(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチングモード時に各プリドライバからそれぞれ出力される出力信号で同期整流方式により交互にオン/オフ動作するとともに、一端側が1次電源に接続されたスイッチング素子である第1のトランジスタと、一端側が接地されたスイッチング素子である第2のトランジスタとを有し、他端側同士を介して直列に接続した前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間からコイルおよび出力端子を介して得る所定の出力電圧を負荷に印加するスイッチング電源回路であって、
前記スイッチングモードが終了した後の出力残留電荷を放電する放電モード時に、該放電モードを表す放電制御信号に基づき動作して前記第2のトランジスタが所定の一定電流を流すように制御する放電制御回路を有するとともに、
前記放電制御回路は、前記第2のトランジスタとカレントミラー回路を形成することにより前記第2のトランジスタが所定の一定電流を流すように構成し、
さらに前記各プリドライバのうち前記第2のトランジスタに出力信号を出力するプリドライバと、前記第2のトランジスタとの間に第1のスイッチ手段を設けるとともに、前記放電制御回路のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間に第2のスイッチ手段を設け、前記放電モード時には、前記放電制御信号で前記第1のスイッチ手段を開放することにより前記第2のトランジスタに出力信号を出力する前記プリドライバから前記第2のトランジスタへの出力信号の供給を遮断すると同時に、前記放電制御信号で前記第2のスイッチ手段を投入することにより前記第2のトランジスタで前記ミラー回路が形成されるように構成したことを特徴とするスイッチング電源回路。
【背景技術】
【0002】
電子機器の低消費電力要求に伴い処理用のプロセッサの低動作電圧化が進んでいる。かかるプロセッサの電源としては、同期整流方式で動作するDC/DCコンバータを有するスイッチング電源回路が汎用されている。DC/DCコンバータは電源として一般的に用いられている技術であり、リニアレギュレータなどより電圧変換時の電力損失が少ないという特長を有している。したがって、動作に際して低電圧大電流を要するプロセッサの電源用途としては最適である。
【0003】
機器内では、プロセッサ用の低電圧系統の他に、メモリ用、アナログ部品用、機械部品用と、幾つかの電源系統が備えられる。これらの電源系統の電圧は、おおもとの1つの電源から個別に所定電圧を生成するか、または電圧の高いものから低いものへと順に降圧することで生成する。機器内で使用する部品の中には、電圧値が異なる複数の電源系統を必要とするものもある。
【0004】
複数電源を要する部品が半導体素子である場合、与える電源系統の順序が適正でないと、半導体素子内に存在する寄生素子が意図せず動作して部品に損傷を与える危険がある。よって、複数電源系統を持つ機器では、それぞれの電源系統に電圧を投入/遮断する、電源オンシーケンス/オフシーケンスが定められている。ここで、電源オンシーケンスは電圧の高い電源系統から投入され、電源オフシーケンスでは電圧の低い電源系統から遮断されていくのが一般的である。
【0005】
電源オンシーケンスは、各電源系統を出力生成する電源部品を動作開始させるタイミングとそれら電源が所要の電圧値を出力するまでの時間で達成される。電源オフシーケンスは、各電源系統を出力生成する電源部品を動作停止させるタイミングと各電源系統の電圧値が低下するまでの時間で達成される。
【0006】
電源オフシーケンスにおいては電源部品の出力動作を停止させる前に、各電源系統下にある負荷の動作が予め停止させられている。よって、電源部品が動作停止すると各電源系統から消費される電流は、高抵抗負荷やリーク電流などによるごく小さい電流である。各電源系統と接地の間には電圧安定化の為にコンデンサが設けられているが、電源部品の動作停止の後に各電源系統の負荷が低電流消費状態であると、これらの電源系統の電圧が低下するのに時間がかかってしまう。このため、電源部品には出力している電源系統に残留する電荷を放電する機構が備えられているものもある。放電する機構としては、例えば特許文献1で開示されているように、専用の放電回路を電源内に備えるものもある。しかしながら、専用回路を付加するためには追加のコストが必要になる。そこで、コスト増を回避しつつ所定の放電を行わせるために、DC/DCコンバータが内蔵しているスイッチング用のトランジスタを用いる方法が、例えば特許文献2で提案されている。特許文献2では、電源部品に停止信号が与えられるとコイルと接地間のスイッチング用のトランジスタを導通状態にして出力の電荷を放電させている。
