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特許6248046生産データ作成システムおよび生産データ作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248046
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】生産データ作成システムおよび生産データ作成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20171204BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H05K13/04 B
   H05K13/04 Z
   H05K13/08 B
   H05K13/04 M
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-548398(P2014-548398)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】JP2012080371
(87)【国際公開番号】WO2014080502
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】小谷 一也
(72)【発明者】
【氏名】森上 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴紘
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−271096(JP,A)
【文献】 特開2012−216658(JP,A)
【文献】 特開2009−192282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対する電子部品の正規の装着位置を正規位置
基板の生産ラインにおける、リフロー前の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー前ズレ量、
該生産ラインにおける、リフロー後の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー後ズレ量、
該リフロー前ズレ量と、該リフロー後ズレ量と、の差をセルフアライメント量として、
該基板の生産時に、該基板ごとに、該セルフアライメント量と、該セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であるセルフアライメント条件と、を含むセルフアライメントデータを蓄積する記憶部と、
該セルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である該基板に装着予定の該電子部品に対して、該セルフアライメント量を予測し、該生産ラインに配置されるリフロー前基板外観検査機における、該正規位置に対する該電子部品の装着ズレ量に関する合否判定しきい値を設定する演算部と、
を備え、
該セルフアライメント条件は、はんだの厚み、該はんだの体積、該電子部品のサイズ、該基板のランドの面積、該ランドに対する該はんだの印刷ズレ量である生産データ作成システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記セルフアライメント量を考慮して予測される前記リフロー後ズレ量が許容ズレ量以下の場合は、前記セルフアライメント条件を補正せず、前記リフロー前基板外観検査機の前記合否判定しきい値を設定し、
該セルフアライメント量を考慮して予測される該リフロー後ズレ量が該許容ズレ量を超過する場合は、該セルフアライメント条件を補正し、該リフロー後ズレ量が該許容ズレ量以下になったら、該リフロー前基板外観検査機の該合否判定しきい値を設定する請求項1に記載の生産データ作成システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記セルフアライメント量が所定の装着基準しきい値以下の場合、前記基板に対する前記電子部品の装着を該基板のランドを基準に行うことを決定し、
該セルフアライメント量が該装着基準しきい値超過の場合、該基板に対する該電子部品の装着を該基板に印刷された前記はんだを基準に行うことを決定する請求項1または請求項2に記載の生産データ作成システム。
【請求項4】
基板に対する電子部品の正規の装着位置を正規位置
基板の生産ラインにおける、リフロー前の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー前ズレ量、
