【実施例1】
【0014】
本発明の好適な一実施例である実施例1の燃料貯蔵プール冷却設備を、
図1、
図2、
図3及び
図4を用いて説明する。本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1は、沸騰水型原子力発電プラントの燃料貯蔵プールに適用できる。
【0015】
沸騰水型原子力発電プラントの燃料貯蔵プール8は、原子炉圧力容器を取り囲む原子炉格納容器の上方で、原子炉格納容器が据え付けられている原子炉建屋内に設けられる。燃料貯蔵プール8は原子炉格納容器の上方で原子炉建屋内に形成されるプール側壁25A,25B,25C,25D及びキャスクピット24によって取り囲まれており(
図1、
図2及び
図4参照)、これらのプール側壁には側壁上端部12が形成されている。側壁上端部12は、運転床13によって取り囲まれており、運転床13よりも少し高くなっている。
【0016】
多数の燃料貯蔵ラック11が、燃料貯蔵プール8内の燃料貯蔵エリア31に配置され、燃料貯蔵プール8の底面、すなわち、燃料貯蔵エリア31の底面29(
図2参照)に並んで設置されている。各燃料貯蔵ラック11は、図示されていないが、燃料集合体、例えば、使用済燃料集合体を個々に収納する多数の燃料収納領域を形成している。燃料貯蔵ラック11の各燃料収納領域に、原子炉圧力容器内の炉心から取り出された使用済燃料集合体が収納されている。通常状態では、燃料貯蔵プール8内には、所定水位の冷却水が充填されており、各燃料貯蔵ラック11は冷却水中に配置され、各燃料貯蔵ラック11内に収納された各使用済燃料集合体は、その冷却水によって冷却される。
【0017】
燃料貯蔵エリア31は、連絡水路27を通して、原子炉格納容器の上方で原子炉圧力容器の真上に形成された原子炉ウエル(図示せず)に連絡される。沸騰水型原子力発電プラントの運転時では、連絡水路27は、プール側壁25Bの側面に取り外し可能に設置されたゲート28(
図3参照)によって、燃料貯蔵プール8内の冷却水が原子炉ウエル側に流出しないように、封鎖されている。すなわち、ゲート28は、沸騰水型原子力発電プラントの運転時において、連絡水路27の、燃料貯蔵エリア31に開放される開口を覆ってこの開口を封鎖しており、燃料貯蔵プール8内に配置されている。沸騰水型原子力発電プラントの運転停止時における炉心内の一部の燃料集合体を交換するとき、原子炉圧力容器及び原子炉格納容器のそれぞれの上蓋が取り外され、冷却水が原子炉ウエル内に充填される。原子炉ウエル内に冷却水が満たされた後、プール側壁25Bの側面からゲート28が取り外され、燃料貯蔵プール8の燃料貯蔵エリア31が、冷却水で満たされた連絡水路27によって原子炉ウエルに連絡される。
【0018】
炉心内の一部の燃料集合体である使用済燃料集合体が、炉心から順次取り出されて原子炉ウエルまで上昇され、冷却水で満たされた連絡水路27を通って、前述したように、燃料貯蔵エリア31に配置された燃料貯蔵ラック11内の該当する燃料収納領域に収納される。燃料貯蔵エリア31内に配置された別の燃料貯蔵ラック11に収納されている新燃料集合体が、炉心から取り出された使用済燃料集合体と逆に、連絡水路27を通って原子炉ウエルまで移動され、原子炉ウエルから原子炉圧力容器内に下降されて炉心内の所定の位置に装荷される。炉心内の使用済燃料集合体が全て新燃料集合体と交換され、沸騰水型原子力発電プラントが再起動される前に、ゲート28がプール側壁25Bの側面に取り外し可能に設置されて連絡水路27を封鎖する。その後、原子炉ウエル内の冷却水が排出され、原子炉圧力容器及び原子炉格納容器のそれぞれが、上蓋の取り付けにより密封される。
【0019】
運転床13の上面から連絡水路27の底面30(
図3参照)までの深さは、連絡水路27内を移動する使用済燃料集合体の軸長(高さ)と、この移動する使用済燃料集合体の上方に形成される、使用済燃料集合体から放出される放射線を遮へいする冷却水層の厚みを合計した値よりも少し大きくなっている。本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1が適用される燃料貯蔵プール8では、この燃料貯蔵プール8内の全域が燃料貯蔵エリア31になっている。運転床13の上面から燃料貯蔵エリア31の底面29までの深さは、
