(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された表面処理炭酸カルシウムは、印刷インキ等に多量に添加した際に生じる光沢の低下、粘度の上昇等の問題を解決することができるものではなかった。
【0009】
本発明の目的は、印刷インキ等に多量に添加しても、光沢の低下及び粘度の上昇等を抑制することができる表面処理炭酸カルシウム及びその製造方法、並びにそれを含有した印刷インキ組成物及び印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の表面処理炭酸カルシウム及びその製造方法、並びにそれを含有した印刷インキ組成物及び印刷物を提供する。
【0011】
項1 炭酸カルシウムに対し、界面活性剤による第1の表面処理と、アルキッド樹脂による第2の表面処理が施されたことを特徴とする表面処理炭酸カルシウム。
【0012】
項2 前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤である、項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【0013】
項3 前記ノニオン系界面活性剤のHLB値が、9〜12の範囲内である、項2に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【0014】
項4 前記アルキッド樹脂の油長が、70以下である、項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【0015】
項5 項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウムを製造する方法であって、炭酸カルシウムに対し、界面活性剤による第1の表面処理を施す工程と、前記第1の表面処理を施した炭酸カルシウムに対し、アルキッド樹脂による第2の表面処理を施す工程とを備える、表面処理炭酸カルシウムの製造方法。
【0016】
項6 前記第1の表面処理が、湿式または乾式で行われる、項5に記載の表面処理炭酸カルシウムの製造方法。
【0017】
項7 前記第2の表面処理が、乾式で行われる、項5または6に記載の表面処理炭酸カルシウムの製造方法。
【0018】
項8 項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウムを含有する、印刷インキ組成物。
【0019】
項9 バインダー樹脂用アルキッド樹脂が、0.1〜15質量%含まれている、項8に記載の印刷インキ組成物。
【0020】
項10 前記バインダー樹脂用アルキッド樹脂の油長が、70以上である、項9に記載の印刷インキ組成物。
【0021】
項11 項8〜10のいずれか一項に記載の印刷インキ組成物を用いて得られる、印刷物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印刷インキ等に多量に添加した際の光沢の低下及び粘度の上昇等を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウムは、特に限定されない。例えば、従来公知の炭酸カルシウムを用いることができる。炭酸カルシウムの具体例としては、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)などが挙げられる。炭酸カルシウムは、合成炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0026】
合成炭酸カルシウムは、特に限定されない。合成炭酸カルシウムとしては、例えば沈降性(膠質)炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられる。合成炭酸カルシウムは、例えば水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば石灰石原石をコークスなどで混焼することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0027】
天然炭酸カルシウムは、天然に産出する炭酸カルシウム原石を公知の方法で粉砕することにより得られるものである。炭酸カルシウム原石を粉砕する方法としては、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃剪断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体撹拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどで粉砕する方法が挙げられる。
【0028】
炭酸カルシウムのBET比表面積は、好ましくは20〜100m
2/gの範囲内であり、より好ましくは30〜80m
2/gの範囲内であり、特に好ましくは40〜60m
2/gの範囲内である。炭酸カルシウムのBET比表面積が小さくなりすぎると、印刷インキ等に配合した場合に、所望の光沢及び透明性が得られない場合がある。炭酸カルシウムのBET比表面積が大きすぎると、粘度が著しく上昇する場合がある。
【0029】
(第1の表面処理)
