特許第6248064号(P6248064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248064二層ハニカム巻き鋼より線コイル及びその巻取機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248064
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】二層ハニカム巻き鋼より線コイル及びその巻取機
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/02 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   B65H54/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-111409(P2015-111409)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-222427(P2016-222427A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105692
【弁理士】
【氏名又は名称】明田 莞
(74)【代理人】
【識別番号】100161252
【弁理士】
【氏名又は名称】明田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】唐津 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】旗手 伸生
(72)【発明者】
【氏名】上井 宏記
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−224498(JP,A)
【文献】 特開2001−130832(JP,A)
【文献】 特開昭54−118954(JP,A)
【文献】 特開2012−012137(JP,A)
【文献】 米国特許第01968406(US,A)
【文献】 特開2008−179434(JP,A)
【文献】 特開平07−133054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00−54/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼より線をボビンに巻取り、かつ、下積層部(コイルの内側部)から上積層部(コイルの外側部)に向かって鋼より線が引き出されて使用されるリールレスコイルにおいて、コイルの下積層部が、巻き間隔を密にして、巻き線が積層交差するハニカム巻きであり、上積層部が、巻き間隔の粗い巻き線が積層交差するハニカム巻きであることを特徴とする二層ハニカム巻き鋼より線コイル。
【請求項2】
前記下積層部のハニカム巻きの巻き方が、巻き線とボビンの径方向とのなす綾角を、0°〜4.8°の範囲、前記上積層部のハニカム巻きの巻き方が、前記綾角を、4.9°〜10°の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル。
【請求項3】
前記上積層部と前記下積層部の重量割合が、上積層部の重量が全体の5%〜30%、残りが下積層部の重量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル。
【請求項4】
前記鋼より線が、2.9mm径3本よりの鋼より線であって、前記コイルの外形寸法が、外径1,100mm±10%、内径約750mm±10%、幅約750mm±20%であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル。
【請求項5】
より線を巻取る回転ボビンと、該鋼より線を該回転ボビンの胴幅方向に対して往復動して綾振るトラバーサリングと、該トラバーサリングを往復動させるトラバーサ駆動機構と、を備え、該回転ボビンの回転速度と該トラバーサリングの往復動速度とを連動させて、ボビンの回転速度を一定にして、トラバーサリングの綾振り速度を遅い状態から速い状態に、また、トラバーサリングの綾振り速度を一定にして、ボビンの回転速度を速い状態から遅い状態になるように、可変できる回転駆動装置を設けると共に、該トラバーサ駆動機構が、該トラバーサリングの往復動の速度パターンを定速化することを特徴とする二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機。
【請求項6】
前記トラバーサ駆動機構が、前記トラバーサリングを固接したトラバーサレバーと、該トラバーサレバーと連結したコンロッドと、該コンロッドの他端とカムフォロワとを連結したクランクアームを回転させるクランク軸と、該クランク軸の回転速度を変速する変速機構と、を備え、該カムフォロワが菱型形状の固定カムの菱型溝内を遊動することにより、該カムフォロワに該コンロッドを介して連結した該トラバーサレバーを揺動させて該トラバーサリングを該回転ボビンの胴幅方向に対して一定速度で往復動して綾振りさせることを特徴とする請求項5に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機。