該生産ラインにおける、リフロー後の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー後ズレ量、
該リフロー前ズレ量と、該リフロー後ズレ量と、の差をセルフアライメント量として、
該基板の生産時に、該基板ごとに、該セルフアライメント量と、該セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であるセルフアライメント条件と、を含むセルフアライメントデータを蓄積するデータ蓄積工程と、
該セルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である該基板に装着予定の該電子部品に対して、該セルフアライメント量を予測し、該生産ラインに配置されるリフロー前基板外観検査機における、該正規位置に対する該電子部品の装着ズレ量に関する合否判定しきい値を設定する生産データ作成工程と、
を有し、
該セルフアライメント条件は、はんだの厚み、該はんだの体積、該電子部品のサイズ、該基板のランドの面積、該ランドに対する該はんだの印刷ズレ量である生産データ作成方法。
【請求項5】
前記生産データ作成工程において、前記セルフアライメント量を考慮して予測される前記リフロー後ズレ量が許容ズレ量以下の場合は、前記セルフアライメント条件を補正せず、前記リフロー前基板外観検査機の前記合否判定しきい値を設定し、
該セルフアライメント量を考慮して予測される該リフロー後ズレ量が該許容ズレ量を超過する場合は、該セルフアライメント条件を補正し、該リフロー後ズレ量が該許容ズレ量以下になったら、該リフロー前基板外観検査機の該合否判定しきい値を設定する請求項4に記載の生産データ作成方法。
【請求項6】
前記生産データ作成工程において、前記セルフアライメント量が所定の装着基準しきい値以下の場合、前記基板に対する前記電子部品の装着を該基板のランドを基準に行うことを決定し、
該セルフアライメント量が該装着基準しきい値超過の場合、該基板に対する該電子部品の装着を該基板に印刷された前記はんだを基準に行うことを決定する請求項4または請求項5に記載の生産データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の生産データを作成する際に用いられる生産データ作成システムおよび生産データ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板のランド(パッド)に対して、はんだがずれて印刷されている場合、リフロー中に、はんだの表面張力により、電子部品がランドの中心に引き寄せられる現象、つまりセルフアライメント現象が発生する。
【0003】
すなわち、リフロー中に溶融、液化したはんだは、ランドの中心に向かって流動する。このため、はんだに載っている電子部品も、はんだと共に流動する。セルフアライメント現象による電子部品の移動量は、ランドに対するはんだの印刷ズレ量が大きいほど、大きくなる。
【0004】
このように、ランドに対するはんだの印刷ズレ量が大きい場合は、リフローにより電子部品が正規位置(基板に対する電子部品の正規の装着位置)に接近しやすい。すなわち、セルフアライメント効果が期待できる。これに対して、ランドに対するはんだの印刷ズレ量が小さい場合は、リフローにより電子部品が正規位置に接近しにくい。すなわち、セルフアライメント効果が期待できない。
【0005】
このため、従来は、ランドに対するはんだの印刷ズレ量が小さい場合は、セルフアライメント効果が期待できないため、ランドを基準に電子部品を装着していた。一方、ランドに対するはんだの印刷ズレ量が大きい場合は、セルフアライメント効果を期待して、ランドではなく、はんだを基準に、電子部品を装着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−231782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セルフアライメント効果の大小は、ランドに対するはんだの印刷ズレ量だけに依存している訳ではない。例えば、電子部品のサイズ、ランドのサイズ、はんだの特性、印刷時のはんだの厚み、リフロー時の温度、リフロー時の炉内雰囲気など、様々な要因に、セルフアライメント効果の大小は依存している。このため、基板生産前に、任意の電子部品に対して、セルフアライメント効果を予測するのは困難である。
【0008】