本発明の第1の表面処理は、界面活性剤による表面処理である。
【0030】
本発明で使用される界面活性剤としては、公知慣用の界面活性剤を挙げることができるが、好ましくはノニオン系界面活性剤であり、さらに好ましくは、HLB値が、9〜12の範囲であるノニオン系界面活性剤である。
【0031】
HLB値が9より小さいか、または12より大きいと、印刷インキ等に配合した場合に、印刷インキ等の流動性が小さくなったり、印刷物等の光沢が不良となる場合がある。
【0032】
ここで、HLB値とは、界面活性剤の分野で利用されており、分子の親水性部分と親油性部分とのバランス(hydrophile−lipophile balance)を表すものである。上記HLB値は、下記に示すグリフィン式(一定の油に対する乳化効率の測定から求めた実験値と親水部の質量分率に基づく式)を適用して求める事ができる。
【0033】
[グリフィンの式]
HLB=(100/5)×親水基質量/(親水基質量+疎水基質量)
【0034】
本発明に用いられる界面活性剤としては、例えば、非イオン系(ノニオン系)界面活性剤として、以下のものが挙げられる。
【0035】
エステル型:ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル
エーテル型:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ノノキシノール、ノノキシノール−9、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
エステルエーテル型:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール
アルカノールアミド型:ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEA
アルキルグリコシド:オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド
高級アルコール:セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール
【0036】
本発明に用いられる界面活性剤として、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤を用いてもよい。また、複数の界面活性剤を併用して用いてもよい。例えば、上記のノニオン系界面活性剤と陰イオン系界面活性剤または陽イオン系界面活性剤とを併用してもよい。
【0037】
第1の表面処理における処理量は、炭酸カルシウム100質量部に対し、界面活性剤0.5〜5.0質量部であることが好ましく、1.0〜4.0質量部であることがより好ましく、1.5〜2.5質量部であることが特に好ましい。処理量が少なすぎると、所望の流動性が得られない場合があり、処理量が多すぎると、粘度が上昇する場合がある。
【0038】
第1の表面処理は、湿式または乾式で行われることが好ましい。湿式処理としては、界面活性剤を水などの溶媒に溶解させた溶液を、炭酸カルシウムの水懸濁液に添加して撹拌し、炭酸カルシウムの表面に界面活性剤を付着させる方法が挙げられる。界面活性剤溶液の濃度や炭酸カルシウム水懸濁液の濃度は、使用する界面活性剤及び炭酸カルシウムの種類などに応じて適宜調整される。また、撹拌時間や温度も、使用する界面活性剤及び炭酸カルシウムの種類などに応じて適宜調整される。撹拌時間は、一般には、10〜20分程度である。
【0039】
乾式処理としては、炭酸カルシウム粉末をミキサー中で撹拌しながら、界面活性剤の溶液を滴下、あるいはスプレーなどを用いて噴霧することによって、界面活性剤を炭酸カルシウムの表面に付着させる方法が挙げられる。表面処理の時間は、特に限定されるものではないが、一般には、10分程度以上であることが好ましい。この場合、必要に応じて表面処理時に粉体を加熱してもよいし、表面処理後に加熱乾燥してもよい。
【0040】
攪拌装置は、特に限定されるものではないが、炭酸カルシウムの乾式表面処理に従来から一般に用いられている装置を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダなどが挙げられる。
【0041】
(第2の表面処理)
本発明の第2の表面処理は、アルキッド樹脂による表面処理である。
【0042】
本発明の第2の表面処理に用いられるアルキッド樹脂は、公知慣用のアルキッド樹脂を挙げることができるが、その油長が70以下であるものが好ましい。油長が70より大きいと、印刷インキ等に配合した場合に、光沢及び流動性が不足し、好ましくない場合がある。なお、油長の下限値は特に限定されるものではないが、一般には25以上である。
【0043】
本発明の第2の表面処理に用いられるアルキッド樹脂としては、例えば、99X0237(DIC社製)(油長:49、Mw:7000、Mn:2200、酸価:8〜13、粘度:Q〜S)を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
第2の表面処理における処理量は、炭酸カルシウム100質量部に対し、アルキッド樹脂0.8〜5質量部であることが好ましく、1〜3質量部であることがより好ましく、1〜2質量部であることが特に好ましい。処理量が少なすぎると、所望の光沢が得られない場合があり、処理量が少なすぎても、多すぎても所望の流動性が得られない場合がある。
