(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.端末1の構成
1.1.端末1の全体構成
電源装置の一実施形態である端末1の構成を
図1〜
図3に基づき説明する。端末1は、据え置き型の端末(例えば、デスクトップパソコン、サーバ、ホストコンピュータ、車載カーナビゲーションシステム等)であってもよいし、携帯可能な端末(例えば、ノートパソコン、タブレット型端末、携帯電話(例えばスマートフォン)、携帯音楽プレーヤー、電子書籍リーダー、携帯型ナビゲーション装置等)であってもよい。
【0012】
端末1は、水素を供給する水素供給部3、燃料電池5、及び蓄電池8を備える。また、端末1は、周知の端末と同様に、制御部9(水素化制御部の一例)、入力部(例えばキーボード、マウス、タッチパネル、音声入力手段等)11、ハードディスクドライブ(HDD)13、及びディスプレイ15を備える。また、端末1は、
図1に示すもの以外にも、一般的に端末が備えている構成を有するが、それらの構成は端末1の電源装置としての構成とは直接関係がないので、ここでは図示及び説明を省略する。
【0013】
水素供給部3は、燃料電池5に水素を供給する構成である。水素供給部3は、第1のタンク17、第2のタンク19、脱水素反応器21(脱水素化部の一例)、気液分離器23、吸着器25、水タンク27、ポンプ29,31、及び配管33,35,37,39,43,44を備える。
【0014】
第1のタンク17は、液体のメチルシクロヘキサン(有機ハイドライドの一例;以下MCHという。)を収容可能なタンクである。第2のタンク19は、後述するように気液分離器23から送り出される、トルエン等を含む液体を収容可能なタンクである。
【0015】
脱水素反応器21は、第1のタンク17から供給されるMCHの少なくとも一部を脱水素化し、気体の水素及び液体のトルエンを生成するユニットである。脱水素反応器21は、金属チューブ内に脱水素触媒が充填された構造を有する。
【0016】
脱水素触媒としては、特許第4849775号公報に記載されたものを用いることができる。この脱水素触媒として、例えば、特定の物理性状を有する多孔性γ−アルミナ担体に、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、及びイリジウムから選ばれた1種又は2種以上の触媒金属と、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムを包含する周期律表の第1A族及び第2A族から選ばれた1種又は2種以上のアルカリ性金属とが担持された触媒を挙げることができ、特に好ましくは、触媒金属として白金が0.3重量%以上2.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以上1.0重量%以下の範囲で、また、アルカリ性金属としてカリウムが0.001重量%以上1.0重量%以下、好ましくは0.005重量%以上0.5重量%以下での範囲でそれぞれ担持された触媒である。
【0017】
また、上記γ−アルミナ担体としては、表面積が150m
2 /g以上、細孔容積が0.55cm
3 /g以上、平均細孔径が9〜30nm、及び細孔径9〜30nmの占有率が60%以上の物理的性状を有するものが好ましい。
【0018】
このような特定の物理的性状を有する多孔性γ−アルミナ担体は、例えば、特公平6−72005号公報に開示されている製造方法で得ることができる。すなわち、アルミニウム塩の中和により生成した水酸化アルミニウムのスラリーを濾過洗浄し、得られたアルミナヒドロゲルを脱水乾燥した後、400〜800℃で1〜6時間程度焼成することにより得ることができ、好ましくは、アルミナヒドロゲルのpH値をアルミナヒドロゲル溶解pH領域とベーマイトゲル沈殿pH領域との間で交互に変動させると共に少なくともいずれか一方のpH領域から他方のpH領域へのpH変動に際してアルミナヒドロゲル形成物質を添加してアルミナヒドロゲルの結晶を成長させるpHスイング工程を経て得られたものであるのがよい。
【0019】
脱水素反応器21での脱水素反応条件は、好ましくは、反応温度が250℃以上350℃以下、より好ましくは290℃以上350℃以下であり、また、この脱水素反応器21の反応領域を通過するMCHの液空間速度(LHSV)が1.0以上5.0以下、好ましくは2.0以上4.0以下である。
【0020】
脱水素反応器21は、ヒータ21Aを備えている。脱水素反応器21の温度は、制御部9によってヒータ21Aの発熱量が調整されることにより、前記の好適な反応温度に達することが可能である。
【0021】
気液分離器23は、脱水素反応器21から排出される物質(水素主体の気体と、トルエン及び未反応のMCH主体の液体との混合物)を、気体と液体とに分離する。気液分離器23は、例えば、十分な管径を有するチューブから成るコイル等から構成され、コイルの軸方向が鉛直となるように設置される。脱水素反応器21から排出された物質を気液分離器23に導入し、冷却することで、気体と液体とに分離することができる。分離された気体は吸着器25へ送られ、液体は第2のタンク19に送られる。
【0022】
吸着器25は、気液分離器23において分離された気体から、水素以外の不純物を吸着して除去する。吸着器25は、後述のように、金属容器内に吸着剤25A(
図3A参照)を充填した構造を有する。吸着剤25Aとしては、例えば、ゼオライト、シリカ、シリカアルミナ、活性炭等を用いることができる。吸着器25にて不純物を除去された気体(主として水素)は、燃料電池5に供給される。
【0023】
図1に示すように、配管33は第1のタンク17と脱水素反応器21とを接続しており、ポンプ29は配管33の途中に設置されている。配管33及びポンプ29により、第1のタンク17内のMCHが脱水素反応器21に供給される。
【0024】
配管35は脱水素反応器21と気液分離器23とを接続している。配管37は気液分離器23と吸着器25とを接続している。配管39は、吸着器25と燃料電池5とを接続している。配管39の途中には、ポンプ31が設けられている。ポンプ31は、吸着器25から排出された気体(水素)を燃料電池5に送り出す。配管43は、気液分離器23から排出された液体を第2のタンク19に送る。
【0025】
燃料電池5は、水素供給部3から供給された水素と、空気(酸素)とを用いて電気化学反応を行い、電圧を発生させる。また、燃料電池5は、その電気化学反応により水を生成する。その水は水タンク27に収容される。水タンク27に収容された水は、後述のように種々の用途に用いることができる。配管44は、燃料電池5で生成された水を水タンク27へ送る。
【0026】
制御部9は、CPU45、ROM47、及びRAM49を備えている。制御部9は端末1の各部を制御し、通常の端末と同様の処理を実行できる。制御部9、HDD13、及びディスプレイ15は、燃料電池5が発電した電力で駆動される。
【0027】
1.2.カートリッジ53及びその装着部の構成
図2A、2Bに示すように、第1のタンク17及び第2のタンク19は、カートリッジ53内に設けられている。カートリッジ53は、端末1の筐体55に対し、取り付け及び取り外しが可能である。
【0028】
カートリッジ53は、略直方体形状を有する中空容器であり、その内部の閉空間は、仕切り壁54により、2つの閉空間に仕切られている。この2つの閉空間が、それぞれ、第1のタンク17、及び第2のタンク19を構成する。
【0029】
カートリッジ53における一方の端面53Aには、第1のタンク17内と外部とを連通する開口57が設けられていると共に、第2のタンク19内と外部とを連通する開口59が設けられている。また、端面53Aのうち、開口57の周囲には、円筒状の差込部61が外側に向けて立設され、開口59の周囲には、差込部61より大径の円筒状の差込部63が外側に向けて立設されている。
【0030】
また、カートリッジ53内には、開口57を開閉するシャッター65が設けられている。シャッター65は、カートリッジ53内部における開口57周囲に設けられた回動軸65Aを中心として回動可能である。このため、シャッター65は、
図2Aに示すように、カートリッジ53の内側に回動して開口57を開放する位置と、
図2Bに示すように、開口57を閉じる位置との間で回動可能である。ただし、シャッター65は、図示しないバネにより、開口57を閉じる位置に向けて付勢されており、外力を加えない限り、開口57を閉じる位置にある。
【0031】
また、カートリッジ53内には、開口59を開閉するシャッター67が設けられている。シャッター67は、カートリッジ53内部における開口59周囲に設けられた回動軸67Aを中心として回動可能である。このため、シャッター67は、
図2Aに示すように、カートリッジ53の内側に回動して開口59を開放する位置と、
図2Bに示すように、開口59を閉じる位置との間で回動可能である。ただし、シャッター67は、図示しないバネにより、開口59を閉じる位置に向けて付勢されており、外力を加えない限り、開口59を閉じる位置にある。
【0032】
筐体55には、端面53Aを先頭とする向きでカートリッジ53を差し込むことができる凹部69が形成されている。凹部69の奥側には底面71が設けられており、その底面71には、2つの開口73,75が形成されている。開口73の更に奥側には配管33(
図1参照)が接続されており、開口75の更に奥側には配管43(
図1参照)が接続されている。なお、差込部61,63の径の違いに応じて、開口73及び配管33の内径よりも開口75及び配管43の内径の方が大きく構成されている。
