特許第6248094号(P6248094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248094押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248094
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/08 20060101AFI20171204BHJP
   B29C 47/92 20060101ALI20171204BHJP
   B65H 59/38 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   D01D5/08 B
   B29C47/92
   B65H59/38 W
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-509540(P2015-509540)
(86)(22)【出願日】2013年4月29日
(65)【公表番号】特表2015-520807(P2015-520807A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】IB2013053368
(87)【国際公開番号】WO2013164749
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年3月2日
(31)【優先権主張番号】MI2012A000734
(32)【優先日】2012年5月3日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513122107
【氏名又は名称】ビティエッセエッレ インターナショナル ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100175237
【弁理士】
【氏名又は名称】加納 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】バレア チツイアノ
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−093142(JP,A)
【文献】 特開平10−324461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00−13/02
B29C47/00−47/96
B65H59/00−59/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法であって、
押出機(E)から出て来る少なくとも1本の合成糸(F)を、前記合成糸(F)が巻き付けられる長手方向の軸線(A)を中心にして回転自在な、少なくとも1個の対応するボビン(2)に、繋げる工程と、
前記ボビン(2)に特定の速度及び/又はトルクを与えることにより、前記ボビン(2)を回転させる工程と、
前記ボビン(2)の上流で合成糸(F)に作用する張力の値を、可動部分が無い少なくとも1個のロードセル上で前記合成糸「F」を移動させることにより張力値を非侵襲で瞬時に測定する工程と、
前記測定張力値を、前記張力の基準値とほぼ等しく維持するため、前記速度及び/又は前記トルクを刻々と調節する工程を、含む方法。
【請求項2】
前記張力の基準値が、一定であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ボビン(2)の速度及び/又はトルクを調節する工程が、前記合成糸(F)の測定張力値を基準張力値と比較する工程と、前記ボビン(2)に与える速度及び/又はトルクの値を決定する工程を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ボビン(2)に与える速度及び/又はトルクの値を決定する工程が、合成糸(F)の測定張力値と基準張力値との間の差異の関数として得られることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ボビン(2)の前記速度及び/又は前記トルクを調節する工程が、前記測定張力値が、前記基準張力値よりも大きい/小さい場合、前記ボビン(2)を減速/加速させる工程を含んでいることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記検知した張力値を閾値と比較し、前記検知した張力値が前記閾値を越えると、警報信号を発生させる工程も含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記合成糸(F)の張力値の測定工程が、前記ボビン(2)の上流で連携する張力センサ4によって行われることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1個のボビン(2)が前記基準値と異なる速度を有する場合に異常信号を発生させるために、前記ボビン(2)の速度値を基準値と比較する工程を含んでいることを特徴とする請求項1〜7に記載の方法。