【請求項7】
前記回転駆動装置が、可変速の油圧又は電動の駆動モータの出力を二つに分割して、一つは前記回転ボビンを駆動し、他の一つは前記トラバーサ駆動機構にある前記変速機構の入力軸に連結されることを特徴とする請求項6に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼より線を巻いたリールレスコイルであって、従来のハニカム巻きコイルと比べて、荷姿(内径、外径、幅)を同じにしたままで、1巻き当たりのコイル重量を大きくしても、線引き出し性を良好に保ち、巻取り時および引き出し使用時の段取作業の回数を削減できると共にコイルの保管場所を省スペース化することができる二層ハニカム巻き鋼より線コイル及びその巻取機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼より線のコイルには、コイルの内側から鋼より線を引き出して使用する構造のリールレスコイルがある。使用する際は、コイルの内側から順次鋼より線が引き出されるので、コイルの厚みは徐々に薄くなっていく。従来、コイルの径方向に対して綾角を設け、鋼より線の巻き間隔を粗く交差積層して巻きつけるハニカム巻きと呼ばれる巻き方を用いることによって、コイルの厚みが薄くなる使用終盤においても、安定したコイル形状を保ち続けることができるようになり、コイルの最後まで作業効率を落とさずに使用することができる。
【0003】
一方、普通巻き(整列巻き)と呼ばれコイルの中心軸に対してほぼ直角で間隔を密にして巻く方法があり、この普通巻きを用いると、コイルの厚みが薄くなった使用終盤に、コイルが自立せずに倒れたりして、引き出す鋼より線が引掛ったりして、引き出し作業を中断しなければならない事態が発生し、それを修正するための時間が必要となって、作業効率が低下していた。
【0004】
例えば、線条材の繰り出し方法およびその装置の発明では、巻きコイル自体が回転しないコイルにおいて、巻線形状が不適当な場合には、引掛りを生じることが記載されている(参考文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−185874号公報(〔0003〕表1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ハニカム巻きは、鋼より線の巻き間隔を粗く交差積層して巻くために、鋼より線の充填率が低くなり、コイルの寸法(内径、外径、幅)が同一のものでは、普通巻きのように巻き間隔が密なコイル巻きと比べて、1巻き当たりのコイル重量(コイル単重)は小さくなる。よって、コイル単重が小さいが故に、巻取り及び巻戻しの段取作業の回数が多くなって、作業効率が悪くなるという問題があった。また、容積当りのコイル単重が小さいので、コイルの保管場所のスペースも多く必要となるという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、従来のハニカム巻きコイルと荷姿(内径、外径、幅)を同じにしたままで、ハニカム巻きを改良することにより、巻き線の引出し性を良好にし、かつ、巻取り及び巻戻し時の段取作業の回数を削減できると共にコイルの保管場所を省スペース化することができる二層ハニカム巻き鋼より線コイル及びその巻取機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、鋼より線をボビンに巻取り、かつ、下積層部(コイルの内側部)から上積層部(コイルの外側部)に向かって鋼より線が引き出されて使用されるリールレスコイルにおいて、コイルの下積層部が、巻き間隔を密にして、巻き線が積層交差するハニカム巻きであり、上積層部が、巻き間隔の粗い巻き線が積層交差するハニカム巻きであることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、請求項1に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイルにおいて、前記下積層部のハニカム巻きの巻き方が、巻き線とボビンの径方向とのなす綾角を0°〜4.8°の範囲、前記上積層部のハニカム巻きの巻き方が、前記綾角を、4.9°〜10°の範囲とすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、請求項1又は2に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイルにおいて、前記上積層部と前記下積層部の重量割合が、上積層部の重量が全体の5%〜30%、残りが下積層部の重量であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、請求項1又は2又は3に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイルにおいて、前記鋼より線が、2.9mm径3本よりの鋼より線であって、前記コイルの外形寸法が、外径1,100mm±10%、内径約750mm±10%、幅約750mm±20%であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、リールレスコイルなので、下積層部(コイルの内側部)から上積層部(コイルの外側部)に向かって鋼より線が引き出されて使用される。また、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、使用の序盤から中盤にかけて使用される下積層部(コイルの内側部)と、終盤に使用される上積層部(コイルの外側部)とで、鋼より線のハニカム巻きの巻き間隔が異なっている。即ち、コイルの下積層部では、ハニカム巻きの綾角(コイルの軸に直角な線に対する鋼より線の巻かれる角度)を0°に近くなるようにしているので巻き間隔が密になっており、コイルの上積層部では、ハニカム巻きの綾角を大きくしているので、巻き間隔が粗くなっている。
