(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変速機の変速段を操作するシフトスピンドル(94)と、当該シフトスピンドル(94)と一体に回動するように設けられる第1の蓄力アーム(157)と、前記シフトスピンドル(94)と相対回転可能であるとともに、前記第1の蓄力アーム(157)との間に第1の蓄力スプリング(135)を介して連結される第1の係止片(145)を有するギアシフトアーム(130)と、当該ギアシフトアーム(130)と相対回転可能であるとともに、前記変速機のシフトドラム(125)を回動させて操作するマスターアーム(115)と、前記シフトスピンドル(94)を駆動するモーター(93)とを備える変速機において、
前記シフトスピンドル(94)上、且つ、前記ギアシフトアーム(130)を挟んで前記第1の蓄力スプリング(135)と反対側に、前記シフトスピンドル(94)と一体に回動するように設けられる第2の蓄力アーム(162)が設けられ、
前記ギアシフトアーム(130)は、前記第1の蓄力スプリング(135)と反対側に、当該第2の蓄力アーム(162)と第2の蓄力スプリング(137)を介して連結される第2の係止片(147)を有し、
前記第1の蓄力スプリング(135)の荷重特性と前記第2の蓄力スプリング(137)の荷重特性とを足し合わせた荷重特性は、前記シフトスピンドル(94)の回動範囲内において、目標の荷重値(Fb)が得られるとともに畜力荷重が前記モーター(93)の最大トルク(Fm)を超えないように設定されていることを特徴とする変速機。
前記ギアシフトアーム(130)の前記第1の係止片(145)と前記第2の係止片(147)とは、共に前記ギアシフトアーム(130)の前記第1の蓄力アーム(157)側の端部から径方向外方に延びた後、それぞれ前記第1の蓄力スプリング(135)側と前記第2の蓄力スプリング(137)側へと延びるとともに、その周方向の位置が異なるように配されることを特徴とする請求項1または2に記載の変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例の蓄力機構を用いながら、さらに変速にかかる時間を短くしたいという課題がある。そのためには、蓄力スプリングに蓄えられる荷重を高めることで、クラッチ切断時の蓄力機構による変速機構(ギアシフトアーム、マスターアーム、シフトドラム等)の移動速度を高めることが効果的である。蓄力荷重を高めるには次の2つの方法が挙げられる。(1)蓄力スプリングのバネ定数を上げる。(2)蓄力スプリングのセット荷重(シフトスピンドル初期位置ですでにかけられている荷重)を上げる。しかしながら、従来例の構造で、これら2つの方法を採るのみでは蓄力荷重を高める上での問題があった。
まず、(1)の蓄力スプリングのバネ定数を上げる方法を採る場合、従来例構造のギアシフトアーム側係止部81aと蓄力カラー係止部71a間に配される蓄力スプリング57の線径を上げることとなる。バネ定数を高めれば、シフトスピンドル回動中に、変速スピードを高める上での目標とする新たな蓄力荷重は得られるが、変速操作時のシフトスピンドル最大回動量における蓄力スプリングの蓄力荷重も上がってしまう。シフトスピンドルのアクチュエータ(例えばシフトモータ)が発揮できる最大トルクには制約があるため、蓄力スプリングの蓄力荷重が大きくなり過ぎると、シフトスピンドルを所定量回すことが難しくなる場合がある。例えば、従来例の構造では
図16のように、最大スピンドル回動角でシフトモータの最大トルク範囲内に入っていたスプリング特性が、バネ定数を上げることで、
図17に示すように、シフトモータの最大トルクによる制約値を超えてしまう。ここで、
図16及び
図17では、Faは、スプリング荷重の目標値であり、必要な変速スピードに応じて設定される。また、Fmは、スプリング荷重の制約値であり、アクチュエータ(シフトモータモータ等)の最大トルクで決まる。ここで、
図17では、Fbは、必要な変速スピードに応じてFaよりも大きく設定されたスプリング荷重の目標値である。
次に、(2)の蓄力スプリングのセット荷重を上げる方法を採る場合、従来例構造のギアシフトアーム側係止部81aと蓄力カラー係止部71a間に配される蓄力スプリング57(線径は従来例と同等)のセット荷重を上げるべく初期位置でのスプリングねじり量を大きくすることとなる。これによりセット荷重は上げられるが、変速時に、変速操作に必要なストロークを得るべくシフトスピンドルを回動させると、蓄力スプリングにはさらに大きな蓄力荷重がかかっていく。蓄力スプリングの線径はバネ定数を上げられないことから、それ程大きくできないが、この比較的細いバネに大きな蓄力荷重がかかると、バネの許容応力上、蓄力荷重を上げられない場合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、シフトドラムを回動するマスターアームとシフトスピンドルとの間に蓄力機構が設けられた変速機で、シフトスピンドルの回動量とその操作入力の最大トルクをそれ程上げずに、蓄力スプリングの蓄力荷重を高めることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、変速機の変速段を操作するシフトスピンドル(94)と、当該シフトスピンドル(94)と一体に回動するように設けられる第1の蓄力アーム(157)と、前記シフトスピンドル(94)と相対回転可能であるとともに、前記第1の蓄力アーム(157)との間に第1の蓄力スプリング(135)を介して連結される第1の係止片(145)を有するギアシフトアーム(130)と、当該ギアシフトアーム(130)と相対回転可能であるとともに、前記変速機のシフトドラム(125)を回動させて操作するマスターアーム(115)と
、前記シフトスピンドル(94)を駆動するモーター(93)とを備える変速機において、前記シフトスピンドル(94)上、且つ、前記ギアシフトアーム(130)を挟んで前記第1の蓄力スプリング(135)と反対側に、前記シフトスピンドル(94)と一体に回動するように設けられる第2の蓄力アーム(162)が設けられ、前記ギアシフトアーム(130)は、前記第1の蓄力スプリング(135)と反対側に、当該第2の蓄力アーム(162)と第2の蓄力スプリング(137)を介して連結される第2の係止片(147)を有
