(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記磁気ループに電流を流すよう前記アンプを制御した際に磁気ループに電流が流れていることを前記ディスプレイに表示するよう前記ディスプレイを制御する請求項4記載の対面業務装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面で同じ番号は同じ構成または類似した構成を示している。
【0011】
第1の実施形態では、補聴器を利用する難聴者の聞こえ具合を良好にする、難聴者支援装置を説明する。難聴者支援装置では、磁気ループに対する補聴器の位置や方向にかかわらず、良好な聞こえ具合を提供するために、複数の磁気ループに流す電流の配分を変化させている。
【0012】
具体的には、複数の磁気ループを異なる位置に設置し、各磁気ループに流す電流の配分を時間の経過と共に変化させることによって、磁気ループから発生する磁界の方向を変化させている。複数の磁気ループが発する磁気信号の向きを時間経過に伴って変化させることによって、補聴器がどのような位置や方向にあってもその補聴器の位置や向きに合った磁気信号を受信することが可能となり、補聴器を装着した人は良好な聞こえ具合を得ることができる。
【0013】
また、他の実施形態ではPOS端末を含む対面業務装置において、補聴器を装着する難聴者の聞こえ具合を良好にする。対面業務装置では、磁気ループと補聴器装着者が見るディスプレイとを特定の位置関係とすることで、補聴器を装着してディスプレイを見る人の補聴器と磁気ループの位置関係を所定の位置関係に維持し、補聴器装着者に良好な聞こえ具合を提供する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、磁気ループシステム対応型の耳かけ型補聴器1を示す斜視図である。
図1に示すように磁気ループシステム対応型の補聴器1には音の入力手段としてマイク5とTコイル2が備わっている。
【0015】
マイク5は、周辺の空気振動を電気信号に変換する。Tコイル2は電話の受話器や、磁気ループが発する磁気信号を電気信号に変換する。マイク5あるいはTコイル2で変換された電気信号は、補聴器1内に内蔵されているスピーカ(イヤホン)7で空気振動に変換される。この空気振動は、チューブ3を通してイヤモールド4と呼ばれる耳栓部4に送られる。補聴器1装着者は、イヤモールド4を耳穴に装着しており、マイク5で集音した音や、Tコイル2を用いて電話の受話器や磁気ループが発する磁気信号に基づく音を聞くことができる。
【0016】
スイッチ6は、音の入力としてマイク5を選択するかTコイル2を選択するかの切り替えスイッチである。補聴器1の装着者がスイッチ6をマイク選択に切り替えるとマイク5で集音された音を聞くことができる。以下、この状態をMモードと呼ぶ。補聴器1の装着者がスイッチ6をTコイル選択に切り替えるとTコイル2で拾った磁気信号に基づく音を聞くことができる。以下この状態をTモードと呼ぶ。補聴器によっては、MモードとTモードを同時に有効とするスイッチポジションを持つものもある。
【0017】
空間を伝わる音には、雑音や反射音が混じる。従って、Mモードの音は聞きづらい(S/Nが低い)場合がある。これに対して、Tモードでは、雑音や反射音が混じらないため聞きやすい(S/Nが高い)。
【0018】
図2は、3個の磁気ループ11,12,13それぞれをXYZの3面に配置した部屋を示している。立方体10は、例えば、会議室やホールなどの部屋である。磁気ループ11,12,13は、床、壁、天井などに設置することができる。壁面Xに磁気ループ11、壁面Yに磁気ループ12、天井面Zに磁気ループ13を設置した例を示した。以下、補聴器1がTモードに設定されていることを前提に説明する。
【0019】
各磁気ループに電流を流すと、右ねじの法則(アンペールの法則)に従い、磁気ループの電線の周りに磁気信号(磁界)が発生する。例えば、磁気ループ11に矢印14で示す方向に電流を流すと電線の周りに磁界15、16、17、18が発生する。従って、発生する磁気信号は、磁気ループ設置面(壁面X)の法線方向19で強くなる。同様に、磁気ループ12から生じる磁気信号(磁界)は壁面Yの法線方向で、磁気ループ13から生じる磁気信号(磁界)は天井面Zの法線方向で強くなる。本実施例では磁気ループの電線は1重のループとなっているが、2重、3重、またはそれ以上としても良い。一般に、ループを多重化する方が磁気信号は強くなる。
