【発明の効果】
【0010】
理解されるであろうが、本発明の実施の形態では、修飾成分含有触媒担体材料を100℃超で焼結する処理は行われないため、修飾触媒担体は非焼結の修飾成分含有触媒担体材料で構成されることになる。言い換えると、非焼結の修飾触媒担体が生成される。
本発明の別の実施の形態では、修飾成分含有触媒担体材料を100℃超で焼結する処理を行い、修飾触媒担体を焼結修飾触媒担体の形で提供する。
【0011】
本発明の第2の様態として、含浸液体媒体中で触媒担体材料を修飾成分前駆体に接触させて修正成分含有触媒担体材料を得る処理と、オプションとして、100℃を上回る温度で前記修飾成分含有触媒担体材料を焼結することで修飾触媒担体を得る処理と、(1) 前記触媒担体材料を前記修飾成分前駆体に接触させる処理以前の前記触媒担体材料と、(2) 前記修飾成分含有触媒担体材料と、(3)前記修飾触媒担体と、のうち少なくとも1つの上及び内部の一方又は両方に活性触媒成分の前駆体化合物を導入し、それによって触媒前駆体を得る処理と、を有し、前記含浸液体媒体は、水と前記修飾成分前駆体用の有機液体溶媒との混合物から成り、前記混合物は前記含浸液体媒体の総量に対して17容量%未満の水を含み、前記修飾成分前駆体は、Si、Zr、Co、Ti、Cu、Zn、Mn、Ba、Ni、Al、Fe、V、Hf、Th、Ce、Ta、W、La、そして、これらのうち2つ以上の混合物から成るグループから選択された修飾成分の化合物から成る、という触媒前駆体調製方法を提供する。
【0012】
理解されるであろうが、本発明の実施の形態では、修飾成分含有触媒担体材料を100℃超で焼結する処理は行われないため、修飾触媒担体は非焼結の修飾成分含有触媒担体材料で構成されることになる。言い換えると、非焼結の修飾触媒担体が生成される。
本発明の別の好適な実施の形態では、修飾成分含有触媒担体材料を100℃超で焼結する処理が行われ、修飾触媒担体は焼結修飾触媒担体の形で提供される。
【0013】
理解されるであろうが、活性触媒成分を、前駆体化合物を修飾触媒担体上、及び/又は、修飾触媒担体内に導入する際は、非焼結修飾触媒担体又は焼結修飾触媒担体の上及び/又は内部に導入する。活性触媒成分は、焼結修飾触媒担体上、及び/又は、焼結修飾触媒担体内に導入する方が好ましい。
含浸液体媒体
上述したように、本発明の含浸液体媒体は17容量%未満の水を含む。ただし、含浸液体媒体に含まれる水は、12容量%未満であることが好ましく、10容量%以下であることが好ましい。含浸液は少なくとも0.4容量%の水を含むことが好ましい。含浸液は、0.4容量%を上回る水、少なくとも2.5容量%の水、少なくとも3容量%の水を含むことが好ましい。
【0014】
有機液体溶媒は、酸素又は窒素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む液体有機化合物から成るものとすればよい。ヘテロ原子が酸素である場合、それは、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、グリコール、酸(有機酸を含む)、そして、これらのうち2つ以上の混合物から選択される酸素含有基の一部であってもよい。酸素含有液体有機化合物はアルコールとすることが好ましい。C1〜C10アルコールであることが好ましく、C1〜C3アルコールが好ましい。アルコールはOH基を1つ含むことが好ましい。アルコールはエタノールであることが好ましい。あるいは、酸素含有液体有機化合物は、酢酸エチルとアセトンとから成るグループから選択してもよい。ヘテロ原子が窒素である場合、窒素含有有機化合物はアセトニトリルとすればよい。有機液体溶媒は、有機化合物の混合物、好ましくは上述した有機化合物の混合物から成るものとすればよい。
【0015】
本発明の1つの実施の形態では、有機液体溶媒は極性溶媒とすればよい。本発明の1つの実施の形態では、有機液体溶媒の沸点は97℃以下であり、80℃以下とするのが好ましい。
