(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施の形態)
先ず、本発明に係る車両の可動部材連動機構の第1実施の形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0028】
図1は、可動部材連動機構を備えた車両を前方側から見た斜視図である。
図2は、バンパ2内部を示した斜視図である。
図3は、バンパルーバ3の一例を示した斜視図である。
図4は、可動部材連動機構の制御手段を示すブロック図である。
図5は、可動部材連動機構の動作状態を模式的に示した説明図である。
【0029】
図1に示したように、車両1の前部にはエンジンルームが設けられ、エンジンルームの上部には、同エンジンルームを覆うフード10が設けられている。前記フード10によって前記エンジンルームが開閉可能に閉蓋される。前記エンジンルームの内部には、ラジエータ及び空気調和装置のコンデンサが設けられている。
【0030】
前記ラジエータは、エンジンの冷却水を、走行風との熱交換によって冷却するものであり、冷却水が流通するチューブの周囲に多数のフィンを配置して構成されている。また、前記コンデンサは、空気調和装置の気相冷媒を、走行風との熱交換によって冷却し、凝縮させて液相とするものであり、冷媒が流通するチューブの周囲に多数のフィンを配置して構成されている。
【0031】
前記車両1の前部(エンジンルームの前側)の下側において、車幅方向に延在するバンパ2が配設され、車両1の前部の上側において、車幅方向に延在するグリル4が配設されている。
【0032】
前記バンパ2には、走行風による外気を導入し、エンジンルームに空気を通すバンパ開口部20が形成されている。そして、
図2及び3に示したように、前記バンパ開口部20には、前記バンパ2と前記ラジエータとの間に、前記エンジンルームに流入する外気の流量を調整するバンパルーバ3が配設されている。
【0033】
前記バンパルーバ3は、
図2及び
図3に示すように、前記バンパ開口部20内に車体幅方向に延設された枠体30と、前記枠体30内に車体幅方向に延設され、アクチュエータ7の駆動によって回転する回転軸31と、前記回転軸31の回転によって垂直向きと水平向きの動作を交互に繰り返してバンパ開口部20を開放し又は閉鎖する遮蔽部材32とで構成されている。
【0034】
前記枠体30は、バンパ開口部20の内周面に沿って略矩形状に形成され、車体幅方向の中間を中間部材30aによって仕切られた2つの空間を有する。
前記枠体30は、外側の上面及び下面が、バンパ開口部20の内面に固定されている。前記枠体30の内部が、前記バンパルーバ3を開いた際に外気が通過する空気流路となる。
【0035】
前記遮蔽部材32は、前記枠体30の各空間において上下に2段設置されている。
前記遮蔽部材32は、平板状で車幅方向に延在して略矩形に形成されており、短尺方向の略中央部分から車幅方向に前記回転軸31が設けられている。前記回転軸31は、両端部が枠体30の側面と中間部材30aに回転可能に支持されており、該回転軸31が回転することによって前記遮蔽部材32が回転する。
【0036】
前記バンパルーバ3の前記遮蔽部材32が、
図3に示すように、水平方向に向くと前記バンパ開口部20は全開状態となり、走行風が通過する空気路となる。一方、前記遮蔽部材32が、
図2に示したように、垂直方向に向くと前記バンパ開口部20は全閉状態となり、空気路は閉鎖される。つまり、前記バンパルーバ3により前記バンパ開口部20を開放又は閉鎖させて、前記バンパ開口部20からエンジンルーム内へ流入する外気の導入量を調節する。
【0037】
前記バンパルーバ3は、コントローラ70で制御されてバンパ開口部20の開放又は閉鎖が行われる。
前記バンパルーバ3を駆動させる手段は、
図2に示したように、枠体30の外側面に取り付けられたアクチュエータ7である。前記アクチュエータ7は電動モータであり、コントローラ70からの指令に応じ、駆動力の減速機構73を介して上下の遮蔽部材32、32を連動させる。
【0038】
前記コントローラ70は、CPU、ROM、RAMを有している。前記コントローラ70は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0039】