【0007】
ところが、特許文献2に開示する技術では、安定化用のコンデンサの容量値が大きい場合、コンデンサに蓄えられる電荷も多くなるので、放電時に過大な電流が流れて放電経路中のコイルやスイッチング用のトランジスタを破損する恐れがある。
【0008】
かかる問題を解決するものとして特許文献3に開示する技術が提案されている。特許文献3では放電電流を観測し、電流値がある値を超えると接地側のスイッチング用のトランジスタを導通状態から不導通状態として過大な電流が流れるのを防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献3に開示するように、放電電流の電流値が所定の閾値を超えたときに接地側のトランジスタを不導通とさせると、1次電源とコイルとの間の非接地側のトランジスタ、あるいは前記トランジスタのドレインをアノード、バックゲートをカソードとする寄生ダイオードを介して、出力安定化用のコンデンサからコイルおよび前記非接地側のスイッチング用のトランジスタ、あるいは寄生ダイオードを介して電源部品の1次電源へと放電経路が形成される場合がある。この場合には、前記出力安定化用のコンデンサから接地という放電経路を形成するフェーズと、出力用のコンデンサから1次電源という放電経路を形成するフェーズを交互に行き来しながら電荷を放電していく。
【0011】
ここで負荷がプロセッサである場合、電源の変動による誤動作を防ぐ為に静的にも動的にも高い精度の電圧供給が求められ、急峻な駆動電流に起因する電源電圧の変動に対処する為に、容量値の大きい安定化用のコンデンサが出力側に設けられる。安定化用のコンデンサの出力容量値が大きくなると、放電する電荷も増えるので、出力用のコンデンサから1次電源という放電経路が生じる頻度も多くなる。電源部品の1次電源にも安定化のために容量が設けられているが、1次側への放電頻度が多くなるのに伴って与えられる電荷量も増えることにより、1次電圧が上昇する。放電によって上昇した1次側電圧が電源部品の定格電圧を超えると電源部品が破損する場合がある。この結果、1次電圧の過上昇を防止するために、電源部品の出力容量値が大きい場合には、1次側のコンデンサの容量値も大きくする必要があり、コストアップの原因となる。
【0012】
本発明は、上記従来技術に鑑み、出力に設けられたコンデンサが大容量であっても、コストアップを招来することなく放電モードにおいては安全かつ円滑に所定の放電を行うことができるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
スイッチングモード時に各プリドライバからそれぞれ出力される出力信号で同期整流方式により交互にオン/オフ動作するとともに、一端側が1次電源に接続されたスイッチング素子である第1のトランジスタと、一端側が接地されたスイッチング素子である第2のトランジスタとを有し、他端側同士を介して直列に接続した前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間からコイルおよび出力端子を介して得る所定の出力電圧を負荷に印加するスイッチング電源回路であって、
前記スイッチングモードが終了した後の出力残留電荷を放電する放電モード時に、該放電モードを表す放電制御信号に基づき動作して前記第2のトランジスタが所定の一定電流を流すように制御する放電制御回路を有するとともに、
前記放電制御回路は、前記第2のトランジスタとカレントミラー回路を形成することにより前記第2のトランジスタが所定の一定電流を流すように構成し、
さらに前記各プリドライバのうち前記第2のトランジスタに出力信号を出力するプリドライバと、前記第2のトランジスタとの間に第1のスイッチ手段を設けるとともに、前記
放電制御回路のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間に第2のスイッチ手段を設け、前記放電モード時には、前記放電制御信号で前記第1のスイッチ手段を開放することにより前記第2のトランジスタに出力信号を出力する前記プリドライバから前記第2のトランジスタへの出力信号の供給を遮断すると同時に、前記放電制御信号で前記第2のスイッチ手段を投入することにより前記第2のトランジスタで前記ミラー回路が形成されるように構成したことを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0014】
