特許第6248002号(P6248002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248002
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ばら積み船の窒素ガス供給設備
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/04 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B63B25/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-123444(P2014-123444)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-2839(P2016-2839A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】304018646
【氏名又は名称】旭海運 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒平 一也
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−132974(JP,A)
【文献】 特開昭56−95788(JP,A)
【文献】 実開昭62−201199(JP,U)
【文献】 米国特許第3850001(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの貨物倉内に気体を供給することができる気体供給配管と、
該気体供給配管に消火ガスを供給する消火ガス供給設備と、
消火ガス供給設備から前記気体供給配管に供給する消火ガスの量を制御する消火ガス制御バルブを備えたばら積み船において、
窒素ガス発生装置と、
該窒素ガス発生装置と前記気体供給配管とを接続する窒素ガス供給配管と、
前記窒素ガス発生装置から前記気体供給配管に供給する窒素ガス量を制御する窒素ガス制御バルブを備えた
ばら積み船の窒素ガス供給設備。
【請求項2】
前記窒素ガス発生装置が、前記ばら積み船のデッキ上であって、前記気体供給配管が前記デッキに隣接している箇所又は前記気体供給配管と前記デッキとの間が空洞となっている箇所に設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のばら積み船の窒素ガス供給設備。
【請求項3】
前記貨物倉内に積載する貨物が、DRI(C)、DRI(B)又はイナートガスを必要とする貨物である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のばら積み船の窒素ガス供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、国際海上固体ばら積み貨物規則(International Maritime Solid Bulk Cargoes Code , 以下「IMSBC Code」という。)において、ばら積み船に直接還元鉄(Direct Reduced Iron、以下「DRI」という。)等の船上において危険な状況となり得る化学的危険性を有する貨物及びその他のイナートガスを必要とする貨物を積載できるように、貨物倉内に窒素ガスをパージするためのばら積み船の窒素ガス供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
油タンカーやケミカルタンカーにおいては、炭酸ガス等の消火ガスを用いる消火設備や窒素ガス等のイナートガスを用いる防爆設備を備えることが義務付けられている。
また、ばら積み船においても炭酸ガス等の消火ガスを用いる消火設備を備える場合があり、特許文献1(特開2011−116159号公報)には、ばら積み船で防爆対策が必要な場合、窒素ガス等のイナートガスを使用できることが記載されている(特に、段落0019を参照)。
【0003】