し、前記第1の蓄力スプリング(135)の荷重特性と前記第2の蓄力スプリング(137)の荷重特性とを足し合わせた荷重特性は、前記シフトスピンドル(94)の回動範囲内において、目標の荷重値(Fb)が得られるとともに畜力荷重が前記モーター(93)の最大トルク(Fm)を超えないように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1の蓄力スプリングと、ギアシフトアームを挟んで第1の蓄力スプリングと反対側に設けられた第2の蓄力スプリングとの両方のバネ特性を足し合わせたバネ特性によってギアシフトアームに荷重をかけることができる。その結果、バネ定数をそれ程高めることなく、セット荷重を高めることができるため、シフトスピンドルの回動量とその操作入力の最大トルクをそれ程上げずに、蓄力スプリングの蓄力荷重を高めることができる。
【0006】
また、本発明によれば、前記ギアシフトアーム(130)の前記第2の係止片(147)には、前記マスターアーム(115)を初期位置に戻すリターンスプリング(131)が係止され、前記リターンスプリング(131)と前記第2の蓄力スプリング(137)とが、軸方向で同じ幅内、且つ、径方向で内外に重なるよう配置されることを特徴とする。
本発明によれば、リターンスプリングの配置スペースを有効に利用して、第2の蓄力スプリングをコンパクトに設けることができる。
【0007】
さらに、本発明は、前記ギアシフトアーム(130)の前記第1の係止片(145)と前記第2の係止片(147)とは、共に前記ギアシフトアーム(130)の前記第1の蓄力アーム(157)側の端部から径方向外方に延びた後、それぞれ前記第1の蓄力スプリング(135)側と前記第2の蓄力スプリング(137)側へと延びるとともに、その周方向の位置が異なるように配されることを特徴とする。
本発明によれば、第1の係止片及び第2の係止片にかかる蓄力荷重を分散させることができ、ギアシフトアームの強度を確保し易い。
【0008】
また、本発明は、前記第2の蓄力アーム(162)は、前記シフトスピンドル(94)と一体的に回動する第2の蓄力カラー(136)として設けられ、当該第2の蓄力カラー(136)には、前記第2の蓄力スプリング(137)のコイル部分(137c)と径方向の長さが略等しいサポート部(162)が設けられ、前記第2の蓄力スプリング(137)の係止部は、前記サポート部(162)の係止溝(163)として設けられることを特徴とする。
本発明によれば、蓄力の際の第2の蓄力スプリングの変形をサポート部で支持できるとともに、第2の蓄力スプリングを係止する係止溝を、サポート部を利用して簡単な構成で設けることができる。
また、本発明は、前記第2の蓄力スプリング(137)と、前記リターンスプリング(131)とは、その巻き方向が逆になるように設けられることを特徴とする。
本発明によれば、蓄力の際の変形に伴って第2の蓄力スプリングとリターンスプリングとが接触したとしても、一方のスプリングが他方のスプリングの巻き部分に入り込むことを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る変速機では、バネ定数をそれ程高めることなく、セット荷重を高めることができるため、シフトスピンドルの回動量とその操作入力の最大トルクをそれ程上げずに、蓄力スプリングの蓄力荷重を高めることができる。
また、第2の蓄力スプリングをコンパクトに設けることができる。
また、ギアシフトアームの強度を確保し易い。
さらに、第2の蓄力スプリングを係止する係止溝を、第2の蓄力スプリングのサポート部を利用して簡単な構成で設けることができる。
また、一方のスプリングが他方のスプリングの巻き部分に入り込むことを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LEは車体左方を示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る変速機を備えた自動二輪車10の左側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11にエンジン12が支持され、前輪2を支持する左右一対のフロントフォーク13が車体フレーム11の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム14(
図2)が車体フレーム11の後部側に設けられた車両である。自動二輪車10は、運転者(乗員)が跨るようにして着座するシート15が車体フレーム11の後部の上部に支持された鞍乗り型の車両である。
また、自動二輪車10は、車体フレーム11等を覆う樹脂製の車体カバー16を有する。自動二輪車10は、エンジン12の制御を行う制御ユニット17(制御部)と、バッテリ18とを有する。制御ユニット17及びバッテリ18はシート15の下部で、車体カバー16の内側に配置されている。
【0012】
車体フレーム11は、フロントフォーク13を操舵可能に軸支するヘッドパイプ20と、ヘッドパイプ20から下勾配で後方に延びる1本のモノバックボーンフレーム21(メインフレーム)21と、モノバックボーンフレーム21の後方で下方に延出するピボットフレーム22(
図3)と、モノバックボーンフレーム21及びピボットフレーム22の後方に設けられる後部フレーム(不図示)とを一体に備える。
エンジン12は、前輪2と後輪3との間の略中間で、シート15の下方やや前方に設けられ、車体フレーム11から吊り下げられるようにして支持される。エンジン12の出力は、駆動チェーン19を介して後輪3に伝達される。
【0013】
図2は、エンジン12の周辺部の左側面図である。
図3は、エンジン12の周辺部の右側面図である。
図4は、
図2のIV−IV断面図である。
エンジン12は、4サイクル単気筒エンジンである。エンジン12は、車幅方向に略水平に延びるクランク軸36を収容するクランクケース25と、クランクケース25の前部から前方に延びるシリンダ部26とを備える。シリンダ部26は、クランクケース25の前面に結合されるシリンダ27と、シリンダ27の前面に連結されるシリンダヘッド28とを備える。エンジン12は、シリンダ部26のシリンダ軸線26aがやや前上がりの姿勢で前方へ略水平に延びる略水平配置のエンジンである。
【0014】
クランクケース25は、上方に突出する前側固定部30を前部の上面に備え、後方に延びる後側固定部31を後面の下部に備える。