本態様によれば、第2のトランジスタが放電回路を形成するので、放電に際して別途回路や素子を設ける必要が無く、また、第2のトランジスタを介して放電する電流を
放電制御回路により一定値に制限しているので、放電回路を形成するコイルやトランジスタなどの損傷を防ぐことができる。さらに、出力端子から接地への経路を有する放電回路のみを用いるので1次電源等への電荷移動が無く、1次電圧の変動を抑制するための手段を簡素化することができる。
また、本態様では、ミラー回路を利用しているので、第2のトランジスタが所定の一定電流を流すように容易且つ高精度に形成することができる。
【0019】
本発明の
第2の態様は、
第1の態様に記載するスイッチング電源回路において、
前記カレントミラー回路には、可変電流源が接続されていることを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0020】
本態様によれば、第2のトランジスタを流す所定の一定電流を容易に調整することができる。この結果、一定電流を動的に設定して放電電流の制限値を動的に制御することもできる。
【0021】
本発明の
第3の態様は、
第1の態様に記載するスイッチング電源回路において、
前記カレントミラー回路は複数のミラー比を選択できることを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0022】
本態様によれば、ミラー比を選択することにより、第2のトランジスタを介して流す放電電流の制限値を制御することができる。
【0023】
本発明の
第4の態様は、
第1の態様に記載するスイッチング電源回路において、
前記カレントミラー回路は、直列に接続した複数のカレントミラー回路を含むことを特徴とするスイッチング電源回路にある。
【0024】
本態様によれば、相互のミラー比を適宜設定することで、第2のトランジスタを介して流す放電電流の制限値を調整することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、スイッチング用のトランジスタのうち、コイルと接地との間に接続されている第2のトランジスタに、この第2のトランジスタを介して出力用のコンデンサから接地へ流れる放電電流を一定値に制限する機能を放電制御回路で実現することができる。すなわち、第2のトランジスタが出力用のコンデンサの放電回路を兼ねている。
【0032】
この結果、別途放電を行わせるための回路や素子を付加する必要がなく、コストの低減に寄与し得るばかりでなく、出力用のコンデンサの電荷を接地に放電する際には、放電電流を一定値に制限しているので、放電電流が過大な値に至ることがなく、このときの放電回路を構成するコイルやスイッチング用のトランジスタなどの損傷を良好に防止し得る。
【0033】
さらに、出力用のコンデンサから1次電源へという放電経路が形成されることがない。この結果、放電に伴う1次電源の電圧上昇を生起することもない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源回路を示す回路図である。同図に示すように、本形態に係るスイッチング電源回路は、同期整流方式のDC/DCコンバータを構成している。さらに詳言すると、スイッチング素子である第1のトランジスタ8はP型のMOSトランジスタであり、一端側のソースが1次電源1に接続されている。1次電源1には電圧安定化用のコンデンサ2が並列に接続してある。他のスイッチング素子である第2のトランジスタ9はN型のMOSトランジスタであり、一端側であるソースが接地されている。トランジスタ8,9はそれぞれの他端側のドレイン同士を介して直列に接続してある。トランジスタ8,9のスイッチング動作に伴い生成される所定の電圧は、トランジスタ8,9の間からコイル3および出力端子Voutを介して外部の負荷5に印加される。出力端子Voutには、電圧安定化用のコンデンサ4が負荷5と並列に接続してある。
【0036】