【0020】
図3は、磁気ループ11で生じる磁気信号の強い方向をx、磁気ループ12で生じる磁気信号の強い方向をy、磁気ループ13で生じる磁気信号の強い方向をzとして立方体10の空間を3次元座標で表している。即ち、壁面Xの法線方向がx軸、壁面Yの法線方向がy軸、壁面Zの法線方向がz軸となっている。
【0021】
図3において、例えば補聴器1に内蔵されているTコイル2の向き(コイル中心の向きC−C‘)がz軸と平行であった場合には、磁気ループ11から発生するx軸と平行な磁気信号19に対しては感度が低い。従って、Tコイル2がz軸に平行に位置した場合、補聴器1は磁気ループ11を通して受信した音声信号を良好に再生し難くなる。同様に、Tコイル2がz軸に平行に位置した場合、補聴器1は磁気ループ12から発生するy軸と平行な磁気信号に対しても感度は低い。一方、z軸と平行に位置するTコイル2は、磁気ループ13から発生するz軸と平行な磁気信号に対して感度が高い。
【0022】
磁気ループ11、12,13に同じ電流が流れても、Tコイル2と磁気ループ11、12,13の位置関係によって、補聴器1で聞く音には大きな差が生じる。Tコイル2がz軸と平行に位置する場合には、磁気ループ13に電流を流して磁気信号を発生させるのが良い。要するに、補聴器1に内蔵されているTコイル2と平行、または、平行に近い磁気信号を発生させることが良好な聞こえ具合を提供するためのポイントとなる。
【0023】
以下、Tコイル2の向きが不明であっても、Tコイル2と平行する、または平行に近い磁気信号を発生させるための構成について説明する。
【0024】
図4は、壁面Xの磁気ループ11、壁面Yの磁気ループ12、天井面Zの磁気ループ13に電流を流し、磁気信号(磁界)を発生させるための制御ブロック図を示している。点線で囲んだ部分は、磁気ループコントローラ40である。磁気ループコントローラ40には、プリアンプ21、アンプ22、23、24、切替信号発生器25が内蔵されている。磁気ループコントローラ40には、マイク20とスイッチ26が接続されている。
【0025】
マイク20(音声入力装置20)から入力された音声信号は、プリアンプ21に入力される。尚、音声入力装置20はマイクに変えて、例えば、オーディオ機器、音声信号を合成するCPUなどであっても良い。
【0026】
プリアンプ21は3系統の出力を有している。3系統の出力は、磁気ループ11、12、13に電流を流すためのアンプ22、23、24に入力される。
【0027】
アンプ22、23、24は、それぞれのアンプ出力を有効(ON)にするか無効(OFF)にするかのアンプ制御信号(イネーブル信号)入力端子を備えている。アンプ制御信号がLレベルの時には各アンプはONになり、それぞれに接続されている磁気ループに電流を流す。アンプ制御信号がHレベルの時には各アンプはOFFになり、それぞれに接続されている磁気ループに電流を流さない。
【0028】
切替信号発生器25は、アンプ22、23、24に入力されるアンプ制御信号28、29、30を発生する。切替信号発生器25がアンプ制御信号28をLレベルにするとアンプ22がONになり磁気ループ11に電流が流れ、x軸と平行な方向に強い磁気信号が発生する。切替信号発生器25がアンプ制御信号29をLレベルにするとアンプ23がONになり磁気ループ12に電流が流れ、y軸と平行な方向に強い磁気信号が発生する。切替信号発生器25がアンプ制御信号30をLレベルにするとアンプ24がONになり磁気ループ13に電流が流れ、z軸と平行な方向に強い磁気信号が発生する。
【0029】
さらに、切替信号発生器25がアンプ制御信号28、29、30のうち2つ以上をLレベルにすると、2つ以上の磁気ループに電流が流れる。2つ以上の磁気ループに電流が流れると、x軸、y軸、z軸と平行でない方向に強い磁気信号が発生する。例えば、切替信号発生器25がアンプ制御信号28とアンプ制御信号29をLレベルにするとアンプ22とアンプ23がONになり磁気ループ11と磁気ループ12に電流が流れ、x軸とy軸の合成方向(
図3の8で示す方向)に強い磁気信号が発生する。
【0030】