モノバックボーンフレーム21の後部には、下方に突出するエンジンハンガ部21aが設けられている。ピボットフレーム22の前部には、前方へ延びるエンジン支持部22aが設けられている。エンジン12は、エンジンハンガ部21a及び前側固定部30に挿通される固定ボルト32と、エンジン支持部22a及び後側固定部31に挿通される固定ボルト33とによって車体フレーム11に固定される。
【0015】
エンジン12の吸気装置(不図示)は、シリンダ部26の上方に配置され、モノバックボーンフレーム21に支持される。この吸気装置は、シリンダヘッド28の上面の吸気ポート28aに接続される。エンジン12の排気管34は、シリンダヘッド28の下面の排気口28bから下方に引き出される。
スイングアーム14の前端は、ピボットフレーム22に軸支される。運転者用の左右一対のステップ23は、クランクケース25の後部の下面から車幅方向外側へ延びるステップステー35の両端にそれぞれ支持されている。
【0016】
図4に示すように、クランクケース25は、クランク軸36に直交する面で車幅方向に2分割される左右割りで構成されており、左側の一側ケース37Lと、右側の他側ケース37Rとを備える。また、エンジン12は、一側ケース37Lを左側方から覆う発電機カバー38と、他側ケース37Rを右側方から覆うクラッチカバー39とを備える。
一側ケース37Lと他側ケース37Rとは、合わせ面37Fで合わせられ、車幅方向に延びる複数のケース連結ボルト40によって結合される。発電機カバー38及びクラッチカバー39は、車幅方向に延びる複数の発電機カバー固定ボルト41及びクラッチカバー固定ボルト42によってそれぞれクランクケース25に固定される。
【0017】
図5は、エンジン12の内部構造を示す断面図である。
図5に示すように、クランクケース25内の前部には、クランク軸36を収容するクランク室45が設けられ、クランクケース25内おいてクランク室45の後方には、変速機室46が設けられる。変速機室46側には、クランク軸36の駆動力を変速して出力する自動変速機68(変速機)が設けられる。
クランク室45及び変速機室46の右側方には、クラッチ室47が設けられ、クランク室45の左側方には、発電機室48が設けられる。クラッチ室47は、他側ケース37Rの壁部49の外側面とクラッチカバー39の内面とによって区画される。発電機室48は、一側ケース37Lの外壁部50aの外側面と発電機カバー38の内面とによって区画される。一側ケース37Lは、外壁部50aよりも内側に内壁部50bを有する。
【0018】
クランク軸36は、クランクウェブ36aと、クランクウェブ36aから車幅方向の両側へ延びる軸部36bとを有する。クランク軸36は、クランクウェブ36aがクランク室45内に配置され、軸部36bは、壁部49及び内壁部50bにそれぞれ設けられた軸受け部49a,50cに軸支される。クランクウェブ36aには、クランクピンを介してコンロッド36cが連結され、コンロッド36cの先端に連結されるピストン29は、シリンダ27のシリンダボア27a内を往復運動する。
クランク軸36の軸部36bの一端51は、発電機室48に延び、一端51には発電機52のローター52aが固定される。発電機52のステーター52bは、一側ケース37Lに固定される。
【0019】
軸部36bにおいてローター52aと外壁部50aとの間には、駆動スプロケット53が固定されている。一側ケース37L内において駆動スプロケット53の上方には、シリンダヘッド28の動弁機構(不図示)を駆動するカムチェーン54が通るカムチェーン室55が設けられている。
クランク軸36の軸部36bの他端56は、クラッチ室47に延び、他端56の先端部には、遠心式の発進クラッチ57が設けられる。
【0020】
発進クラッチ57は、発進時及び停止時にクランク軸36と自動変速機68との間を接続及び切断する。発進クラッチ57は、クランク軸36の外周に対して相対回転可能なスリーブ58の一端に固定されたカップ状のアウタケース59と、スリーブ58の外周に設けられたプライマリギア60と、クランク軸36の右端部に固定されたアウタプレート61と、アウタプレート61の外周部にウェイト62を介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー63と、シュー63を半径方向内側に付勢するためのスプリング64とを有する。発進クラッチ57では、エンジン回転数が所定値以下の場合にアウタケース59とシュー63とが離間しており、クランク軸36と自動変速機68との間が遮断状態(動力が伝達されない切り離し状態)となっている。エンジン回転数が上昇し所定値を超えると、遠心力によってウェイト62がスプリング64に抗して半径方向外側に移動することで、シュー63がアウタケース59の内周面に当接する。これにより、アウタケース59とともにスリーブ58がクランク軸36上に固定され、クランク軸36の回転がプライマリギア60を介して自動変速機68に伝達されるようになる。
【0021】
自動変速機68は、前進4段の変速機構70と、クランク軸36側と変速機構70との間の接続を切り替える変速用クラッチ機構71と、変速用クラッチ機構71を操作するクラッチ操作機構72と、変速機構70を変速するギアチェンジ機構73と、クラッチ操作機構72及びギアチェンジ機構73を駆動するアクチュエータ機構74とを備える。アクチュエータ機構74は、制御ユニット17(
図1)によって制御される。
自動変速機68では、変速用クラッチ機構71の接続・切断操作、及び、変速段(シフト)の切替えが制御ユニット17の制御のもとに自動で行われる。
【0022】
自動変速機68は、自動変速(AT)モードと手動変速(MT)モードとの切り替えを行うモードスイッチ(不図示)と、シフトアップまたはシフトダウンを運転者が操作するシフトセレクトスイッチ(不図示)とに接続されている。自動変速機68は、制御ユニット17の制御により、各センサやモードスイッチ及びシフトセレクトスイッチの出力信号に応じてアクチュエータ機構74を制御し、変速機構70の変速段を自動的または半自動的に切り換えることができるように構成されている。
すなわち、自動変速モードでは、車速等に基づいてアクチュエータ機構74の制御が行われ、変速機構70が自動で変速される。手動変速モードでは、シフトセレクトスイッチが運転者によって操作されることで変速が行われる。
【0023】
