特許第6248110号(P6248110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248110シーソー軸受、ローターハブ、風力タービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248110
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】シーソー軸受、ローターハブ、風力タービン
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/02 20060101AFI20171204BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20171204BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20171204BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20171204BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20171204BHJP
   F16F 1/41 20060101ALI20171204BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20171204BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20171204BHJP
   F16F 13/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F16C27/02 Z
   F03D1/06 A
   F03D80/00
   F16C17/02 Z
   F16F1/40
   F16F1/41
   F16F15/04 P
   F16F15/023 Z
   F16F13/10
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-531484(P2015-531484)
(86)(22)【出願日】2013年9月7日
(65)【公表番号】特表2015-530535(P2015-530535A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013002688
(87)【国際公開番号】WO2014040715
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】12006429.0
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514026727
【氏名又は名称】エーエスエム エネルギー−ウント シュヴィングングステヒニック ミトゥシュ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミトゥシュ、フランツ
(72)【発明者】
【氏名】グランツナー、セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハヌス、カールハインツ
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0308980(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0194115(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/054808(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02003362(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/02,27/02
F03D 1/06,80/00
F16F 1/40, 1/41
F16F 13/10,15/023,15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シーソーシャフト(3)あるいはシーソー軸受に対する主シャフト(1)を収容しうるインナーブッシング(10)と、
(ii) 前記インナーブッシング(10)の周囲のアウターブッシング(11)と、
(iii) 緊張可能な複数の多層ばね要素(4)と、
(iv) テンション付与装置(12)と、を具備した剛性が可変なシーソー軸受(9)であって、
前記多層ばね要素(4)は、2つのベース面を有し、前記ベース面と連続する円形または楕円形の断面形状を有する弾性層と非弾性層とで構成され、前記アウターブッシング(11)の内部における前記多層ばね要素(4)は前記インナーブッシング(10)のまわりに放射状分布で配列され、
