特許第6248009号(P6248009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248009
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G01L9/00 303E
   H01L29/84 B
   H01L29/84 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-155683(P2014-155683)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33460(P2016-33460A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】風間 敦
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 準二
(72)【発明者】
【氏名】小貫 洋
(72)【発明者】
【氏名】飛田 美帆
(72)【発明者】
【氏名】芝田 瑞紀
(72)【発明者】
【氏名】稲波 久雄
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/080759(WO,A1)
【文献】 特表2013−537967(JP,A)
【文献】 特開2008−64526(JP,A)
【文献】 特開2003−302298(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/061383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムを有するセンサ筐体と、前記センサ筐体上に設けられるセンサチップと、センサチップ上に設けられる歪ゲージと、を有する圧力センサにおいて、
前記センサチップは薄い接合部を介して前記センサ筐体に接続されており、前記接合部の面積は前記センサチップおよび前記ダイアフラムの面積よりも小さく、前記歪ゲージは前記接合部の投影面内に配置されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記センサチップの平面内に第1の方向とそれに垂直な第2の方向を有し、
前記歪ゲージはブリッジ回路を構成する複数の歪ゲージを有し、
前記複数の歪ゲージは第1の方向に沿うように配置された第一の歪ゲージと第2の方向に沿うように配置された第二の歪ゲージを有し、
前記接合部は、前記ダイアフラム上であって前記圧力センサに圧力が印加された際のダイアフラム表面に発生するひずみが前記第1の方向と前記第2の方向とで差が出る位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ダイアフラムは前記第1の方向を長手とし、前記第2の方向を短手とする形状であり、前記接合部が前記ダイアフラムの略中央に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記ダイアフラムは円形または正方形などの前記第1の方向と前記第2の方向に対して等方的な形状であり、前記接合部の中心が前記ダイアフラムの外周部に合うように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記接合部は円形または正方形など、前記第1の方向および前記第2の方向に対して等方的な形状であることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記センサ筐体の表面に前記接合部とほぼ同形状の凸部を有し、前記凸部において、前記センサチップと前記接合部を介して接合されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記センサチップは、前記歪ゲージを含む領域に形成される薄肉部と、前記薄肉部を囲うように形成された厚肉部とを有し、
前記センサチップの厚肉部は、前記凸部を内包できる形状であり、
