(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247955
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】日射量推定装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20171204BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20171204BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20171204BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/38 130
G06Q50/06
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-30457(P2014-30457)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-156738(P2015-156738A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】大西 司
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 孝宜
(72)【発明者】
【氏名】石田 宏樹
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−225970(JP,A)
【文献】
特開2002−250778(JP,A)
【文献】
特開2013−162666(JP,A)
【文献】
特開2012−138448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/12
G06F19/00
G06Q10/00 −10/10
30/00 −30/08
50/00 −50/20
50/26 −99/00
H01L31/02
31/0216−31/0224
31/0236
31/0248−31/0256
31/0352−31/036
31/0392−31/078
31/18
51/42 −51/48
H02J 3/00 − 5/00
H02S10/00 −10/40
30/00 −99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測装置によって計測された表面負荷を記憶する表面負荷記憶部と、直近の時刻毎の最小表面負荷を計算する最小表面負荷計算部と、実負荷を推定する実負荷推定部と、表面負荷測定値と実負荷推定値と最小表面負荷とに基づいて最大発電量に対する現在の発電量の割合を計算する表面負荷割合計算部と、理論的に求められる最大日射量を計算する最大日射量計算部と、最大日射量と最大発電量に対する現在の発電量の割合に基づいて日射量推定値を計算する日射量推定部と、を含むことを特徴とする日射量推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の日射量推定装置であって、
前記計測装置は、フィーダ遮断器、開閉器または需要家電力計測装置であることを特徴とする日射量推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の日射量推定装置であって、
前記最小表面負荷計算部は、直近30日の時刻毎の最小表面負荷を計算することを特徴とする日射量推定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の日射量推定装置であって、
前記最大日射量計算部は、日時と緯度および経度から理論的に計算される日射量に、快晴時の大気透過率を用いて最大日射量を計算することを特徴とする日射量推定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の日射量推定装置であって、
前記実負荷推定部は、太陽光発電機の有る地域の実負荷を太陽光発電機の無い地域の負荷と類似しているとして実負荷を推定することを特徴とする日射量推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日射量推定装置に係り、特に電気事業者が常時電流監視のために収集している負荷電流値を使用した日射量推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、太陽光発電機の設置台数が増えている。太陽光発電機は、国が推進していることもあり将来的にもその台数は増大する見通しである。需要家に設置されている太陽光発電機は、電気事業者が管理している送電線(配電系統)に連系している。太陽光発電機の発電量のうち需要家において消費されなかった余剰電力は、連系する配電系統に送られる。そのため、発電所などの設備において測定される電力供給量では、太陽光発電機が設置された需要家の消費電力(実負荷)ではなく、見かけ上の負荷(実負荷の合計値から余剰電力合計を差し引いた値:以下表面負荷と呼ぶ)しか把握することができない。
【0003】
特許文献1の段落番号0004、0005には、太陽光発電機のパワーコンディショナが、停電からの復旧のとき、数分間連系しないことに原因する二次的な停電事故の懸念が開示されている。
【0004】