【0045】
本発明において、第2の表面処理は、第1の表面処理を施した炭酸カルシウムに対してなされることが好ましい。しかしながら、本発明の表面処理炭酸カルシウムは、これに限定されるものではなく、第1の表面処理と第2の表面処理を同時に行ってもよいし、第2の表面処理の後に、第1の表面処理を行ってもよい。
【0046】
第2の表面処理は、乾式で行われることが好ましい。乾式処理としては、炭酸カルシウム粉末をミキサー中で撹拌しながら、アルキッド樹脂の溶液を滴下、あるいはスプレーなどを用いて噴霧することによって、アルキッド樹脂を炭酸カルシウムの表面に付着させる方法が挙げられる。表面処理の時間は、特に限定されるものではないが、一般には、10分程度以上であることが好ましい。この場合、必要に応じて表面処理時に粉体を加熱してもよいし、表面処理後に加熱乾燥してもよい。アルキッド樹脂の溶液を調製する際に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、アルキッド樹脂を溶解させることができるものであればよい。アルキッド樹脂の溶液の濃度は、使用するアルキッド樹脂の種類等に応じて適宜決定される。
【0047】
(印刷インキ組成物)
本発明の印刷インキ組成物には、本発明の表面処理炭酸カルシウム、及びバインダー樹脂などが含有される。また、本発明の印刷インキ組成物には、通常、溶剤が含有され、その他、必要に応じて着色剤、表面処理炭酸カルシウム以外の充填剤及び添加剤等が含有されていてもよい。
【0048】
印刷インキ組成物中の本発明の表面処理炭酸カルシウムの含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
印刷インキ組成物中に含まれるバインダー樹脂の含有量は、通常5〜50質量%程度であることが好ましく、10〜40質量%程度であることがさらに好ましい。印刷インキ組成物中に含まれる溶剤の含有量は、通常0〜60質量%程度であることが好ましく、10〜50質量%程度であることがさらに好ましい。印刷インキ組成物中に着色剤が含まれる場合、印刷インキ組成物中に含まれる着色剤の含有量は、通常1〜60質量%程度であることが好ましく、5〜50質量%程度であることがさらに好ましく、10〜40質量%程度であることが特に好ましい。
【0050】
表面処理炭酸カルシウム以外の充填剤及び添加剤が印刷インキ組成物に含有される場合には、充填剤の含有量は、10質量%程度以下であることが好ましく、5質量%程度以下であることがさらに好ましい。添加剤の含有量は、10質量%程度以下であることが好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
バインダー樹脂としては、印刷インキ用樹脂として用いられる公知の樹脂を用いることができる。このような樹脂として、アルキッド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硬化ロジン、石油樹脂、マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチロール樹脂、塩化ゴム、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール、塩素化ポリプロピレン、ポリウレタン、ニトロセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、環化ゴム等を例示できる。
【0052】
これらの樹脂の中でも、表面処理炭酸カルシウムを効果的に分散させるには、油長が70以上であるアルキッド樹脂が好ましく、印刷インキ組成物におけるアルキッド樹脂の好ましい含有量として、0.1〜15質量%を挙げることができる。なお、このバインダー樹脂用アルキッド樹脂の油長の上限値は特に限定されるものではないが、一般には80以下である。
【0053】
これらの樹脂は、単独でまたは2種以上混合して使用できる。
【0054】
着色剤は、特に限定されず、印刷インキ組成物の着色剤として従来公知の無機顔料、有機顔料または染料を使用できる。耐水性等の点で顔料が好ましい。
【0055】
有機顔料としては、例えばカーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロ−ルレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
【0056】
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0057】
染料としては、例えばタートラジンレーキ、ローダン6Gレーキ、ビクトリアピュアブルーレーキ、アルカリブルーGトーナー、ブリリアントグリーンレーキ等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で1または2種以上を混合して使用できる。
【0058】