図3に示すように、運転床13の上面から連絡水路27の底面30(
図3参照)までの深さよりも深くなっており、底面30に設置された燃料貯蔵ラック11の高さ、燃料貯蔵エリア31内で燃料貯蔵ラック11の上方を移動する使用済燃料集合体の軸長(高さ)と、この移動する使用済燃料集合体の上方に形成される、使用済燃料集合体から放出される放射線を遮へいする冷却水層の厚みを合計した値よりも少し大きくなっている。
【0020】
本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1が適用される燃料貯蔵プール8の横断面は、長方形の一つの角部にキャスクピット24が存在するため、厳密には長方形ではない。燃料貯蔵プール8の長手方向に伸びるプール側壁25Cの、燃料貯蔵プール8に面する側面(以下、プール側壁25Cの側面という)の長さは、L
1であり、この側面に対向するプール側壁25Dの、燃料貯蔵プール8に面する側面(以下、プール側壁25Dの側面という)の長さL
2よりも長くなっている。プール側壁25C及び25Dのそれぞれの側面と直交する方向に伸びるプール側壁25Aの側面(以下、プール側壁25Aの側面という)の幅W
1はこの側面と対向するプール側壁25Bの、燃料貯蔵プール8に面して冷却水排出口9が形成される側面(以下、プール側壁25Bの側面という)の幅W
2よりも大きく、幅W
2はW
1/2よりも大きい。幅W
2の、プール側壁25Bの側面は、排水口形成側面である。
【0021】
燃料貯蔵プール8内の燃料貯蔵エリア31は、幅W
1のプール側壁25Aの側面、長さL
2のプール側壁25Dの側面、キャスクピット24、幅W
2のプール側壁25Bの側面及び長さL
1のプール側壁25Cの側面によって取り囲まれている。燃料貯蔵エリア31の底面29の深さは、プール側壁25Bの側面の位置において、連絡水路27の底面30の深さから急激に深くなっている。
【0022】
キャスクピット24と燃料貯蔵エリア31はキャスクピット24の側壁26で仕切られている。キャスクピット24の横断面は、例えば、長方形である。側壁26は、燃料貯蔵プール8とキャスクピット24を区分しているとも言える。キャスクピット24の側壁26は、プール側壁25Aの側面と対向する第1の側面、及びプール側壁25Aの側面と対向する第2の側面の二つの側面を有する。キャスクピット24内の領域と燃料貯蔵エリア31は、側壁26に形成された、使用済燃料集合体が通過する通路によって連絡される。冷却水排出口9Aがキャスクピット24の原子炉ウエル側の側面に形成される。プール側壁25Bの側面に形成された冷却水排出口9及びキャスクピット24の原子炉ウエル側の側面に形成された冷却水排出口9Aは、運転床13の上面からの距離が同じくなる位置に形成されている。燃料貯蔵エリア31内の燃料貯蔵ラック11に収納されている使用済燃料集合体を、例えば、燃料再処理施設に搬送する際に、空のキャスク(図示せず)がキャスクピット24内に置かれ、このキャスク内への使用済燃料集合体の収納作業がキャスクピット24内で行われる。燃料貯蔵ラック11から取り出された使用済燃料集合体は、側壁26に形成された上記通路を通してキャスクピット24内に移送され、そのキャスク内に収納される。
【0023】
冷却水排出口9に接続された冷却水排水路10は、幅W
2の側面を有するプール側壁25Bに形成されており、プール側壁25B内に配置された第1スキマサージタンク19に接続される。冷却水排出口9Aに接続されてプール側壁25Bに形成された冷却水排水路10も、プール側壁25AB内に配置された第2
スキマサージタンク19に接続される。第2スキマサージタンク19は、第1スキマサージタンク19と同じ構成を有する。第1スキマサージタンク19及び第2スキマサージタンク19は、燃料貯蔵プール8と原子炉ウエルの間に配置されている。連絡水路27は、第1スキマサージタンク19と第2スキマサージタンク19の間に配置されている。
【0024】
燃料貯蔵プール冷却設備1は、燃料貯蔵プール8内の冷却水の水位が低下する異常時に使用される異常時冷却装置17及び通常時に使用される通常時冷却装置18を有する。異常時冷却装置17は、冷却水供給管2及び2A及び散水管3及び3Aを含んでいる。通常時冷却装置18は、冷却水供給管7及び7A及び冷却水注水管6及び6A、冷却水供給管20、ポンプ21、熱交換器(冷却装置)22及び浄化装置(例えば、ろ過脱塩器)23を含んでいる。
