特許第6248092号(P6248092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジボダン エス エーの特許一覧

特許6248092食品フレーバー付与化合物としてのN−アシル化1−アミノシクロアルキルカルボン酸
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248092
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】食品フレーバー付与化合物としてのN−アシル化1−アミノシクロアルキルカルボン酸
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/21 20160101AFI20171204BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20171204BHJP
   C07C 233/52 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   A23L27/21 Z
   C11B9/00 R
   !C07C233/52CSP
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-503573(P2015-503573)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-516955(P2015-516955A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】US2013034342
(87)【国際公開番号】WO2013148997
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】61/617,796
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【弁理士】
【氏名又は名称】矢後 知美
(72)【発明者】
【氏名】シ,フェン
(72)【発明者】
【氏名】レネス,ハリー
(72)【発明者】
【氏名】ファン オンメレン,エステル
(72)【発明者】
【氏名】フォルスター,スザンナ,マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イーリー
(72)【発明者】
【氏名】デ クラーク,アドリ
(72)【発明者】
【氏名】ハイバー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ホーベン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】エリングス,ヤコブ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−523055(JP,A)
【文献】 特表2015−522248(JP,A)
【文献】 特表2015−519298(JP,A)
【文献】 特表2011−520457(JP,A)
【文献】 英国特許第01130480(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 233/00
A23L 27/00
C11B 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
式中、
はそれが付着されているカルボニル基と共にカルボン酸の残基であるように、Rは、6〜20個の炭素原子を含有するアルキル残基、または1〜6個の二重結合を有する9〜25個の炭素原子を含有するアルケン残基であり、および
カルボニル炭素原子に結合されているアミノ酸残基は、1−アミノシクロアルキルカルボン酸(ACCA)の残基であり、および
nは、1、2、3または4である、
で表される化合物および/またはその食用塩を含み;
ここで、式(I)の化合物は、N−パルミトイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C16:0−ACCA)、N−ステアロイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C18:0−ACCA)、N−リノレオイル1−アミノシクロプロピルカルボン酸(C18:2−ACCA)、N−リノレノイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C18:2−ACCA)、N−オレオイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C18:1−ACCA)、N−(9−パルミテノイル)1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C16:1−ACCA)、N−デカノイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C10:0−ACCA)およびN−ゲラノイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C10:2−ACCA)からなる群から選択される、
フレーバー組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのフレーバー共成分を含む、請求項1に記載のフレーバー組成物。
【請求項3】
糖類、脂肪、塩、MSG、カルシウムイオン、リン酸イオン、有機酸、タンパク質、プリン類およびそれらの混合物からなる群から選択される成分を含む、請求項1または2に記載のフレーバー組成物。
【請求項4】
担体材料およびアジュバントを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレーバー組成物。
【請求項5】
アジュバントが抗酸化剤である、請求項4に記載のフレーバー組成物。
【請求項6】
エマルジョン形態の、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフレーバー組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のフレーバー組成物を含む、食用組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載のフレーバー組成物を含み、スクロース、高フルクトースコーンシロップ、フルクトースおよびグルコースから選択される炭水化物甘味料、またはアスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、シクラマート、ナトリウムサッカリン、ネオテーム、レバウジオシドA、および/または他のステビアベースの甘味料から選択される高強度非栄養甘味料を含有する、カロリーまたはノンカロリー飲料。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載のフレーバー組成物を含む、大豆ベースの食用組成物。
【請求項10】
食用組成物における、請求項1に定義された化合物のフレーバーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカルボン酸−アミノ酸複合体、該複合体を含有するフレーバー組成物、および食用組成物におけるそれらの使用に関する。
本発明は、特定のカルボン酸−アミノ酸複合体、該複合体を含有するフレーバー組成物、および食用組成物におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において、多くの食品フレーバー成分がそれ自身の非常に明白なフレーバー特性を食品製品に与えることが知られている。かかる成分は、食品カテゴリーの特定タイプのためのニッチな分野において非常に大きな価値を有するが、他の食品カテゴリーにおいて用いられた場合、不適当あるいは攻撃的にさえもなり得る。
食用組成物中に組み込まれて、その味または口当たりを補完または増強するために役立つ、広いスペクトルのフレーバー成分を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本出願人は、幅広いカテゴリーのフレーバー用途に渡って、食用組成物中に組み込まれて、その味および口当たりを補完または増強するフレーバー成分として用いてもよい、一群の化合物を今見出した。
【0004】
本発明は、その第1の側面において、式
【化1】
で表される化合物、それらの食用塩、および食用組成物におけるそれらの使用を提供する:
式中、
はそれが付着されているカルボニル基と共にカルボン酸の残基であるように、Rは、6〜20個の炭素原子を含有するアルキル残基、または1〜6個の二重結合を含有する9〜25個の炭素原子を含むアルケン残基であり、カルボニル炭素に結合されているアミノ酸残基が1−アミノシクロアルキルカルボン酸(ACCA)の残基であり、
nが1、2、3または4である。
【0005】