(a) 少なくとも4つないし8つの前記多層ばね要素(4)は、前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に垂直な第1の平面内に、放射状に分布し一様に配列され、
(b) 少なくとも4つないし8つの前記多層ばね要素(4)は、前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に垂直な第2の平面内に、放射状に分布し一様に配列され、
(c) 前記多層ばね要素(4)は、前記ベース面の一方を介して前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に配列されたアングル要素(13)の面上に配列され、前記第1の平面内に配列された前記多層ばね要素(4)は、軸線方向および半径方向の剛性が前記第1の平面内に配列された前記多層ばね要素(4)のテンション付与に対して異なって調節されうるような態様で、前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に対して角度(α)を形成し、前記第2の平面内に配列された前記多層ばね要素(4)は、軸線方向および半径方向の剛性が前記第2の平面内に配列された前記多層ばね要素(4)のテンション付与に対して異なって調節されうるような態様で、前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に対して角度(β)を形成し、
(d) 前記テンション付与装置(12)は、前記多層ばね要素(4)の前記ベース面の他方上に配列され、前記多層ばね要素(4)の厚さが変化することにより抗して互いに前記アウターブッシング(11)および前記インナーブッシング(10)にテンションを付与し、プリテンション付与を前記インナーブッシング(10)前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)の各領域に対して互いに独立に調節可能および変更可能にする、ことを特徴とするシーソー軸受
【請求項2】
前記多層ばね要素(4)は円錐形であることを特徴とする、請求項1に記載のシーソー軸受。
【請求項3】
前記多層ばね要素(4)のより長い直径を有する円錐面である前記ベース面の一方は前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)を担持する前記インナーブッシング(10)の方向に面していることを特徴とする、請求項2に記載のシーソー軸受。
【請求項4】
前記多層ばね要素(4)は円形または楕円形の基礎形状が円筒状に積層されて構成されることを特徴とする、請求項1に記載のシーソー軸受。
【請求項5】
前記テンション付与装置(12)は、前記多層ばね要素(4)の前記ベース面の他方上に設けられ、前記アウターブッシング(11)の内壁と前記シーソーシャフト(3)を担持した前記インナーブッシング(10)の外壁との間に嵌合して配列されていることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項6】
(i) 前記第1の平面の少なくとも6つないし8つの前記多層ばね要素(4)が前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に対して角度(α)を形成する前記アングル要素(13)の一方の面上に配列され、
(ii) 前記第2の平面の少なくとも6つないし8つの前記多層ばね要素(4)が前記シーソーシャフト(3)または前記主シャフト(1)に対して角度(β)を形成する前記アングル要素(13)の他方の面上に配列され、
前記角度(α)および前記角度(β)は0°と30°の間である、請求項1〜5の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項7】
前記インナーブッシング(10)は、軸方向における前記シーソーシャフト(3)の少なくとも1つの端末領域または軸方向における前記主シャフト(1)の外方に向けられた端末領域によって形成され、前記端末領域は前記多層ばね要素(4)を介して前記アウターブッシング(11)に連結されることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項8】
前記インナーブッシング(10)は、個別の構成要素として、軸方向における前記シーソーシャフト(3)の少なくとも1つの端末領域に、または軸方向における前記主シャフト(1)の外方に向けられた端末領域に付着され、前記端末領域は前記多層ばね要素(4)を介して前記アウターブッシング(11)に連結されることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項9】
前記インナーブッシング(10)は、軸方向における前記主シャフト(1)の外方に向けられた前記端末領域によって形成され、または軸方向における前記主シャフト(1)の外方に向けられた前記端末領域に付着され、前記アウターブッシング(11)はローターハブまたはローターハブの一部によって形成されることを特徴とする、請求項7または8に記載のシーソー軸受。