図5に切替信号発生器25が発生するアンプ22,アンプ23,アンプ24へのアンプ制御信号28、29、30の出力例を示す。2つ以上の磁気ループに電流を流す場合まで含めると、3つのアンプ22、23、24の出力状態の組み合わせは8種類ある。
図5では、3つのアンプ22、23、24の出力(ON/OFF)の組み合わせ状態(磁界の発生状態)を0〜7の磁界モードとして表した。
【0031】
磁界モード0は、アンプ制御信号28、29、30すべてHレベルであり、アンプ22、23、24のいずれもOFFで、磁界は発生しないモードである。
【0032】
磁界モード1は、アンプ制御信号28がLレベルで、アンプ22がONになり、磁気ループ11に電流が流れるモードである。磁気ループ11に電流が流れ、x軸に平行な向きに強い磁気信号が発生する。
【0033】
磁界モード2は、アンプ制御信号29がLレベルで、アンプ23がONになり、磁気ループ12に電流が流れるモードである。磁気ループ12に電流が流れ、y軸に平行な向きに強い磁気信号が発生する。
【0034】
磁界モード3は、アンプ制御信号28と29がLレベルで、アンプ22とアンプ23の2つがONになり、磁気ループ11と磁気ループ12に電流が流れるモードである。磁気ループ11、12に電流が流れ、x軸とy軸の合成方向(
図3の8で示す方向)に強い磁気信号が発生する。
【0035】
磁界モード4は、アンプ制御信号30がLレベルで、アンプ24がONになり、磁気ループ13に電流が流れるモードである。磁気ループ13に電流が流れ、z軸に平行な向きに強い磁気信号が発生する。
【0036】
磁気モード5〜7も同様に、
図5に示したアンプ制御信号28、29、30の動作に応じてアンプ22、23、24が動作し、磁気ループ11、12、13に電流が流れる。
【0037】
図6は、各磁界モードにおける磁気信号の強い向きを表したものである。
図6では、x軸、y軸、z軸の交点を座標(0,0,0)とした。各磁界モードにおける磁気信号の強い向きをベクトルで表すために、座標(0,0,0)を始点とし、終点を単位格子上の座標で表した。例えば、磁界モード1の磁気信号強い向きは、座標(0,0,0)を始点とし、終点を座標(1,0,0)とするベクトルで表している。磁界モード2の磁気信号強い向きは、座標(0,0,0)を始点とし、終点を座標(0,1,0)とするベクトルで表している。磁界モード3の磁気信号強い向きは、座標(0,0,0)を始点とし、終点を座標(1,1,0)とするベクトルで表している。尚、磁気信号は、磁気コイルに流す電流の向きを反対にすると向きが反対になるが、
図6では、一方向のベクトルとして表示している。
【0038】
磁気ループに流れる電流の向きを反対方向に変えることを考慮に入れると、磁気信号の向きにより多くのバリエーションを持たせることができる。例えば、磁気ループ11に磁界モード1の場合と反対方向の電流を流すと、座標(0,0,0)を始点とし、終点を座標(−1,0,0)とする点線で表すベクトル31の方向に強い磁気信号が発生する。磁気ループ11に磁界モード1の反対方向に電流を流すと同時に、磁気ループ12に磁界モード2と同じ方向に電流を流すと、座標(0,0,0)を始点とし、終点を座標(−1,1,0)とする点線で表すベクトル32の方向に強い磁気信号が発生する。座標(0,0,0)を始点とし、終点を座標(−1,1,0)とするベクトル32は、磁界モード1〜7のいずれのベクトルとも異なる向きである。
【0039】
同様に、磁気ループ12に反対方向の電流を流すことや、磁気ループ13に反対方向の電流を流すことによっても、磁界モード1〜7と異なる方向に強い磁気信号を発生させることができる。
【0040】
以上、
図6に示すように、各磁気ループへ流す電流の配分を変えることで、磁気信号の強い向きを様々な方向に変化させることができることを示した。
【0041】
次に、時間の経過と共に、磁気ループへ流す電流の配分を変化させるための構成について説明する。尚、磁気信号の向きとしては、
図6で示した磁気モード1〜磁気モード7の7種類を用いる。
【0042】
切替信号発生器25を3bitカウンタによって構成する。切替信号発生器25に接続されたスイッチ26が開の状態では、3bitカウンタのカウント値は0となる。カウント値が0の状態では、切替信号発生器25の出力であるアンプ制御信号28、29、30がすべてHレベルとなり、いずれの磁気ループにも電流が流れない磁界モード0となる。磁界モード0では、磁気信号は発生しない。