前記センサチップの前記薄肉部は、前記接合部を介して前記センサ筐体上の前記凸部と接合されることを特徴とする請求項6に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記凸部は、前記センサ筐体に溝を形成することで構成され、前記溝の外周側壁を、前記センサチップの接合の際の前記センサチップの位置決めに用いることができることを特徴とする請求項7に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を受けたダイアフラムの変形を利用して検出する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイアフラム上に歪ゲージを形成した構成の圧力センサがよく知られている。この圧力センサは、圧力によるダイアフラムの変形により歪ゲージの抵抗が変化することを利用して圧力を検出する。一般的に、4つの歪ゲージでブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路から圧力に比例した差動電圧出力を得ることで圧力を検出している。ここで、ブリッジ回路は主に温度補償を目的に用いられる。これは、4つの歪ゲージの変化が同じであれば、歪ゲージが温度特性を有していてもブリッジ回路の出力が変化しないからである。
【0003】
1 MPa程度以上の高圧用、あるいは耐食性が必要でシリコンを露出させられない用途などには、ステンレス製のダイアフラムを用い、ダイアフラム上に半導体歪ゲージを貼り付けるか、あるいは半導体歪ゲージを形成したセンサチップを貼り付けた構成の圧力センサがよく用いられる。特に、センサチップを貼り付けた構成は、歪ゲージと別に信号処理ICを有する構成と比較して利点が大きい。センサチップ内に信号処理回路を内蔵できるので、歪ゲージから処理回路までの伝送路が短く、ノイズを小さくできる。また、温度センサも歪ゲージの近くに内蔵できるので、歪ゲージの温度が正確に測定でき、温度補償の精度を高くできる。
【0004】
特許文献1は、円形の金属製ダイアフラムの上に、歪ゲージを形成した単結晶半導体製のセンサチップを接合することを開示している。なお、センサチップはダイアフラムよりサイズが大きく、センサチップ上の歪ゲージが、ダイアフラム周辺部上に配置されるようにセンサチップが接合されている。特許文献2によると、4つの歪ゲージのうち2つを円周方向に向けて配置し、他の2つを半径方向に向けて配置することで、圧力印加により歪ゲージに発生する応力がそれぞれ圧縮応力と引張応力になり、センサ感度が得られるようにしている。さらに、センサチップの形状を、なるべく円形に近い多角形とすることで、センサチップとダイアフラムの線膨脹係数差に起因した熱応力の悪影響を極力排除できることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2にも金属製のダイアフラムの表面に歪ゲージを有する半導体基板を取り付けた圧力センサが開示されている。半導体基板は第1の半導体層と第2の半導体層を絶縁層を介して接合した構成とし、第1の半導体層に歪ゲージを形成し、第2の半導体層に絶縁層まで達する凹部を形成し、ダイアフラムが凹部に入り込んで凹部の底面の絶縁層に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4161410号公報
【特許文献2】特許第4337656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の圧力センサにおいては、ダイアフラムが全域にわたってセンサチップと接合されている。その接合には、低融点ガラスや金属はんだなどが用いられるが、ダイアフラムの全域をセンサチップと接合するためには、接合面のうねりの吸収や、ボイドの発生の抑制のため、接合層が十分に厚い必要がある。接合面積に対して接合層厚さが薄くなると、測定対象の圧力に対するダイアフラムの変形を妨げるので、感度が低くなりやすい。また、ダイアフラム全域がセンサチップに接合されていると、ダイアフラム全域の変形がセンサチップの剛性により妨げられる。センサチップはウエハ状態での反りや割れの防止や、接合時のハンドリングなどを考慮すると薄くするのに限界がある。感度を高くするためにダイアフラムを薄くしても、センサチップの剛性が高いために高い感度を得にくい。センサチップのサイズを大きくすることで、ダイアフラムのサイズも大きくでき、ダイアフラムが厚くても感度を高くできるが、センサチップを不要に大きくすることはコストの増加を招く。
【0008】
特許文献2には、センサチップを部分的に薄くして感度を向上させることが開示されているが、凹部を有するセンサチップと凹部に入り込む形状のダイアフラムを隙間なく接合するためには、接合層を十分に厚くする必要があり、接合層によりダイアフラムの変形が妨げられる懸念がある。
【0009】