【請求項10】
少なくとも1つの前記多層ばね要素(4)が中空容積(14)を有することを特徴とする、請求項1〜9の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項11】
液圧装置(6,7)によって前記少なくとも1つの前記多層ばね要素(4)の前記中空容積(14)内にガスまたは流体が押し込まれまたは押し出されて、軸受の剛性を変更可能にすることを特徴とする、請求項10に記載のシーソー軸受。
【請求項12】
少なくとも1つの前記多層ばね要素(4)は、前記多層ばね要素(4)の変形を制限するために、前記多層ばね要素(4)の外形に対応する円筒または円錐の形態をなす固定した止め(101)を内部に有することを特徴とする、請求項1〜11の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項13】
ローターブレードの調節または1−ブレード、2−ブレードもしくは多ブレード風力タービン、ヘリコプターもしくは船のプロペラのローターブレードによって伝達される質量慣性モーメントの軽減、排除および制御を可能にすることを特徴とする、請求項1〜12の1つに記載のシーソー軸受。
【請求項14】
請求項1〜12の1つに記載のシーソー軸受、ローターブレードのための固定装置と、前記シーソーシャフト(3)または前記シャフト(1)のための固定装置と、を具備するローターのためのローターハブ。
【請求項15】
請求項1〜12の1つに記載のシーソー軸受を具備する風力タービン
【請求項16】
請求項14に記載のローターハブを具備する風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧装置によって剛性挙動を任意に変更できかつ風力タービンのローターハブまたは主シャフトの領域において構成的に配置される弾性の、特に円錐状であるが円筒状楕円形でもある多層ばね要素で構成されたシーソー軸受に関する。このタイプの軸受は、結果としてローターブレードの調節のためおよびローターブレードを通じてタービンに伝達される不要な力の軽減のための両方に適している。本発明によるシーソー軸受は、1−ブレード、2−ブレードまたは多ブレードローター風力タービンにおける、好ましくは2−ブレードローターによって駆動されるタービンにおける使用に適している。しかし、本発明によるシーソー軸受はクラッチにおけるおよび船やヘリコプターの駆動トレインにおける使用にも適している。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギータービン、特に従来の3−ブレードローターに代えて2−ブレードローターを使用するものにおいては、駆動トレインに対する風荷重からの力とモーメントを減少または除去するために、シーソー軸受が使用されることが多い。風の作用によって生じる不均衡な質量慣性モーメントは3−ブレードローターシステムではローターブレードの一様な幾何学的配分によって良く制御でき極端な場合に発生するにすぎないが、2−ブレードロータータービンではこの問題が遍在する。
【0003】
対応する風荷重がこのようなタービンに作用しうる態様が図1により概略的に示されている。したがって、例えば、1つのローターブレードに対する風力は他の反対側ブレードに対するより著しく大きくなることがあり、これは、地面の近傍におけるよりもより大きな高さにおいてより風が強く吹くのが通常であるから、高いタワーと大きなローター直径を有する大型風力タービンのローターブレードが垂直線を通過する場合には、稀なことではない(図1、左側の画像)。しかし、2−ブレードローターシステムに対する不均衡な風力はまた、風が側面から吹きそしてローターが水平線を通過する場合に生じやすい(図1、右側の画像)。両方の場合において、全体としてタワーとタービンに不可避的に伝達され、したがって個々の構成要素の短縮された耐用年数あるいは自然損傷さえも生ずるおそれのある不均等に分配された質量慣性モーメントが生ずる。
【0004】
先行技術によれば、シーソー軸受として機能する対応して配置された円錐軸受は、このタイプの問題に対しては、ローターブレードに対して不均等にまたは間接的に作用する風荷重が荷重を受けた軸受の可撓性および弾性によって軽減される主シャフトの領域およびローターシステムにおいて使用されることが多い。
【0005】
上述の目的および必要とされる機能のために、大型の円錐軸受がシーソー軸受として通常使用される。しかし、タービンがさらに大型となると、そのような大型の円錐軸受を加硫処理しワンピースで作製することはさらに困難となる。加えて、これらの大型円錐軸受にプリテンションを付与することは複雑でかつ困難である。さらに、必要な場合にこのような大型で重い円錐軸受を交換することは、円錐軸受を取り外すためには一般にローターハブがまず固定されなければならないので、非常に手間がかかる。さらにまた、システムの全体的な設計状況や生ずる可能性のある風作用に関連してより大きい柔軟性を得るためにこのタイプの軸受の円錐角を変化または変更することは簡単ではない。これらの軸受の取り替えおよび異なる円錐角を有する軸受による置換に伴い、さらに対応して適合された硫化処理ツールを作製して提供することが一般に必要である。
