【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)MKのcDNA取得
ヒトMKのcDNA配列(NM_001012333)に基づき、5’UTR領域と3’UTR領域に下記のプライマーを設計した。ヒト前立腺癌細胞PC3から抽出したtotalRNAから、SuperScriptIII cells direct cDNA Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを作製した。これを鋳型として、KOD Plus Ver.2(東洋紡)を用いたnested PCRによってMKのタンパク質コード領域全長を含むcDNAを増幅した。1
st PCRは[98℃ 20秒、57℃ 20秒、68℃ 45秒]を25サイクル、2
nd PCRは[98℃ 15秒、58℃ 15秒、68℃ 45秒]を30サイクルの条件で増幅した。2
nd PCRの増幅産物をクローニングベクターpT7Blue T−Vector(Novagen)にクローニングし、塩基配列を確認した。塩基配列の確認は、オートシークエンサー(アプライドバイオシステム)を用いた。クローニングしたcDNAはヒトMKの配列と一致していたため、hMK−pT7と名づけた。
1
st PCR
5’プライマー:5’−GAGTCGCCTCTTAGCGGATGC−3’(配列番号:85)
3’プライマー:5’−GCTCCTTGGCATCCAGGCTTG−3’(配列番号:86)
2
nd PCR
5’プライマー:5’−CGGATGCAGCACCGAGGCTTC−3’(配列番号:87)
3’プライマー:5’−GGCTTGGCGTCTAGTCCTTTCC−3’(配列番号:88)
【0059】
同様に、マウスMKのタンパク質コード領域全長を含むcDNAを増幅した。鋳型にはマウス胎児内臓組織由来cDNAを用いた。プライマーはマウスMKのcDNA配列(NM_001012336)に基づいて設計した。クローニングしたcDNAはマウスMKの配列と一致していたため、mMK−pT7と名づけた。
1
st PCR
5’プライマー:5’−AAGCATCGAGCAGTGAGCGAGATG−3’(配列番号:89)
3’プライマー:5’−AACAAGTATCAGGGTGGGGAGAAC−3’(配列番号:90)
2
nd PCR
5’プライマー:5’−GATGCAGCACCGAGGCTTCTTC−3’(配列番号:91)
3’プライマー:5’−TATGGGGAGGCTCACTTTCCAG−3’(配列番号:92)
【0060】
(実施例2)MKを分泌発現する細胞の作製
ヒトMKのaa1−aa121(MKver10)若しくはaa57−aa121(MKver50)部分、又はマウスMKのaa1−aa119(mMK)を発現する動物細胞は、以下のように作製した。
【0061】
hMK−pT7又はmMK−pT7を鋳型として、下記のプライマーによりPCRで増幅させたMK部分長断片の末端をNotIとBamHIで切断し、動物細胞用発現ベクターのNotI−BamHIサイトに挿入した。動物細胞用の発現ベクターには、CMVプロモーターで制御され、IRES配列により目的遺伝子とPuromycin−EGFP融合タンパク質が同時に発現されるpQCxmhIPGを用いた。PQCxmhIPGは、発明者らが「BD Retro−X Q Vectors」(Clontech)のpQCXIP Retroviral Vectorを改変したベクターである。作製したベクターは、MKver10−pQCxmhIPG、MKver50−pQCxmhIPG、mMK−pQCxmhIPGと名付けた。
MKver10
5’プライマー:5’−aata
GCGGCCGCACCATGCAGCACCGAGGCTTCCTC−3’)(配列番号:93、下線部はNotI認識配列)
3’プライマー:5’−cg
GGATCCGTCCTTTCCCTTCCCTTTCTTG−3’)(配列番号:94、下線部はBamHI認識配列)
MKver50
5’プライマー:5’−aata
GCGGCCGCGGAGTTTGGAGCCGACTGC−3’)(配列番号:95、下線部はNotI認識配列)
3’プライマー:5’−cg
GGATCCGTCCTTTCCCTTCCCTTTCTTG−3’)(配列番号:96、下線部はBamHI認識配列)
mMK
5’プライマー:5’−aata
GCGGCCGCACCATGCAGCACCGAGGCTTCTTC−3’)(配列番号:97、下線部はNotI認識配列)
3’プライマー:5’−cg
GGATCCGTCCTTTCCTTTTCCTTTCTTGGC−3’)(配列番号:98、下線部はBamHI認識配列)
【0062】
MK分泌発現細胞株を、Pantropic Retroviral Expression System(Clontech:K1063−1)を用いて作製した。Collagen−coated 100mm dishに80〜90%コンフルエント状態のGP2−293(Clontech:K1063−1)を準備し、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、上で構築した発現ベクター(MKver10−pQCxmhIPG、MKver50−pQCxmhIPG、mMK−pQCxmhIPG)とpVSV−G(Clontech:K1063−1)を11.2ugずつ共導入した。48時間後、ウイルス粒子を含む上清を回収し、超遠心(18,000rpm、1.5時間、4℃)によってウイルス粒子を沈殿させ、その沈殿物を30uLのTNE(50mM Tris−HCl[pH=7.8]、130mM NaCl、1mM EDTA)で懸濁し、レトロウイルスベクター濃縮液を調製した。レトロウイルスベクター濃縮液5uLを、8ug/mLのHexadimethrine bromide(SIGMA:H−9268)を含んだ150uLのDMEM(SIGMA;D5796)−10%FBSで希釈し、ウイルス粒子含有培地を調製した。96穴のマイクロプレートに約40%コンフルエントの状態になるように準備した293Tの培地を、調整したウイルス粒子入りの培地に交換することにより、目的遺伝子を導入した。導入後、5ug/mLのPuromycin(SIGMA:P−8833)を含むDMEM(SIGMA:D5796)−10%FBSで拡大培養し、抗原発現株(MKver10/st293T、MKver50/st293T、mMK/st293T)を樹立した。
【0063】
(実施例3)MK精製タンパク質の調製(動物細胞由来リコンビナントタンパク質)
以上のように樹立した発現細胞株(MKver10/st293T、MKver50/st293T、mMK/st293T)を、CD293(Invitrogen)それぞれ1Lで培養した。培養上清を回収し、そこからTALON Purification Kit(Clontech:K1253−1)を用いてリコンビナントタンパク質((MKver10、MKver50、mMK)を精製し、SDS−PAGE及びウェスタンブロットにて精製タンパク質を確認した。プロテインアッセイキットII(BioRad:500−0002JA)を用いてタンパク質濃度を決定した。
【0064】
(実施例4)MKを発現する大腸菌の作製
ヒトMKのaa23−aa121(MKver60)及びaa57−aa121(MKver80)部分の大腸菌リコンビナントタンパク質は、以下のように作製した。hMK−pT7を鋳型として、下記のプライマーによりPCRで増幅させたMK部分長断片の末端を、BamHIとXhoIで切断し、pET28aのBamHI−XhoIサイトに挿入した大腸菌用発現ベクターを構築した。これを用いてBL21を形質転換し、MKver60/BL21及びMKver80/BL21と名付けた。
MKver60
5’プライマー:5’−cg
GGATCCAAAAAGAAAGATAAGGTGAAGAAG−3’)(配列番号:99、下線部はBamHI認識配列)
3’プライマー:5’−ccg
CTCGAGGTCCTTTCCCTTCCCTTTCTTG−3’)(配列番号:100、下線部はXhoI認識配列)
MKver80
5’プライマー:5’−cg
GGATCCGAGTTTGGAGCCGACTGCAAG−3’)(配列番号:101、下線部はBamHI認識配列)
3’プライマー:5’−ccg
CTCGAGGTCCTTTCCCTTCCCTTTCTTG−3’)(配列番号:102、下線部はXhoI認識配列)
【0065】
(実施例5)MK精製タンパク質の調製(大腸菌由来リコンビナントタンパク質)
以上のように樹立した大腸菌株MKver60/BL21及びMKver80/BL21を、それぞれ1Lのカナマイシン添加LB培地で培養し、1mMのIPTGで発現誘導を行った。リコンビナントタンパク質は、PBS可溶性画分からTALON Purification Kit(Clontech;K1253−1)を用いて精製した。SDS−PAGE及びウェスタンブロットにて精製タンパク質を確認した。プロテインアッセイキットII(BioRad:500−0002JA)を用いてタンパク質濃度を決定した。