【0025】
異常時冷却装置17の構成を説明する。散水管3はプール側壁25Cの側壁上端部12上、具体的には、側壁上端部12の上面に設置されている。散水管3Aはプール側壁25Dの側壁上端部12上に、具体的には、側壁上端部12の上面に設置されている。冷却水供給管2は散水管3のプール側壁25A側の一端に接続される。冷却水供給管2Aは散水管3Aのプール側壁25A側の一端に接続される。冷却水供給管2及び2Aは原子炉建屋内で1本の冷却水供給管(図示せず)に接続され、この冷却水供給管は原子炉建屋の外部に伸びている。原子炉建屋の外部まで伸びた冷却水供給管の端部には、ポンプ車と接続可能な接続部が設けられる。原子炉建屋の外部でこの接続部付近において、開閉弁が冷却水供給管に設けられる。
【0026】
複数のスプレイノズル5が、ノズル管(管状部材)4を介して散水管3に取り付けられる(
図5参照)。複数のスプレイノズル5は、ノズル管4を介して散水管3Aにも取り付けられる。散水管3及び3Aに取り付けられたそれぞれのスプレイノズル5は、燃料貯蔵エリア31の方を向いている。散水管3に取り付けられたスプレイノズル5のうち、プール側壁25Aの側面から長さL
2の範囲内に存在する各スプレイノズル(以下、第1スプレイノズルという)5は、第1スプレイノズル5の噴射口が水平より10°下向きになるように散水管3に取り付けられている。プール側壁25Aの側面から長さL
2の位置と散水管3の先端の間の長さL
3(
図1参照)の範囲内で散水管3に取り付けられたスプレイノズル(以下、第2スプレイノズルという)5は、第2スプレイノズル5の噴射口が水平より10°上向きになるように散水管3に取り付けられている。すなわち、各第2スプレイノズル5の噴射口は、第1スプレイノズル5の噴射口よりも上向きになっている。散水管3Aに取り付けられた全てのスプレイノズル5は、第1スプレイノズル5
及び後述の第3スプレイノズル5を含んでおり、
第1スプレイノズル5は噴射口が水平より10°下向きになるように散水管3
Aに取り付けられている。さらに、第2スプレイノズル5の噴射角は、第1スプレイノズル5の噴射角よりも小さくなっており、15°〜45°の範囲内から選択される。第2スプレイノズル5の噴射角よりも広くなっている第1スプレイノズル5の噴射角は、45°〜80°の範囲内から選択される。
【0027】
散水管3に取り付けられたそれぞれの第1スプレイノズル5から噴射された冷却水は、プール側壁25Cの長さL
1の側面と直交する方向において、その側面からW
1/2の位置まで到達する。散水管3Aに取り付けられたそれぞれの第1スプレイノズル5から噴射された冷却水も、プール側壁25Dの長さL
2の側面と直交する方向において、その側面からW
1/2の位置まで到達する。また、散水管3に取り付けられたそれぞれの第2スプレイノズル5から噴射された冷却水は、プール側壁25Cの長さL
1の側面と直交する方向において、その側面から幅W
2の位置まで到達する。
【0028】
上記した第1及び第2スプレイノズル5だけでは、燃料貯蔵エリア31の、散水管3及び3Aに近い領域に冷却水を噴射することができない。このため、別のスプレイノズル(以下、第3スプレイノズルという)5が、必要な個数、散水管3の長さL
2の部分及び散水管3Aに噴射口が、例えば、水平より30°下向きになるように設置される。また、散水管3の長さL
3の部分には、例えば、噴射口が水平より10°下向きの第1スプレイノズル5、及び噴射口が水平より30°下向きの第3スプレイノズル5が、それぞれ、必要な個数だけ設置される
。このようなスプレイノズル5の設置により、燃料貯蔵エリア31内の第1領域(プール側壁25Aの側面とプール側壁25Aの側面から長さL
2の間に存在する領域)及び燃料貯蔵エリア31内の第2領域(プール側壁25Aの側面から長さL
2の位置とプール側壁25Bの側面の間に存在する領域)のそれぞれに存在する全ての燃料貯蔵ラック11に対して冷却水をより均一に噴射することができる。
【0029】
プール側壁25Cの側面のうちプール側壁25Aの側面から長さL