また、センサチップをダイアフラムに接合した構造の圧力センサでは、構成材料の熱膨張差による応力が課題となる。センサチップは通常シリコン製で、ダイアフラムはステンレスなどの金属で製作される。接合層の低融点ガラスや金属はんだと、センサチップおよびダイアフラムはそれぞれ線膨張係数が異なるので、高温で接合した後に熱応力が残留する。接合層が厚いと、上記熱応力が大きくなると共に、接合層の応力緩和による変形が大きくなるので、長期的な応力緩和による特性のドリフトが大きくなって精度が悪化する懸念がある。
【0010】
本発明の目的は、センサチップをダイアフラムに接合した構造の圧力センサにおいて、接合層およびセンサチップの剛性によりダイアフラムの変形が妨げられることを抑制して感度を向上するとともに、接合部に発生する応力の変化を低減して精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の圧力センサは、ダイアフラムを有するセンサ筐体と、前記センサ筐体上に設けられるセンサチップと、センサチップ上に設けられる歪ゲージと、を有する圧力センサであって、前記センサチップは薄い接合部を介して前記センサ筐体に接続されており、前記接合部の面積は前記センサチップおよび前記ダイアフラムの面積よりも小さく、前記歪ゲージは前記接合部の投影面内に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感度が高く、特性変化が小さく精度のよい圧力センサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施例における(a)平面図,(b)断面図。
図2】ブリッジ回路の例を示した説明図。
図3】本発明の第二実施例における(a)平面図,(b)断面図。
図4】本発明の第三実施例における(a)平面図,(b)断面図。
図5】本発明の第四実施例における(a)平面図,(b)断面図。
図6】本発明の第五実施例における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(a)および(b)は、本発明の圧力センサの第一実施例の平面図および断面図を示している。図1(a)において、X軸に沿った中心線をX中心線10、Y軸に沿った中心線をY中心線11とし、図1(b)はX中心線10における断面図を示している。圧力センサ1は、ダイアフラム2が形成された金属製のセンサ筐体3上に、方形状のセンサチップ4を接合部5を介して接合した構成となっている。図1(a)には、ダイアフラム2の外形を点線で示している。センサチップ4には、ダイアフラム2と接合しない側の表面の中央部にゲージ領域6を有し、ゲージ領域6内に4つの歪ゲージ7(第1〜第4歪ゲージ7a〜7d)を有する。4つの歪ゲージ7は、図示されていない配線で接続され、図2に示すホイートストンブリッジ回路を構成している。ダイアフラム2は短手と長手を有する形状であり、短手方向をX軸、長手方向をY軸としている。ゲージ領域6はダイアフラム2の中央部上に配置されている。第1歪ゲージ7aおよび第2歪ゲージ7bはダイアフラム2の短手方向(X軸方向)が電流方向となるように配置され、第3歪ゲージ7cおよび第4歪ゲージ7dはダイアフラム2の長手方向(Y軸方向)が電流方向となるように配置されている。接合部5は、図1(a)に点線で示すように円形状で、ダイアフラム2の中央部上に配置されている。図1(a)に示す平面構成において、ゲージ領域6は接合部5に内包され、接合部5はセンサチップ4に内包されている。
【0015】
圧力センサ1は、ダイアフラム2のセンサチップ4接合面と反対側の面に印加された圧力に対して、ダイアフラム2が変形することで歪ゲージ7の応力が変化し、それに伴って歪ゲージ7の抵抗が変化することで、ブリッジ回路の差動出力として圧力に比例した出力が得られる仕組みとなっている。
【0016】
ダイアフラム2を含むセンサ筐体3はステンレスなどの金属を材質とする。センサ筐体3は円筒形をしており、中央部を片面から加工し、薄く残った部分がダイアフラム2となっている。加工方法には、切削や放電加工、あるいはプレス加工などを用いることができる。ダイアフラム2の加工された側の面の端部には、R形状が形成されており、圧力印加時に端部に発生する応力集中を緩和する働きがある。
【0017】
センサチップ4は単結晶シリコン基板を材料として製作され、歪ゲージ7は、不純物拡散により製作された、p型シリコンのピエゾ抵抗ゲージである。シリコン基板は結晶面(100)のものを用い、X軸およびY軸が、シリコン結晶軸の<110>と一致するようにしている。よって第1〜第4歪ゲージ7a〜7dは、全てp型シリコン<110>方向のピエゾ抵抗ゲージである。
【0018】
