特許第6248117号(P6248117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの特許一覧

<>
  • 特許6248117-ニッケル基超合金および物品 図000003
  • 特許6248117-ニッケル基超合金および物品 図000004
  • 特許6248117-ニッケル基超合金および物品 図000005
  • 特許6248117-ニッケル基超合金および物品 図000006
  • 特許6248117-ニッケル基超合金および物品 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248117
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ニッケル基超合金および物品
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/05 20060101AFI20171204BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20171204BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20171204BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20171204BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20171204BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C22C19/05 C
   F23R3/42 A
   F01D5/28
   F01D9/02 101
   F02C7/00 C
   F01D25/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-539614(P2015-539614)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公表番号】特表2016-502594(P2016-502594A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】US2013062980
(87)【国際公開番号】WO2014070356
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年9月27日
(31)【優先権主張番号】13/665,280
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ウェイ−ジェン
(72)【発明者】
【氏名】コニツァー,ダグラス・ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジョシュア・リー
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−514430(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0120597(US,A1)
【文献】 特表2011−524943(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/085420(WO,A1)
【文献】 特開2001−214227(JP,A)
【文献】 特開平11−131163(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0026769(US,A1)
【文献】 特開2010−031298(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0262299(US,A1)
【文献】 特開平05−059474(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02235697(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 − 49/14
F01D 5/28
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
F23R 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1800°F/45ksi(982℃/310MPa)において4000サイクル以上の持続ピーク低サイクル疲労寿命を示すニッケル基単結晶超合金組成物であって、以下の(a)〜(c)から選択される組成を有するニッケル基単結晶超合金組成物。
(a)6.4質量%のアルミニウム、
5.5質量%のタンタル、
6.0質量%のクロム、
4.0質量%のタングステン、
2.0質量%のモリブデン、
4.0質量%のレニウム、
7.5質量%のコバルト、
0.20質量%のハフニウム、
0.02質量%の炭素、
0.004質量%のホウ素、
残部のニッケル及び不可避不純物からなる組成、
(b)6.0質量%のアルミニウム、
6.5質量%のタンタル、
4.5質量%のクロム、
5.0質量%のタングステン、
2.5質量%のモリブデン、
4.0質量%のレニウム、
12質量%のコバルト、