食用塩は、飲食料品業界で典型的に用いられるものを含み、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、グルコン酸塩、ナトリウム塩、クエン酸塩、炭酸塩、酢酸塩および乳酸塩が含まれる。
好ましい化合物は、「n」が1であるものである。
上記式において開示されたアミノ酸残基は、「ACCA」と略記することがある。
【0006】
カルボン酸も同様に短縮形で表すことができる。以下では、カルボン酸残基を一般的に略号Cn(式中「n」は残基中の炭素原子の数を表す)で言及することがある。例えば、18個の炭素の酸の残基は、C18と略記することがある。さらに、18個の炭素の酸が飽和されている場合、例えば、ステアリン酸の場合、これはC18:0と略記することがあり(0個の二重結合が含まれているため)、一方1個の二重結合を有する18個の炭素の酸――例えばオレイン酸――は、C18:1と略記することがある。さらに、C18の酸が1個の二重結合をシス配置中に有する場合、これはC18:1cと略記することがある。同様に、二重結合がトランス配置の場合、略号はC18:1tとなる。
【0007】
本発明の特定の態様において、カルボン酸残基は、脂肪酸の残基である。
脂肪酸残基は、C8〜C22脂肪酸の残基であり得る。脂肪酸は、哺乳動物または非哺乳動物のものであってよい。哺乳動物の脂肪酸は、哺乳動物において天然に生成されたものと構造的に同一の、天然または合成脂肪酸であり、限定することなく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサテトラエン酸を含む。非哺乳動物の脂肪酸は、哺乳動物によって通常生成されない天然または合成脂肪酸であり、限定することなく、ペンタデカン酸;ヘプタデカン酸;ノナデカン酸;ヘンエイコサン酸;9−トランス−テトラデセン酸;10−トランス−ペンタデセン酸;9−トランス−ヘキサデセン酸;10−トランス−ヘプタデセン酸;10−トランス−ヘプタデセン酸;7−トランス−ノナデセン酸;10,13−ノナデカジエン酸;11−トランス−エイコセン酸;および12−トランスヘンエイコサン酸を含む。
脂肪酸残基は、飽和でも不飽和でもよい。不飽和の場合、1、2または3個の二重結合を有することが好ましく、これはシスまたはトランス配置であってよい。より具体的には、好ましい脂肪酸残基はC16〜C18であり、飽和もしくは不飽和であってよい。
【0008】
しかし当業者に理解されるように、これらの脂肪酸の天然源、例えばアーモンド油、アボカド油、ヒマシ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、米ぬか油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油およびキャノーラ油などは、それぞれ、脂肪酸の複雑な混合物から成る。例えば、サフラワー油は、主にC18:2リノール酸の源であるが、しかし他の脂肪酸、例えば特にリノレン酸(C18:3)およびパルミチン酸(C16:0)も含み得る。したがって、本明細書における、例えばC18脂肪酸残基などの特定の脂肪酸残基を含む化合物への言及は、純粋な、もしくは実質的に純粋なC18脂肪酸残基への言及であってよく、またはこれは、主な残基がC18残基である脂肪酸残基の混合物に関連してもよい。好ましい脂肪酸残基は、C16〜C18である。
【0009】
当然、式(I)の化合物はこの短縮形でも表すことができるということになる。例えば、C18カルボン酸の残基および1−アミノシクロアルキルカルボン酸からなる式(I)の化合物は、略号C18−ACCAで表すことができる。簡略化のために、式(I)の化合物は、以後この短縮形で表してよい。
上記式(I)から明らかなように、アミノ酸残基のアミノ窒素原子はカルボン酸残基のカルボニル炭素原子に結合して、アミド結合を形成する。したがって、C18−ACCAは、1−アミノシクロアルキルカルボン酸の残基が、その窒素原子を介して、C18カルボン酸のカルボニル炭素原子に結合した、式(I)の化合物を表す。
【0010】
化合物は、C8−ACCA、C9−ACCA、C10−ACCA、C12−ACCA、C14−ACCA、C16−ACCA、C18−ACCA、C20−ACCAおよびC22−ACCAを含む。
化合物は、カルボン酸残基が飽和している、C8−ACCA、C9−ACCA、C10−ACCA、C12−ACCA、C14−ACCA、C16−ACCA、C18−ACCA、C20−ACCAおよびC22−ACCAを含む。
化合物は、カルボン酸残基が不飽和であり、1、2または3個の二重結合を含む、C8−ACCA、C9−ACCA、C10−ACCA、C12−ACCA、C14−ACCA、C16−ACCA、C18−ACCA、C20−ACCAおよびC22−ACCAを含む。二重結合はシス配置、トランス配置、またはシスおよびトランス配置の混合物であってもよい。
化合物は、アミノ酸残基のシクロアルカン環がシクロプロパン(n=1)である、上記指定されたものを含む。
【0011】
特に好ましい化合物は、N−パルミトイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C16:0−ACCA)、N−ステアロイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C18:0−ACCA)、N−リノレオイル1−アミノシクロプロピルカルボン酸(C18:2−ACCA)、N−リノレノイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C18:2−ACCA)、N−オレオイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C18:1−ACCA)、N−(9−パルミテノイル(palmitenoyl))1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C16:1−ACCA)、N−デカノイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C10:0−ACCA)およびN−ゲラノイル1−アミノ−シクロプロピルカルボン酸(C10:2−ACCA)である。
【0012】
式(I)の化合物は、既知の方法により、市販の出発物質、試薬および溶媒を用いて形成することができ、詳細な説明はここでは保証されない。本発明の一態様において、複合体は、アミノを、脂肪酸ハロゲン化物、例えば塩化物と、水/THF溶媒系などの水性条件下の塩基性条件下での反応させることにより、形成することができる。収率および反応時間は、反応混合物に熱を加えることによって改善することができる。代替の態様において、脂肪酸をアミノ酸と、ジオキサン中にて、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)および1−ヒドロキシピロリジン−2,5−ジオンの存在下で反応させることができる。
さらに別の態様において、アミノ酸アルキルエステルを脂肪酸塩化物と、水/THF溶媒系などの水性溶媒中、塩基性条件下で反応させることができる。その後、エステルを、塩基性メタノール水溶液中でアミド結合に影響を与えることなく、慎重に加水分解することができる。
【0013】
さらに別の態様において、脂肪酸とアミノ酸アルキルエステルを、ジオキサン中にて、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)および1−ヒドロキシピロリジン−2,5−ジオンの存在下で反応させることができる。エステルは、希釈塩基性メタノール水溶液中でアミド結合に影響を与えることなく、慎重に加水分解することができる。
さらに別の態様において、脂肪酸の(混合)無水物を、ジオキサン中でアミノ酸と反応させる。
さらに別の態様において、脂肪酸アルキルエステルを、ジオキサン中でアミノ酸と反応させることができる。
【0014】
さらに別の態様において、アミノ酸アルキルエステルをトリグリセリドと、任意に共溶媒の存在下で反応させる。このように形成されたアミノ酸エステルは、次いで、上記の方法に従って加水分解される。
さらに別の態様において、アミノ酸をトリグリセリドと、任意に共溶媒の存在下で反応させる。
さらに別の態様において、アミノ酸をトリグリセリドと、リパーゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼまたはアシラーゼの存在下で、任意に共溶媒および/または水の存在下で反応させる。
さらに別の態様において、脂肪酸アルキルエステルをアミノ酸と、リパーゼまたはアシラーゼの存在下で、任意に共溶媒および/または水の存在下で反応させる。
【0015】
式(I)の化合物は、それらが添加された食用組成物に顕著な官能特性を付与する。特に、それらは非常に強く、本物感があり調和のとれたフレーバー、およびまろやかさ(roundness)および充実感(fullness)を、それらを含有する食用組成物に付与する。