2の位置とプール側壁25Aの側面から長さL
1の位置(プール側壁25Bの側面)の間に存在する側面に対向している、キャスクピット24の側壁26の上端には、設置が困難であるために散水管が存在しない。このため、側壁26の上端部から燃料貯蔵エリア31に向って冷却水をスプレイすることができない。
【0030】
通常時冷却装置18の構成を説明する。冷却水供給管20が第1スキマサージタンク19及び第2スキマサージタンク19の下端部に接続される。ポンプ21、熱交換器22及び浄化装置23が、スキマサージタンク19から燃料貯蔵プール8に向ってこの順に、冷却水供給管20に設置される。冷却水供給管7及び7Aは、浄化装置23の下流で冷却水供給管20に接続される。冷却水供給管7は、プール側壁25Cの長さL
1の側面側で燃料貯蔵エリア31内に配置され、燃料貯蔵エリア31の底面29上に設置される冷却水注水管6に接続される。冷却水供給管7Aは、プール側壁25Dの長さL
2の側面側で燃料貯蔵エリア31内に配置され、燃料貯蔵エリア31の底面29上に設置される冷却水注水管6Aに接続される。冷却水注水管6及び6Aは、上側に、多数の噴射口を形成している。
【0031】
燃料貯蔵プール冷却設備1を用いた燃料貯蔵エリア31に存在する燃料貯蔵ラック11に収納された各使用済燃料集合体の冷却方法を、以下に説明する。
【0032】
まず、燃料貯蔵プール8内に設定水位まで冷却水が存在する通常時における使用済燃料集合体の冷却を説明する。燃料貯蔵エリア31内の冷却水は冷却水排出口9から第1スキマサージタンク19に排出され、キャスクピット24内の冷却水は冷却水排出口9Aから第2
スキマサージタンク
19に排出される。キャスクピット24内の冷却水の冷却水排出口9Aへの排出により、燃料貯蔵エリア31内の冷却水が側壁26に形成された前述の通路を通してキャスクピット24内に流入し、キャスクピット24内の冷却水の水面が燃料貯蔵エリア31内の冷却水の水面と等しくなるように保たれる。第1スキマサージタンク19及び第2スキマサージタンク19内のそれぞれの冷却水は、冷却水供給管20に排出され、ポンプ21によって昇圧されて熱交換器22及び浄化装置23に供給される。冷却水は、熱交換器22で冷却され、浄化装置23で浄化される。冷却されて温度が低下した冷却水は、冷却水供給管7を通して冷却水注水管6に導かれ、冷却水供給管7Aを通して冷却水注水管6Aに導かれる。この冷却水は、冷却水注水管6及び6Aのそれぞれに形成された各噴射口から燃料貯蔵エリア31内に噴出され、燃料貯蔵ラック11内に収納された各使用済燃料集合体内を上昇し、各使用済燃料集合体の各燃料棒を冷却する。使用済燃料集合体の上端部から排出された冷却水は、冷却水排出口9及び9Aに流入する。燃料貯蔵プール8内の冷却水は、冷却水供給管20及び冷却水供給管7及び7Aを通して循環しながら燃料貯蔵ラック11内の各使用済燃料集合体を冷却する。
【0033】
燃料貯蔵プール8内に存在する冷却水の水位が設定水位に維持されている場合には、発熱源である使用済燃料集合体は、冷却水の水面よりも下方で燃料貯蔵ラック11に収納されて燃料貯蔵エリア31の下部に配置されており、熱交換器22で冷却されて温度が低下した冷却水により、前述したように、冷却される。このため、各使用済燃料集合体の冷却効率が向上する。一般的に、燃料貯蔵エリア31内の冷却水が散水管3,3Aに接続された冷却水供給管7及び7A、及び冷却水供給管20のいずれかの破損等の事故によっても燃料貯蔵エリア31内の冷却水が外部に流出しないように、冷却水供給管7及び7Aは、燃料貯蔵エリア31の底を貫通していなく、運転床13の上方より燃料貯蔵エリア31内に挿入されている。
【0034】
もし、地震が発生して沸騰水型原子力発電プラントの運転が緊急停止され、さらに、非常用電源が作動せずかつ外部電源が遮断された異常事態が生じたときには、ポンプ21が停止し、燃料貯蔵エリア31内の冷却水を熱交換器22で冷却することができなくなる。このような異常事態が継続されると、燃料貯蔵エリア31内の冷却水の温度が上昇し、やがて、この冷却水が蒸発するため、燃料貯蔵エリア31内の冷却水の水位が低下する。
【0035】