0.20質量%のハフニウム、
0.02質量%の炭素、
0.004質量%のホウ素、
残部のニッケル及び不可避不純物からなる組成、
(c)5.8質量%のアルミニウム、
7.0質量%のタンタル、
4.5質量%のクロム、
6.0質量%のタングステン、
2.5質量%のモリブデン、
3.5質量%のレニウム、
10質量%のコバルト、
0.20質量%のハフニウム、
0.02質量%の炭素、
0.004質量%のホウ素、
残部のニッケル及び不可避不純物からなる組成。
【請求項2】
1800°F/45ksi(982℃/310MPa)において5000サイクル以上の持続ピーク低サイクル疲労寿命を示す、請求項1に記載のニッケル基単結晶超合金組成物。
【請求項3】
2000°F/20ksi(1093℃/138MPa)において150時間以上の破断寿命を示す、請求項1又は請求項2に記載のニッケル基単結晶超合金組成物。
【請求項4】
2000°F/20ksi(1093℃/138MPa)において200時間以上の破断寿命を示す、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のニッケル基単結晶超合金組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のニッケル基単結晶超合金組成物からなる単結晶物品。
【請求項6】
スタービンの動翼(10)をなす、請求項に記載の単結晶物品。
【請求項7】
ノズル、シュラウド、スプラッシュプレート及び燃焼器部品から選択されるガスタービンエンジン部品をなす、請求項5に記載の単結晶物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、過酷な高温のガスタービン環境での使用に適した組成物およびその組成物からなる物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル基単結晶超合金は、航空エンジン全体にわたりタービン動翼、ノズルおよびシュラウド用途で広範囲に使用されている。航空エンジンのエンジン性能を向上させるための設計は、主にクリープ強度(耐クリープ性)向上の形でますます高い高温性能を有する合金を要求している。耐クリープ性の向上ももたらすTa、W、Re、Moなどの固溶強化元素を増量させた合金は、一般に、相安定性の低下、密度の増加、および耐環境性の低下を示す。近年では、熱機械的疲労(TMF)耐性がタービン部品の制約的な設計基準になっている。温度勾配が、クリープ、疲労および酸化の複雑な組み合わせによって損傷を進行させる繰返し熱誘起歪みを引き起こす。一方向凝固超合金は、歴史的に繰返し損傷耐性向けには開発されていなかった。しかしながら、エンジン効率向上のために、繰返し損傷耐性の向上が望まれている。
【0003】
単結晶超合金は、合金組成および高温機械的特性上の類似性に基づいて4つの世代に分類することができる。いわゆる第1世代の単結晶超合金はレニウムを含有していない。第2世代超合金は、通常、約3重量%のレニウムを含有している。第3世代超合金は、耐熱金属の含有量を上げるとともにクロムレベルを下げることによって、温度性能および耐クリープ性を向上させるよう設計されている。例示の合金では、レニウムレベルが約5.5重量%、クロムレベルが2〜4重量%の範囲である。第4および第5世代合金は、レニウムと、ルテニウムなどの他の耐熱金属のレベルを増量させて含有している。
【0004】
第2世代合金は、比較的安定した微細構造を有しているが、非常に強度が低い。第3および第4世代合金は、耐熱金属を高レベルに添加することによって強度を向上させている。例えば、これらの合金は、高レベルのタングステン、レニウムおよびルテニウムを含有している。これらの耐熱金属は、ニッケル基よりもはるかに高密度であり、そのため、これら耐熱金属の添加によって合金全体の密度が増大する。例えば、第4世代合金は、第2世代合金よりも約6%も重い場合がある。これら第3および第4世代合金は、その重量とコストの増大により、特別な用途にのみ使用が制限されている。第3および第4世代合金は、長期的な機械的特性に影響を及ぼす恐れのある、微細構造の不安定性によっても制約されている。
【0005】
合金の各後続世代は、前世代のクリープ強度と温度性能を向上させようと努力して開発された。例えば、第3世代超合金は、第2世代超合金と比較して華氏50度(約28℃)のクリープ性能の向上をもたらしている。第4および第5世代超合金は、レニウム、タングステン、タンタル、モリブデンなどの高レベルの固溶強化元素と、ルテニウムの添加によって達成されたクリープ強度のさらなる向上をもたらしている。
【0006】
一方向凝固超合金のクリープ性能が世代を経て向上するにつれて、連続サイクル疲労耐性および保持時間繰返し損傷耐性も向上してきた。これら破断強度および疲労強度の向上は、上述したように、合金密度とコストの上昇を伴ってきた。加えて、一方向凝固超合金中の耐熱性元素を増量し続けることに対して、微細構造上および環境面での不利益が存在する。例えば、第3世代超合金は、トポロジカル最密充填相(topological close−packed phases)(TCP)がそれほど安定しておらず、二次反応帯(SRZ)を形成する傾向がある。十分な微細構造安定性を維持するのに必要なクロムのレベルを低減させると、超合金の次世代での耐環境性の低下を招く。
【0007】