【0013】
この構成を採用することにより、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルは、コイルの寸法(内径、外径、幅)が、従来のコイルの寸法と同一寸法であっても、下積層部では、鋼より線の重量(長さ)をより大きく確保するすることができると共に、終盤に使用される上積層部では、ハニカム巻きの層が薄くなっても、コイルの型が崩れず、また引き出す鋼より線が引掛ったりしないので、引き出し作業を中断することがない。よって、同じ寸法の従来のコイルよりもコイル単重(即ち、鋼より線の長さ)が大きいので、引き出し作業の段取りの回数を減らせると共に、コイル総重量あたりの保管場所の面積を小にすることができ、省スペース化ができる。また、コイルの梱包資材も節約することができる。
【0014】
また、ハニカム巻き鋼より線コイルに関して、線の引出し性を良好にし、かつ、同一容積でコイル単重を大きくするために鋭意実験研究した結果、二層ハニカム巻きの構造で、下積層部の綾角が0°〜4.8°の範囲、上積層部の綾角が4.9°〜10°の範囲、また、下積層部と上積層部の重量割合は、上積層部の重量が全体の5%〜30%、残りが下積層部の重量とすることが好適であるとわかった。
【0015】
また、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルの荷姿を、外径約1,100mm、内径約750mm、幅約750mmの寸法にすることにより、従来の汎用されているコイルの外形寸法とほぼ同じであるので、鋼より線を加工するための引き出し作業において、従来の引き出し設備や治具が使用できる。よって、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルを使用する加工業者は、従来の設備等のままで、鋼より線の引き出し作業の段取り回数を減らせて作業効率を上げると共にコイルの保管場所を省スペース化できる。
【0016】
請求項5に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機は、より線を巻取る回転ボビンと、該鋼より線を該回転ボビンの胴幅方向に対して往復動して綾振るトラバーサリングと、該トラバーサリングを往復動させるトラバーサ駆動機構と、を備え、該回転ボビンの回転速度と該トラバーサリングの往復動速度とを連動させて、ボビンの回転速度を一定にして、トラバーサリングの綾振り速度を遅い状態から速い状態に、また、トラバーサリングの綾振り速度を一定にして、ボビンの回転速度を速い状態から遅い状態になるように、可変できる回転駆動装置を設けると共に、該トラバーサ駆動機構が、該トラバーサリングの往復動の速度パターンを定速化することを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機は、請求項5に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機において、前記トラバーサ駆動機構が、前記トラバーサリングを固接したトラバーサレバーと、該トラバーサレバーと連結したコンロッドと、該コンロッドの他端とカムフォロワとを連結したクランクアームを回転させるクランク軸と、該クランク軸の回転速度を変速する変速機構と、を備え、該カムフォロワが菱型形状の固定カムの菱型溝内を遊動することにより、該カムフォロワに該コンロッドを介して連結した該トラバーサレバーを揺動させて該トラバーサリングを該回転ボビンの胴幅方向に対して一定速度で往復動して綾振りさせることを特徴とする請求項5に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機。
【0018】
請求項7に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機は、請求項6に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機において、前記回転駆動装置が、可変速の油圧又は電動の駆動モータの出力を二つに分割して、一つは前記回転ボビンを駆動し、他の一つは前記トラバーサ駆動機構にある前記変速機構の入力軸に連結されることを特徴とする。
【0019】