出力端子Voutの電圧情報は、スイッチング制御回路7にフィードバックされる。スイッチング制御回路7にフィードバックされた出力端子Voutの出力電圧Voは、分割抵抗71,72で、出力電圧Voと分割抵抗71,72の抵抗値で決定される分割比とで規定されるフィードバック電圧信号として増幅器73に供給される。増幅器73には分割抵抗71,72で規定されるフィードバック電圧信号とともに、基準電圧源74から基準電圧Vrefが印加される。かくして増幅器73は供給された2つの電圧信号の電圧値の差分を増幅した増幅信号を比較器75の反転入力端子に印加する。比較器75の非反転入力端子には三角波発生器76が発生する三角波信号が印加される。かくして、比較器75では増幅器73の出力である前記増幅信号の電圧値と三角波発生器76の出力である前記三角波信号の電圧値とを比較し、三角波信号の電圧値が高い場合はHi信号を、増幅信号の電圧値が高い場合はLo信号を出力する。比較器75の出力信号はスイッチロジック77を介してプリドライバ回路10へ供給される。
【0037】
プリドライバ回路10は、トランジスタ8を駆動する為のプリドライバ101と、トランジスタ9を駆動するためのプリドライバ102で構成される。プリドライバ101の出力はトランジスタ8のゲートに接続され、プリドライバ102の出力はトランジスタ9のゲートに接続されており、それぞれスイッチング制御回路7から供給される信号に従ってトランジスタ8,9を駆動する。
【0038】
プリドライバ102とトランジスタ9の間にはスイッチ12が設けられている。このスイッチ12は、放電制御信号DISCHGにより開閉される。放電制御信号DISCHGはスイッチロジック77と、スイッチ12と、スイッチ13とに供給される。放電制御信号DISCHGがLoレベルである場合、スイッチロジック77は比較器75の出力信号と同論理の信号をプリドライバ回路10へ供給するとともに、スイッチ12を閉状態、スイッチ13を開状態とする。すなわち、放電制御信号DISCHGがLoレベルである場合、DC/DCコンバータ6は、出力端子Voutを所定の電圧値に保つ降圧DC/DCコンバータとして動作する。
【0039】
一方、放電制御信号DISCHGがHiレベルである場合、スイッチロジック77は比較器75の出力信号に関わらず、トランジスタ8が不導通動作となる論理の信号をプリドライバ101へ与えるとともに、スイッチ12が開状態となり、スイッチ13が閉状態となる。このとき、出力端子Voutの電圧値に関わらずトランジスタ8は不導通状態であり、トランジスタ9のゲートは放電制御回路11により駆動される。
【0040】
ここで、放電制御回路11は電流源111とN型のMOSトランジスタであるトランジスタ112とから成り、電流源111からはダイオード接続されたトランジスタ112のドレイン-ゲート共通端子へ定電流Idisが与えられている。
【0041】
トランジスタ112は、トランジスタ9とミラー回路を構成した際にドレイン電流が1:N(Nはミラー比)となるようにチャネル幅とチャネル長が決定されている。かくして、放電制御信号DISCHGがHiである場合、トランジスタ8はオフ状態であり、トランジスタ9とトランジスタ112がミラー回路を構成する。したがって、トランジスタ9のドレイン電流はN×Idisである。
【0042】
次に、上述の如き構成の本形態に係るスイッチング電源回路の動作に伴う各部の波形を図面に基づき説明する。
図2は
図1に示すスイッチング電源回路の動作を表す各部の波形を示す波形図で、同図(a)はトランジスタ8のゲート電圧、(b)はトランジスタ9のゲート電圧、(c)は増幅器73の出力信号と三角波発生器76の出力信号、(d)は比較器75の出力信号、(e)はコイル3の電流(出力端子Voutへ向かう方向を正とする)、(f)は出力電圧Vo、(g)は放電制御信号、(h)はトランジスタ9のドレイン電流(ドレインからコイル3へ向かう方向を正とする)を示す。
【0043】
図2では、出力側のコンデンサ4の放電動作開始直前であって負荷電流が0の平衡状態からの波形を示している。ここで、
図2(g)に示す放電制御信号DISCHGがLoレベルの期間は通常動作期間であり、Hiレベルの期間は出力放電動作期間である。
【0044】
<通常動作期間>
通常動作期間中は、出力端子Voutの電圧は分割抵抗71,72の抵抗値と、基準電圧源74が与える基準電圧Vrefにより決定されている。ここで、分割抵抗71の抵抗値をR71、分割抵抗72の抵抗値をR72とすると、出力端子Voutの出力電圧Vo=Vref×(R71+R72)/R72である。すなわち、出力端子Voutの出力電圧Voは分割抵抗71,72で分圧されて増幅器73に供給されている。増幅器73には基準電圧源74から基準電圧Vrefも与えられている。この結果、増幅器73では両方の電圧の差分を増幅して比較器75へ出力している。
【0045】