ところが、特許文献1には、ばら積み船にどのようにして窒素ガスを供給するかについては記載されておらず、従来、各種船舶の貨物倉内に危険性の高い貨物を積載するに際して窒素ガスをパージする場合、窒素ガス供給用の配管へ陸上の施設から窒素ガスを供給しており、航海中においては窒素ガスを充填したボンベを積んでおき、そのボンベから貨物倉内に窒素ガスを補充し、また、停泊中に陸上の施設から窒素ガスを補充したり、ボンベの交換を行ったりしている。
そのため、窒素ガスを供給する施設等を有しない港においては、積載作業を行うことができず、停泊する港も限られてしまうという問題がある。
【0004】
DRIには粒子の大きさが平均6.35mm以下で12mmを超える粒子を含まない微粒副産物のDRI(C)、粒子の大きさが平均6.35〜25mmであり、6.35mm以下の粒子の含有率が5%以下である塊・ペレット・冷間成形されたブリケット状のDRI(B)及びDRI(C)若しくはDRI(B)を固めてブリケット状としたDRI(A)(「HBI」とも呼ばれる。)の3種類があり、貨物として輸送するときにはIMSBC Codeに従って、危険性が低いDRI(A)を用いることが多いが、ブリケット状とするにはDRI(B)、(C)と比べ1トン当たり約5米ドルのコストがかかっている。
一方、DRI(C)やDRI(B)を輸送する際には必ずイナートガスを使用し、含水量や貨物倉内の水素濃度及び酸素濃度を監視することが安全実施規則で定められている。
【0005】
このような規則が定められた背景としては、DRI(C)やDRI(B)が水分と反応して水素を発生し易いところ、貨物倉に全容積の4%以上の水素ガスがたまると水素爆発を起こすこと、及び水分と酸素との反応により、非常に多孔質構造のため、自動酸化反応につながり自然発火に至ること、2003年及び2004年にDRI輸送中の船舶事故が発生したこと等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−116159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
DRI(C)やDRI(B)等の危険性の高い貨物を、ばら積み船の貨物倉内に窒素ガスをパージして安全に輸送できるようにすること、及び貨物倉内への窒素ガスのパージを窒素ガス供給施設の無い港においてもできるようにするとともに、航海中や停泊中における窒素ガスの補充を窒素ガスボンベによらずに行えるようにすることが本発明の解決しようとする主な課題である。
また、貨物倉内に窒素ガスをパージする設備を有していない建造済みのばら積み船を、小さい費用で窒素ガスパージが可能な船に改造できるようにすることが、本発明の解決しようとする他の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、少なくとも一つの貨物倉内に気体を供給することができる気体供給配管と、該気体供給配管に消火ガスを供給する消火ガス供給設備と、消火ガス供給設備から前記気体供給配管に供給する消火ガスの量を制御する消火ガス制御バルブを備えたばら積み船において、
窒素ガス発生装置と、該窒素ガス発生装置と前記気体供給配管とを接続する窒素ガス供給配管と、前記窒素ガス発生装置から前記気体供給配管に供給する窒素ガス量を制御する窒素ガス制御バルブを備えたばら積み船の窒素ガス供給設備である。
【0009】
上記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のばら積み船の窒素ガス供給設備において、前記窒素ガス発生装置が、前記ばら積み船のデッキ上であって、前記気体供給配管が前記デッキに隣接している箇所又は前記気体供給配管と前記デッキとの間が空洞となっている箇所に設置されていることを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明のばら積み船の窒素ガス供給設備において、前記貨物倉内に積載する貨物が、DRI(C)、DRI(B)又はイナートガスを必要とする貨物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明のばら積み船の窒素ガス供給設備は、従来、ばら積み船に装備されることのある消火用の消火ガスを供給する気体供給配管を利用して、船内に設けた窒素ガス発生装置と気体供給配管とを窒素ガス供給配管によって接続するとともに、気体供給配管に供給する窒素ガス量を制御する窒素ガス制御バルブを備えるので、新たに船舶を建造する場合には、窒素ガス供給用の独立した配管を設けることなく、従来設置されることのある消火ガス供給用の気体供給配管に小さな設計変更を加えるだけで、貨物倉内に窒素ガスをパージする設備を備えるばら積み船を設計することができ、建造コストを抑えることができる。
