水循環ポンプ66を運転することなく待機する。その後、上記の条件が満たされた時点で(S40でYES)、風呂水循環ポンプ66の運転を開始する。ここで、上記した「摂氏5度」という値は一例であり、例えば風呂水熱交換器50の能力等を考慮して、適宜変更することができる(ゼロ度でもよい)。
【0036】
風呂水循環ポンプ66の運転が開始されると、ヒートポンプ30が運転している状態で、蓄熱循環経路40における湯の循環と、風呂水循環経路60における風呂水の循環とが行われる。風呂水熱交換器50には、浴槽4からの低温の風呂水と、ヒートポンプ30で加熱された高温のタンク湯とがそれぞれ流入し、前者が後者によって加熱される。その結果、浴槽4内の風呂水は、ヒートポンプ30による熱の供給を受けて、沸き上げられていく。制御装置90は、風呂水の温度が、ユーザによる風呂設定温度を上回ったときに(S46)、風呂水循環ポンプ66の運転を停止して(S48)、熱供給運転を終了する。ここで、制御装置90は、風呂水の温度として、第2風呂水温度センサ64又は第3風呂水温度センサ88による検出温度を採用することができる。
【0037】
一方、風呂水循環ポンプ66の運転開始(S42)の後に、水流センサ68が風呂水の流れを検知しないときは(S44でNO)、制御装置90は、浴槽4に風呂水が無いと判断して、風呂水循環ポンプ66を直ちに停止させ(S48)、熱供給運転を中止する。
【0038】
以上のように、本実施例の給湯装置10では、タンク20内の温水と浴槽4内の風呂水との間で熱交換をするための風呂水熱交換器50が、蓄熱循環経路40においてヒートポンプ30よりも下流に位置している。このような構成により、ヒートポンプ30の停止中に、蓄熱循環経路40によるタンク湯の循環と、風呂水循環経路60による風呂水の循環とを実施することによって、浴槽4の風呂水から熱を回収する熱回収運転を行うことができる。また、ヒートポンプ30の運転中に、蓄熱循環経路40によるタンク湯の循環と、風呂水循環経路60による風呂水の循環とを実施することによって、浴槽4の風呂水へ熱を供給する熱供給運転を行うことができる。風呂水に対する熱回収及び熱供給が、共通の風呂水熱交換器50によって行われるので、給湯装置10は、特に熱交換器の数及び配管構造の点において、比較的に簡素な構成を有している。
【0039】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0040】
例えば、本実施例において、ヒートポンプ30は、発電機(燃料電池を含む)又はその他の熱源に変更してもよい。また、本実施例の給湯装置10の構成は、暖房端末へ供給する熱媒をタンク20に貯める暖房装置にも適用することができる。さらに、本実施例の給湯装置10は、燃焼ユニット80を必ずしも必要としない。あるいは、給湯装置10は、三つ以上の熱源を有してもよい。また、熱供給運転では、燃焼ユニット80又はその他の熱源を用いて、ヒートポンプ30による風呂水への熱供給を補助してもよい。
【0041】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。