従来は、セルフアライメント効果の予測は、作業者のスキルに依存せざるをえなかった。すなわち、作業者は、電子部品ごとに、様々な要因を考慮して、セルフアライメント効果を予測していた。そして、当該予測を基に、印刷検査機、リフロー前基板外観検査機などの合否判定しきい値を設定していた。また、当該予測を基に、電子部品の装着基準(ランド基準、はんだ基準)を決定していた。
【0009】
この点、特許文献1には、チップ状電子部品の評価方法が開示されている。同文献記載の評価方法によると、セルフアライメント現象を意図的に発生させることにより、はんだの濡れ性を評価することができる。同文献には、セルフアライメント効果の予測に関する記載はない。
【0010】
そこで、本発明は、電子部品に対するセルフアライメント効果を考慮した生産データを作成可能な生産データ作成システム、および生産データ作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明の生産データ作成システムは、基板に対する電子部品の正規の装着位置を正規位置、該基板の生産ラインにおける、リフロー前の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー前ズレ量、該生産ラインにおける、リフロー後の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー後ズレ量、該リフロー前ズレ量と、該リフロー後ズレ量と、の差をセルフアライメント量として、該基板の生産時に、該基板ごとに、該セルフアライメント量と、該セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であるセルフアライメント条件と、を含むセルフアライメントデータを蓄積する記憶部と、該セルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である該基板に装着予定の該電子部品に対して、該セルフアライメント量を予測し、該基板の生産データを作成する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の生産データ作成システムの記憶部は、基板の生産時に、基板ごとに、セルフアライメントデータを蓄積している。すなわち、任意の電子部品のセルフアライメント量と、セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であるセルフアライメント条件と、を含むセルフアライメントデータを、記憶部に蓄積している。
【0013】
また、本発明の生産データ作成システムの演算部は、記憶部に蓄積されたセルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である基板の電子部品のセルフアライメント量を予測している。そして、セルフアライメント量を考慮して、次回以降に生産する基板の生産データを作成している。
【0014】
本発明の生産データ作成システムによると、セルフアライメントデータを基に、セルフアライメント効果の予測を行うことができる。このため、作業者のスキルの熟練度によらず、生産される基板の品質を、安定化させることができる。並びに、基板の品質を向上させることができる。
【0015】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記演算部は、前記セルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である前記基板の前記生産ラインに配置される検査機の、合否判定しきい値を設定する構成とする方がよい。
【0016】
本構成によると、演算部が、例えば、印刷検査機におけるランドに対するはんだの印刷ズレ量に関する、合否判定しきい値を設定することができる。また、例えば、電子部品の装着基準がランド基準の場合、リフロー前基板外観検査機における正規位置に対する電子部品の装着ズレ量を設定することができる。また、電子部品の装着基準がはんだ基準の場合、リフロー前基板外観検査機におけるはんだ正規位置(はんだに対する電子部品の正規の装着位置)に対する電子部品の装着ズレ量を設定することができる。
【0017】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記演算部は、前記セルフアライメント量が所定の装着基準しきい値以下の場合、前記基板に対する前記電子部品の装着を該基板のランドを基準に行うことを決定し、該セルフアライメント量が該装着基準しきい値超過の場合、該基板に対する該電子部品の装着を該基板に印刷されたはんだを基準に行うことを決定する構成とする方がよい。
【0018】
本構成によると、セルフアライメント量が小さい場合、電子部品の装着基準を、ランド基準にすることができる。また、セルフアライメント量が大きい場合、電子部品の装着基準を、はんだ基準にすることができる。