しかしながら、本実施例では、沸騰水型原子力発電プラントの運転が停止されているときに、非常用電源が作動せずかつ外部電源が遮断された異常状態が生じたとき、冷却水供給管2及び2Aに接続された冷却水供給管の、原子炉建屋の外部に存在する接続部に、ポンプ車の給水口が接続される。燃料貯蔵プール8に設置された水位計(図示せず)で測定された燃料貯蔵エリア31内の冷却水の水位が設定水位よりも低下したとき、ポンプ車に接続された冷却水供給管に設けられた開閉弁を開けてポンプ車を駆動する。ポンプ車によって昇圧された冷却水が、冷却水供給管2及び2Aのそれぞれに導かれる。ポンプ車は、例えば、原子力発電所内の貯水池(または貯水槽)内の水を散水管3及び3Aに供給する。
【0036】
冷却水供給管2に供給された冷却水は、散水管3に導かれ、散水管3に設けられたそれぞれのスプレイノズル5から燃料貯蔵エリア31に存在する燃料貯蔵ラック11に収納された各使用済燃料集合体に向かって噴射される。散水管3に設けられたスプレイノズル5のうち、プール側壁25Aの側面から長さL
2の範囲内に存在する、噴射口が水平よりも10°下向きになっている各第1スプレイノズル5は、その噴射口から噴射する冷却水を、プール側壁25Cの長さL
1の側面と直交する方向において、その側面からW
1/2の位置までスプレイする。また、散水管3に設けられたスプレイノズル5のうち、長さL
3の範囲内に存在する、噴射角が第1スプレイノズル5のそれよりも小さくて噴射口が水平よりも10°上向きになっている各第2スプレイノズル5は、その噴射口から噴射する冷却水を、プール側壁25Cの長さL
1の側面と直交する方向において、その側面から幅W
2の位置までスプレイする。第2スプレイノズルは噴射口が第1スプレイノズルよりも上向きになっており且つ噴射角が第1スプレイノズル5のそれよりも小さいので、第2スプレイノズルから噴射される冷却水の飛距離は、第1スプレイノズルから噴射される冷却水の飛距離よりも長くなるのである。散水管3Aに設けられた各第1スプレイノズル5は、その噴射口から噴射する冷却水を、プール側壁25Dの長さL
2の側面と直交する方向において、その側面からW
1/2の位置までスプレイする。
【0037】
散水管3に設けられたスプレイノズル5のうち、第1スプレイノズル5及び第2スプレイノズル5以外の各スプレイノズル5は、第1スプレイノズル5及び第2スプレイノズル5によって冷却水がスプレイされる領域よりも散水管3側の領域で冷却水を燃料貯蔵エリア31内にスプレイする。散水管3Aに設けられたスプレイノズル5のうち、第1スプレイノズル5以外の各スプレイノズル5は、第1スプレイノズル5によって冷却水がスプレイされる領域よりも散水管3A側の領域で冷却水を燃料貯蔵エリア31内にスプレイする。
【0038】
本実施例によれば、沸騰水型原子力発電プラントの運転が緊急停止されたときに、非常用電源が作動せずかつ外部電源が遮断された異常事態が生じ、燃料貯蔵プール8内の冷却水の水位が設定水位よりも低下した場合でも、ポンプ車により供給された冷却水を、散水管3及び3Aにそれぞれ設けられた各スプレイノズルから燃料貯蔵エリア31内にスプレイするので、燃料貯蔵エリア31内の燃料貯蔵ラック11に収納された各使用済燃料集合体の冷却が可能になる。
【0039】
特に、キャスクピット24が形成される関係上、本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1が設置される燃料貯蔵プール8、すなわち、燃料貯蔵エリア31では、プール側壁25Aの側面とこの側面から長さL
2の位置との間に存在する第1領域では燃料貯蔵エリア31の、プール側壁25Cの側面と直交する方向における幅がW
1であり、プール側壁25Aの側面から長さL
2の位置とプール側壁25Bの側面との間に存在する第2領域では燃料貯蔵エリア31の、プール側壁25Cの側面と直交する方向における幅がW
2である。このように、燃料貯蔵エリア31の横断面の形状は、プール側壁25Aの側面の幅方向の中点を通りプール側壁25Aの側面に直交する直線に対して非対称の形状になっている。横断面の形状が非対称になっている燃料貯蔵エリア31においても、燃料貯蔵エリア31の、幅がW
1である第1領域に対しては、散水管3及び3Aに取り付けられた各第1スプレイノズル5から冷却水を噴射することによって、また、燃料貯蔵エリア31の、幅がW