また、既に建造されたばら積み船においても、消火ガス供給用の気体供給配管を備えたものであれば、小さな改修を施すだけで貨物倉内に窒素ガスをパージする設備を有するばら積み船へと改造することができ、改造コストを抑えることができる。
さらに、船内に窒素ガス発生装置を備えているので、窒素ガスを供給する施設を有していない港においても、発火性のある貨物の積載作業を行うことができ、また、航海中、停泊中を問わず貨物倉内に窒素ガスを補充することができる。
そのため、窒素ガスを充填したボンベを準備する必要がなくなるとともに、停泊中において陸上の施設から窒素ガスを補充したり、ボンベの交換を行ったりする必要もなくなる。
【0012】
請求項2に係る発明のばら積み船の窒素ガス供給設備は、請求項1に係る発明が奏する上記の効果に加え、窒素ガス発生装置が、ばら積み船のデッキ上であって、気体供給配管がデッキに隣接している箇所又は気体供給配管とデッキとの間が空洞となっている箇所に設置されるので、窒素ガス供給設備を追加するに際しての設計変更や改修がより小さくて済み、建造コストや改造コストを抑えることができる。
【0013】
請求項3に係る発明のばら積み船の窒素ガス供給設備は、請求項1又は2に係る発明のばら積み船の窒素ガス供給設備が奏する上記の効果に加え、DRI(C)又はDRI(B)に対して、積載時及び航海時のいずれにおいても窒素ガスを供給することができるので、発火性の高いDRI(C)、DRI(B)又はイナートガスを必要とする貨物を、長航海日数を要する場合でも確実に送り届けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の概要を示す図。
図2】実施例1における窒素ガス発生装置の装置構成の概略を示す図。
図3】実施例2における窒素ガス発生装置の装置構成の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例によって、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1の概略を示す図であり、ばら積み船1は、ばら積み貨物を積載するための複数の貨物倉2を有している。これら複数の貨物倉2は、船長方向に隔壁3を介して並べて配置され、船幅方向に関しても同様に隔壁(図示せず)を介して2室〜数室の貨物倉2が配置されている。
各貨物倉2の上部には、気体供給枝管4が設けてあり、また、図示してはいないが陸上側の荷役用配管と接続可能な投入用配管及び投入用配管から出てくる積載物を受け入れる投入口が設けてある。
そして、各気体供給枝管4は気体供給主管5から分岐しており、炭酸ガス供給設備6から送られる炭酸ガス又は窒素ガス発生装置7から送られる窒素ガスを、気体供給主管5及び気体供給枝管4(以下これらをまとめて「気体供給配管」という。)を介して、各貨物倉2の内部に供給することができるようになっている。
【0017】
炭酸ガス供給設備6は船底8の近くに設置され、気体供給主管5が接続されるとともに、気体供給主管5と炭酸ガス供給設備6との接続部付近(図1では気体供給主管5側)に、供給する炭酸ガスの量を制御する炭酸ガス制御バルブ9が設けてある。
また、窒素ガス発生装置7は、ばら積み船1のデッキ10の上であって、気体供給主管5のいずれかの部分が隣接している隣接箇所11の近く又はデッキ10と気体供給主管5のいずれかの部分との間が空洞となっている空洞箇所12の近くに設置されている。
そして、窒素ガス発生装置7と気体供給主管5は、隣接箇所11又は空洞箇所12(図1では隣接箇所11)において、窒素ガス供給配管13によって炭酸ガス制御バルブ9より下流側で接続されるとともに、窒素ガス発生装置7と窒素ガス供給配管13との接続部付近(図1では窒素ガス供給配管13側)に、供給する窒素ガスの量を制御する窒素ガス制御バルブ14が設けてある。
