特許第6248051号(P6248051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6248051-脱細胞化血管シートを用いた人工血管 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248051
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】脱細胞化血管シートを用いた人工血管
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/50 20060101AFI20171204BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20171204BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20171204BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20171204BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20171204BHJP
   A61F 2/06 20130101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61L27/50 300
   A61L27/36 400
   A61L27/36 100
   A61L27/40
   A61L27/22
   A61L27/34
   A61F2/06
【請求項の数】34
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-556350(P2014-556350)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(86)【国際出願番号】JP2013083749
(87)【国際公開番号】WO2014109185
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-1033(P2013-1033)
(32)【優先日】2013年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000173555
【氏名又は名称】一般財団法人化学及血清療法研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100156111
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】新屋 希子
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】岸田 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】樋上 哲哉
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−268239(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/028521(WO,A1)
【文献】 L'Heureux et al.,'Tissue-Engineered Blood Vessel for Adult Arterial Revascularization',The New England Journal of Medicine,357 (2007),1451-1453
【文献】 McAllister et al.,'Effectiveness of haemodialysis access with an autologous tissue-engineered vascular graft: a multic,The Lancet,Volume 373, Issue 9673 (2009),1440 - 1446
【文献】 Gauvin et al.,'A novel single-step self-assembly approach for the fabrication of tissue-engineered vascular constr,Tissue Engineering: Part A,16(5), 2010,1737-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00−27/60
A61F 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱細胞化されたシート状の血管(脱細胞化血管シート)をロール構造に成型した脱細胞化管状構造体、及び生体組織接着剤により作製される人工血管であって、
該人工血管において、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は中膜組織で構成され、糊しろ部分に生体組織接着剤が塗布されている該人工血管。
【請求項2】
生体組織接着剤がフィブリン糊である、請求項1に記載の人工血管。
【請求項3】
フィブリノゲンを糊しろ部分に擦り込んだ後にトロンビン及びフィブリノゲンを塗布させている、請求項1又は請求項2に記載の人工血管。
【請求項4】
トロンビンが、1U/mL〜160U/mLである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項5】
フィブリノゲンが4mg/mL〜250mg/mLである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項6】
人工血管の内径が直径約1mm〜約20mmである、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項7】
脱細胞化血管シートが、動物由来の血管をシート状に成型して脱細胞化したもの、又は動物由来の血管を脱細胞化してシート状に成型したものである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項8】
血管が動脈又は静脈から選択される血管である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項9】