2である第2領域に対しては、散水管3に取り付けられた各第2スプレイノズル5から冷却水を噴射することによって、さらに、これら以外のスプレイノズルからも冷却水をスプレイすることによって、非対称の横断面の形状を有する燃料貯蔵エリア31においても、冷却水をより一様にスプレイすることができる。
【0040】
本実施例では、散水管がキャスクピット24の側壁26の上端に設置されていないけれども、上記したように、噴射口が水平よりも10°上向きになっている第2スプレイノズル5が散水管3に取り付けられているため、燃料貯蔵エリア31の、幅がW
2である第2領域に対して冷却水を一様にスプレイすることができる。
【0041】
また、本実施例では、第1スプレイノズル5及び第2スプレイノズル5が取り付けられた散水管3、及び第1スプレイノズル5が取り付けられた散水管3Aが、燃料貯蔵プール8の周囲、すなわち、側壁上端部12に設置されているため、各スプレイノズル5から噴射された冷却水が、燃料貯蔵プール8を跨いで配置されて運転床13上を走行する燃料交換機、クレーン、及び水位計及び温度計(燃料貯蔵プール8内の冷却水の温度を測定)等の、燃料貯蔵プール8の近傍に配置された電気品にかかることを避けることができる。
【0042】
本実施例では、第1スプレイノズル5及び第2スプレイノズル5がノズル管4を介して散水管3,3Aに取り付けられているため、冷却水をスプレイする方向を容易に設定することができ、効率良く燃料貯蔵プール8の全域に広くスプレイすることができる。
【0043】
前述した沸騰水型原子力発電プラントの運転が停止され、非常用電源が作動せずかつ外部電源が遮断された異常事態だけでなく、燃料貯蔵プール8の底のコンクリートにき裂が入ってこのき裂を通して燃料貯蔵エリア31内の冷却水が漏えいするとき、及び冷却水供給管7,7A及び20のいずれかにき裂が入って熱交換器22による燃料貯蔵エリア31内の冷却水の冷却ができなくなるとき等の燃料貯蔵プール8内の冷却水の水位が設定水位よりも低下する異常事態において、本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1は、各スプレイノズル5から冷却水を燃料貯蔵プール8に向かってスプレイすることができる。
【0044】
散水管3,3Aのそれぞれに取り付けられるスプレイノズル5の代わりに、散水管3,3Aのそれぞれに冷却水のスプレイノズルとなる噴射口16を形成し(
図6参照)、または、散水管3,3Aのそれぞれにスプレイノズルとなる噴射管4Aを取り付ける(
図7参照)ことによっても、燃料貯蔵エリア31に冷却水を供給することができる。噴射管4Aの先端は、開放されて噴射口になっている。噴射口16及び噴射管4Aは、一種のスプレイノズルである。
【0045】
図6において、噴射口16は丸穴であるが、噴出する冷却水の噴射を制御する目的で噴射口16の形状を楕円、長丸穴またはその他のあらゆる多角形の穴形状としても良い。また、
図7において、噴射管4Aの断面は円であるが、噴射管4Aの断面形状を楕円、長丸またはその他のあらゆる多角形の形状としてもよい。スプレイノズルとして噴射管4Aを用いる場合には、
図7に示すように、散水管3,3Aのそれぞれに噴射口16を形成する場合に比べて冷却水の噴射する方向を容易に設定することができる。さらに、効率良く燃料貯蔵プール8の全域に広くスプレイすることができる。噴射管4Aの断面形状は、噴射管4Aの軸方向において変えてもよい。例えば、散水管3,3Aのそれぞれに取り付けられた噴射管4Aの根元では断面形状を円形とし、噴射管4Aの先端では扁平につぶした形状にしてもよい。このように、噴射管4Aの先端を扁平につぶした形状にすることにより、冷却水の飛距離が増大する。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の好適な実施例である実施例2の燃料貯蔵プール冷却設備を、
図8及び
