(54)【発明の名称】アナライトの検出または定量方法、アナライトを検出または定量するためのキット、およびアナライトを検出または定量するためのラテラルフロー型クロマト法用テストストリップ
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成23年度経済産業省「高病原性インフルエンザの簡便で高感度な早期診断のためのイムノクロマト方式体外診断システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メンブレンと当該メンブレンに、アナライトと特異的に結合する捕捉リガンドが固定されてなる検出部を含むラテラルフロー型クロマト用テストストリップを用いて、試料中に含まれるアナライトを検出または定量するアナライトの検出または定量方法であって、
下記工程(i)〜(iii)を含み、
工程(i):試料に含まれるアナライトを、アナライトに特異的に結合するリガンド(1)を600nm以上800nm以下の波長を有する光で励起されて蛍光を生じる蛍光体(1)で標識化してなる標識化リガンド(1)に接触させる工程
工程(ii):前記検出部にて、工程(i)において形成された、アナライトと標識化リガンドとを含む複合体(A)を、捕捉リガンドに接触させる工程
工程(iii):テストストリップに、複合体(A)に含まれる蛍光体(1)の励起光として、600nm以上800nm以下の波長を有する光を照射し、蛍光体(1)の蛍光を生じさせ、該蛍光の蛍光強度を測定する工程
前記標識化リガンド(1)は、前記リガンド(1)と前記蛍光体(1)とが、不溶性粒子に担持されてなり、前記不溶性粒子がポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリレート共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリメチルメタクリレートからなるラテックス粒子である
アナライトの検出または定量方法。
【背景技術】
【0002】
血液、尿、唾液などの生体試料や食品の抽出試料などの試料中に含まれるアナライトを検出または定量する際に、ラテラルフロー型クロマト法用テストストリップ(以下「テストストリップ」)を用いると、検出および定量が、迅速かつ、特に大型の設備を必要とすることなく簡便にできる。そのため、テストストリップは、POCT(Point Of Care Testing)などの各種臨床検査や検定試験において汎用されている。
【0003】
このテストストリップは、ニトロセルロース膜等のメンブレンに、後述するような部位を具備しており、標識物質として、酵素を含む蛋白質、金コロイドなどの金属コロイド、着色ラテックス粒子等が一般的に使用されている。たとえば、標識物質として、蛍光体が含まれる場合、アナライトの検出等の際に、励起光によって生じる蛍光を検出するが、励起光としては、200nm以上、400nm以下程度の紫外光が使用されている。
【0004】
また、このようなテストストリップを用いたイムノクロマト法は、操作手順の回数に応じて、いわゆる「1ステップ型」と「2ステップ型」に大別される。
「2ステップ型」のイムノクロマトグラフ法では、まず、アナライト(たとえば抗原)に、そのアナライトと特異的に結合し、蛍光体で標識化されたリガンド(たとえば前記抗原に対する抗体)を接触させて複合体を形成する。次いで、形成された複合体を、移動相として、テストストリップに添加し、クロマトグラフィーの原理によりメンブレンに、展開させ、メンブレン上の反応部で捕捉リガンド(たとえば前記抗原に対する第二抗体)により前記複合体を捕捉した後、蛍光体の励起光を照射して、蛍光体から発せられるシグナルを検出して、試料中のアナライトを定性的ないし定量的に分析する。
【0005】
たとえば、特許文献1には、「2ステップ型」のイムノクロマトグラフ法の一態様が開示され、高い感度で、アナライトを定量する方法が開示されている。
一方、「1ステップ型」のイムノクロマトグラフ法では、「2ステップ型」のイムノクロマトグラフ法とは異なって、テストストリップに供する前に、予め、被検出物質に蛍光体で標識化されたリガンドを接触させる工程を必要としないために、「2ステップ型」のイムノクロマトグラフ法と比べて、より簡便にアナライトの検出や定量が可能である。
【0006】
「1ステップ型」のイムノクロマトグラフ法に使用されるテストストリップは、基本的な構成として、メンブレンと、当該メンブレンに、アナライトを含む試料が流れる方向(展開方向)において、反応部(コンジュゲートパッド)、検出部(テストライン)を、さらに必要に応じて、試料添加部、コントロール部(コントロールライン)や吸収パッドを備えている。
【0007】
まず、試料添加部に、アナライトを含む試料を添加すると、添加された試料が、メンブレンにおける毛細管現象により、メンブレン上を試料添加部から検出部に向かって移動(展開)する。ここで、反応部では、アナライトと特異的に結合する標識化リガンド(標識物質で標識化されたリガンド)が含まれている。そのため、アナライトは、抗原抗体反応等の特異的な結合反応を介して、標識化リガンドと結合し、アナライトおよび標識化リガンドを含む複合体が形成される。
【0008】
次いで、形成された複合体は、検出部に移動する。検出部では、複合体中のアナライトと特異的に結合するリガンド(捕捉リガンド)が、メンブレンに、固定されている。そのため、この複合体が検出部に移動すると、複合体中のアナライトと捕捉リガンドとの結合反応を介して、複合体は検出部にて捕捉される。次いで、検出部において、捕捉された複合体中の標識物質による着色または蛍光などのシグナルの有無や強弱を測定して、試料中のアナライトを定性的ないし定量的に分析する。
【0009】
このような「1ステップ型」のイムノクロマトグラフ法に使用されるテストストリップは、たとえば特許文献2〜4に開示されている。
特許文献2では、検体(試料)に含まれる少なくとも2種の検出対象物(アナライト)を一度で検出又は定量できるテストストリップが開示されている。かかるテストストリップは、「試料添加用部材、第1の検出対象物に対する標識粒子が固定されたイムノクロマト法用コンジュゲートパッド、前記第1の検出対象物に対する標識粒子が流れる方向に対して、第1の検出対象物を検出するための抗体固定化部及び第1の検出対象物に対する標識粒子を捕捉するための抗体固定化部を順次設けた、メンブレン、第2の検出対象物に対する標識粒子が固定化されたイムノクロマト法用コンジュゲートパッド、第2の検出対象物を検出するための抗体固定化部を有するメンブレン、及び吸収パッドをこの順に直列連結して有する」ものである(請求項1等)。
【0010】
特許文献3〜4では、含有される標識物質を変えることで様々な色相、蛍光波長等を付与することができ、かつ凝集等によっても黒ずんだ色にならないイムノクロマト用標識シリカナノ粒子またはシリカナノ粒子が開示されている。さらに、これらの特許文献では、試料添加用部材、前記イムノクロマト用標識シリカナノ粒子またはシリカナノ粒子を含浸させてなる部材、抗体固定化部を有するメンブレン及び吸収パッドが直列連結してなるイムノクロマト法用テストストリップが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るアナライトの検出または定量方法は、メンブレンと当該メンブレンに、アナライトと特異的に結合する捕捉リガンドが固定されてなる検出部を含むラテラルフロー型クロマト用テストストリップを用いて、試料中に含まれるアナライトを検出または定量する方法であって、下記工程(i)〜(iii)を必須工程として含む。