接合層5にはAu/Snなどの金属はんだが用いられている。接合のプロセスは、例えば、センサチップ4の接合面にNi/Au膜をスパッタで形成しておき、ダイアフラム2のセンサチップ4接合領域にはAu膜をめっきで形成しておき、ペレット状のAu/Snを挟んで位置合わせし、加熱してAu/Snを溶融することで接合する。また、接合層5には、低融点ガラスを用いることもできる。
【0019】
本発明の圧力センサにおいては、ダイアフラム2とセンサチップ4が、面積の小さい接合部5により部分的に接合されることに特徴がある。接合部5はダイアフラム2よりも面積が小さく、またセンサチップ4よりも面積が小さい。ダイアフラム2の変形によるひずみが歪ゲージ7に伝わるように、ゲージ領域6は、接合部5のz方向の投影面内に内包される位置に配置されている。本構成では、接合部5の面積を小さくできるため、接合部5が薄くても、ボイドや未接合部の発生を抑えて信頼性よく接合が可能である。接合部5が薄いため、接合部5の剛性によりダイアフラム2の変形が妨げられにくく、圧力センサの感度を高くすることができる。また、ダイアフラム2とセンサチップ4が部分的にしか接合されないので、センサチップ4の剛性によりダイアフラム2の変形が妨げられにくく、感度を高くすることができる。
【0020】
また、接合部5が薄いことにより、センサ特性の変化を抑制して精度が高くなる特徴がある。接合部5はセンサ筐体3やセンサチップ4と線膨張係数が異なるため、接合による熱残留応力が発生するが、この応力が大きいと、長期的な応力の変化によりセンサ特性が変化しやすくなる。接合部5が薄いことにより、上記応力が低減でき、また応力緩和による変形も小さくできるので、長期的なセンサ特性の変動を小さくできる。
【0021】
また、接合部5が薄いことにより、センサ特性のばらつき抑制の効果がある。接合部5が厚いと、接合後にセンサチップ4の反りが残留しやすく、反りによりセンサ特性も変化する。接合部5が薄くなれば、センサチップ4が反りにくくセンサ特性のばらつきを抑えられる。
【0022】
また、接合部5が薄いことにより、接合部5の材料の使用量を少なくすることができる。
【0023】
また本発明の圧力センサは、ダイアフラム2を接合部5に対して十分大きくできることで感度を高くできる特徴がある。ダイアフラム全体をセンサチップに接合する従来の圧力センサでは、ダイアフラムの寸法がセンサチップの寸法に制約されて大きくできず、感度を大きくするにはダイアフラムを薄くする必要があった。本発明では、センサチップ4の寸法に拠らず、ダイアフラム2の寸法を大きくできるので、ダイアフラム2を薄くしなくても感度を高くできる。ダイアフラム2を薄くしなくて済むことで、ダイアフラム2の加工がしやすく、厚さばらつきによるセンサ特性のばらつきを低減できる、温度変化によるセンサ出力変化を低減できるなどの効果がある。
【0024】
また本発明の圧力センサは、圧力に対してダイアフラム2に発生する歪が、X軸方向とY軸方向で差が出る位置に、接合部5が配置されていることに特徴がある。本実施例においては、長手と短手を有するダイアフラム2の中心に接合部5が配置されている。圧力に対するダイアフラム2中央の歪は、短手であるX軸方向が、長手であるY軸方向よりも大きくなる。よって、電流方向をX軸方向に合わせた第1歪ゲージ7aおよび第2歪ゲージ7bと、電流方向をY軸方向に合わせた第3歪ゲージ7cおよび第4歪ゲージ7dとの間で、発生する応力が異なり、応力変化に応じた抵抗変化量が異なるため、センサ感度を得ることができる。本実施例のように、X軸とY軸の歪差が発生する位置にゲージ領域6を配置し、4つの歪ゲージ7をゲージ領域6に集中配置した構成とすることで、接合部5の面積が小さくても、4つの歪ゲージ7全てに圧力による歪変化を適切に与えることができる。
【0025】
また、接合部5の形状をX軸およびY軸に対して等方的な円形状とすることで、温度変化による出力変化を小さくし、長期的なセンサ特性の変化を抑えて精度を高くする効果がある。ダイアフラム2とセンサチップ4は線膨張係数が異なるため、温度変化により熱歪が発生する。ゲージ領域6に発生する熱歪がX軸とY軸で差が出ると、センサ出力が変化し、すなわち温度特性を持つことになる。接合部5がX軸およびY軸に対して等方的な形状であると、センサチップ4に発生する上記熱歪も等方に近くなるので、温度特性を小さくすることができる。また、上述した接合時の熱残留応力の緩和についても、接合部5が等方形状であると、緩和の影響によるセンサチップ4の歪変化も等方に近くなるので、センサ特性の変化を小さくでき、精度を高くできる。接合部の形状は円形に限らず、正方形や、正方形の角にRをつけた形状などとしてもよい。