より好ましくは、化合物は、食用製品に組み込んで、顕著な口当たり、ボディ、増強された脂肪の知覚を付与することに;または、増強されたうま味または塩味を;または冷却感および豊かさ(richness)を付与することにおいて、特に有用である。これらは、脂肪分、塩分およびうま味が少ない用途において特に有用である。これらはまた、飲料やオーラルケア用途などの無脂肪の調合物にも有用である。これらはまた、乳製品用途において、およびバニラ、ココア、チョコレートにおいても使用される。
【0016】
この発見は、出願人が希釈水溶液において当該化合物を味わった際に、これらが、味がないかまたは期待はずれのかすかに脂肪質の味のプロフィールを示したことを考慮すると、いっそう驚くべきことであった。したがってこれらは、フレーバー用途での使用に非常に不適切であると思われた。フレーバー共成分との組み合わせ、およびその使用濃度の賢明な選択によってのみ、これらの化合物の優れた官能特性の発見が可能であった。食用組成物に対するこれらの効果は、食料品または飲料に特徴的なフレーバープロフィールを与えるというよりも、これらが組み込まれている食品や飲料の本質的または本物感のフレーバーおよび口当たりを、実際に補完し、高め、または際立たせるという点で、非常に珍しいものである。したがって、本発明の化合物は、飲食料品業界、ならびに健康とウェルネスの幅広い用途において、有用性を見出す。
【0017】
したがって本発明は、その別の側面において、食用組成物にフレーバーおよび/または口当たりを付与する、または味および/または口当たりを改善する方法であって、本明細書に定義された式(I)の化合物を含む前記組成物を加えることを含む、前記方法を提供する。
式(I)の化合物を、1または2以上のフレーバー共成分を含む食用組成物に組み込んだ場合に、優れた官能的効果が観察される。
フレーバー共成分は、糖類、脂肪、塩(例えば塩化ナトリウム)、MSG、カルシウムイオン、リン酸イオン、有機酸、タンパク質、プリン類およびこれらの混合物であってよい。
特定の態様において、糖類は、食用組成物の総重量に基づき0.001%〜90%の量で、より特に0.001%〜50%、さらにより特に0.001%〜20%の量で存在する。
特定の態様において、脂肪は、食用組成物の総重量に基づき0.001%〜100%の量で、より特に0.001%〜80%、より特に0.001%〜30%、さらにより特に0.001%〜5%の量で存在する。
【0018】
特定の態様において、塩(例えば塩化ナトリウム)は、食用組成物の総重量に基づき0.001%〜20%の量で、より特に0.001%〜5%の量で存在する。
特定の態様において、MSGは、食用組成物の総重量に基づき0.001%〜2%の量で存在する。
特定の態様において、カルシウムは、食用組成物の総重量に基づき0.001%〜50%の量で、より特に0.001%〜20%、さらにより特に0.001%〜1%の量で存在する。
特定の態様において、有機酸は、食用組成物の総重量に基づき0.001%〜10%の量で、より特に0.001%〜7%の量で存在する。
【0019】
有機酸の種類としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、酢酸、コハク酸が挙げられる。有機酸を含有する食用組成物の種類としては、炭酸ソフトドリンク飲料、無炭酸飲料、ジュース、粉末ソフトドリンク、液体濃縮物、アルコール飲料および機能性飲料などの飲料が含まれる。
特定の態様において、リンは、食用組成物の重量に対して0.5重量%までの量で存在する。典型的にはリンは、リン酸塩として、またはリン酸として存在する。
特定の態様において、プリン類は、食用組成物の0.5重量%までの量で存在する。用語「プリン類」は、IMPおよびGMPなどのリボヌクレオチドを含む。
【0020】
その興味深い官能特性にもかかわらず、出願人は、式(I)の化合物の配合をたてることは、些細な事柄ではないことを見出した。化合物の発見された強さは、それらがフレーバー用途において非常に低濃度で使用可能であることを示唆し、そのため他の成分との取扱い、混合、および処理を容易にするためには、化合物をそのままの(neat)形態で使用することも可能ではあるが、これらを適切なビヒクル、例えば溶媒などの希釈剤中に組み込むことにより、化合物の物理的形態にボリュームを追加することが望ましい。しかしながら、化合物は、周囲温度で固体または粘性の油であり、および水への溶解度が非常に限られている。出願人は、式(I)の化合物の少なくとも約0.01%貯蔵液、より具体的には約0.01〜1%貯蔵液が、取り扱いおよび混合を容易にするために許容し得る溶媒の濃度と、化合物をフレーバー組成物および食用製品中でさらに処理する場合に、嗜好性、効率性、コスト等の理由により貯蔵液から除去すべき溶媒の量を制限したいという要望とに関するバランスを、実現することを見出した。出願人は、貯蔵液に適した溶媒は、エタノール、トリアセチン、グリセロールおよびミグリオールを含むことを見出した。
【0021】
可溶化のプロセスを補助し、貯蔵液を作製し、溶媒の量を最小限にするためには、純粋なカルボン酸からではなく、カルボン酸の混合物から形成される式(I)の化合物を使用することが好ましい。
したがって、本発明は、その別の側面において、式(I)の化合物の少なくとも約0.01%の貯蔵液、より具体的には約0.01〜1%の貯蔵液を提供する。
貯蔵液は、以下でより詳細に記載する担体材料および/またはアジュバントなどの他の材料を含んでもよい。特定の態様において、貯蔵液は、ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、アントランシン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)からなる群から選択される抗酸化剤を含有する。抗酸化剤は、好ましくは、式(I)の化合物の分解の結果としての、揮発性のオフノートの発生を防止または大幅に低減するために使用される。抗酸化剤は、式(I)の化合物が不飽和脂肪酸の残基を有する場合に、特に好ましい。抗酸化剤は、脂肪酸残基が2つ以上の二重結合を含む場合に、特に好ましい。抗酸化剤の有効量の決定は当業者の範囲内であるが、貯蔵液の重量に基づき約10ppmから1000ppmの範囲の量が存在してもよい。
【0022】
本発明のフレーバー組成物の調製において、式(I)の化合物は、任意の物理的形態で使用してよい。これらは、純粋形態で、上記の貯蔵液の形態で使用してよい;これらは、エマルジョンの形態で使用してよい;またはこれらは、粉末形態で使用してよい。式(I)の化合物が粉末形態で提示される場合、粉末形態は、以下でさらに十分に記載されるように、噴霧乾燥法などの分散蒸発プロセスにより製造することができる。粉末形態は、式(I)の化合物を含有する液体調合物を分散蒸発プロセスに供することによって、調製してよい。液体調合物は、式(I)の化合物を含む溶液、懸濁液またはエマルジョンを含んでもよい。具体的には、液体調合物は、上述の貯蔵液の形態をとることができる。液体調合物は、以下でさらに十分に記載されるように、担体材料および/またはアジュバントなどの他の成分を含有してもよい。
【0023】
式(I)の化合物を含む粉末は、本発明の別の側面を形成する。
式(I)の化合物は、単独で、または1もしくは2以上のフレーバー共成分を含有するフレーバー組成物の形態で、食用組成物に組み込むことができる。
式(I)による化合物を含むフレーバー組成物は、本発明の別の側面を形成する。
本発明の一態様において、フレーバー調合物は、式(I)の化合物および少なくともフレーバー共成分を含有する。
【0024】
本発明の特定の態様において、フレーバー組成物は、
i)式(I)の化合物;
ii)少なくとも1種のフレーバー共成分;
iii)任意に、担体材料;および
iv)任意に、少なくとも1種のアジュバント、
を含む。
用語「フレーバー共成分」とは、食用組成物の味に有益なまたは快適な方法で、貢献または付与またはこれを修正することができる成分である。
【0025】
ありとあらゆる種類のフレーバー共成分が、本発明による組成物に用いられてよく、これには、限定はされないが、天然フレーバー、人工フレーバー、スパイス、シーズニング等が挙げられる。フレーバー共成分は、合成フレーバー油およびフレーバー付与芳香剤および/または油、含油樹脂、エッセンス、蒸留物、および植物、葉、花、果実由来の抽出物等、および前述の少なくとも1つを含むそれらの組み合わせが挙げられる。
フレーバー油としては、スペアミント油、シナモン油、ウィンターグリーン油(サリチル酸メチル)、ペパーミント油、和種ハッカ油、チョウジ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグの油、オールスパイス、セージ油、メース、ビターアーモンド油、およびカッシア油を含む;有用なフレーバー付与剤としては、人工、天然および合成のバニラなどのフルーツフレーバー、およびレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、ユズ、スダチを含む柑橘油、およびリンゴ、洋ナシ、ピーチ、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、プルーン、レーズン、コーラ、ガラナ、ネロリ、パイナップル、アプリコット、バナナ、メロン、アンズ、梅、サクランボ、ラズベリー、ブラックベリー、トロピカルフルーツ、マンゴー、マンゴスチン、ザクロ、パパイヤ等を含むフルーツエッセンスを含む。