【0020】
工程(i):試料に含まれるアナライトを、アナライトに特異的に結合するリガンド(1)を600nm以上800nm以下の波長を有する光で励起されて蛍光を生じる蛍光体(1)で標識化してなる標識化リガンド(1)に接触させる工程
工程(ii):前記検出部にて、工程(i)において形成された、アナライトと標識化リガンドとを含む複合体(A)を、捕捉リガンドに接触させる工程
工程(iii):テストストリップに、複合体(A)に含まれる蛍光体(1)の励起光として、600nm以上800nm以下の波長を有する光を照射し、蛍光体(1)の蛍光を生じさせ、該蛍光の蛍光強度を測定する工程
【0021】
以下、各構成要件について詳細に説明する。
1.試料およびアナライト
試料は、アナライトとして、蛋白質、糖類、核酸、各種生理活性物質を含むものである限り特に限定されるものではない。たとえば、目的のアナライトを含む生体試料(すなわち、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、鼻腔又は咽頭拭い液、髄液、羊水、乳頭分泌液、涙、汗、皮膚からの浸出液、組織や細胞および便からの抽出液等)や食品の抽出液等が挙げられる。必要に応じて、標識化リガンド(1)および捕捉リガンド(2)とアナライトとの特異的な結合反応が生じやすくするために、試料に含まれるアナライトを、標識化リガンド(1)に接触させる工程(工程(i))に先立って、試料に含まれるアナライトを前処理してもよい。ここで、前処理としては、酸、塩基、界面活性剤等の各種化学薬品等を用いた化学的処理や、加熱・撹拌・超音波等を用いた物理的処理が挙げられ、またその両方を用いても良い。特に、アナライトがインフルエンザウイルスNP抗原等の、通常は表面に露出していない物質である場合、界面活性剤等による処理を行うのが好ましい。この目的に使用される界面活性剤として、特異的な結合反応、たとえば、抗原抗体反応等のリガンドとアナライトとの結合反応性を考慮して、非イオン性界面活性剤が用いられてもよい。
【0022】
また、前記試料は、通常の免疫学的分析法で用いられる溶媒(水、生理食塩水、または緩衝液等)や水混和有機溶媒で適宜希釈されていてもよい。
前記アナライトとしては、腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモン等のタンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等を含む)、核酸(一本鎖または二本鎖の、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を含む)または核酸を有する物質、糖(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等を含む)または糖鎖を有する物質、脂質などその他の分子が挙げられ、標識化リガンド(1)および捕捉リガンド(2)に特異的に結合するものである限り特に限定されないが、たとえば、癌胎児性抗原(CEA)、HER2タンパク、前立腺特異抗原(PSA)、CA19−9、α−フェトプロテイン(AFP)、免疫抑制酸性タンパク(IPA)、CA15−3、CA125、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、便潜血、トロポニンI、トロポニンT、CK−MB、CRP、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、梅毒抗体、インフルエンザウイルス、ヒトヘモグロビン、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、HBs抗体、HBs抗原、ロタウイルス、アデノウイルス、アルブミン、糖化アルブミン等が挙げられる。これらの中でも非イオン性界面活性剤により可溶化される抗原が好ましく、ウイルス核タンパク質のように自己集合体を形成する抗原がより好ましい。
【0023】
2.標識化リガンド(1)
標識化リガンド(1)は、アナライトに特異的に結合するリガンド(1)を600nm以上800nm以下の波長を有する光で励起されて蛍光を生じる蛍光体(1)で標識化してなる。ここで、「リガンド(1)」とは、蛍光体(1)で標識化されていない、未標識のリガンドそのものを指す。標識化リガンド(1)は、後述する工程(i)において、試料に含まれるアナライトに接触させて、アナライトと標識化リガンド(1)とを含む複合体を形成するために使用される。
【0024】
標識化リガンド(1)を構成する蛍光体(1)は、600nm以上800nm以下の波長を有する光で励起される蛍光物質である限り、特に限定されないが、たとえば、橙色可視光もしくは赤色可視光または近赤外光で励起される、蛍光色素または蛍光蛋白質が挙げられる。なお、「蛍光色素」とは、蛍光蛋白質を除く、蛍光物質であることを指す。
【0025】
なお、蛍光体(1)を蛍光発光させる光(励起光)は、600nm以上800nm以下の波長を有する光である。
また、蛍光体(1)が蛍光発光した際に測定される蛍光強度の蛍光波長域(蛍光測定波長域)は、600nm以上で、1200nm以下であり、好ましくは650nm以上、1000nm以下である。
【0026】
上記蛍光測定波長域が上記下限値よりも小さい場合、工程(iii)において、テストストリップを構成するPET等の材料からの自家蛍光に由来して、バックグラウンドの蛍光強度が大きくなり、検出感度が低下することがある。また、上記蛍光測定波長域が上記上限値よりも大きい場合、蛍光測定波長域が長波長にシフトするに従って量子効率が下がっていくために、工程(iii)において、検出器の受光感度が大きく低下することがある。
【0027】
600nm以上、800nm以下の励起光で蛍光発光する蛍光体(1)としては、Cy3.5,Alixa Flor 647,Cy5, Cy5.5,Alexa Fluor 680、Cy7,Alexa Fluor 790等のインドシアニン骨格を有した有機色素、アクリフラビン、DDAO等のアクリジン誘導体、ブリリアントブルー、ブリリアントグリーン等のシアニン誘導体、アロフィコシアニン等の蛍光蛋白質などが挙げられる。
【0028】
標識化リガンド(1)を構成するリガンド(1)は、試料に含まれるアナライトを認識し、またはアナライトに認識されて、アナライトと特異的に結合することができる分子または分子断片を言う。
【0029】