【発明の概要】
【0006】
したがって、目的は、前記目的のための、特に風力タービンにおいて使用するための、好ましく2−ブレードローターを有するタービンにおける使用のための軸受であって、この問題に対する先行技術の解決策の難点を有せず、さらに特に2−ブレードローターシステムにおけるローターブレードの微調整および調節においてより多くの柔軟性を可能にする軸受を提供することである。
【0007】
この目的は、請求項および下記の説明による新規のシーソー軸受、ローターハブ、および風力タービンにより本発明に従って達成された。
【0008】
本発明によるシーソー軸受は下記の機能を確保しなければならない。
【0009】
・ローターブレード(5)がシーソーシャフト(3)のまわりで回転可能
・主シャフト(1)の軸線のまわりでの駆動モーメントの伝達
・卓越風荷重とローター重量からの軸線方向力および半径方向力(F2およびF3)の吸収
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、風力タービンの2―ブレードローターに対する可能な風作用力を示す。
図2図2は、付加的な液圧装置を伴わない2―ブレードローター風力タービンのローターハブ/主シャフトの領域における本発明によるシーソー軸受の使用を示す(平面図および断面)。
図3図3は、付加的な液圧装置を伴う2―ブレードローター風力タービンのローターハブ/主シャフトの領域における本発明によるシーソー軸受の使用を示す。
図4図4は、本発明によるシーソー軸受(9)における多様な適当な多層ばね(4)およびそれらの配置を示す。
図5図5は、本発明によるシーソー軸受(9)における多様な適当な多層ばね(4)およびそれらの配置を示す。
図6図6は、本発明によるシーソー軸受(9)における多様な適当な多層ばね(4)およびそれらの配置を示す。
図7図7は、本発明によるシーソー軸受(9)における多様な適当な多層ばね(4)およびそれらの配置を示す。
図8図8は、多層ばね要素(4)が軸受ハウジング内の取付け前における、テンション付与装置を設けられる本発明によるシーソー軸受の1つの実施の形態の三次元(3−D)表示を示す。
図9図9は、軸受ハウジング内の取付け後、したがってプリテンション付与の後における、多層ばね要素(4)がテンション付与装置を設けられるシーソー軸受の実施の形態の三次元(3−D)表示を示す。
図10図10は、層要素(4)のインナーストップの実施の形態を示す。
図11図11は、3つのローターブレードを有する風力タービン内における本発明によるシーソー軸受の使用を示し、シーソー軸受はここでは主シャフト(1)上に取付けられる。
図12図12は、主シャフト(1)(風力タービンの)上における本発明によるシーソー軸受の多層ばね要素(4)の可能な配置(a−c)を示す。
図13図13は、1―ブレード風力タービン内における本発明によるシーソー軸受の配置を示す。
図14図14は、オプションとして蓄圧器によって流体を充填されうる空洞を有する本発明による多層ばね要素配置(4)を示す。
【詳細な説明】
【0011】
本発明は、複数の弾性層で構成されたそれ自体知られている完全な円錐軸受に代えて大型円錐軸受の個々の部品から生じる複数の軸受を使用するという独創的なアイデアに基づく。このタイプの軸受は、加硫処理のために必要とされるゴム容積が少ないから、したがって製作がより簡単である。より低い重量およびより小さい寸法のために、個々の部品の取り扱いはより良好である。個々の部品は、完全な大型円錐軸受に比較してより容易にかつ何分の一かの力でプリテンショを付与されうる。
【0012】
ローター(5)およびローターハブ(8)の完全な分解を必要としないで、部品が個々に取り外され交換されうるので、取り替えがより簡単である。例えば、より小さい金属シート、より簡単な製造、およびより小さいゴム容積のために、個々の部品はコスト節減を生ずる。
【0013】
複数の弾性および非弾性層で構成されたもとは大型の円錐軸受のコーンセグメントでさえ、弾性および非弾性層はそれら自体が円錐ではなくて平面状または平らな対応した形状の弾性要素で置換されうることが今や認められている。しかし、完全な円錐軸受の単純な分割は、個々の部品の耐用年数を短くする。耐用年数を再び増大するためには、これらの個々の部品は、本発明に従って円形多層ばねとして今や設計される。丸型多層ばねは、矩形ばねより伸展性が小さく、2倍より多い耐用年数を有する。このように平らでありかつ好ましくは丸型である多層ばねは、本発明によれば、標準の円錐軸受と対比すると、ローター/主シャフト領域内において今や必要となった変更された形状に今や収容されなければならない。