変速機構70は、変速用クラッチ機構71から供給される回転を、制御ユニット17の指示に基づいて変速して後輪3に伝達する。変速機構70は、入力軸としてのメイン軸75と、メイン軸75に対して平行に配置されるカウンタ軸76と、メイン軸75に設けられた駆動ギア77a,77b,77c及び77dと、カウンタ軸76に設けられた従動ギア78a,78b,78c及び78dと、駆動ギア77bに係合するシフトフォーク79aと、従動ギア78cに係合するシフトフォーク79bと、シフトフォーク79a,79bを軸方向にスライド自在に保持する支持軸(不図示)と、シフトフォーク79a,79bの端部を溝一対の溝にそれぞれ沿わせながらスライドさせるシフトドラム125(
図6)とを有する。メイン軸75は、クランク軸36に対し平行に配置される。
駆動ギア77a,77b,77c及び77dは、この順に従動ギア78a,78b,78c及び78dと噛合している。駆動ギア77bは左右にスライドしたとき、隣接する駆動ギア77a又は77cに側面のドグが係合し、従動ギア78cは左右にスライドしたとき、隣接する従動ギア78b又は78dに側面のドグが係合する。
【0024】
駆動ギア77a及び77cはメイン軸75に対して回転自在に保持され、従動ギア78b,78dはカウンタ軸76に対して回転自在に保持されている。駆動ギア77b及び従動ギア78cはメイン軸75及びカウンタ軸76に対してスプライン結合され軸方向にスライド可能である。駆動ギア77d及び従動ギア78aはメイン軸75及びカウンタ軸76に固定されている。
【0025】
シフトドラム125がアクチュエータ機構74により駆動されて回転すると、シフトフォーク79a,79bはシフトドラム125の外周面に設けられた一対の溝に沿ってそれぞれ軸方向に移動し、駆動ギア77b及び従動ギア78cは変速段に応じてスライドする。
変速機構70では、駆動ギア77b及び従動ギア78cのスライドに応じて、メイン軸75及びカウンタ軸76間で、ニュートラル状態、または、1速〜4速の何れかの変速歯車対を選択的に用いた動力伝達が可能となる。
【0026】
メイン軸75は、一側ケース37L及び他側ケース37Rにそれぞれ設けられたベアリング80,81に軸支される。メイン軸75の他側の端部は、他側ケース37Rを貫通してクラッチ室47内に延びており、この端部には、プライマリギア60に噛み合うプライマリドリブンギア82と、変速用クラッチ機構71とが設けられている。プライマリドリブンギア82は、メイン軸75に対して相対回転可能に設けられている。
カウンタ軸76は、一側ケース37L及び他側ケース37Rにそれぞれ設けられたベアリング83,84に軸支される。カウンタ軸76の一側の端部は、一側ケース37Lを貫通してクランクケース25の外側に突出しており、この端部には、駆動チェーン19に噛み合うドライブスプロケット85が固定されている。
【0027】
変速用クラッチ機構71は、プライマリドリブンギア82に固定されるカップ状のクラッチアウタ86と、クラッチアウタ86の径方向内側に設けられ、メイン軸75に一体に固定されるクラッチセンタ87と、クラッチアウタ86の内側でメイン軸75の軸方向に移動可能なプレッシャプレート88と、プレッシャプレート88とクラッチセンタ87との間に設けられるクラッチ板89と、クラッチを接続する方向にプレッシャプレート88を付勢するクラッチスプリング90と、プレッシャプレート88をクラッチスプリング90に抗してリフトさせるリフター部91とを備える。
【0028】
変速用クラッチ機構71は、通常時はクラッチ接続状態にある。クラッチ接続状態では、クラッチセンタ87側とクラッチアウタ86とがクラッチ板89を介して接続され、クラッチセンタ87及びプライマリドリブンギア82がメイン軸75に固定される。これにより、クランク軸36の回転がメイン軸75に伝達されるようになる。
変速用クラッチ機構71は、クラッチ操作機構72によってリフター部91が軸方向にリフトされてプレッシャプレート88がプライマリドリブンギア82側に移動すると、プレッシャプレート88とクラッチセンタ87とによるクラッチ板89の狭持が解除され、クラッチ切断状態となる。
【0029】
アクチュエータ機構74は、モーター93と、クランクケース25内を車幅方向に延びるシフトスピンドル94と、モーター93の回転を減速してシフトスピンドル94を駆動する歯車列95とを備える。
シフトスピンドル94は、一側ケース37Lに設けられたベアリング96と、クラッチカバー39に設けられたベアリング97とによって両端部を軸支され、メイン軸75に対し平行に配置される。また、シフトスピンドル94は、他側ケース37Rに設けられた支持孔部98によっても中間部を支持される。
クラッチカバー39には、シフトスピンドル94の回転位置を検出する角度センサ99が設けられている。
歯車列95は、一側ケース37Lの外面と一側ケース37Lの外面に取り付けられるカバー100とによって両端を軸支される。また、シフトスピンドル94の一端側の先端も、カバー100の内面に設けられたベアリング101によって軸支されている。
【0030】
クラッチ操作機構72は、シフトスピンドル94におけるクラッチカバー39側の端に固定されるクラッチレバー103と、メイン軸75と略同軸の位置関係でクラッチカバー39の内面に固定される支持軸104と、支持軸104に固定される板状のベース部材105とを備える。また、クラッチ操作機構72は、クラッチレバー103に連結されるとともに、ベース部材105に対向して設けられるリフターカムプレート106と、リフターカムプレート106とベース部材105との間に狭持される複数のボール107と、リフターカムプレート106とクラッチレバー103とを連結するピン108とを備える。
【0031】
クラッチレバー103は、シフトスピンドル94上にセレーション嵌合して固定される筒部109と、筒部109から径方向外側に延出するレバー部110とを有する。
リフターカムプレート106は、クラッチレバー103のレバー部110の先端に設けられたピン108に連結される連結部111と、ベース部材105に対向する押圧操作部112とを有する。押圧操作部112及びベース部材105の互いに対向する面には、斜面状のカム部112a,105aがそれぞれ形成されており、ボール107は、カム部112a,105aの間に狭持されている。
