【文献】
Journal of Clinical Microbiology,2009年,Vol.47, No.8,p.2363-2368
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロース、シリカマイクロファイバーフィルター、グラスファイバー及び石英フィルターからなる群から選択される1種以上で作製された吸収性パッドであって、洗浄部及び第2の端部の少なくとも一方と隣接しかつ垂直方向に整列した吸収性パッドを用意することをさらに含む、請求項5記載の方法。
セルロース、シリカマイクロファイバーフィルター、グラスファイバー及び石英フィルターからなる群から選択される1種以上で作製された吸収性パッドであって、石英ファイバーフィルターと隣接しかつ垂直方向に整列した吸収性パッドを用意することをさらに含み、洗浄溶液を試料受容部に添加する、請求項1記載の方法。
セルロース、シリカマイクロファイバーフィルター、グラスファイバー及び石英フィルターからなる群から選択される1種以上で作製された吸収性パッドであって、洗浄部及び第2の端部の少なくとも一方と隣接しかつ垂直方向に整列して位置する吸収性パッドをさらに備える、請求項12記載の装置。
セルロース、シリカマイクロファイバーフィルター、グラスファイバー及び石英フィルターからなる群から選択される1種以上で作製された吸収性パッドであって、石英ファイバーフィルターと隣接及び垂直方向に整列した吸収性パッドをさらに備える、請求項10記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願の本明細書及び特許請求の範囲の全体で用いられる近似的表現は、それが関係する基本的な機能に変化を生じずに、許容可能な範囲で変化させうる任意の量的表示を修飾するために適用することができる。したがって、「約」など、用語(複数可)により修飾される値は、指定される正確な値に限定されるものではない。場合によって、近似的表現は、値を測定するための機器の精度に対応しうる。
【0013】
以下の明細書及び特許請求の範囲では、文脈が明らかに別のことを指示しない限りにおいて、単数形の「a」、「an」及び「the」は、複数の指示対象を包含する。さらに、本明細書で用いられる接尾辞の「(s)」は、通常、それが修飾する用語の単数及び複数の両方を包含し、これにより、その用語の1つ以上を包含することを意図する。
【0014】
本明細書で用いられる「〜しうる(may)」及び「〜でありうる(may be)」という用語は、一連の状況において生じる可能性、指定される特性、特徴、若しくは機能の保有を示し、及び/又は制限される動詞と関連する可能性、能力又は可能性の1つ以上を表すことによって、別の動詞を限定する。したがって、「〜しうる」及び「〜でありうる」の使用は、一部の状況では、修飾される語が、場合によって、適切でないか、可能でないか、又は適さないこともあることを考慮に入れながら、修飾される語が指示される能力、機能、又は使用に明らかに適切であるか、可能であるか、又は適することを指し示す。例えば、ある状況では、事象又は能力を予期しうる一方、他の状況では、事象又は能力は生じないかも知れない。この区別が、「〜しうる」及び「〜でありうる」という用語によりとらえられる。
【0015】
本明細書の下記では、付属の図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について記載する。以下の説明では、本開示を不要な細部において曖昧にすることを回避するために、周知の機能又は構造について詳細に記載することはしない。
【0016】
本発明の第1の実施形態に従う装置1が、試料溶液と接触させることによって核酸(図示せず)を含む試料溶液(図示せず)を収着させ、試料受容部から離れる方向に向かうウィッキング力(図示せず)下で試料受容部を通して洗浄溶液(図示せず)を流した後に、核酸の大半を試料受容部の近傍に維持するための試料受容部12を含む、石英ファイバーフィルター10を含む、
図1を参照されたい。
【0017】
石英ファイバーフィルター10は、そこに試料溶液を収着させ、石英ファイバーフィルターに適用された核酸の貯蔵又はその後の分析を阻害しない、任意の多孔性材料及び吸収性材料を包含する。ある実施形態では、石英ファイバーフィルター10を、結合剤なしで、純粋な石英ファイバーで作製する。ある実施形態では、石英ファイバーフィルターは、粒径2.2μm以上、基本重量85g/m
2、厚さ約300μm〜約600μmの範囲の粒子に対して、約98%の粒子保持効率を有する。この目的に適する石英ファイバーフィルターの例には、GE Healthcare Bio−Sciences Corp.、New Jersey、USAから市販されているWhatman(登録商標)グレードQM−A石英マイクロファイバーフィルター、及びMillipore Corporation、Billerica、MA、USAから市販されているAQFA石英ファイバーフィルターが含まれるがこれらに限定されない。
【0018】
石英ファイバーフィルター10は、それに沿って、その上に適用された洗浄溶液
を移動させること
ができる
細長いストリップの形態でありうる。石英ファイバーフィルター10は、ポリエステル(Mylar(登録商標))又はPETのようなプラスチック材料などの裏当て材で支えることができる。
【0019】
装置は、単純な核酸精製デバイスの場合もあり、代替的に核酸分析デバイス/機器全体の部分又は構成部分の場合もある。
【0020】
試料受容部12は、そこに試料溶液を収着させうる任意の形状又は立体構成でありうる。試料受容部12は、石英ファイバーフィルター10自体の区画又は吸収パッドのいずれの場合もあり、液体中で石英ファイバーフィルター10と接触する。
【0021】