【0026】
センサチップ4には、ブリッジ回路だけでなく、出力アンプ、電流源、A/D変換、出力補正回路、補正値を格納するメモリ、温度センサなど、周辺回路を作り込むことができる。上記のような信号処理回路をセンサチップ4内に有することにより、出力信号の増幅や温度補正、ゼロ点補正などが行え、出力信号の精度を高くすることができる。温度補正においては、歪ゲージ7と温度センサを同じセンサチップ4上に形成できるので、歪ゲージ7の温度を正確に測定でき、温度補正を高い精度で行うことができる。
【0027】
本実施例では、圧力を受けるダイアフラム2およびセンサ筐体3がステンレス製であるため、材料の耐力が高く、高い圧力測定範囲のセンサを構成しやすい。また、測定対象の液体や気体の腐食性が高い場合にも使用できる。ステンレスの種類は、耐力を重視する場合はSUS630など析出硬化型のステンレスを選び、耐腐食性を重視する場合はSUS316など、耐腐食性の高いステンレスを選ぶなど、材質を選択できる。また、材質はステンレスに限ったものではなく、耐力や耐腐食性、シリコンとの線膨脹係数差などを考慮して、様々な鋼種を選択できる。
【0028】
また、接合層5の材質および接合プロセスについても、上述した材質、プロセスに限るものではない。金属はんだでは、例えばAu/Geはんだや、Au/Siはんだを用いることで、接合層5のクリープ変形をより小さくすることができる。接合プロセスについては、上述の金属はんだのペレットを用いる方法以外にも、金属はんだを直接ダイアフラムまたはセンサチップ裏面にめっきなどで形成する方法などがある。
【0029】
本発明の第二実施例を、図3を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成は説明を省略する。
【0030】
図3(a)および(b)は、本発明の圧力センサ1の第二実施例の平面図および断面図を示している。図3(a)において、X軸に沿った中心線をX中心線10、Y軸に沿った中心線をY中心線11とし、図3(b)はX中心線10における断面図を示している。
【0031】
センサ筐体2の表面に接合部5とほぼ同形状の凸部12を有し、凸部12において、センサチップ2と接合部5を介して接合する。凸部12を設けることで、接合部5の形状を凸部12の形状に制御しやすくなる効果がある。接合部5に金属はんだを用いた場合で説明すると、金属はんだは、薄いペレットを用いるか、あるいはあらかじめセンサチップ4の表面か、センサ筐体3の表面に薄く形成しておき、加熱溶融して接合する。その際、凸部12を形成しておくことで、凸部12の周囲ではセンサ筐体3とセンサチップ4の間の隙間が大きくなるので、金属はんだがぬれ広がらない。その結果、凸部12の形状に合わせて接合部5が形成される。凸部12をX軸とY軸に対して等方な形状としておくことで、接合部5も同じ形状にすることができる。
【0032】
本発明の第三実施例を、図4を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成は説明を省略する。
【0033】
図4(a)および(b)は、本発明の圧力センサ1の第三実施例の平面図および断面図を示している。図4(a)において、X軸に沿った中心線をX中心線10、Y軸に沿った中心線をY中心線11とし、図4(b)はX中心線10における断面図を示している。
【0034】
センサチップ4に、ゲージ領域6を含む領域に薄肉部13を形成する。薄肉部13の周囲を囲むように厚肉部14が形成される。厚肉部14は、凸部12を内包できる形状であり、センサチップ2の薄肉部13と、センサ筐体3上の凸部12が、接合部5を介して接合される。言い換えると、センサチップ4は、ゲージ領域6を含む領域における歪ゲージ7が形成される面の裏面側に凹部或いは溝を形成しており、センサチップ4の凹部或いは溝の底面と凸部12とが接合部5を介して接合されている。本構成により、センサチップ4のセンサ筐体3に接合される部分の厚みを薄くできるので、ダイアフラム2の変形がセンサチップ4の剛性により妨げられにくくなるので、より感度が向上する。また、接合部5に加えて、センサチップ4も、ダイアフラム2の厚さと比較して十分に薄くできるので、温度変化による熱変形が、センサチップ4と接合部5がダイアフラム2の変形に追従する形となる。その結果、温度変化によりセンサチップ4に発生する歪は等方に近くなり、温度特性を小さくできる。また、接合時の熱残留応力の緩和によるセンサ特性の変化も等方に近くなり、精度が向上する。
【0035】