リフターカムプレート106は、中央に設けられたガイド穴106aに、ベース部材105のガイド軸105bが嵌合することで、軸方向の移動をガイドされる。また、押圧操作部112の先端部には、ボールベアリング113が設けられており、リフターカムプレート106は、ボールベアリング113を介して変速用クラッチ機構71に接続される。
【0032】
クラッチレバー103が回動されると、リフターカムプレート106は、ピン108を介してガイド軸105bを中心に回動され、カム部112aがボール107に対して滑ることで、軸方向に移動する。変速用クラッチ機構71は、リフター部91がリフターカムプレート106によってボールベアリング113を介して軸方向にリフトされると、クラッチが切断される。
【0033】
ギアチェンジ機構73は、シフトスピンドル94に枢支されるマスターアーム115と、シフトスピンドル94の回転をばねに蓄力し、蓄力を開放してマスターアーム115を回動させる蓄力機構116とを備える。
マスターアーム115は、シフトドラム125に連結されており、アクチュエータ機構74によってマスターアーム115が回動することで、シフトドラム125が回転し、変速が行われる。
【0034】
図6は、蓄力機構116の周辺部及び他側ケース37Rを示す側面図である。ここで、
図6では、蓄力機構116の部分は
図5のVI−VI断面が示されている。
他側ケース37Rは、板状の上記壁部49と、壁部49の周縁部の全周から立設される側壁部117とを備える。壁部49は、軸受け部49a(
図5)を介してクランク軸36を支持するクランク支持孔部118と、ベアリング81を介してメイン軸75を支持するメイン軸支持孔部119と、ベアリング84を介してカウンタ軸76を支持するカウンタ軸支持孔部120と、シフトドラム125を支持するシフトドラム支持孔部126とを有する。
【0035】
クランク支持孔部118は他側ケース37Rの前部に設けられ、メイン軸支持孔部119は他側ケース37Rの後部に設けられ、カウンタ軸支持孔部120は、メイン軸支持孔部119に隣接してメイン軸支持孔部119の後方に位置する。
また、クランク支持孔部118は、壁部49の上下の中間部に位置し、メイン軸支持孔部119はクランク支持孔部118よりも上方に位置し、カウンタ軸支持孔部120は、クランク支持孔部118の上方且つメイン軸支持孔部119の下方に位置する。
シフトスピンドル94は、壁部49の後部の下部でカウンタ軸支持孔部120の下方に配置されている。シフトドラム支持孔部126は、シフトスピンドル94の前方でメイン軸支持孔部119の下方に配置されている。
蓄力機構116は、シフトスピンドル94上に配置されている。マスターアーム115は、蓄力機構116に組み込まれてシフトスピンドル94上に配置されている。
【0036】
図7は、蓄力機構116の断面図である。
蓄力機構116は、他側ケース37Rの壁部49とクラッチカバー39との間に配置される。
蓄力機構116は、シフトスピンドル94の軸上にシフトスピンドル94に対して相対回転可能に設けられるギアシフトアーム130と、ギアシフトアーム130を中立位置に付勢するリターンスプリング131と、ギアシフトアーム130に近接した位置でシフトスピンドル94の軸上に固定され、シフトスピンドル94と一体に回転するシフトダウン用カラー132と、ギアシフトアーム130から軸方向に離間した位置でシフトスピンドル94の軸上に固定され、シフトスピンドル94と一体に回転する第1の蓄力カラー133とを備える。
【0037】
また、蓄力機構116は、第1の蓄力カラー133とギアシフトアーム130との間の軸上に、シフトスピンドル94に対して相対回転可能に設けられるスプリングカラー134と、第1の蓄力カラー133とギアシフトアーム130との間でスプリングカラー134の外周に巻付くように設けられる第1の蓄力スプリング135とを備える。
また、蓄力機構116は、ギアシフトアーム130に対して第1の蓄力スプリング135の反対側に設けられる第2の蓄力カラー136と、第2の蓄力カラー136とギアシフトアーム130との間に設けられる第2の蓄力スプリング137とを備える。
さらに、蓄力機構116は、マスターアーム115の回動位置を規制するストッパーピン138を備える。ストッパーピン138は、他側ケース37Rの壁部49に固定されている。
【0038】
シフトスピンドル94は、アクチュエータ機構74側から順に、歯車列95に接続される接続部94aと、ベアリング96に支持されるとともに支持孔部98を貫通する支持部94bと、ギアシフトアーム130を支持するギアシフトアーム支持部94cと、径方向に突出する鍔状部94dと、スプリングカラー134を支持するスプリングカラー支持部94eと、第1の蓄力カラー133を支持するカラー支持部94fと、ベアリング97に支持される支持部94gとを有する。
シフトスピンドル94において、鍔状部94dは最も大径であり、ギアシフトアーム支持部94c、支持部94b、及び接続部94aは、接続部94a側に向けて段階的に小径になるように形成されている。また、スプリングカラー支持部94e、カラー支持部94f及び支持部94gは、鍔状部94d側から支持部94gに向けて段階的に小径になるように形成されている。
【0039】
支持部94bには、第2の蓄力カラー136が固定される第2の蓄力カラー固定部139が設けられている。ギアシフトアーム支持部94cにおいて鍔状部94dに隣接する位置には、シフトダウン用カラー132が固定されるシフトダウン用カラー固定部140が設けられている。カラー支持部94fには、第1の蓄力カラー133が固定される第1の蓄力カラー固定部141が設けられている。第2の蓄力カラー固定部139、シフトダウン用カラー固定部140及び第1の蓄力カラー固定部141は、シフトスピンドル94の外周に形成されるセレーションである。また、クラッチレバー103は、第1の蓄力カラー固定部141に固定される。
第1の蓄力カラー133、第2の蓄力カラー136、シフトダウン用カラー132、及び、クラッチレバー103は、シフトスピンドル94に対し相対回転不能に固定されており、シフトスピンドル94と一体に回動する。
【0040】
図8は、
図7のVIII−VIII断面図である。
図9は、ギアシフトアーム130を示す図であり、(a)は正面図、(b)はIX−IX断面図である。
図7〜
図9に示すように、ギアシフトアーム130は、シフトスピンドル94の外周面にベアリング142を介して嵌合する円筒部143と、円筒部143における第1の蓄力スプリング135側の端の外周部から径方向外側に延びるプレート部144とを備える。