【0033】
配管33の内壁には、L字型の棒状部材であるシャッター押出棒77が取り付けられており、その先端77Aは、開口73を通り、凹部69の入口方向に突出している。また、配管43の内壁には、L字型の棒状部材であるシャッター押出棒79が取り付けられており、その先端79Aは、開口75を通り、凹部69の入口方向に突出している。
【0034】
筐体55において、凹部69の周囲には、一対の棒状部材である係止部81,83が立設されている。係止部81,83は、凹部69を挟んで対向している。係止部81は、その先端に、係止部83の方向に突出する爪部81Aを備えている。また、係止部83は、その先端に、係止部81の方向に突出する爪部83Aを備えている。爪部81Aと爪部83Aとの間隔は、カートリッジ53の幅(
図2A,2Bにおける上下方向での長さ)より小さい。係止部81,83は、弾性変形可能な部材(例えば樹脂)からなり、外側に(
図2Bにおける矢印H1方向に)弾性変形可能である。
【0035】
図2Bに示すように、カートリッジ53を筐体55から取り外している状態において、シャッター65、67は閉じているので、第1のタンク17に収容されたMCHが開口57から漏れることはなく、第2のタンク19に収容されたトルエン等を含む液体が開口59から漏れることはない。
【0036】
カートリッジ53を筐体55に取り付けるときは、端面53Aを先頭とする向きで、カートリッジ53を凹部69に差し込み、
図2Aに示すように、端面53Aが底面71に当接するまで押し込む。このとき、差込部61が開口73に内挿されると共に、シャッター押出棒77がシャッター65を押し、開口57を開放するので、第1のタンク17の内部と、配管33とが連通する。また、差込部63が開口75に内挿されると共に、シャッター押出棒79がシャッター67を押し、開口59を開放するので、第2のタンク19の内部と、配管43とが連通する。
【0037】
また、カートリッジ53を凹部69に差し込んでゆく途中において、係止部81、83は、カートリッジ53により、外側に(
図2Bにおける矢印H1方向に)押し広げられる。やがて、端面53Aが底面71に当接する位置までカートリッジ53が差し込まれると、
図2Aに示すように、爪部81Aと爪部83Aは、カートリッジ53よりも手前側(
図2Aにおける左側)に達し、カートリッジ53から外側方向への力を受けなくなる。すると、係止部81、83は、内側方向(
図2Aにおける矢印H2方向)に変位し、爪部81Aと爪部83Aが、カートリッジ53における手前側の端面53Bを係止する。その結果、カートリッジ53が筐体55から脱落しにくくなる。なお、カートリッジ53を取り外すときは、先ず、指で係止部81,83を矢印H1方向に押し広げ、次に、カートリッジ53を凹部69から引き抜けばよい。カートリッジ53を凹部69から引き抜くと、シャッター押出棒77,79はシャッター65,67から離れるので、自動的に、シャッター65,67は閉じる。
【0038】
1.3.カートリッジ153及びその装着部の構成
図3A,3Bに示すように、水タンク27及び吸着器25は、金属容器としてのカートリッジ153(請求項2に記載の発明におけるカートリッジの一例)内に設けられている。端末1の筐体55には、カートリッジ153の一方の端面153Aを先頭とする向きでカートリッジ153を差し込むことができる凹部169が形成されている。カートリッジ153は、凹部169に対し、取り付け及び取り外しが可能である。なお、カートリッジ153及び凹部169に係る構成のうち、カートリッジ53及び凹部69に係る構成と同様に構成された箇所には、
図2A,2Bで使用した符号を
図3A,3Bでも使用して詳細な説明を省略する。
【0039】
筐体55において、凹部169の周囲には、凹部69と同様に係止部81、83が立設されている。係止部81、83の先端に設けられた爪部81A,83Aとの間隔は、カートリッジ153の幅(
図3A、3Bにおける上下方向での長さ)より小さい。このため、カートリッジ153を凹部69に差し込んでゆく途中において、係止部81、83は、カートリッジ153により、外側に(
図3Bにおける矢印H1方向に)押し広げられる。端面153Aが凹部169の底面171に当接する位置までカートリッジ153が差し込まれると、
図3Aに示すように、爪部81Aと爪部83Aは、カートリッジ153よりも手前側(
図2Aにおける左側)に達する。すると、係止部81、83は、内側方向(
図2Aにおける矢印H2方向)に変位し、爪部81Aと爪部83Aが、カートリッジ153における手前側の端面153Bを係止する。その結果、カートリッジ153が筐体55から脱落しにくくなる。なお、カートリッジ153を取り外すときは、先ず、指で係止部81,83を矢印H1方向に押し広げ、次に、カートリッジ153を凹部69から引き抜けばよい。
【0040】
カートリッジ153は、略直方体形状を有する中空容器であり、その内部の閉空間は、仕切り壁154により、2つの閉空間に仕切られている。この2つの閉空間が、それぞれ、水タンク27、及び吸着器25を構成する。吸着器25を構成する閉空間には、端面153A側と端面153B側とに空隙を残して吸着剤25Aが充填されている。なお、吸着剤25Aは、例えば、スチールウールや金網等の内部に前述のゼオライト、シリカ、シリカアルミナ、活性炭等を担持させたものであってもよい。水タンク27を構成する閉空間には、端面153A側に空隙を残して高吸水性ポリマー27Aが充填されている。なお、この高吸水性ポリマー27Aは、生理用ナプキン等に使用される周知のものである。
【0041】
カートリッジ153における端面153Aには、水タンク27内と外部とを連通する開口157が設けられていると共に、吸着器25内と外部とを連通する開口159が設けられている。また、端面153Aのうち、開口157の周囲には、円筒状の差込部161が外側に向けて立設され、開口159の周囲には、差込部161より大径の円筒状の差込部163が外側に向けて立設されている。
【0042】
また、カートリッジ153内には、カートリッジ53と同様のシャッター65,67が設けられている。すなわち、シャッター65,67は、回動軸65A,67Aを中心として回動可能であり、
図3Aに示すように、開口157,159を開放する位置と、
図3Bに示すように、開口157,159を閉じる位置との間で回動可能である。シャッター65,67は、図示しないバネにより、開口157,159を閉じる位置に向けて付勢されており、外力を加えない限り、開口157,159を閉じる位置にある。
【0043】
凹部169の奥側には底面171が設けられており、その底面171には、2つの開口173,175が形成されている。開口173の更に奥側には配管144が接続されており、開口175の更に奥側には配管39(
図1参照)が接続されている。なお、差込部161,163の径の違いに応じて、開口173及び配管144の内径よりも開口175及び配管39の内径の方が大きく構成されている。
【0044】
配管144の内壁には、配管44(
図1参照)がL字型のパイプとして突出しており、その配管44の先端44Aは、開口173を通り、凹部169の入口方向に突出している。なお、配管144は、配管44の突出箇所よりも更に奥側が閉じられている。また、配管39の内壁には、配管37(
図1参照)がL字型のパイプとして突出しており、その先端37Aは、開口175を通り、凹部169の入口方向に突出している。
【0045】
カートリッジ153を筐体55に取り付けるときは、端面153Aを先頭とする向きで、カートリッジ153を凹部169に差し込み、
図3Aに示すように、端面153Aが底面171に当接するまで押し込む。このとき、差込部161が開口173に内挿されると共に、配管44がシャッター65を押し、開口157を開放するので、水タンク27の内部と、配管44とが連通する。このため、燃料電池5で生成された水は、配管44を介して水タンク27の内部に送られ、高吸水性ポリマー27Aに吸収される。
【0046】
このように、配管44によるシャッター65の開放が可能で、かつ、端面153Aが底面171に当接しても先端44Aが高吸水性ポリマー27Aに当接しない程度に、高吸水性ポリマー27Aは、端面153A側に空隙を残して水タンク27内に充填されている。
【0047】
また、カートリッジ153が筐体55に取り付けられると、差込部163が開口175に内挿されると共に、配管37がシャッター67を押し、開口159を開放するので、吸着器25の内部と、配管37,39とが連通する。凹部169の入口方向に対する配管37の突出量は、凹部169の入口方向に対する配管44の突出量に比べて大きい。カートリッジ153が筐体55に取り付けられると、配管37の先端37Aは、吸着剤25Aの中心に予め形成された貫通穴25Bを貫通して吸着剤25Aよりも端面153B側に達する。このため、気液分離器23から配管37を介して吸着器25に送られた気体は、吸着器25における端面153B側から吸着剤25Aの内部を通って配管39に送られる。貫通穴25Bは、配管37との間に形成される隙間が、前記不純物の除去に実質的な影響を与えない程度の幅の隙間となるように、その内径が設計されている。
【0048】
このように、配管37によるシャッター67の開放が可能で、かつ、端面153Aが底面171に当接したときに先端37Aが吸着剤25Aを貫通可能な程度に、吸着剤25Aは、端面153A側と端面153B側とに空隙を残して吸着器25内に充填されている。
【0049】
係止部81,83が指で矢印H1方向に押し広げられて、カートリッジ153が凹部69から引き抜かれると、配管37,44はシャッター65,67から離れるので、自動的に、シャッター65,67は閉じる。