触媒担体材料
修飾成分前駆体と接触させられる触媒担体材料は、焼結によって触媒担体に変換できる触媒担体前駆体と触媒担体とから成るグループから選択すればよい。
【0016】
触媒担体材料が触媒担体前駆体である場合、それは、焼結によって酸化物(好ましくは金属酸化物)の形の触媒担体に変換される化合物とすればよい。金属酸化物は、Al、Si、Ti、Mg、Zr、そしてZnから成るグループから選択された金属の酸化物とするのが好ましい。より具体的に言えば、触媒担体前駆体は、焼結によって1以上のアルミニウム酸化物に変換されるアルミニウム化合物から成るものとすればよい。アルミニウム化合物は、好ましくはAl(OH)
3であって、ギブサイト、バイヤーライト、AlO(OH)などがあるが、ベーマイトとするのが更に好ましい。触媒担体前駆体は、触媒担体前駆体上、及び/又は、触媒担体前駆体内に修飾成分前駆体が導入された後、そして、その焼結の前に、微粒子の形に成形される。こうした成形は、例えば噴霧乾燥を用いて行うことができる。成形に先だって、触媒担体前駆体を部分的に乾燥させてもよい。結果として得られる成形生成物は、その後、400℃を超える温度で焼結される。この焼結は、触媒前駆体化合物を成形生成物上、及び/又は、成形生成物内に導入する前に行うことが好ましい。必要な粒子径分布を達成するために、例えば、サイクロンセパレータ又はふるいを用いて、成形後の微粒子生成物の分級を行ってもよい。
【0017】
しかしながら、触媒担体材料は触媒担体であることが好ましい。そうして、触媒担体は、活性触媒成分又は当該活性触媒成分の前駆体化合物を担持するのに適した何らかの触媒担体とすればよい。触媒担体は、少なくとも水素及び炭素の一酸化物から炭化水素及び/又は炭化水素の酸素化物を合成するための触媒(特にフィッシャートロプシュ(FT)合成触媒)における担体として用いるのに適したものとするのが好ましい。FT合成触媒は、固定床反応器、懸濁床反応器、更には固定流動床反応器において実施されるプロセスに用いられる。当該プロセスは、三相懸濁床FT合成反応器において実施するのが好ましい。
【0018】
触媒担体は通常多孔質担体であり、更に、事前に成形されていることが好ましい。多孔質担体の孔径の平均は8〜50ナノメートルが好ましく、10〜15ナノメートルであれば更に好ましい。事前に成形された担体とは、微粒子担体であって、平均の粒子径が1〜500マイクロメートルであることが好ましい。10〜250マイクロメートルであればなお好ましく、より限定して言えば45〜200マイクロメートルである。
【0019】
触媒担体は、アルミニウム酸化物の形態のうち1以上を含むアルミナ、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、マグネシア(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、そして、これらの混合物である。担体は、アルミニウム酸化物の形態のうち1以上を含むアルミナと、チタニア(TiO
2)とからなるグループから選択するのが好ましい。担体は、アルミニウム酸化物の形態のうち1以上を含むアルミナとするのが更に好ましい。
【0020】
当該1以上のアルミニウム酸化物は、ガンマアルミナ、シータアルミナ、そして、それらのうち2以上の混合物を含むグループ(これらのみから成ることが好ましい)から選択すればよい。当該グループには、ガンマアルミナ、シータアルミナ、そして、ガンマアルミナとシータアルミナとの混合物が含まれる(これらのみから成ることが更に好ましい)。アルミニウム酸化物触媒担体は、SASOL Germany GmbHからPuraloxの商品名で入手可能なものとすればよい(Puralox SCCa 150が好ましい)。Puralox SCCa 150は、ガンマアルミニウム酸化物とシータアルミニウム酸化物との混合物から成る噴霧乾燥アルミニウム酸化物担体である。