プレート部144は、円筒部143から上方に延びる上方延出部144aと、円筒部143から前方に延びる前方延出部144bとを備える。
【0041】
前方延出部144には、前方延出部144の先端部から径方向外方に延びた後にシフトスピンドル94と略平行に第1の蓄力スプリング135側へ延びる第1の係止片145が設けられている。また、プレート部144において、円筒部143と第1の係止片145との間には、シフトダウン用カラー132の一部が嵌まる孔部146が設けられている。孔部146は、円筒部143に沿って円弧状に延びる長孔である。
上方延出部144aには、上方延出部144aの先端部から径方向外方に延びた後にシフトスピンドル94と略平行に第2の蓄力スプリング137側に延びる第2の係止片147が設けられている。第2の係止片147は、第2の蓄力スプリング137が係止される基端側の第2の蓄力スプリング係止部147aと、リターンスプリング131が係止される先端側のリターンスプリング係止部147bとを備える。リターンスプリング係止部147bは、第2の蓄力スプリング係止部147aよりも幅が狭く形成されている。
【0042】
マスターアーム115は、ギアシフトアーム130の円筒部143の外周面にベアリング152を介して嵌合する筒状部148と、筒状部148における第1の蓄力スプリング135側の端から径方向外側に延出されるアーム部149とを備える。マスターアーム115は、ギアシフトアーム130に対して相対回転可能である。マスターアーム115は、アーム部149がギアシフトアーム130のプレート部144に近接するように配置される。
アーム部149は、正面視では略L字状に形成されており、筒状部148から上方へ延びる位置規制アーム149aと、筒状部148から前方へ延びる操作アーム149bとを備える。マスターアーム115は、操作アーム149bを介してシフトドラム125に連結されており、マスターアーム115が回動することでシフトドラム125が回転する。
【0043】
マスターアーム115は、ストッパーピン138が挿通される規制開口部150を、位置規制アーム149aの先端部に備える。規制開口部150には、ストッパーピン138の下方の位置で、ギアシフトアーム130の第2の係止片147が挿通される。規制開口部150は、ストッパーピン138及び第2の係止片147が規制開口部150内で規制開口部150に対して相対移動可能なように、所定の大きさの幅を有する。
マスターアーム115は、シフトスピンドル94と略平行に第2の蓄力スプリング137側に延びるスプリング係止片151を、規制開口部150の上縁部に備える。
【0044】
シフトダウン用カラー132は、筒状に形成されており、鍔状部94dに突き当てられて軸方向に位置決めされ、シフトダウン用カラー固定部140に固定される。シフトダウン用カラー132は、ギアシフトアーム130の孔部146に挿通されるドグ歯153を有する。ドグ歯153の全長は、ドグ歯153が孔部146内で移動可能なように、孔部146の全長よりも短く形成されている。
【0045】
第1の蓄力カラー133は、第1の蓄力カラー固定部141に固定される円筒部155と、円筒部155から径方向外側に延びる延出部156と、延出部156の先端からシフトスピンドル94と略平行にギアシフトアーム130側に延びる第1の蓄力アーム157とを備える。第1の蓄力アーム157は、第1の係止片145に対し、径方向及び周方向において略同一の位置に配置される。詳細には、第1の蓄力アーム157は、第1の係止片145に対し、周方向にはわずかにずれた位置に設けられる。
【0046】
スプリングカラー134は、鍔状部94dと第1の蓄力カラー133との間に配置される。スプリングカラー134は、第1の蓄力スプリング135がスプリングカラー134に接触した際にシフトスピンドル94に対して回転することで、第1の蓄力スプリング135のフリクションを低減する。
第1の蓄力スプリング135は、ねじりコイルバネであり、一端のギアシフトアーム側端部135aが、ギアシフトアーム130の第1の係止片145に係止され、他端の蓄力アーム側端部135bが第1の蓄力カラー133の第1の蓄力アーム157に係止される。
【0047】
図10は、
図7のX−X断面図である。
図11は、第2の蓄力カラー136の正面図である。
図7、
図10及び
図11に示すように、第2の蓄力カラー136は、第2の蓄力カラー固定部139に固定される円筒部160と、円筒部160のギアシフトアーム130側の面から軸方向に突出する筒部161とを備える。筒部161の内周部は、ギアシフトアーム130の円筒部143の外周側に位置する。筒部161の外周部の径は、マスターアーム115の筒状部148の外径と略同一であるとともに、筒部161と筒状部148とは軸方向に連続している。
【0048】
第2の蓄力カラー136の円筒部160は、筒部161よりも径方向外側に突出する鍔状のサポート部162(第2の蓄力アーム)を備える。サポート部162の外径は、第2の蓄力スプリング137のコイル部137c(コイル部分)の外径と略同一に形成されている。サポート部162は、第2の蓄力スプリング137が変形した際に、コイル部137cの端を軸方向に受ける。
サポート部162には、サポート部162を外周面側から切り欠くようにして設けられた係止溝163が設けられている。係止溝163はサポート部162を軸方向に貫通する。
【0049】
第2の蓄力スプリング137は、ねじりコイルバネであり、一端のギアシフトアーム側端部137aが、ギアシフトアーム130の第2の係止片147の第2の蓄力スプリング係止部147aに係止され、他端の蓄力アーム側端部137bが第2の蓄力カラー136の係止溝163に係止される。
詳細には、ギアシフトアーム側端部137aは、コイル部137cから径方向外側に延出して第2の係止片147の側面に当接する。また、蓄力アーム側端部137bは、コイル部137cから軸方向に延出し、係止溝163に挿入される。コイル部137cの内周面は、筒部161及び筒状部148の外周面にガイドされる。
【0050】