【0050】
2.端末1が実行する処理
図4は、端末1の制御系の構成を表すブロック図である。
図4に示すように、制御部9には、前述の入力部11、HDD13、ディスプレイ15、及びヒータ21Aの他、ポンプ29,31と、蓄電池8の蓄電量を検出する蓄電量センサ8A(
図1参照:蓄電量検出部の一例)とが接続されている。
【0051】
端末1が使用される場合、予め、第1のタンク17にMCHが収容され、第2のタンク19に空きがあるカートリッジ53が、端末1に取り付けられる。また、水タンク27に空きがあり、吸着剤25Aの吸着機能が十分なカートリッジ153も、端末1に取り付けられる。
【0052】
端末1のメイン電源がONであるとき、制御部9では、ROM47に記憶されたプログラムをCPU45が読み出すことにより、
図5のフローチャートに示す処理が繰り返し実行される。
【0053】
この処理では、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同様)にて、蓄電池8の蓄電量CHが蓄電量センサ8Aを介して取得される。続くS2では、S1で取得された蓄電量CHが予め設定された上限値以上であるか否かが判断される。蓄電量CHが上限値未満の場合は(S2:N)、S3にて、蓄電量CHが予め設定された下限値以下であるか否かが判断される。蓄電量CHが下限値より大きい場合は(S3:N)、処理はそのまま一旦終了し、蓄電量CHが下限値以下の場合は(S3:Y)、処理はS4へ移行する。
【0054】
S4では、ヒータ21A及びポンプ29への通電が開始されることによって次のように脱水素反応(脱水素化)が開始され、かつ、ポンプ31への通電が開始されることによって燃料電池5が始動されて、処理は一旦終了する。なお、処理がS4へ移行した時点でヒータ21A及びポンプ29,31への通電が既に開始されていた場合は、S4ではその通電が継続される。
【0055】
S4の処理に応じて、端末1の内部では次のような反応が開始される。
図1に示すように、ポンプ29は、第1のタンク17内のMCHを、配管33を介して脱水素反応器21に供給する。脱水素反応器21では、ヒータ21Aから熱を供給されることによりMCHの脱水素反応が生じ、気体の水素と液体のトルエンとが生成する。また、一部のMCHは未反応のまま残存する。それらの物質は、配管35を経て、気液分離器23に送られる。
【0056】
脱水素反応器21における脱水素反応の速度は、ヒータ21Aから供給される熱量により左右される。制御部9は、
図5に示した処理とは別の処理により、ヒータ21Aへの通電量を調整して脱水素反応の速度を適切な値に制御する。
【0057】
気液分離器23では、脱水素反応器21から送られた物質が、気体と液体とに分離される。分離された気体は配管37を経て吸着器25に送られる。また、分離された液体は配管43を経て第2のタンク19に送られる。
【0058】
吸着器25では、気液分離器23から送られた気体に含まれる水素以外の不純物が吸着剤25Aに吸着される。その後、気体(主として水素)は、ポンプ31及び配管39により、燃料電池5に供給される。燃料電池5が発電した電力は、蓄電池8に蓄電される。従って、S4の処理によりポンプ29,31及びヒータ21Aへの通電が開始されると、蓄電池8の蓄電量CHは上昇する。
【0059】
図5に戻って、このような反応により蓄電池8の蓄電量CHが上限値以上になると(S2:N)、処理はS5へ移行する。S5では、ヒータ21A及びポンプ29への通電が停止されることによって、脱水素反応が停止され、ポンプ31への通電が停止されることによって燃料電池5が停止されて、処理は一旦終了する。なお、処理がS5へ移行した時点でヒータ21A及びポンプ29,31への通電が既に停止されていた場合は、S5ではその通電停止が継続される。また、ヒータ21A及びポンプ29への通電が停止された後に脱水素反応器21で生成された水素が燃料電池5によって十分に消費されるように、S5によるポンプ31への通電停止は、ポンプ29及びヒータ21Aへの通電停止から少し遅れたタイミングでなされてもよい。
【0060】
3.端末1が奏する効果
(1)端末1では、
図5の処理がなされることによって、脱水素反応器21における脱水素反応は、蓄電池8の蓄電量CHを下限値と上限値との間に維持するのに必要かつ十分な程度でしか実行されない。従って、端末1内にバッファータンク等の水素収容部を特別に設ける必要がない。従って、端末1の安全性が向上し、かつ、端末1は良好に小形化することができる。よって、端末1における電源装置としての構成(水素供給部3,燃料電池5,蓄電池8,及び制御部9)は、安全性向上及び小形化の必要性が高い携帯電話用充電器等にも良好に適用することができる。また、端末1における電源装置としての構成は、電気自動車(ハイブリッド車を含む)や家庭用電化製品等、その他の各種機器にも良好に適用することができる。
【0061】
(2)
図3に示すように、配管39の流路の断面積は配管37の流路の断面積に比べて極めて大きい。このため、S5の処理でポンプ29及びヒータ21Aへの通電が停止された後に脱水素反応器21で生成された水素が、燃料電池5によって十分に消費されず、配管39の内圧が上昇したとしても、その内圧の影響を良好に緩和することができる。
【0062】
(3)端末1は、燃料電池5が発電時に発生した水を収容する水タンク27を、取り外し可能なカートリッジ153の内部に備えている。このため、カートリッジ153を小形化してもそのカートリッジ153を取り外して交換することで満水に対応することができる。従って、前述のように水素収容部を省略できる効果と相俟って、端末1は一層良好に小型化することができる。なお、カートリッジ153の水タンク27に収容された水は、飲料水等、他の用途に利用されてもよい。
【0063】
(4)カートリッジ153には、水タンク27と共に、吸着器25が設けられている。吸着器25も、脱水素反応が一定量以上実行された場合に交換が必要となる部材である。従って、高吸水性ポリマー27Aの吸水力が低下するタイミングと吸着剤25Aの吸着力が低下するタイミングとが一致するように予め設計しておくことが望ましい。その場合、カートリッジ153を交換することにより、交換時期に達した水タンク27と、交換時期に達した吸着器25とを同時に交換することができる。従って、その場合、端末1のメンテナンスが容易になる。
【0064】
なお、カートリッジ153の交換時期は、CPU45の動作時間等に基づいて計算され、交換時期に達した場合はディスプレイ15等を介して告知がなされてもよい。また、カートリッジ153の交換時期は、高吸水性ポリマー27Aの重さを量るセンサを設けるなどして検出されてもよい。
【0065】
(5)カートリッジ53,153において、差込部63,163は、差込部61,161より大径に構成され、その径の違いに応じて、開口75,175の内径は開口73,173の内径よりも大きく構成されている。このため、カートリッジ53又は153が
図2又は
図3に示した状態とは上下を逆にして筐体55に接続されるのを良好に抑制することができる。
【0066】
4.変形例
(1)必要に応じて、端末1には、水素を収容するバッファータンク等を配管39に設けてもよい。この場合も、
図5の処理がなされない場合に比べて、そのバッファータンク等を良好に小形化することができる。従って、その場合も、端末1の安全性が向上し、かつ、端末1は良好に小形化することができる。
【0067】
(2)水タンク27は、高吸水性ポリマー27Aを有さず、中が空洞となったタンクであってもよい。水タンク27に収容された水を飲料水等として再利用する場合は、その方が有利な場合がある。
【0068】
(3)水タンク27は、高吸水性ポリマー27Aを有さず、
図6A,6Bに示すようにフィルタ27Cを備えたものであってもよい。
図6A,6Bに示すように、フィルタ27Cは、水タンク27内部の端面153A寄りの位置に設けられ、水タンク27内部のフィルタ27Cより端面153B側の部分は貯水室27Dとなっている。この貯水室27Dに収容された水は、配管44から吐出された後にフィルタ27Cを通過したものである。フィルタ27Cは、配管44から吐出された水から不純物を取り除くことによって、その水が飲用に適した水質となるようにする。このため、貯水室27Dに収容された水は、飲料水として良好に使用することができる。このように、飲用に適した水を収容したカートリッジ153は、現在ペットボトルのキャップが回収されているように慈善活動として回収され、水の少ない地域等に送られてもよい。
【0069】
なお、このようにフィルタ27Cを設ける場合、
図6Aに示すように、カートリッジ153が筐体55に取り付けられたときに配管44の先端44Aがフィルタ27Cに当接するように各部の長さを設計するのが望ましい。
【0070】
(4)水タンク27と吸着器25とは別のカートリッジとしてそれぞれ着脱可能に構成されてもよい。その場合において前記(3)の構成(
図6A,6Bに示す水タンク27の構成)を採用した場合、飲料水の収集が一層容易になる。また、水タンク27及び吸着器25はカートリッジ化されていなくてもよく、着脱も不可能であってもよい。
<第2の実施形態>
1.端末201の構成
電源装置の一実施形態である端末201の構成を
図7に基づき説明する。なお、端末201は、多くの部分が端末1と同様に構成されている。そこで、端末201において端末1と同様に構成された箇所には、
図1〜
図6で使用した符号を