【0019】
(4)上記課題を解決するため、本発明の生産データ作成方法は、基板に対する電子部品の正規の装着位置を正規位置、該基板の生産ラインにおける、リフロー前の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー前ズレ量、該生産ラインにおける、リフロー後の、該正規位置に対する、該電子部品の実際の装着位置のズレ量をリフロー後ズレ量、該リフロー前ズレ量と、該リフロー後ズレ量と、の差をセルフアライメント量として、該基板の生産時に、該基板ごとに、該セルフアライメント量と、該セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であるセルフアライメント条件と、を含むセルフアライメントデータを蓄積するデータ蓄積工程と、該セルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である該基板に装着予定の該電子部品に対して、該セルフアライメント量を予測し、該基板の生産データを作成する生産データ作成工程と、を有することを特徴とする。上記(1)の構成と同様に、本発明の生産データ作成方法によると、セルフアライメントデータを基に、セルフアライメント効果の予測を行うことができる。
【0020】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記生産データ作成工程において、前記セルフアライメントデータを基に、次回以降の生産対象である前記基板の前記生産ラインに配置される検査機の、合否判定しきい値を設定する構成とする方がよい。上記(2)の構成と同様に、本構成によると、例えば印刷検査機やリフロー前基板外観検査機における合否判定しきい値を設定することができる。
【0021】
(6)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、前記生産データ作成工程において、前記セルフアライメント量が所定の装着基準しきい値以下の場合、前記基板に対する前記電子部品の装着を該基板のランドを基準に行うことを決定し、該セルフアライメント量が該装着基準しきい値超過の場合、該基板に対する該電子部品の装着を該基板に印刷されたはんだを基準に行うことを決定する構成とする方がよい。上記(3)の構成と同様に、本構成によると、セルフアライメント量の大小に応じて、電子部品の装着基準を、はんだ基準、またはランド基準にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、電子部品に対するセルフアライメント効果を考慮した生産データを作成可能な生産データ作成システム、および生産データ作成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の生産データ作成システムの一実施形態である、生産データ作成システムの模式図である。
図2図2は、本発明の生産データ作成方法の一実施形態である、生産データ作成方法のフローチャートである。
図3図3は、同生産データ作成方法のデータ蓄積工程の模式図である。
図4図4は、同生産データ作成方法の生産データ作成工程の、シミュレーションの模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1:生産データ作成システム。
2:ホストコンピュータ、20:制御装置、200:演算部、201:記憶部、21:印刷検査機、21:表示装置、22:入力装置。
3:生産ライン、30:はんだ印刷機、31:印刷検査機(検査機)、32:電子部品実装機、33:リフロー前基板外観検査機(検査機)、34:リフロー炉、35:リフロー後基板外観検査機(検査機)。
B:基板、C1:印刷ズレ量、C2:印刷ズレ量、C3〜C6:装着ズレ量、C7:印刷ズレ量、C8:印刷ズレ量、C9〜C12:装着ズレ量、F1:セルフアライメント量、F2:セルフアライメント量、D1:印刷ズレ量、D2:印刷ズレ量、D3〜D6:装着ズレ量、E1:許容ズレ量、E2:許容ズレ量、b:ランド、p:電子部品、w1:正規位置、w2:はんだ正規位置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の生産データ作成システム、および生産データ作成方法の実施の形態について説明する。
【0026】
<生産データ作成システムの構成>
まず、本実施形態の生産データ作成システムの構成について説明する。図1に、本実施形態の生産データ作成システムの模式図を示す。図1に示すように、生産データ作成システム1は、ホストコンピュータ2と、生産ライン3と、を備えている。