【0021】
アルミニウム酸化物は、Al
2O
3.xH
2O(0<x<1)という式で表すことのできる結晶性化合物とすればよい。よって、用語「アルミニウム酸化物」からは、Al(OH)
3及びAlO(OH)は除外されるが、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、シータアルミナなどの化合物は含まれる。
修飾成分前駆体
修飾成分前駆体は修飾成分の無機化合物から成る。しかしながら、修飾成分前駆体は、修飾成分に結合された1又は複数の有機基を含むのが好ましい。有機基のうち1以上、好ましくは全てが、酸素原子を介して修飾成分に結合されていることが好ましい。修飾成分に結合された基が全て有機基であることが好ましく、前記有機基は全てが酸素原子を介して修飾成分に結合されていることが好ましい。
【0022】
本発明の好適な実施の形態では、一部の、好ましくは全ての有機基が、-(O)-R(Rは有機基)の式で表される。Rは、アシル、アリール、ヘテロアリール、環状化合物(複素環化合物を含む)、又はヒドロカルビル基とすればよく、ヒドロカルビル基の方が好ましい。また、アルキル基、10以下の炭素原子を有するアルキル基、3以下の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。それ以外に、Rは-OR
1の式で表されるものとしてもよい(R
1はヒドロカルビル基、好ましくはアルキル基、10以下の炭素原子を有するアルキル基、3以下の炭素原子を有するアルキル基)。
【0023】
修飾成分は、Si、Zr、Ti、Cu、Zn、Mn、Ba、Ni、Al、V、W、La、そして、これらのうち2つ以上の混合物から成るグループから選択すればよい。
修飾成分は、Si、Ti、Zrから成るグループから選択するのが好ましい。
本発明の好適な実施の形態における修飾成分はSiである。その場合、修飾成分前駆体は、有機シリコン化合物であって、Si(OR)
4(Rは有機基)の式で表されるものが好ましい。Rはアルキル基又はアシル基であることが好ましい。そうして、修飾成分前駆体は、テトラエトキシシラン(TEOS)又はテトラメトキシシラン(TMOS)であることが好ましい。
【0024】
本発明の別の実施の形態として、修飾成分をZrとすることもできる。その場合、修飾成分前駆体は有機ジルコニウム化合物であって、Zr(OR)
4(Rは有機基)の式で表されるものが好ましい。Rはアルキル基又はアシル基とするのが好ましい。修飾成分前駆体は、ジルコニウムアルコキシド、例えばジルコニウムイソプルコキシド(Zr(OCH(CH
3)
2)
4)とするのが好ましい。
【0025】
本発明の更に別の実施の形態では、修飾成分をTiとすることもできる。その場合、修飾成分前駆体は有機チタン化合物とし、Ti(OR)
4(Rは有機基)の式で表されるものとすることが好ましい。Rはアルキル基又はアシル基とするのが好ましい。修飾成分前駆体は、チタンアルコキシド、例えばチタンテトラブトキシドとするのが好ましい。
触媒担持材料の修飾成分前駆体との接触
含浸液体媒体中で触媒担材料を修飾成分前駆体に接触させると、それにより、修飾成分前駆体が、含浸によって、触媒担材料内、及び/又は、触媒担材料上に導入される。含浸は初期湿潤含浸でもよいが、懸濁相含浸が好ましい。
【0026】
含浸液体媒体による含浸は、25℃を上回る温度で実行するのが好ましい。温度は含浸液体媒体の沸点、あるいは、それに近い温度とすればよい。含浸は1分から20時間の期間で実行すればよいが、1分から5時間の期間とするのが好ましい。含浸は大気圧で行われる。
含浸後、余った含浸液体媒体は除去するが、これは、大気圧以下の条件(好ましくは、0.01〜0.1バール(a))で行うのが好ましい。除去は、25℃を上回る温度(好ましくは、含浸液体媒体の沸点、あるいは、それに近い温度)で実行するのが好ましい。
【0027】