図7でも使用して詳細な説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0071】
図7に示すように、端末201は、トルエンと水素とを反応させてMCHを製造するMCH製造ユニット240(水素添加部の一例)を水素供給部3に備えている。すなわち、MCH製造ユニット240は、周知の方法でトルエンを水素化することにより、MCHを製造する。MCHの製造法の例としては、周知の水素添加装置において、Pt等の水素添加触媒の存在下、トルエンに水素を添加する方法がある。
【0072】
端末201は、MCH製造ユニット240に関連して、配管244,245,246、ポンプ248、及び三方弁249を水素供給部3に備える。配管244は、第2のタンク19とMCH製造ユニット240とを接続しており、その途中にポンプ248が設けられている。ポンプ248が駆動されているとき、第2のタンク19内の液体は配管244を介してMCH製造ユニット240に送られる。一方、ポンプ248が停止されているとき、配管244を液体が流れることはない。
【0073】
三方弁249は、配管39におけるポンプ31と燃料電池5との間に設けられている。配管245は、三方弁249とMCH製造ユニット240とを接続している。三方弁249は、ポンプ31により配管39を介して送られた水素の供給方向を、そのまま当該配管39を介して燃料電池5に向かう方向、又は、配管245を介してMCH製造ユニット240に向かう方向の、いずれか一方に制御する電磁弁である。配管246は、MCH製造ユニット240と第1のタンク17とを接続している。
【0074】
このため、ポンプ31,248への通電がなされることによってそのポンプ31,248が駆動され、かつ、三方弁249による水素の供給方向がMCH製造ユニット240側にされたとき、第1のタンク17にMCHを供給することができる。すなわち、ポンプ248によって配管244を介して送られるトルエンと、ポンプ31によって三方弁249及び配管245を介して送られる水素とから、MCH製造ユニット240でMCHを製造することができる。このMCHは、配管246を介して第1のタンク17に供給される。また、端末201では、第2のタンク19に、その第2のタンク19内の液量を検出する液量センサ19Aが設けられている。
【0075】
2.端末201が実行する処理
図8は、端末201の制御系の構成を表すブロック図である。
図8に示すように、端末201の制御部9には、端末1と同様に入力部11、HDD13、ディスプレイ15、ヒータ21A、ポンプ29,31、及び蓄電量センサ8Aが接続され、更に、ポンプ248と三方弁249と液量センサ19Aとが接続されている。
【0076】
端末201が使用される場合も、予め、第1のタンク17にMCHが収容され、第2のタンク19に空きがあるカートリッジ53が、端末1に取り付けられる。また、水タンク27に空きがあり、吸着剤25Aの吸着機能が十分なカートリッジ153も、端末201に取り付けられる。
【0077】
端末201のメイン電源がONであるとき、制御部9では、ROM47に記憶されたプログラムをCPU45が読み出すことにより、
図9のフローチャートに示す処理が繰り返し実行される。
【0078】
この処理では、先ず、S21にて、蓄電池8の蓄電量CHと第2のタンク19内の液量Lとが蓄電量センサ8Aと液量センサ19Aとを介して取得される。続くS23では、S21で取得された蓄電量CHが予め設定された下限値以下であるか否かが判断される。蓄電量CHが下限値以下の場合は(S23:Y)、処理はS24へ移行する。
【0079】
S24では、三方弁249による水素の供給方向が燃料電池5側にされる。続くS25では、ポンプ248への通電が停止されることによってMCHの製造が停止される。なお、処理がS25へ移行した時点でポンプ248への通電が既に停止されていた場合は、S25ではその通電停止が継続される。更に続くS26では、前述のS4と同様、ヒータ21A及びポンプ29への通電により脱水素反応が開始され、かつ、ポンプ31への通電により燃料電池5が始動されて、処理は一旦終了する。この結果、前述のS4の処理が実行された場合と同様に、燃料電池5が発電を開始してその電力が蓄電池8に蓄電される。
【0080】
蓄電量CHが下限値より大きい場合は(S23:N)、S27にて、蓄電量CHが予め設定された上限値以上であるか否かが判断される。蓄電量CHが上限値未満の場合は(S27:N)、処理はそのまま一旦終了し、蓄電量CHが上限値以上の場合は、処理はS30へ移行する。
【0081】
S30では、三方弁249による水素の供給方向がMCH製造ユニット240側にされる。すると、燃料電池5への水素の供給が停止されて、燃料電池5による発電も停止される。また、この時点では脱水素反応は継続されているので、水素はMCH製造ユニット240に供給される。
【0082】
続くS31では、第2のタンク19内の液量Lが下限値未満であるか否かが判断される。この下限値は、第2のタンク19からトルエンを含む液体をMCH製造ユニット240に送ってMCHを製造することが可能な下限値として、予め設定されている。液量Lが下限値以上の場合は(S31:N)、処理はS33へ移行する。S33では、ポンプ248への通電が開始されることによって、MCH製造ユニット240によるMCHの製造が開始されて、処理が一旦終了する。なお、処理がS33へ移行した時点でポンプ248への通電が既に開始されていた場合は、S33ではその通電が継続される。
【0083】
また、液量Lが下限値未満の場合は(S31:Y)、処理はS35へ移行する。S35では、ヒータ21A及びポンプ29への通電が停止されることによって、脱水素反応が停止される。続くS37では、ポンプ31,248への通電が停止されることによってMCHの製造が停止されて、処理は一旦終了する。
【0084】
なお、処理がS35へ移行した時点でヒータ21A及びポンプ29への通電が既に停止されていた場合は、S35ではその通電停止が継続される。また、処理がS37へ移行した時点でポンプ31,248への通電が既に停止されていた場合は、S37ではその通電停止が継続される。その後、電力消費により蓄電池8の蓄電量CHが下限値以下となると(S23:Y)、前述のS24〜S26の処理が実行され、その処理のうちの脱水素反応(S26)により、第2のタンク19内の液量Lも増加する。
【0085】
3.端末201が奏する効果
(1)端末201は、端末1と同様の構成を含んでおり、
図9の処理には
図5の処理と同様の処理が含まれている。従って、端末201は端末1と同様の効果を奏する。
【0086】
(2)それに加えて、端末201では、蓄電量CHが上限値に達したとき(S27:Y)、必ずしも即座に脱水素反応が停止されるのではなく、脱水素反応で得られた水素がMCHの製造に転用される場合がある(S33)。そのようにして製造されたMCHは、第1のタンク17に供給され、再び脱水素反応に使用することができる。従って、端末201に対して新規のMCHを補充しなければならない回数は、端末1に対して新規のMCHを補充しなければならない回数に比べて低減される場合がある。よって、端末201のメンテナンスは一層容易になる。
【0087】
(3)端末201では、脱水素反応が停止されるときには(S35)、水素の供給方向がMCH製造ユニット240側にされている(S30)。このため、脱水素反応が即座に停止されない場合でも、配管39の内圧の上昇を抑制することができる。なお、端末201における電源装置としての構成(水素供給部3,燃料電池5,蓄電池8,及び制御部9)構成も、端末1における電源装置としての構成と同様に、携帯電話用充電器、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、家庭用電化製品等、その他の各種機器にも良好に適用することができる。
【0088】
4.変形例
(1)端末201に対しても、端末1に対して挙げた変形例と同様の変形例を考えることができる。すなわち、バッファータンク等を配管39に設ける、水タンク27の高吸水性ポリマー27Aを省略する、水タンク27にフィルタ27Cを設ける、水タンク27と吸着器25とは別のカートリッジとする、水タンク27及び吸着器25はカートリッジ化しない、等の変形例は実施可能である。そして、それらの変形例では、端末1の変形例について説明したのと同様の更なる効果が生じる。
【0089】
(2)MCH製造ユニット240から第1のタンク17に送られるMCHは、最初に第1のタンク17に充填されていたMCHに比べて純度が低下している可能性がある。しかしながら、その場合でも、脱水素反応によって得られる水素の収量が低下するだけで、端末1の動作に大きな影響があるわけではない。
【0090】
ただし、第1のタンク17におけるMCHの純度が低下すると、S26の処理が実行されたことにより蓄電量CHが増加してS23で否定判断がなされるようになってから、S27で肯定判断がなされるまでの期間が長くなる場合がある。そこで、その期間が予め設定された所定値に達したとき、カートリッジ53の交換を促すメッセージをディスプレイ15に表示する処理等を、制御部9が実行してもよい。
【0091】
(3)また、MCHの濃度、ベンゼン環にどのくらい水素が付いているか、どのくらい二重結合が存在するか、などを検出するセンサを第1のタンク17に設けることにより、第1のタンク17におけるMCHの純度を検出して、その検出結果を制御に反映させてもよい。その場合、燃料電池5による発電を一層安定して行うことができ、蓄電池8の蓄電容量が小さい場合でも安定して端末201を使用することができる。
【0092】