ある実施形態では、石英ファイバーフィルター10
は、試料受容部12
、試料受容部12から離れた洗浄部14
であって洗浄溶液(図示せず)が添加される洗浄部14、第1の端部16
及び第2の端部18を含む
細長いストリップでありうる。洗浄部14は、第2の端部18より第1の端部16の近くに位置し、試料受容部12は、洗浄部14より第2の端部18の近くに位置している。このような配置では、洗浄溶液を、洗浄部14に適用すると、洗浄溶液の大半は、試料受容部12から離れる方向に向かうウィッキング力の下で、洗浄部14から、試料受容部12を通って、第2の端部18に流れるであろう。
【0022】
ある実施形態では、洗浄部14が、第1の端部16であり、試料受容部を洗浄溶液の表面の外部に位置させながら、洗浄部14/16を洗浄溶液中に浸漬することによって、洗浄溶液を、石英ファイバーフィルターに適用する。
【0023】
本明細書で用いられる「収着」という用語は、意図的に又は意図せずに実現される、収着された組成物を試料受容部から除去するための条件下に置かれない限りは試料受容部から容易に除去されないような形で、試料溶液を吸収させるか、吸着させるか、又はそれ以外の形で試料受容部内若しくは試料受容部上に組み入れることを意味する。
【0024】
本明細書で用いられる「核酸の大半」という用語は、試料受容部の近傍に維持される核酸の量であって、試料受容部に収着させた試料溶液中の核酸の総量の約15%以上、試料受容部に収着させた試料溶液中の核酸の総量の50%以上、又は試料受容部に収着させた試料溶液中の核酸の総量の90%以上でありうる量を指す。
【0025】
本明細書で用いられる「単離する、単離すること、又は単離」という用語は、核酸を試料溶液から、増幅分析など、核酸のその後の分析/使用を容易にする形で分離又は精製する行為又は動作を指し示す。
【0026】
本明細書で用いられる、「核酸」という語句は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)の一方又は両方を意味する。単離核酸は、単一の種類の核酸を含む場合もあり、2つ以上の異なる種類の核酸を含む場合もある。単離核酸は、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり、直鎖状の場合もあり環状の場合もある。また、単離核酸の長さも限定されない。単離核酸の長さは、数bp乃至数Mbpの範囲において任意でありうる。しかし、単離核酸の長さは、一般に、取扱いが容易であるように、数bp乃至数百kbpの範囲である。本発明の核酸の単離/精製法は、従来の方法がなしうるよりも、より広範囲にわたる長さの核酸を迅速に回収しうる。本発明により単離される核酸の長さは、約1bp〜約1500kbp、好ましくは約1kbp〜約500kbp、より好ましくは約20kbp〜約200kbpの範囲でありうる。
【0027】
本発明の分析物には制限がない。分析物の例には、ヒト及び動物の生理学的/病理学的体液(例えば、分泌物、排出物、滲出物、及び浸出液)又は細胞懸濁液(例えば、血液、リンパ液、滑液、精液、口腔細胞を含む唾液、皮膚剥離物、毛根細胞など);植物の生理学的/病理学的液体又は細胞懸濁液;細菌、真菌、プラスミド、ウイルスなどの液体生成物、抽出物、又は懸濁液;蠕虫、原虫、スピロヘータなどを含めた寄生虫の液体生成物、抽出物、又は懸濁液;ヒト又は動物の身体組織(例えば、骨、肝臓、腎臓など)の液体抽出物又はホモジネート;DNA合成又はRNA合成に由来する培地;化学的又は生化学的に合成されるDNA又はRNAの混合物;並びにDNA及び/又はRNAがその中に存在するか又は存在しうる他の任意の供給源が含まれる。特に、分析物には、血液、血液細胞、及び抗凝血剤を伴う血液などの生理学的試料又は臨床試料が含まれる。供給源から分析物を取り出すための例示的な方法は、静脈穿刺により、ヒト又は動物の供給源から血中の核酸試料を取り出すことである。
【0028】
試料溶液は、DNA及びRNAの一方若しくは両方、又は、DNA及びRNAの一方若しくは両方を含む細胞、細胞構成要素、又は細胞抽出物を、その中に溶存させるか、懸濁させるか、混合するか、又はそれ以外の形で含有して含む溶液でありうる。試料溶液は、分析物から調製される溶液でありうる。
【0029】
核酸を含む試料溶液を分析物から調製するための例示的な方法は、分析物試料を容器に注入する段階、核酸可溶化試薬を容器に添加し、試料を核酸可溶化試薬と混合する段階、結果として得られる混合溶液をインキュベートする段階、及び水溶性の有機溶媒をインキュベートされた混合溶液に添加する段階を包含するが、ここで、最後の2つの段階は任意のものとする。核酸可溶化試薬は、細胞膜及び核膜が溶存するように溶解させ、核酸を可溶化/分散させる。核酸可溶化試薬の例には、カオトロピック塩、界面活性剤、及びプロテアーゼの1つ以上を含む溶液が含まれる。核酸可溶化試薬は、乾燥状態で投入することもできる。
【0030】
核酸を含む試料溶液を調製するための方法は、例えば、超音波処理、鋭利な突起物を用いる処理、又は高速撹拌若しくはボルテックス処理を用いて実施することができる。
【0031】
本発明の好ましいプロテアーゼは、例えば、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、及び金属プロテアーゼの1つ以上である。セリンプロテアーゼを特に限定するわけではないが、例えば、プロテアーゼKが好ましく用いられうる。システインプロテアーゼを特に限定するわけではないが、例えば、パパイン及びカテプシンが好ましく用いられうる。金属プロテアーゼを特に限定するわけではないが、例えば、カルボキシペプチダーゼが好ましく用いられうる。ヌクレアーゼを含まないプロテアーゼも用いることができる。金属イオンなどの安定化剤を含むプロテアーゼも用いることができる。より具体的には、塩化マグネシウムなどの形態のマグネシウムイオンが好ましい。安定化剤は、全反応系の総容量に対して約1〜約1000ミリモル/mL、好ましくは、約10〜約100ミリモル/mLの濃度で組み入れることができる。