【0026】
フレーバー付与剤によって付与されるさらなる例示的なフレーバーとしては、ミルクフレーバー、バターフレーバー、チーズフレーバー、クリームフレーバー、およびヨーグルトフレーバー;バニラフレーバー;お茶またはコーヒーフレーバー、例えば緑茶フレーバー、ウーロン茶フレーバー、紅茶フレーバー、ココアフレーバー、チョコレートフレーバー、およびコーヒーフレーバーなど;ミントフレーバー、例えばペパーミントフレーバー、スペアミントフレーバー、および和種ハッカフレーバーなど;スパイシーなフレーバー、例えばアサフェティダフレーバー、アジョワンフレーバー、アニスフレーバー、アンゼリカフレーバー、フェンネルフレーバー、オールスパイスフレーバー、シナモンフレーバー、カモミールフレーバー、マスタードフレーバー、カルダモンフレーバー、キャラウェーフレーバー、クミンフレーバー、チョウジフレーバー、コショウフレーバー、コリアンダーフレーバー、サッサフラスフレーバー、セイボリー(savoury)フレーバー、山椒フレーバー、シソフレーバー、ジュニパーベリーフレーバー、ショウガフレーバー、スターアニスフレーバー、セイヨウワサビフレーバー、タイムフレーバー、タラゴンフレーバー、ディルフレーバー、トウガラシフレーバー、ナツメグフレーバー、バジルフレーバー、マジョラムフレーバー、ローズマリーフレーバー、ベイリーフフレーバー、ワサビ(わさび(Japanese horseradish))フレーバーなど;ナッツフレーバー、例えばアーモンドフレーバー、ヘーゼルナッツフレーバー、マカダミアナッツフレーバー、ピーナッツフレーバー、ピーカンフレーバー、ピスタチオフレーバー、およびクルミフレーバーなど;アルコールフレーバー、例えばワインフレーバー、ウィスキーフレーバー、ブランデーフレーバー、ラムフレーバー、ジンフレーバー、およびリキュールフレーバーなど;フローラルフレーバー;および野菜フレーバー、例えばオニオンフレーバー、ガーリックフレーバー、キャベツフレーバー、ニンジンフレーバー、セロリフレーバー、マッシュルームフレーバー、およびトマトフレーバーなどを含む。
【0027】
いくつかの態様において、フレーバー共成分は、アルデヒドおよびエステル、例えば酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラールジエチルアセタール、酢酸ジヒドロカルビル、ギ酸オイゲニル49、p−メチルアミソールなどを含み、用いることができる。アルデヒドフレーバリングのさらなる例としては、アセトアルデヒド(リンゴ)、ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド)、アニスアルデヒド(甘草、アニス)、桂皮アルデヒド(シナモン)、シトラール、すなわち、アルファ−シトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわちベータ−シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、エチルバニリン(バニラ、クリーム)、ヘリオトロープ、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム)、バニリン(バニラ、クリーム)、アルファ−アミルシンナムアルデヒド(スパイシーなフルーティーフレーバー)、ブチルアルデヒド(バター、チーズ)、バレルアルデヒド(バター、チーズ)、シトロネラール(変性剤、多種類)、デカナール(柑橘類果物)、アルデヒドC−8(柑橘類果物)、アルデヒドC−9(柑橘類果物)、アルデヒドC−12(柑橘類果物)、2−エチルブチルアルデヒド(ベリーフルーツ)、ヘキセナール、すなわちトランス−2(ベリーフルーツ)、トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド)、ベラトルアルデヒド(バニラ)、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、すなわちメロナール(melonal)(メロン)、2,6−ジメチルオクタナール(グリーンフルーツ)、および2−ドデセナール(柑橘類、マンダリン)などを含む。
【0028】
他のフレーバー共成分のさらなる例は、全米科学アカデミーによる“Chemicals Used in Food Processing”, publication 1274, pages 63-258に記載されている。
フレーバー共成分はまた、塩味物質、うま味物質、およびセイボリーフレーバー化合物を含むことができる。非限定的な例としては以下を含む:NaCl、KCl、MSG、グアノシン一リン酸(GMP)、イノシン一リン酸(IMP)、リボヌクレオチド、例えばイノシン酸二ナトリウム、グアニル酸二ナトリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)−ラクトアミド、N−ラクトイル−GMP、N−ラクトイルチラミン、ガンマアミノ酪酸、アリルシステイン、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシルフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オン、アルギニン、塩化カリウム、塩化アンモニウム、コハク酸、N−(2−メトキシ−4−メチルベンジル)−N’−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド、N−(ヘプタン−4−イル)ベンゾ(D)(1,3)ジオキソール−5−カルボキサミド、N−(2,4−ジメトキシベンジル)−N’−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド、N−(2−メトキシ−4−メチルベンジル)−N’−(2−(5−メチルピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド、シクロプロピル−E,Z−2,6−ノナジエンアミド。
【0029】
本発明の特定の態様において、フレーバー共成分は、WO2005102701、WO2006009425、WO2005096843、WO2006046853およびWO2005096844に開示された化合物および組成物から選択され、これらの全参考文献は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
フレーバー共成分はまた、知られている塩味物質、うま味物質、およびセイボリーフレーバー化合物を含んでよい。非限定的な例としては以下を含む:NaCl、KCl、MSG、グアノシン一リン酸(GMP)、イノシン一リン酸(IMP)、リボヌクレオチド、例えばイノシン酸二ナトリウム、グアニル酸二ナトリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)−ラクトアミド、N−ラクトイル−GMP、N−ラクトイルチラミン、ガンマアミノ酪酸、アリルシステイン、1−(2−ヒドロキシ−4−メトキシルフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オン、アルギニン、塩化カリウム、塩化アンモニウム、コハク酸、N−(2−メトキシ−4−メチルベンジル)−N’−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド、N−(ヘプタン−4−イル)ベンゾ(D)(1,3)ジオキソール−5−カルボキサミド、N−(2,4−ジメトキシベンジル)−N’−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド、N−(2−メトキシ−4−メチルベンジル)−N’−(2−(5−メチルピリジン−2−イル)エチル)オキサルアミド、シクロプロピル−E,Z−2,6−ノナジエンアミド。
【0030】
担体材料を本発明の組成物に用いて、組成物の他の構成要素をマトリックス中にカプセル封入または捕捉することができる。担体材料の役割は、単に加工助剤または増量剤のようであってもよいし、他の構成要素を水分や酸素または任意の他の攻撃的な媒体の効果から遮蔽または保護するために使用する場合もある。担体材料はまた、食用組成物からのフレーバーの放出を制御する手段として作用することもある。
