特許第6247980号(P6247980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247980
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20171204BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20171204BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20171204BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F24H4/02 H
   F25B49/02 510K
   F25B30/02 H
   F25B1/00 361Q
   F25B1/00 304H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-68027(P2014-68027)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190681(P2015-190681A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 誠士
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−233626(JP,A)
【文献】 特開2012−013267(JP,A)
【文献】 特開2009−222246(JP,A)
【文献】 特開2012−237518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 4/00−4/06
F25B 1/00
F25B 30/02
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒と被加熱流体との間で熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器と、
凝縮器からの冷媒を減圧する減圧器と、
減圧器からの冷媒を蒸発させる蒸発器と、
蒸発器に送風する送風手段と、
蒸発器からの冷媒を加圧して凝縮器へ送り出す圧縮機と、
圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第1温度検出手段と、
凝縮器内の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第2温度検出手段を備えており、
第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差が所定の下限値に満たない場合に、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行い、
冷媒乾き度上昇制御において、送風手段の送風量を増加させる、ヒートポンプ加熱装置。
【請求項2】
冷媒と被加熱流体との間で熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器と、
凝縮器からの冷媒を減圧する減圧器と、
減圧器からの冷媒を蒸発させる蒸発器と、
蒸発器からの冷媒を加圧して凝縮器へ送り出す圧縮機と、
圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第1温度検出手段と、
凝縮器内の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第2温度検出手段を備えており、
第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差が所定の下限値に満たない場合に、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行い、
冷媒乾き度上昇制御において、圧縮機の回転数を低下させる、ヒートポンプ加熱装置。
【請求項3】
冷媒と被加熱流体との間で熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器と、
凝縮器からの冷媒を減圧する減圧器と、
減圧器からの冷媒を蒸発させる蒸発器と、
蒸発器からの冷媒を加圧して凝縮器へ送り出す圧縮機と、
圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第1温度検出手段と、
圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路において第1温度検出手段よりも下流側に配置されており、冷媒の温度を検出する第2温度検出手段を備えており、
第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差が所定の下限値に満たない場合に、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行う、ヒートポンプ加熱装置。
【請求項4】
蒸発器に送風する送風手段をさらに備えており、
冷媒乾き度上昇制御において、送風手段の送風量を増加させる、請求項3のヒートポンプ加熱装置。
【請求項5】
冷媒乾き度上昇制御において、圧縮機の回転数を低下させる、請求項3または4のヒートポンプ加熱装置。
【請求項6】
減圧器が冷媒流路に設けられた絞り弁であって、