繰返し損傷耐性は、保持時間または持続ピーク低サイクル疲労(SPLCF)試験によって定量化されるが、それは単結晶タービン動翼合金にとって重要な特性要件である。第3および第4世代単結晶超合金は、高密度、レニウムおよびルテニウムが存在することによる高コスト、被覆状態下での微細構造不安定性(SRZ形成)、および不十分なSPLCF寿命という不利点を有する。
【0008】
したがって、十分な耐クリープ性と耐酸化性を維持しながら、レニウムおよびルテニウムをそれほど含有せず、SPLCF寿命を延長させるとともに、SRZ形成を少なくして微細構造安定性を向上させた単結晶超合金組成物を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2377683号明細書
【発明の概要】
【0010】
均衡のとれた耐クリープ性と耐酸化性はもとより、既知の合金と比較して、低密度で、レニウムおよびルテニウム含有量が低く、低コストで、SPLCF耐性が向上し、SRZ形成が少ない、タービン動翼用途の耐疲労性ニッケル基単結晶超合金を様々な例示の実施形態で説明する。
【0011】
例示の一実施形態によれば、組成物は、アルミニウム約5〜約7重量%、タンタル約4〜約8重量%、クロム約3〜約8重量%、タングステン約3〜約7重量%、モリブデン1〜約5重量%、レニウム1.5〜約5重量%、コバルト5〜約14重量%、ハフニウム約0〜約1重量%、炭素約0.01〜約0.03重量%、ホウ素約0.002〜約0.006重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。本発明の実施形態によれば、上記組成物は、華氏1800度/45ksiにおいて少なくとも約4000サイクルの持続ピーク低サイクル疲労寿命を示すことができる。
【0012】
本明細書に開示された例示の実施形態は、アルミニウム約5〜約7重量%、タンタル約4〜約8重量%、クロム約3〜約8重量%、タングステン約3〜約7重量%、モリブデン1〜約5重量%、レニウム1.5〜約5重量%、コバルト5〜約14重量%、ハフニウム約0〜約1重量%、炭素約0.01〜約0.03重量%、ホウ素約0.002〜約0.006重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含む組成を有する実質的に単結晶からなる、ガスタービンエンジンの動翼、ノズル、シュラウド、スプラッシュプレート、燃焼器などの物品を備えている。本発明の実施形態によれば、上記組成は、華氏1800度/45ksiにおいて少なくとも約4000サイクルの持続ピーク低サイクル疲労寿命を示すことができる。
【0013】
本発明として見なされる主題は、明細書の末尾部分において特に指摘され、明確に主張される。しかしながら、本発明は、添付の図面とともに以下の説明を参照することによってもっともよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる、ガスタービン動翼などの物品の斜視図である。
図2】本発明にかかる例示の組成と参考組成を示す表である。
図3】本発明にかかる例示の組成と参考組成について、華氏1800度/45ksiにおける持続ピーク低サイクル疲労(SPLCF)寿命(サイクル)をReとRuの総濃度(重量%)の関数として示すグラフである。
図4】本発明にかかる例示の組成と参考組成について、華氏2000度/20ksiにおける耐破断性(時間)をReとRuの総濃度(重量%)の関数として示すグラフである。
図5】本発明にかかる物品を作製する方法を示すブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、タービン動翼用途のニッケル基単結晶超合金の化学的性質について述べる。超合金は、均衡のとれた耐クリープ性と耐酸化性はもとより、既知の合金と比較して、密度低減、レニウムおよびルテニウム含有量の低減、コスト低減、SPLCF耐性の向上、SRZ形成の抑制をもたらす。耐疲労性の向上は、W、Mo、Re、Co、Crなどのガンマ強化剤の量を制御して合金の強度、耐酸化性、耐クリープ性の均衡をとること、およびAl、Ta、Hfの濃度を制御してガンマプライム相の体積分率を制御することによって達成された。本発明は様々な例示の実施形態で説明される。
【0016】
図面を参照して、図1は、ガスタービン動翼10として図示されたガスタービンエンジンの部品を示す。ガスタービン動翼10は、翼型12、横方向に延びるプラットフォーム16、ガスタービン動翼10をタービンディスク(図示せず)に取り付けるあり継ぎ形状の取り付け具14を備えている。一部の部品では、多数の冷却路が、翼型12の内部を貫通して延びており、翼型12表面の開口18で終わっている。
【0017】
例示の一実施形態では、部品10は実質的に単結晶である。すなわち、部品10は、少なくとも約80容量パーセント、より好ましくは少なくとも約95容量パーセントの、単結晶方位を有する単一結晶粒である。わずかな体積分率の他の結晶方位や、小角粒界によって分離された領域が存在してもよい。単結晶構造は、合金組成物の、通常は単結晶および単一結晶粒方位の成長を誘起する種結晶または他の構造からの一方向凝固によって作製される。
【0018】
本明細書に述べる例示の合金組成物は、ガスタービン動翼10に使用が限定されず、ガスタービンのノズル、静翼、シュラウド、他のガスタービンエンジン用部品など、他の物品でも使用することができる。