【請求項9】
押出機から送られて来る合成糸の巻き取り装置であって、
前記合成糸(F)が巻き付けられる、長手方向の軸線(A)を中心にして回転自在な少なくとも1個のボビン(2)と、
前記ボビンを前記長手方向の軸線(A)を中心に回転させるため、前記ボビン(2)に連結された少なくとも1個のモータ(3)と、
前記合成糸に作用する張力の値を表す張力信号(ST)を発生させるため、前記ボビン(2)と連携し、可動部分が無く張力値を非侵襲で瞬時に測定できる少なくとも1個のロードセル上で前記合成糸「F」を移動させる張力センサ(4)と、
前記合成糸に作用する張力の値を、基準張力値と等しく維持するため、前記張力信号(ST)を受信し、前記モータ(3)によって与えられる速度及び/又はトルクを表す制御信号(SC)を刻々と処理して前記モータ(3)に送信するための少なくとも1個の処理ユニット(5)とを備えている装置。
【請求項10】
前記処理ユニット(5)が、前記張力信号(ST)を受信して前記張力信号を前記張力の基準値と比較するため、前記張力センサ(4)に機能的に接続された比較サブユニット(6)を備え、前記1個の比較サブユニット(6)は、検知した張力値と基準張力値との間の差異を表す不整合信号(SD)を発生させることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記処理ユニット(5)が、前記不整合信号(SD)を受信して前記制御信号(SC)を前記不整合信号(SD)の関数として発生させるため、前記比較サブユニット(6)に機能的に接続された制御サブユニット(7)を備えていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
対応する複数の合成糸(F)を巻き付けるための複数の前記ボビン()を備えた請求項9〜11の何れか1つに記載の装置であって、各合成糸(F)に作用する張力の測定値を表す複数の張力信号(ST)を発生させるため、各々がそれぞれのボビン(2)と連携する複数の張力センサ(4)も備えていることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
合成糸を得る際には、紡糸を行うため、ポリマー基材が、押出機を通過させられる。このようにして得られた合成糸は、適当なモータによって回転されるボビンに巻き取られる。
【0003】
公知のプラントでは、複数の押出機が、対応する複数の電動式ボビンと連携している。しばしば、プラントの全てのボビンを同時に回転させるため、1つのモータがそれらのボビンと連携している。
【0004】
ボビンの回転速度は、押出機から合成糸が出て行く速度との正確で一定した関係に基づいて決定されるのが通常である。
【0005】
そのほか、押出機から合成糸が出て行く速度は、機械的ダンサーアームを用いることにより調節することができ、その場合には、モータを制御するため、制御電子機器が、機械的ダンサーアームの位置の情報を利用している。
【0006】
そのような方法の例は、英国特許第1110718号、及び米国特許第5277373号に見られる。
【0007】
困ったことに、押し出し工程中、押出機から単糸が出て行く速度は、しばしば一定していないことがある。加えて、糸が、ボビンに巻き付けられるにつれて、リールの巻取径は増大することになり、これがリールに巻き付く合成糸の接線方向の速度の上昇をもたらす。
【0008】
これら公知の解決策は、これらの速度変化を想定していないか、又はそれらの速度変化を有効に補償することができない。
【0009】
その結果、押出機を出て来る合成糸は、幾何学的特性の変化、例えば合成糸の直径の局部的な減少のほかに、合成糸の機械的特性の変化ももたらすことのある過剰な張力又は過小な張力を受ける。
【0010】
勿論、斯かる変化は、そのようにして押し出され巻き取られた合成糸から得られる織物における欠陥を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この状況で、本発明の根底をなす技術的課題は、先行技術の上記の欠点を克服する押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置を提案することである。
【0012】