冷媒乾き度上昇制御において、絞り弁の開度を小さくする、請求項1から5の何れか一項のヒートポンプ加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、冷媒と被加熱流体との間で熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器からの冷媒を減圧する減圧器と、減圧器からの冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器からの冷媒を加圧して凝縮器へ送り出す圧縮機と、凝縮器内の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する温度検出手段を備えるヒートポンプ加熱装置が開示されている。このヒートポンプ加熱装置では、温度検出手段での検出温度(すなわち冷媒の凝縮温度)が所定温度を超えた場合に、圧縮機の回転数を低下させて、圧縮機から吐出される冷媒の高圧化を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−226036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートポンプ加熱装置においては、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態となる場合がある。この状態で圧縮機を運転し続けると、圧縮比の増大およびそれに伴うシリンダ内圧力の上昇を招き、圧縮機の機構部品の劣化を早めてしまう。しかしながら、従来技術では、仮に圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態となっていても、その状態を解消するようにヒートポンプ加熱装置を動作させることが出来なかった。
【0005】
本明細書は、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、ヒートポンプ加熱装置において、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合に、その状態を解消することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するヒートポンプ加熱装置は、冷媒と被加熱流体との間で熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器からの冷媒を減圧する減圧器と、減圧器からの冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器からの冷媒を加圧して凝縮器へ送り出す圧縮機と、圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第1温度検出手段と、凝縮器内の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第2温度検出手段を備えている。そのヒートポンプ加熱装置は、第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差が所定の下限値に満たない場合に、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行う。
【0007】
圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合、冷媒が放熱しても冷媒の温度は低下しないから、第1温度検出手段で検出される温度と第2温度検出手段で検出される温度はほぼ一致する。これに対して、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が高く、圧縮機から吐出される冷媒が気体単相状態である場合、冷媒の放熱により冷媒の温度が低下するから、第1温度検出手段で検出される温度は、第2温度検出手段で検出される温度よりも高くなる。上記のヒートポンプ加熱装置では、第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差が所定の下限値に満たない場合に、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行う。上記のヒートポンプ加熱装置によれば、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合に、その状態を解消することができる。
【0008】
また、上記のヒートポンプ加熱装置によれば、第2温度検出手段では凝縮器である程度放熱した後の冷媒の温度を計測することになるから、圧縮機から吐出される冷媒が気体単相状態である場合に、第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差を明確に検出することができる。
【0009】
本明細書が開示する別のヒートポンプ加熱装置は、冷媒と被加熱流体との間で熱交換して冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器からの冷媒を減圧する減圧器と、減圧器からの冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器からの冷媒を加圧して凝縮器へ送り出す圧縮機と、圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路に配置されており、冷媒の温度を検出する第1温度検出手段と、圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路の第1温度検出手段よりも下流側に配置されており、冷媒の温度を検出する第2温度検出手段を備えている。そのヒートポンプ加熱装置は、第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度の差が所定の下限値に満たない場合に、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行う。
【0010】
圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路においても、僅かではあるが冷媒が放熱する。従って、上記のヒートポンプ加熱装置においても、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合、第1温度検出手段で検出される温度と第2温度検出手段で検出される温度はほぼ一致し、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が高く、圧縮機から吐出される冷媒が気体単相状態である場合、第1温度検出手段で検出される温度は、第2温度検出手段で検出される温度よりも高くなる。上記のヒートポンプ加熱装置によれば、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合に、その状態を解消することができる。