【0066】
(実施例6)抗原免疫
MKver10、MKver50、MKver60又はMKver80は同量のコンプリートアジュバント(SIGMA:F5881)と混合してエマルジョンにし、4〜5週齢のBalb/cマウス(日本エスエルシー)に1匹当たり5〜20ug、3〜7日おきに6回免疫した。最終免疫の3日後にマウスからリンパ球細胞を摘出し、マウス骨髄腫細胞P3U1(P3−X63Ag8U1)と融合させた。
【0067】
(実施例7)細胞融合
細胞融合は次に示す一般的な方法を基本として行った。全ての培地中のFBSは、56℃で30分間保温する処理によって非働化したものを使用した。P3U1は、RPMI1640−10%FBS(Penicillin−Streptomycin含有)で培養して準備した。摘出したマウスリンパ球細胞とP3U1を10:1〜2:1の割合で混合し、遠心した。沈殿した細胞に50%ポリエチレングリコール4000(Merck:1.09727.0100)を徐々に加えながら穏やかに混合後、遠心した。沈殿した融合細胞を、15%FBSを含むHAT培地(RPMI1640、HAT−supplement(Invitrogen:11067−030)、Penicillin−Streptomycin)で適宜希釈し、96穴のマイクロプレートに200uL/ウェルで播種した。融合細胞をCO
2インキュベータ(5%CO
2、37℃)中で培養し、コロニーが形成されたところで培養上清をサンプリングし、下記のようにスクリーニングを行った。
【0068】
(実施例8)抗MKモノクローナル抗体産生細胞の選択
抗MK抗体を産生するハイブリドーマは、酵素免疫測定法(ELISA)によって選定した。アッセイには先述のリコンビナントヒトMK(MKver10)を96ウェルのELISAプレート(nunc)に0.5ug/mL、50uL/ウェルで分注し、室温2時間又は4℃一晩静置して吸着させたものを用いた。溶液を除去後、1% BSA(ナカライ:01863−35)−5% Sucrose(WAKO)−PBSを150uL/ウェル加え、室温で2時間静置し、残存する活性基をブロックした。静置後、溶液を除去し、一次抗体としてハイブリドーマ培養上清を50uL/ウェル分注し、1時間静置した。該プレートを0.05% Tween20−PBSで洗浄後、二次抗体として10000倍希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG(MBL:330)を50uL/ウェル加えて室温で1時間静置した。該プレートを0.05% Tween20−PBSで洗浄後、発色液(5mMクエン酸ナトリウム、0.8mM 3.3’.5.5’テトラメチルベンチジン−2HCl、10%N,N−ジメチルホルムアミド、0.625%ポリエチレングリコール4000、5mMクエン酸一水和物、5mM H
2O
2)を50uL/ウェル添加し室温20分静置して発色させ、1Mリン酸を50uL/ウェル添加して発色を停止させたのち、450nmの吸光度をプレートリーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて測定した。
【0069】
ここで選択した細胞は、15%FBSを含むHT培地(RPMI1640、HT−supplement(Invitrogen:21060−017)、Penicillin−Streptomycin)で拡大培養した後、限界希釈法によって単クローン化した。
【0070】
このようにして、抗MK抗体を産生するハイブリドーマを計48取得した(MKver10を免疫原として5クローン、ver50を免疫原として4クローン、ver60を免疫原として31クローン、ver80を免疫原として8クローン)。
【0071】
(実施例9)取得抗体のMKに対する反応性
各ハイブリドーマクローンの培養上清から、Protein A−Sepharoseを用いた一般的なアフィニティー精製法により抗体を精製した。これら抗体のヒトMKに対する反応性は、前記したのと同様に、酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。一次抗体として、抗MK抗体を5ug/mLを最大濃度としてPBSで段階希釈したものを用いた。結果、すべての抗体が濃度依存的にリコンビナントヒトMKに反応することを確認した(
図1〜4)。
【0072】
さらに、ペプチド合成によって作製されたMK(ペプチド研究所:4298−v)に反応することも、同様のELISAによって確認した。これにより、得た抗体はリコンビナントタンパク質のタグ部分やリンカー部分ではなくMKを認識するものであることを確認した。さらに、MKのC末側精製ペプチド(aa60−aa121)(ペプチド研究所:4299−s)への反応性もELISAによって評価した。これらのアッセイには、MKの全長又はC末側の精製ペプチド(ペプチド研究所:4298−v又は4299−s)をELISAプレート(nunc)に0.5ug/mL、50uL/ウェルで分注し、4℃一晩静置して吸着させたものを用いた。一次抗体として抗MK抗体をPBSで5ug/mLに調製したものを用いた。その結果、取得抗体のうち25抗体は全長とC末側に同程度の反応性を示したためC末側部位を認識する抗体であり、他の23抗体はMKのN末側部位を認識する抗体であると判断した(
図5)。なお、図の左から、K40からK98までの5クローン、FB53からFB74までの4クローン、5F20からBF2−461までの31クローン、FB29からFb6−13までの8クローンが、MKver10、ver50、ver60、ver80を免疫原として取得した抗体である。
【0073】
一方、MKと同じファミリーに属する唯一の因子であるPleiotrophinに対する反応性を、同様のELISAによって評価した。これには、Pleiotrophinの全長精製ペプチド(ペプチド研究所:4335−v)を用いた。取得抗体はすべて反応性を示さなかったため、MKを特異的に認識すると判断した。
【0074】
(実施例10)AP標識MKを発現する発現ベクターの作製
取得した抗MK抗体がMK中和活性を有するか否かを、MKが細胞表面の受容体に結合するのを阻害させることで評価した(AP−MK結合阻害アッセイ)。MKのaa23−121のN末端にアルカリフォスファターゼ(AP)を融合させた組み換えタンパク質(AP−MK)は以下のように作製した。
【0075】
下記のプライマーによりPCRで増幅させたMK cDNAの末端を、XhoIとXbaIで切断し、pAPtag−5 vector(GenHunter、QV5)のXhoI−XbaIサイトに挿入した発現ベクターを構築した。これをMK−APtag5と名付けた。
forwardプライマー:5'−
CTCGAGAAAAAGAAAGATAAGGTG−3' (配列番号:103、下線部はXhoI認識配列)
reverseプライマー:5'−
TCTAGACTAGTCCTTTCCCTTCCC−3' (配列番号:104、下線部はXbaI認識配列)
【0076】
(実施例11)AP標識MKとAPの作製
Collagen Iでコートした100mm dishに、293Tを2.0x10
6細胞播種した。24時間後に、培地を1% Insulin−Transferrin−Selenium−A(GIBCO:51300−044)を1%の濃度に添加した OPTI−MEM I(GIBCO:31985)10mlに交換した。エッペンチューブにOPTI−MEM I 600uLとFuGENE6(Roche:1815091)15uLを入れて混和し、室温で5分静置したのち、発現ベクター(MK−APtag5又はpAPtag−5)を7.5ug加えて混和し、さらに15分静置した。これを293T細胞の培地に加え、37℃で5日間培養した。培地をタンパク低結合性のプロテオセーブSS(住友ベークライト:MS−52150)に回収し、1500rpmで5分遠心したのち、上清を0.22umのフィルターに通した。回収した溶液中のAP−MK又はAPの活性は、以下のように測定した。
【0077】
培養上清2uLにMilliQ水48uLとAP assay reagent A(GenHunter:Q501)を50uL加え、37℃で10分静置して発色させた。0.5N NaOHを100uL加えて発色を停止し、MilliQ水を800uL加えたのち、405nmの吸光度をShimadzu UV 160 Spectrophotometerを用いて測定した。測定した吸光度からAP活性を算出した。これには次の公式を使用した。
AP活性[U/ml]=(OD405x54)/(反応時間[分]x液量[ul])。
【0078】
(実施例12)AP−MK結合阻害アッセイ
Collagen Iでコートした6wellプレートに、TNB1細胞を1.0x10