請求項5、請求項6、請求項7に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機によれば、前記鋼より線を巻取る回転ボビンと、該鋼より線を該回転ボビンの胴幅方向に対して往復動して綾振るトラバーサリングと、該トラバーサリングを固接したトラバーサレバーと、該トラバーサレバーと連結したコンロッドと、該コンロッドの他端とカムフォロワとを連結したクランクアームを回転させるクランク軸と、該クランク軸の回転速度を変速できる変速機構と、該変速機構と該回転ボビンとに回転を分割伝動させる回転駆動装置と、を少なくとも備える鋼より線の巻取り機であって、該カムフォロワが菱型形状の固定カムの菱型溝内を遊動することにより、該カムフォロワに該コンロッドを介して連結した該トラバーサレバーを揺動させて該トラバーサリングを該回転ボビンの胴幅方向に対して一定速度で往復動して綾振りさせること、また、該回転ボビンの回転数の設定を変えると共に相対的に該トラバーサリングの往復動速度の設定を変えることができる。
【0020】
この場合、ボビンの回転速度を一定にして、トラバーサリングの綾振り速度を速くするとハニカム巻きコイルの巻き間隔は粗くなり、遅くすると巻き間隔は密になる。また、トラバーサリングの綾振り速度を一定にして、ボビンの回転速度を速くすると、ハニカム巻きコイルの巻き間隔は密になり、遅くすると巻き間隔は粗くなる。よって、ボビンの回転速度とトラバーサリングの綾振り速度を変えることによりハニカム巻きの巻き間隔を自由自在に変えることが可能となる。
【0021】
また、トラバーサリングを固接したトラバーサレバーに連結されるコンロッドの他端はカムフロワーと一緒にクランクアームに連結され、このクランクアームを回転させると、前記カムフロワーは菱型固定カムの菱型溝内を倣い滑走することにより、トラバーサレバーの揺動速度が一定で、かつシャープに折り返すことができ、結果的にトラバーサリングの左右の綾振り速度を一定に、折り返しを鋭くできる。即ち、回転するカムフロワーはクランクアームの軸方向にスライドして往復動する軌跡を描き、これによりコンロッドを介してトラバーサレバーを一定の往復動速度で揺動する。これにより回転ボビンの両端部で、鋼より線が多く巻取られることによって発生するコイルの荷姿が中央部が凹んだ所謂「鼓型形状」となることを防止でき、綺麗な円柱形状のコイルに鋼より線を巻取ることができる。従来のクランクアームとコンロッドを直結した構造の場合、クランク軸の回転により、クランクアームとコンロッドの連結点は円形を描き、コンロッドは一定速度で往復動せず、折り返し点で速度が停滞し、結果的にトラバーサリングが折り返し点で速度が停滞するするので、コイルの巻取り形状が鼓型形状と成り易い。
【0022】
したがって、本発明の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機によれば、鋼より線の巻取りに関して、トラバーサリングの綾振り速度を一定にして、巻取り作業の序盤から中盤までボビンの回転速度を上げて一定に保ち、終盤はボビンの回転速度を下げて一定に保つことによって、コイルの下積層を鋼より線の間隔が密なハニカム巻きに、コイルの上積層を鋼より線の間隔が粗いハニカム巻きの二層ハニカム巻き鋼より線コイルを作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る請求項1から4に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイルによれば、従来と同寸法のハニカム巻きコイルでありながら、重量を重く(鋼より線の延長を長く)しているので、コイルの製作時には巻取りボビンの入れ替え回数が減少でき、またコイルの使用時には鋼より線の引き出しを良好に保ちながら、コイル替えの段取り回数を減らすことができ、作業の効率化を図ることができる。また、コイルの梱包資材を節減できるし、コイルの保管場所も省スペース化することができる。
【0024】
また、本発明に係る請求項5から7に記載の二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機によれば、ボビン回転数とトラバーサリングの往復動速度を調節して、任意に綾角の違うハニカム巻きコイルを巻取ることができるので、コイルの内側(下積層部)と外側(上積層部)で鋼より線の充填率の違うコイルを仕立てることができ、ひいては、鋼より線の引き出し性を良好にし、荷姿が同じでもコイル単重を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施するための形態に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルの模式的斜視図である。
図2図1における、外側のハニカム巻き一層を示す模式的正面図である。
図3図1における、内側のハニカム巻き一層を示す模式的正面図である。
図4】本発明の実施するための形態に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル巻取機の模式図である。
図5図4のトラバーサ駆動機構を示す模式図である。
図6図5のトラバーサリングの軌跡を示す図であって、トラバーサリングの振幅と経過時間との関係を示すグラフで、(a)は、従来のタイプのクランクアームによるグラフであり、(b)は、本発明のトラバーサ駆動機構によるグラフである。