【0027】
ホストコンピュータ2は、制御装置20と、表示装置21と、入力装置22と、を備えている。制御装置20は、演算部200と、記憶部201と、を備えている。生産ライン3は、はんだ印刷機30と、印刷検査機31と、電子部品実装機32と、リフロー前基板外観検査機33と、リフロー炉34と、リフロー後基板外観検査機35と、を備えている。このうち、印刷検査機31、リフロー前基板外観検査機33、リフロー後基板外観検査機35は、各々、本発明の「検査機」の概念に含まれる。
【0028】
生産ライン3に配置されている装置(はんだ印刷機30、印刷検査機31、電子部品実装機32、リフロー前基板外観検査機33、リフロー炉34、リフロー後基板外観検査機35)は、ホストコンピュータ2に、電気的に接続されている。また、これらの装置は、ホストコンピュータ2と同様に、各々、制御装置を備えている。
【0029】
<生産データ作成方法>
次に、本実施形態の生産データ作成方法について説明する。図2に、本実施形態の生産データ作成方法のフローチャートを示す。本実施形態の生産データ作成方法は、データ蓄積工程と、生産データ作成工程と、を有している。
【0030】
[データ蓄積工程(図2のS(ステップ)1)]
本工程においては、図1の生産ライン3に配置されている装置(はんだ印刷機30、印刷検査機31、電子部品実装機32、リフロー前基板外観検査機33、リフロー炉34、リフロー後基板外観検査機35)が、各々、セルフアライメントデータを収集する。セルフアライメントデータの収集は、実際の基板の生産時に行われる。
【0031】
図3に、本実施形態の生産データ作成方法のデータ蓄積工程の模式図を示す。なお、図3の「はんだ印刷前」は、図1のはんだ印刷機30前に対応する。図3の「はんだ印刷後」は、図1の印刷検査機31に対応する。図3の「リフロー前」は、図1のリフロー前基板外観検査機33に対応する。図3の「リフロー後」は、図1のリフロー後基板外観検査機35に対応する。
【0032】
図1図3に示すように、基板生産時においては、まず、はんだ印刷機(スクリーン印刷機)30が、基板Bのランドbに、はんだs(図3にハッチングで示す。)を印刷する。次に、印刷検査機31が、ランドbに対するはんだsの印刷状態を検査する。すなわち、ランドbに対するはんだsのX軸方向(=基板Bの搬送方向)の印刷ズレ量C1、C2、Y軸方向(=水平面内において、X軸方向に直交する方向)の印刷ズレ量D1、D2を検査する。
【0033】
続いて、電子部品実装機32が、はんだs印刷後の基板Bに、電子部品pを装着する。ここで、印刷ズレ量C1、D1が小さい場合、電子部品実装機32は、基板Bのランドbを基準に、電子部品pを装着する。これに対して、印刷ズレ量C2、D2が大きい場合、電子部品実装機32は、はんだsを基準に、電子部品pを装着する。
【0034】
それから、リフロー前基板外観検査機33が、電子部品p装着後、はんだs溶融前における、基板Bに対する電子部品pの装着状態を検査する。すなわち、ランドb基準の電子部品pの場合は、正規位置w1(基板Bに対する電子部品pの正規の装着位置。図3の細線枠)に対する、電子部品pのX軸方向の装着ズレ量C3、Y軸方向の装着ズレ量D3を検査する。これに対して、はんだs基準の電子部品pの場合は、はんだ正規位置w2(はんだsに対する電子部品pの正規の装着位置。図3の細線枠)に対する、電子部品pのX軸方向の装着ズレ量C4、Y軸方向の装着ズレ量D4を検査する。
【0035】
その後、リフロー炉34が、所定の炉内雰囲気(例えば、空気、窒素など)、所定の温度パターンで、基板Bを熱処理する。加熱により、はんだsは、溶融、液化する。そして、液化したはんだsは、図3に白抜き矢印で示すように、ランドb方向に流動する。同様に、電子部品pは、はんだsの流れにより、流動する。その後、はんだsは固化する。
【0036】
最後に、リフロー後基板外観検査機35が、はんだs固化後における、基板Bに対する電子部品pの装着状態を検査する。すなわち、ランドb基準の電子部品p、はんだs基準の電子部品p共に、正規位置w1(図3の細線枠)に対する、電子部品pのX軸方向の装着ズレ量C5、C6、Y軸方向の装着ズレ量D5、D6を検査する。
【0037】
このように基板Bの生産が行われている間、生産ライン3に配置されている装置は、各々、セルフアライメントデータを収集している。
【0038】
具体的には、各装置は、以下に列挙するようなセルフアライメント条件を収集している。ただし、以下に示すセルフアライメント条件は、例示である。セルフアライメント条件は以下の例示に限定しない。また、以下に例示する、セルフアライメント条件の変化に対する、セルフアライメント量の変化の傾向も、特に限定しない。