【0011】
なお、上記のヒートポンプ加熱装置のように、第1温度検出手段と第2温度検出手段の両方が圧縮機と凝縮器の間の冷媒流路に配置されている場合、第2温度検出手段が凝縮器の被加熱流体の温度の影響を受けず、それぞれの温度検出手段の計測条件がほぼ同じになるため、第1温度検出手段と第2温度検出手段の間での計測条件の違いによる計測誤差の影響を排除することができる。
【0012】
上記のヒートポンプ加熱装置は、蒸発器に送風する送風手段をさらに備えており、冷媒乾き度上昇制御において、送風手段の送風量を増加させるように構成することができる。
【0013】
上記のヒートポンプ加熱装置によれば、冷媒乾き度上昇制御において、送風手段の送風量の増加により蒸発器における冷媒の蒸発が促進されて、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させることができる。圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低い状態を解消することができる。
【0014】
上記のヒートポンプ加熱装置は、冷媒乾き度上昇制御において、圧縮機の回転数を低下させるように構成することができる。
【0015】
上記のヒートポンプ加熱装置によれば、冷媒乾き度上昇制御において、圧縮機の回転数の低下により冷媒の循環流量を低下させて、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させることができる。圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低い状態を解消することができる。
【0016】
上記のヒートポンプ加熱装置は、減圧器が冷媒流路に設けられた絞り弁であって、冷媒乾き度上昇制御において、絞り弁の開度を小さくするように構成することができる。
【0017】
上記のヒートポンプ加熱装置によれば、冷媒乾き度上昇制御において、絞り弁の開度を小さくすることで冷媒の循環流量を低下させて、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させることができる。圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低い状態を解消することができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書が開示するヒートポンプ加熱装置によれば、圧縮機に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合に、その状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ヒートポンプ加熱装置4が組み込まれた給湯システム2の構成を模式的に示す図である。
図2】ヒートポンプ加熱装置4における冷媒の冷凍サイクルと、給湯用水の温度変化の一例を示す図である。
図3】ヒートポンプ加熱装置4における冷媒の冷凍サイクルと、給湯用水の温度変化の別の例を示す図である。
図4】ヒートポンプ加熱装置4が組み込まれた給湯システム2の別の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例)
図1に示すように、給湯システム2は主に、ヒートポンプ加熱装置4と、貯湯槽8と、循環ポンプ10と、混合弁12と、バーナ加熱装置14と、バイパス弁16と、制御装置18を備えている。給湯システム2は、上水道等の給水源から供給される水を、ヒートポンプ加熱装置4および/またはバーナ加熱装置14を加熱源として加熱し、給湯設定温度に調温された水を給湯する。
【0021】
ヒートポンプ加熱装置4は、冷媒(例えばR32やR410AといったHFC冷媒や、R744といったCO冷媒)を循環させるための冷媒循環路20と、蒸発器22と、ファン24と、圧縮機26と、凝縮器28と、減圧器30を備えている。
【0022】
蒸発器22は、ファン24によって送風された外気と冷媒循環路20内の冷媒との間で熱交換を行う、気液熱交換器である。蒸発器22には、減圧器30を通過後の低圧低温の液体状態にある冷媒が供給される。蒸発器22は、冷媒と外気とを熱交換させることによって、冷媒を加熱する。冷媒は、加熱されることにより気化し、比較的高温で低圧の気体状態となる。
【0023】
圧縮機26は、リフトタイプの逆止弁を有する圧縮機である。圧縮機26には、蒸発器22を通過後の冷媒が供給される。即ち、圧縮機26には、比較的高温で低圧の気体状態の冷媒が供給される。圧縮機26によって冷媒が圧縮されることにより、冷媒は高温高圧の気体状態となる。圧縮機26は、圧縮後の高温高圧の気体状態の冷媒を、凝縮器28に送り出す。なお、圧縮機26と凝縮器28の間の冷媒循環路20には、冷媒の温度を検出する第1温度センサ31が設けられている。本実施例では、第1温度センサ31は、圧縮機26の吐出口近傍の冷媒循環路20に設けられている。
【0024】
凝縮器28には、圧縮機26から送り出された高温高圧の気体状態の冷媒が供給される。凝縮器28は、冷媒循環路20内の冷媒と給湯用水循環路6内の水(以下では給湯用水ともいう)との間で熱交換を行う、液液熱交換器である。冷媒は、凝縮器28での熱交換の結果、熱を奪われて凝縮する。これにより、冷媒は、比較的低温で高圧の液体状態となる。なお、凝縮器28内の冷媒循環路20には、冷媒の温度を検出する第2温度センサ32が設けられている。
【0025】
減圧器30には、凝縮器28を通過後の比較的低温で高圧の液体状態の冷媒が供給される。本実施例の減圧器30は、冷媒循環路20に設けられた絞り弁である。冷媒は、減圧器30を通過することによって減圧され、低温低圧の液体状態となる。減圧器30を通過した冷媒は、上記の通り、蒸発器22に送られる。