血管が大動脈、頸動脈、内胸動脈、橈骨動脈、及び胃大網動脈からなる群より選択される血管である、請求項8に記載の人工血管。
【請求項10】
生体組織接着剤が人工血管の外周表面にコーティングされている、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項11】
耐圧性が400mmHg以上である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の人工血管。
【請求項12】
以下の(1)から(5)の工程を含む人工血管の製造方法:
(1)以下の(A)又は(B)のいずれかに記載の脱細胞化血管シートを作製する工程、
(A)動物由来の血管をシート状に成型して血管シートを作製する工程、及び血管シートを脱細胞化して脱細胞化血管シートを作製する工程、
(B)動物由来の血管を脱細胞化して脱細胞化血管を作製する工程、及び脱細胞化血管をシート状に成型して脱細胞化血管シートを作製する工程、
(2)脱細胞化血管シートをロール構造に成型した際に、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成させ、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は内膜組織を除去し、中膜組織で構成させる工程、
(3)生体組織接着剤を脱細胞化血管シートの糊しろ部分に塗布する工程、
(4)脱細胞化血管シートをロール構造に成型し、糊しろ部分を貼り合わせて人工血管とする工程、および
(5)工程(4)で得られた人工血管の外周表面を生体組織接着剤でコーティングする工程。
【請求項13】
生体組織接着剤がフィブリン糊である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(3)において、フィブリノゲンを糊しろ部分に擦り込む工程、及びトロンビン及びフィブリノゲンを糊しろ部分に塗布する工程を含む、請求項12又は請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
トロンビンが、1U/mL〜160U/mLである、請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
フィブリノゲンが4mg/mL〜250mg/mLである、請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
人工血管の内径が直径約1mm〜約20mmである、請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
血管が動脈又は静脈から選択される血管である、請求項12から請求項17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
血管が大動脈、頸動脈、内胸動脈、橈骨動脈、及び胃大網動脈からなる群より選択される血管である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
脱細胞化が、高静水圧法、界面活性剤、酵素法、高張液低張液法、及び凍結融解法からなる群より選択される脱細胞化である、請求項12から請求項19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
脱細胞化が、脱細胞化後に基底膜構造を維持する脱細胞化である、請求項12から請求項20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
DNaseで処理する工程、及び/又はアルコールで処理する工程をさらに含む、請求項12から請求項21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
製造された人工血管の耐圧性が400mmHg以上である、請求項12から請求項22のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
脱細胞化血管シート又は脱細胞化血管シートをロール構造に成型した脱細胞化管状構造体、及び生体組織接着剤を含む人工血管用キットであって、
該シートにおいて、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は中膜組織で構成される、該キット。
【請求項25】
生体組織接着剤がフィブリン糊である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
フィブリノゲンを糊しろ部分に擦り込んだ後にトロンビン及びフィブリノゲンを塗布させて人工血管とする、請求項24または請求項25に記載のキット。
【請求項27】
トロンビンが、1U/mL〜160U/mLである、請求項24から請求項26いずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
フィブリノゲンが4mg/mL〜250mg/mLである、請求項24から請求項27のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
人工血管の内径が直径約1mm〜約20mmである、請求項24から請求項28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
脱細胞化血管シートが、動物由来の血管をシート状に成型して脱細胞化したもの、又は動物由来の血管を脱細胞化してシート状に成型したものである、請求項24から請求項29のいずれか一項に記載のキット。
【請求項31】
血管が動脈又は静脈から選択される血管である、請求項24から請求項30のいずれか一項に記載のキット。
【請求項32】
血管が大動脈、頸動脈、内胸動脈、橈骨動脈、及び胃大網動脈からなる群より選択される血管である、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
生体組織接着剤が人工血管の外周表面にコーティングされている、請求項24から請求項32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