このような分子または分子断片としては、たとえば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよい、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、蛋白質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ等、多糖類、糖鎖を含む物質等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体等が挙げられる。
【0030】
上記蛋白質としては、たとえば、抗体やレクチン等が挙げられる。なお、本明細書において、「抗体」との用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、遺伝子組み換えにより得られた抗体、および抗体断片を包含する。
【0031】
また、標識化リガンド(1)において「標識化」とは、後述する工程(i)〜(iii)において、標識化リガンド(1)から蛍光体(1)が脱離しない程度に、標識化リガンド(1)に蛍光体(1)が直接的にまたは間接的に、化学的または物理的な、結合や吸着等で固定されていることを意味する。
【0032】
たとえば、標識化リガンド(1)は、リガンド(1)に蛍光体(1)が直接結合してなるものであってもよいし、リガンド(1)と蛍光体(1)とが、リンカー分子を介して結合してなるものや、それぞれが不溶性粒子に固定されてなるものであってもよい。
【0033】
また、リガンド(1)と蛍光体(1)とは、不溶性粒子に、後述する工程(i)〜(iii)において、標識化リガンド(1)から蛍光体(1)が脱離しない程度に、物理的または化学的に結合または吸着等で固定されているものである限り、特に限定されない。なお、蛍光体(1)は、不溶性粒子がラテックス粒子などの高分子化合物製の粒子である場合、粒子の表面に露出するように、あるいは、工程(iii)において励起光が到達できる程度に、粒子の表面近くに存在するように、練り込まれていていたり、吸着されていたりしてもよい。
【0034】
検出感度を向上させるという観点からは、標識化リガンド(1)は、好ましくは、リガンド(1)と蛍光体(1)とを不溶性粒子に固定させてなるものである。ここで、より検出感度を向上させることや、イムノストリップ上での展開性の向上という観点からは、より好ましくは、不溶性粒子の平均粒子径が、50nm以上、1000nm以下であり、さらに好ましくは、該平均粒子径が、100nm以上、500nm以下である。該平均粒子径が上記下限値よりも小さい場合、工程(iii)において蛍光体(1)の蛍光強度が小さくなることがあり、該平均粒子径が上記上限値よりも大きい場合、工程(iii)においてバックグラウンドの蛍光強度が大きくなることがある。なお、上記平均粒子径とは、動的光散乱法で測定された平均一次粒子径の値を指す。
【0035】
標識化リガンド(1)は、リガンド(1)と蛍光体(1)とを不溶性粒子に固定させてなるものである場合、標識化リガンド(1)のゼータ電位は、−30mV以下であることが好ましく、−51mV以上、−32mV以下であることがより好ましく、−46mV以上、−35mV以下であることが特に好ましい。前記ゼータ電位がこのような範囲にあると、標識化リガンド(1)、または標識化リガンド(1)とアナライトとを含む複合体(A)をテストストリップ上に供した場合、各部位で標識化リガンド(1)または複合体が滞留することなく、均一に展開することができる。すなわち、展開性が良好となる。なお、前記ゼータ電位は、粒子径測定装置(Malvern社製「ゼータサイザー」)を用いて測定される値である。また、前記ゼータ電位は、不溶性粒子に固定されたリガンドの量が大きいと、正に移動する傾向があるために、前記ゼータ電位は、前記リガンド量に基づいて調整することができる。たとえば、不溶性粒子1粒子あたりのリガンドの固定量(mg/g粒子)を、1mg/g粒子以上、500mg/g粒子以下に範囲にした場合、標識化リガンド(1)のゼータ電位は−60mV以上、−30mV以下程度の好適な範囲になる。
【0036】
また、不溶性粒子としては、合成高分子粒子、無機化合物粒子または多糖類粒子が用いられる。前記合成高分子粒子としては、特に制限されないが、例えば、ラテックス粒子、ポリ乳酸粒子等があげられ、好ましくは、ラテックス粒子である。前記ラテックス粒子の材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリレート共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート等があげられ、好ましくは、ポリスチレン、スチレン−アクリレート共重合体である。前記無機化合物粒子としては、特に制限されないが、例えば、金、銀、白金のような金属粒子、または金属コロイド粒子、多孔性ガラス粒子、シリカ、アルミナ等の金属酸化物粒子があげられる。前記多糖類粒子としては、特に制限されないが、例えば、アガロース粒子、デキストラン粒子、セルロース粒子、キトサン粒子等があげられる。
【0037】
リガンド(1)を不溶性粒子に固定させる方法としては、リガンド(1)を不溶性粒子に物理的に吸着による方法と、化学的な結合として共有結合による方法に大別することができる。前者としては、例えば、シリカ粒子や金粒子がコロイド状に分散した溶液に、リガンド(1)を添加した後、所定の時間放置して物理吸着させるような方法が挙げられ、このような方法には操作が簡便であるという利点がある。一方、後者としては、例えば、不溶性粒子の粒子表面に導入したカルボキシル基とリガンド(1)のアミノ基とを縮合剤を用いてアミド結合で結合する方法や、いわゆる架橋試薬を用いて不溶性粒子とリガンド(1)とを結合する方法が挙げられ、このような方法にはリガンド(1)を不溶性粒子に定量的かつ不可逆的に導入することができるという利点がある。また、上記のような方法により、蛍光体(1)およびリガンド(1)を不溶性粒子に固定した後は、牛血清アルブミン溶液のようなブロッキング剤を添加して抗体が未結合な状態である粒子表面をブロッキングすることが好ましい。
【0038】
3.ラテラルフロー型クロマト用テストストリップ
ラテラルフロー型クロマト用テストストリップ(単に、テストストリップと称することもある)は、少なくとも、メンブレンと、当該メンブレンに、アナライトと特異的に結合する捕捉リガンドが固定されてなる検出部を含み、必要に応じて、後述するような、反応部、試薬添加部、コントロール部、吸水パッド等の任意部材を含んでいてもよい。たとえば、
図1(A)の付番10のテストストリップでは、試料の展開方向において、メンブレンに、試料添加部11、標識化リガンド(1)17を含む反応部12、捕捉リガンド(2)19が固定されてなる検出部13、捕捉リガンド(3)19´が固定されてなるコントロール部14および吸水パッド15を備えている。また、
図1(B)の付番20のテストストリップでは、試料の展開方向において、メンブレンに、試料添加部21、捕捉リガンド(2)29が固定されてなる検出部23、捕捉リガンド(3)29´が固定されてなるコントロール部24およびを備え、反応部を備えていない。
【0039】
(1)メンブレン