(4)更に、前記(2)のように第1のタンク17におけるMCHの純度が変動することを勘案して、第1のタンク17と第2のタンク19との区別をなくして、仕切り壁54等で区画されていない一体のタンクが使用されてもよい。その場合、MCHとトルエンとが混在した液体に対して、脱水素反応器21による脱水素反応と、MCH製造ユニット240による水素添加反応とが実行されることになる。
【0093】
(5)端末201も、端末1と同様に、デスクトップパソコン,車載カーナビゲーションシステム等の据え置き型の端末や、ノートパソコン,携帯電話等の携帯可能な端末など、各種端末とすることができる。また、端末201における電源装置としての構成は、携帯電話用充電器、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、家庭用電化製品等、その他の各種機器にも適用することができる。
<カートリッジの変形例及びMCH供給施設>
1.カートリッジ253及びコンセント300の構成
端末1,201では、いずれも、第1のタンク17及び第2のタンク19をカートリッジ53に収納して、MCHの消耗時に交換される構成を採用している。これに対して、端末1,201のカートリッジ53は、次のようにホース270を介して屋内のコンセント300からMCHを供給されるカートリッジ253(
図10参照)と置き換えられてもよい。なお、カートリッジ253は、以下の点を除いてカートリッジ53と同様に構成されているので、カートリッジ253におけるカートリッジ53と同様に構成された箇所には、
図2で使用した符号を
図10でも使用して詳細な説明を省略する。以下、相違点について説明する。
【0094】
図10に示すカートリッジ253は、端面53Bに、次のような開口257,259と差込部261,263とが設けられた点で、カートリッジ53と異なる。すなわち、端面53Bには、第1のタンク17内と外部とを連通する開口257が設けられていると共に、第2のタンク19内と外部とを連通する開口259が設けられている。また、端面53Bうち、開口257の周囲には、円筒状の差込部261が外側に向けて立設され、開口259の周囲には、円筒状の差込部263が外側に向けて立設されている。なお、差込部261,263の外径は同じで、差込部61,63よりも小さく構成されている。
【0095】
ホース270は、2本のホース271,273を束ねて構成され、そのうちのホース271の一端が差込部261に外嵌される。もう一方のホース273の一端は、差込部263に外嵌される。ホース271の他端は、プラグ330に設けられた円筒状の差込部331に外嵌され、ホース273の他端は、プラグ330に設けられた円筒状の差込部333に外嵌される。以下、コンセント300とプラグ330との構成について説明する。
【0096】
屋内の壁Wの内側(屋内から見た内側、すなわち室外側)には、MCHを屋内方向に供給する管281と、トルエン等を含む液体を屋内側から回収する管283とが敷設されている。コンセント300は、この管281,283に連接された差込部301,303と、壁Wを直方体状に掘削して形成された凹部310とを備えている。なお、
図11には、このコンセント300の構成を概略的に斜視図で図示したので参照されたい。
図11では、説明の便宜上、差込部301,303を大きめに描いている。
【0097】
管281,283は、全体として断面長方形の角柱形の管として構成され、前記長方形断面の長辺の中心を結ぶ面に沿って形成された仕切り壁284により、管281と管283とに仕切られている。管281の屋内側の端部は、絞り部285にて小径に絞られ、差込部61と同一形状の差込部301とされている。この差込部301は、凹部310の奥側に設けられた底面311から突出している。管283の屋内側の端部は、絞り部287にて小径に絞られ、差込部63と同一形状の差込部303とされている。この差込部303も、底面311から突出している。
【0098】
絞り部285には、差込部301と管281との連通状態を変更するシャッター295が設けられている。シャッター295は、シャッター65と同様に回動軸295Aを中心として回動可能な部材であり、絞り部285の内面に当接して差込部301と管281との連通を遮断する遮断位置と、差込部301と管281とを連通させる連通位置との間で回動可能である。ただし、シャッター295は、図示しないバネにより、絞り部285の内面方向、すなわち遮断位置に向けて付勢されており、外力を加えない限り、遮断位置にある。
【0099】
絞り部287には、差込部303と管283との連通状態を変更するシャッター297が設けられている。シャッター297は、シャッター67と同様に回動軸297Aを中心として回動可能な部材であり、絞り部287の内面に当接して差込部303と管283との連通を遮断する遮断位置と、差込部303と管283とを連通させる連通位置との間で回動可能である。ただし、シャッター297は、図示しないバネにより、絞り部287の内面方向、すなわち遮断位置に向けて付勢されており、外力を加えない限り、遮断位置にある。
【0100】
凹部310の壁Wに対する開口部は、差込部301,303が隣接する方向に平行な長辺を有する長方形に構成されている。その開口部の短辺に対応する凹部310の一対の内壁面313,313には、互いに対向する方向に丸みを帯びつつ突出した一対の板バネ315,315が、ビス317,317を介して固定されている。
【0101】
プラグ330の差込部331,333とは反対側(すなわち凹部310に挿入される側)の端面335は、凹部310の開口部の形状と相似でかつ一回り小さい長方形に構成されている。プラグ330には、端面335が絞り部285,287に当接したときに差込部301に液密に外嵌される管337が設けられている。この管337は端面335に開口し、かつ、差込部331の内部空間とプラグ330の内部で連通している。また、プラグ330には、端面335が絞り部285,287に当接したときに差込部303に液密に外嵌される管339が設けられている。この管339は端面335に開口し、かつ、差込部333の内部空間とプラグ330の内部で連通している。
【0102】
プラグ330の外面には、管337,339が差込部301,303に外嵌される位置まで凹部310に挿入されたときに、板バネ315,315と係合する凹部341,341が形成されている。この板バネ315,315と凹部341,341との係合により、管337が差込部301に液密に外嵌され、かつ、管339が差込部303に液密に外嵌された状態が維持される。
【0103】
また、管337の内壁には、L字型の棒状部材であるシャッター押出棒347が取り付けられており、その先端347Aは、端面335から外方向に突出している。また、管339の内壁には、L字型の棒状部材であるシャッター押出棒349が取り付けられており、その先端349Aは、端面335から外方向に突出している。
【0104】
コンセント300からプラグ330が外れているときは、シャッター295,927には外力が加わっておらず、前述のように差込部301,303と管281,283との連通は遮断されている。このため、管281に供給されたMCHが差込部301を介して漏れることはない。また、管283の内部にトルエン等を含む液体があったとしても、その液体が差込部303を介して漏れることはない。
【0105】
コンセント300にプラグ330に取り付けるときは、端面335を先頭とする向きで、プラグ330を凹部310に差し込み、
図10に示すように、板バネ315,315が凹部341,341に係合するまで押し込む。このとき、差込部301に管337が外嵌されると共に、シャッター押出棒347がシャッター345を押して開放するので、管337と管281とが差込部301を介して連通する。また、差込部303に管339が外嵌されると共に、シャッター押出棒349がシャッター397を押して開放するので、管339と管283とが差込部303を介して連通する。その結果、管281と第1のタンク17とが連通し、管283と第2のタンク19とが連通する。
【0106】
板バネ315,315と凹部341,341との係合力に抗して凹部310からプラグ330を引き抜くと、シャッター押出棒347,349はシャッター295,297から離れるので、自動的に、シャッター295,297は閉じる。
【0107】
2.MCH供給施設350の構成
図12は、管281にMCHを供給するMCH供給施設350の構成を表す説明図である。
図12に示すように、MCH供給施設350は、一端に風車351が接続されたシャフト352に、クラッチ353を介して発電機354を接続した風力発電機としての構成を有している。シャフト352は風車351と一体に回転する。クラッチ353が接続状態のときは、シャフト352の回転が発電機354に伝達され、その発電機354において発電がなされる。
【0108】
また、シャフト352の回転は、減速器355を介してクランク357に伝達される。なお、減速器355はベルト,ギヤ,チェーン等の中から適宜の構成を組合せてなり、減速率が調整可能な周知のものである。クランク357は、自身の回転に応じて、第1のシリンダ361に挿入された第1のピストン362をその第1のシリンダ361内で往復運動させると共に、第2のシリンダ363に挿入された第2のピストン364をその第2のシリンダ363内で往復運動させる。なお、クランク357は、第1のピストン362と第2のピストン364とを、互いに位相が180°異なるように往復運動させる。また、第1のシリンダ361外側には、第1のシリンダ361の内部空間を加熱するヒータ365が設けられている。第2のシリンダ363外側には、第2のシリンダ363の内部空間を加熱するヒータ366が設けられている。