【0032】
プロテアーゼは、添加時において、全反応系1ml当たり、好ましくは約0.001IU〜約10IU、より好ましくは約0.01IU〜約1IUの量で用いることができる。
【0033】
プロテアーゼは、カオトロピック塩、界面活性剤、又は別の試薬と併せて用いることができる。代替的に、プロテアーゼは、カオトロピック塩及び界面活性剤などの他の試薬とは別個の試薬として用いることもできる。後者の場合には、分析物試料を、プロテアーゼを含む試薬とまず混合し、次いで、混合物を、カオトロピック塩及び/又は界面活性剤を含む試薬と混合する。又は、プロテアーゼは、分析物試料をカオトロピック酸及び/又は界面活性剤を含む試薬とまず混合した後で混合することもできる。
【0034】
分析物試料を核酸可溶化試薬と混合するための手順は、限定されない。
【0035】
分離及び精製された核酸の収量は、分析物試料と核酸可溶化試薬との混合物を、プロテアーゼに好ましい温度で、好ましい反応時間にわたりインキュベートすることによって増大させることができる。インキュベーション温度は、通常、約20℃〜約70℃であり、インキュベーション時間は、通常、約1分間〜約90分間である。インキュベーション法は、特に限定されず、温熱浴又は加熱チャンバーに浸漬することによって実施することができる。
【0036】
核酸可溶化試薬溶液のpHは、好ましくは約5〜約10、より好ましくは約6〜約9、さらにより好ましくは約6.5〜約8の範囲である。
【0037】
核酸可溶化試薬溶液中のカオトロピック塩の濃度は、好ましくは約0.5M以上、より好ましくは約0.5M〜約10Mの範囲で、さらにより好ましくは約5M〜約8Mの範囲である。塩酸グアニジンが好ましいカオトロピック塩であるが、他のカオトロピック塩(例えば、トリフルオロ酢酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、及びチオシアン酸グアニジン)も用いることができる。カオトロピック塩の代わりに、尿素をカオトロピック物質として用いることも可能である。これらのカオトロピック物質は、個別に用いることもでき、それらの2つの以上を組み合わせて用いることもできる。
【0038】
核酸可溶化試薬溶液は、水溶性の有機溶媒を含みうる。水溶性の有機溶媒としては、アルコールが好ましい。アルコールは、一級アルコール、二級アルコール、及び三級アルコールの任意のものでありうる。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びその異性体、並びにブチルアルコール及びその異性体が好ましく用いられうる。これらの水溶性の有機溶媒は、独立に用いることもでき、それらの2つの以上の組合せとして用いることもできる。核酸可溶化試薬溶液中の水溶性の有機溶媒の濃度は、好ましくは約1重量%〜約20重量%の範囲である。
【0039】
核酸可溶化試薬溶液中の界面活性剤の濃度は、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%の範囲である。核酸可溶化試薬溶液中の界面活性剤の例には、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両親媒性界面活性剤が含まれる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系の界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系の界面活性剤、及び脂肪酸アルキルアミドは、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(Triton(商標)X−100など)と共に用いることができ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系の界面活性剤を用いうることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル系の界面活性剤は、POEデシルエーテル、POEラウリルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEアルキレンデシルエーテル、POEソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、POEアルキルアミン、及びPOEアセチレングリコールの中から選択することができる。
【0041】
カチオン性界面活性剤の例には、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチル塩化アンモニウム、テトラデシルトリメチル塩化アンモニウム、及び塩化セチルピリジニウムが含まれる。これらの界面活性剤は、独立に用いることもでき、それらの2つ以上の組合せとして用いることもできる。
【0042】
DNAなど、RNA以外の核酸を回収する場合には、RNA分解酵素を核酸可溶化試薬溶液に添加して、そうしなければ回収される核酸中に共存するRNAによる干渉を低減することが好ましい。また、DNA分解酵素阻害剤を添加することも好ましい。RNA分解酵素は、特に限定されず、とりわけ、リボヌクレアーゼH(RNアーゼH)など、RNAを分解できる酵素が好ましく用いられうる。
【0043】
他方、RNAなど、DNA以外の核酸を回収する場合には、DNA分解酵素を、核酸可溶化試薬溶液に添加することが好ましい。これにより、そうでなければ回収される核酸中に共存するDNAによる干渉を低減することができる。また、RNA分解酵素阻害剤を添加することも好ましい。RNA分解酵素阻害剤としては、RNA分解酵素を特異的に阻害するRNA分解酵素阻害剤が好ましい。DNA分解酵素は、特に限定されず、DNアーゼIなど、DNAを特異的に分解できる酵素が好ましく用いられうる。