図9を用いて説明する。本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1は、実施例1の燃料貯蔵プール冷却設備1と同じ構成を有する。本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1は、例えば、改良型沸騰水型原子力発電プラントの燃料貯蔵プールに適用される。改良型沸騰水型原子力発電プラントの燃料貯蔵プール8Aは、実施例1の燃料貯蔵プール冷却設備1が適用された、全領域が燃料貯蔵エリア31になっている燃料貯蔵プール8と異なり、燃料貯蔵エリア31、及び燃料貯蔵ラック11が設置されていない領域(以下、非燃料貯蔵エリアという)32を有している。このような燃料貯蔵プール8Aの構造は、改良型沸騰水型原子力発電プラントの原子炉格納容器の構造の影響を受けている。
【0047】
ここで、燃料貯蔵プール8Aについて、より具体的に説明する。燃料貯蔵プール8Aは、燃料貯蔵プール8と同様に、原子炉格納容器の上方に配置され、原子炉ウエルに隣接して配置される。燃料貯蔵プール8Aにおいて、非燃料貯蔵エリア32は、燃料貯蔵エリア31よりも原子炉ウエル側に配置される。非燃料貯蔵エリア32の底面33は燃料貯蔵エリア31の底面29よりも上方に位置しており、非燃料貯蔵エリア32の、運転床13の上面から底面33までの深さは、燃料貯蔵エリア31の、運転床13の上面から底面29までの深さよりも浅くなっている(
図9参照)。非燃料貯蔵エリア32の、運転床13の上面から底面33までの深さは、運転床13の上面から連絡水路27の底面30までの深さよりも少し深くなっている。底面29と底面33との間には、段差が存在し、且つ燃料貯蔵エリア31を画定する側面34が形成されている。
【0048】
改良型沸騰水型原子力発電プラントの運転時において、連絡水路27の、非燃料貯蔵エリア32に開放される開口を覆ってこの開口を封鎖することにより連絡水路27を封鎖するゲート28が、プール側壁25Bの側面に取り外し可能に設置されている。改良型沸騰水型原子力発電プラントの運転が停止されて炉心に装荷されている燃料集合体の一部を交換するとき、ゲート28がプール側壁25Bの側面から取り外されて、燃料貯蔵プール8Aが連絡水路27を通して原子炉ウエルに連絡される。
【0049】
キャスクピット24が燃料貯蔵プール8Aにも設けられる。キャスクピット24は、燃料貯蔵プール8Aの一つの角部ではなく、燃料貯蔵プール8Aの一つの側壁であるプール側壁25Cの側面と対向している側面の途中に設けられる。キャスクピット24と燃料貯蔵プール8Aのプール側壁25Aの側面との間には、側壁25Cの側面と対向する、燃料貯蔵プール8Aのプール側壁25Dの側面が存在する。キャスクピット24と燃料貯蔵プール8Aのプール側壁25Bの側面との間には、側壁25Cの側面と対向する、燃料貯蔵プール8Aのプール側壁25D’の側面が存在する。キャスクピット24の横断面は、例えば、長方形である。
【0050】
燃料貯蔵プール8Aとキャスクピット24を区分しているキャスクピット24の側壁26は、3つの側面を有する。側壁26の第1の側面はプール側壁25Aの側面に対向している。側壁26の第2の側面はプール側壁25Cの側面に対向している。側壁26の第3の側面は燃料貯蔵プール8Aのプール側壁25Bの側面に対向している。プール側壁25Bの側面はプール側壁25Aの側面とも対向している。プール側壁25Bの側面から側壁26の第3の側面までの距離は、プール側壁25Bの側面から側面34までの距離と等しい。
【0051】
燃料貯蔵プール8Aは、プール側壁25A、プール側壁25C、プール側壁25B、プール側壁25D’、キャスクピット24及びプール側壁25Dによって取り囲まれている。
【0052】
燃料貯蔵プール8Aの燃料貯蔵エリア31は、プール側壁25Aの側面、プール側壁25Dの側面、側壁26の第1の側面及び第2の側面、側面34及びプール側壁25Cの側面によって取り囲まれている。燃料貯蔵プール8Aの燃料貯蔵エリア31において、プール側壁25Aの側面の幅がW
1であり、プール側壁25Cの側面と直交する方向におけるプール側壁25Cの側面と側壁26の第2の側面の間の幅(側面34の幅)がW
2である。さらに、プール側壁25Cの側面の、プール側壁25Aの側面から側面34までの長さがL
1であり、プール側壁25Dの側面の長さがL