担体材料は、単糖類、二糖類、または三糖類、天然または加工デンプン、ヒドロコロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチンを含むことができる。特定の担体材料の例としては、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタトール(pentatol)、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、マルトデキストリン、デキストリン、化工デンプン、水素化デンプン加水分解物、スクシニル化または加水分解デンプン、寒天、カラギーナン、アラビアガム、アカシアガム、トラガカント、アルギン酸塩、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらの誘導体および混合物が含まれる。当然ながら当業者は、引用された材料は本明細書に例として与えられ、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解する。
【0031】
「フレーバーアジュバント」とは、色、耐光性、化学的安定性等のさらなる追加の利点を本発明の組成物に付与できる成分を意味する。適切なアジュバントとしては、溶媒(水、アルコール、エタノール、トリアセチン、油類、脂肪類、植物油およびミグリオールを含む)、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、安定剤、固化防止剤などが含まれる。特定の態様において、フレーバー組成物は、抗酸化剤を含む。抗酸化剤としては、ビタミンC、ビタミンE、ローズマリー抽出物、アントランシン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含んでもよい。
フレーバー組成物のためのかかる担体またはアジュバントの例としては、例えば、“Perfume and Flavour Materials of Natural Origin”, S. Arctander, Ed., Elizabeth, N.J., 1960;"Perfume and Flavour Chemicals", S. Arctander, Ed., Vol. I & II, Allured Publishing Corporation, Carol Stream, USA, 1994;“Flavourings”, E. Ziegler and H. Ziegler (ed.), Wiley-VCH Weinheim, 1998、および“CTFA Cosmetic Ingredient Handbook”, J.M. Nikitakis (ed.), 1st ed., The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Inc., Washington, 1988に見出すことができる。
【0032】
フレーバー組成物の他の好適で望ましい成分は、“Handbook of Industrial Chemical Additives”, ed. M. and I. Ash, 2nd Ed., (Synapse 2000) などの標準的なテキストに記載されている。
本発明のフレーバー組成物は、任意の適当な物理的形態で提供することができる。例えばこれらは、食用組成物中で用いるのに好適な油、エマルジョン、または含水液体もしくは有機液体中の分散液の形態、または粉末などの固体形態であってもよい。
【0033】
フレーバー組成物が粉末状組成物の形態で提供される場合、これは、噴霧乾燥などの当技術分野において一般に知られている分散蒸発技術によって調製することができる。
したがって、本発明の別の態様において、粉末組成物を形成する方法であって、式(I)の化合物および、少なくとも1種のフレーバー共成分、担体材料およびアジュバントから選択される1または2以上の任意の成分を含む液体組成物を提供するステップ、および前記液体組成物を分散蒸発させて粉末組成物を形成するステップを含む、前記方法が提供される。
このような様式で、式(I)の化合物、または前記化合物を含むフレーバー組成物は、粉末形態で提供することができる。
粉末の調製に使用される液体組成物は、溶液、エマルジョン、分散液またはスラリーの形態であってもよい。液体は、水、および/または食用組成物での使用に許容し得る、エタノール、グリセロール、トリアセチン、ミグリオール(MCT)などの有機液体を含有することができる。
【0034】
本発明の粉末組成物は、工業的規模で粉末を製造するための当技術分野で知られた方法および装置に従って調製することができる。特に好適な方法は、噴霧乾燥である。噴霧乾燥技術および装置は当技術分野で知られており、ここでは詳細な議論の必要はない。US2005/0031769およびUS2013/0022728に記載された噴霧乾燥技術、装置および方法、ならびにこれらの文書に記載された技術、装置および方法は、本発明の粉末組成物を製造するのに適しており、それらはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる。
式(I)の化合物が本発明の粉末フレーバー組成物に組み込まれる方法は、重要ではない。例えば、化合物は、上記の液体組成物に添加し、フレーバー組成物のすべての他の成分と共に分散蒸発プロセスに供してもよい。代替的に、化合物は、粉末として形成された後に、フレーバー組成物に添加してもよい。
【0035】
本明細書で上述したフレーバー共成分の多くは揮発性であり、および/または特に高温で湿潤条件下の場合は、酸化分解に感受性である。したがって、上記のフレーバー共成分を噴霧乾燥などの分散蒸発プロセスに供する場合、特定の問題が生じる可能性がある。特に感受性であり得る成分の非網羅的リストとしては、人工、天然または合成の、バニラなどのフルーツフレーバー、チョコレート、コーヒー、ココア、およびレモン、オレンジ、ブドウ、ライム、グレープフルーツを含む柑橘油、およびリンゴ、洋ナシ、ピーチ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコットなどを含むフルーツエッセンスを含有する成分が挙げられる。これらのフレーバー共成分の揮発性成分としては、限定はされないが、アセトアルデヒド、ジメチルスルフィド、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、および酪酸エチルが挙げられる。揮発性アルデヒドまたはエステルを含有するフレーバー共成分としては、例えば、酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、酢酸ジヒドロカルビル、ギ酸オイゲニル、およびp−メチルアニソールなどが挙げられる。共成分として存在してもよい揮発性化合物のさらなる例は、アセトアルデヒド(リンゴ);ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド);桂皮アルデヒド(シナモン);シトラール、すなわちアルファシトラール(レモン、ライム);ネラール、すなわちベータシトラール(レモン、ライム);デカナール(オレンジ、レモン);エチルバニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);アルファ−アミルシンナムアルデヒド(スパイシーなフルーティーフレーバー);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラール(変性剤、多種類);デカナール(柑橘類果物);アルデヒドC−8(柑橘類果物);アルデヒドC−9(柑橘類果物);アルデヒドC−12(柑橘類果物);2−エチルブチルアルデヒド(ベリーフルーツ);ヘキセナール、すなわちトランス−2(ベリーフルーツ);トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド);ベラトルアルデヒド(バニラ);2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、すなわちメロナール(メロン);2,6−ジメチルオクタナール(グリーンフルーツ);および2−ドデセナール(柑橘類、マンダリン);チェリー;またはブドウ、およびそれらの混合物である。
【0036】
出願人は驚くべきことに、分散蒸発プロセスによって粉末状態に変換された粉末フレーバー組成物への式(I)の化合物の包含により、フレーバー組成物のフレーバー品質を維持することができることを見出した。
【0037】
したがって本発明は、その別の側面において、粉末フレーバー組成物のフレーバー品質を維持するための、前記粉末フレーバー組成物に式(I)の化合物を包含するステップを含む方法を提供する。
上述したように、式(I)の化合物またはかかる化合物を含有するフレーバー組成物は、食用組成物に組み込むことができ、かかる化合物またはフレーバー組成物を含有する食用組成物は、本発明の別の側面を形成する。
【0038】
用語「食用組成物」は、一般的に口腔を介した(ただし消費は吸入などの非経口手段を介して発生することもある)対象による消費のための製品であって、喜び、栄養、または健康およびウェルネスの利点という目的の少なくとも1つのための、前記製品を指す。食用組成物は任意の形態で存在することができ、限定はされないが、液体、固体、半固体、錠剤、カプセル、ロレンジ、ストリップ、粉末、ゲル、ガム、ペースト、スラリー、シロップ、エアロゾルおよびスプレーを含む。この用語はまた、例えば食事および栄養補助食品も指す。食用組成物には、飲み込まれるのではなく、廃棄される前に一定期間口腔内に置かれる組成物も含まれる。これは消費される前に口の中に入れることができ、または破棄される前にしばらくの間口の中に保持されてもよい。本明細書上記で定義された食用組成物には、その味が、式(I)の化合物を添加することにより本明細書に記載された方法で修飾されているか、その味が式(I)の化合物中で富化されるよう加工することにより修飾されているところの、組成物を含む。