【0044】
ある実施形態では、石英ファイバーフィルターを洗浄溶液で洗浄した後で、DNA又はRNAを特異的に分解できる酵素を試料受容部に添加することができる。
【0045】
核酸を含む試料溶液は、好ましくは消泡剤を含んでもよい。消泡剤の例には、ケイ素を含む消泡剤(例えば、シリコーン油、ジメチルポリシロキサン、シリコーンエマルジョン、修飾ポリシロキサン、及びシリコーン化合物)、アルコール系の消泡剤(例えば、アセチレングリコール、ヘプタノール、エチルヘキサノール、高級アルコール、及びポリオキシアルキレングリコール)、エーテル系の消泡剤(例えば、ヘプチルセロソルブ及びノニルセロソルブ−3−ヘプチルソルビトール)、油脂系の消泡剤(例えば、動物油及び植物油)、脂肪酸系の消泡剤(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、及びパルミチン酸)、金属石鹸系の消泡剤(例えば、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸カルシウム)、脂肪酸エステル系の消泡剤(例えば、天然蝋及びリン酸トリブチル)、リン酸系の消泡剤(例えば、オクチルリン酸ナトリウム)、アミン系の消泡剤(例えば、ジアミルアミン)、アミド系の消泡剤(例えば、ステアリン酸アミド)及び他の消泡剤(例えば、硫酸第二鉄及びボーキサイト)が含まれる。特に好ましくは、ケイ素を含む消泡剤とアルコール系の消泡剤との組合せを、消泡剤として用いることができる。
【0046】
インキュベートされた混合溶液に添加される水溶性の有機溶媒としては、アルコールが好ましく用いられうる。一級アルコール、二級アルコール、及び三級アルコールの任意のものを用いることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、及びそれらの異性体が好ましく用いられうる。核酸を含む試料溶液中のこのような水溶性の有機溶媒の濃度は、約5重量%〜約90重量%の範囲であることが好ましい。
【0047】
核酸を含む試料溶液及び洗浄溶液の両方とも、チューブ、ピペット、若しくは自動式注入器により、又は他の任意の適用可能な方途/ツールで、石英ファイバーフィルターに適用しうる。洗浄溶液は、ウィッキング力の下で、外部の力を伴わずに、石英ファイバーフィルターに沿って、又はこれを通って流れ、石英ファイバーフィルターに対するアフィニティーが核酸より小さい不純物を運び去り、これにより、核酸の大半を試料受容部の近傍に維持しながら、試料受容部を洗浄する。
【0048】
洗浄溶液は、核酸を含む試料溶液を添加する場所と同じ場所、すなわち、試料受容部において、石英ファイバーフィルターに供給することができる。洗浄溶液は、試料受容部とは異なる場所において、石英ファイバーフィルターに適用することもできる。前者の場合において、試料受容部と洗浄部とは、石英ファイバーフィルター上の同じ場所である。
【0049】
洗浄溶液は、汚染物質、例えば、タンパク質を分解できる酵素を含みうる。さらに、洗浄溶液は、状況に応じて、デオキシリボヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼなどを含みうる。デオキシリボヌクレアーゼを含む洗浄溶液の使用は、RNAの選択的な回収を可能とするであろう。同様に、リボヌクレアーゼを含む洗浄溶液の使用は、DNAの選択的な回収を可能とするであろう。
【0050】
洗浄溶液は、水溶性の有機溶媒及び/又は水溶性の塩を含むことが好ましい。洗浄溶液は、石英ファイバーフィルター上に吸着された試料溶液中の不純物を、核酸と併せて洗い落とす。したがって、洗浄溶液は、吸着された核酸を保ちながら、石英ファイバーフィルターから不純物を脱着させる組成物を有しうる。水溶性の有機溶媒、例えば、核酸がその中で難溶性であるアルコールは、核酸以外の成分を石英ファイバーフィルターから脱着させるのに適する。同時に、水溶性の塩を組み入れることによって、核酸を吸着する効果が増強され、不要な成分の選択的な脱着が改善される。
【0051】
洗浄溶液中に含有される例示的な水溶性の有機溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、及びアセトンが含まれ、このうちでは、エタノールがより好ましい。水溶性の有機溶媒は、好ましくは約20重量%〜約100重量%で、より好ましくは約40重量%〜約100重量%で、洗浄溶液中に組み入れる。
【0052】
他方、洗浄溶液中に含有される例示的な水溶性の塩は、好ましくはハロゲン化塩又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。
【0053】
図2を参照すると、本発明の第2の実施形態に従う装置2は、石英ファイバーフィルター20、上半分24及び下半分26を含むプラスチック筐体22、並びに吸収性パッド28を含む。
【0054】
石英ファイバーフィルター20は、第1の実施形態の石英ファイバーフィルター10と同様であり、試料受容部202及び洗浄部204、第1の端部206、並びに第2の端部208を含む。洗浄部204は、第2の端部208より第1の端部206の近くに位置し、試料受容部202は、洗浄部204より第2の端部208の近くに位置している。このような配置では、洗浄溶液を、洗浄部204に適用すると、洗浄溶液の多くは、試料受容部202から離れる方向に向かうウィッキング力の下で、洗浄部204から、試料受容部202を通って、第2の端部208に流れるであろう。
【0055】