比較器75は増幅器73の出力信号と、三角波発生器76が生成する三角波とを比較し、すなわち入力される両者の電圧値を比較して、三角波の電圧値が高い場合にHiレベルの信号を出力し、増幅器73の出力信号の電圧値が高い場合にLoレベルの信号を出力する(
図2(c)参照)。
【0046】
ここで、比較器75の出力信号(
図2(d)参照)はDC/DCコンバータ6のスイッチングデューティにほぼ等しく、入力電圧をVin、比較器75の出力信号のHi期間をT_Hi、比較器75の出力信号のLo期間をT_Lo、としたときに、
[数1]
なる関係が成立する。
【0047】
比較器75の出力信号はスイッチロジック77を介してプリドライバ101,102へデューティ信号として与えられる。プリドライバ101,102は与えられたデューティ信号に則り
図2(a)および
図2(b)に示すパルス信号を生成するとともに、スイッチング用のトランジスタ8,9に供給して所定のスイッチング動作を行わせる。すなわち、比較器75の出力信号がLoレベルであるとき、プリドライバ101はPMOSトランジスタであるトランジスタ8のゲートをLoレベルに駆動してトランジスタ8を導通状態とさせる。プリドライバ102はNMOSトランジスタであるトランジスタ9のゲートをLoレベルに駆動してトランジスタ9を不導通状態とさせる。トランジスタ8が導通状態でトランジスタ9が不導通状態であると、トランジスタ8,9のドレインに共通接続されているコイル3の端子に対しては電圧Vinが印加される。ここで、コイル3の一方の端子は出力端子Voutに接続されており、Vin>Voであるので、コイル3を通して出力端子Voutへ流れる電流は増加する(チャージフェーズ(
図2(e)参照))。
【0048】
比較器75の出力信号がHiレベルであるとき、プリドライバ101はトランジスタ8のゲートをHiレベルに駆動してトランジスタ8を不導通状態とさせ、プリドライバ102はトランジスタ9のゲートをHiレベルに駆動してトランジスタ9を導通状態とさせる。トランジスタ8が不導通状態でトランジスタ9が導通状態であると、トランジスタ8,9のドレインに共通接続されているコイル3の端子に対しては接地電位が与えられ、コイル3を通して出力端子Voutへ流れる電流は減少する(トランスファーフェーズ(
図2(e)参照))。
【0049】
平衡状態かつ無負荷状態であるとき、チャージフェーズにおけるコイル電流の増加量とトランスファーフェーズにおけるコイル電流の減少量は等しく、コイル電流の平均値は0であるので、出力端子Voutに対しては電荷の授受はない。
【0050】
増幅器73と比較器75の入力端子の極性は、DC/DCコンバータ6が出力端子Voutの出力電圧Voを用いた負帰還回路を構成するように設定されている。例えば外部擾乱で出力端子Voutの出力電圧Voが平衡状態より上がった場合、増幅器73の出力レベルは平衡状態より下がり、比較器75が出力するLo信号の期間T_Loは平衡状態より短くなる。よって、平衡状態に比べてチャージフェーズが短く、トランスファーフェーズが長くなり、1次側から出力側へ供給される電力量が平衡状態より減少する。この結果、出力電圧Voを低下させる作用が働く、出力電圧Voの電圧値が平衡状態時の値に近づくにつれて増幅器73の出力レベルや比較器75のHiレベル出力期間も平衡状態時の値に近づき最終的には平衡時の値となる。
【0051】
<出力放電動作期間>
当該出力放電動作期間中、放電制御信号DISCHGは、
図2(g)に示すように、Hiレベルである。かかるHiレベルの信号はスイッチロジック77と、スイッチ12,13に与えられる。スイッチロジック77は、放電制御信号DISCHGがLoレベルのときは比較器75の出力信号をプリドライバ101,102に与え、放電制御信号DISCHGがHiレベルのときは比較器75の出力信号に関わらずプリドライバ101の出力がHiレベルとなる信号を与える。プリドライバ101の出力がHiレベルのとき、PMOSトランジスタであるトランジスタ8のゲートもHiレベルに駆動されているので、トランジスタ8は不導通状態となる。
【0052】
スイッチ12は、放電制御信号DISCHGがLoレベルのときは閉状態であり、Hiレベルのときは開状態である。一方、スイッチ13は、放電制御信号DISCHGがLoレベルのときは開状態であり、Hiレベルのときは閉状態である。よって、放電期間中は、トランジスタ9のゲートにはトランジスタ112のゲートが接続される。
【0053】