含浸処理中は、充分な含浸液体媒体を用いることで、初期湿潤含浸のための条件、あるいは懸濁含浸のための条件を生じさせる。
触媒担体材料を含む修飾成分の焼結(オプション)
焼結を行う場合、焼結は100℃を上回る温度で行う。好ましくは150℃以上であって、450℃以上が好ましい。修飾成分がSiである場合、焼結は550℃を上回る温度では行わないことが好ましい。焼結時間は1分から12時間とすればよく、10分から4時間とするのが好ましい。
【0028】
焼結は非還元性ガスの中で行えばよいが、酸素含有ガス(空気が好ましい)の中で行うのが好ましい。
修飾成分前駆体は焼結の結果として分解されることが好ましい。または、修飾成分前駆体は、焼結中に修飾成分の酸化物に変換されることが好ましい。
活性触媒成分の前駆体化合物への導入
活性触媒成分は、炭化水素合成プロセス(FT合成プロセスが好ましい)について活性を有する既知の成分とすればよく、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、そしてルテニウム(Ru)から成るグループから選択すればよい。コバルト(Co)が好ましい。
【0029】
前駆体化合物は、活性触媒成分の何らかの適当な化合物とすればよい。無機化合物が好ましく、活性触媒成分の無機塩とすれば更に好ましい。触媒前駆体化合物は、コバルト硝酸塩とすればよく、具体的には、Co(NO
3)
2.6H
2Oとすればよい。
前駆体化合物の導入は、何らかの適当な方法で行えばよいが、含浸によって行うのが好ましい。修飾触媒担体又は触媒担体材料に触媒前駆体化合物を含浸させるやり方が好ましい。その際には、前駆体化合物、当該前駆体化合物用の液体キャリア、そして、修飾触媒担体又は触媒担体材料の混合物を形成する。
【0030】
液体キャリアは前駆体化合物の溶媒から成るものとすればよく、前駆体化合物が当該液体キャリアに溶解することが好ましい。液体キャリアは水であってもよい。
含浸は何らかの適当な含浸方法によって行えばよく、そうした方法としては、初期湿潤含浸又は懸濁相含浸があるが、懸濁相含浸の方が好ましい。前駆体化合物を液体キャリアに溶解させて得られる溶液の量は、xyリットルを上回ることが好ましい。当該溶液はその後、修飾触媒担体又は触媒担体材料と混合される。ここで、xは修飾触媒担体又は触媒担体材料のBET細孔容積であり(単位は担体1kgあたりのリットル数:l/kg担体)、yは含浸対象の修飾触媒担体又は触媒担体材料の質量である(単位:kg)。溶液の量は1.5xyリットルを上回ることが好ましく、約2xyリットルが好ましい。
【0031】
含浸は、大気圧よりも低い圧で実行すればよい。85kPa(a)が好ましく、20kPa(a)及びそれ未満が好ましい。また、含浸は25℃を上回る温度で実行される。含浸温度は40℃よりも高ければよく、60℃を上回ることが好ましいが、95℃は超えないことが望ましい。含浸に続いて、含浸後の担体の部分乾燥を行ってもよい。その場合の温度は25℃よりも高いことが好ましい。乾燥温度は40℃よりも高ければよい。60℃を上回ることが好ましいが、95℃は超えないことが望ましい。部分乾燥は大気圧よりも低い条件で行うことが好ましい。85kPa(a)を下回ることが好ましく、20kPa(a)以下が好ましい。
【0032】
本発明の1つの実施の形態では、修飾触媒担体または触媒担体材料の含浸及び部分乾燥は、以下のステップを含む手順を用いて実行される。第1のステップでは、修飾触媒担体又は触媒担体材料に、25℃を上回る温度で、大気圧よりも低い圧において前駆体化合物を含浸させ(懸濁含浸が好ましい)、その結果得られる生成物を乾燥させる。そして、後続の1以上のステップでは、上記第1のステップの結果である、部分乾燥された修飾触媒担体又は触媒担体材料を、25℃を上回る温度で、大気圧よりも低い圧において処理するが、ここで、後続ステップにおける温度が第1ステップの温度を超える、及び/又は、後続ステップにおける「大気圧よりも低い圧」が第1ステップにおける「大気圧よりも低い圧」よりも低くなるようにする。これら2つのステップから成る含浸手順は、特許文献6に記載されているものとすればよい。特許文献6は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0033】