充填剤は、特に限定されず、印刷インキ組成物の充填剤として公知のものを使用できる。このような充填剤として、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩、沈降性硫酸バリウムのような硫酸塩、シリカ、タルクのような珪酸塩等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用できる。
【0059】
添加剤としては、印刷インキ組成物の添加剤として一般に使用されているワックス、顔料分散剤、消泡剤等を使用できる。
【0060】
溶剤は、特に限定されず、印刷インキ組成物の溶剤として公知のものを使用できる。このような溶剤として、例えばn−ヘキサン、n−ペンタン、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、高沸点石油系溶剤、脂肪族炭化水素、植物油エステル、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ソルベントナフタ、テトラリン、ジペンテンのような芳香族炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチルのようなエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロンのようなケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコールのようなアルコール系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールのようなグリコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのようなグリコールエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル等が挙げられる。
【0061】
これらは単独でまたは2種以上を混合して使用できる。特に、高沸点石油系溶剤、脂肪族炭化水素、植物油エステル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が好ましい。
【0062】
(印刷物)
本発明の印刷物は、本発明の印刷インキ組成物で印刷された印刷層を有するものであり、印刷層は、文字等の表面印刷層の下地層であってもよく、文字や模様等を描いた表面印刷層であってもよい。印刷層の厚さは、特に制限されないが、通常1〜10μm程度とすればよい。
【0063】
基材は、特に限定されず、紙等の吸収性基材、プラスチック(ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等)、金属(アルミニウム、ステンレススチールシート)やセロハン等の非吸収性基材を用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により更に具体的に本発明を説明する。
【0065】
<表面処理炭酸カルシウムの調製>
(実施例1)表面処理炭酸カルシウム1の調製
合成炭酸カルシウム(BET比表面積55m
2/g)のスラリー(固形分10質量%)10kgを40℃に調整し、このスラリーを分散機により攪拌させながら、界面活性剤(HLB値10.5、エステルエーテル型ノニオン系界面活性剤)の水溶液(10質量%)200gを添加し、10分間攪拌した後、プレス脱水した。
【0066】
得られた脱水ケーキを乾燥後、粉末化することにより、第1の表面処理が施された表面処理炭酸カルシウム1kgが得られた。
【0067】
この表面処理炭酸カルシウム1kgを乾式分散機(へンシェルミキサー)により分散させながら、油長49の長鎖アルキッド樹脂(商品名「99X0237」、DIC社製)のアルコール溶液(30質量%)50gを噴霧して表面処理炭酸カルシウムに付着させることにより、第1の表面処理及び第2の表面処理が施された表面処理炭酸カルシウム1が1kg得られた。
【0068】
(実施例2)表面処理炭酸カルシウム2の調製
界面活性剤として、HLB値6.3のエーテル型ノニオン系界面活性剤を用い、アルキッド樹脂として、油長49の長鎖アルキッド樹脂(商品名「99X0237」、DIC社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウム2を得た。
【0069】
(実施例3)表面処理炭酸カルシウム3の調製
界面活性剤として、HLB値12.0のエーテル型ノニオン系界面活性剤を用い、アルキッド樹脂として、油長49の長鎖アルキッド樹脂(商品名「99X0237」、DIC社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウム3を得た。
【0070】
(実施例4)表面処理炭酸カルシウム4の調製
界面活性剤として、HLB値10.5のエステルエーテル型ノニオン系界面活性剤を用い、アルキッド樹脂として、油長75の長鎖アルキッド樹脂(商品名「99X0055」、DIC社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウム4を得た。
【0071】
(比較例1)比較表面処理炭酸カルシウム1の調製
実施例1において、第1の表面処理のみを行った表面処理炭酸カルシウムを調製し、比較表面処理炭酸カルシウム1とした。
【0072】
(比較例2)比較表面処理炭酸カルシウム2の調製