5細胞播種した。24時間後に培地を除去し、HBHA(0.5mg/mL BSA−20mM HEPES(pH7.8)−HBSS(GIBCO:14175))で1回洗浄し、OPTI−MEMで0.6U/mlとなるように希釈したAP−MK又はAPを1ウェルあたり1mL添加し、室温で90分静置した。このとき、AP−MK結合阻害活性を評価する抗MK抗体又はコントロール抗体を90ug/mLになるように添加した。
【0079】
HBHAで5回洗浄した後、Cell Lysis Buffer(GenHunter:Q504)を1ウェルあたり200uL添加して細胞を溶解し、細胞抽出液として回収した。これを遠心(4℃、15000rpm、2分)して分離した上清を65℃で10分間処理した後、50uLを分取し、AP assay reagent A(GenHunter:Q501)を50uL加え、37℃で30分静置して発色させた。0.5N NaOHを100uL加えて発色を停止し、MilliQ水を800uL加えたのち、405nmの吸光度をShimadzu UV 160 Spectrophotometerを用いて測定した。測定した吸光度から、上記した計算式を用いてAP活性を算出した。さらに、AP−MKのみを添加したウェルでのAP活性を100%として、各ウェルにおけるAP活性を相対値で表示した。
【0080】
結果の一部を
図6に示す。各アッセイは3ウェルずつ行い、その平均値とエラーバーを示している。AP−MKのみを添加したウェルと比較して、FB53、FB54、FB72を添加したウェルでは、AP活性が75.5%、29.5%、61.4%にそれぞれ低下していた。FB53、FB54、FB72以外の抗MK抗体及びコントロール抗体を添加したウェルでは、AP活性の低下がみられなかった。したがって、取得した抗MK抗体のうち、FB53、FB54、FB72の3抗体が、AP−MKが受容体に結合するのを阻害する活性を有することがわかった。また、
図6に示すように、これら3抗体のうち、FB54が最も強くAP−MKが受容体に結合するのを阻害する活性を有することが明らかになった。
【0081】
(実施例13)変異体MKを分泌発現する細胞の作製
変異体MK(MK−W69A、−K79Q、−R81Q、−K102Q)を発現する動物細胞は、以下のように作製した。
【0082】
MKver10−pQCxmhIPGを鋳型として、下記のプライマーペアによりそれぞれ5’断片と3’断片をPCRで増幅させた。各増幅産物を等量程度混合し、5’断片と3’断片の融合用プライマーペアを用いたPCRによって融合した。増幅断片の末端をNotIとBamHIで切断し、動物細胞用発現ベクターのNotI−BamHIサイトに挿入した。動物細胞用の発現ベクターには、上記したpQCxmhIPGを用いた。作製したベクターは、MK−W69A−pQCxmhIPG、MK−K79Q−pQCxmhIPG、MK−R81Q−pQCxmhIPG、MK−K102Q−pQCxmhIPGと名付けた。
【0083】
W69A
5’断片用:
5’−GAGACGCCATCCACGCTGTTTTG−3’(配列番号:105)
及び5’−CACGCACCC
GCGTTCTCAAAC−3’(配列番号:106)
3’断片用:
5’−GTTTGAGAAC
GCGGGTGCGTG−3’(配列番号:107)
及び5’−GAGGGGCGGATAAACTCAATGGTG−3’(配列番号:108)
K79Q
5’断片用:
5’−GAGACGCCATCCACGCTGTTTTG−3’(配列番号:105)
及び5’−CTTGGCGGACTT
GGGTGCCTG−3’(配列番号:109)
3’断片用:
5’−CAGGCACC
CAAGTCCGCCAAG−3’(配列番号:110)
及び5’−GAGGGGCGGATAAACTCAATGGTG−3’(配列番号:108)
R81Q
5’断片用:
5’−GAGACGCCATCCACGCTGTTTTG−3’(配列番号:105)
及び5’−GGTGCCTTG
CTGGACTTTGGTG−3’(配列番号:111)
3’断片用:
5’−CACCAAAGTCC
AGCAAGGCACC−3’(配列番号:112)
及び5’−GAGGGGCGGATAAACTCAATGGTG−3’(配列番号:108)
K102Q
5’断片用:
5’−GAGACGCCATCCACGCTGTTTTG−3’(配列番号:105)
及び5’−CAGGGCT
GGGTGACGCGGATG−3’(配列番号:113)
3’断片用:
5’−CATCCGCGTCACC
CAGCCCTG−3’(配列番号:114)
及び5’−GAGGGGCGGATAAACTCAATGGTG−3’(配列番号:108)
5’断片と3’断片の融合
5’−GAGACGCCATCCACGCTGTTTTG−3’(配列番号:105)及び5’−GAGGGGCGGATAAACTCAATGGTG−3’(配列番号:108)
下線を付した塩基によって、アミノ酸を置換した。また5’−GAGACGCCATCCACGCTGTTTTG−3’(配列番号:105)及び5’−GAGGGGCGGATAAACTCAATGGTG−3’(配列番号:108)は、発現ベクターのMKコード領域外に相当する配列である。
【0084】
このように作製した発現ベクターを用いて、上記方法と同様の方法で、各変異体MKを分泌発現する細胞株を樹立した(MK−W69A/st293T、MK−K79Q/st293T、MK−R81Q/st293T、MK−K102Q/st293T)。
【0085】
(実施例14)変異体MK精製タンパク質の調製
樹立した発現細胞株を、CD293(Invitrogen)それぞれ500mLで培養した。培養上清を回収し、上記したのと同様の方法で変異体MKリコンビナントタンパク質(MK−W69A、MK−K79Q、MK−R81Q及びMK−K102Q)を精製した。
【0086】
(実施例15)取得抗体の変異体MKに対する反応性
以上のように得た抗体の変異体MKに対する反応性は、前記と同様の酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。アッセイには野生型ヒトMK(MKver10)又は上で記載した変異体MK(MK−W69A、MK−K79Q、MK−R81Q及びMK−K102Q)を吸着させたプレートを用いた。一次抗体として抗MK抗体を5ug/mLを最大濃度としてPBSで段階希釈したものを用いた。また、ミッドカインのN末側、C末側を認識する抗体で中和活性を示さなかった抗体の例として、それぞれ、BF106とFB74とについても同様に評価した。
【0087】
結果の一部を
図7に示す。中和活性を示したFB53、FB54、FB72の3抗体は、変異体MKに対する反応性が野生型のMKに対する反応性より低下した。中和活性を示さなかった他の抗MK抗体では、変異体MKに対して、野生型のMKと同様に反応した。
【0088】
(実施例16)FB54抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の単離、並びにCDRの同定
ハイブリドーマを培養し、一般的な方法によりtotal RNAを抽出した。次に、GeneRacerキット(Invitrogen)を用いた5’−RACE法により、cDNAを取得した。このcDNAを鋳型とし、GeneRacer 5’Primer(5’−CGACTGGAGCACGAGGACACTGA−3’(配列番号:115))とCH1(mouse IgG1 constant領域1)3’Primer(5’−AATTTTCTTGTCCACCTGG−3’(配列番号:116))を用いてPlutinum Taq High Fidelity(Invitrogen)でPCR(サイクル[94℃ 30秒、57℃ 30秒、72℃ 50秒]を35サイクル)を実施し、抗体重鎖可変領域の遺伝子(cDNA)を増幅した。一方、抗体軽鎖についても同様にGeneRacer 5’PrimerとCk(κconstant領域)3’Primer(5’−CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCT−3’(配列番号:117))を用いてPCRを実施して、遺伝子(cDNA)を増幅した。増幅した重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の遺伝子断片をそれぞれpT7Blue T−Vector(Novagen)にクローニングし、オートシークエンサー(アプライドバイオシステム)を用いて配列を解析した。その結果得られた塩基配列がコードするアミノ酸、及び各CDRの配列を決定した。得られた結果は以下の通りである。
【0089】
<FB54重鎖可変領域>
EVMLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSSYAMSWVRQTPEKRLEWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLRSEDTAMYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:8)