電気事業者は、安定した電力供給のためには電力需要を精度良く予測する必要がある。電力需要の予測では、太陽光発電機の影響が小さかった場合には、電力を供給する地域全体の負荷(実負荷)を推定するだけでよかった。しかし、今後太陽光発電機の設置台数が増大するにつれて、太陽光発電機の発電量も大きくなり、その影響は無視できるものではなくなる。そのため、電力需要を精度良く予測するために、太陽光発電機の発電量についても正確に推定する必要がある。また、停電からの復旧のとき、太陽光発電機の発電量分だけ増やして、送電する必要がある。
【0005】
太陽光発電の発電量を推定する単純な方法として、太陽光発電の有る地域の負荷データと太陽光発電の無い地域の負荷データを比較し、それらの差分を太陽光発電の発電量として推定することができる。しかし、この方法は、太陽光発電の有無によって負荷の使用量に影響が生じないという前提が常時成立していなければ推定乖離が大きくなり、また、すべての地域に関して比較対象を決めなければならず、現実的な方法ではない。
【0006】
一方、太陽光発電機の発電量は、日射量から計算することができる。ある地域の日射量を推定することができた場合、その地域すべての太陽光発電機の発電量を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−044739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
日射量は、日射計を設置した地点で計測することができる。しかし、太陽光発電機を設置する地域の日射量を計測するためには多数の日射計を設置しなければならずコスト面で、非現実的である。
【0009】
特許文献1は、また、日射量の推定について、日時と緯度経度から理論的に求められる日射量に対して大気透過率を適用する方法を開示する。しかし、大気透過率を用いる方法では快晴時の日射量を求めるため気象の変化に対応することができず、曇りや雨の日などは精度が大幅に落ちる。
【0010】
本発明の目的は、日射計を必要とせず気象の変化にも対応できる日射量推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題は、計測装置によって計測された表面負荷を記憶する表面負荷記憶部と、直近の時刻毎の最小表面負荷を計算する最小表面負荷計算部と、実負荷を推定する実負荷推定部と、表面負荷測定値と実負荷推定値と最小表面負荷とに基づいて
最大発電量に対する現在の発電量の割合を計算する表面負荷割合計算部と、理論的に求められる
最大日射量を計算する最大日射量計算部と、最大日射量と
最大発電量に対する現在の発電量の割合に基づいて日射量推定値を計算する日射量推定部と、を含む日射量推定装置により、達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本実施例によれば、日射量を推定できる。電力事業者は、どの配電系統にどの程度の太陽光発電機が接続されているかを知っているため、日射量から、太陽光発電機の発電量を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】配電系統、需要家系統および日射量推定装置の接続関係を説明するブロック図である。
【
図2】日射量推定装置の構成を説明するブロック図である。
【
図3】表面負荷、理想快晴日の表面負荷、実負荷推定値、理想快晴日の日射量の日変動プロファイルを説明する図である。
【
図4】実負荷推定値の日変動プロファイルと理想快晴日の表面負荷プロファイルから理想快晴日の発電量プロファイルを求める概念を説明する図である。
【
図5】表面負荷割合計算部と日射量推定部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1を参照して、日射量推定装置が適用される配電系統を説明する。
図1において、太陽光システムは、配電系統11と、需要家電力計測装置4と、太陽光発電機5と、専用回線7と、日射量推定装置10とから構成されている。
配電系統11は、変電所1と、フィーダ遮断器2と、開閉器3とから構成されている。
図1において、変電所1から送り出された電力は、フィーダ遮断器2および開閉器3を通り、最終的には複数の需要家電力計測装置4に供給される。太陽光発電機5は、配電系統11に連系している。表面負荷を計測できる計測装置は、変電所1、フィーダ遮断器2および開閉器3における測定装置ならびに需要家電力計測装置4である。
【0015】
図2を参照して、日射量推定システムの構成を説明する。
図2において、日射量推定システムは、フィーダ遮断器2と、専用回線7と、日射量推定装置10とから構成されている。日射量推定装置10は、表面負荷記憶部12と、理想快晴日の表面負荷計算部13と、実負荷推定部14と、表面負荷割合計算部15と、理想快晴日の日射量計算部16と、日射量推定部17とから構成されている。フィーダ遮断器2は、配電系統の表面負荷を日射量推定装置10に専用回線7を介して供給する。なお、配電系統11の表面負荷を日射量推定装置10に専用回線7を介して供給するのは、開閉器3でもよいし、需要家電力計測装置4の測定値の合計でもよい。
【0016】
表面負荷記憶部12は、フィーダ遮断器2から得られる時刻ごとの表面負荷計測値121の情報を蓄積・記憶している。理想快晴日の表面負荷計算部13は、表面負荷記憶部12で蓄積記憶している直近N日(具体的には30日)の情報から時刻ごとに負荷計測値が最小となる値を晴天時の値であるとして比較抽出し、時刻ごとの最小値だけを(すなわち晴天時の値だけを)日変動プロファイルの形に並べた理想快晴日の表面負荷プロファイル131(