【0026】
ヒートポンプ加熱装置4において、圧縮機26を作動させると、冷媒循環路20内の冷媒は、蒸発器22、圧縮機26、凝縮器28、減圧器30の順に循環する。ヒートポンプ加熱装置4が動作すると、凝縮器28において、給湯用水循環路6内の給湯用水が加熱される。
【0027】
貯湯槽8は、ヒートポンプ加熱装置4によって加熱された給湯用水を貯える。貯湯槽8は密閉型であり、断熱材によって外側が覆われている。貯湯槽8内には満水まで給湯用水が貯留される。
【0028】
給湯用水循環路6は、上流端が貯湯槽8の下部に接続されており、ヒートポンプ加熱装置4の凝縮器28を通過して、下流端が貯湯槽8の上部に接続されている。給湯用水循環路6には、循環ポンプ10が取り付けられている。ヒートポンプ加熱装置4を動作させて、かつ循環ポンプ10を駆動すると、貯湯槽8の下部の給湯用水が凝縮器28に送られて、凝縮器28で加熱された給湯用水が貯湯槽8の上部に戻される。貯湯槽8の内部には、低温の給湯用水の層の上に高温の給湯用水の層が積み重なった温度成層が形成される。
【0029】
給水路34は、上流端が外部の上水道に接続されており、給湯用水として水道水を受け入れる。給水路34の下流側は、貯湯槽導入路36と貯湯槽バイパス路38に分岐している。貯湯槽導入路36の下流端は、貯湯槽8の下部に接続されている。貯湯槽バイパス路38の下流端は、混合弁12に接続されている。貯湯槽導出路40は、上流端が貯湯槽8の上部に接続されている。貯湯槽導出路40の下流側は、混合弁12に接続されている。
【0030】
混合弁12は、貯湯槽導出路40を流れる貯湯槽8の上部からの高温の給湯用水と、貯湯槽バイパス路38を流れる給水路34からの低温の給湯用水を混合して、第1給湯路42へ送り出す。混合弁12では、貯湯槽導出路40から第1給湯路42へ流れる給湯用水の流量と、貯湯槽バイパス路38から第1給湯路42へ流れる給湯用水の流量の割合を調整する。第1給湯路42の下流側は、バーナ加熱路44とバーナバイパス路46に分岐している。バーナ加熱路44には、バーナ加熱装置14が取り付けられている。バーナ加熱装置14は、ガス等の燃料を燃焼させてバーナ加熱路44を流れる給湯用水を加熱する。バーナバイパス路46にはバイパス弁16が取り付けられている。バーナ加熱路44とバーナバイパス路46は、それぞれの下流端で合流して、第2給湯路48の上流端に接続している。第2給湯路48から台所の給湯栓や浴室のシャワー等の給湯箇所へ、給湯設定温度に調温された給湯用水が供給される。
【0031】
制御装置18は、ファン24、圧縮機26、減圧器30、循環ポンプ10、混合弁12、バーナ加熱装置14、バイパス弁16等の動作を制御する。
【0032】
以下では給湯システム2が行う給湯運転および蓄熱運転について説明する。
【0033】
給湯運転は、給湯設定温度に調温された給湯用水を第2給湯路48に供給する運転である。給湯運転は、後述する蓄熱運転と並行して行うこともできる。給湯栓やシャワーでの給湯用水の供給が開始されると、給水路34からの水圧によって、給水路34から貯湯槽8の下部に水道水が流入する。同時に、貯湯槽8の上部の給湯用水が、貯湯槽導出路40、第1給湯路42、バーナ加熱路44、バーナバイパス路46を介して、第2給湯路48に供給される。制御装置18は、貯湯槽8から貯湯槽導出路40に供給される給湯用水の温度が、給湯設定温度より高い場合には、混合弁12を駆動して貯湯槽バイパス路38から第1給湯路42に低温の給湯用水を導入する。制御装置18は、第2給湯路48に供給される給湯用水の温度が、目標とする給湯設定温度となるように、混合弁12の開度を調整する。一方、制御装置18は、貯湯槽8から貯湯槽導出路40に供給される給湯用水の温度が、給湯設定温度より低い場合には、バーナ加熱装置14によって給湯用水の加熱を行う。制御装置18は、第2給湯路48に供給される給湯用水の温度が、目標とする給湯設定温度となるように、バーナ加熱装置14の出力を制御する。
【0034】
蓄熱運転では、貯湯槽8内の給湯用水をヒートポンプ加熱装置4で加熱し、高温となった給湯用水を貯湯槽8に戻す。蓄熱運転を開始する際には、制御装置18はファン24および圧縮機26を駆動してヒートポンプ加熱装置4を動作させるとともに、循環ポンプ10を駆動する。圧縮機26の駆動により、冷媒循環路20内の冷媒は、蒸発器22、圧縮機26、凝縮器28、減圧器30の順に循環する。また、循環ポンプ10の駆動により、給湯用水循環路6内を貯湯槽8内の給湯用水が循環する。即ち、貯湯槽8の下部に存在する給湯用水が給湯用水循環路6内に導入され、導入された給湯用水が凝縮器28で加熱され、加熱された給湯用水が貯湯槽8の上部に戻される。これにより、貯湯槽8に高温の給湯用水が貯められる。貯湯槽8の内部が高温の給湯用水で満たされた満蓄状態となると、蓄熱運転を終了する。
【0035】
蓄熱運転中、制御装置18は、第1温度センサ31で検出される温度と、第2温度センサ32で検出される温度に基づいて、ファン24の回転数や、圧縮機26の回転数や、減圧器30である絞り弁の開度を調整する。
【0036】
図2図3において、太い実線50はヒートポンプ加熱装置4における冷媒の冷凍サイクルを示しており、太い破線52はヒートポンプ加熱装置4における給湯用水の温度上昇を示しており、白丸54は第1温度センサ31の検出温度を示しており、白丸56は第2温度センサ32の検出温度を示している。
【0037】
図2に示すように、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が高く、圧縮機26から吐出される冷媒が気体単相状態である場合、第2温度センサ32で検出される温度は第1温度センサ31で検出される温度よりも低くなる。これに対して、図3に示すように、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機26から吐出される冷媒が気液二相状態である場合、第2温度センサ32で検出される温度は第1温度センサ31で検出される温度にほぼ一致する。図3に示すような状態で圧縮機26を運転し続けると、圧縮比の増大およびそれに伴うシリンダ内圧力の上昇を招き、圧縮機26の機構部品の劣化を早めてしまう。そこで、本実施例の給湯システム2では、第1温度センサ31で検出される温度と第2温度センサ32で検出される温度の差が所定の下限値(例えば0.5℃)に満たない場合に、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させる冷媒乾き度上昇制御を行う。