FB54重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:4)
FB54重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:5)
FB54重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYAMDY(配列番号:6)
<FB54軽鎖可変領域>
ETTVTQSPTSLSMAIGEKVTIRCITSTDIDDEMNWYQQKPGEPPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFVFTIENMLSEDVADYYCLQSDNLPYTFGGGTKLEIK(配列番号:7)
FB54軽鎖可変領域のCDR1
ITSTDIDDEMN(配列番号:1)
FB54軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:2)
FB54軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:3)
【0090】
(実施例17)FB54キメラ化抗体の作製
決定した遺伝子配列をもとに以下に示すPCR増幅用プライマーを設計し、2ラウンドのPCRによって抗体可変領域を増幅した。この際、分泌シグナル配列はロンザ社推奨の配列に変換し、また増幅断片の末端に制限酵素認識配列を付加した(重鎖可変領域はHindIII認識配列及びBamHI認識配列、軽鎖可変領域はHindIII及びBsiWI認識配列を付加)。
重鎖用1
st PCR
HC−signal−1:5’−GTTCTTTCTGTCCGTGACCACAGGCGTGCATTCTGAAGTGATGCTGGTGGAGTCTGG−3’(配列番号:118)
HC−reverse:5’−atata
CTCGAGACGGTGACTGAGG−3’(配列番号:119、下線部はBamHI認識配列)
重鎖用2
nd PCR
HC−signal−2:5’−atata
AAGCTTACCATGGAATGGAGCTGGGTGTTCCTGTTCTTTCTGTCCGTGACCACAGGCGTGC−3’(配列番号:120、下線部はHindIII認識配列)
HC−reverse:5’−atata
CTCGAGACGGTGACTGAGG−3’(配列番号:119、下線部はBamHI認識配列)
軽鎖用1
st PCR
LC−signal−1:5’−GGGACTGCTGCTGCTGTGGCTGACAGACGCCCGCTGTGAAACAACTGTGACCCAGTCTCC−3’(配列番号:121)
LC−reverse:5’−atata
CGTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCC−3’(配列番号:122、下線部はBsiWI認識配列)
軽鎖用2
nd PCR
LC−signal−2:5’−atata
AAGCTTACCATGTCTGTGCCTACCCAGGTGCTGGGACTGCTGCTGCTGTGGCTGACAGACGCC−3’(配列番号:123、下線部はHindIII認識配列)
LC−reverse:5’−atata
CGTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCC−3’(配列番号:122、下線部はBsiWI認識配列)。
【0091】
得られたPCR産物を上記の制限酵素で切断し、常法により、ヒトIgG1の定常領域を組み込んだロンザ社のヒトIgG1抗体産生用ベクターに挿入した(FB54−chHとFB54−chK)。ロンザ社推奨プロトコルに基づいてキメラ抗体産生細胞株を樹立し、その培養上清からProteinAを用いてキメラ化FB54抗体を精製した。以下chFB54と記載する。
【0092】
(実施例18)FB54キメラ化抗体の反応性評価
chFB54のヒトMKに対する反応性は、酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。アッセイは前述と同様に行った。一次抗体として、chFB54又はコントロールとしてマウスFB54抗体を、5ug/mLを最大濃度としてPBSで段階希釈したものを用いた。二次抗体として、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG(MBL:206)又はHRP標識ヤギ抗マウスIgG(MBL:330)を用いた。その結果、chFB54はもとのマウス抗体FB54と同等の結合活性を示した(
図8)。
【0093】
(実施例19)FB54ヒト型化抗体の作製
CDR−grafting法に従い、ヒトフレームワーク(以下、FR1からFR4領域、全体合わせてFR領域)を選択し、マウスモノクローナル抗体FB54のCDRに置き換えた。具体的には重鎖FR領域、軽鎖FR領域に分けてホモロジー検索を行った結果、FB54重鎖はヒト抗体のAccession number AF471493のFR領域と高い相同性を持つことが分かった。FR領域の相同性は73/87=83.9%であった。このAF471493のFR領域に適切にFB54重鎖のCDR1〜CDR3が移植されるように、ヒト型化抗体重鎖可変領域を設計した。以下、このヒト型化抗体重鎖をFB54−rHaと表記する。同様に、FB54抗体軽鎖はヒト抗体のAccession number X70463のFR領域と高い相同性を持つことが分かった。FR領域の相同性は55/80=68.8%であった。このX70463のFR領域に適切にFB54軽鎖のCDR1〜CDR3が移植されるように、ヒト型化抗体軽鎖可変領域を設計した。以下、このヒト型化抗体軽鎖をFB54−rKaとも表記する。
【0094】
軽鎖については、さらに、FR領域のVCI部位をマウス生殖系列で使用されているアミノ酸に変換したもの、加えてCDRから5Å以内の距離にあるアミノ酸もマウス生殖系列で使用されているアミノ酸に変換したものをそれぞれ設計した。以下、これらをFB54−rKb、FB54−rKcとも表記する。
【0095】
<AF471493>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSLHSMSWVRQAPGKGLDWVAYITGSSNTIYYGDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCARGPISAANTFDLWGQGTLVTVSS(配列番号:124)
AF471493のFR1
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFS(配列番号:125)
AF471493のFR2
WVRQAPGKGLDWVA(配列番号:126)
AF471493のFR3
RFTISRDNAKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCAR(配列番号:127)
AF471493のFR4
WGQGTLVTVSS(配列番号:128)
<FB54−rHa(ヒト型化抗体重鎖可変領域 a version)>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:12)
<X70463>
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIGSFLHWYQQKPGKGPKLLISAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSFSTLYTFGQGTKLEIK(配列番号:129)
X70463のFR1
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号:130)
X70463のFR2
WYQQKPGKGPKLLIS(配列番号:131)
X70463のFR3
GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号:132)
X70463のFR4
FGQGTKLEIK(配列番号:133)
<FB54−rKa(ヒト型化抗体軽鎖可変領域 a version)>
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCITSTDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:9)
<FB54−rKb(ヒト型化抗体軽鎖可変領域 b version)>
DTQVTQSPSSLSASVGDRVTITCITSTDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:10)