【0014】
特定の実施の形態では、多層ばねの個々の弾性の(および非弾性の)好ましくは円形の層は異なる寸法を有しており、したがって互いに接合されると円錐多層ばねを形成する。
【0015】
本発明によるシーソー軸受で使用される改善された耐用年数を有する多層ばねの他の実施の形態では、これらは他の種々の形状で設計されうる。驚くべきことには、対応する多層ばねは、楕円状のベース形状を有する場合には、円筒状のデザインを有する(本発明によるシーソー軸受において説明されるように使用される場合に)円形多層ばねと比較して2ないし4倍の平均寿命を有することが認められた。上述の円錐形状の多層ばね(円形の平らな層を備える)は円筒状円形の多層ばねと比較すると本発明のよるシーソー軸受では増加された耐用年数を有するが、楕円状のベース形状うぃ有する多層ばねと比較するとより短い耐用年数を有する。本発明によるシーソー軸受において使用されうる個々のタイプの多層ばねが図4−7に示されている。
【0016】
本発明によるシーソー軸受は、上記で説明されたそれ自体で知られているタイプの多層ばねに基づいている。例えばWO 2011/088965におけるような革新的な多層ばねを使用することも可能である。しかし、本発明によるシーソー軸受は、風力タービンのローターの領域における機能的な設計要素の特別の幾何学形状との組み合わせでこれらの多層ばねからそれらの優位性を達成する。
【0017】
本発明は、したがって、シーソー軸受のためのシーソーシャフト(3)を収容しうるインナーブッシング(10)と、そのインナーブッシング(10)に連結され、かつ平らな弾性層および平らな非弾性層で構成される多層ばねの形態をなす緊張可能な弾性要素(4)を備える周囲アウターブッシング(11)を備え、使用される弾性要素は少なくとも4つ、好ましくは4つないし8つであり、多層ばね(4)は円形または楕円形のベース形状を有するシーソー軸受(9)に関する。アウタースッシング(11)の内部における前記弾性要素(4)は、インナーブッシング(10)の周りに放射状分布で配列され、多層ばね(4)を介してアウターブッシングとインナーブッシングを互いに緊張させるテンション付与装置を有する。このようにしてテンション付与は、弾性多層ばねの厚さ、したがってプリテンション付与をインナーブッシングの、したがってシーソーシャフトの各領域に互いに独立に調節されかつ変更されることを可能にする。
【0018】
本発明はまた、特に、前記多層ばね(4)が円錐状である対応するシーソー軸受に関し、特に適した実施の形態では、多層ばね(4)のより広い円錐面はシーソーシャフト(3)を担持するインナーブッシングの方向を向き、より狭い面は外方を向く。本発明による軸受で使用される円錐状多層ばねは、十分に長い耐用年数と経済的に受容可能な製造コストとの間の良好な妥協であると考えられうる。
【0019】
本発明は、特に、前記多層ばね(4)は円筒状に楕円形であり、ここでは、前述のように、本発明によるシーソー軸受における特別の配置との組み合わせで、驚くべきことにはそれらは軸受に作用する一般に大きい力によって生じる摩耗に対して特に耐性があることが判明する対応するシーソー軸受に関する。このようにこれらの多層ばねは本発明による軸受では特に堅牢であることが判明するが、より複雑であり、したがって製造するにはより高価である。
【0020】
しかし、本発明は、製造するのが非常に簡単でかつ廉価であるために円筒状に円形の多層ばね(4)を有する対応するシーソー軸受に関する。このような軸受は、特に大きくない不均等な質量慣性モーメントが生ずるタービンにおける選択の手段である。
【0021】
多層ばね要素(4)は、本発明によれば、多層ばねをアウターブッシング(11)とインナーブッシング(10)との間でテンションを付与させることができ、また調節可能なプリテンションを達成する。テンション付与装置は、一般にボルト連結またはクランプされたリテーナであり、必要な幾何学的配列のために多層ばね(4)の両方のベース面上に設置されることが好ましい。しかし、他の付着手段またはテンション付与装置が本発明によるシーソー軸受における他の位置においても可能である。図8および9は、本発明によるシーソー軸受(9)の実施の形態をテンション付与されていない(図8)およびプリテンション付与された(図9)状態で示す。本発明は、したがって、各多層ばねがアウターブッシング(11)の内壁とシーソーシャフト(3)を担持するインナーブッシング(10)の外壁との間に緊密嵌合で配列されたテンション付与装置部品(12)と共に両方の正面またはベース面上に設けられる対応するシーソー軸受に関する。
【0022】
前記多層ばねによって、シーソーシャフトに関する弾性要素(4)角度のピッチが変更可能であり、その要素の、したがってシーソー軸受全体の軸方向および半径方向の剛性が影響されるようにできる。シーソーシャフトに関するピッチの変化は、例えば、対応するアングルピース(13)によって行われうる。このおよび他の対策は、多層ばね要素(4)とシーソーシャフトとの間の角度(α、β)を0oから45oまでの任意の値に、好ましくは0oと30oとの間で調節できるようにする。