図4に示すように、前記コントローラ70の入力側には、車両1の速度を検出する車速センサ71が接続させている。前記車速センサ71は、例えば車輪速センサである。また、前記コントローラ70の入力側には、ラジエータの水温を測る水温センサ72が接続されている。
一方、前記コントローラ70の出力側には、前記バンパルーバ3を開放又は閉鎖させるアクチュエータ7が接続されている。前記車速センサ71と、水温センサ72により冷却負荷に関する情報を取得し、この情報に基づいて、前記コントローラ70から前記アクチュエータ7へ信号が送信される。
【0040】
図2に示すように、前記バンパ2の下部であって車両1の前側底部には、エアダム6が設けられている。前記エアダム6は、エンジンルームの車体の下側を通る空気流路を狭めるように、バンパ2内部から車体の下方へ突き出し、鉛直若しくは車両後方側へ傾斜している。前記エアダム6は、前記コントローラ70の指示により、車体下方への空気の流入を抑える必要があるときは下方へ突出し、不要なときは前記バンパ2内部に格納される。
【0041】
前記バンパルーバ3によるバンパ開口部20の開放・閉鎖と、前記エアダム6の格納・突出は、(1)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を開放させるとともに前記エアダム6を格納させる状態と、(2)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を閉鎖させるとともに前記エアダム6を格納させる状態と、(3)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を開放させるとともに前記エアダム6を突出させる状態と、(4)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を閉鎖させるとともに前記エアダム6を突出させる状態とを、単独のアクチュエータ7で切り替えるリンク機構8により行なわれる。
【0042】
前記リンク機構8は、前記バンパルーバ3の回転軸31に取り付けられ、前記アクチュエータ7によって前記遮蔽部材32と共に回転するロータリーカム80と、前記ロータリーカム80の回転によって連動し、前記回転軸31が半周回転するごとに、前記エアダム6の格納又は突出を交互に繰り返し行わせるロッカーアーム9と、を備えている。
【0043】
前記ロータリーカム80は、
図5(A)〜(D)に示したように、同円周上の90度位相がずれた位置を頂点とするカム山を2つ有する、略直角三角形状で構成されている。前記ロータリーカム80は、直角を成す一角が前記バンパルーバ3の回転軸31に固定され、前記回転軸31の回転と共に前記2つのカム山が周方向に回転する。
【0044】
前記ロッカーアーム9は、前記ロータリーカム80のカム山の回転位置によって水平状態と傾斜状態に変化する揺動部材90と、前記揺動部材90とエアダム6とを連結する連結部材92とで構成されている。
【0045】
前記揺動部材90は、前記枠体30に支持された固定軸90aによって支点が支持されており、力点側端部90bが前記ロータリーカム80の外面と接触し、作用点側端部90cが前記連結部材92の上端部と連結されている。
前記揺動部材90は、前記固定軸90aを支点として、前記回転軸31が半周回転するごとに、水平状態又は傾斜状態に変化する。
【0046】
前記連結部材92は、下端部が前記バンパ2を貫通し、前記エアダム6の端部に接合されている。前記連結部材92は、前記揺動部材90の揺動によって、上下方向の移動が可能である。
前記連結部材92の上端部には、前記連結部材92の上下移動を制限する鍔部92aが設けられている。前記鍔部92aが前記バンパ開口部20の内面に突き当たることで、前記連結部材92の上下移動が制限される。前記鍔部92aと前記バンパ開口部20の内面との間には、下方へ移動した前記連結部材92を上方へ押し上げるバネ材等の弾性部材94が介在されている。
【0047】
次に、第1実施の形態に係る車両の可動部材連動機構の動作状態を、
図5(A)〜(D)に基づいて説明する。