<FB54−rKc(ヒト型化抗体軽鎖可変領域 c version)>
ETTVTQSPSSLSASVGDRVTIRCITSTDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:11)
【0096】
ヒト型化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子は、オリゴDNA合成によって作製した。この際、分泌シグナル配列はロンザ社推奨の配列になるようにし、また末端に制限酵素認識配列を付加した(重鎖はHindIII及びBamHIの認識配列、軽鎖はHindIII及びBsiWIの認識配列を付加)。制限酵素で切断したのち、ヒトIgG1定常領域がクローニングされたpEE6.4ベクター(Lonza)又はヒトκ鎖定常領域がクローニングされたpEE14.4ベクター(Lonza)へそれぞれ導入した。
【0097】
構築した重鎖及び軽鎖の発現ベクターを、FB54−rHaとFB54−rKa、FB54−rHaとFB54−rKb、及びFB54−rHaとFB54−rKcの組み合わせで、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用した常法により293T細胞に共導入した。コントロールとして、上で作製したキメラ抗体の発現ベクター(FB54−chHとFB54−chK)も導入した。
【0098】
遺伝子導入の48時間後に培養上清を回収し、IgG濃度を、Goat anti−human IgG antibody, Fcγ fragment−specific(Stratech Scientific)とGoat anti−human kappa light chain peroxidase conjugate(Sigma)を用いたサンドウィッチELISAによって市販の精製ヒトIgG(Cappel)の検量線から算出した。
【0099】
これらの培養上清を用いて、ヒトMKに対する反応性を酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。アッセイは前述と同様に行った。上記の培養上清をヒトIgG濃度が10ug/mLになるように調整し、これを一次抗体として用いた。二次抗体にはHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(MBL:206)を用いた。その結果、キメラ抗体(FB54−chH/FB54−chK)とヒト型化抗体(FB54−rHa/FB54−rKc)で同等の活性を確認でき、ヒト型化FB54抗体の設計が成功した(
図9)。以下、ヒト型化抗体(FB54−rHa/FB54−rKc)については、hFB54とも記載する。
【0100】
(実施例20)FB54ヒト型化抗体の反応性評価
次に、FB54−rHa、FB54−rKcそれぞれの発現ベクターをロンザ社のプロトコルに基づいて結合させ、CHOK1SV細胞に導入した。hFB54を高産生するCHOK1SV単クローン細胞株を樹立し、その培養上清からProteinAを用いて抗体を精製した。
【0101】
そして、得られたヒト型化抗体のヒトMKに対する反応性は、酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。アッセイは前述と同様に行った。一次抗体として、hFB54又はコントロールとしてchFB54抗体を、5ug/mLを最大濃度としてPBSで段階希釈したものを用いた。二次抗体として、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG(MBL:206)を用いた。その結果、hFB54はchFB54と同等の結合活性を示した(
図10)。
【0102】
(実施例21)マウスゼノグラフトを用いた抗腫瘍活性評価
hFB54の抗腫瘍活性を判定するため、マウスゼノグラフトを用いて評価を行った。ヒト神経芽腫細胞株TNB1(理研BRC:RCB0481)を、collagenase Type I(GIBCO:17100−017)を2mg/mLとなるようにCell Dissociation Buffer enzyme free PBS−based(Invitrogen:13151−014)に添加した溶液で、剥離した。洗浄後、RPMI1640培地(GIBCO)で5x10
7 cells/mLとなるように縣濁した。Matrigel(BD:354230)を等量加えて縣濁したのち、6週齢メスのヌードマウス(日本エスエルシー:BALB/c Slc−nu/nu)の右腹側部に200uLずつ皮下移植した。同日から、1mg/mLとなるように0.05%Tween20−PBSで希釈した抗体溶液又は0.05%Tween20−PBSを300uLずつ腹腔投与した(1群8匹)。投与は移植当日と8日目から1週間に2回、計7回行い、腫瘍が観察された時点からノギスで腫瘍径を測定した。腫瘍体積は以下の式により算出した。
【0103】
腫瘍体積(mm
3)=長径×短径
2×0.5
得られた結果を
図11に示す。hFB54投与群の腫瘍体積は、コントロール群と比較して、移植後29日で54%、33日で51%、36日で50%、41日で54%であった。このように、抗MK抗体hFB54は、腫瘍増大を有意に阻害した(P<0.05)。なお、生存率に関しては、コントロール群では、約90日後に全個体が死亡したのに対し、hFB54投与群では、100日後でも30%もの個体が生存しており、当該抗体の延命効果も確認された。したがって、抗MK抗体hFB54は、初期癌モデルにおいて抗腫瘍効果を有することが明らかになった。
【0104】
(実施例22)FB54のin vitroアフィニティーマチュレーション(親和性向上)
(1) IgG抗体のFab抗体への変換
hFB54及びmFB54のIgG抗体発現ベクターを鋳型として、それぞれ重鎖と軽鎖の可変領域を、PCRによって増幅した。増幅産物をFab型抗体発現用ファージミドベクターにクローニングした。Fab抗体のMKへの反応性は、酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。
【0105】
(2) 抗体可変領域にランダムな変異を導入したFab抗体群(変異導入ライブラリー)の作製
Error−Prone PCRによって重鎖と軽鎖の可変領域に変異を導入し、上記と同様にFab型抗体発現用ファージミドベクターにクローニングした。これにより、抗体可変領域のみに様々な変異が導入された変異導入Fab抗体ファージ・ライブラリーを作製した。
【0106】
(3) 親和性が向上したクローンの濃縮(パニング)
(i)抗原(hFB54にはMKver10、mFB54にはmMK)をイムノチューブ(nunc)に固相化した。
(ii)変異導入Fab抗体ファージライブラリーを添加し、抗原に結合させた。
(iii)洗浄操作を行った後、抗原に結合している抗体ファージを回収し、大腸菌に感染させた(50ml培養液、37℃ 1hr振とう培養)。
(iv)ファージミドを保持した大腸菌を薬剤選択した(アンピシリン100ug/mlを添加した培養液600mlに(iii)の溶液を加え、30℃ 16hr振とう培養)。
(v)ヘルパーファージを感染させ、抗体ファージを産生させた。
(vi)抗体ファージを分離・濃縮した。
(vii)分離・濃縮された抗体ファージライブラリーを用いて、計3回(i)〜(vi)の工程を繰り返した。hFB54パニング及びmFB54パニングの条件は表1及び2に各々示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
(4) 親和性向上クローンの親和性評価(大腸菌培養上清を用いたELISA)
パニングを3回繰り返した後のライブラリー(hFB54:3.75×10
7クローン、mFB54:1.75×10
7クローン)から、Fab抗体ファージ感染大腸菌をそれぞれ94クローン単離した。それらの大腸菌クローンが培養液中に分泌したFab抗体のMKへの反応性を、酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。
【0110】
アッセイにはリコンビナントヒトMK(MKver10)又はマウスMK(mMK)を96ウェルのELISAプレート(nunc)に5ug/mL、100uL/ウェルで分注し、4℃一晩静置して吸着させたものを用いた。溶液を除去後、1% BSA−5% sucrose−0.05% NaN3−PBSを200uL/ウェル加え、4℃で一晩静置し、残存する活性基をブロックした。溶液を除去し、該プレートに一次抗体として大腸菌培養上清を100uL/ウェル分注し、37℃2時間静置した。該プレートをPBSで洗浄後、二次抗体として2000倍希釈したウサギ抗cp3抗体(MBL)を100uL/ウェル加えて37℃1時間静置した。該プレートをPBSで洗浄後、三次抗体として2500倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギ抗体(MBL:458)を100uL/ウェル加えて37℃1時間静置した。該プレートをPBSで洗浄後、OPD発色液を加えて発色させ、492nmの吸光度をプレートリーダーを用いて測定した。