リターンスプリング131は、第2の蓄力スプリング137よりもコイル部131cが大径なねじりコイルバネであり、第2の蓄力スプリング137の外周側に設けられる。詳細には、リターンスプリング131は、コイル部131cが、第2の蓄力スプリング137に対して軸方向で同じ幅内、且つ、径方向で外側に重なるように配置されている。さらに、リターンスプリング131と第2の蓄力スプリング137とは、コイル部131c及びコイル部137cの巻き方向が互いに逆方向となるように設けられている。これにより、コイル部131cとコイル部137cとが平行ではなく交差するため、コイル部131cとコイル部137cとが接触したとしても、一方のコイル部に他方のコイル部が入り込むことを防止できる。
【0051】
リターンスプリング131は、その一端131aと他端131bとが、互いに所定の間隔をあけて略平行になるように形成されている。
リターンスプリング131は、一端131aと他端131bとの間にストッパーピン138を挟んだ状態で配置される。
【0052】
図8及び
図10では、変速動作が行われていない蓄力機構116の中立状態が示されている。中立状態では、変速用クラッチ機構71が接続状態にあって変速機構70に駆動力が発生している。このため、マスターアーム115は、変速機構70によって拘束されており、シフトスピンドル94上で回動不能である。
マスターアーム115は、スプリング係止片151がリターンスプリング131の一端131aと他端131bとの間に挟まれることで、中立状態における回動位置を中立位置(初期位置)に規制されている。
ギアシフトアーム130は、リターンスプリング係止部147bがリターンスプリング131の一端131aと他端131bとの間に挟まれることで、中立状態における回動位置を規制されている。
すなわち、中立状態では、マスターアーム115及びギアシフトアーム130は、シフトスピンドル94の中心とストッパーピン138の中心とを通る直線Lに沿うように位置している。
【0053】
中立状態では、第1の蓄力スプリング135は、第1の蓄力アーム157と第1の係止片145との間で所定のねじり量だけ初期撓みを付与された状態で設けられており、第1の蓄力スプリング135には所定のセット荷重が発生している。
また、中立状態では、第2の蓄力スプリング137は、第2の蓄力カラー136の係止溝163と第2の蓄力スプリング係止部147aとの間で所定のねじり量だけ初期撓みを付与された状態で設けられており、第2の蓄力スプリング137には所定のセット荷重が発生している。
【0054】
図12は、シフトダウン用カラー132のドグ歯153の位置状態を示す図であり、(a)は中立状態であり、(b)〜(d)は、順にさらにシフトスピンドル94の回動量が増加した状態である。
図12(a)に示すように、ドグ歯153は、中立状態では、ギアシフトアーム130の孔部146の一端に接しており、孔部146の他端との間には隙間が形成されている。
【0055】
ここで、シフトアップをする際の蓄力機構116の動作を説明する。
制御ユニット17の変速の指示に伴ってアクチュエータ機構74のモーター93が駆動されると、シフトスピンドル94の回動が開始される。シフトアップの方向は、図中に符号UPで示す時計回りの方向である。
図13は、中立状態よりもシフトアップ方向に進んだ状態を示す図である。
図13の状態は、ギアシフトアーム130の第2の係止片147の側面147cが、マスターアーム115の規制開口部150の内縁150aに当接してギアシフトアーム130が回動できなくなるまでシフトスピンドル94の回動が進んだ状態であり、以下の説明では、この状態を蓄力準備状態と呼ぶ。
【0056】
蓄力準備状態では、ギアシフトアーム130は、第1の蓄力カラー133及び第2の蓄力カラー136の回動に伴って第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137を介して第1の蓄力カラー133及び第2の蓄力カラー136と一体に回動しただけである。このため、蓄力機構116は全体的にシフトアップ方向に回動しているが、第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137の撓み量に変化は無く、蓄力は開始されていない。また、蓄力準備状態では、中立状態からのマスターアーム115の回動量は0である。
【0057】
蓄力準備状態では、シフトダウン用カラー132がギアシフトアーム130と一体に回動するため、
図12(b)に示すように、ドグ歯153は、中立状態では、ギアシフトアーム130の孔部146の一端に接しており、孔部146の他端との間には隙間が形成されている。
【0058】
図14は、蓄力準備状態よりもシフトアップ方向に進んだ状態を示す図である。
図14の状態では、第1の蓄力スプリング135は、シフトスピンドル94の回動に伴い、ギアシフトアーム側端部135aが第1の係止片145によって位置を固定されたまま、蓄力アーム側端部135bだけが第1の蓄力アーム157によって所定量Rだけ回動されている。
また、
図14の状態では、第2の蓄力スプリング137は、シフトスピンドル94の回動に伴い、ギアシフトアーム側端部137aが第2の蓄力スプリング係止部147aによって位置を固定されたまま、蓄力アーム側端部137bだけが第2の蓄力カラー136の係止溝163によって所定量Rだけ回動されている。以下の説明では、
図14の状態を蓄力状態と呼ぶ。
【0059】
蓄力状態では、第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137の撓み量が、共に所定量Rの分だけ増加しており、第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137の所定量の蓄力が完了している。また、蓄力状態では、中立状態からのマスターアーム115の回動量は0である。
蓄力状態では、規制開口部150に規制されて回動しないギアシフトアーム130に対し、シフトダウン用カラー132はシフトスピンドル94と共に回動している。このため、蓄力状態では、
図12(c)に示すように、ドグ歯153は、ギアシフトアーム130の孔部146の一端と他端との間の中間部に位置する。
【0060】
図5を参照し、クラッチレバー103は、シフトスピンドル94と一体に回転し、クラッチレバー103の回動に伴って、押圧操作部112が軸方向に移動し、変速用クラッチ機構71が切断される。変速用クラッチ機構71が切断されると、変速機構70によるマスターアーム115の拘束が解除され、マスターアーム115は回動可能となる。変速用クラッチ機構71が切断された瞬間に、蓄力機構116の蓄力が開放され、マスターアーム115は、ギアシフトアーム130を介して蓄力によって