【0043】
スイッチ26が閉の状態になると3bitカウンタは、カウントを開始する。カウント1の状態では、アンプ制御信号28がLレベル、アンプ制御信号29とアンプ制御信号30がHレベルの状態となり、磁気ループ11に電流が流れる磁界モード1となる。以下3bitカウンタは、2、3、4、5、6、7とカウントアップした後、カウント値1に戻り7までのカウントを繰り返す。カウント値の変化とともに、磁界モードも1から7までの変化を繰り返す。
【0044】
磁界モードが時間の経過とともに変化する空間に補聴器1(Tコイル2)が存在すると、補聴器1(Tコイル2)の位置や向きが不確定であっても、いずれかの磁界モード(タイミング)でTコイル2が感度良く磁気信号を検出することができる。従って、補聴器1の装着者に良好な聞こえ具合を提供することができる。
【0045】
3bitカウンタのカウント周期(磁界モードの切り替え周期)は聴覚上違和感のない程度に短い周期とすることが望ましい。例えば、磁界モード1〜7の一巡が40KHz(25μs)程度になるように設定しておけば、可聴域の周波数(20KHz以下)をほぼサンプリングできるので、磁界モードの切り替えによる音質低下を避けることができる。但し、カウンタのカウント周期は上記の値を満たすことが必ずしも必要という訳ではない。
【0046】
図5では、単純に磁界モード1〜7が繰り返される例を示したが、磁界の方向をスムーズに切り替えるならば、例えば、磁界モードの切り替え順を1→3 →2 →6 →4 →5 →7 →1→・・・・というように切り替えることが望ましい。磁界モードの切り替え順を変えることで、磁界の方向が急激に変化することを防ぐことができる。磁界モードの切り替え順を変化させる方法として、切替信号発生器25内に3bitカウンタのカウント値とアンプ制御信号28、29、30の出力状態を対応づける変換テーブルを内蔵させ、切替信号発生器25が変換テーブルに従いアンプ22、23、24を切り替えるようにすれば良い。
【0047】
磁気ループ11,12,13を使用しないときは、不要な磁気信号を発生させないように、スイッチ26を開の状態にしておくことが望ましい。また、本実施例では、スイッチ26の開閉で磁気ループ11,12,13のON/OFFを操作する例を示したが、制御線27を他のシステムで制御しても良い。
【0048】
以上、3つの磁気ループに流す電流の配分を時間の経過と共に変化させることで、補聴器1に内蔵されているTコイル2の位置や向きがどのような状態であっても、補聴器1の装着者が明瞭な音を聴取することができる例を示した。
【0049】
(第2の実施形態)
図7は、POS(Point of Sales)システム100(対面業務装置)に磁気ループを適用した例を示している。このPOSシステム100には4つの磁気ループが備えてある。以下、POSシステム100の構成について説明する。
【0050】
POSシステム100は、縦型スキャナである画像読取装置101と、画像読取装置101で撮像した画像に応じて売上登録処理を実行するPOS端末103とを備えている。画像読取装置101は、買物カゴ等が載置されるサッカー台110上の略中央部に立設している。また、POS端末103は、サッカー台110の一方の端部付近に設けられている。これら画像読取装置101とPOS端末103とは、伝送路によって相互通信可能に接続されている。
【0051】
画像読取装置101は、撮像装置117、ディスプレイ111、112、マイク113等を備えている。撮像装置117は、オペレータに対面する撮像窓を介して、商品に付されたコードシンボル(バーコードや二次元コード等)の画像や商品の全体または一部のオブジェクト画像を光学的に撮像する。ディスプレイとしてオペレータ200用ディスプレイ111と買い物客300用ディスプレイ112を備えている。
【0052】
POS端末103は、キーボード160、ディスプレイ162、プリンタ163、金銭処理装置164、および商品登録処理部165を備えている。キーボード160は、コードシンボルやオブジェクト画像で登録不能な商品の登録を行うための各種キー等を配設する。ディスプレイ162はオペレータ用ディスプレイ111と同様な表示に加えて、商品登録処理部165が計算した結果、およびオペレータ200に必要な情報を表示する。プリンタ163はレシート、クーポン、領収書などを印刷する。金銭処理装置164は紙幣、硬貨などの入出金および釣銭の出金を行う。