図7】本発明の実施するための形態に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルであって、コイルの保管状態を示す模式的正面図と平面図であって、(a)は、従来のコイルの図であり、(b)は、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、通常、以下に説明する工程で作製する。原線材を酸洗いなどの前処理した後、伸線機で伸線加工し、所定本数の素線を撚線機でより(撚り)加工した後、熱処理を施して鋼より線をコイル状に巻き取る。次いで、鋼より線コイルから鋼より線を引き出し、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20にて二層ハニカム巻き鋼より線コイル1を作製する。前記鋼より線としては、例えば鉄道のコンクリート枕木の緊張材として用いられる2.9mm径3本よりのPC鋼より線がある。
【0027】
図1図2図3に示すように、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、鋼より線11を巻いた内部が空洞のリールレスコイル1であって、上積層部と下積層部とで巻き方が異なっており、下積層部が、巻き間隔を密にしたハニカム巻き3であり、上積層部が、巻き間隔の粗いハニカム巻き2である。なお、鋼より線11は、たとえば、2.9mmφ鋼線を3本よったPC鋼より線等がある。
【0028】
図2に示すように、鋼より線11と、コイル1の軸に直角な線と、のなす角は、綾角2−1といわれ、ハニカム巻き2は、綾角2−1が、大きくなって、鋼より線11の巻き間隔が粗になっている。よって、巻き間隔が粗なハニカム巻きコイル2は、コイル2の厚みが薄くなった使用終盤においても、コイル2の束が転倒し、また、鋼より線11がコイル2の束に挟まれることによって、引き出せなくなることがなく、鋼より線11を引き出す作業を安定して続けることができる。よって、巻き間隔が粗なハニカム巻きコイル2は、使用終盤の鋼より線11の引き出し作業を効率よくできる。なお、綾角2−1は、綾角4.9°〜10°の範囲が、使用の終盤でもコイルの荷姿が崩れず、引き出し性も良好で、安定した引き出し作業に好適であることがわかった。
【0029】
図3に示すように、巻き間隔が密なハニカム巻きコイル3は、綾角3−1が、小さくなって、鋼より線11の巻き間隔が密になっている。よって、巻き間隔が密なハニカム巻きコイル3は、図2のコイル2に比べて同じ荷姿(外径、内径、幅)であれば、鋼より線11の長さ(重さ)を大きくできる。なお、綾角3−1は、綾角0°〜4.8°が重量を大きくすることに好適で、かつ、使用の序盤と中盤において引出し性も良好である。
【0030】
よって、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、下積層部が、巻き間隔を密にしたハニカム巻き3であるので、重量を大きくすることができると共に、上積層部が、巻き間隔の粗いハニカム巻き2であるので、引き出し作業終盤でもコイル1の束が倒れたり、鋼より線11がコイル1の束に挟まれることなく鋼より線11の引き出し作業が円滑にできる。よって、同じ外形の従来コイルに比して本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、コイル単重が大きいので(線長が長い)、コイルの巻取り作業や引き出し作業において、段取り作業の回数が削減できて作業効率がよい。また、図7に示すように、逆に同じ長さ当たりや重量当たりのコイル1の数を減少させることができるので、コイル1の保管場所を省スペース化することができる。なお、上積層部2の重量が全体の5%〜30%、残りが下積層部3の重量とすることが、コイル単重及び使用終盤の鋼より線の引出し性の観点から好適である。
【0031】
次に、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1の製造について説明する。本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20によって作成される。図4に示すように、二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20は、鋼より線11を巻取るために回転するボビン40上で、通過する鋼より線11を左右に綾振ってボビン40上でハニカム形状に仕上げるトラバーサリング21と、トラバーサリング21を固接したトラバーサレバー22と、トラバーサレバー22を左右に揺動させるコンロッド23を連結するカムフォロワー32が連結されたクランクアーム30と、クランクアーム30を回転させるクランク軸31と、クランク軸31の回転速度を変速して伝動する変速機構(図示しない)と、該変速機構に回転を伝動させる回転駆動装置(図示しない)と、を少なくとも備えた二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20である。
【0032】