プラスチック筐体22は、石英ファイバーフィルター20及び吸収性パッド28をその中に封入する。上半分24と下半分26とは、一体に成形することもでき、別個に成形することもできる。上半分24は、位置において、それぞれ、試料受容部202及び洗浄部204に対応する試料用開口部240及び洗浄用開口部242を含む。核酸を含む試料溶液を添加する間、試料用開口部240は、核酸を含む試料溶液が完全に収着される前、試料受容部202と併せて核酸を含む試料溶液を収容しうる。
【0056】
吸収性パッド28は、洗浄部204及び第2の端部208のそれぞれと隣接及び垂直方向に整列し、洗浄溶液を試料受容部202から引き離すウィッキング力を増強するのを助ける。
【0057】
本発明の第3の実施形態に従う装置3が、石英ファイバーフィルター30、上半分34及び下半分36を含むプラスチック筐体32、並びに吸収性パッド38を備える、
図3を参照されたい。
【0058】
石英ファイバーフィルター30は、第1の実施形態の石英ファイバーフィルター10と同様であり、試料受容部302、第1の端部306、並びに第2の端部308を含む。試料受容部302は、第2の端部308より第1の端部306の近くに位置する。
【0059】
プラスチック筐体32は、石英ファイバーフィルター30及び吸収性パッド38をその中に封入する。上半分34と下半分36とは、一体に成形することもでき、別個に成形することもできる。上半分34は、位置において、試料受容部302に対応する試料用開口部340を含む。核酸を含む試料溶液を添加する間、試料用開口部340は、核酸を含む試料溶液が完全に収着される前は、試料受容部302と併せて核酸を含む試料溶液を収容しうる。
【0060】
吸収性パッド38は、石英ファイバーフィルター30と隣接及び垂直方向に整列し、洗浄溶液を試料受容部302から引き離すのを助ける。
【0061】
このような配置では、核酸を含む試料溶液及び洗浄溶液の両方を試料受容部302に適用するが、洗浄溶液を試料受容部302に適用すると、洗浄溶液は、試料受容部302から離れる方向に向かうウィッキング力の下で、試料受容部302を通って、第2の端部308及び/又は吸収性パッド38に流れるであろう。
【0062】
吸収性パッド28、38は、セルロース、シリカマイクロファイバーフィルター、グラスファイバー、及び石英ファイバーフィルターなどの吸収性材料で作製する。
【0063】
ある実施形態では、試料受容部を、筐体の外に位置させることができる。
【0064】
本発明の方法は、核酸を含む試料溶液を試料受容部と接触させることによって、試料溶液を石英ファイバーフィルターの試料受容部に収着させる段階と、試料受容部から離れる方向に向かうウィッキング力の下で、洗浄溶液を、試料受容部を通して流すことによって、核酸の大半を試料受容部の近傍に維持しながら、試料受容部を洗浄段階とを含みうる。
【0065】
本発明では、吸収性の石英ファイバーフィルター自体の多孔性に固有のウィッキング力が、洗浄溶液を流し、不純物と核酸との多孔性の石英ファイバーフィルターに対する異なるアフィニティーのために、試料溶液から、核酸の他に不純物を取り去ることを可能とし、これにより、外部の駆動力(例えば、遠心力及び圧力)を発生させる機器及び特殊な技能を有する人員に対する必要を排除し、現場及び遠隔地域における単離を可能とする駆動力として作用する。洗浄溶液を、試料受容部を通して流し、核酸を試料受容部の近傍に維持しながら、不純物を取り去ることによって、核酸を、試料溶液中の他の成分から十分に分離して、PCRなど、従来の核酸検出方法を用いてそれらを検出することが可能となると考えられる。実際、これは、精製効果を有する。
【0066】
この方法は、任意の分析において単純な精製段階を実施するための、特に、重大な阻害を伴わずに石英ファイバーフィルターの存在下で実施しうるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅を伴う分析のための、費用効果が高く、効率性の高い方法でありうる。核酸を含む試料溶液をフィルターに適用した後、及び、洗浄溶液をフィルターを通して流して不純物を取り去った後に、石英ファイバーフィルターが核酸を捕捉していることは予期せぬことである。ひとたび石英ファイバーフィルター上で分離されれば、核酸をさらなるin situの分析にかけることもでき、必要な場合は、適切な緩衝液を用いて、核酸を、石英ファイバーフィルターから溶出させるか、又はそれ以外の形で石英ファイバーフィルターから除去し、溶出物又は抽出物に対して分析を実行することもできる。
【0067】
洗浄溶液により洗浄した後、通常、核酸を含む試料溶液を添加する前と比べて、試料受容部の色が元に戻るか、又はほぼ元に戻る。ある実施形態では、石英ファイバーフィルターを、洗浄した後90℃を下回る温度で、好ましくは37℃若しくは40℃で、又は室温で乾燥させる。石英ファイバーフィルター、より適切には、石英ファイバーフィルターの試料受容部、例えば、試料受容部の近傍で抽出された小片又はパンチを、例えば、実験室環境において採取し、さらなる分析に使用する。
【0068】
例えば、石英ファイバーフィルター上の特定の核酸の存在を検出するために、小片又はパンチをPCR混合物に浸す。PCR混合物は、特定の生物に特徴的でありうる特異的な核酸配列を増幅するようにデザインされたヌクレオチド、ポリメラーゼ、及びPCRプライマーのセットなどの試薬を含みうる。PCR混合物は、緩衝液、マグネシウム塩などをさらに含みうる。
【0069】
石英ファイバーフィルター上の核酸のPCR分析から得られるCt値は、従来の複雑な精製法及び/又は保存法を用いる分析によるCt値と同等であった。これは、本発明の方法及び装置が、核酸を精製し、汚染物質/阻害剤を除去するように有効に働くことを示唆する。
【0070】