トランジスタ112とトランジスタ9はゲート電位が等しく、ともにソースも接地電位であるので、トランジスタ112のゲート−ソース間電圧はトランジスタ9のゲート−ソース間電圧に等しく、トランジスタ112とトランジスタ9とはミラー回路を構成する。このとき、トランジスタ8は不導通状態であって、トランジスタ9は導通状態であるので、コイル3、トランジスタ9を介して出力端子Voutから接地への放電回路が形成される。放電回路が形成されると、この放電回路を通して放電電流が流れて出力端子Voutの電荷を接地へ放電する。このときコイル3に流れる電流とトランジスタ9のドレイン電流は等しい。
【0054】
放電回路にはコイルが含まれているので放電電流は回路形成からの時間に比例して漸増する。このときのt秒後の放電電流値はコイル3のインダクタンスをLとすると、(Vo×t)÷Lで示される。
【0055】
漸増する放電電流はあるレベルで制限される(
図2(e)参照)。このときの制限値は電流源111から供給される定電流Idisとトランジスタ9とトランジスタ112のミラー比で決定される。本形態では、トランジスタ112とトランジスタ9のドレイン電流比が1:Nとなるようにトランジスタ9のチャネル幅とチャネル長を設定しているので、放電電流制限値はIdis×Nである。
【0056】
放電期間中は、出力端子Voutの電荷を接地へ放電する回路が形成される一方で、出力端子Voutに対して電荷を供給する回路は形成されないので、
図2(f)に示すように、出力端子Voutにおける出力電圧Voは漸減する。出力電圧Voの減少に伴い、比較器75が出力するデューティ信号は、Loの時間T_Loが長く、Hiの時間T_Hiが短くなっていくが、スイッチロジック77は、放電期間中には前記デューティ信号をプリドライバ回路10に与えないので、デューティ信号の変調に関わらず、トランジスタ8は不導通状態である。一方、トランジスタ9は放電回路を形成する。
【0057】
以上のように、
図1に示した本形態ではスイッチング用のトランジスタ9が放電回路を形成するので放電に際して別途回路や素子を設ける必要が無く、また、
図2(e)に示すように、出力放電動作期間中はトランジスタ9を介して放電する電流をIdis×Nに制限しているので放電回路を形成するコイルやトランジスタなどの損傷を防ぐことができる。さらに、出力端子Voutから接地への経路を有する放電回路のみを用いるので1次電源1等への電荷移動が無く、1次電圧の変動を抑制するための手段を講じる必要もない。
【0058】
なお、
図1において、スイッチング制御回路7はPWM変調方式の回路例を示しているが、これはPFM変調方式や、その他のスイッチングデューティ信号を生成する手段で代替することができる。
【0059】
また、トランジスタ8はPMOSトランジスタを示しているが、これはNMOSトランジスタで代替することもできる。また、MOSトランジスタをバイポーラトランジスタで代替しても構わない。
【0060】
本形態では、放電制御信号DISCHGをDC/DCコンバータ6の外部から与えているが、これは内部で生成される信号で兼ねることもできる。例えば入力低電圧保護機能を有している場合、保護動作が必要なレベルまで入力電圧が低下した際にDC/DCコンバータ6が出力動作を停止すると同時に出力電荷を放電する動作を開始させることもできる。また、DC/DCコンバータ6が外部から供給される信号に従って動作を開始/停止しているような場合は、この信号で放電制御信号DISCHGを兼用することもできる。
【0061】
プリドライバ101は放電動作時にHiレベルの信号を出力するものとして説明しているが、放電動作時に出力フロートとするスリーステートバッファにすると共に、トランジスタ8のソース-ドレイン間にスイッチを設けて放電動作時にトランジスタ8を不導通状態とさせる構造としても良い。
【0062】
プリドライバ102は放電動作時でもLo/Hiレベルの信号を出力してスイッチ12を開状態にすることでトランジスタ9のゲートとプリドライバ102の出力を絶縁しているが、放電動作時にプリドライバ102の出力フロートとするスリーステートバッファとすればプリドライバ102の出力とトランジスタ9のゲートを絶縁する必要がなくスイッチ12を省略することもできる。
【0063】
さらに、上記実施の形態において、電流源111は定電流源としているが、これは可変電流源としても良い。
【0064】
可変電流源とすることで定電流Idisを動的に設定して放電電流の制限値を動的に制御することができる。同様に、放電制御回路とトランジスタ9とのミラー比を変えて放電電流の制限値を制御することや、トランジスタ112とトランジスタ9とで構成するミラー回路とは異なるミラー回路を直列に接続して放電制御回路11を構成することができる。