さらに、各気体供給枝管4の途中にも、各気体供給枝管4に供給する炭酸ガス又は窒素ガスの量を制御するガス制御バルブ15が設けてある。
【0018】
気体供給枝管4、気体供給主管5、炭酸ガス供給設備6、窒素ガス発生装置7、炭酸ガス制御バルブ9、窒素ガス供給配管13及び窒素ガス制御バルブ14を上記のように配置してあるので、例えば、図1の左側から3番目の貨物倉2のみに炭酸ガスを供給する場合には、炭酸ガス供給設備6から炭酸ガスを送出するとともに、炭酸ガス制御バルブ9を開、窒素ガス制御バルブ14を閉、同貨物倉2に分岐する気体供給枝管4の途中に設けてあるガス制御バルブ15を開、その他のガス制御バルブ15を閉とすれば良い。
また、同貨物倉2のみに窒素ガスを供給する場合には、窒素ガス発生装置7を作動させて窒素ガスを発生、送出するとともに、炭酸ガス制御バルブ9を閉、窒素ガス制御バルブ14を開、同貨物倉2に分岐する気体供給枝管4の途中に設けてあるガス制御バルブ15を開、その他のガス制御バルブ15を閉とすれば良い。
【0019】
図2は実施例1における窒素ガス発生装置7の装置構成の概略を示す図であり、空気圧縮機16、エアフィルター17(2台直列)、オイルフィルター18、除湿手段19、メンブレンユニット20(3台並列)、排ガス導出管21及び窒素ガス導出管22よりなり、窒素ガス導出管22には窒素ガス制御バルブ14を有する窒素ガス供給配管13が接続されている。
【0020】
次に、実施例1における窒素ガス発生装置7を構成する各要素について説明する。
空気圧縮機16は、空気を圧縮してエアフィルター17に送り込むためのものであり、エアフィルター17は圧縮空気中に含まれている塵埃を除去するためのものであって2台直列に設置されている。
また、オイルフィルター18は、塵埃が除去された圧縮空気からオイルミストを除去するためのものであり、除湿手段19は塵埃及びオイルミストが除去された圧縮空気を乾燥状態とするためのものである。
そして、エアフィルター17、オイルフィルター18及び除湿手段19を通過して、塵埃及びオイルミストが除去され乾燥状態となった圧縮空気はメンブレンユニット20に送り込まれる。
【0021】
メンブレンユニット20は、窒素ガス発生能力に応じて複数台(図2では3台)並列に設けてあり、塵埃及びオイルミストが除去され乾燥状態となった圧縮空気から酸素ガス等を選択的に分離し、その結果、窒素リッチガス(以下「窒素ガス」という。)を得ることができるものである。
メンブレンユニット20による窒素ガスの発生は、ガスによって中空糸膜を透過する速度が異なることを利用するものであり、透過速度の早い酸素ガス、水蒸気、炭酸ガス等は排ガス導出管21側から排出され、透過速度の遅い窒素ガスやアルゴンガス等は窒素ガス導出管22側から排出されるようになっている。
そして、窒素ガスの発生量と濃度は圧縮空気の供給圧と温度に依存し、濃度が一定のとき、圧縮空気の供給圧が高くなるに従い、また温度が高くなるに従い発生量は増大する。
すなわち、窒素ガス発生装置7によれば、空気と空気圧縮機16を作動させるエネルギー(例えば、船内の自家発電設備から供給される電力)さえあれば窒素ガスを発生させることができ、窒素ガス導出管22及び窒素ガス供給配管13を経由して、気体供給配管に随時窒素ガスを供給できる。
また、窒素ガスの最大供給量は、周囲の温度をほぼ一定と仮定すれば、メンブレンユニット20の台数及び空気圧縮機16の性能を選択することで調整することができ、最大供給量の範囲内であれば、空気圧縮機16の運転調整によって、窒素ガスの供給量を必要に応じて容易に加減できる。
【実施例2】
【0022】
実施例2は、実施例1のメンブレンユニット20等を利用する、いわゆる膜分離法による窒素ガス発生装置7を、空気中の窒素と酸素を加圧状態で吸着し、両者の吸着速度の差を利用して分離する、いわゆるPSA方式による窒素ガス発生装置23に代えたものであり、他の構成は実施例1と全く同じである。
図2は実施例2における窒素ガス発生装置23の装置構成の概略を示す図であり、空気圧縮機24、エアフィルター25(2台直列)、活性炭槽26、第1のバルブ27、第2のバルブ28、第3のバルブ29、第4のバルブ30、第5のバルブ31、第1の吸着塔32、第2の吸着塔33、第6のバルブ34、第7のバルブ35、第8のバルブ36、排ガス導出管37、サイレンサ38、接続管39、製品槽40及び窒素ガス導出管41よりなり、窒素ガス導出管41には窒素ガス制御バルブ14を有する窒素ガス供給配管13が接続されている。