特に、本発明の目的は、押し出された合成糸の欠陥を少なくする押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の具体的な技術的課題及び目的は、1以上の添付の請求項で述べる技術的特徴を有する押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置によって実質的に達成される。
【0014】
本発明の、この他の特徴及び利点は、添付の図1に示すような、押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法及び装置の好ましいが排他的でない実施の形態についての、例示的で非限定の説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による押出機から送られて来る合成糸を巻き取る装置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図1を参照すると、本発明による押出機から送られて来る合成糸を巻き取る装置が、全体を参照符号1で示されている。
【0017】
本発明による巻取装置1は、本発明による、押出機から送られて来る合成糸を巻き取り方法に従って作動するのが好ましい。
【0018】
本発明による巻取装置1は、長手方向の軸線を中心にして回転自在な少なくとも1個のボビン2を備え、ボビンには、押出機「E」から出て来る合成糸「F」が巻き付けられる。
【0019】
好ましく、本発明による巻取装置1は、複数のボビン2を備え、各ボビンは、それぞれの押出機「E」から出て来るそれぞれの合成糸「F」を巻き取るように、それぞれの長手方向の軸線を中心にして回転自在である。
【0020】
各押出機「E」は、合成糸「F」を得るための巻取装置(更に説明はしない)の一部を形成している。
【0021】
これらボビン2の回転は、ボビン2のそれぞれと連結された複数のモータ3によって確保される。詳細には、各ボビン2は、当該ボビン2を回転させるそれぞれのモータ3に連結される。
【0022】
各ボビン2と各モータ3は、それぞれの支持構造体(図示せず)に結合させてよい。
【0023】
本発明によれば、本発明による巻取装置1は、巻き取られる合成糸に作用する張力を刻々と制御する手段を備える。
【0024】
言い換えれば、本発明による巻取装置1は、複数の張力センサ4を備え、各張力センサは、それぞれの合成糸「F」と関連付けられている。
【0025】
例示として、張力センサ4は、ロードセルである。
【0026】
好ましくは、ロードセルの使用により、張力の非侵入的検知(non−invasive detection)を可能にする。実際、作用する張力の値を検知するには、最小限の圧力で、ロードセル上で合成糸「F」を移動させることが必要となる。これにより、合成糸の進路に関して合成糸のごくわずかな逸れを引き起こし、張力自身の非常にわずかな上昇を生じさせる。
【0027】
そのため、ロードセルの使用は、張力値を瞬時に検知できるようにするものである。実際、ロードセルに可動部分が無いと、システムの慣性が減少し、検知がより早くなり、そのため、制御品質をより高くすることができる。
【0028】
張力センサ4は、ボビン2に接続され、ボビン2自体の上流に配置されている。
【0029】
より正確には、張力センサ4は、押出機「E」とボビン2との間で作用するように配置される。
【0030】
張力センサ4は、支持構造体に連結された適当な支持体に取り付けられている。
【0031】
各々の張力センサ4は、張力センサが関与する対応する合成糸「F」に作用する張力の測定値を表すそれぞれの張力信号「ST」を発生させる。
【0032】
張力信号「ST」を受信するため、張力センサ4には、処理ユニット5が機能的に接続されている。
【0033】
加えて、処理ユニット5は、それぞれのモータ3が与えなければならない速度及び/又はトルクを各々表す複数の制御信号「SC」を処理する。
【0034】
そのため、処理ユニット5は、各制御信号「SC」をそれぞれのモータ3に送るため、全てのモータに機能的に接続されている。
【0035】
本発明によれば、制御信号「SC」は、張力の測定値を基準値とほぼ等しく維持するように処理される。斯かる基準値は、ユーザーによって、例えば、巻き取られる合成糸の種類に基づいて設定される。斯かる基準張力値は、一定であるのが好ましい。他の実施の形態では、基準張力値は、可変である。例えば、斯かる可変の基準張力値は、製造サイクルの関数でよく、特に、ボビン2に存在する合成糸の量の関数でよい。
【0036】
処理ユニット5は、それぞれの張力信号「ST」を受信するため、張力センサ4に機能的に接続された比較サブユニット6を備えている。
【0037】
比較サブユニット6は、張力信号「ST」によって表される測定張力値を、基準張力値と比較する。斯かる比較に続いて、比較サブユニット6は、各測定張力値と基準張力値との間の差異を表す不整合信号「SD」を発生させる。