本明細書で用いられるヌクレオチドには、プライマー(例えば、PCRプライマー、逆転写酵素誘発PCR用のプライマー)、LCRのためのオリゴヌクレオチド基質のセット、DNAプローブ若しくはRNAプローブ、遺伝子配列決定において用いられるオリゴヌクレオチド、又は標的配列安定化剤が含まれる。
【0071】
本明細書で用いられる「プライマー」とは、石英ファイバーフィルター上の相補的な核酸配列にアニールすることが可能であり、他のオリゴヌクレオチドと相補的な配列を含むDNA鎖(又は、ことによると、RNA鎖)の合成をプライミングするように配向されたオリゴヌクレオチドの断片を意味する。ある用途では、このオリゴヌクレオチドの配列及びその相補的な配列が所定の配列であることが望ましい。他の用途では、配列が未知でありうる。複数の縮重プライマー又は相補的な配列に結合することが予測される配列を有するプライマーを用いることができる。プライマー対を用いて、相補的な配列対及びサイズが公知であるか又は未知である2つの相補的な配列の間の配列を増幅することができる。加えて、プライマーを用いて、当初は二本鎖であるDNA又はRNAの他、一本鎖のDNA又はRNAである鋳型も増幅することができる。一本鎖鋳型については、オリゴヌクレオチドの1つと相補的な配列が、その相補的な配列にアニールするときに、第1のプライマーが伸長することによって合成されることが理解される。
【0072】
PCR又は逆転写酵素誘発PCRのためのプライマーは、通常と同様、プライマー対として存在させることもでき、ゲノム配列決定又は逆転写酵素誘発PCRのための一部のプロトコールについての場合にそうでありうる通り、1つだけのプライマーを存在させることもできる。
実施例
以下の実施例は、主張される本発明を実施するにあたり、当業者にさらなる指針を与えるために組み入れる。したがって、これらの実施例は、付属の特許請求の範囲で規定される本発明を限定するものではない。
【0073】
実施例1:単離後における位置分析
抗凝血剤(ヘパリンナトリウム)、0.25μlのプロテアーゼK(20mg/ml)及び2.5μlの溶液(66.87%の塩酸グアニジニウム及び4%のTriton(商標)X−100)を含むヒト全血(2.5μl)試料を、1.5mlの微小遠心管に添加した。
【0074】
微小遠心管を約15秒間振とうし、次いで、間欠的にボルテックスしながら、室温で約10分間インキュベートして、試料溶液を調製した。インキュベーションの終了時には、微小遠心管内の混合物の色が赤色から暗褐色に変化した。
【0075】
調製後に、得られた試料溶液を、微小遠心管からプラスチック筐体の試料用開口部を介して移し、
図2に示される通りに構成された装置の筐体内に封入される石英ファイバーフィルターの試料受容部と接触させた。石英ファイバーフィルターは、GE Healthcare Bio−Sciences Corp.、New Jersey、USAから得られるWhatman(登録商標)グレードQM−A石英マイクロファイバーフィルターの幅4mm×長さ6cmのストリップであった。プラスチック筐体は、Shanghai Jieyi Biotechnology Co.,Ltd.、Shanghai、Chinaから得られるA−9プラスチック筐体であった。洗浄部及び第2の端部の下方の吸収性パッドは、GE Healthcare Bio−Sciences Corp.、New Jersey、USAから得られるWhatman(登録商標)グレード470特殊目的用ろ紙であった。
【0076】
移動〜約5秒後に、試料溶液が、石英ファイバーフィルターの試料受容部に吸収され、試料受容部の色が、褐色に変わったことが観察された。次いで、洗浄溶液(150μl、80%のエタノール溶液)を、筐体の洗浄用開口部を介して添加して、洗浄溶液を、試料受容部を介して洗浄用開口部と連絡した洗浄部から流すことによって、試料受容部を洗浄した。
【0077】
試料受容部の近傍に目視可能な不純物が観察されず、試料受容部の色が試料溶液を添加する前の色に戻ったら、装置を、乾燥させるために、37℃で30分間にわたりオーブンに入れた。試料溶液が添加されてから、試料受容部の色が戻るまで、約5分間しかかからなかった。乾燥後、石英ファイバーフィルターを、筐体から取り出し、その長手方向に沿って、各々の幅を4mmとし、長さを5mmとする12の小片に切り刻んだ。各小片を、0.8%のアガロースゲルを有する別個の試料ウェルに入れ、パルスフィールドゲル電気泳動を実施した。
【0078】
パルスフィールドゲル電気泳動は、Bio−Rad Laboratories,Inc.、California、U.S.A.製のCHEF Mapper(登録商標)XAシステム上、120Vの電圧で45分間にわたり実行した。電気泳動後、アガロースゲルを、1倍濃度のSYBR Green I溶液により、1.5時間にわたり染色し、次いで、GE Healthcare Bio−Sciences Corp.、New Jersey、USA製のTyphoon(商標)Trio(商標)可変モード造影機を用いて走査して、電気泳動画像を得た。
【0079】
電気泳動画像を、
図4に示す。
図4のレーンA〜Lは、ストリップの第1の端部から第2の端部への小片の画像を順に表す、例えば、レーンA〜Bは、第1の端部及び洗浄部に対応する小片の画像を表し、レーンC〜Dは、試料受容部に対応する小片の画像を表し、レーンMは、DNAマーカー(DL 15000、Takara)の画像を表す。画像は、洗浄後、核酸の大半が試料受容部の近傍に維持されたことを示す。
【0080】
実施例2:単離後におけるサイズ分析
実施例1で用いたストリップと同様な石英ファイバーフィルターのストリップを、実施例1の場合と同じ形で調製された同じ量の試料溶液と接触させ、実施例1の洗浄溶液と同じ洗浄溶液により実施例1の場合と同じ形で洗浄した。
【0081】