【0111】
その結果、複数のクローンで、オリジナルのFab化抗体より強い反応性を確認した。hFB54由来のクローンについては吸光度が高いものから9クローン(hFB54−matu014,020,024,034,039,054,062,072,086)、mFB54由来のクローンについては同様に4クローン(mFB54−matu002,024,025,089)を選択した(
図12〜15)。
【0112】
(5) 親和性向上クローンの親和性評価(精製Fab抗体を用いたELISA)
前ステップで選択した計13クローン(hFB54由来9クローン、mFB54由来4クローン)及びオリジナル(hFB54、mFB54)のFab抗体を精製した。次いで、これらFab抗体のMKに対する反応性を、酵素免疫測定法(ELISA)によって評価した。アッセイは上記と同様に行った。ただし、抗原の固相には、抗原を2ug/mLに調整したものを用いた。Fab抗体は5ug/mLを最大濃度としてPBSで段階希釈したものを用いた。
【0113】
その結果、hFB54由来9クローンについては、7クローンについて、MKver10に対する反応性の向上を確認した(
図16)。mFB54由来4クローンについては、2クローンについて、mMKに対する反応性の向上を確認した(
図17)。
【0114】
以上より、ヒト型化FB54のFab化抗体をもとに、ヒトMKに対する反応性が向上したFab抗体を7クローン、マウスFB54のFab化抗体をもとに、マウスMKに対する反応性が向上したFab抗体を2クローン、得ることに成功した。
【0115】
(6) 親和性向上クローンの配列解析
前項で選択した計9クローンの抗体重鎖及び軽鎖の可変領域の配列を、オートシークエンサーを用いて解析した。得られた結果を
図18及び以下にて示す。
図18において、オリジナル抗体と同じアミノ酸残基は「−」で、異なる残基は置換されたアミノ酸で表示した。囲みはCDR領域であることを表す。
【0116】
また、
図18に示した結果から明らかなように、前記9クローンについてCDRの配列を確認したところ、全てのクローンについて、軽鎖可変領域CDR1の4位のアミノ酸がイソロイシンとなっていた。したがって、この部位のアミノ酸がイソロイシンに置換されていることが、前述の親和性向上等において重要であることが示唆された。
【0117】
<matu002重鎖可変領域>
EVMLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSSYAMSWVRQTPEKRLEWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLRSEDTAMYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:20)
matu002重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:16)
matu002重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:17)
matu002重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYAMDY(配列番号:18)
<matu002軽鎖可変領域>
ETTVTQSPTSLSMAIGEKVTIRCTTSIDIDDEMNWYQQMPGEPPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFVFTIENMLSEDVADYYCLQSDNLPYTFGGGTKLEIK(配列番号:19)
matu002軽鎖可変領域のCDR1
TTSIDIDDEMN(配列番号:13)
matu002軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:14)
matu002軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:15)
<matu089重鎖可変領域>
EVMLVESGGGLVEPGGSLKLSCTVSGFTFSSYAMSWVRQTPEKRLEWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLRSEDTAMYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGHGTSVTVSS(配列番号:28)
matu089重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:24)
matu089重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:25)
matu089重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYAMDY(配列番号:26)
<matu089軽鎖可変領域>
ETTVTQSPTSLSMAIGEKVTIRCITSIDIDDEMNWYQQKPGEPPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFVFTIENVLSEDVADYYCLQS DNLPYTFGGGTKLEIK(配列番号:27)
matu089軽鎖可変領域のCDR1
ITSIDIDDEMN(配列番号:21)
matu089軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:22)
matu089軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:23)
<matu014重鎖可変領域>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQTPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNVKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:36)
matu014重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:32)
matu014重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:33)
matu014重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYAMDY(配列番号:34)
<matu014軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLSASVGDRVTIRCITNIDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGRGTKLEIK(配列番号:35)
matu014軽鎖可変領域のCDR1
ITNIDIDDEMN(配列番号:29)
matu014軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:30)
matu014軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:31)
<matu020重鎖可変領域>
EVQLVESGGGLVKPGGYQRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNNLTDDDTAVYFCARHNYRYDEYYHAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:44)
matu020重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:40)
matu020重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:41)
matu020重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYHAMDY(配列番号:42)
<matu020軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLSASVGDRVTIRCITSIDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:43)