【0039】
はんだ印刷機30は、自身の制御装置の記憶部に、使用中のはんだsの種類、スクリーンマスクの厚み(はんだsの厚み)、印刷機の設定を格納している。例えば、はんだsの厚みが厚いほど、セルフアライメント量は大きくなる。
【0040】
また、印刷検査機31は、自身の制御装置の記憶部に、印刷ズレ量C1、C2、D1、D2、はんだsの体積を格納している。例えば、印刷ズレ量C1、C2、D1、D2が大きいほど、セルフアライメント量は大きくなる。また、はんだsの体積が大きいほど、セルフアライメント量は大きくなる。
【0041】
また、電子部品実装機32は、自身の制御装置の記憶部に、電子部品pの装着位置を格納している。また、リフロー前基板外観検査機33は、自身の制御装置の記憶部に、装着ズレ量C3、C4、D3、D4を格納している。
【0042】
また、リフロー炉34は、自身の制御装置の記憶部に、炉内雰囲気、温度パターン、炉内における基板搬送速度を格納している。例えば、炉内雰囲気が窒素の場合、炉内雰囲気が空気の場合よりも、セルフアライメント量は大きくなる。また、はんだsの粒径、体積等の条件によって、より大きなセルフアライメント効果が得られる温度パターンは異なる。また、基板搬送速度が遅いほど、セルフアライメント量は大きくなる。また、リフロー後基板外観検査機35は、自身の制御装置の記憶部に、装着ズレ量C5、C6、D5、D6を格納している。
【0043】
図1に示すように、ホストコンピュータ2の制御装置20の記憶部201には、生産ライン3に配置されている各装置から、上述したような、様々なセルフアライメント条件が伝送される。
【0044】
また、記憶部201には、電子部品pの形状、サイズ、基板Bのランドbの面積など、電子部品p、基板Bに関するデータが予め格納されている。これらのデータは、各装置から伝送されたセルフアライメント条件に、包含される。
【0045】
ここで、セルフアライメント条件のうち、リフロー後基板外観検査機35が収集する装着ズレ量C5、C6、D5、D6は、リフロー後ズレ量(リフロー後の、正規位置w1に対する、電子部品pの実際の装着位置のズレ量)である。
【0046】
また、ランドb基準の場合に、リフロー前基板外観検査機33が収集する装着ズレ量C3、D3は、リフロー前ズレ量(リフロー前の、正規位置w1に対する、電子部品pの実際の装着位置のズレ量)である。
【0047】
また、はんだs基準の場合に、リフロー前基板外観検査機33が収集する装着ズレ量C4と、印刷検査機31が収集する印刷ズレ量C2との和は、リフロー前ズレ量である。同様に、装着ズレ量D4と、印刷ズレ量D2との和は、リフロー前ズレ量である。
【0048】
制御装置20の演算部200は、リフロー前ズレ量と、リフロー後ズレ量と、から、個々の電子部品pごとに、かつX軸方向、Y軸方向ごとに、セルフアライメント量(=リフロー前ズレ量−リフロー後ズレ量)を算出する。
【0049】
セルフアライメントデータ(算出されたセルフアライメント量、および上記セルフアライメント条件)は、個々の基板Bと関連付けられた状態で、制御装置20の記憶部201に格納される。
【0050】
[生産データ作成工程(図2のS2以降)]
本工程においては、記憶部201のセルフアライメントデータを基に、これから生産する基板の生産データを作成する。すなわち、本工程は、基板の生産前に行われる。まず、演算部200は、記憶部201のセルフアライメントデータを読み込む(図2のS2)。
【0051】
次に、演算部200は、これから基板に装着する電子部品のセルフアライメント量を予測する(図2のS3)。具体的には、記憶部201に蓄積されたセルフアライメント条件とセルフアライメント量との間には、相関関係がある。演算部200は、当該相関関係を、最小二乗法により近似する。すなわち、演算部200は、セルフアライメント量予測式を作成する。
【0052】
演算部200は、セルフアライメント量予測式に、これから基板に装着する電子部品に関するセルフアライメント条件を代入する。そして、当該電子部品のセルフアライメント量(予測値)を算出する。このようにして、演算部200は、電子部品ごとに、セルフアライメント量(予測値)を算出する。
【0053】
続いて、演算部200は、算出したセルフアライメント量と、記憶部201に格納されている装着基準しきい値と、を比較する(図2のS4)。セルフアライメント量が装着基準しきい値を超過する場合、言い換えるとセルフアライメント効果が期待できる場合は、電子部品実装機32における当該電子部品の装着基準を、はんだ基準に決定する(図2のS5)。一方、セルフアライメント量が装着基準しきい値以下の場合、言い換えるとセルフアライメント効果が期待できない場合は、電子部品実装機32における当該電子部品の装着基準を、ランド基準に決定する(図2のS9)。