【0023】
次に、実施例2における窒素ガス発生装置23を構成する各要素について説明する。
空気圧縮機24は、空気を圧縮してエアフィルター25に送り込むためのものであり、エアフィルター25は圧縮空気中に含まれている塵埃を除去するためのものであって2台直列に設置されている。
また、活性炭槽26は、塵埃が除去された圧縮空気から不純物を除去するためのものであり、エアフィルター25、活性炭槽26を通過して塵埃及び不純物が除去された圧縮空気は、第1の吸着塔32及び第2の吸着塔33のいずれか一方に選択的に送り込まれる。
第1〜第5のバルブ27〜31及び第6〜第8のバルブ34〜36は、第1の吸着塔32及び第2の吸着塔33への圧縮空気の供給、第1の吸着塔32と第2の吸着塔33との均圧、第1の吸着塔32及び第2の吸着塔33からの酸素ガスの排出及び窒素ガスの送出を制御するためのものである。
排ガス導出管37及びサイレンサ38は、第1の吸着塔32及び第2の吸着塔33から排出された酸素ガスを船外へ排気するためのものであり、接続管39及び製品槽40は、第1の吸着塔32及び第2の吸着塔33で発生した窒素ガスを送って貯留するためのものである。
そして、製品槽40に貯留された窒素ガスは、必要に応じて窒素ガス制御バルブ14を開くことで、窒素ガス導出管41及び窒素ガス供給配管13を経由して、気体供給配管に随時窒素ガスを供給できる。
【0024】
実施例2の窒素ガス発生装置23による窒素ガス発生工程について説明する。
(1)第1工程
空気圧縮機24を作動させるとともに、第1のバルブ27、第5のバルブ31及び第7のバルブ35を開、第2〜4のバルブ28〜30、第6のバルブ34及び第8のバルブ36を閉とし、第1の吸着塔32に圧縮空気を送り込むとともに、第2の吸着塔33を常圧状態とする(30〜60秒程度)。
そうすると、第1の吸着塔32に充填された吸着剤に酸素、水分及び二酸化炭素が吸着されるとともに、窒素ガスが第7のバルブ35から接続管39へ送り出される。
また、常圧状態の第2の吸着塔33に充填された吸着剤からは、吸着されている酸素、水分及び二酸化炭素が離脱し、第5のバルブ31から排ガス導出管37、サイレンサ38を経由して船外へ排気される。
(2)第2工程
第3のバルブ29及び第6のバルブ34を開、第1、第2のバルブ27、28、第4、第5のバルブ30、31及び第7、第8のバルブ35、36を閉とし、第1の吸着塔32と第2の吸着塔33を均圧状態とする(5秒程度)。
(3)第3工程
空気圧縮機24を作動させるとともに、第2のバルブ28、第4のバルブ30及び第8のバルブ36を開、第1のバルブ27、第3のバルブ29、第5のバルブ31及び第6、第7のバルブ34、35を閉とし、1の吸着塔33を常圧状態とするとともに、第2の吸着塔33に圧縮空気を送り込む(30〜60秒程度)。
そうすると、常圧状態の第1の吸着塔32に充填された吸着剤からは、上記第1工程で吸着された酸素、水分及び二酸化炭素が離脱し、第4のバルブ30から排ガス導出管37、サイレンサ38を経由して船外へ排気される。
また、第2の吸着塔33に充填された吸着剤に酸素、水分及び二酸化炭素が吸着されるとともに、窒素ガスが第8のバルブ36から接続管39へ送り出される。
(4)第4工程
第3のバルブ29及び第6のバルブ34を開、第1、第2のバルブ27、28、第4、第5のバルブ30、31及び第7、第8のバルブ35、36を閉とし、第1の吸着塔32と第2の吸着塔33を均圧状態とする(5秒程度)。
(5)第1〜第4工程の繰り返し
第4工程の後、第1工程に戻ると、第1の吸着塔32から接続管39へ窒素ガスが送り出され、第2の吸着塔33から上記第3工程で吸着された酸素、水分及び二酸化炭素が船外へ排気される。
すなわち、上記第1〜第4工程を繰り返すことで、継続的に空気から窒素ガスを分離することができる。
【0025】
実施例2のPSA方式による窒素ガス発生装置23は、実施例1の膜分離法による窒素ガス発生装置7に比べて消費電力が小さく、設置スペースも小さいことから、船上に設置するのに適している。特に、在来船に窒素ガス供給設備を追加設置する場合には、発電機容量を増設しなくて済むため、より好適である。