【0039】
特定の態様において、用語「食用組成物」は、一般的に口腔を介した(消費は吸入などの非経口手段を介して発生することもあるが)対象による消費のための製品であって、喜びまたは栄養目的の少なくとも1つのための、前記製品を指す。
さらに特定の態様において、「食用組成物」という用語は、一般的に口腔を介した(ただし消費は吸入などの非経口手段を介して発生することもある)対象による消費のための、喜び目的の製品を指す。さらに詳細には、この用語は、食品および飲料を指す。
特定の態様において、用語「食用組成物」は、医薬組成物に関するものではない。
【0040】
他の態様において、用語「食用組成物」は、栄養補助食品に関するものではない。
広義には食用組成物は、すべての種類の食品、菓子製品、焼成製品、甘い製品、セイボリー製品、発酵製品、乳製品、飲料、オーラルケア製品を含むが、これらに限定はされない。
【0041】
代表的な食品は、限定することなく以下を含む:冷蔵スナック、甘いおよびセイボリースナック、フルーツスナック、チップス/クリスプ、押出成型スナック、トルティーヤ/コーンチップス、ポップコーン、プレッツェル、ナッツ、その他の甘くおよびセイボリースナック、スナックバー、グラノーラバー、朝食用バー、エネルギーバー、フルーツバー、その他のスナックバー、食事代替製品、ダイエット(slimming)製品、回復期飲料、調理済み食事(ready meal)、缶詰調理済み食事、冷凍調理済み食事、乾燥調理済み食事、冷蔵調理済み食事、ディナーミックス、冷凍ピザ、冷蔵ピザ、スープ、缶詰スープ、乾燥スープ、インスタントスープ、冷蔵スープ、uhtスープ、冷凍スープ、パスタ、缶詰パスタ、乾燥パスタ、冷蔵/生パスタ、麺類、プレーン麺、インスタント麺、カップ/ボウルインスタント麺、パウチインスタント麺、冷蔵麺、スナック麺、乾燥食品、デザートミックス、ソース、ドレッシングおよび調味料、ハーブおよびスパイス、スプレッド、ジャムおよびプリザーブ、ハチミツ、チョコレートスプレッド、ナッツベースのスプレッド、および酵母ベースのスプレッド。
【0042】
例示的な菓子製品としては、限定することなく以下を含む:チューインガム(有糖ガム、無糖ガム、機能性ガムおよびバブルガムを含む)、中心詰め物入り菓子、チョコレートおよび他のチョコレート菓子、薬用菓子、薬用キャンディー(lozenges)、タブレット、トローチ(pastille)、ミント、標準的なミント、パワーミント、チューイングキャンディー、ハードキャンディー、ボイルドキャンディー、ブレスおよびその他のオーラルケアフィルムまたはストリップ、キャンディーケイン、ロリポップ、グミ、ゼリー、ファッジ、キャラメル、ハードおよびソフトな糖衣食品、トフィー、タフィー、リコリス、ゼラチンキャンディー、グミドロップ、ゼリービーンズ、ヌガー、フォンダン、上記の1または2以上の組合せ、および上記の1または2以上を組み込んだ食用フレーバー組成物。
【0043】
例示的な焼成製品としては、限定はされないが、アルフォーレス、パン、包装/工業的パン、非包装/職人パン、ペストリー、ケーキ、包装/工業的ケーキ、非包装/職人ケーキ、クッキー、チョコレートコーティングビスケット、サンドイッチビスケット、詰め物入りビスケット、セイボリービスケットおよびクラッカー、代用パンを含む。
例示的な甘い製品としては、限定はされないが、朝食シリアル、レディー・トゥー・イート(「rte(ready-to-eat)」)シリアル、家族用朝食シリアル、フレーク、ミューズリー、その他のレディー・トゥー・イートシリアル、子供用朝食シリアル、ホットシリアルを含む。
例示的なセイボリー製品としては、限定はされないが、塩味スナック(ポテトチップス、クリスプ(crisp)、ナッツ、トルティーヤトスターダ、プレッツェル、チーズスナック、コーンスナック、ポテトスナック、レディー・トゥー・イートポップコーン、電子レンジ用ポップコーン、ポークラインズ、ナッツ、クラッカー、クラッカースナック、朝食シリアル、肉、アスピック、塩漬け肉(ハム、ベーコン)、昼食/朝食用肉(ホットドッグ、コールドカット、ソーセージ)、トマト製品、マーガリン、ピーナッツバター、スープ(クリア、缶詰、クリーム、インスタント、UHT)、缶詰野菜、パスタソースを含む。
【0044】
例示的な乳製品としては、限定はされないが、チーズ、チーズソース、チーズベースの製品、アイスクリーム、衝動買い向け(impulse)アイスクリーム、個食用乳製品アイスクリーム、個食用氷菓(water ice cream)、マルチパック乳製品アイスクリーム、マルチパック氷菓、持ち帰りアイスクリーム、持ち帰り乳製品アイスクリーム、アイスクリームデザート、バルクアイスクリーム、持ち帰り氷菓、フローズンヨーグルト、職人のアイスクリーム、乳製品、乳、新鮮/低温殺菌乳、全脂肪新鮮/低温殺菌乳、半脱脂新鮮/低温殺菌乳、長期保存/uht乳、全脂肪長期保存/uht乳、半脱脂長期保存/uht乳、無脂肪長期保存/uht乳、山羊乳、コンデンスミルク/エバミルク、プレーンなコンデンスミルク/エバミルク、フレーバー、機能性およびその他のコンデンスミルク、フレーバーミルクドリンク、乳製品のみのフレーバーミルクドリンク、フルーツジュース入りフレーバーミルクドリンク、豆乳、サワーミルクドリンク、発酵乳ドリンク、コーヒーホワイトナー、粉末ミルク、フレーバー粉末ミルクドリンク、クリーム、ヨーグルト、プレーン/ナチュラルヨーグルト、フレーバーヨーグルト、フルーツヨーグルト、プロバイオティクスヨーグルト、飲むヨーグルト、定期的な飲むヨーグルト、プロバイオティクス飲むヨーグルト、冷蔵および常温保存可能なデザート、乳製品ベースのデザート、大豆ベースデザートを含む。
【0045】
例示的な飲料としては、限定はされないが、フレーバーウォーター、ソフトドリンク、フルーツドリンク、コーヒーベースのドリンク、茶ベースのドリンク、ジュースベースのドリンク(果物および野菜を含む)、ミルクベースのドリンク、ゲルドリンク、炭酸または非炭酸ドリンク、粉末ドリンク、アルコールまたは非アルコールドリンクを含む。
例示的な発酵食品としては、限定はされないが、チーズおよびチーズ製品、肉および肉製品、大豆および大豆製品、魚および魚製品、穀物および穀物製品、果物および果物製品を含む。
特定の態様において、消耗品は、醤油、チーズ、スープ、ホットソースおよびコールドソース、果物、野菜、ケチャップ、茶、コーヒー、ポテトチップスまたは押出成型スナックなどのスナックからなる群から選択される。
【0046】
式(I)の化合物は、フレーバー組成物および/または食用組成物に加えた場合、組成物に作用してそのフレーバーおよび/または口当たりを補完し、よりおいしく本物感を出す。効果は一時的であるかまたは強度に関連し得て、例えば、化合物は、フレーバーを増強する、強化する、ソフトにする、シャープにすることにより、またはこれをさらに唾液分泌的にすることにより、作用する。式(I)の化合物はまた、フレーバーの時間的プロフィールに影響を及ぼし得る、すなわち、それらは、フレーバーの初期のインパクト、フレーバーのボディ、またはその持続効果に影響を与える。
式(I)の化合物は、食用組成物の味およびフレーバーの時間的プロフィールの、任意の側面を変更することができる。特に、化合物は口当たりを改善し、よりクリーミーで脂肪質の感覚を付与する。
【0047】
式(I)の化合物またはこれを含有するフレーバー組成物は、広い担持量で食用組成物に添加することができる。量は、風味付けする食用組成物の性質、および所望の効果、ならびに前記フレーバー組成物中に存在する成分の性質に依存する。式(I)の化合物の存在に起因する顕著で有益な効果を得るためには、フレーバー組成物は、式(I)の化合物が食用組成物の総重量に基づき、10億部当たり1部(1ppb)から100万部当たり10部(10ppm)の量で存在するような量で用いるべきである。これよりも大きい量を用いることもできるが、有益な効果はあまり明白ではなく、望ましくないオフノートが次第に明白になってくる。
塩またはアルコールまたは冷却剤化合物を含有する食用組成物における興味深い官能的効果、例えば塩またはアルコールまたは冷却感の強調効果は、式(I)の化合物を1〜100ppbのレベルで用いる場合に達成することができる。
【0048】
うま味物質を含有する食用組成物における興味深い官能的効果、例えばうま味強調効果は、式(I)の化合物を100〜250ppbのレベルで用いる場合に達成することができる。
食用組成物における興味深い官能的効果、特に口当たり強調効果は、式(I)の化合物を250〜500ppbのレベルで用いる場合に達成することができる。