図5(A)及び(B)は車両1の低速時に行われ、
図5(C)及び(D)は車両1の高速時に行われものであり、冷却性能、走行抵抗の低減、及び路面干渉防止の観点から
図5(A)〜(D)うち最適な状態を選択して行われる。
【0048】
図5(A)は、前記バンパルーバ3によりバンパ開口部20を開放し、前記エアダム6をバンパ2内部に格納した状態を示している。
エンジンの負荷が大きく、ラジエータの冷却水及び空気調和装置のコンデンサの冷媒を
冷却させる必要があるときは、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を水平に向く配置に回転させて、前記バンパ開口部20を開放させ、エンジンルーム内へ外気を流入させる。
このとき、前記ロータリーカム80のカム山の一つを下方へ向く配置とし、もう一方のカム山を車体後方へ向く配置とする。すると、前記ロッカーアーム9の揺動部材90は、ロータリーカム80の水平面に載置され、水平状態に保たれる。前記連結部材92は、バネ材94の弾性作用により上方に押し上げられるので、前記エアダム6はバンパ2内部に格納される。
その結果、前記バンパ開口部20を開放しているから冷却性能が向上するが、空気抵抗が大きくなり、空気抵抗係数が大きくなる。また、前記エアダム6が格納されているからフロント揚力係数が大きくなる。
【0049】
次に、
図5(B)は、前記バンパルーバ3によりバンパ開口部20を閉鎖し、前記エアダム6をバンパ2内部に格納した状態を示している。
エンジンルーム内へ流入する外気を遮断するために、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直に向く配置に回転させて前記バンパ開口部20を閉鎖する。
前記遮蔽部材32の回転により、前記ロータリーカム80が、
図5(A)で示した状態から、時計回りに90度回転するので、カム山の一つは下方へ向き、もう一方のカム山は車体前方へ向く。このとき、前記ロッカーアーム9の揺動部材90は、ロータリーカム80の水平面に載置され、水平状態に保たれる。前記連結部材92は、バネ材94の弾性作用により上方に押し上げられたままなので、前記エアダム6はバンパ2内部に格納される。
その結果、前記バンパ開口部20を閉鎖しているから冷却性能は低下するが、空気抵抗が小さくなって空気抵抗係数が小さくなり、更にフロント揚力係数が小さくなる。
【0050】
次に、
図5(C)は、前記バンパルーバ3によりバンパ開口部20を開放し、前記エアダム6が車体の下方へ突出した状態を示している。
エンジンルーム内へ外気を流入させるために、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を水平に向く配置に回転させて前記バンパ開口部20を開放する。
前記遮蔽部材32の回転により、前記ロータリーカム80が、
図5(B)で示した状態から、時計回りに90度回転するので、前記カム山の一つは上方へ向き、もう一方のカム山を車体前方へ向く。このとき、前記揺動部材90の力点側端部90bは、ロータリーカム80によって上方へ押し上げられて傾斜状態なるので、作用点側端部90cが前記連結部材92を押し下げて、前記エアダム6を車体下方へ突出させる。
その結果、前記バンパ開口部20を開放しているから冷却性能が向上する。また、空気抵抗が大きくなるが、エアダムを突出させているので、空気抵抗係数が小さくなり、更にフロント揚力係数が小さくなる。
【0051】
次に、
図5(D)は、前記バンパルーバ3によりバンパ開口部20を閉鎖し、前記エアダム6が車体の下方へ突出した状態を示している。
エンジンルーム内へ流入する外気を遮断するために、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直に向く配置に回転させて前記バンパ開口部20を閉鎖する。
前記遮蔽部材32の回転により、前記ロータリーカム80が、
図5(C)で示した状態から時計回りに90度回転して、前記カム山の一つは上方へ向き、もう一方のカム山は車体後方へ向く。このとき、前記揺動部材90は、力点側端部90bがロータリーカム80によって上方へ押し上げられて傾斜状態になるので、作用点側端部90cが前記連結部材92を押し下げて、前記エアダム6を車体下方へ突出させる。