【0019】
本明細書に開示された例示の実施形態は、SPLCF耐性および耐破断性を向上させた合金の独特な合金化方法を提供すると考えられる。下記の表Iは、本発明の合金に含まれる元素に関する例示の濃度範囲を重量%で表している。範囲として示されたすべての量は、各元素について端点と部分範囲を含むと解釈されるべきである。
【0020】
【表1】
本明細書に開示された例示の実施形態は、SPLCF耐性および耐酸化性の向上をもたらすようにアルミニウムを含有してもよい。例示の実施形態は、約5〜約7重量%のアルミニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約5.5〜約6.5重量%のアルミニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約5.5〜約6.2重量%のアルミニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約6.1〜約6.5重量%のアルミニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約6.2〜約6.4重量%のアルミニウムを含有してもよい。
【0021】
本明細書に開示された例示の実施形態は、ガンマプライム強度を高めるようにタンタルを含有してもよい。例示の実施形態は、約4〜約8重量%のタンタルを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約4.5〜約8重量%のタンタルを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約6〜約8重量%のタンタルを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約4〜約6重量%のタンタルを含有してもよい。
【0022】
本明細書に開示された例示の実施形態は、高温耐食性を向上させるようにクロムを含有してもよい。例示の実施形態は、約3〜約8重量%のクロムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約4〜約6.5重量%のクロムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約4.3〜約6.5重量%のクロムを含有してもよい。本明細書に開示された他の例示の実施形態は、約4.5〜約5重量%のクロムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約5〜約6.5重量%のクロムを含有してもよい。本明細書に開示された他の例示の実施形態は、約5.5〜約6重量%のクロムを含有してもよい。
【0023】
本明細書に開示された例示の実施形態は、強化剤としてタングステンを含有してもよい。例示の実施形態は、約3〜約7重量%のタングステンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約3〜約6重量%の量でタングステンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約4〜約6重量%の量でタングステンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約3.5〜約6.5重量%の量でタングステンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約3.5〜約6重量%の量でタングステンを含有してもよい。
【0024】
本明細書に開示された例示の実施形態は、固溶強化性を付与するようにモリブデンを含有してもよい。例示の実施形態は、約1〜約5重量%のモリブデンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約2〜約5重量%の量でモリブデンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約2〜約4重量%の量でモリブデンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約2〜約3重量%の量でモリブデンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約1.5〜約4重量%の量でモリブデンを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約1.5〜約2.5重量%の量でモリブデンを含有してもよい。
【0025】
本明細書に開示された例示の実施形態は、ガンマ相に分配する強力な固溶強化剤であって、ガンマプライムの粗大化を抑制する低速拡散元素でもあるレニウムを含有してもよい。例示の実施形態は、約1.5〜約5重量%のレニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約2.5〜約4.5重量%の間のレベルでレニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約3〜約4.2重量%の間のレベルでレニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約3〜約4重量%の間のレベルでレニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約2.5〜約4.5重量%の間のレベルでレニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約3.5〜約4.2重量%の間のレベルでレニウムを含有してもよい。