【0023】
個々の弾性体要素または弾性体要素のグループに個々にプリテンションを付与することだけでなく、シーソー軸(3)に対する傾斜の関係においてそれらを個々に調節することが可能なことは、タービンの性質、位置、およびそこでの支配的な条件に対して柔軟な態様で整合されうる特性を本発明によるシーソー軸受に与える。特に、ローターブレード角度に対する特定の変化がそれによって達成されうる。
【0024】
これは、前記テンション付与装置によってシーソー軸受の剛性を個々に機械的に調整できることだけでなく、プリテンションが機械的に設定された後で液圧手段によって可逆的な態様でそれに影響を及ぼすことの可能性を含む。このために、本発明によるシーソー軸受の1つまたは複数のあるいはすべての多層ばね要素(4)は、圧縮可能なガスまたは圧力流体が入れ込まれて、軸受のまたは軸受の部分における剛性を増加または所望に応じて減少させうる液圧要素(14)を有する。1つの実施の形態では、液圧要素(14)は、多層ばね(4)のコアにおける、異なるサイズを有しうる中空容積である。したがって現在公知のすべてのタイプの多層ばねは液圧多層ばね(4)として設計されうる。これは、能動的なブレード調節を本発明によるシーソー軸受に統合することを可能にする。液圧要素(14)は液圧管(6)に連結され、それらの間に連結された液圧ポンプ(7)によって制御される。液圧要素によってローターブレードのツイストを行うために、流体が1つのばね(4)から他のばねに送り込まれて、一方のばね(4)の容積をより大きくし他方をより小さくする。液圧ポンプ(7)に代えて、調節のために1つまたは複数のばねに負荷を与えるスラストシリンダーを使用することも可能である。液圧ブレード調節は、ローターハブ(8)全体を回転させ、一方のローターブレード(5)を風の中に入れ、(2−ブレードローターの場合には)他方を風の外とする。この調節は、好ましくない風条件による負荷をさらに低下させることができる。この目的のためには、比較的小さな角度(α、β)が必要とされるにすぎない。
【0025】
本発明は、したがって、ガスまたは流体が圧力装置(6、7)および手段によって流体が強制的に入れ込まれ又は出され、軸受の剛性およびしたがってローターブレード(5)の設定またはタービンに対する質量慣性モーメントを変更できるようにする液圧要素(14)を有する、対応するシーソー軸受に関する。液圧要素(14)は、対応する弾性層要素(4)が、製造が簡単でかつさらに比較的柔軟である中空のゴムばねとして設計されるように好ましくは中空容積である。
【0026】
本発明によるシーソー軸受は、前述のように、各タービンのデザイン特徴および状況に従ってローター、ローターハブまたは主シャフトの領域に据え付けられる。本発明によれば、本発明によるシーソー軸受の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、タービンに対して、好ましくはローターハブの領域において、またはそれの一体的な構成要素として使用される。図2および図3は、本発明による2つの機能的に協働するシーソー軸受の対応する配置を主駆動シャフト(1)に対しおよびローターハブ要素(8)に対してそれらの構造的環境で示しており、主シャフト(1)はそれの先端においてシーソーシャフト(3)に連結され、それに垂直に配置され、2つの対向端部のそれぞれに本発明によるシーソー軸受(9)を有し、ローターハブ要素(8)内に組み込まれまたはそれの一体的な構成要素として構築される。これらの図は2−ブレードロータータービンに対する可能なデザインを示す。
【0027】
したがって、主題は、インナーブッシング(10)が、前記層要素(4)を介してアウターブッシング(11)に連結されるシャフト(3)の少なくとも1つの端末領域によって形成される対応したシーソー軸受である。インナーブッシングはしたがって、インナーブッシングの機能を引き受けるシーソーシャフト(3)の一体的な構成要素と看做されるべきである。この場合におけるシーソーシャフト(3)および主シャフト(1)はTピースを形成し、それの2つの端部にシーソー軸受(9)が付着される。あるいは、インナーブッシング(10)は、シャフト(3)の端部に単独で押しつけられて固定されてもよい。
【0028】
しかし、本主題はまた、インナーブッシング(10)が、前記層要素)4)を介してアウターブッシング(11)に連結された主シャフト(4)の端末領域によって形成される対応するシーソー軸受である。したがってインナーブッシングは、インナーブッシングの機能を引き受ける主シャフトの一体的な構成要素として看做されるべきである。上記のようなTピースの使用はしたがって、不適切である。あるいは、インナーブッシング(10)は、シャフト(1)の端部に単独で押しつけられて固定されてもよい。アウターブッシング(11)は、この場合にはローターハブによって形成されうる。