その結果、前記バンパ開口部20を閉鎖しているから冷却性能は低下する。しかし、エアダムを突出させているので、空気抵抗が小さくなって空気抵抗係数が非常に小さくなり、更にフロント揚力係数が非常に小さくなる。
【0052】
なお、
図5(A)〜(D)に示した実施形態では、前記揺動部材90を傾斜状態としたときに前記エアダム6を車体下方へ突出させる構成を示したが、この限りではない。前記ロータリーカム80を、前記揺動部材90の作用点側端部90cと固定軸90aとの間に配置することで、前記揺動部材90を水平状態としたときに前記エアダム6を車体下方へ突出させ、同揺動部材90を傾斜状態としたときに格納させる構成として実施することもできる。
【0053】
次に、第1実施の形態に係る車両の可動部材連動機構の動作の一例を、
図6に示したフローチャートから説明する。
【0054】
先ず、ステップST1において、車速センサ71から得られた速度情報に基づきコントローラ70が車両1の車速を判別する。具体的には、車速が80km/hよりも大きいか否かの判別を行う。前記コントローラ70により車速が80km/hよりも大きいと判断された場合はステップST2へ進む。一方、前記コントローラ70により車速が80km/h以下であると判断した場合は、ステップST5へ進む。
【0055】
ステップST2では、ラジエータに設けられた水温センサ72から得られた温度情報に基づきコントローラ70が水温を判別する。具体的には、水温が95度よりも大きいか否かの判別を行う。前記コントローラ70により、ラジエータの水温が95度より大きいと判断された場合はステップST3へ進む。一方、前記コントローラ70により水温が95度以下であると判断された場合は、ステップST4へ進む。
【0056】
ステップST3では、前記コントローラ70からの信号を受信した前記アクチュエータ7が駆動して、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を水平向きに回転させて前記バンパ開口部20を開放すると共に、前記エアダム6を車体の下方へ突出させる(
図5Cを参照)。
ステップST4では、前記コントローラ70からの信号を受信した前記アクチュエータ7が駆動し、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直向きに回転させて前記バンパ開口部20を閉鎖すると共に、前記エアダム6を車体の下方へ突出させる(
図5Dを参照)。
【0057】
ステップST5では、ステップST1で、コントローラ70により車速が80km/h以下であると判断した場合において、ラジエータに設けられた水温センサ72から得られた温度情報に基づきコントローラ70が水温を判別する。具体的には、水温が95度よりも大きいか否かの判別を行う。前記コントローラ70により、ラジエータの水温が95度より大きいと判断された場合はステップST6へ進む。一方、前記コントローラ70により水温が95度以下であると判断された場合は、ステップST7へ進む。
【0058】
ステップST6では、前記コントローラ70からの信号を受信したアクチュエータ7が駆動し、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を水平向きに回転させて前記バンパ開口部20を開放し、前記エアダム6をバンパ2内部へ格納させる(
図5Aを参照)。
ステップST7では、前記コントローラ70からの信号を受信したアクチュエータ7が駆動し、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直向きに回転させて前記バンパ開口部20を閉鎖すると共に、前記エアダム6をバンパ2内部へ格納させる(
図5Bを参照)。
なお、車両1の車速及びラジエータの水温は、上記数値に限るものではない。車両1の性能等に応じて、種々の数値で行われる。
【0059】