【0026】
本明細書に開示された例示の実施形態は、コバルトを含有してもよい。例示の実施形態は、約5〜約14重量%のコバルトを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約7〜約12.5重量%のコバルトを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約9〜約12重量%のコバルトを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約5〜約8重量%のコバルトを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約6.5〜約7.5重量%のコバルトを含有してもよい。
【0027】
本明細書に開示された例示の実施形態は、被覆合金の耐酸化性と高温耐食性を向上させるハフニウムを任意選択で含有してもよい。ハフニウムは、遮熱コーティングの寿命を向上させることができる。例示の実施形態は、約0〜約1重量%のハフニウムを含有してもよい。他の例示の実施形態は、約0.2〜約0.6重量%のハフニウムを含有してもよい。
【0028】
本明細書に開示された例示の実施形態は、炭素を含有してもよい。例示の実施形態は、約0.01〜約0.03重量%の炭素を含有してもよい。他の例示の実施形態は、約0.015〜約0.025重量%の炭素を含有してもよい。
【0029】
本明細書に開示された例示の実施形態は、小角粒界に耐性を付与するようにホウ素を含有してもよい。例示の実施形態は、約0.002〜約0.006重量%のホウ素を含有してもよい。他の例示の実施形態は、約0.0025〜約0.0055重量%のホウ素を含有してもよい。他の例示の実施形態は、約0.003〜約0.005重量%のホウ素を含有してもよい。他の例示の実施形態は、約0.0035〜約0.0045重量%のホウ素を含有してもよい。
【0030】
例示の一実施形態によれば、組成物は、アルミニウム約5〜約7重量%、タンタル約4〜約8重量%、クロム約3〜約8重量%、タングステン約3〜約7重量%、モリブデン1〜約5重量%、レニウム1.5〜約5重量%、コバルト5〜約14重量%、ハフニウム約0〜約1重量%、炭素約0.01〜約0.03重量%、ホウ素約0.002〜約0.006重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。
【0031】
別の実施形態では、組成物は、アルミニウム約5.5〜約6.5重量%、タンタル約4.5〜約8重量%、クロム約4〜約6.5重量%、タングステン約3〜約6重量%、モリブデン2〜約5重量%、レニウム2.5〜約4.5重量%、コバルト7〜約12.5重量%、ハフニウム約0.2〜約0.6重量%、炭素約0.015〜約0.025重量%、ホウ素約0.0025〜約0.0055重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。
【0032】
さらに別の実施形態では、組成物は、アルミニウム約5.5〜約6.5重量%、タンタル約6〜約8重量%、クロム約4.3〜約6.5重量%、タングステン約4〜約6重量%、モリブデン2〜約4重量%、レニウム3〜約4.2重量%、コバルト7〜約12.5重量%、ハフニウム約0.2〜約0.6重量%、炭素約0.015〜約0.025重量%、ホウ素約0.003〜約0.005重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。
【0033】
別の実施形態では、組成物は、アルミニウム約5.5〜約6.2重量%、タンタル約6〜約8重量%、クロム約4.5〜約5重量%、タングステン約4〜約6重量%、モリブデン2〜約3重量%、レニウム3〜約4重量%、コバルト9〜約12.0重量%、ハフニウム約0.2〜約0.6重量%、炭素約0.015〜約0.025重量%、ホウ素約0.0035〜約0.0045重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。
【0034】
さらに別の実施形態では、組成物は、アルミニウム約6.1〜約6.5重量%、タンタル約4〜約6重量%、クロム約5〜約6.5重量%、タングステン約3.5〜約6.5重量%、モリブデン1.5〜約4重量%、レニウム2.5〜約4.5重量%、コバルト5〜約8重量%、ハフニウム約0.2〜約0.6重量%、炭素約0.015〜約0.025重量%、ホウ素約0.003〜約0.005重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。
【0035】
別の実施形態では、組成物は、アルミニウム約6.2〜約6.4重量%、タンタル約4〜約6重量%、クロム約5.5〜約6重量%、タングステン約3.5〜約6重量%、モリブデン1.5〜約2.5重量%、レニウム3.5〜約4.2重量%、コバルト6.5〜約7.5重量%、ハフニウム約0.2〜約0.6重量%、炭素約0.015〜約0.025重量%、ホウ素約0.0035〜約0.0045重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含有する。