【0029】
本発明はしたがって同様に、1つに対して2つの(またはそれより多い)ローターブレードを固定するための装置のほかに、上記のようにおよび請求項に記載されているように、少なくとも1つの端部にシーソー軸受が付着されるシーソーシャフト(3)を有し、直接または間接の連結および主駆動シャフト(1)をローターハブ(8)に固定するための手段を有し、シーソー軸受がローターハブ(8)またはそれのキャリア部分(ハウジング)に構成的に永久に連結されまたはそれに一体化さる、風力タービンにおける好ましくは1−、2−、またはオプションとして3−ブレードローターのためのローターハブに関する。本発明によるローターハブ(8)は、特に、上記および下記のように、シーソー軸受、ローターブレードのための固定装置、およびシャフト(3)またはシャフト(1)のための固定装置を具備する。
【0030】
3−ブレードロータータービンの場合には、本発明によるシーソー軸受はそれに対応して構成されるべきである。本発明による実施の形態は図11および12に記載されている。
【0031】
本発明によるシーソー軸受は、既に説明されたように、特に、ローターブレード(5)から風力タービンのタワーへの風により伝達される望ましくない不均等な質量慣性モーメントの減少、除去、および制御を達成するのに著しく適している。それらはまた、個々のまたはすべてのローターブレードの具体的な調節を可能にする。
【0032】
しかし、本発明によるシーソー軸受はさらにまた、機械のクラッチで、またはローターおよび船のプロペラ装置と組み合わせてヘリコプターの駆動トレインおよび船の駆動装置で使用するのに適したものである。
【0033】
したがって、本発明は、例えばローターブレード(5)から2−ブレードローターまたは3−ブレードローター、好ましくは2−ブレードロータータービンのタワーに伝達される質量慣性モーメントの減少、除去および制御のための、および少なくとも2つのこのような軸受がローターハブ(8)の領域に配置されている対応する風力タービンのローターブレードの調節のための対応するシーソー軸受の使用に関する。
【0034】
本発明はまた、ローターブレードの調節のためのまたは1−、2−または多ブレード風力タービンまたはヘリコプターあるいは船のプロペラのローターブレードから伝達される質量慣性モーメントの減少、除去および制御のための対応するシーソー軸受の使用に関する。
【0035】
極端な状況では、弾性体要素(4)の変形を制限することが必要でありうる。弾性体要素(4)の最大軸線方向および半径方向変形を制限するためには、金属止め(101)が内部に組み込まれうる(図10)。ある半径方向変形から、弾性体層の無い表面が金属止め(101)弾性体層は金属止め(101)に触れるやいなや、剛性が非常に高くなり、半径方向変形の所望の限界を生ずる。金属止め(101)の円錐形デザインのために、個々の弾性体層は順次接触するにすぎない。したがって、弾性体要素(4)全体の半径方向の剛性は半径方向変形の増加とともによりゆっくりと増加し、急激な増加は生じない。ある軸線方向変形から、弾性体要素(4)は金属止め(101)の上方部分に接触する。これが弾性体要素(4)の軸線方向剛性を増加させる。軸線方向の剛性の急激な増加を防止するために、クッション層(102)が金属止め(101)の上方部分上に設けられる。軸線方向変形の増加のともない、上方のクッション層(102)が圧縮してより剛性となり、軸線方向の変形の所望の限界を生ずる。したがって本発明はまた、内部に、随意に中空の内部に、好ましくは層に対して垂直に配置される円筒または円錐体の形態をなす固定止めを有する1つまたは複数の多層ばね要素(4)を有する対応するシーソー軸受に関する。連続した厚い弾性体層で金属止め(101)全体を被覆することが同様に可能である。
【0036】
半径方向変形の限界のための止めは、シーソー軸受(9)の弾性体要素(4)に対して半径方向に作用する少なくとも2つの液圧弾性体要素によっても促進されうる。これらの要素はシーソー軸受(9)の周辺方向において接線方向に作用する(図15参照)。液圧弾性体要素の内部液圧容積(105)は、図15に示されているように、蓄圧器(104)上の圧力制御弁(103)に連結されうる。シーソー軸受シャフト(3)のまわりでのシーソー軸受(9)の非常に大きな回転の場合には、液圧弾性体要素は圧縮する。外部変形は、圧力制御弁(103)が開くまで内部液圧容積(105)内の圧力を増加させる。さらに変形すると、流体が、今や開いている圧力制御弁(103)を通じて蓄圧器(104)に流入する。流体が蓄圧器内に逃げるので、流体の圧力はもはや増加しない。したがって、ばね力はさらなる変形があっても僅かに増加するにすぎない。ある変形から、蓄圧器(104)は流体で完全に充満され、流体は液圧弾性体要素(4)から蓄圧器(104)に流入することはもはやできないから、特性線は再び進行性となる。この長いフラットな力/経路特性線は、大きな変形の場合においてさえ可能な止め力を制限する。これは、すべての連結部分に対して、それらがより小さな寸法でもって設計されうるので、プラス効果を有する。