図14に二点鎖線で示す位置まで一気に回動する。このため、変速を迅速に行うことができる。マスターアーム115は、一端131a側の規制開口部150がストッパーピン138に当接するまで回動する。
なお、本実施の形態では、蓄力を完了した後に変速用クラッチ機構71を切断させるディレイ機構が設けられている。ディレイ機構は、例えば、クラッチ操作機構72の斜面状のカム部112aの一部に平坦部を設ける構成が挙げられる。
【0061】
蓄力が開放さると、停止しているシフトダウン用カラー132に対してギアシフトアーム130がシフトアップ方向に回動し、
図12(d)に示すように、ギアシフトアーム130の孔部146の一端がドグ歯153に当接する。このため、シフトアップ方向と反対のシフトダウン方向にシフトスピンドル94を回動する際に、ドグ歯153を介してギアシフトアーム130をシフトダウン方向に迅速に回動させることができる。
角度センサ99の検出結果に基づいて変速の完了が検知されると、制御ユニット17はシフトスピンドル94を逆回転し、マスターアーム115は中立状態に復帰するとともに、変速用クラッチ機構71が接続される。
【0062】
図15は、蓄力機構116の荷重特性を示す図である。
図15中、P1は第1の蓄力スプリング135の荷重特性であり、P2は第2の蓄力スプリング137の荷重特性であり、P3は第1の蓄力スプリング135と第2の蓄力スプリング137とを足し合わせた荷重特性である。また、
図15中、Pは、従来の1本の蓄力スプリングの改良版の荷重特性である。
蓄力機構116は、並列に配置された第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137の2つの蓄力スプリングを備えるため、荷重特性は、第1の蓄力スプリング135の荷重特性と第2の蓄力スプリング137の荷重特性とを足し合わせたものとなる。このため、バネ定数の比較的小さい第1の蓄力スプリング135及び第2の蓄力スプリング137を使用したとしても、目標の荷重値Fbを得ることができる。また、バネ定数の小さいばねは、撓み量を大きくとることができるため、バネ定数を小さくした分は、初期撓みを含む全体の撓み量を増やすことで、目標の荷重値Fbを満足させることができる。また、バネ定数が小さいため、シフトスピンドル94の所定の回動範囲における荷重の増加量を小さくできる。このため、2つの蓄力スプリング135,137の合計荷重がモーター93の最大トルクFmを超えないようにすることができる。
【0063】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、自動変速機68は、変速段を操作するシフトスピンドル94と、シフトスピンドル94と一体に回動するように設けられる第1の蓄力アーム157と、シフトスピンドル94と相対回転可能であるとともに、第1の蓄力アーム157との間に第1の蓄力スプリング135を介して連結される第1の係止片145を有するギアシフトアーム130と、ギアシフトアーム130と相対回転可能であるとともに、シフトドラム125を回動させて操作するマスターアーム115とを備え、シフトスピンドル94上、且つ、ギアシフトアーム130を挟んで第1の蓄力スプリング135と反対側に、シフトスピンドル94と一体に回動するように設けられる第2の蓄力アームとしてのサポート部162が設けられ、ギアシフトアーム130は、第1の蓄力スプリング135と反対側に、サポート部162と第2の蓄力スプリング137を介して連結される第2の係止片147を有する。これにより、第1の蓄力スプリング135と、ギアシフトアーム130を挟んで第1の蓄力スプリング135と反対側に設けられた第2の蓄力スプリング137との両方のバネ特性を足し合わせたバネ特性によってギアシフトアーム130に荷重をかけることができる。その結果、バネ定数をそれ程高めることなく、セット荷重を高めることができるため、シフトスピンドル94の回動量とその操作入力部であるモーター93の最大トルクをそれ程上げずに、蓄力荷重を高めることができる。
【0064】
また、ギアシフトアーム130の第2の係止片147には、マスターアーム115を初期位置に戻すリターンスプリング131が係止され、リターンスプリング131と第2の蓄力スプリング137とが、軸方向で同じ幅内、且つ、径方向で内外に重なるよう配置される。このため、リターンスプリング131の配置スペースを有効に利用して、第2の蓄力スプリング137をコンパクトに設けることができる。
さらに、ギアシフトアーム130の第1の係止片145と第2の係止片147とは、共にギアシフトアーム130の第1の蓄力アーム157側の端部から径方向外方に延びた後、それぞれ第1の蓄力スプリング135側と第2の蓄力スプリング137側へと延びるとともに、その周方向の位置が異なるように配される。このため、第1の係止片145及び第2の係止片147にかかる蓄力荷重を分散させることができ、ギアシフトアーム130の強度を確保し易い。
【0065】
また、サポート部162は、シフトスピンドル94と一体的に回動する第2の蓄力カラー136として設けられ、サポート部162は、第2の蓄力スプリング137のコイル部137cと径方向の長さが略等しく、第2の蓄力スプリング137の係止部は、サポート部162の係止溝163として設けられる。このため、蓄力の際の第2の蓄力スプリング137の変形をサポート部162で支持できるとともに、第2の蓄力スプリング137を係止する係止溝163を、サポート部162を利用して簡単な構成で設けることができる。
また、第2の蓄力スプリング137と、リターンスプリング131とは、その巻き方向が逆になるように設けられるため、第2の蓄力スプリング137及びリターンスプリング131のコイル部137cとコイル部131cとは互に交差する。このため、蓄力による変形に伴って第2の蓄力スプリング137とリターンスプリング131とが接触したとしても、一方のスプリングが他方のスプリングの巻き部分に入り込むことを防止できる。
【0066】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、第2の蓄力アームは、サポート部162の外周に係止溝163を設けて形成されているものとして説明したが、これに限らず、例えば、サポート部162から径方向外側にアーム状の係止部を延出させても良い。