したがって、第1実施の形態に係る車両の可動部材連動機構は、バンパ開口部20の開閉とエアダム6の格納・突出を、前記リンク機構8によって単独のアクチュエータ7で4つのパターンに切り替えることができるので、アクチュエータ7の設置費用を削減することができ経済的である。また、バンパ開口部20の開閉による燃費の向上と、エアダム6の格納・収納による高速走行の安定性を両立することができる。
【0060】
(第2実施の形態)
次に、本発明に係る車両の可動部材連動機構の第2実施の形態を
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0061】
図1に示すように、車両前部の上側に配設されるグリル4は、バンパ2とフード10の前端との間に形成され、装飾的機能を備えるとともにエンジンルームに空気を通すグリル開口部40が形成されている。
前記グリル開口部40には、
図7に示すように、前記グリル4と前記ラジエータとの間に、前記エンジンルーム内に流入する外気の流量を調整するグリルルーバ5が配設されている。
【0062】
前記グリルルーバ5の構成は、上記段落番号[0033]〜[0036]で説明したバンパルーバ3と同じである。
即ち、前記グリルルーバ5の前記遮蔽部材52が、
図3及び
図7に示すように、水平方向に向くと前記グリル開口部40は全開状態となり、外気が通過する空気路となる。一方、前記遮蔽部材52が、垂直方向に向くと前記グリル開口部40は全閉状態となり、空気路は閉鎖される。つまり、グリルルーバ5によりグリル開口部40を開放又は閉鎖させて、グリル開口部40からエンジンルーム内へ流入する外気の導入量を調節する。
【0063】
前記グリルルーバ5はコントローラで制御されて、グリル開口部40の開放又は閉鎖が行われる。前記グリルルーバ5を駆動させる手段は、枠体50の外側面に取り付けられたアクチュエータである。前記アクチュエータは電動モータであり、コントローラからの指令に応じ、駆動力の減速機構73(例えば
図2を参照)を介して上下の遮蔽部材52を連動させる。前記制御手段は、上記段落番号[0037]〜[0039]で説明した構成と同じなので、説明を省略する。
【0064】
前記車両1の前側底部には、
図2に示したように、エアダム6が設けられている。前記エアダム6は、前記コントローラの指示により、車体下方への空気の流入を抑える必要があるときは下方へ突出し、不要なときはバンパ2内部に格納される。
【0065】
前記グリルルーバ5によるグリル開口部40の開閉と、前記エアダム6の格納・突出は、(1)前記グリル開口部40を開放させるとともに前記エアダム6を格納させる状態と、(2)前記グリル開口部40を閉鎖させるとともに前記エアダム6を格納させる状態と、(3)前記グリル開口部40を開放させるとともに前記エアダム6を突出させる状態と、(4)前記グリル開口部40を閉鎖させるとともに前記エアダム6を突出させる状態の4パターンを、単独のアクチュエータで切り替えるリンク機構8により行われる。
【0066】
前記リンク機構8の構成は、上記段落番号[0042]〜[0046]で説明した第1実施の形態と同じである。つまり、第2実施の形態に係る車両の可動部材連動機構の動作状態も、
図5(A)〜(D)に基づいて説明した構成と同じである。
【0067】
したがって、第2実施の形態に係る車両の可動部材連動機構は、グリル開口部40の開閉とエアダム6の格納・突出を、前記リンク機構8によって単独のアクチュエータで4つのパターンに切り替えることができるので、アクチュエータの設置費用を削減することができ経済的である。また、グリル開口部40の開閉による燃費の向上と、エアダム6の格納・収納による高速走行の安定性を両立することができる。
【0068】
(第3実施の形態)
次に、本発明に係る車両の可動部材連動機構の第3実施の形態を
図8に基づいて説明する。なお、上記第1実施の形態及び第2実施の形態で説明した内容については同一の符号を付して説明する。
【0069】
第3実施の形態に係る車両の可動部材連動機構は、