【0038】
具体的には、制御装置18は、冷媒乾き度上昇制御において、ファン24の回転数を上昇させて、蒸発器22への送風量を増加させる。これにより、蒸発器22における冷媒の蒸発が促進されて、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させることができる。圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低い状態を解消することができる。
【0039】
および/または、制御装置18は、冷媒乾き度上昇制御において、圧縮機26の回転数を低下させる。これにより、ヒートポンプ加熱装置4における冷媒の循環流量を低下させて、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させることができる。圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低い状態を解消することができる。
【0040】
および/または、制御装置18は、冷媒乾き度上昇制御において、減圧器30である絞り弁の開度を小さくする。これにより、ヒートポンプ加熱装置4における冷媒の循環流量を低下させて、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度を上昇させることができる。圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低い状態を解消することができる。
【0041】
本実施例では、圧縮機26としてリフトタイプの逆止弁を有する圧縮機を用いている。このような構成とすることによって、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低くなって、シリンダ内圧力が急上昇した場合でも、リフトタイプの逆止弁が開放されて、シリンダ内の圧力上昇を緩和することができる。
【0042】
上記の実施例では、第2温度センサ32が凝縮器28内の冷媒循環路20に設けられている。このような構成では、第2温度センサ32では凝縮器28である程度放熱した後の冷媒の温度を計測することになるから、圧縮機26から吐出される冷媒が気体単相状態である場合に、第1温度センサ31の検出温度と第2温度センサ32の検出温度の差を明確に検出することができる。
【0043】
上記の実施例とは異なり、図4に示すように、第2温度センサ32を圧縮機26と凝縮器28の間の冷媒循環路20の第1温度センサ31よりも下流側に配置してもよい。図4に示す例では、第1温度センサ31は圧縮機26の吐出口近傍の冷媒循環路20に設けられており、第2温度センサ32は凝縮器28の入り口近傍の冷媒循環路20に設けられている。圧縮機26と凝縮器28の間の冷媒循環路20においても、僅かではあるが冷媒が放熱する。従って、図4に示す構成とした場合も、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機26から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合、第1温度センサ31で検出される温度と第2温度センサ32で検出される温度はほぼ一致し、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が高く、圧縮機26から吐出される冷媒が気体単相状態である場合、第1温度センサ31で検出される温度は、第2温度センサ32で検出される温度よりも高くなる。図4に示す構成においても、圧縮機26に吸い込まれる冷媒の乾き度が低く、圧縮機26から吐出される冷媒が気液二相状態にある場合に、その状態を解消することができる。
【0044】
なお、図4に示すように、第1温度センサ31と第2温度センサ32の両方が圧縮機26と凝縮器28の間の冷媒循環路20に配置されている場合、第2温度センサ32が凝縮器28の給湯用水の温度の影響を受けず、それぞれの温度センサの計測条件がほぼ同じになるため、第1温度センサ31と第2温度センサ32の間での計測条件の違いによる計測誤差の影響を排除することができる。
【0045】
上記の実施例では、冷媒と給湯用水の間で熱交換を行う場合について説明したが、冷媒と給湯用水以外の被加熱流体との間で熱交換を行う構成としてもよい。例えば、床暖房機や浴室乾燥暖房機などの暖房に用いられる暖房用水を被加熱流体として、冷媒と暖房用水との間で熱交換を行う構成とすることもできる。
【0046】
上記の実施例では、冷媒と1つの被加熱流体(給湯用水)との間で熱交換を行う場合について説明したが、冷媒と2つ以上の被加熱流体との間で熱交換を行う構成としてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0048】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
4 ヒートポンプ加熱装置
6 給湯用水循環路
8 貯湯槽
10 循環ポンプ
12 混合弁
14 バーナ加熱装置
16 バイパス弁
18 制御装置
20 冷媒循環路
22 蒸発器
24 ファン
26 圧縮機
28 凝縮器
30 減圧器
31 第1温度センサ
32 第2温度センサ
34 給水路
36 貯湯槽導入路
38 貯湯槽バイパス路
40 貯湯槽導出路
42 第1給湯路
44 バーナ加熱路
46 バーナバイパス路
48 第2給湯路
50 冷媒の冷凍サイクル
52 給湯用水の温度上昇
54 第1温度センサの検出温度
56 第2温度センサの検出温度
図1
図2
図3
図4