石英ファイバーフィルターのストリップを、実施例1の場合と同じ形で乾燥させたら、石英ファイバーフィルターを、プラスチック筐体から取り出し、破線211の間の試料受容部202の近傍の小片210(全長1cm)を、
図5に示す通りに、石英ファイバーフィルターストリップ20から切り出した。次いで、長さ1cmの小片210を半分に切断し、2つの半小片を1%のアガロースゲルを有する試料ウェルに入れて、パルスフィールドゲル電気泳動を実施した。
【0082】
パルスフィールドゲル電気泳動は、CHEF Mapper(登録商標)XAシステム上、6v/cmの電圧、10℃の温度で24時間にわたり実行した。電気泳動後、アガロースゲルを、1倍濃度のSYBR Green I溶液により5時間にわたり染色し、次いで、Typhoon(商標)Trio(商標)可変モード造影機を用いて走査して、電気泳動画像を得た。パルスフィールドゲル電気泳動画像を、
図6に示す。
【0083】
比較例1
製品添付文書で推奨される操作プロトコールに従い、QIAamp blood miniキット(QIAGEN)を用いて、ヘパリンナトリウム(抗凝血剤)を含む2.5μlのヒト全血から抽出されたDNA溶液(2.5μl)を、2.5μlの水と混合し、1%のアガロースゲルを有する試料ウェルに入れて、実施例2の場合と同じ形で電気泳動を実施した。
【0084】
製品添付文書で推奨される操作プロトコールに従い、QIAamp blood miniキット(QIAGEN)を用いて、ヘパリンナトリウム(抗凝血剤)を含む2.5μlのヒト全血から抽出された、別のDNA溶液2.5μlを、2.5μlの水と混合し、実施例1で用いたストリップと同じストリップ上に滴下した。乾燥後、石英ファイバーフィルターの長さ1cmの小片を、試料受容部の近傍で切断し、1%のアガロースゲルを有する別個の試料ウェルに入れて、実施例2の場合と同じ形で電気泳動を実施した。
【0085】
図6にも、パルスフィールドゲル電気泳動画像を示す。
図6では、レーンNが、MidRange II PFGマーカーを表し、レーンOが、比較例1の2.5μlのDNAと2.5μlの水との混合物の画像であり、レーンPは、比較例1の小片の画像であり、レーンQは、実施例2の小片の画像である。
【0086】
図6からわかる通り、比較例1で単離/精製されたDNAのサイズ範囲は、QIAGEN blood miniキットにより抽出されるDNAのサイズが200bpから50kbpであると述べる製品紹介と合致し、実施例2で単離/精製されたDNAのサイズ範囲よりはるかに狭い。
【0087】
実施例3:単離後における量分析
実施例1で用いたストリップと同様な、石英ファイバーフィルターの3つのストリップを、実施例1の場合と同じ形でそれぞれ調製された同じ量の3つの試料溶液にそれぞれ接触させ、実施例1の洗浄溶液と同じ3つの洗浄溶液により実施例1の場合と同じ形でそれぞれ洗浄した。
【0088】
前出の例の場合と同じ形での乾燥後、直径1.2mmの小片を、試料受容部の近傍で、Harris Uni−core 1.2mmパンチャーにより、各ストリップからパンチした。小片の各々を、ベータ−アクチンに対するTaqmanリアルタイムPCR用の25μlのマスターミックス(Ex Taq HSを含有する1倍濃度のPCR緩衝液、300nMの各ベータ−アクチンプライマー及び100nMのベータ−アクチンプローブ)を含有する25μlのPCRチューブに入れた。
比較例2
製品添付文書で推奨される操作プロトコールに従い、QIAamp blood miniキット(QIAGEN)を用いて、各々が、抗凝血剤(ヘパリンナトリウム)を含む2.5μlのヒト全血から抽出された、2.5μlのDNA溶液の3つの試料の各々を、2.5μlの水と混合し、各々を、実施例1で用いたストリップと同じ石英ファイバーフィルターストリップ上に滴下させた。乾燥後、試料受容部において、Harris Uni−core 1.2mmパンチャーにより、各ストリップから直径1.2mmの小片をパンチした。各小片を、ベータ−アクチンに対するTaqmanリアルタイムPCR用の25μlのマスターミックス(Ex Taq HS、300nMの各ベータ−アクチンプライマー及び100nMのベータ−アクチンプローブを含有する1倍濃度のPCR緩衝液)を含有する25μlのPCRチューブに入れた。
【0089】
リアルタイムPCRは、Smart Cycler(登録商標) IIサーモサイクラー(Cepheid)上、95℃で30秒間の後で、95℃で5秒間及び60℃で20秒間の2段階サイクルを40回行うサイクリング条件で実行した。
【0090】
実施例3及び比較例2の小片を用いて、ベータ−アクチンを増幅することに成功した。Ct値を、表1に示す。結果は、実施例3で精製されたDNAが、比較例2に照らして同等量/良好量であることを示す。
【0091】
【表1】
実施例4:プラスチック筐体なしの単離
実施例1の場合と同じ形で調製された同じ量の試料溶液を、実施例1で用いたストリップと同じストリップの試料受容部と接触させた。約5秒後に、試料溶液が、ストリップに吸収され、試料受容部の色が、褐色に変わったことが観察された。
【0092】
その直後、
図7に示す通り、ストリップ80の第1の端部82を、96ウェルプレートのウェル86内の、実施例1の洗浄溶液と同じ150μlの洗浄溶液84中に浸漬したが、試料受容部88及び試料受容部88と洗浄溶液の表面83との間の部分81は、洗浄溶液84中に浸漬しなかった。約5分後に、試料受容部の色が戻ったら、小片を、ウェル86から取り出し、37℃のオーブン内で20分間にわたり乾燥させた。
【0093】
直径1.2mmの小片をパンチし、実施例3の場合と同じ系で増幅した。
【0094】
実験は、1回繰り返した。2つの小片の各々を用いて、ベータ−アクチン遺伝子を増幅することに成功した。Ct値は27.99及び28.08であった。