脂肪を含有する食用組成物における興味深い官能的効果、例えば脂肪強調効果は、式(I)の化合物を500〜1000ppbのレベルで用いる場合に達成することができる。
【0049】
式(I)の化合物を、焼成、油で揚げるなどの高温の条件下で形成するか、あるいは低温殺菌またはUHT条件下などの熱処理によって加工される食用組成物中に組み込むことは、特に有利である。高温での調製または加工のもとでは、揮発性のフレーバー成分が失われまたは分解されて、その結果フレーバー強度が低減され、必須で本物感のフレーバー特性が減少する場合がある。かかる食用製品としては、乳製品、スナック食品、焼成製品、粉末ソフトドリンクおよび類似の乾燥ミックス等、および、脂肪および調味料、マヨネーズ、ドレッシング、スープおよびブイヨン、および飲料が挙げられる。
本発明の食用組成物の特に好ましいクラスは、粉末ソフトドリンクおよび類似の乾燥ミックス用途である。乾燥ミックス用途は当技術分野で知られており、消費前に再構成されることが意図される粉末形態の製品が含まれる。これらには、粉末スープ、粉末状のケーキミックス、粉末チョコレートドリンク、インスタントコーヒー、シーズニングやフォンド(fond)などが挙げられる。
噴霧乾燥などの分散蒸発プロセスによって形成された乾燥粉末は、フレーバー油品質のフレーバーを食用組成物に提供する非常に便利なビヒクルを表す。
【0050】
残念ながら、特に柑橘類フレーバー油などのフレーバー油は、分散蒸発プロセス、特に高温で実施されるプロセスに特に感受性となり得る。フレーバー油は、蒸発または分解して好ましくないオフノートを有する生成物を形成する傾向がある。粉末フレーバー組成物、特に柑橘油を含むものは低品質となり得、結果として比較的短い貯蔵寿命を示す。
驚くべきことに、式(I)の化合物またはこれを含むフレーバー組成物の、粉末組成物への組み込みは、その調製に用いたフレーバー油のインパクトおよび本物感を示す粉末組成物をもたらし、本質的に、粉末フレーバー調合物においてフレーバー油品質を維持する。
したがって、本発明は別の側面において、式(I)の化合物および少なくとも1つの追加のフレーバー共成分を含む、粉末フレーバー組成物を提供する。
【0051】
本発明の別の側面において、式(I)の化合物を含む粉末ソフトドリンク組成物または他の乾燥ミックス組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面において、式(I)の化合物を含む粉末フレーバー組成物を含む、粉末ソフトドリンク組成物または他の乾燥ミックス組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面において、式(I)の化合物を組成物中に組み込むステップを含む、粉末フレーバー組成物を形成する方法が提供される。
特定の態様において、式(I)の化合物は、形成された粉末フレーバー組成物に添加してもよく、または、粉末を形成する前にフレーバー組成物に添加してもよい。
【0052】
本発明の食用組成物のもう1つの特に好ましいクラスは、スナック食品である。スナック食品は、食品業界の当業者によく知られている製品のカテゴリーである。これらの製品は上に記載されており、限定はされないが、プレッツェル、コーンチップ、ポテトチップ、膨化製品、押出製品、トルティーヤチップ等を含む。さらに詳細には、本発明は、低脂肪スナック食品組成物に関する。低脂肪スナック食品組成物は、30重量%未満、より特に5〜25重量%の脂肪を含む。
スナック食品組成物中の脂肪を低減することに伴う問題は、味やテクスチャの喪失である。脂肪は、加工中の生地の振舞いの様式において重要な役割を果たし、レディー・トゥー・イート製品の品質、フレーバーおよびテクスチャに大きな影響を与える。スナック製品の脂肪含有量を減少させるかまたは他の成分で置き換えると(例えば、非消化性脂肪、タンパク質、繊維、ガム)、不利な官能的効果(例えば、口のコーティング、乾燥、パリパリ感の欠如およびフレーバーの欠如)が増加する。不利な官能的効果は、美味しさの低下した製品をもたらす。
【0053】
低脂肪スナック食品製品に関連する問題を克服するフレーバー組成物を考案するために、かなりの努力が費やされてきた。フレーバーは、乾燥粉末形態で局所コーティングとして、および/または液体(例えば、油系、水系)として、スナック食品に適用してもよい。別のアプローチは、生地にフレーバーを加えることであった。
スナック食品、特に低脂肪スナック食品の消費者へのアピールおよび美味しさを改善するためにとられているこれらのさまざまなアプローチにもかかわらず、全脂スナック食品の視覚的なアピール、フレーバー、およびテクスチャを有した、適用されるコーティングを有する、改善された低脂肪スナック食品の必要性が、依然として存在している。
式(I)の化合物またはそれを含有するフレーバー組成物は、スナック食品に組み込まれて、インパクトのあるフレーバーと、顕著なまろやかさと充実感のある口当たりを付与することができる。さらに、味および口当たりの効果は、低脂肪スナック食品でも達成することができる。
【0054】
したがって、本発明は、その別の側面において、前述のフレーバー組成物を含むスナック食品を提供する。本発明の特定の態様において、スナック食品は、スナック食品の全重量に基づいて約40重量%以下の脂肪含有量を有し、より特に約30%以下、さらにより特に25%以下、より特にまた約10%以下、さらにより特に約5%以下、さらにより特に約3%以下の脂肪含有量を有する。
スナック食品の例は上で説明したが、オーブン焼成、押出成型または油で揚げることにより加工された製品を含み、これらは、ジャガイモおよび/またはトウモロコシおよび/または米、小麦などのさまざまな穀物から作られている。
【0055】
本発明の食用組成物の別の特に好ましいクラスは、アルコール飲料である。
出願人は驚くべきことに、アルコール飲料に組み込まれた式(I)の化合物が、飲料のアルコールのインパクトを増加する効果を有することを見出した。
したがって、本発明はその別の態様において、式(I)の化合物を含むアルコール飲料を提供する。
本発明のさらに別の態様において、アルコール飲料に式(I)の化合物を組み込むことによる、アルコール飲料において強化されたアルコール印象を生成する方法を提供する。
式(I)の化合物は、アルコール飲料中に1ppbから1ppmの量で組み込むことができる。
【0056】
食用組成物の別の好ましいクラスは、錠剤、カプセル、粉末、多微粒子(multiparticulate)などの形態で摂取する製品である。
特定のグループの人々は、錠剤またはカプセル、粉末、多微粒子等の嚥下に問題を有する。この問題は、子供や、非常に老いた人かまたは衰弱した人などの特定の消費者のグループにおいて、特に顕著となり得る。出願人は驚くべきことに、口腔内に摂取した場合の式(I)の化合物が、顕著な唾液分泌効果を生じることを発見した。前記化合物をこれらの投与形態に組み込むと、特に前記剤形の周りのコーティングの一部として組み込むと、消費者、特に子供および老人または衰弱した人の嚥下プロセスを、容易にすることができる。
したがって本発明は、その別の側面において、式(I)の化合物を含む経口投与可能な剤形を、特に錠剤、カプセル、粉末または多微粒子の形態のものを提供する。
【0057】
食用組成物の別の好ましいクラスは、焼成食品である。式(I)の化合物は、局所的に、または生地内に組み込むことができる。1ppbから1ppmのレベルで組み込まれた場合、式(I)の化合物は、焼成製品に乾燥が少なくよりジューシーさを付与する。
食用組成物の他の好ましいクラスは、カロリーまたはノンカロリー飲料であって、スクロース、高フルクトースコーンシロップ、フルクトースおよびグルコースなどの炭水化物甘味料、またはアスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、シクラマート、ナトリウムサッカリン、ネオテーム、レバウジオシドA、および/または他のステビアベースの甘味料などの高強度非栄養甘味料;ならびにその他の任意の成分、例えばジュース、クエン酸などの有機酸、アルコールおよび機能性成分などを含有する、前記カロリーまたはノンカロリー飲料である。
【0058】
1ppbから10ppmのレベルで組み込まれた場合、式(I)の化合物は、1%未満および約20%までのレベルで甘味料を含有する前記飲料に、先行する甘さと砂糖を思わせる口当たりを付与する。
他の好ましい食用組成物は、特に大豆ベースまた魚ベースの、セイボリー組成物である。
1ppbから10ppmのレベルで組み込まれた場合、5〜40%の塩を含有する大豆ベース組成物(醤油など)または魚ベース組成物(魚醤など)において、前記組成物は、長く続く豊かな強いうま味を示すことが見出されている。
【0059】
別の好ましい食用組成物は、濁った飲料(clouded beverage)組成物である。