また、二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20のトラバーサ駆動機構20−1には、図5に示すように、クランクアーム30にはスライダー部30−1が設けてあり、コンロッド23との連結点であるカムフォロワー32が固定カム34の菱型をかたどるカム溝33内を嵌合して滑動すると同時にカムフォロワー32がクランクアーム30のスライダー部に嵌合して滑動する。そのカムフォロワー32が、菱形形状のカム溝33を辿ることによって、図6(b)に示すように、トラバーサリング21の綾振りの位置を経過時間に対して表しており、トラバーサリング21が一定速度で左右に綾振りすることができると共に、両端の折り返し点でシャープに方向転換できている。
【0033】
よって、綾振り速度が緩速で一定になっても、ハニカム巻きコイルの両端部に鋼より線が多く巻取られ配線されることによって発生するコイルの荷姿が中央部が凹んだ所謂「鼓型形状」となることを防止でき、綺麗な円柱形状のコイルに鋼より線を巻取ることができる。
【0034】
また、二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20の回転駆動装置(図示しない)は、可変速の油圧又は電動の駆動モータの出力を二つに分割して、一つは回転ボビン40を駆動し、他の一つは出力軸がクランク軸31に繋がる前記変速機構の入力軸に連結されている。この機構により、ボビン40の回転速度を一定にして、変速機構によりクランク軸31の回転を早くして、トラバーサリング21の綾振り速度を速くするとハニカム巻きコイル1の巻き間隔は粗くなり、遅くすると巻き間隔は密になる。また、トラバーサリング21の綾振り速度を一定にして、ボビン40の回転速度を速くすると、ハニカム巻きコイル1の巻き間隔は密になり、遅くすると巻き間隔は粗くなる。よって、ボビン40の回転速度とトラバーサリング21の綾振り速度を変えることによりハニカム巻きの巻き間隔を自由自在に変えることが可能となる。なお、変速機構は、例えばVベルトと可変径プーリーとの組み合わせによって、回転速度を変化させることができる。
【0035】
巻き間隔が密なハニカム巻きコイル3を作製しようとすれば、トラバーサリング21の綾振り速度を緩速にする必要がある。また、巻き間隔が粗なハニカム巻きコイル2を作製しようとすれば、トラバーサリング21の綾振り速度を急速にする必要がある。二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20には、駆動モータから変速機構を経てクランク軸30に回転を伝えている。これによって、駆動モータの回転数を一定にしていても、変速機構によって回転数を変えることができるので、トラバーサリング21の綾振り速度を変えることができる。よって、綾振り速度を変えることによって、コイル1の綾角2−1、3−1を変えることができるので、巻き間隔を密な状態から粗な状態に変化した二層ハニカム巻き鋼より線コイル1を作成することができる。
【0036】
本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、前述したように二層ハニカム巻き鋼より線巻取機20を用いて、2.9mm径鋼製3本より線11をトラバーサリング21に通して先端部をボビン40に固定して、ボビン40を回転させて巻取ってコイル1を作製していく。この際に、初めは、クランク軸30の回転速度を変速機構によって緩速で回転させて綾振り速度を遅くし、全体量の80%程度まで巻取って、巻き間隔の密な下積層部3を作製し、次に変速機構によって、クランク軸30の回転速度を上げて綾振り速度を上げ、残りの20%程度を巻取って、巻き間隔の粗な上積層部2を作製することにより、本発明に係る二層ハニカム巻き鋼より線コイル1を作製することができる。例えば、下積層部3では、トラバーサリング21が、左から右に1回振る間に、ボビン40を4回転させることができ、また、上積層部2では、同様にしてボビン40を2.5回転させることができる。この際の綾角3−1は、約4.6°となり、綾角2−1は、約7.3°となる。
【0037】
完成した二層ハニカム巻き鋼より線コイル1は、外径寸法が、外径約1,100mm、内径約750mm、幅約750mmが、従来の荷姿と同じなので、作製に用いる巻取機20を、従来の巻取機20を使用することができると共に、需要家も従来と同じ装置や治具を使用できるので好適である。なお、このときの重量は従来の略670kgに比べて増加して略1tとなる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
鋼線または鋼より線の巻取りコイル及び巻取りコイルの作製する巻取機の分野で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:二層ハニカム巻き鋼より線コイル
2:巻き間隔が粗なハニカム巻きコイル(上積層部)
2−1:綾角
3:巻き間隔が密なハニカム巻きコイル(下積層部)
3−1:綾角
11:鋼より線
20:二層ハニカム巻き鋼より線巻取機 20−1:トラバーサ駆動機構
21:トラバーサリング
22:トラバーサレバー
22−1:力点 22−2:支点
23:コンロッド
30:クランクアーム 30−1:スライダー部
31:クランク軸
32:カムフォロア
33:カム溝
34:固定カム
40:ボビン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7