上記のようにセンサチップ4は薄いことが望ましいが、センサチップ4を全体的に薄くすると、ウエハ状態での反りや割れの発生、接合時のハンドリングが難しくなることなどから、薄くするのに限界がある。本構成のように、周辺に厚肉部14を残すことで、厚肉部14の厚みのセンサチップと同じ程度に扱うことができる。
【0036】
薄肉部13の部分にできる凹部の深さ、すなわち厚肉部14と薄肉部13の厚みの差は、凸部12と接合部5の厚みの和と同じとするが、小さくすることが望ましい。上記を同じとした場合、すなわち接合時にセンサチップ4の厚肉部14の底面が、センサ筐体3表面に接地するまでセンサチップ4を押し付けることで、接合層5の厚みが一定に決めることができる。ただし、接合層5は薄いため、センサチップ4の押し付け荷重による接合部5の厚みの変化は大きくないので、厚肉部14がセンサ筐体3に接地しないようにそれぞれの厚みを決めても、センサ特性のばらつきを大きくせずに製作することができる。
【0037】
本発明の第四実施例を、図5を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成は説明を省略する。
【0038】
図5(a)および(b)は、本発明の圧力センサ1の第三実施例の平面図および断面図を示している。図5(a)において、X軸に沿った中心線をX中心線10、Y軸に沿った中心線をY中心線11とし、図5(b)はX中心線10における断面図を示している。
【0039】
凸部12を、センサ筐体3に凸部12を取り囲むように溝15を形成することで構成している。また、溝15の外周側は、センサチップ4を内包できる形状に形成されている。溝15の外周側壁を、センサチップ4の外形に沿って少し大きく形成することで、センサチップ4を接合する際に、センサチップ4の位置決めに用いることができる。こうすることで、センサチップ4の接合の際に、位置決めのための治具を別途用意する必要がなく、容易に精度よくセンサチップ4を位置決めできる。溝15の外形は、センサチップ4の外形全周に沿った形状に限られたものではなく、位置決めに必要な部分のみセンサチップ4に近接していればよい。
【0040】
本発明の第五実施例を、図6を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成は説明を省略する。
【0041】
図6は、本発明の圧力センサの第五実施例の断面図を示している。本実施例は、第一から第四実施例に記載の圧力センサを、製品形態に組み上げた圧力センサアセンブリ21の構成例を示している。
【0042】
センサ筐体3は、第一から第四実施例に記載した構成に加えて、外周部を円筒状に下方に伸ばした円筒部22を有し、外側面にフランジ部23とねじ部24を設置した形状に一体形成されている。ねじ部24はのおねじになっており、測定対象の配管側にめねじの継手(図示せず)を用意して取り付けるようになっている。上記円筒部22の内部は圧力導入口25を形成していて、この圧力導入口25を介して測定対象である液体や気体をダイアフラム2の表面まで導入する。センサ筐体3の上面には、センサチップ4と隣接するよう配線基板26が配置されている。配線基板26は、接着剤27によりセンサ筐体3の上面に接着保持されている。センサチップ4と配線基板26の電極パッド間は、ワイヤ28により電気的に接続されている。センサチップ4の表面やその周辺部を保護するため、円筒形のカバー29が、センサ筐体3のフランジ部23に接続して設置されている。カバー29の上端には、複数の外部電極ピン30が、カバー29を貫通するように設けられている。外部電極ピン30と配線基板26は、フレキシブル配線基板31を介して電気的に接続されている。センサチップ4は、ワイヤ28、配線基板26、フレキシブル配線基板31、外部電極ピン30を介して外部に信号を送信する。本実施例の構成により、測定対象の装置の配管に容易に取り付け可能で、センサへの給電および信号取り出しのための配線も容易な、圧力センサアセンブリ21を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 圧力センサ
2 ダイアフラム
3 センサ筐体
4 センサチップ
5 接合層
6 ゲージ領域
7 歪ゲージ
10 X中心線
11 Y中心線
12 凸部
13 薄肉部
14 厚肉部
15 溝
21 圧力センサアセンブリ
22 円筒部
23 フランジ部
24 ねじ部
25 圧力導入口
26 配線基板
27 接着剤
28 ワイヤ
29 カバー
30 外部電極ピン
31 フレキシブル配線板
図1
図2
図3
図4
図5
図6