【0026】
実施例1及び2の変形例を列記する。
(1)実施例1及び2においては、炭酸ガスを消火ガスとする炭酸ガス供給設備6を設置するばら積み船を対象としているが、本発明は炭酸ガスに限らず消火ガス(ハロン系ガス等)を利用する消火ガス供給設備を設置するばら積み船には全て適用可能である。
(2)実施例1及び2においては、炭酸ガス供給設備6を船底8の近くに設置し、窒素ガス発生装置7をデッキ10の上に設置しているが、逆に炭酸ガス供給設備6をデッキ10の上に設置し、窒素ガス発生装置7を船底8の近くに設置しても良い。
また、炭酸ガス供給設備6及び窒素ガス発生装置7は、気体供給配管を用いて貨物倉2内に炭酸ガス及び窒素ガスを選択的に供給できれば、船内のどこに配置されていても良い。
ただし、貨物倉2内に窒素ガスをパージする設備を有していない建造済みのばら積み船を改造する場合には、炭酸ガス供給設備6の設置位置によらず、窒素ガス発生装置7、窒素ガス供給配管12及び窒素ガス制御バルブ13を実施例1及び2のように配置した方が、改造コストを抑えることができる。
(3)図1では、炭酸ガス制御バルブ9を気体供給主管5側に設けてあるが、炭酸ガス供給設備6側に設けても良く、同様に窒素ガス制御バルブ14を窒素ガス供給配管13側に設けてあるが、窒素ガス発生装置7側に設けても良い。
(4)図1では、窒素ガス発生装置7と気体供給主管5を、隣接箇所11において窒素ガス供給配管13によってデッキ10の上で接続しているが、空洞箇所12において接続する場合には、デッキ10に穴をあけ、その穴に窒素ガス供給配管13を通して窒素ガス発生装置7と気体供給主管5を接続すれば良い。
また、炭酸ガス供給設備6と窒素ガス発生装置7の位置関係が、実施例1及び2のような関係でない場合(上記変形例(1)を参照。)には、接続部分が炭酸ガス制御バルブ9より下流側となるように、適宜窒素ガス供給配管13を配置し易い経路を選択して接続すれば良い。
(5)実施例1の窒素ガス発生装置7は、メンブレンユニット20等を利用する、いわゆる膜分離法によるものであり、実施例2の窒素ガス発生装置23は、空気中の窒素と酸素を加圧状態で吸着し、両者の吸着速度の差を利用して分離する、いわゆるPSA方式によるものであったが、空気中の窒素と酸素を常圧状態で吸着し、両者の吸着速度の差を利用して窒素ガスを得るVSA方式や酸素と窒素の沸点差を利用して窒素ガスを得る深冷分離法等、他の原理によって空気から窒素ガスを分離できるタイプの装置であっても良い。
(6)実施例1又は実施例2の窒素ガス発生装置7、23における窒素ガス供給量を安定させるために、窒素ガス発生装置7の周囲温度(特に、メンブレンユニット20の周囲温度)又は窒素ガス発生装置23の周囲温度(特に、第1の吸着塔32及び第2の吸着塔33の周囲温度)を調整できるようにしても良い。
(7)実施例1の説明においては、空気圧縮機16を作動させるエネルギー源として船内の自家発電設備を例示したが、船上に設置した排熱回収設備、太陽光発電設備や風力発電設備、さらには空気圧縮機16のコンプレッサーを直接回転させる内燃機関等を用いても良い。
なお、実施例2の空気圧縮機24を作動させるエネルギー源についても同様である。
【符号の説明】
【0027】
1 ばら積み船 2 貨物倉 3 隔壁
4 気体供給枝管 5 気体供給主管 6 炭酸ガス供給設備
7 窒素ガス発生装置 8 船底 9 炭酸ガス制御バルブ
10 デッキ 11 隣接箇所 12 空洞箇所
13 窒素ガス供給配管 14 窒素ガス制御バルブ
15 ガス制御バルブ 16 空気圧縮機 17 エアフィルター
18 オイルフィルター 19 除湿手段 20 メンブレンユニット
21 排ガス導出管 22 窒素ガス導出管
23 窒素ガス発生装置 24 空気圧縮機 25 エアフィルター
26 活性炭槽 27 第1のバルブ 28 第2のバルブ
29 第3のバルブ 30 第4のバルブ 31 第5のバルブ
32 第1の吸着塔 33 第2の吸着塔
34 第6のバルブ 35 第7のバルブ 36 第8のバルブ
37 排ガス導出管 38 サイレンサ 39 接続管
40 製品槽 41 窒素ガス導出管
図1
図2
図3