テストストリップに使用されるメンブレンは、一般的なテストストリップに使用されるメンブレンと同様に、たとえば、毛管現象を示し、試料を添加すると同時に、試料が展開するような微細多孔性物質からなる不活性物質(アナライト、各種リガンド、各種蛍光体などと反応しない物質)で形成されているものである。具体的なメンブレンとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ニトロセルロース又は酢酸セルロース等のセルロース誘導体等で構成される繊維状又は不織繊維状マトリクス、膜、濾紙、ガラス繊維濾紙、布、綿等が挙げられる。中でも、好ましくはセルロース誘導体やナイロンで構成される膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等が用いられ、より好ましくはニトロセルロース膜、混合ニトロセルロースエステル(ニトロセルロースと酢酸セルロースの混合物)膜、ナイロン膜、濾紙が用いられる。
【0040】
メンブレンの形態および大きさは特に制限されるものではなく、実際の操作の点および後述する蛍光強度の測定の際において適切であればよい。操作をより簡便にするためには、メンブレンが、プラスチック製等の支持体で支持されていることが好ましい。
【0041】
(2)検出部
検出部は、標識化リガンド(1)とアナライトとを含む複合体(A)が、アナライトと特異的に結合する捕捉リガンド(2)に接触するような構成である限り特に限定されないが、メンブレンに、直接、捕捉リガンド(2)が固定されてなるものであってもよいし、あるいは捕捉リガンド(2)をメンブレンに、固定されたセルロース濾紙、グラスファイバー、および不織布等からなるパッドに固定してなるものであってもよい。
【0042】
なお、本明細書における「捕捉リガンドが固定された」とは、テストストリップに試料を提供した場合においても、捕捉リガンドが、検出部から移動することないように、メンブレンに、直接的にまたは間接的に、物理的または化学的な結合や吸着等によって不動化している状態を指す。
【0043】
(3)試料添加部
テストストリップは、試料が展開する方向において、
図1(B)に示されるように反応部が形成されていない場合は、検出部よりも上流側に、
図1(A)に示されるように反応部が形成されている場合は、反応部よりも上流側に、アナライトを含む試料を添加するための試料添加部を有していてもよい。
【0044】
試料添加部とは、テストストリップに、アナライトを含む試料を受け入れるための部位であり、メンブレンに形成されているものでもよく、あるいは、セルロース濾紙、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、および綿布などの材料で構成された試料添加パッドがメンブレンに形成されてなるものであってもよい。試料添加パッドを有する試料添加部は、試料中の凝集物等を濾過する機能を発揮することができる点で好ましい。また、試料中のアナライトが試料添加部の材質に非特異的に吸着して、分析の精度を低下させることを防止するという観点からは、試試料添加パッドを構成する材料は、予め非特異的吸着防止処理されていることが好ましい。
【0045】
(4)反応部
テストストリップには、
図1(A)の付番12で示されるように、メンブレンに、試料が流れる方向において、検出部よりも上流側に、標識化リガンド(1)を含む反応部が形成されていることが好ましい。このように、テストストリップにおいて、反応部が形成されている場合、アナライトを含む試料を反応部にまたは試料添加部に供すると、反応部にて、試料に含まれるアナライトと標識化リガンド(1)とを接触させることができる。すなわち、工程(i)として、試料に含まれるアナライトを標識化リガンド(1)とを接触させる工程を実施した後に、テストストリップに提供するような操作が不要になり、試料を、単に反応部にまたは試料添加部に供することで、工程(i)を実施することができ、その結果、アナライトと標識化リガンド(1)とを含む複合体(A)を簡便に形成させることができる。
【0046】
反応部は、アナライトと特異的に結合する標識化リガンド(1)を含む限り特に限定されないが、メンブレンに、直接、標識化リガンド(1)が塗布されてなるものであってもよいし、あるいはセルロース濾紙、グラスファイバー、および不織布等からなるパッド(コンジュゲートパッド)に標識化リガンド(1)を含浸して、標識化リガンド(1)を含浸したパッドを、メンブレンに固定してなるものであってもよい。
【0047】
(5)コントロール部
テストストリップは、
図1(A)の付番14や
図1(B)の付番24に示されるように、メンブレンに、試料が展開する方向において、標識化リガンド(1)と特異的に結合する第3リガンドが固定されてなるコントロール部が形成されていてもよい。後述する工程(iii)において、検出部とともに、コントロール部でも蛍光強度が測定されることにより、テストストリップに供した試料が展開して、反応部および検出部に到達し、検査が正常に行われたことを確認することができる。なお、コントロール部は、捕捉リガンド(2)の代わりに捕捉リガンド(3)を用いることを除いては、上述の検出部と同様にして作成され、同様の構成を採ることができる。
【0048】
(6)吸水パッド
テストストリップは、メンブレンに、試料が展開する方向に向かって、コントロール部が形成されていない場合は、検出部よりも下流側に、あるいはコントロール部が形成されている場合は、
図1(A)の付番15や
図1(B)の付番25で示されるように、コントロール部よりも下流側に、吸水パッドが形成されていてもよい。
【0049】
吸水パッドは、たとえば、セルロ−ス濾紙、不織布、布、セルロースアセテート等の吸水性材料から形成される。添加された試料の展開前線(フロントライン)が吸水パッドに届いてからの試料の移動速度は、吸水パッドの材質、大きさなどにより異なるので、その選定によりアナライトの検出・定量に合った速度を設定することができる。
【0050】
工程(i)〜(iii)
工程(i)は、試料に含まれるアナライトを、アナライトに特異的に結合するリガンド(1)を、600nm以上800nm以下の波長を有する光で励起されて蛍光を生じる蛍光体(1)で標識化してなる標識化リガンド(1)に接触させる工程であり、アナライトと標識化リガンド(1)とを含む複合体(A)を形成する限り、接触の態様は特に限定されるものではない。
【0051】
たとえば、テストストリップの反応部または試料添加部に試料を供した後、テストストリップの反応部において、工程(i)が実施されてもよいし、あるいは、テストストリップを用いないで、テストストリップに試料を供する前に、試料と標識化リガンド(1)とを接触させてもよい。
【0052】
前者の場合、
図1(A)の付番10で示されるように、テストストリップが、反応部を備えている必要があるが、試料に含まれるアナライトと標識化リガンド(1)とを接触した後にテストストリップに提供することなく、単に、試料を反応部にまたは試料添加部に供することで、アナライトと標識化リガンド(1)とを含む複合体(A)を簡便に形成させることができる。
【0053】
一方で、後者の場合、
図1(B)の付番20で示されるように、テストストリップが、反応部を備えている必要はない。ただし、試料に含まれるアナライトを、本発明に係る検出試薬中の標識化リガンド(1)と接触した後に、テストストリップに提供する必要がある。