図3を参照して詳細に説明:以下同様)を計算する。
【0017】
実負荷推定部14は、太陽光発電機の有る地域の実負荷を太陽光発電機の無い地域の負荷と類似しているとして実負荷を推定する。あるいは、前掲の表面負荷記憶部12で蓄積・記憶している直近N日(具体的には30日)の情報から時刻ごとに負荷計測値が最大となる値を雨天時の値であるとして比較抽出し、時刻ごとの最大値だけを(すなわち雨天時の値だけを)日変動プロファイルの形に並べた理想雨天日の表面負荷プロファイルを計算し、実負荷推定値の日変動プロファイル141を出力してもよい。
【0018】
表面負荷割合計算部15は、日射量を推定したい時刻の表面負荷121と最小表面負荷計算部13から得られる最小表面負荷131および実負荷推定部14から得られる実負荷推定値141を用いて、最大発電量に対する現在の発電量の割合を計算して出力する。具体的な方法に関しては
図5を用いて説明する。
【0019】
理想快晴日の日射量計算部16は、対象の地域における日時と緯度および経度から理論的に計算される日射量に、快晴時の大気透過率を用いて計算される理想快晴日の日射量プロファイル161を出力する。理想快晴日の日射量計算部16は、日射量推定部17において表面負荷割合計算部15で求めた割合と理想快晴日の日射量計算部16で計算した理想快晴日の日射量プロファイル161を用いて日射量推定値を計算する。
【0020】
図3を参照して、表面負荷、理想快晴日の表面負荷、実負荷推定値、理想快晴日の日射量の日変動プロファイルを説明する。
図3において、
図3(a)は、表面負荷記憶部の出力である表面負荷121の日変動プロファイルである。
図3(b)は、理想快晴日の表面負荷計算部13の出力である理想快晴日の表面負荷131の日変動プロファイルである。
図3(c)は、実負荷推定部14の出力である実負荷推定値141の日変動プロファイルである。
図3(d)は、理想快晴日の日射量計算部16の出力である理想快晴日の日射量161の日変動プロファイルである。
【0021】
各時刻プロファイルの横軸は、時刻である。縦軸は、負荷(
図3(a)〜
図3(c))または日射量(
図3(d))である。
【0022】
図4を参照して、実負荷推定値の日変動プロファイル141と理想快晴日の表面負荷プロファイル131の差分から理想快晴日の発電量プロファイル201を求める概念を説明する。
図4の左図において、日射量推定装置10は、実負荷推定値の日変動プロファイル141と理想快晴日の表面負荷プロファイル131との差分を求める。この差分が、
図4の右図の理想快晴日の発電量プロファイル201である。
【0023】
一般に、発電量プロファイルは、日射量プロファイルとは必ずしも単純な比例関係にはならず一定の比例係数を定数として当てはめることはできない。これは実際に敷設されている太陽光発電パネルの方位角や傾斜角が影響して、同一日射量の条件下であっても西日による発電量が大であったり、冬の低い入射角による発電量が大であったりするからである。しかしながら、同一日の同一時刻断面で比較した場合にはー定定数の比例関係にあると言える。直近N日(具体的には30日)の期間を同一日相当とみなすと、理想快晴日の発電量プロファイル201と、
図3(d)の理想快晴日の日射量ブロファイル161とは、同一時刻においては、比例の関係になる(これはすなわち、当該対象工リアで、ある時間帯には一部のパネルに影が落ちて日射量に対して発電量が目減りするような場合にも成り立ち、いわば比例定数の日変動プロファイルを得ることに相当する)。
【0024】
図5を参照して、表面負荷割合計算部15と日射量推定部17の動作を説明する。
図5(a)において、表面負荷割合計算部15は、まず現在の表面負荷122Aと実負荷推定値141を用いて現在の発電量202Aを計算する。次に、表面負荷割合計算部15は、その値が最大発電量201に占める割合を求める。日射量推定部17は、表面負荷割合計算部15が求めた割合を最大日射量161と比較する、これによって、日射量推定部17は、現在の日射量162Aを推定する。
【0025】
図5(b)のように現在の表面負荷122Bが実負荷推定値141と近くなり発電量202Bが0に近い値となる場合には、日射量162Bは0に近い値と推定できる。逆に
図5(c)のように現在の表面負荷122Cが最小表面負荷131と近くなり発電量202Cが最大発電量201と近い値となる場合には、日射量162Cは最大日射量161に近い値と推定できる。
【0026】
本実施例によれば、電力事業者が常時電流監視のために計測・収集している表面負荷を使用するため、日射計の新たな設置の必要が無く、日射量を推定できる。また、表面負荷の計測は電気事業者の供給範囲の全域で、きめ細かく実施している事から広大な範囲の日射量推定が可能であり、計測状況に応じた地理的区分範囲の分解能が得られることや、計測の時間周期に応じた日射量変動が推定できる。
【符号の説明】
【0027】
1…変電所、2…フィーダ遮断器、3…開閉器、4…需要家電力計測装置、5…太陽光発電機、7…専用回線、10…日射量推定装置、11…配電系統、12…表面負荷記憶部、13…最小表面負荷計算部、14…実負荷推定部、15…現在表面負荷割合計算部、16…最大日射量計算部、17…日射量推定部、121…表面負荷、122…現在の表面負荷、131…最小表面負荷、141…実負荷推定値、161…最大日射量、162…現在の日射量、201…最大発電量、202…現在の発電量。