【0053】
オペレータ用ディスプレイ111には、レジ会計操作に必要な情報や入力のための内容が表示される。さらに、オペレータ用ディスプレイ111は、POS端末103による売上登録処理に応じ、オペレータ200に対して登録された商品の品名、価格などを表示する。買い物客300用ディスプレイ112には、購入品名、購入品の値段、支払金額、宣伝などが表示される。また、オペレータ200用ディスプレイ111には、オペレータ200の音声を集音するためのマイク113が設置されている。
【0054】
サッカー台110を挟んでオペレータ200と買い物客300が対面する。買い物客300の耳には耳かけ型のTコイル内蔵型補聴器1が装着されている。耳かけ型Tコイル内蔵型補聴器1に変えて、Tコイル内蔵耳穴型補聴器や、Tコイル内蔵箱型補聴器と補聴器に有線で接続されたスピーカ内蔵のイヤモールドを利用することもできる。
【0055】
サッカー台110の正面(X)には磁気ループ121が、側面(Y)には磁気ループ122が設置されている。買い物客300が立つサッカー台110前の床(Z)には、磁気ループ123が設置されている。更に、買い物客300が見るディスプレイ112の周囲には、点線で示す磁気ループ150が設置されている。
【0056】
4つの磁気ループ121、122、123、150を設置した場合であっても、実施形態1で説明したように磁気ループに流す電流の配分を時間の経過とともに変化させることにより、Tコイル2内蔵型の補聴器1を装着した買い物客300に良好な聞こえを提供することが可能である。
【0057】
図8にPOSシステム100の画像読取装置101の制御ブロックを示した。点線で囲んだ制御部170には、
図7に示す壁面Xの磁気ループ121、壁面Yの磁気ループ122、床面Zの磁気ループ123、ディスプレイ111、マイク113、ディスプレイ112およびディスプレイ112の周囲に設置された磁気ループ150が接続されている。
【0058】
点線で囲んだ制御部170には、CPU131、プリアンプ132、アンプ133、134、135、136が内蔵されている。プリアンプ132には、マイク113が接続されている。マイク113から入力された音声信号は、信号線147を介してプリアンプ132に入力される。プリアンプ132には、CPU131も信号線134で接続されている。CPU131内部では、音声や音楽などの信号が合成され、合成された信号は信号線134を介してプリアンプ132に入力される。プリアンプ132では、マイク113とCPU131から入力された信号が合成される。
【0059】
プリアンプ132は4系統の出力を有している。プリアンプ132から出力される4系統の出力は、信号線143、144、145、146を介してアンプ133、アンプ134、アンプ135、アンプ136に入力される。
【0060】
アンプ133、134、135、136は、アンプ出力をONにするかOFFにするかのアンプ制御信号入力端子をそれぞれ備えている。アンプ制御信号がLレベルの時に、アンプはアンプに接続されている磁気ループに電流を流し、Hレベルの時には電流を流さないようになっている。
【0061】
CPU131とアンプ133、134、135、136のアンプ制御信号入力端子は、信号線137、138、139、140で接続されている。CPU131は、信号線137、138、139、140を介して各アンプに接続されている磁気ループに電流を流すか流さないかを制御する。CPU131は、信号線137、138、139、140を介して磁気ループ150、121、122、123に流す電流の配分を変化させる。磁気ループ121、122、123、150に流れる電流配分が変化することで、磁気信号の強い向きが様々な方向に変化する。第1の実施の形態で示したように、磁気ループ150、121、122、123に流す電流の配分を時分割で変化させている。磁気信号の強い向きが様々な方向に変化する空間の中に買い物客300が装着している補聴器1が存在すると、補聴器1に内蔵されているTコイル2は、感度良く磁気信号を拾うことができる。従って、補聴器1を装着した買い物客300は、マイク113から入力される音声と、CPU131が合成する音声や音楽などをTモードでクリアに聞くことができる。