【0038】
加えて、処理ユニット5は、不整合信号「SD」を受信するように比較サブユニット6に機能的に接続された制御サブユニット7を備えている。
【0039】
制御サブユニット7は、制御信号「SC」を、受信した不整合信号「SD」の関数として処理する。制御サブユニット7は、制御信号「SC」をモータ3に送信するように、モータ3に機能的に接続されている。
【0040】
処理ユニット5は、それぞれの張力信号「ST」を受信するため、張力センサ4に機能的に接続された照合サブユニット(図示せず)を備えることが、好ましい。
【0041】
照合サブユニットは、検知した張力値を、ユーザーによって予め設定された少なくとも1つの閾値と比較する。1つ以上の張力の測定値が、閾値を越えると、警報信号が、照合サブユニットによって発生され、異常の発生を合図するため、適当な表示手段(図示せず)に送られる。
【0042】
閾値は、基準張力値と一致していてもよい。
【0043】
警報信号を表示することに加え、異常を受けて本発明による巻取装置を停止させるように、停止信号を発生させてもよい。
【0044】
例示として、処理ユニット5は、マイクロプロセッサータイプのものである。
【0045】
本発明による押出機から送られて来る合成糸の巻き取り方法は、押出機「E」を出て来る少なくとも1本の合成糸「F」をボビン2に繋げる予備工程を含んでいる。
【0046】
複数の合成糸「F」を、対応する複数のボビン2に繋げるのが好ましい。
【0047】
各ボビン2は、各合成糸「F」が、各ボビン2に巻き付けられて複数個の巻取り合成糸を形成するように、それぞれのモータ3によって、各ボビン2の長手方向の軸線を中心にして回転される。特に、ボビン2は、ボビンに特定の速度及び/又はトルクを与えることにより作動される。
【0048】
ボビン2の作動工程中、合成糸「F」に作用する張力が測定される。斯かる作業は、張力センサ4を用いることにより行われる。
【0049】
測定工程は、張力信号「ST」を発生させる工程と、それらの張力信号を処理ユニット5に送信する工程を含んでいる。
【0050】
本発明による方法は、測定張力値を一定な基準張力値とほぼ等しく維持するため、速度及び/又はトルクを調節する工程も含んでいる。
【0051】
特に、斯かる調節工程は、各測定張力値と一定な基準張力値との間の差異を測定するため、各測定張力値を一定な基準張力値と比較する工程を含んでいる。
【0052】
比較工程は、比較サブユニット6によって行われる不整合信号「SD」を発生させる工程と、斯かる不整合信号を制御サブユニット7に送信する工程を含んでいる。
【0053】
調節工程は、各ボビン2の速度及び/又はトルクの値を測定する工程も含んでいる。
【0054】
斯かる調節工程は、制御信号「SC」を発生させる工程と、それらの制御信号をそれぞれのモータ3に送信する工程を含んでいる。
【0055】
より詳細には、ボビン2の速度及び/又はトルクを調節する工程は、合成糸「F」が一定な基準張力値よりも大きな測定値を有する張力を受けているボビン2を、測定張力値が一定な基準張力値と等しくなるまで、減速させる工程を含んでいる。
【0056】
同様に、ボビン2の速度及び/又はトルクを調節する工程は、合成糸「F」が一定な基準張力値よりも小さな測定値を有する張力を受けているボビン2を、測定張力値が一定な基準張力値と等しくなるまで、加速させる工程を含んでいる。
【0057】
ボビン2の回転速度に関連して、別の制御工程が含まれていてもよい。
【0058】
詳細には、制御信号「SC」によって表される速度の値は、1個以上のボビン2が他のボビンに対して変則的な速度で回転しているかどうかを確認するように、少なくとも1つの速度基準値と比較される。
【0059】
特に、ボビン2の速度値の1つ以上が速度基準値と異なる場合には、異常信号が発生される。
【0060】
速度基準値は、ユーザーによって予め設定することができる。こうする代わりに、速度基準値は、全ての又は幾つかのボビン2の平均速度値に基づいて自動的に計算してもよい。
【0061】
上述した本発明は、所期の目的を達成するものである。
【0062】
実際、押し出された合成糸に作用する張力の制御が、刻々と行われるので、合成糸に作用する張力の値は、常に設定した基準張力値とほぼ等しく、したがって、一定である。
【0063】
これが、合成糸自身の機械特性及びサイズ特性を変えることのある望ましくない機械的応力を、合成糸が受けるのを防止する。そのため、押し出された合成糸は、均一な特性を有する。
【0064】
したがって、このようにして得られた複数個の巻取り合成糸は、優れた品質を有し、加工廃棄物が際だって少ない後続の製造過程の最適化を可能にするものである。
図1