【0036】
本明細書に開示された例示の実施形態は、アルミニウム約5〜約7重量%、タンタル約4〜約8重量%、クロム約3〜約8重量%、タングステン約3〜約7重量%、モリブデン1〜約5重量%、レニウム1.5〜約5重量%、コバルト5〜約14重量%、ハフニウム約0〜約1重量%、炭素約0.01〜約0.03重量%、ホウ素約0.002〜約0.006重量%、および残りのニッケルと不可避不純物を含む組成を有する実質的に単結晶からなる、ガスタービンエンジンの動翼、ノズル、シュラウド、スプラッシュプレート、燃焼器などの物品を備えている。
【0037】
本発明にかかる例示の組成および参考組成を図2に示す。図2に示すように、合金A1〜A6は、本発明にかかる組成を有する。参考合金R1〜R5は、上述したように、本発明にかかる組成範囲外の組成を有する。図2は、合金A1〜A6および参考合金R1〜R5に関して、華氏1800度/45ksiにおける持続ピーク低サイクル疲労(SPLCF)耐性(サイクル)と、華氏2000度/20ksiにおける破断寿命(時間)も示す。
【0038】
SPLCF試験は、華氏1800度において45ksiの擬似交番応力で2分間歪み制御された圧縮保持を施すことによって行われた。
【0039】
図2に示すように、合金A1、A5およびA6は、参考合金R1〜R5よりもSPLCF耐性および耐破断性が高い。一般に、本発明の一実施形態にかかる合金は、華氏1800度/45ksiで約4000サイクルを超えるSPLCFと、華氏2000度/20ksiで約150時間を超える破断寿命を示す。具体的には、合金A1は、約4111サイクルのSPLCFと、約155時間の破断寿命を有する。また、本発明の別の実施形態にかかる合金は、一般に、華氏1800度/45ksiで約5000サイクルを超えるSPLCFと、華氏2000度/20ksiで約200時間を超える破断寿命を示す。特に、A5は、約5497サイクルのSPLCFと、約203時間の破断寿命を有し、合金A6は、約5219サイクルのSPLCFと、約211時間の破断寿命を有する。
【0040】
図3は、本発明にかかる例示の組成と参考組成について、華氏1800度/45ksiにおけるSPLCF寿命(サイクル)をReとRuの総濃度(重量%)の関数として示すグラフである。図4は、本発明にかかる例示の組成と参考組成について、華氏2000度/20ksiにおける破断寿命(時間)をReとRuの総濃度(重量%)の関数として示すグラフである。
【0041】
図3および図4に示すように、本発明にかかる合金A1、A5およびA6は、Re+Ru濃度が同様の、またはより高い参考合金R1〜R5よりもSPLCF寿命および破断寿命がはるかに長い。特に、合金A1およびA5のRe+Ru濃度は約4重量%であり、合金A6のRe+Ru濃度は約3.5重量%である。参考合金R3〜R5は、合金A1、A5およびA6よりもRe+Ru濃度が高いが、合金A1、A5およびA6よりも短いSPLCF寿命および破断寿命を示している。
【0042】
図2図4で要約されたデータからは、本発明に開示された例示の実施形態が、既知の合金よりも耐疲労性と耐クリープ性の組み合わせにおいて向上したことを実証していることがわかる。加えて、本発明の合金の利点は、参考合金の一部と比較してレニウムとルテニウムの総濃度が相対的に低いことによって、合金のコストが著しく低減されることである。
【0043】
例示の実施形態は、合金の組成と一部の特性について説明したが、いかなる点でも本発明を制限していると解釈されるべきではない。
【0044】
図5は、本発明にかかる物品を作製する方法を示すブロックフロー図である。参照符号20で示すように、上述の組成を有する合金が作製される。合金は、参照符号22で示すように、溶融され、実質的に単結晶として凝固させられる。単結晶物品を凝固させる技術は当分野で周知である。一般に、単結晶物品を凝固させる技術には、種結晶または成長阻害が物品における所望の単結晶方位を規定している状態で、型内で合金を物品の一端から一方向に凝固させることが含まれる。ほとんどの場合、物品は、タービン動翼またはタービン静翼の場合には、物品の長軸に対して平行な[001]結晶方向で作製される。単結晶として凝固化した後、物品は、参照符号24で示すように、任意の使用可能な技術で後処理される。後処理は、以下に限定されないが、合金の機械的特性を最適化させるための物品の熱処理、および/または物品の機械加工を含んでもよい。
【0045】
本明細書は、例示の実施形態を用いて、最良の形態を含む本発明を開示するとともに、当分野の技術者による本発明の実施および使用を可能にしている。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定されており、当分野の技術者が想起する他の例示の実施形態を含み得る。そのような他の例示の実施形態は、特許請求の範囲の文字通りの言葉と相違しない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文字通りの言葉とごくわずかな相違を有する等価の構造要素を含む場合には、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0046】
10 ガスタービン動翼、部品
12 翼型
14 取り付け具
16 プラットフォーム
18 開口
図1
図2
図3
図4
図5