図8(A)〜(D)に示すように、バンパルーバ3によるバンパ開口部20の開閉と、グリルルーバ5によるグリル開口部40を開閉について、(1)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を開放させるとともに前記グリルルーバ5で前記グリル開口部40を開放させる状態と、(2)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を閉鎖させるとともに前記グリルルーバ5で前記グリル開口部40を開放させる状態と、(3)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を開放させるとともに前記グリルルーバ5で前記グリル開口部40を閉鎖させる状態と、(4)前記バンパルーバ3で前記バンパ開口部20を閉鎖させるとともに前記グリルルーバ5で前記グリル開口部40を閉鎖させる状態とを、単独のアクチュエータ7で切り替えるリンク機構8’により行うことを特徴とする。
【0070】
前記バンパルーバ3は、
図2及び
図3に示すように、前記バンパ開口部20内に車体幅方向に延設された枠体30と、前記枠体30内に車体幅方向に延設され、アクチュエータ7の駆動によって回転する回転軸31と、前記回転軸31の回転によって垂直向きと水平向きの動作を交互に繰り返してバンパ開口部20を開放し又は閉鎖する遮蔽部材32とで構成されている。
【0071】
前記グリルルーバ5は、
図3に示すように、前記グリル開口部40内に車体幅方向に延設された枠体50と、前記枠体50内に車体幅方向に延設され、後述するリンク機構8’の切替部材93を切り替えることによって回転する回転軸51と、前記回転軸51の回転によって垂直向きと水平向きの動作を交互に繰り返してグリル開口部40を開放し又は閉鎖する遮蔽部材52とで構成されている。
なお、前記バンパルーバ3及び前記グリルルーバ5の各構成部材の詳細な説明は、上記第1実施の形態の段落番号[0033]〜[0036]で説明した内容と同じなので省略する。
【0072】
前記リンク機構8’は、前記バンパルーバ3の回転軸31に取り付けられ、該回転軸31によって前記遮蔽部材32と共に回転するロータリーカム80と、前記ロータリーカム80の回転によって連動し、前記回転軸31が半周回転するごとに、前記グリルルーバ5の遮蔽部材52に垂直向きと水平向きの動作を交互に繰りし行わせるロッカーアーム9とを備えている。
【0073】
前記ロータリーカム80は、
図8(A)〜(D)に示したように、同円周上の90度位相がずれた位置を頂点とするカム山を2つ有する、略直角三角形状で構成されている。前記ロータリーカム80は、直角を成す一角が前記バンパルーバ3の回転軸31に固定され、前記回転軸31の回転と共に前記2つのカム山が周方向に回転する。
【0074】
前記ロッカーアーム9は、前記ロータリーカム80のカム山の回転位置によって水平状態と傾斜状態に変化する揺動部材90と、グリルルーバ5を垂直向き又は水平向きに切り替える切替部材93と、前記揺動部材90と切替部材93とを連結する連結部材92とを備えている。
【0075】
前記揺動部材90は、前記バンパルーバ3の枠体30の側面と中間部材30aに両端部が支持された固定軸90aによって支点が支持されており、力点側端部90bが前記ロータリーカム80の外面と接触し、作用点側端部90cが前記連結部材92の一端と連結されている。
前記揺動部材90は、前記固定軸90aを支点として、前記回転軸31が半周回転するごとに、水平状態又は傾斜状態に変化する。
【0076】
前記切替部材93は、上下に配設した各グリルルーバ5の回転軸51に、それぞれ取り付けられており、各先端部が前記連結部材92の他端に取り付けられている。図示例の場合では、前記切替部材93を上向きにさせると、前記上下のグリルルーバ5の遮蔽部材52が水平向きなって、グリル開口部40が閉鎖される。一方、前記切替部材93を下向きにすると、前記上下のグリルルーバ5の遮蔽部材52が垂直向きなって、グリル開口部40が開放される。
【0077】
前記連結部材92は、一例として棒状で成り、前記バンパ2を貫通して前記揺動部材90と前記各切替部材93とを連結している。前記連結部材92のバンパ2内部に位置する中間部には、前記バンパ2の内面に当接するバネ材等の弾性部材94が取り付けられている。
【0078】
次に、第3実施の形態に係る車両の可動部材連動機構の動作状態を、
図8(A)〜(D)に基づいて説明する。冷却性能及び走行抵抗の低減から、