matu020軽鎖可変領域のCDR1
ITSIDIDDEMN(配列番号:37)
matu020軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:38)
matu020軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:39)
<matu024重鎖可変領域>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCARHNYRYGEYYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:52)
matu024重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:48)
matu024重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:49)
matu024重鎖可変領域のCDR3
HNYRYGEYYYAMDY(配列番号:50)
<matu024軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLSASVGDRVTIRCITSIDIDDEMNWYQQKSGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:51)
matu024軽鎖可変領域のCDR1
ITSIDIDDEMN(配列番号:45)
matu024軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:46)
matu024軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:47)
<matu039重鎖可変領域>
EVRLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKERFTISRDNAKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCARHNYRYDEYYYGMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:60)
matu039重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:56)
matu039重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKE(配列番号:57)
matu039重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYGMDY(配列番号:58)
<matu039軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLSASVGDRVTIRCKTSIDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLGIK(配列番号:59)
matu039軽鎖可変領域のCDR1
KTSIDIDDEMN(配列番号:53)
matu039軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:54)
matu039軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:55)
<matu054重鎖可変領域>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNTKNTLYLQMNSLTDDDTAVYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:68)
matu054重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:64)
matu054重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:65)
matu054重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYAMDY(配列番号:66)
<matu054軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLSASVGDRVTIRCITSIDIEDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:67)
matu054軽鎖可変領域のCDR1
ITSIDIEDEMN(配列番号:61)
matu054軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:62)
matu054軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:63)
<matu062重鎖可変領域>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDSVKGRFTISRDNAENTLYLQMNSLTNDDTAVYFCARHNYRYDEYYYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:76)
matu062重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:72)
matu062重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDSVKG(配列番号:73)
matu062重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYYAMDY(配列番号:74)
<matu062軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLSAFVGGRVAIRCITNIDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCMQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:75)
matu062軽鎖可変領域のCDR1
ITNIDIDDEMN(配列番号:69)
matu062軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:70)
matu062軽鎖可変領域のCDR3
MQSDNLPYT(配列番号:71)
<matu072重鎖可変領域>
EVQLVESGGGLVKPGGYLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLDWVATISSGGSYTYYPDNVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLTDDDTAVYFCARHNYRYDEYYHAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号:84)
matu072重鎖可変領域のCDR1
SYAMS(配列番号:80)
matu072重鎖可変領域のCDR2
TISSGGSYTYYPDNVKG(配列番号:81)
matu072重鎖可変領域のCDR3
HNYRYDEYYHAMDY(配列番号:82)
<matu072軽鎖可変領域>
ETTVTQSPSSLFASVGDKVTIRCITSIDIDDEMNWYQQKPGKGPKLLISEGNTLRPGVPSRFSSSGYGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQSDNLPYTFGQGTKLEIK(配列番号:83)
matu072軽鎖可変領域のCDR1
ITSIDIDDEMN(配列番号:77)
matu072軽鎖可変領域のCDR2
EGNTLRP(配列番号:78)
matu072軽鎖可変領域のCDR3
LQSDNLPYT(配列番号:79)。
【0118】
(7) Fab抗体のIgG抗体化
前項の計9クローンの親和性向上抗体(Fab)を、下記のようにしてヒトIgG1あるいはマウスIgG1に変換した。
【0119】
Fab抗体発現ベクターを鋳型として、下記のプライマーを用いたPCRによって抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を増幅した。重鎖、軽鎖とも、シグナルペプチド部分と可変領域部分を別々に増幅したあと、増幅産物を混合し、PCRによって連結させた。
【0120】