【0065】
図3には、トランジスタ9とのミラー比を変えて放電電流の制限値を制御する放電制御回路の一例を示す。
図3の放電制御回路11Aは、トランジスタ112と、トランジスタ112と並列に接続されるトランジスタ113を具備する。トランジスタ113はトランジスタ112と同様にゲートとドレインが共通接続となっている。トランジスタ113のゲート-ドレイン接続部とトランジスタ112のゲート-ドレイン接続部との間にはスイッチ114が配されており、トランジスタ113のゲート-ドレイン接続部と接地の間にはスイッチ115が配されている。スイッチ114とスイッチ115は相補的に開状態/閉状態となる。
【0066】
トランジスタ112はトランジスタ9とミラー回路を構成した際にドレイン電流が1:N(Nはミラー比)となるようなチャネル幅とチャネル長に設定されており、トランジスタ113はトランジスタ112と同じチャネル幅とチャネル長に設定されている。
【0067】
スイッチ114が開状態でスイッチ115が閉状態である場合、電流源111が与える定電流Idisはトランジスタ112に流れ、トランジスタ9とトランジスタ112とはミラー比が1:Nとなるミラー回路を構成しているので、トランジスタ9に流れる電流の制限値はIdis×Nである。
【0068】
スイッチ114が閉状態でスイッチ115が開状態である場合、電流源111が与える定電流Idisはトランジスタ112と113に流れる。
【0069】
この場合は同じチャネル幅とチャネル長のトランジスタ112と113が並列に接続されているので、放電制御回路11Aとトランジスタのミラー比は2:Nとなる。ミラー比は1:(1/2)×Nと表すことができ、トランジスタ9に流れる電流の制限値は(1/2)×Idis×Nである。
【0070】
以上のように、放電制御回路11Aとトランジスタ9とのミラー比を変えて、トランジスタ9の制限値を制御することができる。トランジスタ112と並列に接続するトランジスタを複数設けることにより、トランジスタ9の制限値を数段階に設定することもできる。
【0071】
また、
図4は、トランジスタ112とトランジスタ9とで構成するミラー回路とは異なるミラー回路を直列に接続した放電制御回路の一例を示す。
図4の放電制御回路11Bは、トランジスタ9とトランジスタ112とで構成するミラー回路と、このミラー回路に直列にトランジスタ116及びトランジスタ117とから構成されるミラー回路を接続した構成を有する。これによれば、ミラー比を比較的容易に大きくすることができ、例えば、トランジスタ9とトランジスタ112とから成るミラー回路のミラー比が1:Nであり、トランジスタ116とトランジスタ117とから成るミラー回路のミラー比が1:Mである場合、トランジスタ9の制限値は、Idis×N×Mとなる。ミラー回路を直列に付加することにより、トランジスタ9の制限値を設定するために要するIdisの値を付加した回路のミラー比分だけ小さく設定することができるので、回路の低消費電流化を図ることもできる。
【0072】
また、出力安定化用のコンデンサ4の容量値が大きい場合には、放電時に生じる熱にも配慮する必要がある。放電期間中、放電回路には、P=Vo×Idisで表される電力損出が単位時間に発生しており、かかる熱量に起因する温度上昇によりDC/DCコンバータ6の焼損や、周辺部品であるコンデンサ2,4およびコイル3の特性劣化を防ぐ為に、通常DC/DCコンバータが有している過熱保護機能を放電動作時にも有効とし、DC/DCコンバータの温度が保護レベルまで到った際には放電電流値を下げて単位時間で生じる熱量を下げる、などの対処が必要になる。
【0073】
<第2の実施の形態>
図5は本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源回路である。同図に示すように、本形態は
図1に示す第1の実施の形態に対し、放電制御回路21の構成が異なるだけである。そこで、
図1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
本形態における放電制御回路21は、トランスコンダクタンスアンプ211、抵抗212、基準電圧源213および増幅器214で構成されている。トランスコンダクタンスアンプ211はトランジスタ9のドレインとソースの電位差を増幅し、これを電流に変換して出力する。トランスコンダクタンスアンプ211から出力された電流は抵抗212で電圧に変換されて増幅器214に印加される。増幅器214に対しては、前記の変換電圧信号と、基準電圧源213の出力である所定の基準電圧Vref