【0037】
本発明の他の実施の形態が図12a−cによって示されている。配置の第1の可能性は、1つのタイプの爪クラッチにある。この配置では、弾性体要素(4)は、ピッチおよびヨー回転の場合にせん断応力を受けるので、非常に柔軟に反応する。この弾性のために、ピッチおよびヨー回転からの曲げモーメントは減少される。弾性体要素(4)は、主シャフト(1)の回転軸線に対する回転の方向においける圧縮応力を受け、剛性に反応する。この配置は、水平および垂直方向(両方とも主シャフト(1)に対して半径方向)に剛性であるが、主シャフト(1)の方向には柔軟である。
【0038】
弾性体要素(4)はまた、球状に配置されうる。これにより、シーソー軸受の半径方向および軸線方向の変形は剛性となるが、すべての回転方向(ピッチ、ヨーおよびローター回転)は柔軟である。この配置は、古典的な玉継手と同様である。ピッチおよびヨー運動が柔軟であることは確実である。主シャフト(1)のまわりにおける回転方向が同様に柔軟であることは確実ではない。
【0039】
上記の2つの配置の組み合わせが図12cに示されている。ここでは、弾性体要素(4)は、ピッチおよびヨー運動の場合にせん断応力を受けるように配向されるので、それらは柔軟に反応する。他の方向では、弾性体要素は、主として圧縮応力を受け、さらに剛性に反応する。これはまた、この場合同様に剛性である主シャフト(1)のまわりでの回転にも該当する。この配置は理想的であり、2つの前記配置の利点を組み合わせる。
【0040】
前記配置12(a−c)は、主シャフトに関連して使用されうるだけでなく、原理てきには、T字状の部品として主シャフト(1)に連結されるシーソー軸受にも適用されうる。
【0041】
図13は、1つだけのローターブレード(5)を有する風力タービンにおけるシーソー軸受(9)の使用を例示により示す。不均衡を軽減するために、このタイプの風力タービンは常に平衡錘(106)を有する。
【0042】
ローターブレード(5)と平衡錘(106)との間の不均一な風力は、ローターとナセルの剛性連結の場合には、非常に高い動的曲げモーメントを生ずる。また2−ブレードローターの場合のように、曲げモーメントを軽減するためにローターブレード(5)にシーソー運動をさせることがここでも必要である。シーソー軸受(9)と弾性体要素(4)は、ここでは2−ブレードローターの場合と同じ構造を有する。
【0043】
本発明によるシーソー軸受はまた、軸方向荷重とトルクが高い剛性をもって、同時にカルダン柔軟性としては大きいカルダン傾斜をもって伝達されなければならない場合には、他の機械におけるクラッチとして使用されうる。これは、風力タービンの場合だけでなく、例えば、船やヘリコプターの駆動トレインの場合でもある。
【0044】
個々のばね(4)の個々の層の半径と厚さは同一であってもあるいは層によって異なっていてもよい。荷重のタイプに応じて、種々の層において、各層がほぼ同じ耐用年数を有することが確実になされうる。したがって、1つの層が過荷重とされ他の層はほとんど全く荷重されなければ、ばねは最大耐用年数を達成する。本発明によるシーソー軸受(9)の多層ばね(4)は本質的に天然ゴム、天然ゴム誘導体または適当な弾性ポリマープラスチックまたはプラスチック混合物よりなる。本発明によれば、弾性体層は、所望の要件に対応して、異なる硬度(「ショア硬度」)と異なる防振性を有しうる。20〜100ショアA、特に30〜80ショアAの硬度を有する弾性体が好ましくは使用される。異なる硬度のこのような弾性体の作成は先行技術において知られており、該当文献において十分に記述されている。市販の天然ゴムまたはプラスチックが好ましくは使用される。非弾性体層は好ましくは、低圧縮率を有する実質的に非弾性の材料で作成された中間プレートである。これらは好ましくは金属板であるが、硬質プラスチック、複合材料またはカーボンファイバ含有材料のような他の材料を使用することの可能である。使用された参照番号および数字の簡単な説明
(1) 主シャフト
(2) ローターブレード軸線/
(3) シーソー軸受シャフト/シーソー軸受のためのシャフト
(4) (液圧)弾性体要素
(5) ローターブレード
(6) 液圧管
(7) 液圧ポンプ
(8) ローターハブ
(9) シーソー軸受
(10) インナーブッシング
(11) アウターブッシング
(12) テンション付与装置要素
(13) アングル部品
(14) 液圧要素/多層ばね要素(4)の内部における中空容積
(15) 中空ゴム多層ばね
α、β シーソーシャフト(3)に対するアングル要素(13)の角度
101 金属止め
102 ゴムクッション
103 圧力制御弁
104 蓄圧器
105 液圧容積
106 平衡錘
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