【0054】
次に、演算部200は、基板生産のシミュレーションを行う(図2のS6)。図4に、本実施形態の生産データ作成方法の生産データ作成工程の、シミュレーションの模式図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0055】
ここで、図4に示すのは、想定される印刷ズレ量の最大値、想定される装着ズレ量の最大値、セルフアライメント効果がX軸方向に発生する場合のシミュレーションである。想定される印刷ズレ量の最大値、想定される装着ズレ量の最大値、セルフアライメント効果がY軸方向に発生する場合も同様にシミュレーションを行うことができる。また、想定される印刷ズレ量の最大値、想定される装着ズレ量の最大値、セルフアライメント効果がX軸方向、Y軸方向の双方向に発生する場合は、双方向に対して別々にシミュレーションを行い、その結果を合成すればよい。
【0056】
図4に示すように、シミュレーションは、ランドb基準の電子部品p、はんだs基準の電子部品p共に行われる。シミュレーションは、記憶部201のセルフアライメント条件を基に、行われる。
【0057】
演算部200は、印刷検査機31における、ランドbに対するはんだsの印刷ズレ量(詳しくは、想定される印刷ズレ量の最大値)C7、C8を予測する。また、電子部品pがランドb基準の場合、演算部200は、リフロー前基板外観検査機33における、正規位置w1(図4の細線枠)に対する電子部品pの装着ズレ量(詳しくは、想定される装着ズレ量の最大値)C9を予測する。また、演算部200は、電子部品pがはんだs基準の場合、リフロー前基板外観検査機33における、はんだ正規位置w2(図4の細線枠)に対する電子部品pの装着ズレ量C10(詳しくは、想定される装着ズレ量の最大値)を予測する。
【0058】
また、演算部200は、リフロー後基板外観検査機35における、正規位置w1(図4の細線枠)に対する電子部品pの装着ズレ量C11、C12(詳しくは、想定される装着ズレ量の最大値)を予測する。この際、演算部200は、図2のS3で算出したセルフアライメント量F1、F2を考慮する。
【0059】
続いて、演算部200は、シミュレーションの結果を評価する(図2のS7)。リフロー後基板外観検査機35において、最終的な装着ズレ量(つまりリフロー後ズレ量)C11、C12が許容ズレ量E1、E2以下の場合は、現状の生産データのまま基板Bを生産しても、当該電子部品pに関しては、所定の装着座標に対して、所定の精度で、装着することができる。このため、セルフアライメント条件を補正する必要はない。
【0060】
この場合は、演算部200は、シミュレーション結果(図4の印刷ズレ量C7、C8、装着ズレ量C9〜C12)を基に、印刷検査機31、リフロー前基板外観検査機33、リフロー後基板外観検査機35の合否判定しきい値を設定する(図2のS8)。
【0061】
一方、最終的な装着ズレ量(つまりリフロー後ズレ量)C11、C12が許容ズレ量E1、E2を超過する場合は、現状の生産データのまま基板Bを生産しても、当該電子部品pに関しては、所定の装着座標に対して、所定の精度で、装着することができない。このため、セルフアライメント条件を補正する(図2のS10)。
【0062】
セルフアライメント条件の補正が必要な際、演算部200は、表示装置21に、セルフアライメント条件の補正が必要な旨のメッセージを表示する。作業者は、当該メッセージを確認し、入力装置22から、セルフアライメント条件の補正値を入力する。入力された補正値を基に、演算部200は、前記セルフアライメント量予測式を用いて、当該電子部品pのセルフアライメント量(予測値)を再計算する。
【0063】
補正の結果、当該電子部品pのセルフアライメント量(予測値)が変更され、シミュレーションの結果、最終的な装着ズレ量(つまりリフロー後ズレ量)C11、C12が許容ズレ量E1、E2以下になったら(図2のS6、S7)、演算部200は、印刷検査機31、リフロー前基板外観検査機33、リフロー後基板外観検査機35の合否判定しきい値を設定する(図2のS8)。
【0064】
このように、本実施形態の生産データ作成方法によると、個々の電子部品pに対するセルフアライメント効果を考慮して、これから生産対象となる基板の生産データを作成することができる。
【0065】
<作用効果>