2である。燃料貯蔵エリア31には、多数の燃料貯蔵ラック11が配置され、これらの燃料貯蔵ラック11は燃料貯蔵エリア31の底面29に設置される。この燃料貯蔵エリア31は、燃料貯蔵プール8の燃料貯蔵エリア31と同様に、プール側壁25Aの側面とこの側面から長さL
2の位置との間に存在する第1領域、及びプール側壁25Aの側面から長さL
2の位置とプール側壁25Aの側面から長さL
1の位置(側面34)との間に存在する第2領域を有している。第1領域はプール側壁25Cの側面とプール側壁25Dの側面の間に存在し、第2領域はプール側壁25Cの側面とキャスクピット24の第2の側面の間に存在する。
【0053】
プール側壁25Aの側面を基点にしたプール側壁25Cの側面の長さはL
4である。プール側壁25Cの側面の、側面34の位置とプール側壁25Bの側面との間の長さはL
5である。また、キャスクピット24の第3の側面とプール側壁25Bの側面との間の長さ、すなわち、プール側壁25D’の側面の長さはL
5である。
【0054】
非燃料貯蔵エリア32は燃料貯蔵プール8A内で底面33の真上に形成される。プール側壁25Cの、側面34の位置とプール側壁25Bの側面との間の長さL
5の部分、プール側壁25Bの側面、プール側壁25D’の側面及びキャスクピット24の第3の側面のそれぞれは、非燃料貯蔵エリア32に面している。原子炉ウエルに連絡される連絡水路27は非燃料貯蔵エリア32に連絡される。非燃料貯蔵エリア32の、プール側壁25Cの側面に沿った方向における長さはL
5である。また、非燃料貯蔵エリア32の、プール側壁25Cの側面とプール側壁25D’の側面との間の幅はW
2である。
【0055】
燃料貯蔵エリア31及び非燃料貯蔵エリア32は、所定水位まで冷却水で満たされている。改良型沸騰水型原子力発電プラントにおける燃料集合体の交換時において、炉心から取り出された使用済燃料集合体は、冷却水で満たされた原子炉ウエル及びゲート28が取り外されて冷却水で満たされた連絡水路27を通って、燃料貯蔵プール8Aの非燃料貯蔵エリア32に移送され、その後、燃料貯蔵エリア31内の燃料貯蔵ラック11に収納される。
【0056】
改良型沸騰水型原子力発電プラントにおいても、第1スキマサージタンク19及び第2スキマサージタンク19が、燃料貯蔵プール8Aと原子炉ウエルの間に配置されている。連絡水路27は、第1スキマサージタンク19と第2スキマサージタンク19の間に配置されている。第1スキマサージタンク19に連絡される冷却水排出口9及び第2スキマサージタンク19に連絡される冷却水排出口9Aは、プール側壁25Bの側面にそれぞれ形成される。冷却水排出口9と冷却水排出口9Aの間には、連絡水路27の、非燃料貯蔵エリア32に開放される開口が存在する。プール側壁25Bの、幅W
2の側面は、排水口形成側面である。
【0057】
燃料貯蔵プール8Aに適用される燃料貯蔵プール冷却設備1は、実施例1の燃料貯蔵プール冷却設備1と同じ構成を有している。燃料貯蔵プール8Aに適用される燃料貯蔵プール冷却設備1の散水管3はプール側壁25Cの側壁上端部12の上面に設置され、散水管3Aはプール側壁25Dの側壁上端部12の上面に設置される。散水管3の、プール側壁25Aの側面から長さL
2の部分及び散水管3Aのそれぞれに、実施例1と同様に、複数の第1スプレイノズル5がそれぞれ設置される。散水管3の、プール側壁25Aの側面から長さL
2の位置と散水管3の先端の間の長さL
3の部分には、実施例1と同様に、複数の第2スプレイノズル5が設置される。さらに、散水管3の、プール側壁25Aの側面から長さL
2の部分及び散水管3Aのそれぞれには、実施例1と同様に、第1スプレイノズル5以外の複数のスプレイノズルが設置される。散水管3の、先端側の長さL
3の部分には、実施例1と同様に、第2スプレイノズル5以外の複数のスプレイノズルが設置される。
【0058】
本実施例の燃料貯蔵プール冷却設備1は、実施例1の燃料貯蔵プール冷却設備1と同様に機能し、実施例1の燃料貯蔵プール冷却設備1で生じる各効果を得ることができる。
【0059】
以上の各実施例は沸騰水型原子力プラントの燃料貯蔵プールを対象に設置した燃料貯蔵プール冷却設備を例に挙げて説明しているが、上記した各実施例の燃料貯蔵プール冷却設備は、加圧水型原子力発電プラントの燃料貯蔵施設及び燃料再処理施設における燃料貯蔵プールにも適用することができる。