【0054】
次いで、工程(i)で形成された複合体(A)は、テストストリップ上で展開していき、検出部に至る。ここで、工程(ii)として、テストストリップの検出部にて、工程(1)において形成された、アナライトと標識化リガンド(1)とを含む複合体(A)を、捕捉リガンド(2)に接触させる工程を実施する。複合体(A)を、捕捉リガンド(2)に接触させると、捕捉リガンド(2)は、複合体(A)中のアナライトを認識して、あるいはアナライトに認識されて、複合体(A)のアナライトに特異的に結合する。その結果、複合体(A)が検出部において捕捉される。なお、標識化リガンド(1)単独が検出部に至った場合、捕捉リガンド(2)は、標識化リガンド(1)に特異的に結合しないために、標識化リガンド(1)単独は、検出部を通り過ぎる。コントロール部が形成されている場合、検出部を通過した標識化リガンド(1)は展開をし続け、かかるコントロール部に至ると、標識化リガンド(1)に特異的に結合する捕捉リガンド(3)が固定されているために、標識化リガンド(1)は捕捉リガンド(3)と結合する。結果として、アナライトと複合体(A)を形成していない標識化リガンド(1)は、コントロール部で捕捉されることになる。
【0055】
さらに、工程(ii)の後、必要に応じて工程(iii)を実施する前に、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等の生化学検査で汎用される緩衝液で、テストストリップを洗浄して、検出部または、検出部およびコントロール部に捕捉されなかったフリーの標識化リガンド(1)(アナライトと複合体(A)を形成していない標識化リガンド(1))を除去する工程(洗浄工程)を実施してもよい。かかる工程を実施することで、工程(iii)にて、検出部または、検出部およびコントロール部における蛍光体(1)の蛍光強度を測定する際に、バックグラウンドの蛍光強度を低減させることができ、シグナル/バックグラウンド比を高め、一層検出感度や定量性を向上することができる。
【0056】
工程(ii)または必要に応じて洗浄工程を実施した後、テストストリップに、複合体(A)中の標識化リガンド(1)に含まれる蛍光体(1)の励起光として、橙色可視光もしくは赤色可視光または近赤外光を照射し、蛍光体(1)の蛍光を生じさせ、該蛍光の蛍光強度を測定する工程(工程(iii)を実施する。テストストリップの材料、特に有機ポリマーは、可視光よりも小さな波長を有する光(例:紫外光)によって、自家蛍光するところ、上記工程では、蛍光体(1)の励起光として特定の長波長の光を照射するために、上記自家蛍光は依然として発生するものの、その強度を小さくすることができる。そのため、自家蛍光に起因するバックグラウンドの蛍光強度の増加を低減でき、シグナル/バックグラウンド比を向上させて、検出感度や定量性を向上させることができる。
【0057】
すなわち、自家蛍光に起因するバックグラウンドの蛍光強度の増加を低減でき、シグナル/バックグラウンド比を向上させて、検出感度や定量性を向上させることができる。
ここで、励起光は、蛍光体(1)の励起波長に依存するが、600nm以上、800nm以下の波長を有する光である。このような励起光を照射すると、メンブレン等のテストストリップがPET等の紫外光によって自家蛍光するような材料で構成されていたとしても、自家蛍光の発生を低減乃至発生を無くすことができるため、高い検出感度で、アナライトを検出および定量できる。
【0058】
また、工程(iii)において、蛍光体(1)の蛍光強度を測定する手段としては、CCD検出器等の公知の蛍光シグナルの検出機器を、必要に応じて、特定の波長のシグナルをカットできるフィルターとともに用いることができる。
【0059】
なお、テストストリップにコントロール部が形成されている場合、工程(ii)によって、コントロール部にて、標識化リガンド(1)を捕捉リガンド(3)によって捕捉して、標識化リガンド(1)および捕捉リガンド(3)を含む複合体が形成される。そのため、工程(iii)として、テストストリップに、蛍光体(1)の励起光を照射すると、検出部とともにコントロール部においても、蛍光発光を生じさせることができ、蛍光体(1)の蛍光強度を測定できる。このように、検出部とともにコントロール部においても蛍光強度を測定することで、測定された蛍光強度に基づいて、テストストリップに供した試料が展開して、反応部および検出部に到達したか否かを確認できる。すなわち、コントロール部で蛍光が検出されなければ、検査失敗であると判断できる。
【0060】
5.アナライト検出・定量キット
本発明の別態様として、上述のような、ラテラルフロー型クロマト用テストストリップを用いて、試料中に含まれるアナライトの検出または定量方法に使用するためのキットを提供する。本発明に係るキットは、メンブレンと当該メンブレンに、前記アナライトと特異的に結合する捕捉リガンドが固定されてなる検出部を含むラテラルフロー型クロマト用テストストリップと、前記アナライトに特異的に結合するリガンド(1)を橙色可視光もしくは赤色可視光または近赤外光で励起される蛍光体(1)で標識化してなる標識化リガンド(1)を含む検出試薬とを必須構成要素として含み、必要に応じて、さらにその他の構成要素を含むものであってもよい。
【0061】
本発明に係るキットを使用するにあたっては、試料中のアナライトと検出試薬中の標識化リガンド(1)とを接触させて工程(i)を実施した後、テストストリップの反応部または試料添加部に試料を供して、工程(ii)〜(iii)を順次実施してもよい。あるいは、テストストリップの検出部よりも上流側に、検出試薬を塗布して、適宜乾燥させて反応部を形成した後、形成された反応部あるいは該反応部よりも上流側の位置(たとえば試料添加部)に試料を添加して、工程(i)〜(iii)を順次実施してもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[比較例1A]
[標識化抗体1Aの調製]
抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(Millipore社製、Anti-Influenza A, nucleoprotein, clone A3)を50mM MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid, monohydrate: 同仁化学社製)緩衝液(pH6.0)溶液で透析した後、蛍光体1A(FAM (5-FAM-X (6-(Fluorescein-5-carboxamido) hexanoic acid, succinimidyl ester)、Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.)を、アミノ基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光体1Aとを結合させて、標識抗体1Aを含む検出液1Aを調製した。
[テストストリップ1Aの作製]
抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(Millipore社製Anti-Influenza A, nucleoprotein, clone A3)を10mM Tris−HCl(pH7.5)に透析し、透析後に孔径0.22μmのフィルターでろ過を行い、10mM Tris−HCl(pH7.5)で希釈して抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を含む捕捉抗体(2)液を調製した。
【0063】
また、抗マウスIgG抗体(Adar Biotech Ltd.社製、Anti-IgG, Mouse, Goat-Poly)を10mM Tris−HCl(pH7.5)に透析し、透析後に孔径0.22μmのフィルターでろ過を行い、10mM Tris−HCl(pH7.5)で希釈して抗マウスIgG抗体を含む捕捉抗体(3)液を調製した。
【0064】
次いで、トリニトロセルロースメンブレン(Millipore株式会社製、白色、幅60mm×長さ350mm)上に、該メンブレンの端部から展開方向に(前記端部からもう一方の端部に向かって)、7mmの位置および14mmの位置に、陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて、それぞれ、捕捉抗体(2)液および捕捉抗体(3)液を線状に塗布し、45℃の温風を10分間吹き付けた後、乾燥して、それぞれ、検出部およびコントロール部を形成した。また、ポリエステル製の不織布(幅6mm×長さ10mm)に、検出液1Aを含浸させ、検出液1Aを含浸した不織布を、前記検出部の上流側においてメンブレンに固定した。
【0065】
次に、メンブレンを固定し、かつ強度を向上させるため、メンブレンの検出液1Aが塗布された面の反対側に、プラスチック製バッキングシート(BioDot社製)を接着した。
次に、セルロース不織布を幅15mm、長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、試料添加部を形成した。
【0066】
また、幅30mm、長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッドを形成した。最後に長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、テストストリップ1Aを作製した。
【0067】
[シグナル/バックグラウンド比(S/B)の測定]
アナライトとして、インフルエンザA型ウイルスを、280.0pfu/ml(pfu:プラーク形成単位)になるように、緩衝液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、2(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)に添加し懸濁して、試料を調製した。調製さられた試料を、テストストリップ1Aの試料添加部に添加し、該試料を試料添加部から吸水パッドまでテストストリップ1A上で展開させ、洗浄後、蛍光測定装置を用いて、波長488nmの励起光をテストストリップ1Aに照射して、波長520±30nmの蛍光強度を測定した。
【0068】
なお、上記蛍光測定装置は、蛍光体(1)を励起させる励起光を照射するための発光部と、蛍光体(1)の蛍光発光を受光して電気信号に変換する受光部とを備え、発光部が、蛍光体で正反射した励起光が受光部に入射しない角度から励起光を照射するように構成されている。
【0069】
シグナル/バックグラウンド比(S/B)を、以下の計算式(1)により算出した。算出されたシグナル/バックグラウンド比(S/B)を表1に示す。
【0070】
【数1】
ここでバックグラウンドの蛍光強度とは、検出部とコントロール部とを除くテストストリップ全体の蛍光強度である。
[実施例1B]
蛍光体1Aの代わりに、蛍光蛋白質1B(「アロフィコシアニン」同仁化学社製)のチオール基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光蛋白質1Bとを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体1Bを含む検出液1Bを調製し、テストストリップ1Bを作製した。
【0071】
次いで、テストストリップ1Aの代わりに、テストストリップ1Bを用い、励起光の波長を488nmから633nmに変更し、波長660±10nmの蛍光強度を測定したことを除いては、比較例1Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例1C]
蛍光体1Aの代わりに、蛍光体1C(AlexaFluor680(モレキュラープローブス社製)のカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光体1Cとを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体1Cを含む検出液1Cを調製し、テストストリップ1Cを作製した。
【0073】
次いで、テストストリップ1Aの代わりに、テストストリップ1Cを用い、励起光の波長を488nmから680nmに変更し、波長700±10nmの蛍光強度を測定したことを除いては、比較例1Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例1D]
蛍光体1Aの代わりに、蛍光体1D(AlexaFluor780(モレキュラープローブス社製)のカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光体1Dとを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体1Dを含む検出液1Dを調製し、テストストリップ1Dを作製した。
【0075】
次いで、テストストリップ1Aの代わりに、テストストリップ1Dを用い、励起光の波長を488nmから780nmに変更し、波長800±10nmの蛍光強度を測定したことを除いては、比較例1Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
[実施例2A]
蛍光体1Aの代わりに、表2に記載の蛍光体2A(AlexaFluor 680、モレキュラープローブス社製)を用いて、前記モノクローナル抗体と蛍光体2Aを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体2Aを含む検出液2Aを調製し、テストストリップ2Aを作製した。
【0077】
次いで、テストストリップ1Aの代わりに、テストストリップ2Aを用い、励起波長を488nmから680nmに変更し、波長700±10nmの蛍光強度を測定したことを除いては、比較例1Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表2に示す。
【0078】
[実施例2B]
蛍光体1Aの代わりに、表2に記載の蛍光体2B(AlexaFluor 790、モレキュラープローブス社製)を用いて、前記モノクローナル抗体と蛍光体2Bを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体2Bを含む検出液2Bを調製し、テストストリップ2Bを作製した。