更に、活性触媒成分の還元性を高めることのできるドーパントを、修飾触媒担体又は触媒担体材料の上及び/又は内部に導入してもよい。ドーパントの導入は、修飾触媒担体又は触媒担体材料の上及び/又は内部に触媒前駆体化合物を導入する処理の実行中又は実行後に行えばよい。ドーパントは、ドーパント化合物として導入してもよい。ドーパント化合物は金属の化合物とし、当該金属は、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、そして、これらのうち2以上の混合物を含むグループから選択される。ドーパント化合物は無機塩とするのが好ましく、水溶性であることが好ましい。ドーパント中の金属の活性触媒成分金属に対する質量比は、0.01:100から3:100とすればよい。
【0034】
上及び/又は内部に触媒前駆体化合物を含む、部分乾燥された触媒担体を焼結してもよい。焼結を行うのは、触媒前駆体化合物を分解するため、及び/又は、それを酸素と反応させるためである。例えば、コバルト硝酸塩は、CoO、CoO(OH)、Co
3O
4、Co
2O
3、又は、これらのうち2以上の混合物から選択される化合物に変換される。
焼結は、回転窯など、何らかの適当な手段で実行すればよいが、流動床反応器において実行するのが好ましい。
【0035】
焼結は不活性雰囲気内で実行してもよいが、酸素の存在する環境で実行するのが好ましい(空気中がより好ましい)。
焼結は、95℃を上回る温度で実行するのが好ましく、120℃を上回れば更に好ましく、200℃を上回ればなお一層好ましい。ただし、400℃を上回らないことが好ましく、300℃を上回らないことがなお好ましい。活性触媒成分がCoである場合は、特にそうである。
【0036】
焼結は、以下の基準に従った加熱速度及び空気空間速度で実行すればよい。
(i) 加熱速度が1℃/分以下である場合、空気空間速度は0.76m
n3/(kg Co(NO
3)
2.6H
2O)/時。
(ii) 加熱速度が1℃/分よりも高い場合、空気空間速度は以下の関係を満たすものとする。
【0037】
【数1】
【0038】
空気空間速度及び加熱速度に関する上記の条件は、特に、Coが活性触媒成分である場合に適用できる。
含浸、部分乾燥、焼結を繰り返すことで、触媒担体又は触媒担体材料が担持する触媒前駆体化合物の量を増やしてもよい。本発明の1つの実施の形態では、含浸、乾燥、焼結を行う最初の手順に続いて、焼結された材料を部分的に還元する手順が実施される。そして、部分的に還元された材料に対し、含浸、乾燥、焼結を行う手順が更に実施される。部分的に還元する手順は、特にCoが活性触媒成分である場合には、100℃から300℃の間の最終温度で実行される。
【0039】
本発明の1つの実施の形態では、触媒前駆体は、以下の方法で調製される。当該方法では、第1の調製ステップとして、液体キャリア中で、修飾触媒担体又は触媒担体材料に活性触媒成分の有機金属化合物を含浸させ、含浸後の担体又は担体材料を少なくとも部分的に乾燥させる。そして、含浸後に少なくとも部分的に乾燥された担体又は担体材料を焼結して、焼結中間物を得る。更に、第2の調製ステップとして、液体キャリア中で、第1の含浸ステップで得られた焼結中間体に活性触媒成分の無機金属塩を含浸させ、含浸後の担体を少なくとも部分的に乾燥させる。そして、含浸後に少なくとも部分的に乾燥させた担体を焼結して触媒前駆体を得る。有機金属化合物は、有機コバルト化合物とすればよい。
【0040】
触媒前駆体は、水性環境(酸性水性環境が好ましい)において溶解が抑制される。
触媒