前述のキメラ抗体・ヒト型化抗体の作製と同様に、制限酵素で切断した後、ヒトIgG1又はマウスIgG1定常領域がクローニングされたpEE6.4ベクター(Lonza)、ヒトκ鎖又はマウスκ鎖の定常領域がクローニングされたpEE14.4ベクター(Lonza)へそれぞれ導入した。
【0121】
重鎖、軽鎖それぞれの発現ベクターはロンザ社のプロトコルに基づいて結合させ、CHOK1SV細胞に導入した。目的の抗体を高産生するCHOK1SV単クローン細胞株を樹立し、その培養上清からProteinAを用いて抗体を精製した。
【0122】
hFB54−matu014,020,024,054,062,072重鎖シグナルペプチド部分
VH_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGGAATGGAGCTGGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
hFB54VH_signal_R:5’−CCAGCTGCACCTCAGAATGCACGCCTGTGGTC−3’(配列番号:135)
hFB54−matu039重鎖シグナルペプチド部分
VH_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGGAATGGAGCTGGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
hFB54VH039_signal_R:5’−CCAGCcGCACCTCAGAATGCACGCCTGTGGTC−3’(配列番号:136)
mFB54−matu002,089重鎖シグナルペプチド部分
VH_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGGAATGGAGCTGGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
mFB54VH_signal_R:5’−CCAGCATCACTTCAGAATGCACGCCTGTGGTC−3’(配列番号:137)
hFB54−matu014,020,024,054,062,072重鎖可変領域部分
hFB54VH_F:5’−CGTGCATTCTGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCG−3’(配列番号:138)
hFB54VH_R_XhoI:5’−atata
CTCGAGACGGTGACCAGGG−3’(配列番号:139、下線部はXhoI認識配列)
hFB54−matu039重鎖可変領域部分
hFB54VH039_F:5’−CGTGCATTCTGAGGTGCGGCTGGTGGAGTCG−3’(配列番号:140)
hFB54VH_R_XhoI:5’−atata
CTCGAGACGGTGACCAGGG−3’(配列番号:139、下線部はXhoI認識配列)
mFB54−matu002,089重鎖可変領域部分
mFB54VH_F:5’−CGTGCATTCTGAAGTGATGCTGGTGGAGTCTGG−3’(配列番号:141)
HC−reverse:5’−atata
CTCGAGACGGTGACTGAGG−3’(配列番号:142、下線部はXhoI認識配列)
hFB54−matu014,020,024,039,054,062,072重鎖シグナルペプチド部分と可変領域部分の連結
VH_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGGAATGGAGCTGGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
hFB54VH_R_XhoI:5’−atata
CTCGAGACGGTGACCAGGG−3’(配列番号:139、下線部はXhoI認識配列)
mFB54−matu002,089重鎖シグナルペプチド部分と可変領域部分の連結
VH_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGGAATGGAGCTGGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
HC−reverse:5’−atata
CTCGAGACGGTGACTGAGG−3’(配列番号:142、下線部はXhoI認識配列)
hFB54−matu014,020,024,039,054,062,072、mFB54−matu002,089軽鎖シグナルペプチド部分
VK_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGTCTGTGCCTACCCAGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
mhFB54VK_signal_R:5’−CAGTTGTTTCACAGCGGGCGTCTGTCAGCC−3’(配列番号:143)
hFB54−matu014,020,024,054,062,072、mFB54−matu002,089軽鎖可変領域部分
mhFB54VK_F:5’−ACGCCCGCTGTGAAACAACTGTGACCC−3’(配列番号:144)
LC−reverse:5’−atata
CGTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCC−3’(配列番号:122、下線部はBsiWI認識配列)
hFB54−matu039軽鎖可変領域部分
mhFB54VK_F:5’−ACGCCCGCTGTGAAACAACTGTGACCC−3’(配列番号:143)
hFB54VK039_R_BsiWI:5’−atata
CGTACGTTTGATCCCCAGCTTGGTTCC−3’(配列番号:145、下線部はBsiWI認識配列)
hFB54−matu014,020,024,054,062,072、mFB54−matu002,089軽鎖シグナルペプチド部分と可変領域部分の連結
VK_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGTCTGTGCCTACCCAGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
LC−reverse:5’−atata
CGTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCC−3’(配列番号:122、下線部はBsiWI認識配列)
hFB54−matu039軽鎖シグナルペプチド部分と可変領域部分の連結
VK_signal_F_HindIII:5’−atata
AAGCTTACCATGTCTGTGCCTACCCAGG−3’(配列番号:134、下線部はHindIII認識配列)
hFB54VK039_R_BsiWI:5’−atata
CGTACGTTTGATCCCCAGCTTGGTTCC−3’(配列番号:145、下線部はBsiWI認識配列)
【0123】
(実施例23)FB54親和性向上抗体の反応性評価
取得した親和性向上抗体のMKに対する反応性は、酵素免疫測定法(ELISA)によって確認した。アッセイは前述と同様に行った。一次抗体として、親和性向上抗体(hFB54−matu014,020,024,039,054,062,072、mFB54−matu002,089)、コントロールとしてhFB54又はマウスFB54抗体を5ug/mLを最大濃度としてPBSで段階希釈したものを用いた。二次抗体としては、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG(MBL:206)又はHRP標識ヤギ抗マウスIgG(MBL:330)を用いた。
【0124】
その結果、親和性向上抗体すべてにおいて、ヒトMKとマウスMKの双方に対して反応性が向上していることを確認した(
図19、20)。
【0125】
(実施例24)AP−MK結合阻害アッセイ(FB54親和性向上抗体)
取得したFB54由来親和性向上抗体のMK中和活性を、前記アッセイと同様のAP−MK結合阻害アッセイで評価した。ただし、各抗体は10ug/mLとなるように添加した。得られた結果を
図21に示す。
【0126】
図21に示す通り、AP−MKのみを添加したウェルと比較して、ヒト型化FB54(hFB54)を添加したウェルでは、APの活性が81.8%に低下していた。FB54の親和性向上抗体を添加したウェルでは、mFB54−002、mFB54−089、hFB54−014、hFB54−020、hFB54−024、hFB54−039、hFB54−054、hFB54−062、hFB54−072で、それぞれAPの活性が18.9%、20.0%、25.6%、26.8%、22.7%、30.1%、33.5%、28.3%、33.0%に低下していた。コントロール抗体を添加したウェルでは、AP活性の低下がみられなかった。このことより、親和性向上抗体がオリジナルの抗体よりさらに強力な中和活性を有することが確かめられた。