図8(A)〜(D)うち最適な状態を選択して行われる。
因みに、
図8(A)〜(D)に示す実施形態では、バンパ開口部20をグリル開口部40よりも大きく形成している。
【0079】
図8(A)は、前記バンパ開口部20を開放し、前記グリル開口部40を開放した状態を示している。
エンジンの負荷が大きく、ラジエータの冷却水及び空気調和装置のコンデンサの冷媒を
冷却させる必要があるときは、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を水平に向く配置に回転させてバンパ開口部20を開放させる。
この場合、前記ロータリーカム80のカム山の一つを下方へ向く位置とし、もう一方のカム山を車体後方へ向く配置とする。前記ロッカーアーム9の揺動部材90は、前記ロータリーカムの水平面上に載置され、水平状態なる。前記切替部材93はバネ材94の弾性作用により、上向きになるので、前記グリルルーバ5の遮蔽部材52は水平に向く配置となり、グリル開口部40は開放される。
その結果、前記バンパ開口部20を開放し、前記グリル開口部40も開放しているので、冷却性能が非常に向上するが、空気抵抗が非常に大きくなって空気抵抗係数が非常に大きくなり、更にフロント揚力係数が非常に大きくなる。
【0080】
図8(B)は、前記バンパ開口部20を閉鎖し、前記グリル開口部40を開放した状態を示している。
エンジンルーム内へ流入する外気を、グリル開口部40からのみ導入するため、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直に向く配置に回転させて前記バンパ開口部20を閉鎖する。
前記バンパルーバ3の遮蔽部材32の回転により、前記ロータリーカム80が、
図8(A)で示した状態から、時計回りに90度回転するので、カム山の一つは下方へ向き、もう一方のカム山は車体前方へ向く。このとき、前記ロッカーアーム9の揺動部材90は、力点側端部90bが前記ロータリーカム80の水平面に載置され、水平状態に維持される。前記切替部材93はバネ材94の弾性作用により、上向きに傾斜したままなので、前記グリルルーバ5の遮蔽部材52は水平に向いたままであり、前記グリル開口部40は開放される。
その結果、前記バンパ開口部20を閉鎖し、前記グリル開口部40を開放しているので、冷却性能は少し低下し、フロント揚力係数が小さくなり、空気抵抗が小さくなって空気抵抗係数が小さくなる。
【0081】
図8(C)は、前記バンパ開口部20を開放し、前記グリル開口部40を閉鎖した状態を示している。
エンジンルーム内へ流入する外気をバンパ開口部20からのみ導入するため、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を水平に向く配置に回転させて前記バンパ開口部20を開放する。
前記バンパルーバ3の遮蔽部材32の回転により、前記ロータリーカム80が、
図8(B)で示した状態から、時計回りに90度回転するので、前記ロータリーカム80のカム山の一つは上方へ向き、もう一方のカム山は車体前方へ向く。前記ロッカーアーム9の力点側端部90bは、前記ロータリーカム80のカム山によって上方へ押し上げられて傾斜状態になるので、作用点側端部90cが下方へ下がって切替部材93を下に向ける。これにより前記グリルルーバ5の遮蔽部材52は垂直に向くので前記グリル開口部40が閉鎖される。
その結果、前記バンパ開口部20を開放し、前記グリル開口部40を閉鎖しているので、フロント揚力係数が小さくなるが、冷却性能は少し低下し、空気抵抗が小さくなって空気抵抗係数が小さくなる。
【0082】
図8(D)は、前記バンパ開口部20を閉鎖し、前記グリル開口部40を閉鎖した状態を示している。
エンジンルーム内へ流入する外気を完全に遮断するために、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直に向く配置に回転させて前記バンパ開口部20を閉鎖する。
前記バンパルーバ3の遮蔽部材32の回転により、前記ロータリーカム80が、