【0109】
第1のシリンダ361の内部には、前述の脱水素触媒を担持した第1の触媒担持体367が挿入されている。第1の触媒担持体367は、第1のピストン362の往復運動に拘わらず、その第1のピストン362と第1のシリンダ361とに囲まれた空間全域に脱水素触媒が配設されるよう、バネ状に構成された金属に前記脱水素触媒を担持させたものである。第2のシリンダ363の内部には、前述の水素添加触媒を担持した第2の触媒担持体368が挿入されている。第2の触媒担持体368は、第2のピストン364の往復運動に拘わらず、その第2のピストン364と第2のシリンダ363とに囲まれた空間全域に配設されるよう、バネ状に構成された金属に前記水素添加触媒を担持させたものである。
【0110】
なお、
図12では、第1の触媒担持体367及び第2の触媒担持体268の構成を簡略化して描いているが、第1の触媒担持体367及び第2の触媒担持体268は、メッシュ状,綿状等の、より良好に触媒を空間全域に配設させる形状とされるのが望ましい。また、第1のシリンダ361と第2のシリンダ363との間には、ヒートパイプ369が設けられている。
【0111】
更に、MCH供給施設350は、水素を高圧ガスの状態で収容する水素タンク371と、MCHを収容するMCHタンク372と、トルエンを含んだ液体を収容するトルエンタンク373とを備えている。また、MCH供給施設350は、それらのタンク371〜373に関連して、配管374,375,376,377,378,379と、弁381,382,383,386,387,388とを備えている。
【0112】
配管374は第1のシリンダ361の内部と水素タンク371とを接続し、弁381は開閉されることによって配管374内の流体(主として水素)の流通を許可又は遮断する。配管375は第1のシリンダ361の内部とMCHタンク372とを接続し、弁382は開閉されることによって配管375内の流体(主としてMCH)の流通を許可又は遮断する。配管376は第1のシリンダ361の内部とトルエンタンク373とを接続し、弁383は開閉されることによって配管376内の流体(主としてトルエン)の流通を許可又は遮断する。
【0113】
配管377は第2のシリンダ363の内部と水素タンク371とを接続し、弁386は開閉されることによって配管377内の流体(主として水素)の流通を許可又は遮断する。配管378は第2のシリンダ363の内部とMCHタンク372とを接続し、弁387は開閉されることによって配管378内の流体(主としてMCH)の流通を許可又は遮断する。配管379は第2のシリンダ363の内部とトルエンタンク373とを接続し、弁388は開閉されることによって配管379内の流体(主としてトルエン)の流通を許可又は遮断する。
【0114】
クランク357が回転して第1のシリンダ361及び第2のシリンダ363の内部の容積が変化するのに応じて、弁381〜388は以下のように開閉される。なお、弁381〜388は、ガソリンエンジンのようにカム等の動作によって開閉されてもよく、弁381〜388として電磁弁が採用された場合はコンピュータ制御によって開閉されてもよく、その他の方法で開閉されてもよい。また、発電機354が発電した電力の一部は水を酸素と水素とに電気分解する周知の電解槽390にも送られ、その水素は水素タンク371に送られる。
【0115】
図13に示すように、第1のシリンダ361では、次のような2つのサイクルで反応が進行する。第1のシリンダ361の容積が増大するとき、弁381,383が閉じられ、弁382が開かれる。すると、第1のシリンダ361には、配管375を介して、MCHタンク372からMCHが吸入される。なお、配管375及び弁382は一定の流路抵抗を有しており、このとき第1のシリンダ361の内部は減圧雰囲気となる。MCHの脱水素反応は減圧雰囲気で促進されるため、ヒータ365により第1のシリンダ361の内部を適宜の温度に加熱すれば良好に脱水素反応が進行する。
【0116】
第1のシリンダ361の容積が減少するとき、弁381,383が開かれ、弁382が閉じられる。すると、前記脱水素反応で生成されたトルエンを含む液体と水素とが、配管374,376を介して第1のシリンダ361から排出される。なお、配管374は、第1のシリンダ361に対して、第1のピストン362の往復運動範囲外の最上部に接続されている。これに対して、配管376は、第1のシリンダ361に対して、第1のピストン362の往復運動範囲外の最下部に接続されている。このため、気体の水素は配管374を介して水素タンク371に送られ、トルエンを含む液体は配管376を介してトルエンタンクに送られる。なお、配管374,376の間に気液分離器を設けて、水素とトルエンとを一層良好に分離してもよいことはいうまでもない。
【0117】
第1のシリンダ361の内部では、このように、クランク357の回転によって第1のピストン362が往復運動する毎に、MCHの吸入及び脱水素反応と、水素及びトルエンの排出とが繰り返し実行される。
【0118】
第2のシリンダ363では、次のような4つのサイクルで反応が進行する。先ず、第2のシリンダ363の容積が増大するとき(
図13における2つ目のサイクル)、弁386,388が開かれ、弁387が閉じられる。すると、第2のシリンダ363には、配管377を介して水素タンク371から水素が吸入され、かつ、配管379を介してトルエンタンク373からトルエンを含む液体が吸入される。なお、配管377,379及び弁386,388の流路抵抗は、水素とトルエンとが水素添加反応に適した割合で第2のシリンダ363に吸入されるように設計されている。
【0119】
次に第2のシリンダ363の容積が減少するとき、弁386,387,388は全て閉じられる。すると、先のサイクルで第2のシリンダ363に吸入された水素及びトルエンは、加圧雰囲気に置かれる。トルエンの水素添加反応は加圧雰囲気で促進されるため、ヒータ366により第2のシリンダ363の内部を適宜の温度に加熱すれば良好に水素添加反応が進行する。また、このとき、第1のシリンダ361の内部では、MCHの脱水素反応が起こっている。トルエンの水素添加反応は発熱反応であり、MCHの脱水素反応は吸熱反応である。このため、第1のシリンダ361と第2のシリンダ363と間では、ヒートパイプ369を介して熱がやりとりされ、両方の反応を良好に進行させることができる。
【0120】
次に第2のシリンダ363の容積が増大するとき、弁386が開かれ、弁387,388が閉じられる。すると、配管377を介して水素タンク371から水素が吸入される。すると、未反応のトルエンに対する水素添加反応が進行する。ただし、水素はある程度ガスの状態で第2のシリンダ363の内部に残る。
【0121】
次に第2のシリンダ363の容積が減少するとき、弁387が開かれ、弁386,388が閉じられる。ここで、配管378は、第2のシリンダ363に対して、第2のピストン364の往復運動範囲外の最下部に接続されている。このため、第2のシリンダ363の容積が減少するとき、水素添加反応によって生成されたMCHは、第2のシリンダ363に残留した水素に押し出されるようにして配管378を介して排出され、MCHタンク372に送られる。なお、このとき、水素の一部もMCHに混入してMCHタンク372に送られる可能性があるが、大きな問題は生じない。寧ろ、MCHタンク372に未反応のトルエンが送られてしまった場合に、前記混入した水素により水素添加反応が生じる可能性がある。
【0122】
減速器355は、前記各反応が円滑に進行するように、クランク357の回転速度を調整する。また、クランク357の回転速度の調整は、クラッチ353を介してシャフト352に発電機354を接続することによってもなされる。そして、発電機354がシャフト352に接続されたときに発電された電力の一部は、電解槽390に供給され、その電力供給に応じて生成された水素が水素タンク371に供給される。
【0123】
MCHタンク372は、管397を介して前述の管281にMCHを供給する。また、トルエンタンク373には、前述の管283からトルエンを含む液体が管398を介して供給される。そこで、MCH供給施設350では、第1のシリンダ361及び第2のシリンダ363の断面積は、前記反応が全体としてトルエンをMCHに変換する方向に進行するように設計されている。そして、そのとき消費される水素は、前述のように電解槽390から補充される。なお、水素はタンクローリー等からも水素タンク371へ供給されてもよい。また、一対の管397,398は、道路の下等に都市ガスの敷設管と同様に敷設管399として敷設されている。
【0124】
3.カートリッジ253及びMCH供給施設350が奏する効果
(1)カートリッジ253では、プラグ330をコンセント300に接続することにより、都市ガスや電気を使用する場合と同様にMCHの供給を受け、トルエンを含む液体を排出することができる。このため、端末1又は201にカートリッジ253を装着した場合、端末1又は201について説明した前述の効果をそのまま維持しつつ、その端末1又は201を連続して使用し続けるのが一層容易になる。
【0125】
(2)MCH供給施設350では、風力を利用して第1のピストン362及び第2のピストン364の往復運動がなされ、第1のシリンダ361と第2のシリンダ363と間でヒートパイプ369を介して熱がやりとりされるため、効率的にトルエンがMCHに変換される。従って、MCH供給施設350及び敷設管399を備えた都市のエネルギー効率を向上させることができる。