耐圧性が400mmHg以上である、請求項24から請求項33のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管移植に使用される人工血管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈及び末梢血管のアテローム性硬化症に対しては、外科的置換又はバイパス手術による治療が行われる。直径5mm未満の患部には自己血管が好適な置換移植片であり、その際に最もよく使用されるグラフトは、自己の内胸動脈、橈骨動脈、伏在静脈であり、開存率が良好であることが知られている。しかしながら、グラフトを採取するための侵襲を避けることはできない、その長さや質は症例によってばらつきがある、再手術症例の場合にはすでにグラフトを使用されていることもあり、供給できない等の問題点がある。
【0003】
一方、Dacron, ePTFEなどの人工血管は、四肢末梢動脈血行再建には使用されているが,冠動脈のようなさらに小口径の血管においては早期血栓化、内膜肥厚のために使用することができない。近年では、血管内皮細胞を組織工学的手法により人工血管内に播種させることによって、人工血管内腔を血管内皮細胞で被覆することが可能となっており、これにより血液凝固の予防が可能になっている。しかしながら、手術前に患者から骨髄を採取、培養し、これを人工血管に生着させなければならず、時間がかかる上にその費用も高い。特に冠動脈バイパス術のように緊急で施行しなければならないような症例においてはその有用性は低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、小口径の血管へ移植可能であり、任意の口径を設定可能で、グラフトを採取時の侵襲性が改善され、かつグラフトの供給上の問題が克服された人工血管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、動物由来の血管をシート状に加工した後に脱細胞化処理を施した、又は動物由来の血管を脱細胞化処理した後にシート状に加工したもの(脱細胞化血管シート)について、該シートをロール構造へ成型した際に、内部を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートが重なる部分(糊しろ部分)は内膜組織を除去し、中膜組織で構成されるよう該シートを処理した後、生体組織接着剤でロール構造へ成型させた人工血管が、耐圧性や移植後の開存性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0006】
すなわち、本発明は、脱細胞化されたシート状の血管(脱細胞化血管シート)をロール構造に成型した脱細胞化管状構造体、及び生体組織接着剤により作製される人工血管であって、該人工血管において、人工血管内を流れる血液と接する部分は、中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は中膜組織で構成され、糊しろ部分に生体組織接着剤が塗布されている該人工血管を含みうる。
【0007】
また、本発明は、以下の(1)から(5)の工程を含む人工血管の製造方法を含む。
(1)以下の(A)又は(B)のいずれかに記載の脱細胞化血管シートを作製する工程、
(A)動物由来の血管をシート状に成型して血管シートを作製する工程、及び血管シートを脱細胞化して脱細胞化血管シートを作製する工程、
(B)動物由来の血管を脱細胞化して脱細胞化血管を作製する工程、及び脱細胞化血管をシート状に成型して脱細胞化血管シートを作製する工程、
(2)脱細胞化血管シートをロール構造に成型した際に、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は内膜組織を除去し、中膜組織で構成される工程、
(3)生体組織接着剤を脱細胞化血管シートの糊しろ部分に塗布する工程、
(4)脱細胞化血管シートをロール構造に成型し、糊しろ部分を貼り合わせて人工血管とする工程、および
(5)工程(4)で得られた人工血管の外周表面を生体組織接着剤でコーティングする工程。
【0008】
また、本発明は、脱細胞化血管シート又は脱細胞化血管シートをロール構造に成型した脱細胞化管状構造体、及び生体組織接着剤を含む人工血管用キットであって、該シートにおいて、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は中膜組織で構成される、該キットを含みうる
【発明の効果】
【0009】
本発明では、(1)小口径の人工血管を作製し、冠動脈のような小口径の血管へ移植が可能となる、(2)脱細胞化血管シートから様々な口径の血管を作製することができるため、移植部の血管に適した人工血管を作製することが可能である、(3)血管を異種動物由来とした場合には、自己血管のような供給上の問題や患部以外の組織への侵襲性が改善される、(4)異種動物由来の血管を用いた場合であっても、脱細胞化したスキャホールドのため、免疫拒絶は生じないもしくは大幅に抑制できる、(5)移植後は内腔に内皮が被覆し、スキャホールド内には自己組織を取り込むことから、長期開存性を有し、自己血管に近い理想的な人工血管となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の人工血管を移植時の写真である。
図2図2は本発明の人工血管の移植後3週目における人工血管壁の組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明には、脱細胞化されたシート状の血管(脱細胞化血管シート)をロール構造に成型した脱細胞化管状構造体、及び生体組織接着剤により作製される人工血管であって、該人工血管において、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は中膜組織で構成され、糊しろ部分に生体組織接着剤が塗布されている該人工血管を含みうる。
【0012】
本発明の中膜組織とは、内膜下に存在する弾性板に富んだ層状の組織である。
【0013】
本発明の内膜組織とは、内皮細胞の支持組織(基底膜)と主として膠原線維より成る組織である。
【0014】
本発明の生体組織接着剤は、人工血管の形状を保持するものであり、フィブリン糊、シアノアクリレート系の重合性接着剤、ゼラチンとレゾルシノールをホルマリンで架橋させるゼラチン糊などが例示される。生体組織接着剤としてのフィブリン糊の使用は特に好ましい。
【0015】
本発明の人工血管は、生体組織接着剤としてフィブリン糊を使用する場合には、フィブリノゲンを糊しろ部分に擦り込んだ後にトロンビン及びフィブリノゲンを塗布することが人工血管の耐圧性を向上させる観点から好ましい。