図8(C)で示した状態から、時計回りに90度回転するので、前記ロータリーカム80のカム山の一つは上方へ向き、もう一方のカム山は車体後方へ向く。前記ロッカーアーム9の力点側端部90bは、前記ロータリーカム80のカム山によって上方へ押し上げられて傾斜状態のままなので、前記グリルルーバ5の遮蔽部材52は垂直に向き、前記グリル開口部40が閉鎖される。
その結果、前記バンパ開口部20を閉鎖し、前記グリル開口部40を閉鎖しているので、冷却性能は低下する。しかし、空気抵抗が非常に小さくなって空気抵抗係数が非常に小さくなるし、フロント揚力係数が非常に小さくなる。
【0083】
したがって、第3実施の形態に係る車両の可動部材連動機構は、前記バンパ開口部20の開閉と前記グリル開口部40の開閉を、前記リンク機構8’により、単独のアクチュエータ7で4つのパターンに切り替えることができるので、アクチュエータ7の設置費用を削減することができ経済的である。また、前記バンパ開口部20の開閉と前記グリル開口部40の開閉による燃費の向上を図ることができる。
【0084】
また、前記バンパ開口部20の開口面積と前記グリル開口部40の開口面積を種々の寸法に設計変更することで、様々な開口率を実現できる。例えば、前記バンパ開口部20の開口面積と前記グリル開口部40の開口面積の比率を7:3で設けた場合、前記バンパ開口部20を開放し、前記グリル開口部40を閉鎖すると、開口率が70%となる。一方、前記バンパ開口部20を閉鎖し、前記グリル開口部40を開放すると、開口率が30%となる。したがって、冷却性能及び空気抵抗に応じて、単独のアクチュエータ7で、バンパ開口部20及びグリル開口部40の開口率を細かく変化させることができるから、燃費の向上と高速安定性に大きく寄与することができる。
【0085】
(第4実施の形態)
次に、本発明に係る車両の可動部材連動機構の第4実施の形態を
図9に基づいて説明する。
第4実施の形態に係る車両の可動部材連動機構は、端的に言えば、上記第3実施の形態に係る車両の可動部材連動機構の構成を逆にした構成である。
【0086】
即ち、前記リンク機構8’は、前記グリルルーバ5の回転軸51に取り付けられ、該回転軸51によって前記遮蔽部材52と共に回転するロータリーカム80と、前記ロータリーカム80の回転によって連動し、前記回転軸51が半周回転するごとに、前記バンパルーバ3の遮蔽部材32に垂直向きと水平向きの動作を交互に繰りし行わせるロッカーアーム9とを備えた構成である。
【0087】
アクチュエータの駆動により前記グリルルーバ5の遮蔽部材52を垂直向き又は水平向きに回転させて、前記グリル開口部40を開放又は閉鎖させると共にロータリーカム80を回転させることにより、前記ロッカーアーム9で前記バンパルーバ3の遮蔽部材32を垂直向き又は水平向きに回転させて、前記バンパ開口部20を開放又は閉鎖させる。
【0088】
したがって、第4実施の形態に係る車両の可動部材連動機構は、バンパ開口部20の開閉とグリル開口部40の開閉を、単独のアクチュエータ7で4つのパターンに切り替えることができるので、アクチュエータ7の設置費用を削減することができ経済的である。また、単独のアクチュエータ7による燃費の向上と、前記バンパ開口部20の開閉と前記グリル開口部40の開閉による高速走行の安定性を両立することができる。
【0089】
以上に本発明に係る車両の可動部材連動機構を、図面に示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常行う設計変更や変形・応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため付言する。
【0090】
例えば、前記ロータリーカム80は、前記回転軸31に固定することに限らない。詳細に図示することは省略したが、例えばロータリーカム80は、前記バンパルーバ3の回転軸31の回転と共に回転するギアを設けて、該ギアの回転により回転させる構成であってもよい。この場合、前記ロータリーカム80は、複数のギアをかみ合わせてギア比を変えることで、回転角度を自在に調整することができる。
また、前記ロータリーカム80は、前記バンパルーバ3の回転軸31の回転と共に回転するプーリとベルトで連結した構成でも実施できる。この場合、前記ロータリーカム80はプーリの大きさを変えることで、回転角度を自在に調整することができる。