【0126】
4.変形例
(1)MCH供給施設350の主たる処理は、トルエンをMCHに変換する処理である。従って、第1のシリンダ361及び第1のピストン362は省略されてもよい。ただし、その場合、クランク357の回転位相に起因するクランク357の回転負荷のばらつきを抑制するため、第2のシリンダ363及び第2のピストン364が複数設けられ、その複数の第2のピストン364の回転位相が等角度ずつずれているのが望ましい。
【0127】
(2)第1のシリンダ361及び第2のシリンダ363は、複数ずつ設けられてもよい。また、第1のシリンダ361及び第2のシリンダ363はロータリーエンジンの燃焼室と同様の構成に置き換えられてもよい。
【0128】
(3)コンセント300は、MCHから水素を取得して燃料電池に供給することによって走行する燃料電池車に設けられてもよい。また、そのような燃料電池車の車室内にホース270が直接突出していてもよい。すなわち、MCHから水素を取得して走行する燃料電池車は、MCHを供給するためのタンクやトルエンを含む液体を回収するためのタンクを備えている。そこで、その燃料電池車を、端末1,201又はそれと同様の構成を有する各種機器に対して、MCHを供給すると共にトルエンを含む液体を回収するタンクローリーのように使用してもよい。
【0129】
(4)MCH供給施設350のクランク357は、内燃機関によって回転されてもよく、人力によって回転されてもよい。MCH供給施設350の構成を小形化して携帯型の端末1等に搭載すれば、ハンドルを手で回してクランク357を回転させることにより、第2のタンク19内のトルエンを含む液体をMCHに変換して第1のタンク17に供給することも可能となる。
<第3の実施形態>
1.端末401の構成
電源装置の一実施形態である端末401の構成を
図14に基づき説明する。なお、端末401は、多くの部分が端末1と同様に構成されている。そこで、端末401において端末1と同様に構成された箇所には、
図1〜
図6で使用した符号を
図14でも使用して詳細な説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0130】
図14に示すように、端末401は、吸着器25及び水タンク27をカートリッジ153に収納した構成を有しておらず、吸着器25及び水タンク27は個々に端末401の内部に装着されている。なお、吸着器25及び水タンク27の少なくともいずれか一方は、交換不能であってもよい。
【0131】
端末401では、水タンク27には、その水タンク27の内部の水量を検出する水量センサ27Bと、水タンク27の内部の水を端末401の外部に排出するための排水管410とが設けられている。更に、排水管410には、開閉されることによって排水管410における水の流通を許可又は遮断する弁411が設けられている。なお、弁411は、手動で開閉可能な弁である。更に、端末401には、振動によって所有者に告知を行う告知装置420が設けられている。
【0132】
2.端末401が実行する処理
図15は、端末401の制御系の構成を表すブロック図である。
図15に示すように、端末401の制御部9には、端末1と同様に入力部11、HDD13、ディスプレイ15、ヒータ21A、ポンプ29,31、及び蓄電量センサ8Aが接続され、更に、水量センサ27Bと告知装置420とが接続されている。
【0133】
端末201のメイン電源がONであるとき、制御部9では、ROM47に記憶されたプログラムをCPU45が読み出すことにより、前述の
図5の処理と
図16のフローチャートに示す処理とが並行して繰り返し実行される。
【0134】
図16の処理では、先ず、S61にて、水量センサ27Bを介して水タンク27の水量Lmが取得される。続くS63では、S61で取得された水量Lmが予め設定された上限値以上であるか否かが判断される。水量Lmが上限値未満である場合は(S63:N)、処理はそのまま一旦終了し、水量Lmが上限値以上の場合は(S63:Y)、処理はS64へ移行する。S64では、告知装置420を介して満水であることが告知されて、処理が一旦終了する。
【0135】
3.端末401が奏する効果
(1)端末401でも、端末1と同様の
図5の処理がなされることによって、脱水素反応器21における脱水素反応は、蓄電池8の蓄電量CHを下限値と上限値との間に維持するのに必要かつ十分な程度でしか実行されない。従って、端末401内にバッファータンク等の水素収容部を特別に設ける必要がない。従って、端末401の安全性が向上し、かつ、端末401は良好に小形化することができる。
【0136】
(2)端末401では、告知装置420による告知がなされたときに所有者が弁411を開いて水タンク27の内部の水を外部に排出することによって、水タンク27の満水に対応することができる。従って、端末401では、一層構成が簡略化され、その製造コストが一層低減されると共に、その小形化が一層容易になる。
【0137】
4.変形例
(1)告知装置420は、振動によって告知を行う装置の他、音声や低周波刺激等、各種方法によって所有者に告知を行う装置に置き換えることができる。また、水タンク27に収容された水が飲料水として使用可能な場合、排水管410の端末401外部に露出した部分に飲み口を設けてもよい。
【0138】
(2)端末401も、端末1と同様に、デスクトップパソコン,車載カーナビゲーションシステム等の据え置き型の端末や、ノートパソコン,携帯電話等の携帯可能な端末など、各種端末とすることができる。また、端末401における電源装置としての構成(水素供給部3,燃料電池5,蓄電池8,制御部9,排水管410,及び弁411)の構成は、携帯電話用充電器、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、家庭用電化製品等、その他の各種機器にも適用することができる。特に、端末401における電源装置としての構成を備えた各種機器が車載して使用される場合や、端末401における電源装置としての構成が電気自動車に適用された場合、排水管410から排出される水は、車室内の所定位置にセットされたカップに溜まるようにされてもよい。また、端末401における電源装置としての構成を備えた装置が携帯型の機器である場合、前記告知に応じて所有者は排水管410から排出される水を側溝等に容易に捨てることができる。
<第4の実施形態>
1.端末501の構成
電源装置の一実施形態である端末501の構成を
図17に基づき説明する。なお、端末501は、多くの部分が端末1と同様に構成されている。そこで、端末501において端末1と同様に構成された箇所には、
図1〜
図6で使用した符号を
図17でも使用して詳細な説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0139】
図17に示すように、端末501も端末401と同様、吸着器25及び水タンク27をカートリッジ153に収納した構成を有しておらず、吸着器25及び水タンク27は個々に端末501の内部に装着されている。なお、吸着器25及び水タンク27の少なくともいずれか一方は、交換不能であってもよい。更に、端末501は、水素供給部3に、電解槽530(水処理部の一例)と、オゾン水タンク533と、ポンプ534と、配管535,536,537,538とを備えている。
【0140】
電解槽530は、例えば、特開2005−336607号公報等に記載のように、水を電気分解してオゾン水と水素とを生成する周知のものである。すなわち、電解槽530は、固体高分子膜を挟んで陽極室及び陰極室(図示省略)を設け、陽極室側の固体高分子膜表面に多孔質状又は網状の陽極(図示省略)を、陰極室側の固体高分子膜表面に多孔質状又は網状の陰極(図示省略)を、それぞれ設けたものである。なお、固体高分子膜としては、例えばナフィオン(登録商標)等が使用される。このような電解槽530では、陽極室及び陰極室に水を供給して陽極と陰極との間に適宜の電圧を印加することで、陰極室には水素ガスを含む水が、陽極室にはオゾン水が、それぞれ生成される。
【0141】
配管535は、電解槽530と水タンク27とを連結する。なお、配管535は、電解槽530の陽極室と陰極室とにそれぞれ水を供給できるように途中で電解槽530側が2本に分岐しており、その分岐部よりも水タンク27側(すなわち、水の流通方向上流側)にポンプ534が設けられている。
【0142】
配管356は、電解槽530の陰極室とオゾン水タンク533とを接続している。配管537は、配管536の途中に設けられた分岐部539から分岐して、配管35に接続されている。配管538は、分岐部539とオゾン水タンク533との間の配管536と、電解槽530の陽極室とを接続している。
【0143】
このため、ポンプ534に通電がなされると、水タンク27内の水が電解槽530の陽極室と陰極室とに供給され、そのとき電解槽530の陽極と陰極との間に通電がなされていると、陽極室にオゾン水が、陰極水に水及び水素が、それぞれ生成される。分岐部539は、配管537が重力方向上向きに、配管536が重力方向水平又は下向きに、それぞれ配設されるように構成されている。このため、陰極室に生成された水素は、配管536,分岐部539,配管537を順次経由して配管35に送られる。すると、その水素は、前述のように燃料電池5における発電に用いられる。
【0144】
また、電解槽530の陰極室から送り出された水は、配管536を介してオゾン水タンク533に送られる。そのとき、陰極室から送り出された水には、配管538を介して陽極室から送り出されたオゾン水が合流し、体や食器の洗浄に適したオゾン濃度のオゾン水とされてオゾン水タンク533に収容される。なお、このオゾン水のオゾン濃度は電解槽530への印加電圧や、ポンプ534による水の供給速度を調整することによって調整可能である。