【0062】
CPU131は信号線141でオペレータ用ディスプレイ111に接続され、表示内容を制御する。同様に、CPU131は信号線142で買い物客用ディスプレイ112に接続され、表示内容を制御する。制御部170に内蔵されるCPU131が出力する音声(案内)は、例えば、購入品目やその数量、金額など、ディスプレイ112に表示される内容と関連付けておくことが望ましい。
【0063】
CPU131はアンプ133、134、135、136の少なくとも1つをONにした際、磁気ループ150、121,122,123に電流が流れていることを、ディスプレイ111および112上にマーク151、152で表示する。マーク151、152の表示は、オペレータ200ならびに、Tコイル内蔵型補聴器1を装着している買い物客300にTモードで音が聞こえることを知らせるのに有効である。つまり、オペレータ200にマーク151の表示を見せることで、オペレータ200に対してマイクに向かって話すことを促すことができる。また、買い物客300にマーク152の表示を見せることで、買い物客300に対してTコイル内蔵型補聴器1をTモードに切り替えることを促すことができる。
【0064】
買い物客300に対面するディスプレイ112に磁気ループ150を備えることで、補聴器1に近い場所で磁気信号(磁界)を発生させることができる。補聴器1を装着した買い物客300は、ディスプレイ112のマーク152の表示を見て、補聴器1をTモードに切り替え、オペレータ200の音声や、POSシステムが出力する音声信号、音楽などを、磁気ループ121、122、123、および補聴器1の近くに位置する磁気ループ150を通してクリアな音で聴くことができる。
【0065】
第2の実施形態では磁気ループ150をディスプレイ112の周囲に配置する例を示した。
図7の場合、買い物客300は、必然的にディスプレイ112を見る。従って、良好な聞こえを提供するために、補聴器1を装着した買い物客300がディスプレイ112に表示された内容を読取り可能な距離に、磁気ループ150を搭載したディスプレイ112を設置し、さらに客300の立ち位置に合わせて磁気ループ121、122、123を設置する。
【0066】
磁気ループ150は、ディスプレイ112の周囲に配置する構成に変えて、ディスプレイ112の近傍に設置されていれば良く、ディスプレイ111の裏面に設置することも可能である。要するに、補聴器装着者が必然的に顔(補聴器)を近づける場所に磁気ループ150を設置しておけば良い。
【0067】
補聴器装着者が必然的に見るディスプレイや掲示物に対して所定の位置に磁気ループを設置するのは、有効な手段である。
【0068】
磁気ループを制御する制御回路や制御用ソフトウエアが画像読取装置101内に設けられた構成で説明したが、磁気ループ150、121,122、123を制御する制御回路や制御用ソフトウエアは、POS端末103に設けることも可能である。
【0069】
以上、POSシステム100への応用例を説明した。他の例として、例えば、空港や鉄道、劇場、遊園地などのチケット販売窓口、案内窓口などの対面業務装置に設置できる。また、列車内やバス、タクシーなどの座席や車イスに設置しても良い。さらに各種自動販売機、カーナビゲーション、パソコン、スマートフォンなど、ディスプレイを備える機器に応用することも可能である。特にパソコンやスマートフォンに応用すれば、通信回線を用いて、補聴器装着者が遠隔地との会話をスムーズに行うことができる。
【0070】
以上説明したように、複数の磁気ループへ流す電流の配分を時間の経過と共に変化させることによって、補聴器装着者は補聴器に内蔵されているTコイルの向きがどのような状態であっても明瞭な音を聞くことができる。また対面業務装置のディスプレイ近傍に配置された磁気ループに音声信号に基づいた電流を流すことでディスプレイを見る補聴器装着者は明瞭な音を聞くことができる。さらに、ディスプレイ上に磁気ループに音声信号に基づいた電流が流れていることを表示することで、オペレータにはマイクに向かって話すことを促し、補聴器装着者には補聴器をTモードに切り替えることを促すことが可能になり、補聴器装着者は明瞭な音を聞くことができる。
【0071】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。