【0079】
次いで、テストストリップ2Aの代わりに、テストストリップ2Bを用いたことを除いては、実施例2Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表2に示す。
[実施例2C]
蛍光体1Aの代わりに、表2に記載の蛍光ラテックス粒子2C(FC02F8612(平均粒径0.39μm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光粒子2Cのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子2Cを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体2Cを含む検出液2Cを調製し、テストストリップ2Aを作製した。
【0080】
次いで、テストストリップ2Aの代わりに、テストストリップ2Cを用いたことを除いては、実施例2Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表2に示す。
【0081】
[実施例2D]
蛍光体1Aの代わりに、表2に記載の蛍光ラテックス粒子2D(FC02F8782(平均粒径0.32μm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光ラテックス粒子2Dのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子2Dを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体2Dを含む検出液2Dを調製し、テストストリップ2Dを作製した。
【0082】
次いで、テストストリップ2Aの代わりに、テストストリップ2Dを用いたことを除いては、実施例2Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
[実施例3A]
蛍光体1Aの代わりに、表3に記載の蛍光ラテックス粒子3A(FC02F8655(平均粒径65nm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光ラテックス粒子3Aのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子3Aを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体3Aを含む検出液3Aを調製し、テストストリップ3Aを作製した。
【0084】
次いで、テストストリップ1Aの代わりに、テストストリップ3Aを用い、励起波長を488nmから680nmに変更し、波長700±10nmの蛍光強度を測定したことを除いては、比較例1Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表3に示す。
【0085】
[実施例3B]
蛍光体1Aの代わりに、表3に記載の蛍光ラテックス粒子3B(FC02F9770(平均粒径190nm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光ラテックス粒子3Bのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子3Bを結合させたことを除いては、実施例3Aと同様にして、標識化抗体3Bを含む検出液3Bを調製し、テストストリップ3Bを作製した。
【0086】
次いで、テストストリップ3Aの代わりに、テストストリップ3Bを用いたことを除いては、実施例3Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表3に示す。
【0087】
[実施例3C]
蛍光体1Aの代わりに、表3に記載の蛍光ラテックス粒子3C(Lx(平均粒径300nm、藤倉化成社製))を用い、蛍光ラテックス粒子3Cのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子3Cを結合させたことを除いては、実施例3Aと同様にして、標識化抗体3Cを含む検出液3Cを調製し、テストストリップ3Cを作製した。
【0088】
次いで、テストストリップ3Aの代わりに、テストストリップ3Cを用いたことを除いては、実施例3Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表3に示す。
【0089】
[実施例3D]
蛍光体1Aの代わりに、表3に記載の蛍光ラテックス粒子3D(FC02F9990(平均粒径400nm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光ラテックス粒子3Dのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子3Dを結合させたことを除いては、実施例3Aと同様にして、標識化抗体3Dを含む検出液3Dを調製し、テストストリップ3Dを作製した。
【0090】
次いで、テストストリップ3Aの代わりに、テストストリップ3Dを用いたことを除いては、実施例3Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表3に示す。
【0091】
[実施例3E]
蛍光体1Aの代わりに、表3に記載の蛍光ラテックス粒子3E(FC02F8632(平均粒径510nm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光ラテックス粒子3Eのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子3Eを結合させたことを除いては、実施例3Aと同様にして、標識化抗体3Eを含む検出液3Eを調製し、テストストリップ3Eを作製した。
【0092】
次いで、テストストリップ3Aの代わりに、テストストリップ3Eを用いたことを除いては、実施例3Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表3に示す。
【0093】
[実施例3F]
蛍光体1Aの代わりに、表3に記載の蛍光ラテックス粒子3F(FC02F4194(平均粒径890nm、Bangs Laboratories社製))を用い、蛍光ラテックス粒子3Fのカルボキシル基を介して、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子3Fを結合させたことを除いては、実施例3Aと同様にして、標識化抗体3Fを含む検出液3Fを調製し、テストストリップ3Fを作製した。
【0094】
次いで、テストストリップ3Aの代わりに、テストストリップ3Fを用いたことを除いては、実施例3Aと同様にして、シグナル/バックグラウンド比(S/B)を算出した。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
[実施例4A]