本発明の第3の様態として、触媒調製方法を提供する。当該方法には、本発明の第2の様態による方法を用いて触媒前駆体を調製する処理と、触媒前駆体を還元することで活性化し、触媒を得る処理とが含まれる。触媒前駆体の還元処理は、還元ガスを用いた処理で触媒前駆体を活性化する手順を含むことが好ましい。還元ガスは、水素又は水素含有ガスとすることが好ましい。水素含有ガスは、水素と、活性触媒に関して不活性である1以上の不活性ガスとから成るものとすればよい。水素含有ガスは少なくとも90体積%の水素を含むことが好ましい。
【0041】
還元ガスは、何らかの適当なやり方で触媒前駆体と接触させる。触媒前駆体を床の形で用意して、当該粒子の床を通過するように還元ガスを流すやり方が好ましい。粒子の床は固定床としてもよいが、これを流動床として、触媒前駆体粒子の床に対して還元ガスを流動媒体として作用させることが好ましい。
還元は、0.6〜1.5バール(a)の圧力で実行すればよいが、0.8〜1.3バール(a)で実行するのが好ましい。あるいは、圧力を1.5バール(a)から20バール(a)としてもよい。ただし、圧力は気圧に近いことが好ましい。
【0042】
還元は25℃以上の温度で実行するのが好ましく、この温度は、触媒前駆体が活性を有する形に還元される際の温度を上回る。活性化は、150℃を上回る温度で実行するのが好ましいが、600℃は下回ることが好ましい(特に、触媒成分がコバルトである場合)。還元は、500℃を下回る温度、より好ましくは450℃を下回る温度で実行することが好ましい。
【0043】
活性化の実行中に温度が変化するが、上述した最高温度まで上昇させることが好ましい。
触媒床を通過する還元ガスの流れは、還元処理中に生じる汚染物質が充分に低いレベルに確実に維持されるように制御することが好ましい。還元ガスは再利用してもよいが、再利用する還元ガスについては、還元処理中に生じた1以上の汚染物質を除去する処理を施すのが好ましい。汚染物質は、水及びアンモニアのうち1以上から成る。
【0044】
活性化は、還元ガスの加熱速度及び空間速度の一方または両方が異なる、2以上のステップで実行すればよい。
本発明の1つの実施の形態では、活性触媒粒子と溶融有機物の形を取るコーティング媒体との混合物を導入することで、活性触媒にコーティングを施してもよい。溶融有機物の温度はT
1であり、より低い温度T
2(T
2<T
1)で定着又は凝結させて1以上の型(mould)とする。そして、型の少なくとも一部を冷却液に浸すことで、有機物の温度をT3まで下げる(T
3はT
2以下)。
【0045】
活性化処理中、水分圧は可能な限り低く保つことが好ましく、0.1気圧よりも低ければ更に好ましい。水素の空間速度は、触媒1グラムにつき2〜4リットル/時とすればよい。
炭化水素合成
本発明の第4の様態では、炭化水素合成プロセスを提供する。当該プロセスでは、本発明の第3の様態によるプロセスを用いて触媒を調製し、そうして調製された触媒に、100℃を超える温度、10バール以上の圧力で、一酸化炭素を伴う水素を接触させることで炭化水素を生成する。また、オプションとして、炭化水素の酸素化物を生成する。
【0046】
温度は、180℃から250℃であればよいが、210℃から240℃とするのが更に好ましい。圧力は、10バールから70バールとするのが更に好ましい。
炭化水素合成プロセスは、フィッシャートロプシュ法とするのが好ましく、3相フィッシャートロプシュ法とするのが更に好ましい。より一層好ましいのは、ワックス生成物を生成するための懸濁床フィッシャートロプシュ法である。
【0047】
炭化水素合成プロセスには更に、炭化水素(そして、オプションとして酸素化物)を液体燃料及び/又は化学製品に変換するための水素化処理ステップを含ませてもよい。
本発明の範囲は更に、本発明の第4の様態の炭化水素合成プロセスで生成される生成物にも及ぶ。
以下、本発明について、図面と非限定的な例とを参照しながら、より詳細に説明する。