2が印加される。増幅器214の出力はスイッチ13を介してトランジスタ9のゲートに接続されている。ここで、放電動作時には、スイッチ12が開状態でスイッチ13は閉状態となるので、トランジスタ9のゲートは増幅器214の出力電圧により制御される。増幅器214がトランジスタ9を駆動しているモードでは、放電制御回路21とトランジスタ9とは帰還回路を構成している。また、トランスコンダクタンスアンプ211と増幅器214の入力端子の極性は帰還回路が負帰還回路となるように設定されている。トランスコンダクタンスアンプ211の出力電流と抵抗212により生じる電圧をVdis、抵抗212の抵抗値をR212、トランスコンダクタンスアンプ211のトランスコンダクタンスをGm、トランジスタ9のオン抵抗をRonとするとき、放電電流の制限値Idis
2は、Idis
2×Ron×Gm×R212=Vdisから、Idis
2=Vdis/(Ron×Gm×R212)と表される。ここで、放電制御回路21とトランジスタ9が負帰還回路として安定していて、放電電流の制限値Idis
2に制限されている場合、基準電圧源213が与える基準電圧Vref
2と電圧Vdisは等しいので、Idis
2=Vref
2/(Ron×Gm×R212)となる。
【0075】
次に、上述のごとき構成の本形態に係るスイッチング電源回路の動作を図面に基づき説明する。
図6は
図5に示すスイッチング電源回路の動作に伴う各部の波形を示す波形図である。
図2に示す各部の波形に対しては、放電制御回路の構成が異なることに起因して出力放電動作期間におけるトランジスタ9のゲート電圧の波形が異なるが、その他の各部の波形は同様である。
図6中、(a)はトランジスタ8のゲート電圧、(b)はトランジスタ9のゲート電圧、(c)はコイル3の電流(出力端子Voutへ向かう方向を正とする)、(d)は出力電圧Vo、(e)は放電制御信号、(f)は放電制御回路21中のトランスコンダクタンスアンプ211の出力する電流と抵抗212とで生成される電圧、(g)はトランジスタ9のドレイン電流(ドレインからコイル3へ向かう方向を正とする)をそれぞれ示す。
【0076】
同図に示すように、通常動作時期間の波形は
図2に示した動作波形と同様である。
【0077】
一方、出力放電動作期間中には、放電制御回路21とトランジスタ9とで構成される負帰還回路が、トランジスタ9のドレイン−ソース電流IDSが制限値Idis
2より小さい場合はトランジスタ9のゲート電圧を上げ、トランジスタ9のオン抵抗を低減してドレイン−ソース電流IDSを増大させる。ドレイン−ソース電流IDSが制限値Idis
2より大きい場合はトランジスタ9のゲート電圧を下げ、オン抵抗を増やしてドレイン-ソース電流IDSを低減させる。
【0078】
さらに詳言すると、放電動作開始直後には、0Aより時間に比例してコイル3を流れる放電電流が増加するため、トランジスタ9のドレイン−ソース電流IDSは制限値Idis
2より小さくなり、放電制御回路21がトランジスタ9のゲート電圧をHiレベルに上げる。この結果、ゲート電圧が上昇し、トランジスタ9が導通状態となって放電回路が形成されるので、出力端子Voutから放電が開始される。
【0079】
放電電流が増加して制限値Idis
2に漸近すると、トランジスタ9のゲート電圧もある値に漸減する。放電電流が制限値Idis
2であるとき、トランジスタ9のゲート電圧をVGSとすると、以下に示す関係が成立する。
【0080】
[数2]
但し、Lはトランジスタ9のチャネル長、Wはチャネル幅、μnはトランジスタ9のキャリア移動度、Coxはトランジスタ9の単位面積あたりのゲート容量、Vthはトランジスタ9の閾値である。
【0081】
これより、ゲート電圧VGSは以下のように求められる。
【0083】
このように、
図5に示した実施の形態では、放電電流を観測し、放電経路中のトランジスタ9のゲートを駆動することで放電電流を制限している。
【0084】
なお、
図5に示す実施の形態では、トランジスタ9のドレインとソースの電位差から放電電流値を観測しているが、電流値の観測は出力端子Voutから接地の間の放電経路中の何処で行ってもよい。また、電流観測手段も他の手段で代替可能である。例えば、電流センス抵抗が放電経路中に設けられていれば、センス抵抗間電圧を、増幅回路を介してトランジスタ9のゲートへ増幅出力することで
図5に示した場合と同様の機能を実現できる。