実施例1において、界面活性剤に代えて、ロジン酸を用い、ロジン酸のみを処理した表面処理炭酸カルシウムを調製し、比較表面処理炭酸カルシウム2とした。
【0073】
<印刷インキ組成物の調製>
(実施例5)
実施例1で得られた表面処理炭酸カルシウム1を用いて、表1に記載の配合で印刷インキ組成物を調製した。バインダー樹脂用アルキッド樹脂として、油長74の長鎖アルキッド樹脂(商品名「99X0069」、DIC社製)を用い、ワニス1として、ロジン変性樹脂ワニス(商品名「12X3802」、DIC社製)を用い、溶剤として、石油系溶剤を用いた。
【0074】
表面処理炭酸カルシウム1:50質量%、アルキッド樹脂22質量%、ワニス13質量%、溶剤15質量%を、3本ロールミルにて7.5μ以下の粒径になるまで混練して、印刷インキ組成物を調製した。
【0075】
(実施例6)
実施例2で得られた表面処理炭酸カルシウム2を用いる以外は、実施例5と同様にして、印刷インキ組成物を調製した。
【0076】
(実施例7)
実施例3で得られた表面処理炭酸カルシウム3を用いる以外は、実施例5と同様にして、印刷インキ組成物を調製した。
【0077】
(実施例8)
実施例4で得られた表面処理炭酸カルシウム4を用いる以外は、実施例5と同様にして、印刷インキ組成物を調製した。
【0078】
(比較例3)
比較例1で得られた比較表面処理炭酸カルシウム1を用いる以外は、実施例5と同様にして、印刷インキ組成物を調製した。
【0079】
(比較例4)
比較例2で得られた比較表面処理炭酸カルシウム2を用いる以外は、実施例5と同様にして、印刷インキ組成物を調製した。
【0080】
<印刷物の評価>
上記で得られた各印刷インキ組成物を用いて、印刷物を作製し、得られた印刷物について以下の方法で評価した。
【0081】
(測定方法)
・光沢
RIテスターにて印刷用紙上にインキ塗膜を形成し、BYK Gardner micro−TRI−gloss(入反射単角度=60°)を用いて光沢を評価した。
【0082】
・粘度及び降伏値
ラレー粘度計にてインキの粘度、降伏値を評価した。
【0083】
・流動性
ガラス板を傾斜角70°に設置したガラス板流度測定器に2.4gのインキをスポイトにて塗布、60分経過後の流動性を評価した。
【0084】
評価結果を、表3及び表4に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
(実施例9)
実施例1で得られた表面処理炭酸カルシウム1を用いて、表5に記載の配合で印刷インキ組成物を調製した。印刷インキ用藍顔料として、FASTOGEN BLUE SR−07を用い、バインダー樹脂用アルキッド樹脂として、油長74の長鎖アルキッド樹脂(商品名「99X0069」、DIC社製)を用い、ワニス1として、ロジン変性樹脂ワニス(商品名「12X3802」、DIC社製)を用い、溶剤として、石油系溶剤を用いた。
【0090】
表面処理炭酸カルシウム1:20質量%、印刷インキ用藍顔料18質量%、アルキッド樹脂7.5質量%、ワニス1:35質量%、印刷適性付与剤(助剤)4.5質量%、溶剤15質量%を、3本ロールミルにて7.5μ以下の粒径になるまで混練して、印刷インキ組成物を調製した。
【0091】
(比較例5)
比較例1で得られた比較表面処理炭酸カルシウム1を用いる以外は、実施例9と同様にして、印刷インキ組成物を調製した。
【0092】
(比較例6)
比較表面処理炭酸カルシウム2:1.5質量%、印刷インキ用藍顔料18質量%、ワニス1:35質量%、ワニス2:31質量%、印刷適性付与剤(助剤)4.5質量%、溶剤10質量%を、3本ロールミルにて7.5μ以下の粒径になるまで混練して、印刷インキ組成物を調製した。なお、ワニス2としては、ロジン変性樹脂ワニス(商品名「12X3801」、DIC社製)を用いた。
【0093】
(参考例)
市販インキと同様な印刷インキ組成物を調製し、参考例とした。市販表面処理炭酸カルシウムとしては、白艶華 T−DD(白石工業株式会社製)を用いた。
【0094】
市販表面処理炭酸カルシウム:6質量%、印刷インキ用藍顔料18質量%、ワニス1:27質量%、ワニス2:33質量%、印刷適性付与剤(助剤)8質量%、溶剤8質量%を、3本ロールミルにて7.5μ以下の粒径になるまで混練して、印刷インキ組成物を調製した。
【0095】
<印刷物の評価>
上記で得られた各印刷インキ組成物について、印刷物を作製し、上記と同様にして、光沢及び粘度について評価した。また、乳化特性について、以下のようにして評価した。
【0096】
(測定方法)
・乳化特性
1)乳化試験機にて含水率変動時のトルク変動にて評価した。
2)ローランドR700にて印刷を実施、給水量の変動による印刷適性を評価した。
【0097】
評価結果を表6に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
乳化特性:水幅の上下限の値を参考例と比較して5段階評価を行った。
【0101】
水幅は給水量を増減し、鮮明な画像が得られる以下の設定値にて判定した。
【0102】
5:市販インキよりも優れる
4:市販インキのレベル
3:市販インキには劣るが実用上問題ないレベル
2:印刷物の内容によっては使用できるレベル
1:実用に耐えないレベル
(良) 5 > 3 > 1 (悪)