比較例3:乾燥なしの単離
実施例1で用いたストリップと同じ石英ファイバーフィルターのストリップを、実施例1の場合と同じ形で調製された同じ量の試料溶液と接触させ、実施例1の洗浄溶液と同じ洗浄溶液により実施例1の場合と同じ形で洗浄した。
【0095】
乾燥段階なしで、直径1.2mmの小片を洗浄の直後にパンチし、実施例4の場合と同じ系で増幅した。この小片を用いてベータ−アクチン遺伝子を増幅するのには成功することができなかった。
【0096】
実施例5:単一のインポートを用いる単離
図3に示される通りに構成された装置を用いた。実施例1の試料溶液と同様の、調製された試料溶液を、プラスチック筐体の試料用開口部を介して滴下させて、実施例1で用いたストリップと同じ石英ファイバーフィルターストリップの試料受容部と接触させた。
【0097】
約5秒後に、試料溶液が、石英ファイバーフィルターストリップの試料受容部に吸収され、試料受容部の色が、褐色に変わったことが観察された。次いで、洗浄溶液(150μl、80%のエタノール溶液)を、筐体の試料用開口部を介して添加して、試料受容部を洗浄した。
【0098】
前出の例の場合と同じ形での乾燥後、直径1.2mmの小片を、試料受容部において、Harris Uni−core 1.2mmパンチャーにより、固体のストリップからパンチし、実施例4の場合と同じ系で増幅した。
【0099】
実験は、1回繰り返した。小片の両方を用いて、ベータ−アクチン遺伝子を増幅するのに成功することができ、増幅のCt値は27.76及び28.73であった。
【0100】
実施例6:非洗浄ストリップとの対比分析
実施例1の場合と同じ形で調製された同じ量の試料溶液を、実施例1のストリップと同じストリップに添加した。乾燥後、直径1.2mmの小片をパンチし、実施例4の場合と同じ形で増幅した。
【0101】
ストリップを、実施例1の場合と同じ形で洗浄し、乾燥させる前に、実施例1の場合と同じ形で調製された同じ量の試料溶液を、実施例1のストリップと同じストリップに添加した。比較のために、直径1.2mmの小片もパンチし、実施例4の場合の通りに増幅した。
【0102】
両方の小片を用いて、ベータ−アクチン遺伝子を増幅することができた。Ct値を、以下の表2に示す。非洗浄小片のCt値は、洗浄された小片よりはるかに大きかった。すなわち、洗浄後により高度なDNA増幅効率が得られた。
【0103】
【表2】
実施例7:ヒト全血試料との対比分析
ヘパリンナトリウム(抗凝血剤)を含むヒト全血(2.5μl)を、2.5μlの水と混合し、実施例1のストリップと同じストリップの試料受容部に滴下した。乾燥後、試料受容部を中心とする直径1.2mmの小片をパンチし、実施例4の場合と同じ形で増幅した。
【0104】
比較のために、直径1.2mmの小片も、実施例1の場合と同じ形で同じ量の試料溶液を添加された、実施例1で用いたストリップと同じストリップから、実施例4と同じ形でパンチし、同じ量の洗浄溶液により、実施例1の場合と同じ形で洗浄し、実施例1の場合と同じ形で乾燥させ、実施例4と同じ形で増幅した。
【0105】
各実験は、1回繰り返した。ベータ−アクチン遺伝子は、4つの小片を用いて増幅した。Ct値を、表3に示す。洗浄なしの小片のCt値は、洗浄ありの小片よりはるかに大きかった。すなわち、試料溶液の調製において核酸可溶化試薬などがなくても、増幅はやはり機能したが、洗浄後に、より高度なDNA増幅効率が得られた。
【0106】
【表3】
実施例8:市販のプロトタイプとの対比分析
試料溶液は、ヘパリンナトリウム(抗凝血剤)を含む2.5μlのヒト全血、0.25μlのプロテアーゼK(20mg/ml)、及び5μlの溶液(66.87%の塩化グアニジニウム及び4%のTriton(商標)X−100)を用いて、実施例1の場合と同じ形で調製した。試料溶液を、実施例1で用いたストリップと同じストリップに添加した。試料溶液が収着されたのを観察した後で、実施例1で用いた洗浄溶液と同じ洗浄溶液400μlを洗浄部に添加して、試料受容部を5分間にわたり洗浄した。
【0107】
試料溶液は、ヘパリンナトリウム(抗凝血剤)を含む2.5μlのヒト全血を用いて、実施例1の場合と同じ形で調製し、Nanohelix Co.,Ltd.、Daejeon、South Koreaから得られるpunch−it(商標)NA−sampleキットによる5μlの溶解用溶液を、punch−it(商標)NA−sampleキットの試料受容部に添加した。試料溶液が収着されたのを観察した後で、punch−it(商標)NA−sampleキットの400μlの洗浄溶液を洗浄部に添加して、試料受容部を5分間にわたり洗浄した。
【0108】
前出の例の場合と同じ形での乾燥後、punch−it(商標)NA−sampleキットの試料受容部の色は、依然として試料溶液を添加する前の色と異なるが、ストリップの試料受容部は元に戻ることが観察された。
【0109】
実験は繰り返し行った。2つの小片のそれぞれを、punch−it(商標)NA−sampleキット及びストリップからパンチし、前出の例の場合と同じ形で増幅した。punch−it(商標)NA−sampleキットによる2つの小片のCt値は、31.35及び32.13であり、ストリップのCt値である28.20及び27.78より大きかった。
【0110】
本開示を典型的な実施形態において例示及び記載してきたが、いかなる形であれ本開示の精神から逸脱しない限り、多様な変更及び置き換えを行いうるので、示された詳細に限定されることを意図するものではない。したがって、本明細書で開示された開示のさらなる変更及び同等物は、単なる日常的な実験を用いて、当業者が見いだしうるものであり、全てのこのような変更及び同等物は、以下の特許請求の範囲により規定される本開示の精神及び範囲内にあると考えられる。