【0145】
また端末501では、水タンク27に、その水タンク27の内部の水量を検出する水量センサ27Bが設けられている。また、オゾン水タンク533には、そのオゾン水タンク533内部のオゾン水の量を検出するオゾン水センサ533Aと、オゾン水タンク533の内部のオゾン水を端末501の外部に排出するための排水管540とが設けられている。更に、排水管540には、開閉されることによって排水管540における水の流通を許可又は遮断する弁541が設けられている。なお、弁541は、手動で開閉可能な弁である。更に、端末501には、端末401と同様に、振動によって所有者に告知を行う告知装置420が設けられている。
【0146】
2.端末501が実行する処理
図18は、端末501の制御系の構成を表すブロック図である。
図15に示すように、端末501の制御部9には、端末1と同様に入力部11、HDD13、ディスプレイ15、ヒータ21A、ポンプ29,31、及び蓄電量センサ8Aが接続され、更に、水量センサ27Bと告知装置420とオゾン水センサ533Aとポンプ534とが接続されている。
【0147】
端末201のメイン電源がONであるとき、制御部9では、ROM47に記憶されたプログラムをCPU45が読み出すことにより、前述の
図5の処理と
図19のフローチャートに示す処理とが並行して繰り返し実行される。
【0148】
図19の処理では、先ず、S71にて、水量センサ27Bを介して水タンク27の水量Lmが取得され、かつ、オゾン水センサ533Aを介してオゾン水タンク533のオゾン水量Loが取得される。続くS72では、S71で取得されたオゾン水量Loが予め設定された上限値以上であるか否かが判断される。オゾン水量Loが上限値未満である場合は(S72:N)、処理はS73へ移行する。
【0149】
S73では、S71で取得された水量Lmが予め設定された下限値以上であるか否かが判断される。水量Lmが下限値未満である場合は(S73:N)、処理はS75へ移行する。S75では、電解槽530及びポンプ534への通電が停止されることにより、電解槽530への通水が停止され、かつ、その電解槽530における電気分解が停止される。なお、前記下限値は、水タンク27内の水を電解槽530に送って電気分解を行うことが可能な下限の水量として設定されている。また、処理がS75へ移行した時点で電解槽530及びポンプ534への通電が既に停止されていた場合は、S75ではその通電停止が継続される。
【0150】
一方、S73にて水量Lmが下限値以上であると判断された場合は(S73:Y)、処理はS77へ移行する。S77では、電解槽530及びポンプ534への通電が開始されることにより、電解槽530への通水が開始され、かつ、その電解槽530における電気分解が開始される。なお、処理がS77へ移行した時点で電解槽530及びポンプ534への通電が既に開始されていた場合は、S77ではその通電が継続される。
【0151】
また、S72にてオゾン水量Loが上限値以上であると判断された場合は(S72:Y)、処理はS78へ移行する。S78では、告知装置420を介して満水であることが告知される。続くS79では、S75と同様に電解槽530及びポンプ534への通電が停止されて、処理が一旦終了する。
【0152】
3.端末501が奏する効果
(1)端末501でも、端末1と同様の
図5の処理がなされることによって、脱水素反応器21における脱水素反応は、蓄電池8の蓄電量CHを下限値と上限値との間に維持するのに必要かつ十分な程度でしか実行されない。従って、端末501内にバッファータンク等の水素収容部を特別に設ける必要がない。従って、端末501の安全性が向上し、かつ、端末501は良好に小形化することができる。
【0153】
(2)端末501では、水タンク27の内部の水が電解槽530に送られるため水タンク27が満水となるのを抑制することができる。そして、電解槽530にて生成されたオゾン水は、必要に応じて所有者が弁541を開くことで排水管540を介して外部に排出される。このため、所有者は、そのオゾン水を体や食器の消毒・殺菌に利用することができる。
【0154】
(3)告知装置420による告知がなされたときに所有者が弁541を開いてオゾン水タンク533の内部のオゾン水を外部に排出することによって、オゾン水タンク533の満水に対応することができる。このようにオゾン水が排出されることにより、オゾン水量Loが上限値未満となって(S72:N)、水タンク27内の水の電気分解が再開され(S77)、水タンク27が満水となることも抑制される。
【0155】
(4)端末501では、水タンク27に収容された水を電気分解して、得られた水素を再び燃料電池5に供給することができる。従って、カートリッジ53の交換回数が減少し、端末501のメンテナンスは一層容易になる。なお、分岐部539には気液分離器23と同様の気液分離器を設けて気体成分(水素)を配管37に送ってもよい。その場合、電気分解で得られた水素を一層効率的に回収することができる場合がある。
【0156】
4.変形例
(1)端末501でも、端末401と同様、告知装置420は、振動によって告知を行う装置の他、音声や低周波刺激等、各種方法によって所有者に告知を行う装置に置き換えることができる。
【0157】
(2)端末501も、端末1と同様に、デスクトップパソコン,車載カーナビゲーションシステム等の据え置き型の端末や、ノートパソコン,携帯電話等の携帯可能な端末など、各種端末とすることができる。また、端末501における電源装置としての構成(水素供給部3,燃料電池5,蓄電池8,制御部9,排水管540,及び弁541)の構成は、携帯電話用充電器、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、家庭用電化製品等、その他の各種機器にも適用することができる。
【0158】
(3)電解槽530は、水を気体状の酸素及び水素に電気分解するものに置き換えられてもよい。その場合、オゾン水タンク533や配管536.537.538等の構成が不要となり、装置を一層小型化することができる。ただし、その場合、オゾン水を端末501で生成することは不可能となる。
<他の実施形態>
(1)なお、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、端末1〜501及びその変形例の構成は、適宜組み合わせたり一部を省略したりすることができる。また、ポンプ31は省略されてもよい。その場合、燃料電池5に水素が供給されるか否かは脱水素反応器21における反応状態に応じて変化するが、
図5又は
図9の処理における蓄電量CHの上限値及び下限値に余裕を持たせれば大きな問題は生じ難い。また、有機ハイドライドとしては、MCH以外にも、シクロヘキサン,デカリン,メチルデカリン等の各種有機ハイドライドを使用することができる。その場合でも、脱水素反応器21において脱水素化を行うことができる。
【0159】
(2)また、端末1〜501及びその変形例において、蓄電池8には商用交流電源や自動車のシガーライター等の外部電源から蓄電を行うことも可能とされてもよい。特に、水タンク27に収容された水が飲料水として使用される場合やオゾン水として使用される場合は、当該飲料水やオゾン水の生成を目的として蓄電池8に外部電源から蓄電する使用方法も考えられる。
【0160】
(3)また、
図20に示すように、水タンク27に収容された水は次のようなヒートシンク700へ送られてCPU45等の冷却に使用されてもよい。ヒートシンク700(水処理部の一例)は、一般のヒートシンクと同様に多数のフィン701が立設されたベース702の内部に、水タンク703を有している。また、フィン701には、水タンク703の内部と連通する毛細管705が樹状に形成され、その毛細管705はフィン701の表面に開口している。水タンク27と水タンク703とは配管741によって接続され、配管741にはポンプ743が設けられている。
【0161】
このため、水タンク27に収容された水は、ポンプ743によって配管741を介して水タンク703に送られる。水タンク703に送られた水は、毛細管705を介してフィン701の表面に達して気化することにより、CPU45を冷却する。また、CPU45が発生するによって前記気化が促進される。ポンプ743の駆動電力、すなわち水タンク703への給水速度はCPU45の発熱量に比例するように制御されてもよい。
【0162】
従って、このようなヒートシンク700を利用した場合、水タンク27に収容された水を気化させて水タンク27が満水になるのを抑制することと、CPU45を冷却することとが同時に実行できる。なお、ヒートシンク700は、蓄電池8に設けられてその蓄電池8を冷却するために使用されてもよい。また、MCH製造ユニット240では前述のように発熱反応が起こる。そこで、MCH製造ユニット240にヒートシンク700を設ければ、水タンク27に収容された水を効率的に気化させることができる。更に、ヒートシンク700のフィン701が室内に露出するように配置された場合、そのフィン701における毛細管705の開口部から水蒸気が出るので、室内を加湿することもできる。
【0163】
なお、水タンク27に収容された水を用いてCPU45等を冷却する構成としては、ヒートシンク700の構成以外にも種々の構成が適用できる。例えば、CPU45の周囲にパイプを設けてそのパイプに前記水を流通させることによって、CPU45を水冷してもよい。