ジュースなどの特定の飲料は比較的高い濁度を有し、したがって不透明な外観を有する。多くの場合、飲料は、比較的高い濁度を有することが望ましい。これは、低果汁含有量の飲料により自然な外観を提供することが望ましい場合もあれば、沈降または「リンギング(ringing)」(フレーバー油または着色油が貯蔵中に容器の表面に上昇する)のマスキングに関連する理由のためでもあり得る。濁った飲料は、通常、濁化剤(clouding agent)によって形成される。濁化剤は、通常エマルジョンの形態で供給されるか、または濁化剤は、再構成時にエマルジョンを形成して飲料を永久的に濁らせる、粉末飲料の一部であってもよい。
式(I)の化合物は、それらの顕著な官能特性に加えて、濁化剤およびそれを含有する飲料組成物に安定性を加えることができる。
したがって本発明は、その別の側面において、飲料濁化組成物および式(I)の化合物を含む、組成物を提供する。
【0060】
本発明の特定の態様において、本明細書で定義されるフレーバー組成物は、エマルジョンの形態で提供することができる。このエマルジョン組成物は、濁った飲料用途において、特に濁化剤を用いることが意図されている場合に、特に有用である。
本発明のさらに別の側面において、濁化剤および式(I)の化合物を含む濁った飲料組成物を提供する。
他の好ましい食用組成物は、熟成のプロセスによって形成される組成物である。
【0061】
食品加工において、食品はしばしば、必要条件と認められた品質とを有する食品を得るために、長時間明確に定義された条件下で維持する必要が生じる。このプロセスのために一般的に使用される用語は、熟成である。熟成は、特定の種類のチーズ、肉、醤油およびワインのほか、ビール、ソーセージ、ザワークラウト、テンペおよび豆腐などの加工において、よく知られている。食品に対する有益な効果を有する、特定の理由のために行われる特定のステップもある(例えば、水除去、またはオフノートの除去など)。この例としては、チョコレートのコンチングおよび麺、野菜および果物の乾燥である。食品の品質を向上させる転換(transformation)は、化学的変換、酵素的に触媒される変換または発酵転換によって誘導される。これらの変換のすべてはゆっくりであり、したがって高価である;それらはまた、完全に予測可能または制御可能ではない。
組み込まれた食用組成物に本物感のある味特性を加えるという、顕著な特性を有する式(I)の化合物は、熟成製品の味品質に悪影響を与えることなく貯蔵時間を短縮するために、その熟成プロセス中に食用製品に加えることができる。
【0062】
したがって、本発明の別の側面において、チーズ、肉、醤油およびワイン、ビール、ソーセージ、ザワークラウト、テンペおよび豆腐からなる群から選択される製品を熟成するための、式(I)の化合物の存在下において前記製品を熟成するステップを含む、方法が提供される。
本発明の別の側面において、チョコレートをコンチングする方法であって、チョコレートに対して、本発明の式(I)の化合物、またはこれを含有するフレーバー組成物を加えるステップを含む、前記方法が提供される。
以下では、本発明を説明するのに役立つ、一連の非限定的な例が続く。
【0063】
合成例
1.一般構造
【化2】
は、9〜21個の炭素原子を有し、0〜3個の二重結合を含有する直鎖炭化水素基であるか、
または
は、[(1E)−2,6−ジメチルヘプタ−1,5−ジエン−1−イル]−基であり、
n=1〜4。
一般式に属するいくつかの化合物を以下に説明する2つの手法のうちの1つに従って合成した。
【0064】
2.合成
2.1 経路A:(DCC法)
250mLの丸底フラスコ中、脂肪酸(3.93mmol)をジオキサン(50ml)中の1−ヒドロキシピロリジン−2,5−ジオン(0.498g、4.32mmol)と混合し、無色の溶液を得た。溶液を10℃に冷却し、撹拌しつつDCC(0.892g、4.32mmol)を添加した。撹拌を室温で3時間続けた。形成された固体を濾過し(ジシクロヘキシル尿素)、濾液を、水中の炭酸水素ナトリウム(0.363g、4.32mmol)の2%溶液中のアミノ酸(6.48mmol)の溶液に添加した。反応混合物を50℃で4時間撹拌した。ジオキサンを蒸発させ、水性残留物を水でさらに希釈し、希塩酸溶液で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し、蒸発させて1.3gの白色固体を得た。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー、溶離剤DCM/メタノールで精製した。
85〜90%純度の生成物1gを得た。
【0065】
2.2 経路B:(保護基ありのDCC法)
ステップ1:
DCM(100ml)中のO−メチル化アミノ酸(16.51mmol)の溶液に、トリエチルアミン(1.519g、15.01mmol)を−15℃で添加した。脂肪酸(0.01mmol)を撹拌しつつ添加した。10mLのDCM中のDCC(15.01mmol)の溶液を、0℃で滴下した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、撹拌を室温で3時間続けた。ジシクロヘキシル尿素を反応混合物から濾過により除去した。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、希塩酸溶液および水で洗浄した。有機層を分離し、乾燥し、蒸発させて、3gの油を得た。この油をフラッシュカラムクロマトグラフィー、溶離剤DCM/メタノールで精製した。中間体エステル化合物は、95%の純度で単離することができた。
ステップ2:
O−メチル化N−アシルアミノ酸(4.91mmol)を、エタノール(8.00ml)と水(8ml)の混合物に溶解した。この混合物に、水酸化ナトリウムの32%溶液(2.453g、19.63mmol)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を14時間にわたって静置した。
14時間後、混合物を濃塩酸水溶液(1.612ml、19.63mmol)で酸性にし、水で希釈し、mtbeで抽出した。有機層を分離し、乾燥し、蒸発させ、1.3gの半固体黄色残留物を得た。NMRにより、表題化合物の構造を確認した;純度95%。
【0066】
2.3 経路C:(酸塩化物)
アミノ酸(20mmol)を水(40ml)中の水酸化ナトリウム(54.5mmol)の溶液に溶解した。
テトラヒドロフラン(60ml)を添加した。脂肪酸塩化物(18.18mmol)を室温で滴下した。撹拌を2時間続けた。混合物を水で希釈し、塩酸(2.99ml、36.4mmol)の37%溶液で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。
有機層を合わせ、乾燥し、蒸発させた。
残留物は、NMRによれば約20%の遊離脂肪酸を含む。固体をヘプタンで30分撹拌し、濾過し、乾燥させた。これにより、2.4gの表題化合物をクリーム状の着色固体として得た。(純度95%)。
【0067】
2.4 合成した全生成物
上述の方法に基づいて、一連の化合物を合成した。これらの化合物の全てを表1にまとめる。
【0068】
【表1】
【0069】
3 NMRデータ(例)
3.1 構造5 ACC−C18:1
【化3】
【数1】
【0070】
適用例
C18アミノシクロプロパン酸(ACCA)誘導体の試験
試料を調製し、専門家のテイスターによって評価した。テイスターには、本物感のある味、口当たり、充実感、唾液分泌、塩味、うま味、甘味、ジューシーさ、豊かさ、長時間持続性および脂肪質に焦点を当てて、試料を表現してもらった。
【0071】
キッコーマン減塩醤油での試験
純粋製品の塩分濃度:5〜40%の間
適用における塩分濃度:0.3〜1.0%
C18:1−ACCA、0.5ppm:先行する強い塩味が残り、非常に強い塩味を有する
【0072】
魚醤における試験
純粋製品の塩分濃度:5〜40%の間
適用における塩分濃度:0.3〜1.0%
C18:1−ACCA、0.5ppm:強い塩味が残り、強いボディと口当たり
【0073】
マヨネーズにおける試験
脂肪濃度 10〜80%の間
低脂肪マヨネーズ(脂肪分27%)
C18:1−ACCA、0.5ppm:よいバランス、豊かな口当たり、卵風味の増加
【0074】
ドレッシングにおける試験
オイル濃度 0.5〜50%
酸性度 PH3〜6
低脂肪サラダドレッシング(脂肪分13.6%)
C18:1−ACCA、0.5ppm:増加した口当たりとボディ、より少ない酸味
【0075】
スープおよびブイヨンにおける試験
脂肪濃度 0.1〜10%
塩分濃度 0.3〜1.4%
標準チキンブイヨンベース
塩分0.7%、脂肪分0.5%
C18:1−ACCA、0.5ppm:よりボディと脂肪質のノートがある、唾液分泌性および良好な後味
C18:1−ACCA、0.2ppm:より塩気が強く、より強く、よりうま味がある
肉汁およびフォンドにおける試験
ビーフ肉汁
C18:1−ACCA、40ppb:より塩気が強く、脂肪質であり、全体のプロフィールが増強される
【0076】
チーズにおける試験
脂肪濃度:1〜40%
塩分:0.3〜2%
スプレッドチーズERU
C18:1−ACCA、0.5ppm:強いうま味、チーズバイトが残る
チーズソース:脂肪分5%、塩分1.6%
C18:1−ACCA、0.5ppm:強いうま味、チーズバイト、広がる