蛍光体1Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4A(FS02F9862(平均粒径190nm、Bangs Laboratories社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Aを結合させたことを除いては、比較例1Aと同様にして、標識化抗体4Aを含む検出液4Aを調製し、テストストリップ4Aを作製した。
【0096】
また、標識化抗体4Aのゼータ電位を、粒子径測定装置(Malvern社製「ゼータサイザー」を用いて測定した。
次いで、アナライトとして、インフルエンザA型ウイルスを、280.0pfu/ml(pfu:プラーク形成単位)になるように、緩衝液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、2(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)に添加して懸濁させて、試料を調製した。得られた試料を、テストストリップ4Aの試料添加部に添加し、該試料を試料添加部から吸水パッドまで展開させ、洗浄した後、蛍光測定装置を用いて、波長680nmの励起光をテストストリップ1Aに照射して、波長700±10nmの蛍光の蛍光画像を得た。
【0097】
得られた蛍光画像を観察し、下記評価基準に基づいて、展開性を評価した。
[評価基準]
良:検出部よりも上流側の部位において、ほとんど蛍光が観察されなかった。
やや良:検出部よりも上流側の部位において、若干蛍光が観察された。
不良;検出部よりも上流側の部位において、著しく蛍光が観察された。
【0098】
なお、検出部よりも上流側の部位において、蛍光の強度が大きいほど、標識化抗体の展開性が悪く、検出部に至らずに検出部上流側に滞留している標識化抗体が多いことを示している。
【0099】
[実施例4B]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4B(FC02F9770(平均粒径190nm、Bangs Laboratories社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Bを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Bを含む検出液4Bを調製し、テストストリップ4Bを作製し、標識化抗体4Bの展開性を評価した。
【0100】
[実施例4C]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4C(FC02F8612(平均粒径390nm、Bangs Laboratories社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Cを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Cを含む検出液4Cを調製して、テストストリップ4Cを作製した。また、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Cのゼータ電位を測定し、標識化抗体4Cの展開性を評価した。
【0101】
[実施例4D]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4D(FC02F9990(平均粒径400nm、Bangs Laboratories社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Dを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Dを含む検出液4Dを調製して、テストストリップ4Dを作製した。また、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Dのゼータ電位を測定し、標識化抗体4Dの展開性を評価した。
【0102】
[実施例4E]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4E(FC02F9889(平均粒径490nm、Bangs Laboratories社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Eを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Eを含む検出液4Eを調製して、テストストリップ4Eを作製した。また、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Eのゼータ電位を測定し、標識化抗体4Eの展開性を評価した。
【0103】
[実施例4F]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4F(FKFL1171(平均粒径220nm、藤倉化成社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Fを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Fを含む検出液4Fを調製して、テストストリップ4Fを作製した。また、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Fのゼータ電位を測定し、標識化抗体4Fの展開性を評価した。
【0104】
[実施例4G]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4G(FKFL1175(平均粒径310nm、藤倉化成社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Gを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Gを含む検出液4Gを調製して、テストストリップ4Gを作製した。また、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Gのゼータ電位を測定し、標識化抗体4Gの展開性を評価した。
【0105】
[実施例4H]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4H(Lx(平均粒径200nm、藤倉化成社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Hを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Hを含む検出液4Hを調製し、テストストリップ4Hを作製し、標識化抗体4Hの展開性を評価した。
【0106】
[実施例4I]
蛍光ラテックス粒子4Aの代わりに、表4に記載の蛍光ラテックス粒子4I(Lx(平均粒径300nm、藤倉化成社製))を用い、前記モノクローナル抗体と蛍光ラテックス粒子4Iを結合させたことを除いては、実施例4Aと同様にして、標識化抗体4Iを含む検出液4Iを調製し、テストストリップ4Iを作製し、標識化抗体4Iの展開性を評価した。
【0107】
【表4】