次に、本実施形態の生産データ作成システムおよび生産データ作成方法の作用効果について説明する。図1に示すように、生産データ作成システム1の記憶部(具体的には、生産ライン3に配置されている装置(はんだ印刷機30、印刷検査機31、電子部品実装機32、リフロー前基板外観検査機33、リフロー炉34、リフロー後基板外観検査機35)の記憶部)は、基板Bの生産時に、基板Bごとに、セルフアライメントデータを蓄積している。すなわち、任意の電子部品pのセルフアライメント量と、セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であるセルフアライメント条件と、を含むセルフアライメントデータを、記憶部に蓄積している。
【0066】
また、図2のS3に示すように、図1に示すホストコンピュータ2の制御装置20の演算部200は、記憶部201に蓄積されたセルフアライメントデータを基に、次回以降(二回目でも、三回目でも、四回目以降でもよい。)の生産対象である基板Bの電子部品pのセルフアライメント量を予測している。そして、セルフアライメント量を考慮して、次回以降に生産する基板Bの生産データを作成している。
【0067】
本実施形態の生産データ作成システム1および生産データ作成方法によると、図2のS2、S3に示すように、セルフアライメントデータを基に、セルフアライメント効果の予測を行うことができる。このため、作業者のスキルの熟練度によらず、生産される基板Bの品質を、安定化させることができる。並びに、基板Bの品質を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態の生産データ作成システム1および生産データ作成方法によると、図2のS8に示すように、図1に示す演算部200が、印刷検査機31におけるランドbに対するはんだsの印刷ズレ量に関する、合否判定しきい値を設定することができる。また、電子部品pの装着基準がランドb基準の場合、リフロー前基板外観検査機33における正規位置w1に対する電子部品pの装着ズレ量に関する、合否判定しきい値を設定することができる。また、電子部品pの装着基準がはんだs基準の場合、リフロー前基板外観検査機33におけるはんだ正規位置w2に対する電子部品pの装着ズレ量に関する、合否判定しきい値を設定することができる。また、リフロー後基板外観検査機35における正規位置w1に対する電子部品pの装着ズレ量に関する、合否判定しきい値を設定することができる。
【0069】
また、本実施形態の生産データ作成システム1および生産データ作成方法によると、図2のS4、S5、S9に示すように、セルフアライメント量(予測値)の大小に応じて、電子部品pの装着基準(ランドb基準、はんだs基準)を、設定することができる。すなわち、作業者のスキルの熟練度によらず、電子部品pの装着基準を設定することができる。
【0070】
<その他>
以上、本発明の生産データ作成システムおよび生産データ作成方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0071】
図1に示す生産ライン3の構成は特に限定しない。リフロー前基板外観検査機33が配置されていなくてもよい。この場合、電子部品実装機32により、リフロー前ズレ量(図3に示すように、ランド基準の場合は、装着ズレ量C3、D3である。また、はんだ基準の場合は、装着ズレ量C4、D4と印刷ズレ量C2、D2との和である。)を収集してもよい。
【0072】
また、印刷検査機31により、リフロー前ズレ量(図3に示す印刷ズレ量C1、C2、D1、D2)を収集してもよい。この場合、リフロー後ズレ量として収集されるのは、リフロー後基板外観検査機35における、ランドbに対する、はんだsのズレ量である。
【0073】
また、セルフアライメント条件は、特に限定しない。セルフアライメント量に影響を及ぼす条件であればよい。また、リフロー時に、水平面内において電子部品pが回動することを考慮して、セルフアライメント量を予測してもよい。
【0074】
また、図2のS10においては、セルフアライメント条件の補正を、作業者の指示により行った。しかしながら、当該補正を、図1に示す演算部200が自動的に行ってもよい。例えば、セルフアライメント条件のうち、セルフアライメント量に対する寄与率が高い条件を、所定量だけ変更してもよい。
【0075】
また、図2のS6においては、図4に示すように、ランドb基準の電子部品p、はんだs基準の電子部品pの双方に対して、シミュレーションを行った。しかしながら、はんだs基準の電子部品pに対してだけ、シミュレーションを行ってもよい。はんだs基準の電子部品pの方が、ランドb基準の電子部品pに対して、より大きなセルフアライメント効果が期待できるからである。
図1
図2
図3
図4