【0016】
本発明の人工血管は、生体組織接着剤としてフィブリン糊を使用する場合には、トロンビンを塗布する際に、トロンビンが1U/mL〜160U/mLであることが好ましい。
【0017】
本発明の人工血管は、生体組織接着剤としてフィブリン糊を使用する場合には、フィブリノゲンを塗布する際に、フィブリノゲンが4mg/mL〜250mg/mLであることが好ましい。
【0018】
本発明の人工血管は、移植部位の血管のサイズに応じて、任意のサイズの内径のものを適宜選択し、作製することが可能である。例えば、内径が直径約1mm〜約20mmのものが選択される。
【0019】
本発明の脱細胞化血管シートは、動物由来の血管をシート状に成型して脱細胞化したもの、又は動物由来の血管を脱細胞化してシート状に成型したものが好ましい。
【0020】
本発明の血管は、動脈又は静脈から選択される血管であることが好ましい。特に血管は大動脈、頸動脈、内胸動脈、橈骨動脈、及び胃大網動脈からなる群より選択される血管であることが好ましい。
【0021】
本発明の人工血管は、生体組織接着剤が人工血管の外周表面にコーティングされている場合に、耐圧性が向上する効果や組織との癒着が減少する効果を奏するため、生体組織接着剤を人工血管の外周表面にコーティングしても構わない。
【0022】
本発明の人工血管は、移植部位に応じて耐圧性を適宜変更しても構わない。好ましくは耐圧性が400mmHg以上のものである。
【0023】
本発明は、以下の(1)から(5)の工程を含む人工血管の製造方法を含みうる。
(1)以下の(A)又は(B)のいずれかに記載の脱細胞化血管シートを作製する工程、
(A)動物由来の血管をシート状に成型して血管シートを作製する工程、及び血管シートを脱細胞化して脱細胞化血管シートを作製する工程、
(B)動物由来の血管を脱細胞化して脱細胞化血管を作製する工程、及び脱細胞化血管をシート状に成型して脱細胞化血管シートを作製する工程、
(2)脱細胞化血管シートをロール構造に成型した際に、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は内膜組織を除去し、中膜組織で構成される工程、
(3)生体組織接着剤を脱細胞化血管シートの糊しろ部分に塗布する工程、
(4)脱細胞化血管シートをロール構造に成型し、糊しろ部分を貼り合わせて人工血管とする工程、および
(5)工程(4)で得られた人工血管の外周表面を生体組織接着剤でコーティングする工程。
【0024】
本発明の人工血管の製造方法は、生体組織接着剤としてフィブリン糊を使用する場合には、(3)の工程において、フィブリノゲンを糊しろ部分に擦り込む工程、及びトロンビン及びフィブリノゲンを糊しろ部分に塗布する工程を含むことが好ましい。
【0025】
本発明の人工血管の製造方法は、脱細胞化が高静水圧法、界面活性剤、酵素法、高張液低張液法、及び凍結融解法からなる群より選択される脱細胞化であることが好ましい。
【0026】
本発明の人工血管の製造方法は、脱細胞化が脱細胞化後に基底膜構造を維持する脱細胞化であることが好ましい。
【0027】
本発明の人工血管の製造方法は、DNaseで処理する工程、及び/又はアルコールで処理する工程をさらに含むことが好ましい。
【0028】
本発明は、脱細胞化血管シート又は脱細胞化血管シートをロール構造に成型した脱細胞化管状構造体、及び生体組織接着剤を含む人工血管用キットであって、該シートにおいて、人工血管内を流れる血液と接する部分は中膜組織で裏打ちされた内膜組織で構成され、該シートをロール構造に成型した際に該シートが重なる部分(糊しろ部分)は中膜組織で構成される、該キットを含みうる。
以下、実施例に従い、本願発明を更に詳細に説明するが、下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
ボルヒールと脱細胞化動脈シートによる小口径人工血管の作製と耐圧試験
(1)実験方法
ブタ大動脈をシート状に形成し、外膜を全体的に剥離、内膜は全体の1/2から2/3の範囲を剥離した。高静水圧印加法で処理し、DNase液で7日間、アルコールで3日間、クエン酸バッファーで3日間洗浄した。作製した脱細胞化ブタ大動脈シートの表面の水分をふき取り、内膜剥離面(中膜組織露出面)にフィブリノゲン液(ボルヒール)を擦り込み、3分後フィブリノゲン液及び10倍希釈トロンビン液(ボルヒール)を混合塗布した。この部分を糊代として5分間圧着してシートをロール状に成型した。この際、人工血管内腔表面に内膜組織のみが露出するようにし、その外側を中膜組織で巻いて二重構造とした。生理食塩液で内腔を洗浄し、人工血管外周にフィブリノゲン液及びトロンビン液をスプレー塗布した。100単位/mLヘパリンナトリウム加生理食塩液に浸漬し、高圧滅菌処理した。作製した人工血管の一端を鉗子でクランプし、反対側の端部にカニューレを挿入して結紮した。カニューレにはシリンジ及びマノメーターを接続した。シリンジ内の生理食塩水を人工血管内に注入し、人工血管が破裂した際の圧力を耐圧力として測定した。
【0030】
(2)結果;耐圧力
375±61.2mmHgの耐圧力が得られた(n=4)。
【実施例2】
【0031】
ヤギにおけるボルヒールと脱細胞化動脈シートによる小口径人工血管の移植試験
(1)実験方法
麻酔下でヤギの右側頚動脈を露出して一部切除し、実施例1にある方法で作製した人工血管(内径約4mm、長さ約5cm)を吻合して自己血管と置換した。吻合部にフィブリノゲン液を擦り込んだ後に、フィブリノゲン液とトロンビン液をスプレー塗布した。処置中はヘパリンナトリウム添加5%糖液を点滴投与し、頚動脈クランプの3分前にはヘパリンナトリウム300単位/kgを単回静脈内投与した。術後の抗凝固処置は行わなかった。処置後3週目に安楽殺し、処置部を採材して病理検査を行った。
【0032】
(2)結果
剖検:いずれの人工血管も開存していた。また、内腔には、血栓、閉塞、又は動脈瘤性拡張の徴候のない滑らかな管腔面を示していた。
病理組織検査:人工血管内腔に内皮細胞の層が認められた(図2)。人工血管壁には自己組織が入り込み、内部に毛細血管新生を伴っており,自己血管様の構造に変化していた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の人工血管は例えば医療用材料の製造業で使用される。
図1
図2